ダブルライダーは二人の怪人のもとにすばやく駆け寄ると、戦いの
イニシアチブを取るべく積極果敢に攻撃を繰り出す。左右のライダーパンチ
が怪人の顔に胸元に炸裂し、その度に敵の身体はぐらりと揺れる。
「とうっ!とうっ!!」
唸りを上げて炸裂する正義の拳が、悪の改造人間をじりじりと後退させる。
だが、敵も黙って攻め立てられるわけではない。怪人エイドクガーはエイの
尻尾に見立てた腕の鋭い棘を振りかざしてライダーののに斬ってかかり、
一方のハエトリバチも自慢の溶解液をライダーあいに浴びせかけようと
右に左に激しく噴射する。
「ちょこまかとうるさいやつめ!俺の溶解液で溶けてしまえ、ジグー!」
当たるを幸いとばかりに闇雲に放たれる飛び道具に、ライダーあいもうかつに
手が出せない状況だ。
(この溶解液をかいくぐって、一気に勝負にでるしかない・・・)
さすがにこの攻撃をまともに浴びれば、いくら仮面ライダーでもひとたまりも
無い。しかしそこは百戦錬磨のライダーあい。小柄な身体を生かして敵の
懐にすばやく飛び込むと、そのまま相手と組み合って空中高くジャンプする。
「ライダーッニーブロック!!」
「グギャアアアア!!」
怪人の腹部に走る強烈な痛み。内部のメカを完全に破壊する一撃が敵を捉える。
空中上昇と共に蓄えた風力エネルギーを膝にこめて、相手のどてっ腹に叩き込む
必殺技、「ライダーニーブロック」がハエトリバチに炸裂したのだ。だが、
ライダーあいは攻撃の手を緩めない。空中で身を翻すや、相手の首根っこを両足で
挟み込み、一気に空中から投げ落とす荒業が炸裂する。
「ライダーッ!ヘッドクラッシャー!」
脱出不能の空中投げがハエトリバチを空中から一気に地上へと叩き落す。その
直後、敵は立ち上がることさえも出来ず大爆発と共に消滅した。
ライダーあいは返す刀で今度はエイドクガーの背後に迫ると、強引に自分の
方を向かせて鉄拳を見舞う。ライダーあいのパンチの連打によって、怪人は
倒れることさえ出来ず一方的に攻め立てられる有様だ。
「いくれすよ!!」
「おう!」
ライダーののの声に応じ、今度はダブルライダーが共に怪人の正面に陣取る
形で並ぶと、再びパンチの雨あられ。二人の絆を脅かした卑劣の敵に鉄拳制裁だ。
「ライダー、ダブルパーンチ!!」
エイドクガーの身体に満遍なく打ち込まれるダブルライダーのパンチ。もはや
ここまで攻め込まれては反撃する力など残っているはずが無い。完全にグロッキー
のエイドクガー、もはや立っているのもやっとの状態である。そして、ついに
決着の一撃が放たれる。ダブルライダーは互いに顔を見合わせて小さく頷くと、
掛け声高く空中へと大跳躍する。
「とーうっ!!」
空中で華麗に身を翻して勢いを増し、そこから放たれる矢のような鋭い一撃。
地上の敵にもはやこの一撃を避けるすべは無い。
「ライダーッ!ダブルッキィーック!!」
友情の証、ダブルライダー最強の必殺技が怪人を貫くと、エイドクガーは
天にも届かんばかりの大爆炎とともに木っ端微塵に砕け散った。亜依と希美、
二人の絆を翻弄したゼティマの刺客はここにすべて打ち倒されたのだ。
「ライダー!ホンマにようやった!!」
戦いを終えた二人の耳に聞こえてきたのは、聞き覚えのある女性の声。
戦いの一部始終を見守っていた、裕子と麻琴が二人のもとへと駆けつけて
きたのだ。
「二人の戦い、中澤さんとずっと見てました。中澤さんが『手を出すな、
これは二人の戦いや』って言うから、ずっとドキドキしてました」
麻琴はそう言ってダブルライダーと固い握手を交わす。ダブルライダーも
それに答え、裕子もその輪の中に加わった。そして、最も固い絆で結ばれた
二人が、最後に最も固い握手を交わした。
・・・それから数日後の中澤家。
「あーっ!私のゼリードリンクが無い!!」
休日の朝のひと時を引き裂くような甲高い声。その声の主はあさ美であった。
パトロールを終えてから飲もうと取っておいた、ゼリードリンクが冷蔵庫から
消えていたのだ。しかし、叫び声は彼女だけにとどまらなかった。
「ああああっ!!マコのカボチャのタルトが!!」
斉藤瞳からおすそ分けにもらった、カボチャのタルト。それは麻琴が10時の
おやつにみんなで食べようと冷蔵庫にしまっていた物だった。
突如行方をくらました食べ物、そのありかを探してキッチンやリビングに
視線を走らせるあさ美と麻琴。と、その時二人はなぜか背中を向けたまま身を
縮めている二人の少女の姿を捕らえた。
「辻さん、加護さん。私のゼリードリンクとぉ」
「カボチャのタルト知りませんか?」
そんな二人の言葉に、希美が振り向いて一言こう答える。
「それはゼティマライダーの仕業なのれす」
だが、そんな希美の口元にはタルト生地のかけらがばっちりくっついている。
見れば服の上にも砕けた生地がこぼれているのがわかる。
「そうそう、多分ゼティマライダーやで」
そして、振り返った亜依の手に握られていたのは、吸い尽くされて丸められた
ゼリードリンクのパックだった。
「二人とも・・・何言ってるんですかぁぁっ!!!」
せっかく取っておいた食べ物を取られた二人はカンカンだ。犯人は間違いなく
亜依と希美。しかし当の二人も捕まるまいと一目散に駆け出す。そんな亜依と
希美の両手がしっかりと固く握られていることは、かわいいつまみ食い犯同士
の秘密だ。
世界征服をたくらむ悪の秘密結社、ゼティマが仕掛けた卑劣な罠。友情の
危機を乗り越えて、さらに固い絆で結ばれた亜依と希美。ダブルライダーの
行く手をいかなる悪が阻もうとも、二人がつないだ手は決して離れることは
ないだろう。世界の平和が訪れ、戦いの終わりが訪れたとしても。
第42話 「永遠の絆」 終