【20】
(・・・オ、オ、オナニー?!)
石川は、混乱している頭の中で必死に考えた。
(オナニーっていったら、あれでしょう?・・・その・・・何ていうか・・・
自分の身体をさわったりする『いやらしい』やつ・・・でしょ?
昔、友達が話してるのをチラッと聞いた事があるんだぁ。
でもあたしはやった事ないもん・・・ホントだもん・・・
あんな『いやらしい』事やるなんて考えたくもないし!
オナニーなんて言葉、聞いただけでも恥ずかしいわ! )
石川の潔癖症は筋金入りだ・・・しかしそれは、
石川本人が強度の『恥かしがり屋』だという事に原因がある。
―― 人一倍強い羞恥心 ――
これが石川自身の女らしさを育て、魅力を作り出していった。
ところが“性”に関しては、これが大きな壁となったのだ。
だからシイナの「オナニー発言」にもついカーッとなってしまう。
「シイナ!あんたねぇ、相談があるっていうから話聞いてあげたのよ!
それなのに、今のは何?・・・(オナニー)・・・だなんて?」
石川は恥ずかしさのあまり“オナニー”という言葉を濁してしゃべった。
すかさずシイナが切り返す。
「え?!今、何て言ったんですか?
声が小さくてよく聞こえなかったんですけど」
シイナは石川が恥かしがり屋である事を全て見切っていた。