ソレは一段と加速したようにさえ見えた。
急角度で錐揉み状態に、まるで獲物を狙う鷹のように、
避ける術の無いスピードと、助かる術の無い質量を持って
飽きれる程の精緻さで、ソレは銀ヘルメットに襲い掛かっていった。
もう巻戻せない事に気がついた時、
憑かれた様に駆り立てられていた
市井紗耶香は、初めてその事に気がついた。
(・・・アノコモ、ニンゲンナンダヨネ・・・)
出来すぎたその光景を、
紗耶香は最後まで見続けることが出来なかった。
顔を伏せた紗耶香の耳に
悲しくも鈍い音響が一つ飛び込んできた。
薄黒く少し湿り気味の地面を掴む、
紗耶香の指は少しずつ少しずつその中へと沈んでいった。