モー娘。が結成されて50周年を迎える訳だが

このエントリーをはてなブックマークに追加
285名無し ゆゆたん
木立の狭間からソレが飛び出した時
中澤裕子は、フィクションの渦に引きずり込まれかけたが
理性を振り払い、本能を懸命に総動員し、
理屈では無く、直感で現実を咀嚼しようと努めた。

最悪の作為と最高の自然に溢れるこの森で遭遇した
目の前の滑る銀のヘルメット頭の女。

あまつさえ、その腰には
裕子自身が現在所持しているモノと、ほぼ同一に見える
鈍い光沢を放つ凶器様のモノまで備えている。

それは平常時であれば、スクリーンか書物の中、
一次元低い世界でしか存在し得ない光景であった。

無意識にソレを握る手に力が篭ったのを
悟られるのを恐れるかの様に
裕子が掌に視線を落とした時に、
素っ頓狂な声が右の頬をいきなり痛打した。

− ねえ、裕ちゃん。あれって加護じゃない? −

安倍なつみの顔に視線をやる前の一瞬で、
裕子は吊り上げかけた右の眉を
慌てて正常な角度に修正した。
286名無し まこたん:04/01/20 00:24 ID:IRKJyK++
小川麻琴が酷い痛みに気がついた時、
可哀想な麻琴自身の無口な働き者の右の手は
赤く腫れ上がり無言の抗議を繰り返していた。

それも無理も無かった。
文字通り痛いほど認識できた、この異様に頑丈な筒を、
状況に対する最大限の抗議の意を込め、
繰り返し十数度力任せに殴打したのだ。

麻琴が、どんなに叫び、荒れ狂っても
隔絶された向こうの閉鎖空間の中の状況は
一向に好転する気配を見せなかった。

開ききった口を閉じるのも忘れ
麻琴は、その水面に歪む紺野に対し、
全く無力な己に歯噛みしていた。

麻琴は、ただ見ることしか出来なかったのだ。

激しく嘔吐しながら、前のめりに崩れ落ち、
腰の高さ程の水面に沈んでいく紺野を。
何度か立ち上がろうとし、そのたびに崩れ落ちる紺野を。
吐瀉物に塗れ水面に髪を泳がす紺野を。