【9】
「何よ、その言い方!バカにしないでよ!何様のつもり?」
『カオリン』って呼ばれた事もさることながら、
『ウブ』と言われた事がショックだった。シイナがさらに言う。
「キスぐらいで感じちゃダメですよ。もっと気持ちいい事してあげる。
欲しいんでしょ?もっと感じたいんでしょう?」
確かにシイナの言う通りだ。
さきほどから身体に芽生えた欲情は、抗えないほどに強まっている。
女としての本能が次のステージを期待している・・・
しかしリーダーとしてのプライドはそれを許さなかった。
「私が感じてるって?ハハッ・・馬鹿じゃないの?
あんたなんかに感じるわけないわよ。わかったら早く帰りなさい」
これでいいのだ・・・飯田は自分に言い聞かせた。
女としての未練は残るが、その前にまずリーダーである。
モーニング娘。に入って6年。仕事一筋で頑張ってきた。
トップアイドルとして人気や名声を得た代わりに,
犠牲にしたものは==『恋愛』と『SEX』==
女として一番興味のある年頃に、これらを禁じられたのだ。
(私は女ではない!アイドルだ!女の悦びなどとうに捨てている!
これでいいのよ・・・これでいいのよ・・・でも・・・)
「カオリン、もっと素直になって・・・」
まるで飯田の心を見透かしたかのようにシイナが呟いた。
「あたしがカオリンを開放してあげる。女の素晴らしさを教えてあげるわ」