ガチャンと。古風な作動音を立ててソコが開いた時、
思わず保田圭は反射的に仰け反った。
正確には、仰け反ろうとして
それを達成する前に突き飛ばされた。
ソレが特に害が無い事が判るまでに数瞬、
後藤に押されたと言うことを理解して、
後藤の様子を確認しようとするまでに、もう数瞬を要した。
− ご、ごめん、圭ちゃん。 びっくりして・・・ −
圭が、数m後方で、ぎこちない笑顔を作りながら
少し慌てたように言い訳をしている後藤を認識したのに合わせるかのように
唐突にヘッドセットから聞き慣れた声が流れ出した。
「おーい、保田ぁ。わりぃわりぃ。驚かせちゃったか?
そこ見てみろよ。武器があるだろ?
このゲームはスゲー危ないから特別にプレゼントしてやるよ。
おいおい、んな、顔するなよ。
オレは昔から結構お前のことが気に入ってるんだぜ・・・」
よく言えば未来的、悪く言えば玩具っぽい、
モノがそこに鎮座していた。
ただ、それの持つ禍々しいまでの重厚感は
紛れも無くそれが、本物であることを感じさせた。
圭が再度、振り返って確認した時、
後藤は相変わらず眉根に皺を寄せていた。
後藤は何度か圭の顔とソレに視線を往復させた後、
やがて、ゆっくりと一歩一歩確かめるかのように
歩み寄って来ながら、圭を促すかの様に、微かに数度頷いた。
ゆっくりと手を伸ばし、ソレに触れた圭は、
その冷たさに僅かに顔をしかめた。
間違いない。人を害することを目的に
作られた機械だけが持ち得る冒涜的な権力の威圧。
− これを、自分が正しく使えるのか?その資格があるのか? −
コレを手に取ってしまった事を後悔する思いが、
圭の心を侵食し始めていた。
後藤に見られないように注意深く俯きながら、
圭は、深い溜息を一つ漏らさずにはいられなかった。