モニタは依然として沈黙を貫き通していた。
再び、同期のメンバーに視線を投げかけてみて
小川麻琴は、ある変化に気がついた。
先ほど異常なほど赤面していた高橋と紺野の顔が、
正反対に、すっかり蒼白になってしまっており、
二人とも、明らかに平衡感覚を保っていない様で
前後左右に、危なっかしいほどに全身をふらつかせていた。
(・・・何? 何が起こってるの?)
麻琴は、僅かに身を屈め、もう一度
膝の辺りまで満たしているモノを確認してみたが、
それは、「お湯」であるとしか思えなかった。
確かに、それは生温かくて気持ちは悪い。
確かに、狭い筒の中で若干湯気が立ち息苦しいとも言える。
それにしても、あの様子は一体何が起こっているのか。
何かに救いを求めるかの様に、
麻琴は、当て所無く視線を部屋中に彷徨わせた。
レーダーらしき計器に二つの光点が現れた為に
加護亜依は、身体の向きを55度ばかり左に回転させた。
古ぼけた巨大な、逆に言えばその二点しか価値が無い
ありふれた巨木の陰に身を隠し、
亜依は慎重に来訪者の様子を伺った。
大きめの砂時計が4分の3程度仕事を終えた頃、
それらが亜依の視界に姿を表した。
− 何? あれがターゲット!? ・・・ −
それは、まるでヨーダかグレムリンかと言った
皺くちゃな気味の悪い生物と、
TVゲームに出てくる豚人間の様な醜悪な生物だった。
画面上に浮かび上がった四角いラインの枠が
それらの二匹の上に二つ固定されていた。
亜依は腰の銃に手をやりかけて、
グリップを撫でただけで、手を離し、頭を振った。
(・・・コレを使って良いの? ・・・見えるものを信じられない・・・)
誰かにとって都合良く情報のカットされたスクリーン、
確かな破壊力を持った武器、何かに敷かれたレールで
断崖絶壁に誘導されているような感が拭えなかった。
そう、見えはしなかったが、確かに、あれは確かに亀井だった筈なのだ。