台本どおりに進行するスレ

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130HN募集中。。。

あのファミレスは、雨降りの朝なのに、窓の外から見ても、
若々しい和やかな活気に充ちていて、私は心底安心した。ここに戻れば、
何かがスッキリと解決する、なんてことは別に無いと分かりきっていながら、
こんなにも安心する。

道を歩く無機質な傘たちの間で、私は明らかに浮いていた。

少なくとも、この店では束の間、周りと同じで居られる。
日本的と言われれば、そうです、としか答えようがない、
そんなどうにも臆病な私がいたから、安心するのだ、と思う。

そして、雨で重くなった頭を振り、そこに足を踏み入れると、
にっこり顔のウェイトレスさんのお出迎え。
昨日、私にハンバーグを持ってきてくれたウェイトレスさんとは違ったけど、
私のマイナスな感情に満ちていた心を解きほぐすような笑顔は、素直に嬉しかった。
131HN募集中。。。:03/11/01 19:12 ID:eMu0eBDz

「お客様。」

にっこり顔のウェイトレスさんは、朗らかな声で私に呼びかける。
私も濡れた服や髪を気にしながらも、ニカッと微笑む。

だけど何故だか、私の周りの柔らかだった空気が、
なめらかだけど、硬く、冷たく、突き刺さるような空気にかわった。
それは、反吐が出そうになる雰囲気とはまた違っていた。

「この店から、出て行ってくださいませんでしょうか。」
132HN募集中。。。:03/11/01 19:12 ID:eMu0eBDz

私は微笑みを固くしながら、にっこり顔のウェイトレスさんの言葉を聞いた。
この表面だけ朗らかな声は、電子レンジで表面だけ暖まったグラタンみたいな、
中身がとても冷たくて、不条理で、私の心では整理のしようが無いモノだった。
それでいて、ウェイトレスさんは、いつ出したのか、
その笑顔に到底つり合わないような、物騒なモノを片手に携えていた。

銃。

それの先は私に向けられていて、それに伴って、
店中の冷たい視線が、何故だか私にだけ向けられていた。
思わず、私は微笑みも身体も全て固まってしまった。

私がそうして銃と冷たい視線とを向けられ固まっていると、
後ろの方で雨の音がザァッと一瞬だけ聞こえて、また聞こえなくなった。
133HN募集中。。。:03/11/01 19:18 ID:eMu0eBDz

「いつっ!」

それは、私の肩を肩先で突き飛ばして、後ろの入り口から男の人が1人、
入って来たからだった。そして、私は肩を突き飛ばされたことで、
昨日撃たれた傷が、めまいのしそうな程、激しく痛んだ。
そんなもんだから、もちろん、私の情けない痛みの声も漏れてしまっていた。

――――なんだコノヤロ、人が立ってるのぐらい分かるだろ。

そう思いながら、私は肩をかばい、目に力を込めて、その男をグッと睨む。
それでも、その男は私の精一杯の眼光にひるむことなく、私の方に顔を近づけ、
なんだかいやらしい笑みを浮かばせた。そして、その笑みを私が目にすると同時に、
私のおしりが何か固い棒のようなモノでまさぐられている感触がした。

ある考えが私の脳裏をよぎるのより先に、頭と顔とに血が満たされていくのを感じた。
それと同時に、昨日の援交オヤジのことも、ムカムカする気配と共に、
私の頭と顔と、その他諸々、満たしていっているようだった。

――――ふざけんなよ。
134HN募集中。。。:03/11/01 19:20 ID:eMu0eBDz

そして、気付くと私の右手は、男の頬を張っていた。

それでも男は固い棒のようなモノをしまおうとはせずに、
そのいやらしい顔をさっきよりも更に私の顔に近づけた。
男のタバコくさい息が顔にかかり、私の前髪を揺らす。

「姉ちゃん。ダメだよ。こういうもんは大事にしとかないと。ダメだよ。」

ダメだよダメだよと繰り返し変な抑揚を付けながらそう言うと、
男は固い棒のようなモノを、私のジーンズのおしりのポケットに突っ込んで、
ファミレスの奥へと入っていった。そこで、私はその固い棒のようなモノが、
さっき外で投げ捨てて来た銃だと知り、自分の誤解を恥じ、赤面した。
だけど、その誤解を知ると共に、またゾッとした。

ポケットに突っ込まれた銃が、やたらに重く冷たく感じる。
今の私には、この銃の存在がこの理不尽でふざけたゲームの全てのような気がした。
そう思うと急に、このゲームに対するどうにもならないような気持ちが込み上げてきて、
また、涙がちょっと出そうになった。それをグッとこらえる。それでも涙が出そうになる。
グッとこらえる。出そうになる。こらえる。出そうになる。こらえる――――――。
135HN募集中。。。:03/11/01 19:21 ID:eMu0eBDz
「―――――ねぇ、ちょっと。聞いてんの、あんた。」

なんだか聞き覚えのある耳に障る声と、誰かに私の腕が引っぱられたことで、
私はスッとこの理不尽な世界の現実に引き戻された。
普通の私なら、なんなのよ、と怒るところだけれど、
夏休みの宿題が終わらなくてどうにもならない時よりも、
もっとずっと深い絶望感を、たっぷりと含んだ涙をこらえることができ。
溢れ出してしまうと、歯止めが利かなくなってしまいそうな感情を、こらえることができ。
ココロの中で密かに、この無礼な、私の腕を引っ張った奴へと感謝の感情を抱いた。

そして、チラリと私の腕を引っ張っている手の延びてきた先へと視線を走らせると、
やけに小さい身体、ちょっと化粧の濃い顔、金髪に近い少し痛んでいる髪の毛。
学校の参観日の時みたいな、バカじゃなかろうか、というほどの香水の匂い。
136HN募集中。。。:03/11/01 19:22 ID:eMu0eBDz

「え?」

私の胃とか胸のあたりがキュッとしまるように、引き絞られるように痛んだ。
それは、肩の傷の、肉体に来る痛みとはあきらかに違っていたが、
それでも、私にとって苦痛以外の何者でもない、ということに変わり無かった。

「あ?やっと聞こえた?もーどーでもいいからさ、早く出て行ってくれない?」

その人は、あまり会いたくない人だった。あまり、というか絶対に会いたくない人だった。

「おーい、聞こえてんだろ?さっさと出て行けつってんの。痴漢がそんなにショックかぁ?」

私の目の前に居たはずの、銃を携えたにっこり顔のウェイトレさんは、
いつのまにやら、片手に銃を持って、キャハキャハと笑いながら、
今、正に、銃のゲキテツを引かんとしているヤグチさんにハヤガワリしていた。