【18】
「ありがとう〜シイナ!でも私だけにタオルなんて・・・ちょっと照れるな」
「当然ですよ。だって私、石川さんの事ばかり考えてましたから」
周囲を憚りながらの端的な会話ではあったが、
石川は後輩から慕われている自分の存在をシッカリ感じ取っていた。
石川がモーニング娘。に入って早3年――
気が付けば後輩の数の方が多くなっている。
先輩としての貫禄・・・とまではいかないが、
何かと後輩の面倒をみる機会は増えていた。
年下の娘達から相談される事もシバシバあったようだ。
だからついついこんな軽口が出てしまう。
――「何か困った事があったら私に言ってね」――
本来ならリーダーやサブリーダーが言うべき事だが、
石川にしてみれば、私でも出来る、という意味であったろう。
それだけ先輩としての自覚が出てきたというわけで、
それはそれで微笑ましい事といえる。
しかしシイナに言ったのはマズかった。
石川はシイナにも同じ事を言ってしまったのだ――
「困った事ですか?・・・ありますよ・・・」
シイナが、さも深刻そうな顔をして答えた。
「でも、ここでは言いにくいので後で石川さんのお部屋に伺います・・・」
「OK!私に任せなさいって!〜じゃあ今夜待ってるからね〜♪」
去ってゆく石川の後姿をシイナは妖しい瞳で見送った・・・