仮面ライダーののアギト

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589ナナシマン
 一方、こちらはホーチミン空港のロビー。観光客が行き来する中を、大きな
バッグを傍らにおき、サングラスをかけた一人の女が人待ち顔で立っていた。

 「もう来て待ってるって言うてたけど、一体どこにおるんやろ・・・」

 正午の便で日本を出てきて8時間。見れば時計の針は8時を差している。しかし
ベトナムと日本の時差は約2時間だというのでロビーの時計を見れば、なるほど今は
夕方の6時であった。
 時計を見ながらチラチラと周囲をうかがうこの女こそ、真里をバッグに押し込んで
日本を発った稲葉貴子であった。捜査官の特権で荷物検査を容易くクリアした彼女
は、それでも真里をバッグに詰め込んだままベトナムに入国を果たしたのである。
まぁ真里を開放できるとするなら、無論それは空港外に出てからということになる
だろうか。
590ナナシマン:03/09/28 18:40 ID:wQJh3spm
 「こっちの人間はきっと時間にはルーズなんやろな・・・ま、のんびりしてて
ええけど」

そんなことを一人つぶやきながら、貴子は再び周囲に目を配りながら待ち人の姿を
求める。すると、雑踏の中にいる一人の男と眼が合った。その直後、彼は手を
振りながら貴子の方へと駆け寄ってきた。

 (おいおい・・・お前はどこぞの現地ガイドかいな・・・)

 日焼けしたやせ型の体型に纏うは安っぽいプリントシャツに白いハーフ丈のパンツ。
こんな出で立ちの捜査官など彼女の経験上存在したことが無い。ため息をつく貴子に
対して、男はやってくるなり笑顔でこう言った。

 「チャオチー!ベトナムへようこそ。ミス・稲葉ですね?」

 「まさかとは思うけど、現地の情報員って・・・あんた?」

 「はい。僕がICPOタイ支局捜査官のウィラポンです。このような身なりで
驚かれたでしょうが、敵の目を欺くにはこれが一番なんですよ」

あっけに取られた表情のまま、貴子はウィラポンと握手を交わす。そして二人はロビー
を出て、彼の案内のもとに空港を出る。