ZXこと小川麻琴が中澤家に来た頃のお話。
小川と紺野はなかなか打ち解けないでいた。
紺野の方が異常に警戒していたからである。何しろ昨日まで敵同士だったのだ。
他のみんなも同じだった。数日の間小川は中澤、辻、加護以外とはほとんど会話をしなかった。
そんな時、安倍が紺野に話し掛けてきた。
「なんか、あの娘おとなしいね。」
「・・・そうですね。でもきっと慣れない環境で緊張してるんだと思います。」
「そうだね・・来たばっかりの頃のあさ美ちゃんもあんな感じだったもんね。」
紺野はそれを聞いてハッとした。
「そうか・・・自分も来たばかりの頃は孤独だった、寂しかった。あの娘も自分と同じなんだ・・・
あの時はみんなが優しくしてくれた。今度は私の番だ。安倍さんはきっとそう言いたいんだ。」
「・・・あの・・・」
紺野は一人でソファーに座っている小川の横に座り、話し掛けた。
その後は二人でいろいろな話をした。
いままでのこと、友達のこと、家族のこと、自分の体のこと・・・
数時間後、ようやく打ち解けかけたところで小川が聞いた。
「ところで、紺・・・あさ美ちゃんはどんなことが出来るの?」
「うーん・・・空が飛べるくらいかなあ」
小川は驚いた表情で言った。
「ええ!本当に?見せて見せて!」
「え?今ここで?・・・」
「ダメ?・・・」
小川は少し寂しそうな顔を見せた。
(ここで断ったらまた心を閉ざしちゃうかも・・・)
そんな小川の表情を見た紺野は慌てて言った。
「あ・・・いいよ!・・・変身!」
「わぁ〜!すごい、すごーい!」
重力低減装置によって空高く舞い上がったスカイライダーを、小川は窓から顔を出して眺めていた。
「そこに帰るからちょっとどいてね〜」
「へ?・・」
そう言うとスカイライダーは滑空を始め、スポッと小川が眺めていた窓から入ってきた。
「ふう・・」
そう言いながら変身を解いた紺野を、小川は羨望のまなざしで見ながら言った。
「すごいねぇ〜。すごいよあさ美ちゃん!」
「そ、そーかなー?窓からあなたのお宅におじゃま〜るしぇ。なんちゃって・・・」
「・・・何それ?」
「あ、いや何でも・・ところで小川・・まこっちゃんは何が出来るの?」
「うーん・・いろいろあるんだけど、今ちょっと変身は・・・」
まだ小川には先日の闘いのダメージが残っていた。
「あ、そうだ。私のバイクを見せてあげる。」
そう言って小川は紺野を地下のガレージに連れて行った。
「ヘルダイバーっていうの。」
「へー、原子力エンジンなんだ。・・・これは?」
「それはレーザーバルカン砲。便利だよ」
「レーザー?ビームがでるの?すごーい!」
紺野は目を輝かせながら言った。
そんな紺野を見て小川が言った。
「・・・見たい?」
小川は紺野を連れてヘルダイバーで近所の空き地に向かった。
空き地に着くなり近くの立木に狙いをつけた。
ピー!(ボン!)
レーザーが発射され、一瞬にして立木は炎に包まれ崩れ落ちた。
「わー!!すごーい!まこっちゃん、このバイクカッコいいね!」
紺野がそう言うと小川は少し顔を赤らめながら言った。
「そう?よーし、じゃんじゃん撃っちゃうよ。次はあそこ!」
空き地の立木という立木を次々灰にしていく2人。
ピー!(ボン!)
ピー!(ボン!)
ピー!(ボン!)
「ピーマコ小川で・・・・」
「さっきから何やってんの!あんたたちはああああ!!」
2人の様子をずっと眺めていた中澤がたまらず怒鳴り声を上げた・・・
・・・数時間もの間、2人は散々中澤のお説教を食らった。
「あの人怖いね・・・」
「うん。怖いよ。・・・中澤さんは普通の人間だけど、この中で一番怖いの。」
「あははは・・」
ここに来て初めて小川が笑った。
紺野はその無邪気な笑顔と見て、この娘とはうまくやっていけそうだな、と思った。
「・・・とにかくこれからよろしくね。まこっちゃん。」
「こちらこそ。あさ美ちゃん」
そう言って2人は握手をした。
99%が機械だと言っていたが、小川の手は柔らかく、あたたかかった。
・・・・あまり関係ないが、そんな2人をビジンダーとXライダーは何故か複雑な表情で見ていた。