と、亜依は銃口を少し先の古木に向けた。
慎重に狙いを定め若干汗ばんだその人差し指に力を込める。
次の瞬間、光と音の糸が一直線に伸びていった。
(…まあ、70点ってところやろなあ。)
静寂を打ち破った銃弾は狙った洞の20cm程上を破壊していた。
軽やかな足取りで幹の傍まで移動した亜依は、
丹念に、たった今破壊した部位を調べ始めた。
(…それなり …と言うか十分な威力がある訳や。
傷痕も「見た目」通りやな・・・
…それにしても、このヘルメットけったくそ悪いで…
…何かが …何か …っつぅ!!)
突然、亜依の右中指に焼ける様な痛みが走った。
無理もない。見ての通り銃痕の逆立った部分が
指の腹に突き立っているのだ。
脈打つような痛みが続き、
生暖かいものが盛大に体外に溢れ出すのが感じられた。
そして、亜依はソレを見てようやく、
どこかホッとしたような、皮肉っぽい笑みを浮かべた。
(…はは。ソレはと言うか、ソレも、やっぱり画面には映らへんのか。)
どれ位待たされたのだろう。
座った状態とはいえ、これほど味も素っ気もない部屋で待たされることが
意外な程苦痛である事に、新垣里沙は今更ながらに気がついた。
正面の灰色のスクリーンは依然として、辛気臭い沈黙を続けていた。
紺野あさみが小さなクシャミを発したのを契機に
何となく口数の少なくなっていた四人は、
改めてお互いの顔をまじまじと見合い、苦笑を浮かべた。
何となく、空気が軽くなったように感じられた。
タイミングを逃さぬよう、理沙が口を開きかけた時
初めて部屋の様相に変化が現れた。
入口扉がまるで氷の上を滑るような極上の静粛性を発揮し
音も無く新たな二人の侵入者を迎え入れたのだった。