ブラック将軍の作戦では、13人のゼティマライダーのうち、誰か1人でも
少女達に接触することができれば、その絆を断てるはずだった。悪の使者達が
備えた変身能力はあくまでもダブルライダー、そして他の少女達を欺くため
のものであって、本来ならば誰か1人に備わっていればいい能力なのである。
しかし、その1人が見破られ接触に失敗すれば作戦そのものが失敗となる。
無論、策士ブラック将軍がそのような危険な橋を渡るはずは無く、結果13人
全員が変身能力を備えるに到ったのである。加えて次々と偽の亜依を繰り出した
ことで、一時的にではあるが希美の不信感をかきたてることに成功した。
そして現在、No.6が潜入に成功した時点で残り12人の変身能力は不要
となり、遺伝子の組成を維持するゲルパー液を服用する必要の無い改造人間と
して再強化されたが、No.6だけはその手術を受けていない。亜依にとっては
ここが付け目であった。
「ののとウチの二人で港に行って、ゼティマライダーを待つ。ののはその間
どっかに隠れてて、ゼティマライダーが来たら二人でそいつをやっつける。
で、今度はののがそいつと入れ替わって二人で敵の基地に潜入するって作戦や」
つまり、ダブルライダーによる変わり身作戦第2弾と言うわけである。敵が
容易に見分けの付かない偽者を作り出した事を逆手に取り、本物二人が偽者の
中に紛れ込んで敵地に潜入しようという作戦なのだ。
「後は向こうから来るのを待つだけ・・・」
「そうれすね」
そして二人は頃合を見計らって、約束の埠頭へと先回りして待ち伏せることに
した。そしてその1時間後・・・何も知らないゼティマライダーNo.11
が埠頭に姿を現した頃、倉庫の陰に隠れて待ち伏せていたライダーあいも
タイミングを見計らって姿を現す。ゼティマサイクロンの座席後方には、稲妻
のような亀裂が走った地球をまたぐ鷲のエンブレム〜これこそが宿敵ゼティマ
の旗印である〜がはいった四角いケースが積まれているのが見えた。おそらく
ゲルパー液のアンプルなのだろう。もっとも、ライダーあいにとっては単なる
口実であって、実際には全く必要の無いものであったが。
そうしているうちに、ゼティマライダーNo.11がライダーあい、いや
ゼティマライダーNo.6に近づいてきた。何も知らない敵は、あっさりと
二人の術中にはまるかと思われたのだが・・・。
「・・・No.6、いつからそのマフラーを・・・?」
ゼティマライダーNo.11は、眼の前に現れた仲間の些細な違いを敏感に察知
した。実はゼティマライダーのマフラーは、それぞれ黄・白・緑・青・紫・桃
の6色のローテーションである。つまり赤いマフラーのゼティマライダーは、
13人の中には存在しないのだ。
「ええ所に気が付いたな・・・とうっ!!」
そう言うやNo.6はいきなりNo.11にパンチを食らわす。そのまま
もんどりうって倒れたNo.11は、この一撃に事態の推移と自らの置かれた
状況を理解した。
「ズィー!貴様さては・・・本物の仮面ライダーか!!」
「気づいたところでもう遅いけどな!!」
「ならば、これでも食らえ!!」
ゼティマライダーの仮面の口の部分〜クラッシャーが開き、そこから真っ白な
泡が迸る。すんでのところでその攻撃をかわしたライダーあい。見ると、倉庫の
壁の泡がかかったあたりがドロドロと溶け出している。
「お前の得意技は溶解液か。カニみたいなやっちゃな・・・」
「再強化手術によって我々は各々が固有の能力を得たのだ。溶解液、放電攻撃、
爆雷、毒ガス攻撃。ゼティマライダーは仮面ライダーを超える、真の改造人間だ」
「ふん・・・仮面ライダーとバッタ人間は違うで?」
どうやらこのNo.11は溶解液の能力を新たに付加されたようである。しかし
戦いの先手を取ったのはライダーあいだ。敵が闇雲に溶解液を放ってくるのを
巧みに交わすと、あっさりと敵の間合いを殺して懐に入り込む。そしてそのまま
ライダーあいは脚払いを放ってゼティマライダーを転ばせると、両足をひっ掴み
ぐるぐるとジャイアントスイングの要領でブン回す。
「ライダーッ、スイーング!」
「ズィィィィィー!」
手を離すと同時に大きく投げ飛ばされたゼティマライダー。そこへ万一に備え
変身して待機していたライダーののが駆けつけ、華麗に中を舞うと空中に
投げ出されたゼティマライダーをタイミングよくキャッチし、そのまま反転させ
投げ落とす。
「ライダーッ返しっ!」
空中でこの荒業を受けたゼティマライダーは、断末魔の叫びを揚げる事すら出来ず
そのまま地面に激突。頭部を打ち砕かれてその動きを停止した。やがて漏れ出した
溶解液が全身を包むと、その亡骸はあっという間に消えてしまった。
「しゃあない、ののの分の手袋とブーツは自前で用意するか」
戦いを終え、二人は力強く頷く。しかし、残る敵はまだ11人いる。ダブルライダー
は敵の懐に切り込むべく、次なる秘策を繰り出す。
「偽サイクロンに無線機らしいものが付いてると思うから、ウチの言うた通りに
言うてや?」
そう言ってライダーあいは何事かをライダーののに耳打ちする。すべて聞き終えた
ところで、ライダーののは作戦の成功を確信して言った。
「・・・どんどん面白くなってきたれすね!」
日本支部基地に「組織に関する機密情報が漏洩した」との知らせが入ったのは
No.11が倒されてから3時間後のことだった。聞けばその機密情報が入った
ディスクには、世界各地に散らばる組織のすべての基地の所在地が詳細に記された
地図や、組織に協力する世界各国の要人リストなどが記録されているという。
この報告に組織内は騒然となった。これがFBIやZ対などの手に渡れば、組織の
存在が危うくなる。
「いつの間にそのようなものが・・・。ブラック将軍、至急ゼティマライダー
を派遣して奪取させるのだ」
「ご心配には及びません、大首領。No.6、No.11に命じてすぐにも
ディスクを奪還してご覧に入れましょう」
大首領の言葉に自信たっぷりの表情で答えるブラック将軍。すぐさま二人の
ゼティマライダーに奪還命令が下される。そしてそれからしばらく経った頃。
大幹部達が居並ぶ司令室に入電を告げる戦闘員が姿を見せた。彼の周りにいるのは
いずれもゼティマライダーによるディスク奪還作戦の成否に気をもんでいる者達
ばかりだ。そんな中、彼の告げる知らせは組織にとってまさに朗報であった。
「ゼティマライダーNo.6、No.11から入電です。ディスクの奪還に
成功し、これから帰還するとの事です」
どうやらゼティマライダーの迅速な行動によって、機密情報を網羅したディスク
は無事に奪還されたようだ。一同みな安堵の表情を浮かべる中、誇らしげに
ブラック将軍は言う。
「今回の作戦の最大の功労者は我がゼティマライダー達だ。小娘どもの絆を
壊しただけでなく、組織の存亡の危機すら救ったのだからな」
将軍の高笑いは司令室中に響かんばかりであった・・・だが、実はこの情報は
亜依と希美、ダブルライダーによる狂言なのだ。当然機密のディスクなるものも
存在しないのである。
偽の情報を流して組織を撹乱し軽挙妄動に走らせ、そこに生じた隙を突いて
敵を内部から攻撃しようというのである。はたして、この企みにゼティマは
まんまと引っかかった。現在出動中の二人のゼティマライダーが、実は
ダブルライダーであることなど露知らず、組織は二人をあっさりと受け入れる
態勢を整えてしまったのだ。あとは基地へ何事も無かったかのように帰還する
だけだ。まるで本物のゼティマライダーであるかのように。
・ゼティマライダーの配色
1号(マフラー:黄) 7号(マフラー:黄) 13号(マフラー:黄)
2号(マフラー:白) 8号(マフラー:白)
3号(マフラー:緑) 9号(マフラー:緑)
4号(マフラー:青) 10号(マフラー:青)
5号(マフラー:紫) 11号(マフラー:紫)
6号(マフラー:桃) 12号(マフラー:桃)
1号〜6号までは腕・脚に2本のラインが、7号から12号までは1本の
ラインが入る。13号は再び2本線。線の本数やマフラーの色の違いに能力
の違いは無い。
共通装備・技
・光線銃
・フィンガーミサイル
・つま先の仕込みナイフ
・ライダーキック
強化改造後に備わった固有の装備・技
・1号 特になし
・2号 毒ガス攻撃
・3号 爆雷攻撃
・4号 地割れを起こして敵を怯ませる(?。地雷誘発機能とも)
・5号 放電攻撃
・6号 溶解液
7〜13号も同様の能力を持つが、その能力配分についてはマフラーの色
のような特定の順番は無い。
※ 元ネタは子供雑誌等に掲載されたショッカーライダーに関する裏設定。
それにしても地雷誘発機能というのがいまいち意味不明です。
今日の更新はここまでです。次回更新は電力復旧の問題も絡んで,
正直ちょっと何時って言えないのが辛いところです。ただ、話そのもの
は書くことができますので、電力が戻るまでの間はこのお店からでも
更新したいと考えています。
>ナナシマンさん
いつもながらお疲れ様です。そして、「例のセリフ」を採用していただき
ありがとうございます!いよいよ偽ライダー編も佳境に入ったわけですね。
マイペースで頑張って下さい。では、次回に期待します!!
保全。
お待ちしてます。
438 :
やぐ:03/09/17 08:25 ID:I75kyZ0G
(〜^◇^)<やぐちしてます。
(丼`ー´)<今年は江戸開府400年…。
♪だ〜れがな〜んと言ってもウチは
ウ〜チは裕子や 中澤裕子やで〜…♪
(元ネタ:仮面ライダーアマゾンより「俺は立花藤兵ェだ」)
やっと電力が復旧しました。でもまだ続きを書いてないんです・・・すいません。
明日あさってのうちに続きを更新できればと思いますので、よろしくお願いいたします。
川σ_σ||<昔TVのCMでぇ「電気は海を渡ってやってきます」
なんてやっていましたがぁ、宮古島もそうなのでしょうかぁ?
とにかく今はぁ、無理をしない事ですぅ。
つなぎが必要ならぁ、いつでも言っていただいてけっこうですぅ。
ダブルライダーはゼティマサイクロンを自動操縦に切り替え、そのまま基地
への案内役に仕立て上げるとその後からサイクロンで追跡する形を取る。
3台のライダーマシンはそのまま市街地から郊外へ、そこからさらに峠道を
縫うように走り、やがて人里離れた山の中へと入っていく。そしてついに、
ダブルライダーは敵の基地からわずかの距離にまで迫っていた。
目を凝らせば巧妙にカモフラージュされた基地の施設と、周囲に蠢く不審な
人影が見て取れる。それほどの近距離まで近づくと、ダブルライダーは先導
していたゼティマサイクロンを停車させて林の中に隠し、あらかじめ用意して
おいた黄色の手袋とブーツを装着して何食わぬ顔で基地のゲートへと近づいて
いく。そこには木立に隠された鋼鉄の門がそそり立っていた。そして当然の
ことながら、その周囲は戦闘員が常に巡回しているのである。それでも二人は
今はゼティマライダーに身をやつしている。接近は容易なはずだ。ダブルライダー
はサイクロンのスピードを落としてゆっくりとゲートに近づく。すると、近くに
いた全身黒尽くめの戦闘員が二人を発見してそばまでやってきた。
「ズィー!ディスク奪還の件、成功おめでとうございます」
「皆様事のほかお喜びの様子。さぁ、中へどうぞ」
気をつけの姿勢と共に右手を高々と上げる、ナチスドイツの敬礼を思わせる、
ゼティマ式の敬礼と共に二人の戦闘員はゼティマライダーの戦果を祝福する。
「何のこれしき・・・大した事ではない」
「我々二人で十分な仕事だったのれす・・・のだ」
いつもの癖がうっかり出てしまったライダーののの、ぎこちない口調にも全く
気づく様子が無いまま、戦闘員達はあっさりと二人を基地内に通した。
たった今書けたところをちょっとだけ更新です。続きはまた明日・・・なのですが、
またも台風が発生してしまいました。このままのコースを辿れば再び直撃の恐れが
あって非常に今から気がかりではあります。
>ナナシマンさん
再度の台風襲来・・・大変でしょうけど、ムリせずマイペースで頑張って下さい。
久方ぶりにこっちでカキコ。
ナナシマンさん、いろいろと大変なようですね。
相手が自然ではさすがに分が悪いですが、お体にはお気をつけて。
話の方もいよいよラストバトル、ライダー入り乱れての決戦楽しみにしています。がんばってください。
えー、さて、遅まきながら劇場版ファイズ見まして、どうしても「馬」使ってみたくなりました。
他に使う予定の方がいらっしゃらなければ、一つ書いてみてもよろしいでしょうか?
キャスティングは……内緒です(w
うまくいけば、ナナシマンさんの次にでも載せようと思います。
また無茶な設定ではありますが……。
ではよろしくお願いします。
>ALL作家様
柳澤順子さんや小湊美和さんって、まだ出てませんでしたっけ?
もしまだなら、ちょっと今度の話に使ってみたいなぁ、なんて・・・。
そして二人はついに司令室と思われる広間へと通された。そこは不気味な
色とりどりの照明に照らされた暗室で、薄いベール越しに光る6色の光だけ
が煌々と輝いていた。二人が部屋の中央にやってきたその時、ちょうど正面に
位置する場所にかけられたベールに大きな鷲の影が映った。そして次の瞬間、
赤いランプが光り何者かの不気味な声が部屋に響く。
「ようこそダブルライダー。偽者の偽者は本物、とはなかなか考えたな。
我がゼティマは危うく君達の目論見にはまってしまうところだったぞ」
二人に語りかける謎の声、それは誰あろうゼティマ大首領その人であった。
ついに二人は諸悪の根源と対峙したのだ。
「ライダー2号・・・いや、ライダーあいと呼ぶべきか。あの後我々は
捜索したのだよ、君とNo.6が相打ちになった場所を。見つかった残骸は
残念ながら君ではなかった。だから諸君の先手を打てたのだ」
「ちっ・・・バレてたんか」
「もしかしたら、待ち伏せされているかも」
そう言って身構えつつ、周囲を見回すライダーのの。そしてライダーあい
は事前に装着してきた手袋を脱ぐや、こう言い放つ。
「それやったら、こんな趣味の悪いもん着ける理由はないな!!」
その言葉と共に、黄色い手袋を正面のベールに向かって投げつける。その瞬間
翻ったベールの向こうに見えたのは、巨大な鷲の彫像だった。目の前にある
それが首領の正体ではないことは明らかだ。
「本物は別のところにおるというわけか」
「残念だがその通りだ。ゼティマライダー!今度こそ仮面ライダーの息の根を
止めるのだ!!」
大首領の命令とともに、周囲を取り巻くベールに映し出される11体の影。
それは紛れも無く悪魔の刺客、ゼティマライダー部隊だった。
ベールが落とされるや、その向こうから姿を現す11人のゼティマライダー。
そして更に正面のベールの前に立ちはだかったのは二体の改造人間だ。
「小癪なまねをしおって、生かしては帰さんぞ、ジグー!!」
「今度こそ二人まとめてあの世へ行け!!クエーッ!!」
敵はゼティマライダーだけではない。ゲルダム団の怪人、ハエトリバチと
エイドクガーも戦列に加わり、合計13人の刺客が再びダブルライダーの
前に立ちふさがった。
「者ども、辻希美と加護亜依を血祭りにあげるのだ!!」
大首領の号令と共に襲い掛かる悪魔の軍団。ダブルライダーは手近にいた
戦闘員にいきなりの一撃を食らわしてKOすると、手にしていた槍を奪い
敵に向かって斬り込んで行く。
「ゼティマライダー、ヤツを殺せ!」
エイドクガーの命令に応じ、一斉に光線銃を抜くゼティマライダー。敵中
突破を試み、槍を振りかざすダブルライダーを待ち構え、光線銃の一斉
掃射を浴びせる。
「とうっ!!」
華麗に空中へと身を踊らせて殺人光線をかわすと、ダブルライダーは
そのままの勢いで手にした槍を振り下ろす。高空からの一撃に、避けきれ
なかったゼティマライダーは真っ二つにされてしまった。
「どうや!!」
一刀両断にされたゼティマライダーを見やり、ライダーあいが叫ぶ。
その直後、爆炎と共に消滅する2体のゼティマライダー。その様子に一瞬
たじろいだ他のゼティマライダー達だったが、再び体勢を立て直すと
じりじりとにじり寄っていく。
「ズィーッ!!」
奇声を上げて威嚇する9人のゼティマライダー。これをけん制しながら、
ダブルライダーは司令室を後にし、出口のほうへと駆け出していく。
「表で勝負れす、ついて来い!!」
ライダーののは敵をにらみつけて見得を切ると、そのまま外へと駆けていく。
そしてその後を追うゼティマライダー達。いよいよ決戦のときだ。
「ありもしない機密情報ディスクまででっち上げて基地に侵入を試みるとは
恐ろしい小娘どもよ・・・」
所変わって、本物の日本支部基地。司令部にて一部始終を映し出していたモニター
を見つめながらつぶやくブラック将軍。
実はダブルライダーが潜入したのはすでに放棄が決定していた古い基地であった。
ディスク奪還の無線連絡が基地に入ったその直後、密かに港周辺を捜索していた
別働隊から驚くべき知らせが舞い込んでいたのだ。
「ライダーが生きていると?!おのれぇぇ・・・」
この知らせを聞いたとき、将軍は顔を引きつらせ歯噛みした。完璧だと思って
いた作戦の裏をつかれ、年端も行かぬ小娘にまんまと騙されるところだったのだ。
「ブラック将軍、この責任をどう取ってくれるのだ」
そこへ悪魔元帥が追い討ちをかけるように睨み付ける。その言葉に肩を震わせる
ブラック将軍。と、その時である。
「そう焦るでない、悪魔元帥。基地のひとつくらいくれてやればいい」
赤いランプの怪しい輝きと共に、聞こえてきたのは大首領の声であった。
「ブラック将軍、ゼティマサイクロンに誘導電波を発するのだ。そしてG10
エリアにある旧前線基地へと誘い込むがいい。目にもの見せてやるがいい」
かくしてダブルライダーは、大首領の思惑通りに偽の日本支部基地へと導かれて
きたと言うわけである。だが、ダブルライダーは悪の陰謀などものともせず、
取り囲む悪の改造人間に対して一歩も引かずに迎え撃つ。
>>454 >目にもの見せてやるがいい
目にもの見せてやるのだ
に訂正します。
台風は結局本島の方へと逸れたようですが、14号の被害を知る者としては
やはり気になります。ただ強さとしては前のほどではないようですね。
>>名無しハンペンさん
いいなぁ555劇場版・・・。こちらと言えば台風の影響でケーブルテレビが
見れなくなり、テレビ版すらチェックできない状態です。それと「馬」登場ですか。
そのうち蛇とか鶴とかも出てきそうですね。後を続けてくださるのも大歓迎
ですので楽しみにしてます。
>>名無し天狗さん
そういえば二人はまだ登場してませんね。僕もすっかり忘れてました(w。
個人的にはぜひ使っていただきたいところです。
明日は泊まりの仕事が入ってまして、もしかしたら更新できないかもしれません。
その場合でも日曜日、ないし月曜日には完結できる予定です。いましばらく
おつきあいください。
>ナナシマンさん
あまり言うと嫌みになっちゃいそうですが(w 劇場版面白かったです。
思わず、ゼティマに占領された未来を舞台にしたパラレル話を書きたくなるほどでした。
「馬」のほうですが、お言葉に甘えて書かせてもらいます。
そちらも続きの方がんばってください。
>名無し天狗さん
小湊さんはT&C最後のひとりですね。是非活躍させてあげてください。
>名無しハンペンさん
ありがとうございます。もしかしたら「嵐」の方に登場させるかも知れません。
//・_・)<555劇場版で木場さん(ホースオルフェノク)は重要なポジションです
川o・-・)<↑は特板で見つけた鶴オルフェノクの中の人のAAです
本屋でこの人の写真集の隣に、メロンの柴田さんのビキニ写真集が
置いてありました。ただそれだけです。
>ALL作家様
くどいようで申し訳ありませんが、嵐の愛馬「ハヤブサオー」には
実はある仕掛けがあります。それは今後の執筆にて・・・。
吹きすさぶ風が砂塵を巻き上げるなか、11人のゼティマライダーが次々と
ダブルライダーに襲いかかる。戦闘能力はほとんど同等、しかもそこに新たな
武器を手に入れたのだから始末に終えない。やがてゼティマライダーは、高台へと
ダブルライダーを追い詰める。
「ライダー、覚悟しろ!!」
そう言うや11人は一斉に両腕を真っ直ぐ前方に突き出して構える。敵の次なる
攻撃に備えて身構えるダブルライダー。そしてその直後、11人のゼティマライダー
の指先からロケット弾が火を噴く。轟く轟音と共にダブルライダーの姿は見る間に
白煙に消えていく。
「撃て撃て、撃ち殺せ!!」
「髪の毛一本も残らぬほどにな!」
ハエトリバチとエイドクガー、二大怪人も気勢を上げる。次々と、まるで
吸い込まれるかのように命中していくロケット弾。この集中砲火にさらされては、
さしものダブルライダーも無事ではすむまい、誰もがそう思ったその時である。
「とーっ!!」
掛け声も勇ましく、ダブルライダーが高台からひとっ飛びで敵の一群へと身を
躍らせる。二人は高台の陰に隠れ、ゼティマライダーの集中砲火を避けることが
できたのだ。
敵の真っ只中へと飛び込んだダブルライダーは、手近な相手から次々とパンチ
キックでなぎ倒す。2対1、3対1もなんのその、つま先から飛び出した仕掛け
ナイフも華麗に捌き、逆にライダーパンチをお見舞いする。
「ぐっ・・・強いっ!!」
「これが本物のライダーの力だと言うのか?!」
ダブルライダーの猛攻撃の前に、次々となぎ倒されるゼティマライダー。いかに
基本的な能力は互角であろうとも、戦いの経験においてダブルライダーにかなう
はずはない。まして数を頼みに戦うなどというのであれば、最初から勝負は
見えていたのかもしれない。
「ジグー!何をしている、戦え!!」
檄を飛ばす怪人たちの声に、ゼティマライダー達は再びダブルライダーに戦いを
挑んでいく。
「のの、いくで!」
「『ライダー車輪』をお見舞いするのれす!」
互いに言葉を交わすダブルライダー。その直後、二人は一斉に襲い掛かる敵に
あえて背を向け、ものすごいスピードで走り出した。そんな二人を逃がすまいと、
ゼティマライダー達も負けじと駆け出していく。
そもそも二人が習得した「ライダー車輪」とはいかなる技だったのか。また
裕子はなぜ早朝から二人を走り回らせたのか。その答えが、いまここに示される。
ダブルライダーは走る。とにかく走る。円を描くように全力で疾走し、その
中心は二人のスピードによって風を巻く。ゼティマライダーもまた、二人
を追って走る。冷静に考えれば、わざわざダブルライダーに付き合って走り回る
必要はどこにも無いはずなのだが、しかしそんな当たり前のことにすら気が
付かないほど、ゼティマライダーの意識はダブルライダーに追いつくことに
向けられていた。そしていつしか、その行為は自らの限界を超え、正常に働く
べき感覚を狂わせてしまうのだ。
「ズィーッ!」
「ズィーッ!!」
敵はまだ気づいていない。自分の肉体が制御の限界を超え、判断力と自己の制御を
狂わせていることを。それこそが、ダブルライダーに授けられたこの技の要訣で
あった。そして、ライダー車輪は完成の時を迎える。
そもそも二人が習得した「ライダー車輪」とはいかなる技だったのか。また
裕子はなぜ早朝から二人を走り回らせたのか。その答えが、いまここに示される。
ダブルライダーは走る。とにかく走る。円を描くように全力で疾走し、その
中心は二人のスピードによって風を巻く。ゼティマライダーもまた、二人
を追って走る。冷静に考えれば、わざわざダブルライダーに付き合って走り回る
必要はどこにも無いはずなのだが、しかしそんな当たり前のことにすら気が
付かないほど、ゼティマライダーの意識はダブルライダーに追いつくことに
向けられていた。そしていつしか、その行為は自らの限界を超え、正常に働く
べき感覚を狂わせてしまうのだ。
「ズィーッ!」
「ズィーッ!!」
敵はまだ気づいていない。自分の肉体が制御の限界を超え、判断力と自己の制御を
狂わせていることを。それこそが、ダブルライダーに授けられたこの技の要訣で
あった。そして、ライダー車輪は完成の時を迎える。
「いくで!!」
「おう!」
ダブルライダーは呼吸を合わせ、二人同時に大きくジャンプして空中へと身を翻す。
そしてその直後、ゼティマライダー達もまた二人を追って空中高く舞い上がった。
だが、11人がその跳躍の頂点に到ろうとしていたその時、すでに二人の姿は
無かった。
ジャンプの勢いはもはや個々の力では抑えることが出来ない。自力で制止するには
勢いが付きすぎてしまったのだ。そして、次の瞬間。11人のゼティマライダーは
空中で同士討ちを演じてしまい、大爆発して消滅してしまった。一方のダブルライダー
は地上に着地すると、ゆっくり立ち上がって空に広がった白煙を見やる。二人を
脅かした刺客、ゼティマライダーは二人の絆と本物だけが持つ正義の力によって
倒されたのだ。
今日の分は以上です。電波の状況が悪くて二重カキコもあり、読みづらくて
すいません。ようやく明日でラストになります。
>>名無しハンペンさん
その勢いで書いてみませんか?とか言ってみたり(w。こちらは今日もケーブル
テレビが復旧していないのでテレビ版がチェックできません。(涙
>>川o・-・) さん
どっちも置いてねー!(wというか、知ってる本屋は2件あるんですけど、そのうち
1件は今度の台風被害で現在休業中です。
>>名無し天狗さん
そういや嵐の愛馬ってそんな名前でしたよね。思いがけず馬話が続いた形ですが
楽しみです。
>ナナシマンさん
いつもながらお疲れ様です。爽快なラストを期待してますので
マイペースで頑張って下さい(←他に言うコトないのか、天狗!)。
・・・あと、ここまで来たあとでこんなコト言うのもあれなんですが、
ゼティマライダーのマフラーって全焼しちゃったんでしょうか?
もし焼け残った物があれば、「紫」のを一本、こちらで使いたい(遥か先の
話になりますが)もので・・・。
悪の刺客ゼティマライダーを打ち破ったダブルライダー。そして、この戦いの
様子を見守る二つの影があった。爆風を避けて再び物陰に身を潜めたのは、一人の
女とその連れの少女。
「やった、やりましたよ!」
「うん。これほど完璧に決まるとは思ってなかった・・・やっぱり大した子たちやわ、
あの子らは」
二つの影、それは麻琴と裕子であった。二人の絆が試されるこの戦いの結末を
見届けたいと言い出した裕子を乗せ、麻琴は愛機ヘルダイバーを駆り二人の後を
追っていたのだ。戦いに加勢したいと申し出た麻琴を制し、裕子と麻琴は二人の
戦いを見守っていたのである。
「後はあそこにおる派手な奴ら二人だけか」
物陰から身を乗り出した裕子の目に映るのは、ゲルダム団の放った二人の改造人間
の姿だった。ハエトリバチとエイドクガー、にじり寄る二大怪人の戦いを受けて立つ
のはダブルライダーだ。
「ゼティマ!偽者は全部死んだのれす!!」
「偽者は所詮偽者、本物の敵やない!!」
見得を切って二大怪人に真っ向勝負のダブルライダー。いよいよ決着の時だ。
ちょっと入れ忘れた分を入れておきます。
>>名無し天狗さん
極端な話、1人くらい生き残っていたとしてもそれはそれで問題ないと
思いますよ?かえってその方が面白いかもしれませんし。マフラー一枚
ではありますが、どのような風に料理してくださるか楽しみです。
>ナナシマンさん
マフラーの件、了解です。まだ手の内は明かせませんが、
重要な意味を持つ物にしたいと思います。
(;´D`)<髪の毛一本も残らずに・・・それは禁句なのれす・・・
( `_´)<と、まあそれは置いといて、そろそろ放置の
2人組みの話も考えないとイカンですな。
もっともまだ次の方もいらっしゃるみたいだし
ゆっくりと考えましょう。
( `_´)<最近、色々やりすぎな気もしますが何とかなるなる。
最近ネタスレ化しつつあるやつと
今の所本腰をいれているやつ。
やっぱり無理かなぁ・・・
こんな事言ってもナナシマンさんしか解らなかったりして・・・
>ナナシマンさん
マフラーですが、とりあえず二人が「手に入れる」までを現在
インターミッションとして考案中です。
>ALL作家様
たった今(PM16:03現在)、急に泊まりの用事が入ったので
(今夕〜明朝にかけて)、今夜は出張先のPCからお目に掛かることになるかもしれません。
その旨、予めご了承頂きたくお願いします。
>>473 いや、そんな事一々報告しないでいいから(w 気をつけて行っといで。
ダブルライダーは二人の怪人のもとにすばやく駆け寄ると、戦いの
イニシアチブを取るべく積極果敢に攻撃を繰り出す。左右のライダーパンチ
が怪人の顔に胸元に炸裂し、その度に敵の身体はぐらりと揺れる。
「とうっ!とうっ!!」
唸りを上げて炸裂する正義の拳が、悪の改造人間をじりじりと後退させる。
だが、敵も黙って攻め立てられるわけではない。怪人エイドクガーはエイの
尻尾に見立てた腕の鋭い棘を振りかざしてライダーののに斬ってかかり、
一方のハエトリバチも自慢の溶解液をライダーあいに浴びせかけようと
右に左に激しく噴射する。
「ちょこまかとうるさいやつめ!俺の溶解液で溶けてしまえ、ジグー!」
当たるを幸いとばかりに闇雲に放たれる飛び道具に、ライダーあいもうかつに
手が出せない状況だ。
(この溶解液をかいくぐって、一気に勝負にでるしかない・・・)
さすがにこの攻撃をまともに浴びれば、いくら仮面ライダーでもひとたまりも
無い。しかしそこは百戦錬磨のライダーあい。小柄な身体を生かして敵の
懐にすばやく飛び込むと、そのまま相手と組み合って空中高くジャンプする。
「ライダーッニーブロック!!」
「グギャアアアア!!」
怪人の腹部に走る強烈な痛み。内部のメカを完全に破壊する一撃が敵を捉える。
空中上昇と共に蓄えた風力エネルギーを膝にこめて、相手のどてっ腹に叩き込む
必殺技、「ライダーニーブロック」がハエトリバチに炸裂したのだ。だが、
ライダーあいは攻撃の手を緩めない。空中で身を翻すや、相手の首根っこを両足で
挟み込み、一気に空中から投げ落とす荒業が炸裂する。
「ライダーッ!ヘッドクラッシャー!」
脱出不能の空中投げがハエトリバチを空中から一気に地上へと叩き落す。その
直後、敵は立ち上がることさえも出来ず大爆発と共に消滅した。
ライダーあいは返す刀で今度はエイドクガーの背後に迫ると、強引に自分の
方を向かせて鉄拳を見舞う。ライダーあいのパンチの連打によって、怪人は
倒れることさえ出来ず一方的に攻め立てられる有様だ。
「いくれすよ!!」
「おう!」
ライダーののの声に応じ、今度はダブルライダーが共に怪人の正面に陣取る
形で並ぶと、再びパンチの雨あられ。二人の絆を脅かした卑劣の敵に鉄拳制裁だ。
「ライダー、ダブルパーンチ!!」
エイドクガーの身体に満遍なく打ち込まれるダブルライダーのパンチ。もはや
ここまで攻め込まれては反撃する力など残っているはずが無い。完全にグロッキー
のエイドクガー、もはや立っているのもやっとの状態である。そして、ついに
決着の一撃が放たれる。ダブルライダーは互いに顔を見合わせて小さく頷くと、
掛け声高く空中へと大跳躍する。
「とーうっ!!」
空中で華麗に身を翻して勢いを増し、そこから放たれる矢のような鋭い一撃。
地上の敵にもはやこの一撃を避けるすべは無い。
「ライダーッ!ダブルッキィーック!!」
友情の証、ダブルライダー最強の必殺技が怪人を貫くと、エイドクガーは
天にも届かんばかりの大爆炎とともに木っ端微塵に砕け散った。亜依と希美、
二人の絆を翻弄したゼティマの刺客はここにすべて打ち倒されたのだ。
「ライダー!ホンマにようやった!!」
戦いを終えた二人の耳に聞こえてきたのは、聞き覚えのある女性の声。
戦いの一部始終を見守っていた、裕子と麻琴が二人のもとへと駆けつけて
きたのだ。
「二人の戦い、中澤さんとずっと見てました。中澤さんが『手を出すな、
これは二人の戦いや』って言うから、ずっとドキドキしてました」
麻琴はそう言ってダブルライダーと固い握手を交わす。ダブルライダーも
それに答え、裕子もその輪の中に加わった。そして、最も固い絆で結ばれた
二人が、最後に最も固い握手を交わした。
・・・それから数日後の中澤家。
「あーっ!私のゼリードリンクが無い!!」
休日の朝のひと時を引き裂くような甲高い声。その声の主はあさ美であった。
パトロールを終えてから飲もうと取っておいた、ゼリードリンクが冷蔵庫から
消えていたのだ。しかし、叫び声は彼女だけにとどまらなかった。
「ああああっ!!マコのカボチャのタルトが!!」
斉藤瞳からおすそ分けにもらった、カボチャのタルト。それは麻琴が10時の
おやつにみんなで食べようと冷蔵庫にしまっていた物だった。
突如行方をくらました食べ物、そのありかを探してキッチンやリビングに
視線を走らせるあさ美と麻琴。と、その時二人はなぜか背中を向けたまま身を
縮めている二人の少女の姿を捕らえた。
「辻さん、加護さん。私のゼリードリンクとぉ」
「カボチャのタルト知りませんか?」
そんな二人の言葉に、希美が振り向いて一言こう答える。
「それはゼティマライダーの仕業なのれす」
だが、そんな希美の口元にはタルト生地のかけらがばっちりくっついている。
見れば服の上にも砕けた生地がこぼれているのがわかる。
「そうそう、多分ゼティマライダーやで」
そして、振り返った亜依の手に握られていたのは、吸い尽くされて丸められた
ゼリードリンクのパックだった。
「二人とも・・・何言ってるんですかぁぁっ!!!」
せっかく取っておいた食べ物を取られた二人はカンカンだ。犯人は間違いなく
亜依と希美。しかし当の二人も捕まるまいと一目散に駆け出す。そんな亜依と
希美の両手がしっかりと固く握られていることは、かわいいつまみ食い犯同士
の秘密だ。
世界征服をたくらむ悪の秘密結社、ゼティマが仕掛けた卑劣な罠。友情の
危機を乗り越えて、さらに固い絆で結ばれた亜依と希美。ダブルライダーの
行く手をいかなる悪が阻もうとも、二人がつないだ手は決して離れることは
ないだろう。世界の平和が訪れ、戦いの終わりが訪れたとしても。
第42話 「永遠の絆」 終
台風とかなんとかいろいろありましたが、ようやく完結できました。長い話になって
しまいましたが、おつきあいいただきありがとうございました。次はいつになるかは
判りませんが、まとまった話が書け次第お目にかかれればと思います。
>ナナシマンさん
何かと大変でしたでしょうが、ホント〜〜にお疲れ様でした!
またの機会も楽しみにしてますので、まずはゆっくりお休み下さい。
ありがとうございました!!
>>名無し天狗さん
出張先からありがとうございます。無事に到着されたようで何よりです。これから
しばらくの間はまた一読者としてこのスレを楽しませていただければと思ってます。
ここでちょっと訂正です。
>>461以降、ゼティマライダーの数を間違えてます。
厳密には秘密基地で二人倒されたので9人なんですよね。すいません。
>ナナシマンさん
ドンマイっス!
>ALL作家様
昼ちょっと過ぎに帰って来ました。改めてヨロシクお願いします!
490 :
:03/09/23 21:10 ID:dcYhoxxs
>490さん
ゴメン、でもヨロシク。
492 :
悪の系譜:03/09/23 22:44 ID:2xuYNa61
センチピードオルフェノク(名称は本編未登場)
ファイズギアを狙う謎の男が変身するムカデ種のオルフェノク。一時はれいな
からファイズギアを奪い取ってファイズに変身を遂げ危機に陥れたが、駆けつけた
キカイダー01・まいの「ブラストエンド」による衝撃で変身を強制解除される。再び
ギアを取り戻して変身を遂げたファイズの必殺技「クリムゾン・スマッシュ」を辛うじて
シャドウマンを盾にしてかわし、敗走する。
ガニコウモルとワシカマギリ
アフリカからやってきた新幹部「ブラック将軍」とともにやってきた怪人二人組。
ガニコウモルはカニとコウモリ、ワシカマギリはワシとカマキリの合成改造人間で
ある。ゲルダム団所属。
ハエトリバチ
ゼティマライダーとともに亜依と希美の絆を引き裂こうとたくらんだ、ゲルダム団
の合成改造人間。蠅取り草とハチの合成怪人であり、顔面の蠅取り草からは
あらゆる物を溶かす溶解液を噴出する。また、腕には毒針が備わっている。最後は
ライダーあいのライダーニーブロックからライダーヘッドシザースの連携攻撃に
よって敗れ去った。
ナナシマンさんお疲れ様でした。
展開の早いこの時期にファイズ本編が見られないのは痛いですね。
ちなみにパラレル番外編ですが、
遠くない未来、どこかの国。
ゼティマによって支配された世界。
人類解放戦線で戦う中澤たち。そして変身する力を失った加護。
彼女たちは待っていた。
自分たちを救ってくれる存在。
救世主──仮面ライダーを。
こんな感じで。新垣が敵についていたり、キカイダー組がいなくなってたり、
藤本が○○で○○だったりしてます。
さすがに書く余裕はありませんのでお蔵入りですが。
ということで、他の作者の皆様もどんどん新作書いてくださいね。
で、前置きが長くなりましたが更新です。
予告通り『馬』のお話です。2、3日で終わると思いますので、しばしおつき合いください。
ぴくりと指先が動いた。
わずかな、ほんのわずかな動き。
しかし、それは止まっていた時間を溶かす、きっかけになる動き。
そして、確かな生の証。
周囲は見る間に慌ただしくなった。
白衣を着た人々が行き交い、様々な器具が運ばれる。
聞き慣れない専門用語が、殺風景な部屋に木霊した。
ゆっくりとまぶたが持ち上がった。
久しぶり──2年ぶりに味わう光の刺激に、少女は小さく呻きまた目を閉じる。
周囲の喧噪がゆっくりと引いていった。
カツカツと、何かが近づいてくる音がする。
足音は、少女の横たわるベッドのそばで止まった。
「おはよう。長い長い眠りから、あなたはようやく目を覚ましたのよ」
低く囁く女の声が聞こえた。
光に少しづつ目を慣らしながら、少女は再び目を開こうとする。
焦点の定まらない視界。その中にぼんやりと傍らに立つ女の影が見える。
再びあの声が、少女の耳に届いた。
「グッドモーニング。そしてようこそ、新しい世界へ」
仮面ライダーのの
── 第43話「死と再生」
少女は大きく目を開いた。
小さなビジネスホテルの一室が、カーテンを通した太陽の光に浮かび上がる。
安っぽいベッドの上に起きあがり、少女はぶるぶると頭を振った。
ショートカットの髪が顔の横で揺れる。
定まる場所を待たない日々。そんな生活にももう慣れた。
幸い、お金には不自由していない。
もともと年齢に似合わないだけの蓄えはあったし、
昔から使っていたクレジットカードもそのまま使えている。
普通に生活する分には、たまに簡単なバイトをする程度で事足りた。
もっとも、バイトをしていたのはお金のためだけではなく、
無為な毎日を過ごすのに嫌気がさしたせいもあったのだが。
ぼうっとする頭を抱え、洗面所に向かう。
冷たい水で顔を洗うと、ようやく意識がはっきりしてきた。
タオルで水分を拭き取り、ふうと息をつく。
鏡の中の自分と目があった。
生まれたときから、ずっと見知った顔。
もともとどちらかといえば童顔だった。幼いときから顔はそんなに変わっていない。
そう、何も変わっていない。そう見える。
あの事件以来、ずっと眠り続けていた2年という歳月を経ても。
だから信じられない。
自分が、一度死んでしまったなどということは。
ホテルをチェックアウトして外に出た。
季節の変わり目の冷たい風が吹き付ける。
その風に逆らうように、少女は黙々と歩き続けた。
小柄な体をピンと反らせ、なんの目的も無く、ただまっすぐに前を向いて。
曲がり角を曲がろうとしたとき、少女の目の前に青いスポーツカーが止まった。
ウィーンとモーターの音がして、スモークの張られた窓が下がる。
現われた顔を見て、少女は一つため息をついた。
「あなたですか」
「あらあら、久しぶりに会ったのに相変わらずつれないタ・イ・ド。
う〜ん、もう、お姉さん、困っちゃぁ〜う」
車の中から現われたのは一人の女。
何となく、人を落ち着かない気持ちにさせる、ふざけた口調。
ふざけているのは口調だけではない。
女の着ているものは、まるで何かのコスプレのような格好だった。
光沢のある青と黒でデザインされた、近未来的なミニドレス。
その胸に付けられているのは、金属のプレートで作られたロゴ。
それは目の前のビルにある、ひときわ目立つ大きな看板に描かれたのと同じもの。
ここ数年でめざましい成長を見せ、一躍大企業となった会社。
『スマートブレイン』社のロゴだった。
「それにしても、あなたは本当にヒドい子だわ。
ずっと眠ったままだったあなたを世話してたのは、わたし達なのに、
ようやく目を覚ましたと思ったら、すぐ何も言わずに勝手に飛び出しちゃうなんて。
お姉さんとっても悲しいな。ぐっすん」
スマートブレインのスポークスウーマン──スマートレディは、
指先で目の下をこする泣き真似まで加えてそう言った。
「悪いけど、あなた達はなんだか信用できない。
だからもう、あたしのことは放っておいて」
冷たくそう言い放って立ち去ろうとする少女。
まだ若いと思われるのに、少女が身に纏うどこか老成した雰囲気。
それは生まれ持ったものか、あるいは彼女が経験した想像もつかない出来事のためか。
「そんなに慌てないでちょうだい。
今日はあなたにビッグなプレゼントを持ってきたんですから」
「プレゼント?」
「そう、とぉってもすてきなプレゼントよ」
「残念ながら、興味ないわ」
再び歩き出す少女の背中に、スマートレディはまた声をかけた。
「本当に良いプレゼントなのよ。きっと気に入ってくれると思うわ。
それに知りたいでしょ? ……自分の体のこと」
ぴたりと少女の足が止まった。
それを見て気を良くしたのか、スマートレディは思わせぶりに言葉を続ける。
「教えてあげるわ。
あなたの身に何が起こったのか。
あなたは……何に変わってしまったのか。
全部教えてあげる」
少女は黙って踵を返した。
つかつかと車に歩み寄り、無言のまま助手席に乗り込む。
バタンとドアが閉まると、スマートレディの頬に妖しい笑みが浮かんだ。
「……良い子ね。
それじゃ出発しましょう。
あなたの、新しい世界へ」
低いエンジン音をあげて車が走り出す。
その先がどこへ向かっているのか、そして自分の運命がどう変わっていくのか。
少女にはまだ分かるはずも無かった。
豪奢な部屋。
吹き抜けの広いリビングはフローリング。
中央には革張りの柔らかそうなソファー。
メゾネットタイプの二階には、ベッドまで置いてある。
スマートレディは、部屋の真ん中で両手を広げ、くるりと回った。
「これがあなたへのプレゼント。
今日からここに住んで良いのよ」
「ここに?」
「そう、すてきな部屋でしょ。
この部屋だけじゃないわ。
オルフェノクとして生きれば、あなたには素晴らしい未来が待っています。
手に入らないものは何も無い。望めば何でもかなってしまう、そんな世界。
あぁ〜ん、ス・テ・キ。さあ、私と一緒に──」
「お断りします」
少女はきっぱりとした口調でそう言った。
「さっきも言ったけど、あたしはあなた達を信用してない。
だからこんなもの受け取るわけにはいかないわ」
「ウフフ、そう言うと思ったわ。
でもぉ、心配しないでいいんですよ。これはわたしからあなたへの個人的なプレゼント。
だから、仲間になるならないは関係ないの。
自由に使ってかまわないのよ」
501 :
悪の系譜:03/09/23 22:52 ID:2xuYNa61
エイドクガー
エイと毒蛾の合成改造人間。ゼティマライダーを指揮して希美を襲い、亜依に
対する疑念を植えつける作戦を担当した。催眠ガスと自己催眠能力が特技の
ようだが本編では使用しなかった。最後はライダーダブルキックに倒れる。
ゼティマライダー
選抜された女戦闘員に亜依と希美の遺伝子を掛け合わせて作られた改造人間
で、全部で13人存在し、そのすべてが二人の遺伝子を持つため亜依と希美どちらにも
なりすますことが出来る。弱点はゲルダム団の戦闘員同様に3時間毎にゲルパー液を
服用しないと死んでしまうことだが、これは後の強化改造によって克服された。
つま先の仕込みナイフや光線銃、はたまたフィンガーロケットや溶解液をも繰り出した
が、最後はダブルライダーの合体技「ライダー車輪」によって全滅した。
502 :
悪の系譜:03/09/23 22:52 ID:2xuYNa61
>>ハンペン氏
割り込み失礼!まさかリアルタイムで更新が入るとは・・・。
スマートレディの笑顔を、少女は訝しげに見つめた。
「まあいいわ。それよりも早く答えて。
わたしに何が起こったのか。
オルフェノクとはいったい何なのか」
「あなたはオルフェノクとして覚醒しました。
死を経験することで」
「死を……」
「そう、あなたは一度命を落としたの。あの事件の時にね。
それからあなたは眠り続けた。ずっと、ずぅっと。
そして蘇ったのです。オルフェノクとして」
「……いったいオルフェノクって何なの?
どうしてあたしが……」
「オルフェノクとは人間を超えた存在。
素晴らしい力を持った新しい生命。
新しい進化の形。
でもぉ、残念ながらあなたはまだ、オルフェノクとして完全に適応できていませぇん。
えーん、かわいそう。
早く、立派なオルフェノクになってくださいね。他の人たちのように」
「他の人? あたしの他にもこんな力を持った人が?」
「もちろん、皆さん自分の力を楽しんでいますよ」
いろんな話を聞いて混乱したのか、少女は軽くうつむいて目を伏せた。
「それで、あなた達はいったい何なの?
あたしに何をさせようとしてるの?」
「それは俺が説明しよう」
声とともに部屋にもう一人の人物が入ってきた。
三十代半ばに見える、黒のスーツをぴしりと着こなした男。
「誰?」
「こちらは戸田さん。あなたの教育係よ」
「教育係?」
「そう、あなたを立派なオルフェノクにするためのね」
「それじゃ、この人も……。
待って。あたしは、あなた達に協力するって決めた訳じゃない」
「あなたはもう、普通の生活を送ることはできない。
選択肢は他に無いのよ」
「でも……それでも……」
「とにかく、話ぐらいは聞いてちょうだい。
結論を出すのはそれからで良いでしょう?
戸田さん、後はお任せしますね」
スマートレディは戸田と呼ばれた男の肩に手を置く。
その手を振り払うように前に出た男は、少女に声をかけた。
「外に……出ようか」
>>501-502 お気になさらず
今日はここまで。
少女の正体が分かっても、内緒にしといてくださいね。
>名無しハンペンさん
意外な角度から始まりましたね・・・スマートブレイン陣営はオリジナルと
同一人物であると解釈して差し支えありませんでしょうか?
あと、実は私は555未見なもので・・・でも面白そうですね、頑張って下さい。
少女・・・誰でしょうね?「予約」が多いから・・・。
>>名無しハンペンさん
早速始まりましたね。のっけからかなり面白そうな展開ですが、まずは
スマレキター!というところで(w。とりあえず「馬」の正体云々は正直検討も
付かない感じです・・・だから考えないで次の展開を楽しみに待ってます。
ナナシマンさん、乙カレー
感想から言っちゃうと、「パワーUP」うん、私の好きな感じのお話ですね。
長くなるのは、それだけアイディアがある訳で、それをハショルと
これがまた気の抜けた感じになる訳で・・・だから全然OKでしょう。
名無しハンペンさん新作乙です。
今後の展開が楽しみであります。
>他の作者の皆様もどんどん新作書いてくださいね。
さてどうしようか?名無し天狗さんの後にでも書けると良いのですが・・・
>燃えろ!兄弟拳さん
ん゛ん〜〜〜・・・私の方も状況次第でどうなるやら・・・。
うわ、今読み返したら一箇所レスが抜けてた。
>>499と
>>500の間にこれが入ります。ごめんなさい。
車の中には静寂が流れていた。
どちらも何も話そうとしない。
ただ低いエンジン音だけが、少女の耳に響いていた。
結局、沈黙に耐えきれなかったのは少女の方だった。
今までに貯めていたものを吐き出すように、勢い込んで相手に詰め寄る。
「教えて。
あたしに何が起こったのか。
あの時、一体何があったのか。
あたしはあの時……確かに一度……」
「慌てないで。
ちゃんと目的地に着いたら教えてあげる。
だから焦っちゃダメよ」
「目的地?」
「そう。言ったでしょ、プレゼントをあげるって。
でも……そうね、一つだけ教えてあげる。
あの時、あなたは一度死んだの。
そして蘇った。──オルフェノクとして」
「オル……フェノク?」
「着いたわ。ここよ」
車はあるマンションの前でウインカーを出した。
そのまま地下の駐車場へと降りていく。
変な時間ですが書きあがったんで更新します。
正体、簡単にばれちゃうんじゃないかとヒヤヒヤしてましたが、
意外とばれてないみたいでほっとしました。
なお、敵側は基本的にオリジナルキャストとお考えください。
ただし、スマレに関しては「石川」を当てはめても可です。
では続きです。ラストまで一気に。
「お前、オリジナルか」
マンションを出て通りを歩き始めてすぐに、戸田は少女に尋ねた。
「オリジナル?」
「オリジナルは死を経験した後、オルフェノクとして覚醒する。
誰の手も借りずにな。
だが、その数はとても少ない」
男はまっすぐ前を向いたまま、低い声で続けた。
住宅街のせいか、平日の昼間にも関わらず人通りはない。
「このままじゃ、俺たちオルフェノクは生き残ることができない。
だから俺たちは仲間を増やす必要があるのさ」
「どういう……こと?」
謎めいた言葉に、少女は小首をかしげる。
戸田は足を止め、少女の顔をまっすぐに見つめた。
「いいか、一つだけ言っておく。
俺たちはもう、普通に生きるコトなんてできない。
なぜなら、俺たちはもう……人間じゃないんだからな」
「あたしは! あたしは……人間よ……。
例えどんな体になったとしても」
少女の言葉に男は目を細めた。
そのまま何も言わずにまた歩き始める。
男の足は、ちょうど目についたコンビニへと向かった。
その後について少女も店内に入る。
店内には数人の客がいた。
青と白のストライプの制服を着た女店員が、
気のない声で「いらっしゃいませ」と声をかけてくる。
レジの方へ向かいながら、男は口を開いた。
「俺たちがやることは一つだけだ」
男の口調に何を感じたのか、少女の顔に緊張感が漂う。
「俺たちは仲間を増やすことができる。
人間をオルフェノクにすることができるんだ。
だが、すべての人間がオルフェノクのエネルギーに適応できるわけではない。
ほとんどのやつが一時的に蘇るが、すぐにくたばる」
「え? それってまさか……」
「そうだ。仲間を増やすこと、それは人間を殺すってことだ」
言葉とともに、男の顔に不思議な模様が浮かび上がった。
その体が一瞬にして別のものへと変わる。
イカを模した尖った頭部。ぬめぬめとした表面。
スクィッドオルフェノクは、どこからともなくとりだした棍棒を店員に向けた。
「な、なんや──」
叫びかけた店員の口に、棍棒から発射された墨のようなものがへばりついた。
墨は口から体の中に進入し、心臓にたどり着く。
店員の心臓は、青い炎をあげて消滅した。
どさりと店員の体が倒れた。
異変に気が付いたのか、店の中に悲鳴が上がる。
「やめて!!」
少女の叫びを無視し、スクィッドオルフェノクは残る客にも墨を飛ばした。
心臓のところで青い炎をあげ、ばたばたとその場にいた全員が床に倒れる。
「なんで……なんでこんなこと……」
『言っただろう。仲間を増やすためだ』
棚に映った怪物の影に、男の体が浮かび上がる。
声はそこから聞こえてきた。
言い返そうとした少女は、後ろから聞こえてきたうめき声に振りかえった。
少女の目に、倒れていた客の一人が体を起こそうとしているのが見えた。
OLだろうか、まだ若い女性だった。
「しっかり! しっかりして!」
少女は慌てて駆け寄り声をかけた。手を取り、その体を抱え起こす。
しかし次の瞬間、女性は体中が灰になって崩れ去った。
少女は呆然と自分の手を見つめた。真っ黒に汚れた自分の手を。
『そいつはハズレか』
「これが……これがあなた達の目的だって言うの」
『そうだ。これも俺たちが生き残るためだ。
お前も今に分かるようになる』
「いやよ! あたしはそんなこと……分かりたくなんかない!」
勢いよく少女は振り向いた。
凛とした目がオルフェノクに向けられる。
「あたしは人間として生きる。
例えこの体が人間でなくなったとしても、あたしの心はまだ人間のものだから。
だから……あたしはあなた達の仲間にはならない。絶対に!」
少女の周りの空気がぎりっとたわんだ。
目に見えないエネルギーが集まってきているように思える。
体のうちから溢れてくる感情を抑えきれないように、少女は大きな声で叫んだ。
「うわああああああああああ!!」
少女の顔に模様が重なる。
小柄な体がぐにゃりと歪んだ。
「──あああああ!!」
叫び終わったとき、少女の体は異形へと変化していた。
チェスのナイトを思わせる顔。
西洋の騎士のヨロイに似た体。
馬の顔を模した肩当て。
それはまさしく、男と同じオルフェノクの姿。
ホースオルフェノク──それが彼女の新しい姿であった。
『良いだろう。それもまた、一つの選択だ』
言い放ってスクィッドオルフェノクは棍棒を構えた。
そこにホースオルフェノクが突っ込む。
ガラスを突き破って、二人はコンビニから飛び出した。
場所を変えながらオルフェノク同士の戦いは続く。
通りを少し行くと橋が見えた。
その上で二体の怪物が対峙する。
『うおおお!!』
叫んでホースオルフェノクが殴りかかった。
スクィッドオルフェノクの顔面に、パンチが一発、二発、三発。
四発目を放った拳が受け止められた。
振り払いよろける相手に、スクィッドオルフェノクは棍棒の一撃を見舞う。
ダメージを食らったホースオルフェノクは、橋の欄干まで吹き飛んだ。
倒れたところに、スクィッドオルフェノクの棍棒が向けられる。
そこから発射された墨を、ホースオルフェノクは身をよじって避けた。
欄干が、じゅうと音を立てて溶けていく。
次々に発射される墨。ごろごろと転がって、どうにかそれをかわす。
距離をとって立ち上がろうと、膝立ちになったホースオルフェノクは、
いつの間にか近づいてきていたスクィッドオルフェノクに蹴り上げられた。
どさりと仰向けに倒れる。
起きあがろうとした体を、スクィッドオルフェノクはその脚で踏みつけた。
ホースオルフェノクの顔面に棍棒の先端が向けられる。
踏みつけられた体は動かない。逃げ場はなかった。
スクィッドオルフェノクの棍棒から墨が発射される。
だがそれは、ホースオルフェノクには届くことはなかった。
いつの間にか現われた大振りの剣。
それがしっかりと墨を受け止めていたのだ。
『!!』
慌ててスクィッドオルフェノクは後ろに飛び退こうとした。
それよりも早く、ホースオルフェノクは右手を前に突き出す。
魔剣は深々と敵の体に突き刺さった。
ぐいと魔剣を引き抜いた。
よろよろと後ろに下がったスクィッドオルフェノクは、再び人間の姿に戻る。
戸田は苦痛に顔を歪めながらも、しっかりとホースオルフェノクを見つめた。
「いいか、これが最後の授業だ。
オルフェノクの死を教えてやる」
ホースオルフェノクは黙って戸田を見つめ返す。
「完全な消滅、それが俺たちの死だ」
言い終えると、戸田は青い炎をあげ、灰になって崩れ落ちた。
ホースオルフェノクは無言でその灰を見下ろしていた。
異形と化した姿、その表情は窺い知ることができない。
不意にその首に鞭が絡みついた。
『うわ! くぅうう……。だ、誰?』
鞭の先、そこにはムカデを模したオルフェノクの姿があった。
センチピードオルフェノクの影に、神経質そうな男の顔が浮かび上がる。
『せっかく目覚めたのに残念ですがね。
──裏切り者には死を』
センチピードオルフェノクは鞭を引いた。
ホースオルフェノクの体が宙を舞う。
橋に叩きつけられ、苦痛に呻くホースオルフェノク。
よろよろと立ち上がり、手にした魔剣を上段に構える。
『やあああ!!』
叫んで駆け寄り、思いっきり魔剣を振り下ろす。
しかしその攻撃を、センチピードオルフェノクは片手であっさりと受け止めた。
『無駄ですよ。まだ、あなたは自分の力の使い方を分かっていない』
裏拳を食らい、ホースオルフェノクは後ろに倒れ込んだ。
同時に変身が解け、その姿が少女のものに戻る。
『馬鹿な人だ。
わたし達の仲間になれば、自分の望むように生きられるというのに』
「いやよ! あたしは、人間を殺すようなやつらと仲間になんかなれない!」
『そうですか。だったらこの場で死になさい。
仲間にならないなら、あなたを生かしておくのは……危険すぎる』
センチピードオルフェノクが手にした鞭をしごいた。
絶望に少女はぎゅっと目をつぶる。
その時、甲高いバイクの音が聞こえた。
音は、猛スピードでこちらへ近づいてくる。
「うりゃああああ!」
『な、なに!?』
振り返るセンチピードオルフェノク。
その体に、助走をたっぷりと付けたバイクがぶち当たった。
『う、うおおおお!!』
不意をつかれ、吹き飛ばされるセンチピードオルフェノク。
大きく宙を舞った体は、どぼんと音を立てて川に落ちた。
「へん! ざまあみらんね。
この間の借り、これで返したけんね」
不敵に笑ってみせたのは、まだ幼いと言ってもよい小柄な少女だった。
気の強そうな目が、オルフェノクの落ちていった川を見下ろす。
その目が今度は呆然としたままの少女に向けられた。
「大丈夫やった?」
「あ、ええ……」
「なあ、あんた何で襲われとったん?」
「え?」
「さっきのはただ人間を襲っとるって感じやなかった。
それにオルフェノクとなんか話とったみたいやし……。
あんた一体アイツラとどんな関係が?」
「そ、それは……。
ちょっと待って。
オルフェノクって……どうしてあなたがその名前を?」
「あ! いや……それは……その……」
気負いこんでいたバイクの少女は、聞き返されて慌てて目を白黒させる。
その姿を見て、少女の顔がふっと和らいだ。
「どうやら、お互いに訳ありのようね。
余計な詮索はしない方が良さそうだわ」
「あー、まあ確かに」
二人は目を合わせ、同時にぷっと吹き出した。
「とりあえずお礼は言っとくわ。
ありがとう。あなたのおかげで助かった」
「いや、別にたいしたことはしとらんよ。
アイツには借りもあったし」
「借り?」
「あ、ううん、こっちの話。
んじゃ、あたしはもう行くから」
「あ、うん。
……不思議だね。あなたとはまた出会うような……そんな気がするわ」
「あたしも……あたしも、なんかそんな気がしとった。
あ、あたしは、田中れいな。あなたは?」
れいなの問いかけに、少女は微笑んでこう名乗った。
「明日香。福田明日香よ」
走り去るバイク。
その背をを見送りながら、福田はあの日のことを思い出していた。
自分の運命を変えたあの事件のことを。
2年前、福田は一つの疑惑を持っていた。
自分がある組織から狙われているのではないかという疑惑。
彼女の親友は、その言葉を聞いて笑った。「気のせい」だと。
しかし、それは気のせいなどではなかった。
福田の命は確かに奪われてしまったのだから。
それも、もう一人の親友の目の前で。
それがどうしてこんなことに──。
福田が目を覚ましたのは、殺風景な部屋のベッドの上。
その部屋の持ち主は『スマートブレイン』と名乗った。
違和感を感じた福田はすぐにその場を飛び出した。
そして気が付いた。自分の体が普通ではなくなっていることに。
運動能力や知覚能力が格段にアップしているのだ。
高いボーリング場の天井にも軽々と飛び移れるほどに。
そしてあの変身。
福田はもう一つ気が付いていた。自分が未だに組織に狙われていることに。
異形の怪人を使う組織。彼らとスマートブレインとの関係は分からない。
だが明らかに、彼女は何者かに狙われていた。
そして、その組織と戦うもう一つの集団。
何かの気配を感じ、考え込んでいた福田は振り返った。
ふらふらと、こちらへ歩いてくる人影。
影が纏っているのは青と白のストライプ。
それは先ほどのコンビニの制服、最初に襲われた店員のものだった。
「あれは……まさか生きて──」
慌てて福田は店員に駆け寄った。
二十代半ばぐらいだろうか。明るい色に染めた髪が、色白の頬にばらりとかかっていた。
「大丈夫? しっかりして!」
「ぐ……う……」
店員が低く呻いた。
その顔に模様が浮かび上がる。蛇を思わせる異形の体が、細身の体に重なった。
「これは……」
福田の耳に戸田の言葉が蘇る。
──俺たちは仲間を増やすことができる。
人間をオルフェノクにすることができるんだ。
「そんな……それじゃこの人は……」
変身はすぐに解けた。
奇怪な体が、青と白のストライプに変わる。
その制服の胸の部分。小さなプラスチックの名札。
そこには、店員の名前が「平家」と記されていた。
第43話 「死と再生」 終
この時間、連続投稿規制が辛い……。
オルフェノクは一度死んで生き返ったもの達。
ちょうどそんな設定の人がいたな、ってことでこのキャスティングに。
蛇のほうは、笑えるキャラ、栄光からの挫折、いい人、この条件を満たすのはこの人しかいませんでした。
結局、鶴は決めきれなかったので、他の方にお任せ(無責任)。
なお、安倍が見た福田の死体はもちろんスマブレの偽装です。
また福田を狙う目的ですが、スマブレとゼティマで同じだとは限りません。
ということで、私の回は終わりです。次の方よろしくお願いします。
>名無しハンペンさん
お疲れ様でした!にしても「あのコ」がホース・オルフェノクに・・・
安倍&市井と田中、対立の予感が・・・どうなってくるんでしょう?目が離せません。
S・L(服のサイズでも機関車のことでもなく)に「石川」を当てはめたら
ビジンダーと二役になりますが・・・。あと、戸田は原作からの引用でしょうか?
それと、何と言っても平家の「意外な形」での登場・・・
パラレルストーリー「Projact G4」を既に見ただけにG3とのギャップが
鮮烈で色んな意味でビックリでした。次回作も楽しみにしてます。
もし次の方がおりますなら、よろしくお願いします。
もしいなければ「インターミッション」に掛かりたい
(42話と「マフラー」に関係しますが)と思いますが・・・。
528 :
名無しX:03/09/24 23:18 ID:Y1CAA8E3
>名無しハンペン様
以前私が宛てもなく蹴ったボールを拾っていただき大感謝です。
「一度死んで蘇る」
・・なるほどオルフェノクは福田にぴったりの役柄かもしれませんね。
劇場版555の馬の役割を考えると今後の福田の活躍にも期待ができそうです。
>ALL作者様
自分が広げた風呂敷をたたむ案が浮かばぬままROMってました(/ω\)ハズカシーィ
暫く作者として書き込む予定はありませんが、一読者としていつも楽しみに
してますのでこれからも頑張って下さい
名無しハンペンさん乙カレー。
ミチャ-ソはいい子だから正義の味方になるのかな?
名無し天狗さん、良いんじゃないっすか。
次誰もいないと思うし、私は話すら出来ていないですから。
おっ!名無しXさんだぁ。
お久しぶりです。カキコだけでもきっとみんな喜びますよ。
ナナシマンさんとか特に・・・でも今は寝ちゃってるかな?
予定は未定・・・でも、アイディアが浮かんだ時にはぜひ!
名無しXさんのお話、読ませてください。
>名無しXさん
・・・は(←「わ」と読む)、初めましてでしたよね、確か。
あなたの作品、楽しく拝見させていただきました。
もし今度、いいのが出来たらゼヒ!
>燃えろ!兄弟拳さん
・・・もうちょっと待ってみます。
どうやらどなたの書き込みもないようなので・・・
僭越ながら、いかせて頂きます。
執筆に当たり、申し訳ありませんがナナシマンさんの
手掛けられた42話の設定を一部拝借させて頂きます・・・。
インターミッション「つはものどもが 夢のあと」
ライダー達の絆を打ち砕こうと目論んだゼティマライダー、そしてそれらを率いる
ゲルダム団の怪人ハエトリバチとエイドクガーは、試練を乗り越えて更なる絆を深めた
ダブルライダーあい・ののの前に滅び去った。
死闘の末に勝利を掴み取ったダブルライダーは、必勝の策を授けてくれた中澤裕子、
そして彼女と共にライダーの勝利を信じて戦況を見守ってきた小川麻琴と手を取り合って
喜びを分かち合った。
・・・だが、それはやがて無常へと変わっていった・・・。
帰還の途に就こうとした4人の目に映ったのは、風が吹き荒ぶ荒野に
野ざらしのように散らばるゼティマライダー達の無残な死体であった。
ダブルライダーの新技「ライダー車輪」によって、ゼティマライダーの殆どは爆散し、
風の中の塵と消え、僅かに数体ばかりが残っているだけである。
その光景を目の当たりにして、4人の心はたちまちに曇った。
特に裕子とライダーののは、現在いる仲間達の中では一番最初にゼティマの怪人と遭遇し、
ライダーののはその怪人・蜘蛛男を倒している。
しかもその蜘蛛男は今は亡き木村麻美=タックルの父親であった。
それ以来、ライダー達は「これ以上の犠牲が出るのを抑えるには
ゼティマを根絶やしにする以外に道はなし」と悟り、心を鬼にして
次々迫るゼティマの刺客を打ち破ってきた。それでも「元は人間」であることを考えると、
その場では勝利を噛み締めても、それが暫くして罪悪感へと変わった日も少なくなかった。
今回の一件で、彼女たちは戦いの非情なまでの残酷な現実を改めて思い知らされたことだろう。
ライダーあいが呟く。
「ゼティマライダーって、ゼティマ選りすぐりの女戦闘員を改造して造ったと、ウチが戦うた
ゼティマライダーが言うてました…。」
裕子が同調する。
「そっか…今まで襲うてきた連中はその殆どが“改造人間”やもんなぁ…。
彼女たちだって、形はどうあれゼティマなんかに関わってもうたばっかりに…
ウチらにも責任はあるかもしれへんけど、ホンマ、気の毒やわ……。」
いつしか、裕子の目には涙が浮かんでいた。麻琴も複雑な面持ちで、
黙してこの凄惨な光景を見ていた。
「…お墓を作ってあげましょう……。」
短いようで長い沈黙を破ったのは、ライダーののであった。
せめて最期は手厚く葬ってやろう、そう思ったのである。
「そやな…って、のの、お墓作る言うたかてどないするん…」
同意しつつも疑問を投げかけるライダーあいをよそに、ライダーののは
重い足取りで歩を進める。やがて彼女は、一際広い箇所に辿り着くや・・・
「うりゃア!!!」
と言う気合い諸共、地面に向かってパンチを放った。
ドゴォォ!!と言う轟音と共に地面が抉れ、直径約2〜3m程のクレーターが出来た。
「とぁー!ぅおりゃー!!でぇえぃ!!!」
ライダーののはそのクレーターの底へ更にパンチを打ち込み、深く穴を掘って行く。
やがて深さも2mに達したところで、ライダーののは穴から這い出てきた。
「のの…。」
「辻…。」
「辻さん…。」
ライダーあい、裕子、麻琴もライダーののの辛い胸中を察し、
今の自分達に出来る精一杯の行動を起こした。
ライダーあいは墓石を作り、裕子と麻琴は死体を穴の近くへと運ぶ。
死体は、目を背けたくなる程惨たらしいものであった。
もはや手足の指先しか残ってないものもあれば、身体の一部が
大なり小なり消し飛んでしまっているもの・・・・・・。
仮面が砕けて、亜依とも希美ともつかぬ程に顔がグシャグシャに歪んだものもあった。
「もしもウチらがゼティマに改造されとったら、ウチらもこうなってたんやろか…。」
墓石を作り終え、死体搬送を手伝うライダーあいの心を更なる苦悩が覆う。
裕子もまた、ゼティマに対するやり場のない怒りをグッと堪えていた。
初めからゼティマによって造られた麻琴に到っては・・・いや、やはりやめておこう。
それぞれが苦い思いを抱きつつ、ゼティマライダーを安らかな眠りに就かせようとした
・・・その時!
「・・・う・・・うううぅ・・・・・・。」
どこからか呻き声が聞こえて来たのだ。驚く4人。
声は・・・ダブルライダーが抱えていたゼティマライダーからのものだった。
そのゼティマライダーは、ダブルライダーの「ライダー車輪」を受けた際、
一番最後にジャンプしたNo.5であった。
No.5は最後にやや遅れてジャンプしたため衝突こそしなかったものの、
爆発による衝撃と爆風に煽られて、体制を立て直すこともままならぬうちに
地面に激突したのである。
「もしかしたら…助けることがれきるかもしれないれす!!」
「オイ…オイ!しっかりしぃや!!」
ダブルライダーはNo.5をそっと下ろし、気付かせるよう呼びかけた。
今のダブルライダー達には、最早ゼティマライダー達に対する敵意はなかった。
程無くして、風前の灯火にあったNo.5は意識を取り戻した。
「う・・・・・・あ・・・こ、ここは・・・・・・・?」
「よかった、気が付いたか。」
「ろうやら…ライダー車輪のショックれ自分の意識がもろったみたいれすね…。」
ライダーののの言う通り、ゼティマライダーとなった女戦闘員たちは
脳改造によって意識を操作されていた。それがライダー車輪を受けた影響で、その効果が
失われたのであろう。ダブルライダーの遺伝子も、同様に消えていた。
その顔は、亜依のものでも希美のものでもなく、「本人」の「素顔」であった。
年の頃から10代後半から20代前半と言ったところか。
「ここは・・・どこ・・・?あたしは・・・どうして・・・・・・?」
彼女はどうやら、今に至るまで自分の身に何が起こったのかを全く覚えていないようだ。
ライダーあいは、これまでの経緯を簡潔に教えたあと、No.5だったその女性に尋ねた。
「お姉ちゃんはなぜ、ゼティマに…?」
No.5…いや、「元」No.5は、自分がゼティマの一員となった
〜「されていた」と言うべきか〜理由を打ち明けた。
「あたしは・・・5年前、トライアスロンの・・・国際大会に出場するため・・・特訓を、していました・・・。
日本、代表に・・・選ばれて・・・。
けど、その時の・・・水泳の特訓中、に・・・黒い連中・・・その、ゼティマに誘拐されて・・・。」
「それで…無理矢理改造手術を受けさせられた、と・・・。」
「ええ・・・。怖かった・・・死ぬより・・・・・・。」
全てを理解した4人。中でもゼティマに一層の憎しみと怨みを抱いたのは裕子だった。
「人の夢や幸せを平気で踏み躙る…ゼティマはそれくらい容易うやる言うんは知っとったけど…改めて聞くと
ホンマ、このままにはしておけへんね……!!」
「中澤さん…。」
今の麻琴には、裕子に掛ける言葉が見つからなかった…。
「…れも、今なら助かるかもしれないれすよ!!」
「せや!早う研究所に…!!もうちょいの辛抱や!!」
ダブルライダーは元No.5を必死に励ます。が・・・
「も・・・もういいの・・・。もう、長くはないって・・・わかってるから・・・・・・。」
死期を悟ったのか、元No.5は彼女たちの援助を断った。
「ろうして!!?」
諦めちゃダメだ!折角助かった生命じゃないか!!ライダーののは尚も彼女に
強く訴えかける。
「ありがとう・・・ごめんね。
でも・・・このまま、悔しい思いをしたまま・・・死ぬのは・・・イヤ・・・・・・。」
そう言うと元No.5は、最後の力を振り絞り、自分の首に手を掛けた。そして・・・
「・・・形見と言うのも、おかしいけど・・・これを、受け取ってほしいの・・・。」
そう言って彼女が差し出したのは…先程まで首に巻いてあった紫色のマフラーだった。
「…これは…?」
不思議そうにマフラーを受け取ったライダーあいであったが、そのマフラーに込められた意味を
彼女はすぐに察した。
「…判った。ゼティマの理不尽なやり方に泣かされた人たちのため、ウチらは戦う!!
せやからこれ以上、何も喋らんといて!!」
改めて決意を誓うライダー達。だが・・・
「・・・ありがとう・・・これで・・・あた、し・・・も・・・こ、ころ、お・・・き・・・・・・。」
言い切らぬ内に、元No.5は眠るように息絶えた・・・・・・。
「そ…そんな…!!」
「目ェ開けてや!なぁ!!」
「何でや…何でやぁ!!」
「うぇええええ〜〜〜〜〜ん!!!!」
麻琴、裕子、ライダーあい、ライダーののは言葉に表せぬ程の慟哭に駆られた。
また一つ、救えたかもしれない尊い生命の火が消え去った・・・。
・・・数時間後・・・
ゼティマライダーを残骸一欠けらも残さず全て埋葬した4人は、彼女達に黙祷を捧げた。
「今度生まれ変わってくる時には…狂った無法のない平和な世の中になるように力を尽くすからね。」
と言う誓いと共に。
改めて帰還の途に就く4人。
ライダーあいの左腕には、元No.5が「形見」として託した紫色のマフラーがしっかりと巻かれている。
尚、このマフラーはのちに、「やがて訪れるであろう新たな絆を深める」重要な意味合いを持つものと
なることになるが、それはまた「別の機会」にて。
因みに、その墓標には、後日中澤一家全員から花が手向けられたことも書き加えておこう。
インターミッション「つはものどもが 夢のあと」 〜完〜
ちょっと長くなった上に、暗い話になってしまいました。
何とか頑張ったんですが・・・皆様の納得いくものになれたかどうか・・・
「嵐」考案中だってのに思いついた今回の話ですが、いかがでしたでしょうか?
間違いとかございましたら、申し訳ありませんがご一報願います・・・。
では、再び読み手に徹しつつ「嵐」の構築に取り組みたいと思います。
(決してサボってるわけじゃありません、念のため)
ですがまた、今回のようなことが起きるかもしれませんので、予めご了承の程を。
あと、二怪人については完全に爆散消滅した、ということで・・・。
乙カレー
>間違いとかございましたら・・・
んじゃ一つ・・
名無しXさんは、初めましてじゃないじゃん・・と突っ込んでみる(w
それはともかく
これはこれで良いと思いますよ。オイラのいんたーみっしょんは
明るいって言うかほのぼのって言うかそんなんばっかだし
こういう逆パターンがあるのも面白いと思います。
>燃えろ!兄弟拳さん
げ・・・あまりに久しぶりなものだからひょっとしたら忘れてたのかも・・・!
名無しXさん、兄弟拳さん、ホントにスイマセンでした!!!
・・・あと、インターミッションの感想ありがとうございました。
保全隊参上!
>>名無しハンペンさん
予想を裏切り期待を裏切らない、というのはこういうお話なのでしょうか。
練りこまれた展開と驚きのキャスティング。酔いつぶれかけていたところに
雷の一撃というか。感想を書くのはこうして翌日になってしまいましたが、
読んだ翌日にまで残るインパクトでした。
>>名無し天狗さん
拙作のあの話からどうやったらこんないい話系のストーリーになるのか
と思うくらいの内容で、図らずも最近読み返した「悪(ショッカー)の系譜」
に掲載されていた藤岡弘(そういえば同書は終始「藤岡弘、氏と表記して
おり、それはプロフィールでもそうだったのですが"、"は必要なので
しょうか?」)氏のインタビューを思い出しました。辻加護にとっても、敵は
「救うべき悪」だったわけですね。
>>名無しXさん
お久しぶりです。またお越しいただいてありがとうございます。参加されていた時の
作品をまた改めて読み返してみたんですが、何は無くともやっぱりあの緩急の妙。
インターミッションのあの話は特に好きでして。後は真空地獄車を活字で描写しきった
大変身の回でしょうか。また参加していただけることに期待を寄せつつも(w、まずは
今後ともよろしくお願いいたします。
>>燃えろ!兄弟拳さん
ここ二回ほど、転勤あり台風ありでまとまった話が書けず、思うような更新ができ
なかったのが作者としては辛いところだったんですよね。そろそろ身辺も落ち着きそう
なので、またコンスタントな更新ができるかと思います。
>ナナシマンさん
ありがとうございます!拙作なんてとんでもない!
今回はライダー勝利と数日後の喧騒との間に「かなりの時間」があったので
その辺りを使ってみました。因みに原作「萬画」版の仮面ライダーの
こうもり男戦のラストの本郷ライダーのセリフも参考にしてます。
「業」を背負って戦う・・・やはりそこにこそ仮面ライダーの本意があると私も思います。
マフラーは作中にもありますように、今後の鍵として(もうバレかかってると思いますが・・・)
温存し、これからの展開の中でドン!と出そうと思ってます。
ナナシマンさんも、もしまたいいのが出来たらよろしくお願いします。
>名無しXさん、兄弟拳さん、ホントにスイマセンでした!!!
いや・・・・名無しXさんはともかく私に言われても・・・
ところでまさか解ってるとは思いますけど・・・
HN変えた訳ではなく気分で書いた名前がそのまま惰性で行ってしまって
( `_´)<正直スマソかった・・・
って事でこれからはこれで行きます。
ここでちょっと失礼いたします。こちらにもいらして下さった狩板「龍騎VERSION・M」
のヴィンセントさん、狩板はtopsites鯖でまだ来年2月まで読み書きできるようですよ。
応援も兼ねてお知らせいたします。
>燃えろ!兄弟拳さん
お気になさらず・・・こちらこそスイマセンです・・・。
>ナナシマンさん
藤岡氏の「、」ですが、氏自身が「人生是修行。終着駅はない。」と言う
思いを込めて自ら付けたんだと思います、多分。
>名無し天狗さん
戦士の魂は受け継がれる。インターミッションお疲れ様でした。受け継ぐ側の話もがんばってください。
それと石川=スマレは半分冗談、半分本気です。スマレの正体が○○なら石川とは○○になるのではと……。
まあ、自分なりにラストへ向けての伏線張りの一つです。余りお気になさらず。
ちなみに戸田はオリジナルキャスト、りんねとは無関係です。
>名無しXさん
おひさしぶりです。インターセプト的なパスの受け取りでしたがそう言って頂けてほっとしました。
作者としてもまた是非参加してください。(「休み時間に一人で本を読んでるX」とか、イヤ冗談ですが)
>燃えろ!兄弟拳さん
みっちゃんは文句を言いながらも悪いことのできない人になると思います。だって良い子だし。
>ナナシマンさん
>>予想を裏切り期待を裏切らない
過分なお褒めの言葉ですが良いフレーズですね。ありがとうございました。
ということで、現参加者の方々の新作と、新たな参加者を期待しつつROMに戻ります。ではまた。
>名無しハンペンさん
「受け継ぐ側」・・・わかりました、「何とか」がんばります!
(2〜3話分ほど引っ張ってからの合流の「予定」ですが、状況いかんによっては・・・)
>ALL作家様
ふと思ったんですが・・・「一人複数役」ってのはルール違反でしょうか?
突然ですが、北海道の読者の皆様で今回の地震の被害に遭われた方などは
おられませんか?特に被害なくお過ごしのことであれば幸いですが、何らかの
被害に遭われた方には心よりお見舞い申し上げます。
>ナナシマンさん
私は比較的北西部にいますので影響は微量でしたが・・・
他の地域の方が心配です。私も被害に遭われた方に心よりお見舞い申し上げます。
>>名無し天狗さん
「一人複数役」について、あれこれ思案してみるのですがなかなか考えが
まとまらないですね。「必然性と説得力が必要だ・・・」ってな事は一番最初
に考え付いたのですが、今度は「面白ければいいんじゃない?」的な考えが
幅を利かせてくるんです。とりあえず他の作者さん方、あるいは読者の方々
のご意見も伺ってみたいところですが、こうなってくると打ち合わせスレ
みたいなのがどこかに欲しいな、とも思ったりしてしまいます。
>>名無し天狗さん
それは何よりでした。うちの家電で唯一被害にあった物件が今日になって
明らかに。実はPS2が・・・(涙。この際50000番台に買い換えようかと考えて
ます。
>ナナシマンさん
北と南で・・・お互い大変ですね・・・・・・。
皆さんすごい勢いですね。
私はネタがありません。
平成ライダーのことは良く知らないし・・・
保全ネタなら10話分ほどストックがあるのだがw
それから批評・感想はともかく、雑談が多いと読者の方が感想が書き込みにくいとかないですかね?
いや、最近読者の書き込みが少ないのがちょっと心配なので・・・
って読者の数=作者の数
だったりしてw
>ふと思ったんですが・・・「一人複数役」ってのはルール違反でしょうか?
やり過ぎると滅茶苦茶になる気がするので、あまり賛成は出来ない。
やるとしても「梨華と梨華美」程度にした方が良いと思う。
関東在住の私は地震にすら気が付かなかったです。
皆様方には何事も無い事を願っております。
ナナシマン様
打ち合わせなら、どうぞ半分氏にかけているあそこをお使いください。
容量の残りも少ないけど打ち合わせ程度ならまだ行けるでしょう。
川σ_σ||<実は既に引越し済みなのです。
563 :
:03/09/27 00:56 ID:LvVccmEG
/\ /\ ___ _
ノ) /: :::ヽ____/:: ::ヽ、 \ ) | |
_/ / 丿 ::.__ .::::::::::::: __ ::::ヽ_ __| |_ | |
( _/_ / /。 ヽ_ヽv /: /。ヽ ::::::ヽ \ ) | |
| |_「|_ / / ̄ ̄√___丶  ̄ ̄\ ::::| > |フ/ | |
| ___ _ノ| .:: :::: / / tーーー|ヽ ..::::: ::| / ⌒ \ | |
|| || | . :. ..: | |ヽ ::| / 凵@/⌒\ | | |
|| || | ::: | |⊂ニヽ| | :::::| / | _ | \\ /
| |___ | |/ノ| : | | |:::T::::| ! .::|/__/ | | ( O ノ\|
(_ノ \__ノ \: ト--^^^^^┤ 丿 ∨ ー □
私、氏ぬ!
私踊る。
( ^▽^)<わ う
し 歌
た !
川o・-・)<私、食べる!
( ´D`)<氏ね。
( ‘д‘)<お前が氏ね。
( ´D`)<キノコのエキスに1週間以上放置されて改造されずに氏ね。
( ‘д‘)<ボルキャンサーに喰われて氏ね。
( ´D`)<ウツボガメスの好物、田子の浦のヘドロにまみれて氏ね。
( ‘д‘)<盗んだバイクで走り出した直後にゴ・バダー・バに見つかって
バイクから引き摺り下ろされた挙句に氏ね。
( ´D`)<ノリダー鼻水を食らって氏ね。
( ‘д‘)<関取団にGEKITOZされて氏ね。
( ´D`)<・・・
( ‘д‘)<・・・
( ´D`)( ‘д‘)<というわけで、また今晩。
>ナナシマンさん
・・・・・・楽しみにお待ちしてます・・・。
\/  ̄ | --十 i 、.__/__ \ _ / i__ i
∠=ー  ̄ヽ .| __|. | | / ヽ . / ̄| ヽ | | /⌒ヽ
. (___ ノ | (__i゙'' し ノ (__i゙' し (ノ )
/○ / ̄ ̄ ̄ ̄ヽ○\
| ./ /\ ヽ |
| / ///// ヽヽヽ | ,-v-、 . _| __|__
| | / / \| | / _ノ_ノ:^) |/⌒| .|
| ((0| ___ | | / _ノ_ノ_ノ /) ./| .|/ ○
| |ヾ|// ∨ ∨ | | / ノ ノノ// ノ
| | | \_/ |ノノ ____ / ______ ノ
先ほどはたわいも無い悪ふざけをしてしまいました。お詫びといっては
なんですが、話が無いのもアレなのでしばらくまた「外伝」的なものに
お付き合いください。夜から始める予定だったんですが、予定が入って
しまったのでこれから始めたいと思います。
Another story 「風の神話」
平和な夏の昼下がり。ゆったりとした空気の中で、少女たちが思い思いの時を
過ごす、そんな一日。リビングで黙々とテレビに向かい、ゲームに夢中な少女が一人。
「珍しいよねぇ。こんなにゆっくりと休日過ごせるなんてさぁ」
そう言って真里は手にしていたゲームのコントローラーを床に置くと、そのまま床を
ゴロゴロと転げまわる。クーラーで程よく冷えた室内、そしてひんやりとした感触を
伝える籐のカーペットが肌を心地よく刺激する。
「そうですよね。平和なのが一番なんですけど・・・これだけゆっくり出来る時間が
あると、かえって何に使っていいのかわからないですよね」
そんなことを言いながら、梨華が冷凍庫からアイスを持ってリビングへとやってきた。
大きな容器に入ったストロベリー味のアイスを、梨華は手にしたスプーンを器用に
使って掬い取ると、透明なガラスの器に自分の分と真里の分とをきれいに盛り付ける。
「はい、とんとん」
楽しそうにアイスを盛り付ける梨華の姿と、「とんとん」という楽しげなフレーズが
思わず真里の心をくすぐり、笑いとなってあふれ出す。
「キャハハハ・・・何さ『とんとん』って・・・」
「おかしいですか?」
たわいもない二人のやり取り。しかし、そんな平和なひと時を打ち破るかのように、
何者かがあわただしく玄関からリビングへと駆け込んできた。
「矢口っ!矢口おるか?!」
どたどたと玄関から上がりこみ、大声を上げながらリビングにやってきたのは、誰
あろう稲葉貴子であった。
「稲葉さん・・・どうしたんですか?」
「ちょっと一緒に行ってほしいところがあんねん、3、4日ばっかし」
貴子はどうやら真里にどこかへ同行してほしいと言っている様だ。それにしても
3、4日彼女を連れて行きたい場所というのは、一体どこなのだろうか。
「で、稲葉さんはおいらを連れてどこに行きたいんですか?」
「よくぞ聞いてくれました!ええか、聞いておどろくなよ?」
いたずらっぽい笑みを浮かべて真里の目を見つめる貴子。梨華も彼女の言葉が
気になるのか、続きを待っているようだ。
「いいなぁ。矢口さんと二人でどこに行くんですか?」
真里の行き先に興味を示す梨華を見やると、今度は真里。そんな風にして、思わせ
ぶりな表情で二人の顔を交互に見つめ、貴子は満面の笑みとともに言った。
「なんと海外。ベトナムや!」
しかし、それは気楽な海外旅行ではなかった。貴子の話によるとこうである。
ベトナムを中心に最近多発している謎のウィルスへの集団感染。その影に暗躍
している謎の教団の存在がFBIによって明らかにされたのだ。貴子に与えられた
任務、それはその教団が集団感染に関与しているという証拠を掴み、彼らの悪事を
白日のもとに晒すことであった。
これがもし彼らによって行われている細菌テロであるとすれば、何としても
その先にある悪の野望〜教団がゼティマに通じている可能性が十分に考えられる
からだ〜を食い止めなくてはならない。
「奴らの名は『まんじ教』・・・神の使者としてコウモリを崇拝する邪教集団
や。奴らは「ヒマラヤの呪い」と称して得体の知れん細菌を使い、村人たちを
おびやかしとる」
「で、おいらと稲葉さんの二人でまんじ教をやっつけようというわけだね?」
「今のところはとりあえず、現地におる情報員と接触して教団の悪事を暴くこと
が先決やろな。ゼティマとの関係も気になるし。ちゅうわけで、今回は『特に』
矢口の協力が必要なんよ」
そう言って貴子は真里のじっと目を見つめている。そうまで言われると真里も
まんざらではない様子だ。貴子は更に続けた。
「まぁ、仕事が早く終わったら残りは休暇みたいなもんや。旅行やと思て軽い
気持ちで、な?」
「う〜ん、でも急に海外ってことになるとみんなが何て言うかなぁ。特に
裕ちゃんとか・・・え?」
そう言いかけた真里の後ろに、大きく両手を広げた貴子の姿があった。そして
その手は一気に真里の両肩へと伸びた。
「ちょっ・・・稲葉さんっ!やーん!!」
嫌がる真里を強引に、あろうことかバッグの中に押し込める貴子。まさに
問答無用の勢いだ。やがてその身体は不思議なくらいバッグの中にたやすく
収まっていく。そして、全身がすっぽりと収まったのを確認したところで貴子は
ジッパーを一気に引き、完全に真里をバッグの中に「収納」してしまった。
「稲葉さぁぁん!いや、あつこー!!だせぇぇぇ!!」
「ハァハァ・・・堪忍な矢口。なんせバッグに入るくらいのミクロギャルて
自分しかおらんやん?最近はFBIもしみったれてきよって捜査費用がカツカツ
やねん・・・なんせベトナムまでエコノミーで一人分の旅費しかでぇへんもん」
稲葉の足元に転がるのは大きなボストンバッグ。その中に真里が押し込められて
いる事など誰が知るだろうか。かくして二人、いや、稲葉と大きなバッグは、
成田から出発するチャンポンチャン経由のホーチミン行きへと乗り込むのだった。
今日の分はここまで。明日一日で続きを書いてからまたお目にかかります。
>ナナシマンさん
「まんじ教」ってことは・・・・・・?
明日に期待!
どうも、ヘタレな小説書きヴィンセントです。
>ナナシマンさん
すみません、なんか心配かけたみたいで・・・えっ?してないの?(w
仕事が忙しくなっていて、なかなか執筆出来ていない状況・・・。(泣
でも、昨日更新させていただきました。
狩板が無くなるまでは、狩板に載せさせていただきます。はい。(w
>ヴィンセントさん(「初めまして」ですよね・・・)
そんな、ご謙遜なさらずに・・・。
拝読させていただきましたが、スリリングでしたよ。
一方こちらは舞台変わって、タイの某地方にある刑務所。時は貴子たちが日本を
発つ数日前にさかのぼる。
この刑務所に今から数ヶ月前に入所した三人の男達がいた。彼らは強盗や盗掘を
繰り返していた犯罪者で、警察もほとほと手を焼いたがようやく逮捕に到ったと
いうほどの悪党である。
ある日の晩。そんな男達の房に面した通路に、一匹のコウモリの姿があった。
コウモリはふらふらと飛びながら、やがて男達の房へと近づいてきた。
「なんだぁ、ありゃ」
「チッ・・・何だよ、コウモリじゃねぇか」
消灯前ということもあり、通路の明かりに惹かれて虫が飛び込んでくることは
ざらにある。男達にしてみれば別にコウモリが飛び込んできたって不思議では
ないのだ。ところが、ゆっくりとではあるが確実に鉄格子のそばまで飛来している
コウモリの様子に、男達はそれが明らかに自らの意思で自分達の房に近づいて
きているという事に気がついた。
「まさか吸血コウモリなんて事はねぇよな・・・気味悪いぜ」
そしてついにコウモリは鉄格子をすり抜けて男達の房の中へと侵入すると、房の
天井にぶら下がった。そして、次の瞬間それは突如として人間の身の丈ほどにも
大きくなり、そのまま翼をはためかせて着地したのだ。
「バッ・・・バケモノだぁ!!」
立ち上がったコウモリのその姿は、まるで人とコウモリの合いの子のようだった。
真っ白な長い体毛、全身を赤黒い体毛に包まれたの姿に恐れをなし、三人の悪党
は部屋の隅に逃れておののく。コウモリの怪物は彼らにゆっくりと近づくや、
突然人の言葉を話し始めた。
「キキキキキ。お前達の悪事は知っているぞ・・・見所のある男達だ。俺に
ついて来い。ここから出してやろうじゃないか」
おびえる男達を前にして、コウモリの怪物は三人の悪事を称え、なんと牢から
解放しようとさえ申し出ているのだ。しかし、眼の前にいるのは自分達を
捕らえた警察よりもおぞましい怪物なのである。
「ほっ、仏様の罰が当たったんだぁ!きっとそうにちげぇねぇ!!」
ついに仏罰が下された、と悪人達は口々に叫ぶ。だが、そんな様をコウモリの
化け物は笑いながら言った。
「戯言を・・・この世に神も仏もあるものか。だが、お前達が崇めるべき
名前が一つだけあるぞ・・・知りたいか?」
眼前の怪物から自らの命を守れるのなら、命じられれば彼らはおそらく
その翼を舌でつくろうことすら辞さなかったろう。言葉も発することが出来ず
ただ頷くばかりの男達にコウモリの怪物は言った。
「お前達が崇めるべき名は一つ・・・『創世王』。そしてお前達は今より
我らツバサ一族、まんじ教の一員となるのだ」
そう言うとコウモリの怪物は房の壁に拳で一撃を加える。怪物の打撃によって
壁はあっさりと崩れ、開いた穴の向こうには男達が数ヶ月間望んだであろう、
外界の月明かりが差し込んでいた。
「もしかして・・・新聞に載っていた『ヒマラヤの呪い』を村にかけた
連中の仲間か?」
「死人の村に変えた呪い・・・あれはお前の仕業か?!」
問われてコウモリの怪物はニヤリと笑い、不気味な長い舌と鋭い牙が覗く
邪悪な口からその名を告げた。
「キキキキキ。そうとも。俺は『死人(しびと)コウモリ』。お前達には
『ヒマラヤの悪魔』は使わない。大事な改造人間の素体だからな」
コウモリの怪物、いや死人コウモリはそう言って軽く跳躍すると、三人の男を
器用に脚で引っ掛け、夜の闇に舞った。
とりあえず続きはまた夜にでも。今回のお話は知る人ぞ知るあの映画を下敷きに
しています。僕自身まだ未見なのですが、熱烈なライダーファンの方にはお勧め
できません(w。
>ナナシマンさん
・・・な・・・なるほど・・・。(笑いで身体が震えてる)
それにしても、某仏教国の「日本のヒーローを使った映画」に(以下メール欄)
一方、こちらはホーチミン空港のロビー。観光客が行き来する中を、大きな
バッグを傍らにおき、サングラスをかけた一人の女が人待ち顔で立っていた。
「もう来て待ってるって言うてたけど、一体どこにおるんやろ・・・」
正午の便で日本を出てきて8時間。見れば時計の針は8時を差している。しかし
ベトナムと日本の時差は約2時間だというのでロビーの時計を見れば、なるほど今は
夕方の6時であった。
時計を見ながらチラチラと周囲をうかがうこの女こそ、真里をバッグに押し込んで
日本を発った稲葉貴子であった。捜査官の特権で荷物検査を容易くクリアした彼女
は、それでも真里をバッグに詰め込んだままベトナムに入国を果たしたのである。
まぁ真里を開放できるとするなら、無論それは空港外に出てからということになる
だろうか。
「こっちの人間はきっと時間にはルーズなんやろな・・・ま、のんびりしてて
ええけど」
そんなことを一人つぶやきながら、貴子は再び周囲に目を配りながら待ち人の姿を
求める。すると、雑踏の中にいる一人の男と眼が合った。その直後、彼は手を
振りながら貴子の方へと駆け寄ってきた。
(おいおい・・・お前はどこぞの現地ガイドかいな・・・)
日焼けしたやせ型の体型に纏うは安っぽいプリントシャツに白いハーフ丈のパンツ。
こんな出で立ちの捜査官など彼女の経験上存在したことが無い。ため息をつく貴子に
対して、男はやってくるなり笑顔でこう言った。
「チャオチー!ベトナムへようこそ。ミス・稲葉ですね?」
「まさかとは思うけど、現地の情報員って・・・あんた?」
「はい。僕がICPOタイ支局捜査官のウィラポンです。このような身なりで
驚かれたでしょうが、敵の目を欺くにはこれが一番なんですよ」
あっけに取られた表情のまま、貴子はウィラポンと握手を交わす。そして二人はロビー
を出て、彼の案内のもとに空港を出る。
今日の分は以上です。続きはまた明日。
>>561 必ずしも平成ライダーを出さなきゃならないということは無いと思いますよ。
>読者の方が感想が書き込みにくいとかないですかね?
ちょっとそれは気にしていたんですよね・・・。
>読者の数=作者の数
僕が把握している限りでは読者の数=作者の数+2ないし3です(w。
実は以前さるオフで実際に読者さんにお会いしています。
>>582 更新拝見しました。感想のほうは向こうのほうに書かせていただいてます。
今後もガンガッテください。
>>588 ウルトラマンやジャンボーグAはともかくライダーはよく判りませんよね。
でも、ライダーのヤツは東映無許諾なのでストーリーの後半は完全現地
オリジナルだそうで、等身大のキングダークや半裸の男がマスクを被った
だけのGOD怪人とか出てすごい事になってるようです。
>ナナシマンさん
「ウィラポン」って・・・なるほど・・・・・・。(笑いで以下略)
空港を出て二人はウィラポンの車へと乗り込み、彼が事前に手配したホテルへと
直行した。その車中で、ウィラポンはFBIに対して自ら捜査協力を申し出たことを
告げた上で、その理由を貴子にこう切り出した。
「現在まんじ教のアジトは隣国ラオスの国境地帯にあると言われています。僕は
奴らを追って2年前にこの国にやってきました。現地連絡員兼捜査官、それが僕の
任務です。奴らは村々に『ヒマラヤの悪魔』をばら撒いて人々を苦しめてる」
夕日に染まる道沿いの風景。そこに目を向けたとき、表情を曇らせたウィラポン
の顔が貴子の目に映る。思えばタイから国境を越えてベトナムへやってきた彼の
執念の源とは一体何なのだろうか。
「新聞には『ヒマラヤの呪い』って出てたみたいやけど」
「どっちも似たようなもんです。呪いも悪魔も人を苦しめる存在に変わりは無い。
僕の故郷の村はまんじ教に『ヒマラヤの悪魔』で全滅させられました。」
「あんた・・・」
彼もまた悪の野望に幸福を奪われ、人生を狂わされた者の一人だった。見れば
心なしかハンドルを握るウィラポンの手にも力がこもっているようである。
自らの身の上を語ったとき、故郷の惨劇を思い出したのだろうか。と、その時。
「ねー、もう良いでしょ?いい加減出してよぉ!!」
バッグの中から聞こえてきたのは真里の声だった。それを聞いたウィラポンは
破顔一笑。屈託の無い笑顔に安心した貴子も笑い出し、二人の笑い声があふれる中
貴子はようやくバッグのジッパーに手をかけた。
「はいはい・・・全く、チョコエッグから生まれたみたいなちっちゃいなりして、
ホンマにキンキンやかましいねんから」
「誰がチョコエッグだーっ!早く出せよぉ、もう!!」
程なくして貴子は真里をバッグの中から開放し、ようやく3人に増えた一行を乗せて
車は市内へと伸びる道を走る。そして、つらい身の上を告白した後、再び笑顔を
見せたウィラポンは、朗報ともいえる知らせを貴子に伝えた。
「しかし悪い話ばかりではありません。ヒマラヤの悪魔に対抗できるワクチンが
出来そうなんです。ヴィルット博士がワクチンの試作品を持って、息子さんと明日
ホーチミン入りするんです」
「そうなんだ。そしたら、その何とか博士にもおいら達のことを知ってもらって、
一緒に戦ってもらおうよ」
「せやな。細菌のことなんてうちらには判らへんし」
勝手の全く違う土地で、先の見えない戦いに飛び込もうとしていた真里と貴子。
しかし、ヴィルット博士が開発したワクチンの試作品という大きなニュースは、
この未知の戦いへの一筋の巧妙となった。
しかし、一行がのんびりと市内へ向かう一方で、神出鬼没のまんじ教は着々と
近隣の村にその魔手を広げていた。貴子たちがホーチミンに到着するちょうど
数時間前、なんとハノイ近郊の村にまんじ教が出没したのだ。
「タスキーパールーパーネーマラヤーヒ・・・」
黄色い僧衣をまとい、不気味な経文を唱えながら吹きすさぶ風と共に現れた一人の
僧侶。その顔には生気が無く、うつろな目はまるで死人のようであった。そんな
彼とすれ違った、敬虔な仏教徒の村の男は僧侶にこう尋ねた。
「お坊様。私達の村に仏様のご加護を授けに来てくださったのですね?この村も
まんじ教に脅されて、皆困っているのです」
しかし、僧侶の口から出た言葉は村人の望むものとは正反対の恐ろしい予言で
あった。
「お前の村には死者の気が満ちているぞ。ヒマラヤの悪魔がそれを嗅ぎ付けて、
呪いをかけにやってくるだろう・・・」
「なんと!!それは本当ですか?!」
男は手にしていた買い物袋を落として呆然となる。そんな彼にはお構いなしに、
不意に邪悪な笑みを浮かべて僧侶は言った。
「本当だとも。悪魔の使いはもう来ておるわい・・・」
「そんな・・・・どこにいるんですか?!早く村のみんなに知らせなくては」
「知らせるまでもない・・・悪魔の使いは、ここにいる!!」
不意に僧侶が叫ぶと、彼の周囲に突如つむじ風が巻き起こる。そして風が収まる
や、眼の前に姿を現したのはびっしりとした羽毛に覆われ、頭頂部のとさかが
ひときわ目立つ鳥の怪人だった。
「俺様は『火炎コンドル』!逆らう者には悪魔の呪いが降りかかるぞ!!」
鳥の怪人、火炎コンドルの姿に恐れをなし、男は一目散に逃げ出す。だが、
相手は空の魔人、ツバサ一族の一人である。地上において逃げ切れるはずは
無い。哀れ彼はすぐに追いつかれ、この怪人の最初の犠牲者となった。やがて
怪人の出現に呼応する形で、いずこからとも無く怪しい黒装束の者達が現れた。
その出で立ちはゼティマの戦闘員に良く似ているが、彼らは黒いヴェールの
ようなものを纏っている。
「お前達、村人を一人残らずヒマラヤの悪魔の餌食にしてしまえ!まんじ教
の尖兵に変えてしまうのだ!!」
「イーッ!!」
ヒマラヤの悪魔、それは感染した者をまんじ教の秘術で自在に操ることの
出来る謎のウィルスである。まんじ教の戦闘員によってばら撒かれたり、
あるいは感染者から噛み付かれたりなどの傷を受けると感染してしまうという。
しかし、不幸にしてこのウィルスに耐え切れずに死亡する者も多々おり、最悪の
場合村一つがまるまる全滅してしまう事態になってしまうのである。
「俺はまんじ教によって新たな命を与えられた。まんじ教万歳、創世王万歳
だ、クェーックェックェッ!!」
実は彼こそ、死人コウモリの手によって脱獄したあの凶悪犯の一人であった。
3人はまんじ教に見出されて改造手術を施され、怪人として生まれ変わったのだ。
その凶悪な眼に映るのは、この世のものとは思えぬ光景だった。まんじ教の
戦闘員達がヒマラヤの悪魔を塗りこめた短刀で次々と村人を襲う。そして感染
した村人が他の村人を襲って感染者を増やしていく。そんな地獄絵図のような
光景を、火炎コンドルは不気味な笑いと共に見つめていた。
今日のところはここまでです。明日続きが出来次第更新します。
<<STUDY!>>
「ヴィルット博士とは?」
元ネタではこのヴィルット博士がキングダークの命令で「フランケンコウモリ」を誕生
させたそうです。前作に当たる「ウルトラ6兄弟vs怪獣軍団」では降雨ロケットを開発
した科学者でした。同じ俳優さんが同じキャスト名で出演しています。
>ナナシマンさん
(ヴィルット博士)
あっはっはっはっははは・・・・・・!(納得した上での大笑い)
あ〜あの博士ですかぁ…なるほど。「6兄弟」じゃ仏の領域に踏み入った報いを受ける格好で
研究所(元MAC基地)から避難出来ずに爆死したんですよね。
保全
実はこの後また飲み会が入ってしまいました。せっかく更新できると思ったん
ですが、今日のところは誠に勝手ながらお休みさせていただきます。
北部で起きたこの惨劇を知らない貴子一行は、目指す市内の一流ホテルに
到着した。今日のところはここで休み、明日ヴィルット博士を訪ねて大学へ
向かうこととなった。
「ミス稲葉、ミス矢口、着きましたよ。ここがあなた達の泊まるホテルです」
「ちょっとウィラポン・・・ここ高いんちゃうの?」
そのホテルは世界的に有名なホテルグループの一つだった。落ち着いた照明に
照らされた建物が夕闇に映え、ロビーでは身支度をきちんと整えたボーイが
宿泊客の荷物を運んでいる。パートナーをバッグに詰め込んで渡航した貴子の
所持金で泊まれるような場所ではないはずなのだが。
「確かに一流ホテルですからそれなりの値段ですけど、あなた達の滞在費用は
タイ王国とベトナム政府が負担します。心配しないで」
「確かに一流ホテルですからそれなりの値段ですけど、あなた達の滞在費用は
タイ王国とベトナム政府が負担します。心配しないで」
なんと貴子と真里の宿泊費用を国費で捻出していると話すウィラポン。気に
するな、とばかりの屈託の無い笑顔を二人に投げかけるが、当の二人にとっては
気にするなというのが無ん理な話かもしれない。
「国がおいらたちのホテル代まで出してくれるって、何か悪くない?」
「まんじ教、いやゼティマは今や東南アジア諸国にとっても許しがたい敵
なんです。ベトナム当局も私達の捜査に協力を惜しまないと言ってくれました」
世界征服をたくらむ巨悪との戦いは日本だけでなかった。彼らの野望のために
今日も世界のどこかで罪無き人々の涙が、そして血が流されているかも知れない。
両国政府は、事の深刻さを受け止めた上でこの得体の知れない敵と戦う、二人の
日本人に協力を申し出たのだろう。
かくして、今宵は二人にとって初めての異国の一夜となった。ウィラポンと
二人してホテルのバーで酔いつぶれてしまった貴子を置いて、真里は一人
プールサイドへと足を運んだ。
夜もすっかり遅くなり、プールサイドには人影もほとんど無かった。係員
がプールサイドパーティの後片付けに追われているほかは、観光客といえば
恐らく真里一人くらいなものだったろう。そんな中、夏の夜の空気に温んだ
プール際を真里はだしで歩く。
「あ〜、せめて旅行かなんかで来たかったなぁ」
一人つぶやく彼女の声に答える者は誰もいない。気がつけば、係員達も片付け
を終えて帰ってしまっている。真里の存在にまったく気がつかなかったのか
プールには彼女一人が残されてしまっていた。見上げれば、澄んだ空に満月が
煌々と輝いている。
「今頃みんなどうしてるだろう・・・」
日本に残してきた〜というより無理やり連れて来られたのでいきさつを話す
機会さえなかったのだが〜仲間達には、どうやら貴子の方から連絡を入れて
いたらしい。そうでなくとも、おそらく梨華の口から一部始終が語られていた
であろうから、そのことについてはさほど心配してはいなかった。ただ、夜の
闇が彼女の寂しさを描き立ててしまうのかもしれない。
と、その時不意にプールサイドに緩やかな風が吹く。夏の風にしては心地よい
適度な冷たさを帯びた風が頬を撫でるのに気づいた真里は、風上の方へと
目を向ける。すると、プールサイドの真里のいるちょうど反対側に誰かが立って
いるのが判った。
「・・・誰?」
風に髪をなびかせて立つ、一人の少女。身に着けている白いワンピースが
うっすらと闇に浮かび、月明かりに照らされたその姿はどこかこの世のもの
とは思えぬ雰囲気をかもし出している。
今日のところは以上です。また明日お目にかかりましょう。
保全。
そして、互いにプールサイドの両側に立つ二人の視線が交錯した。謎の
少女は真里の存在に気がついたのか、ちょっとはにかんだような表情を
見せるとそそくさと立ち去ろうとする。真里はいてもたっても居られなくなり
少女の後を追う。少女は真里が追いかけてくるのを知って、かえって
楽しそうにプールサイドをぐるぐると駆け回る。その間にも、心地よい風が
プールの周囲を巡っている。こうして真里と謎の少女の追いかけっこは
しばらく続いたが、ついに真里が少女に追いつき、彼女の肩に手を伸ばした。
「ちょっと待ってよ!おいらのことからかってないでさぁ」
真里の手が少女の肩に届こうとしたその時、眼の前の少女が急に真里のほうを
振り返った。柔らかくなびく黒髪の向こうに垣間見えた少女の顔。それは彼女
が知っているある少女に、非常に良く似ていた。
「ちょっと待って、ここに来てるのはおいらたちだけのはずじゃ・・・」
そんな真里の言葉をさえぎり、少女はおもむろに自分のうなじの辺りに手を
伸ばす。そして黒髪が二度三度ゆれると、その直後に少女の手に握られていた
のは、メダルのついたペンダントだった。少女はそれを真里の首にかけると、
どこかさびしげな笑顔を残して風と共に掻き消えた。
「何だろう、このメダル・・・」
真里は手渡されたペンダントについたメダルを手のひらに乗せてみた。
月明かりに輝くメダルには、踊るようなしぐさをした神様のような人物が
彫刻されている。真里はそれをそのままポケットにしまい込むと、つかの間の
不思議な体験とともにプールを後にした。
同じ頃、隣国ラオスの密林。うっそうと茂る木々に隠された、数百年前に
建立されたと思われる寺院があった。人の手の全くついていないかのように
密林に抱かれた荘厳な建物を象徴するかのように鎮座した、蔦の絡まる巨大
な仏の顔は、見るものをやさしく出迎えているようにも、威圧しているよう
にも見える。そんな世界遺産級の寺院の地下に、近隣諸国を脅かす邪教の
信徒、まんじ教の本山があるということはもちろん誰も知らない。
「タスキーパールーパーネーマラヤーヒー・・・ゼーティマー、
ゼーティマー・・・」
あの奇怪な僧侶が唱えていた読経が、かがり火の炊かれた地下の洞窟に
響き渡る。まんじ教に改造手術を施され、ツバサ一族の一員となった例の
悪党達が僧侶に身をやつし、この奇怪な経文を読み上げている。彼らの
周囲には例のまんじ教戦闘員がひざまづいて祈りをささげ、そしてその
先頭で祭壇に祈りをささげている、黒いローブをまとった白みがかった金髪
の老人の姿が炎に照らし出された。老人は赤い眼鏡のような仮面〜まるで
仮面舞踏会か何かのような、翼を模したであろう装飾が施されている〜を
かぶり、髪の毛と同じ色合いの長いひげを蓄えている。祭壇の向こう側には
コウモリを従えた大きな鷲の彫刻が周囲を威圧していた。
「偉大なるゼティマ、偉大なる創世王に栄えあれ・・・」
老人の祈りと共に、祭壇の炎がひときわ大きく燃え上がる。と、その時鷲の
彫刻の胸の部分が怪しく輝くと、地の底から響くような何者かの声が
聞こえた。
「ツバサ大僧正、この度の働き大儀であった。すでに東南アジア圏に
まんじ教の名が轟いているようだな」
「大首領、過分なお褒めの言葉ありがとうございます。すでにここラオス
を中心にベトナム、タイ、カンボジアにヒマラヤの悪魔をばら撒いて
おります。いずれは拳竜会が失った基盤を再び確保できましょう」
「だが、安心してばかりも居られぬ。ヒマラヤの悪魔のワクチンを開発した
科学者がいるそうではないか。ヴィルット博士という科学者から目を離すな」
謎の声の主、大首領の言葉に老人〜ツバサ大僧正は邪悪な笑みと共に言う。
「それならばご安心ください・・・すでに手は打っております。あの博士には
確かコチャンという息子がおります。我が手のものに命じて連れ去れば、
博士も我らの言うがまま。フッフッフ・・・」
今日のところは以上です。また明日お目にかかりましょう。
<<STUDY!>>
「コチャンって誰?」
「ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団」では、辮髪の信仰少年。仏像泥棒に殺された後に
ウルトラの母によってハヌマーンに転生、旱魃に苦しむタイを救う前に仏の権威を
脅かした仏像泥棒を二又一成の声で追い掛け回して仏罰を下します(w。
本作の元ネタである「5人ライダー」でも同じキャストで同じ子役が出演。その際は
博士の助手の少年という役割なのだそうです。
本日所用のため急遽お休みさせていただきます。続きはまた明日、ということで
申し訳ありません。
保全。
次の日の朝。レストランでの朝食時、真里は夕べの出来事を二人に話した。
夜のプールサイドに風と共に現れた謎の少女。そんな話を、貴子とウィラポンは
笑いながら聞いていた。
「ホントだってば、おいら見たんだから」
「矢口、あんたもしこたま飲んで酔っ払っとったんちゃうの?」
「矢口サン、あなたお酒飲めるの?」
ウィラポンは真里がどうやら未成年だと思っていたようである。しかし真里とて
今年20歳を迎えた身である。日本の法律に照らしても飲酒は出来る。
「だぁからぁ〜」
謎の少女の存在を夢幻のように言う貴子、そもそも真里が成人なのがいまだに
信じられないウィラポン。そんな二人に挟まれて、真里はすっかりむくれて
しまった。と、その時である。
『日本の娘さん、あなたも見たんですね』
それは彼女達にコーヒーのお変わりを持ってきたボーイだった。彼は3人分の
コーヒーを注ぎ終えるとこう切り出した。
『実はこのホテルの近くに孤児院があったんですがね。娘さん、あなたが
見たのはそこの女の子ですよ』
ボーイは語る。
今から一週間ほど前、ホテルの近くにあった孤児院が何者かに襲撃された。
子供達は無残にも殺され、目撃者の証言によると犯行直後と思われる時間に、
飛び去っていく大きな翼を持つ怪物の姿を見たという。そして、真里が夕べ
見た少女もその時の犠牲になったかも知れないと付け加え、こう言った。
『あの子は時々観光客を相手に花の髪飾りを売っていたんですよ。言葉が
判らないのか口が利けないのか知らないけど、しゃべらない子だったねぇ』
しかし、彼の話に二人の捜査官の興味は孤児院で起きた悲劇へと移っていた。
貴子は身を乗り出してボーイに話の続きを促す。
「で、その子供達はどんなんなってたん?」
『かわいそうにね、子供達は全身の血がすっかりなくなっていたんだ。
みんなは怪物が血を吸ったと噂してたね』
ボーイの言葉に、二人の捜査官に共通のある名前が浮かび上がる。それは
二人にとって憎き敵の名前だ。
「まんじ教・・・ゼティマ!」
孤児院の事件がゼティマの改造人間によって引き起こされたものだとすると、
事態は深刻の度を深める。そんな二人の危惧をよそに、真里は謎の少女の
ことが気がかりでならなかった。彼女の手の中には、夕べもらったメダルが
握られている。
「それで・・・その女の子はどうなったんですか?」
『判らないね。あの子一人だけ遺体が無かったんだよ。けど「ラブリー」の
ことはみんな心配してた』
「その子、ラブリーって言うんですか?」
真里の言葉にボーイはゆっくりと頷くと、更に言葉を続けた。
『名前が判らなかったから誰かがそう呼び始めたんだ。可愛らしい女の子
だったからね。本人も気に入ったのか、僕らが呼ぶと笑顔で応えてたよ』
本名かどうかはともかく、少女の通り名は『ラブリー』。その名を心に留め、
メダルを握り締めた真里の手に力がこもる。そして、三人は頃合を見計らって
ホーチミン大学にいるというヴィルット博士を訪ねることにした。
今日のところはここまでです。また明日お目にかかりましょう。
>>618 すいません、書き込む時間が遅かったばかりにお手数おかけしました。
>ナナシマンさん
無理なさらずに・・・。
車を走らせホーチミン大学へと向かう3人。車窓の風景を眺めていくうち、車は
目的地へと辿りついた。大学の管理部に通された彼女達は、しばらくして現れた
男に早速ヴィルット博士がいるという第6研究室へのある、大学東棟へと案内
された。東棟へは歩いても2分ほどだというので、一行はとりあえず彼の後を
ついて歩き始めた。
『日本から博士の研究のためにいらしたんですか?』
がっしりとした体格の男はそう言って貴子に話しかける。ただ、彼女は言葉が
わからないので、当然のことながら意思の疎通のためにはウィラポンの手を
借りなければならない。
「そういうところですね。ところで博士のいる研究室というのは」
『もうすぐてすよ。ほら、あそこです』
男の指差す先、前方100メートル程度の所にある近代的な研究施設が一行の
目にとまった。清潔感のある白い壁の表面には、空調機器の配管がわずかに
通っているだけなので、一見するとそこが細菌類の研究施設であるとは判りにくい。
『綺麗でしょ?この大学でも一番新しい建物でしてね。みなさん、そろそろ博士に
お会いになりますか?』
にこやかな笑顔で貴子と真里に男は言う。あまり時間をとっているわけにはいかない
ので、貴子は彼の言葉に頷く。
「せやな。いろいろ聞きたいこともあるし、博士のところに案内してくださいよ」
「おいらたち、あんまり時間がないんです。お願いします」
真里も貴子の言葉に追随して答えたが、それを聞くや男は不意に人が変わった
ような恐ろしい形相で言い放った。
『そうですよね・・・ですが、残念ながら皆さんが行くのはあの世ですよ?』
「何ぃっ?!」
そう言って男は自らの顔を手でひと撫ですると次の瞬間彼の顔は灰色の毛に
覆われ、鋭い牙を覗かせる怪物の顔に変わった。
「俺はツバサ一族、『木霊ムササビ』!お前達をヴィルットに会わせるわけには
いかん!!」
「お前達が何者かは知らんが、ヴィルット博士に近づく者は全て殺せと命じられて
いる。お前達とて例外ではない・・・者ども、出でよ!」
木霊ムササビの命令が下るや、奇声を上げて突如現れたのはまんじ教の戦闘員
達。その姿に真里と貴子は教団とゼティマとのつながりを確信した。
「こいつらはゼティマの戦闘員や・・・」
「するとやっぱり!」
取り囲む戦闘員達に対して、互いに背中合わせになって身構える真里と貴子。
ウィラポンも隠し持っていた拳銃を取り出すと、両手で構えて射撃の準備姿勢を取る。
数で勝るまんじ教の軍団にたった3人で挑む愚か者達に目に物を見せてやる、と
不気味な笑みを浮かべた木霊ムササビは、戦闘員達に攻撃を命じる。
「一人も逃がすなよ、殺れ!!」
怪人の声に呼応し、戦闘員達は一斉に3人に襲い掛かった。迎え撃つウィラポンの
銃が火を噴き、手近な戦闘員を吹き飛ばすと、それを合図に真里と貴子が包囲する
敵の輪の中に自ら踊りこむ。まんじ教の手が大学にまで伸びているとするならば、
博士の身に危険が及んでいる可能性がある。3人は敵中を突破して博士を救うつもり
なのだ。
「おらぁ!」
「えいっ!!」
貴子の拳が駆け寄ってきた戦闘員の顔面を捉えると、戦闘員はコマのようにくるくると
回転して宙に舞う。真里も負けじと小さな体から渾身の蹴りを見舞い、食らった戦闘員
はくの字に折れ曲がって動かなくなった。ウィラポンも銃から素手の格闘戦に切り替え、
まるでキックボクサーのようなしなやかな上段蹴りで戦闘員を沈める。
「おぉ、ウィラポンかっこええやん。見直したで」
そんな貴子の言葉ににっこり微笑むウィラポン。続いて襲ってきた戦闘員にも肘打ちを
叩き込み、よろめいたところを首相撲に持ち込んで膝蹴りを叩き込む。この光景に、
たった3人と高をくくっていた怪人木霊ムササビの顔から余裕が消えた。予想外の敵の
猛反撃に、気づけば手下はあらかた叩きのめされてしまっている。
「こいつはおいらに任せて、二人は博士のところへ!」
真里の言葉に促され、ウィラポンと貴子は東棟の中へと消えていく。残るは
木霊ムササビ一人。真里は怪人を睨み据えたまま、両腕を右にそろえて構え、
そのまま変身のポーズへと移行していく。
「変・身、V3ァ!」
まばゆい光を放って回転するダブルタイフーン。少女の姿は見る間に赤い仮面の
戦士へと変貌した。
「V3だと?もしや貴様は仮面ライダーの一人か!!」
「仮面ライダーV3!お前達の悪巧みを打ち砕くために、日本からやってきたぞ!!」
力強い見得とともにV3は怪人に駆け寄り、先制の一撃とばかりに顔面にパンチを
食らわす。一方の木霊ムササビも負けじと腕を振るって反撃を試みる。その手を
上手く捌き、V3は木霊ムササビの顔面を蹴り上げ、そしてのけぞったところにパンチ
の連打。連続攻撃で怪人相手に畳み掛ける。
「とうっ!とうっ!!」
「ギィィッ!!」
顔を抑えて悶える木霊ムササビ。この機を逃すまいとV3は更なる追撃のために
一気に間合いを詰めるが、その時である。
「食らえ!」
「うわぁっ!!」
木霊ムササビが突如繰り出した不意打ちの一撃、「毒ミサイル」。この一発を食らって
ひるんだV3に、怪人の反撃の一打が炸裂する。お返しとばかりにV3の胸にキックを
食らわすと、後方に転がって間合いを広げたV3に木霊ムササビは言った。
「俺の毒ミサイルを思い知ったか。飛び散った毒のせいで目が見えんだろう?
ケッケッケッ」
そう言うや、木霊ムササビは視界を奪われて片膝をつくV3に飛びかかり、嬉々として
その身体を打ち据え、蹴り飛ばす。吹き飛ばされたV3を追いかけると、更に追い討ち
の一蹴りがわき腹に叩き込まれた。
「ぐぁっ!」
「ケッケッケッ・・・どうだV3、目が見えなければ反撃も叶うまい」
どこからか聞こえてくる怪人の声。今のV3は、木霊ムササビが背後を取っている
ことに気がつかないのだ。見えない目で敵の姿を捜し求めるV3の背後から、
木霊ムササビの鋭い爪が迫る!
今日はここまでです。また明日お目にかかりましょう。
>>名無し天狗さん
今日は思いのほか時間があったので結構書き進めることができました。実は
昨日今日が仕事で明日休みですので、今日位かそれ以上に話を進められると
思います。
>ナナシマンさん
こっちも負けてられませんね。私も頑張って(←ホントカ?)いいネタを仕入れます!
635 :
まめをたそ:03/10/06 03:30 ID:TnofjxDX
良スレ
「死ねぇ、V3ィィ!!」
鋭い爪が今まさに首筋に振り下ろされようとしたその時、V3は気配で敵の動きを
察知し、振り下ろされた腕をがっちりと掴む。
「おのれ、騙したな!」
「毒ミサイルの爆発はとっさに手で防いだ。爆風は堪えたが、毒は平気だったぞ!」
V3は突然の爆発に見事に対応し、毒液の飛散を手で防ぎその被害を逃れたのだ。
そのときに腕を襲った衝撃は確かにかなりのものだったようだが、それさえもV3が
戦いをやめる理由にはならない。そしてV3は右腕を振上げ、必殺の一撃を怪人の
腕に見舞った。
「V3ーっ、電撃チョーップ!」
手刀にエネルギーを集中し、自由の利かない怪人の腕めがけて振り下ろす。強烈な一撃は
一撃の下に怪人の腕を切断してしまった。
「ギャアアアアアア!!」
ムササビ特有の皮膜だけで支えられた腕を押さえてのた打ち回る木霊ムササビ。
この機を逃さずV3は空中高くジャンプする。落下の勢いと共に繰り出されるパンチ
が怪人の脳天を打ち砕くと、再びV3は宙を舞い、高空からパンチを繰り出す。
こうして繰り出される3連続の空中パンチこそ、「V3トリプルパンチ」だ。
「V3ーッ!トリプル、パァーンチ!!」
「グアアゥァァァァァッ!」
V3の必殺技の前にツバサ一族の刺客木霊ムササビは絶命し、瞬く間に不気味な
泡となって消滅した。
戦いを終えたV3に、シグナルランプが新たな事態を告げる。ヴィルット博士を
救出しに研究室へ向かった貴子からの連絡が入ったのだ。
『V3、稲葉や。博士の息子さんがまんじ教にさらわれてしもうた。すぐ来てや!』
まんじ教はヒマラヤの悪魔に対抗できるワクチンの開発を断念させるために、ヴィルット
博士の一人息子であるコチャンを連れ去ったというのだ。V3はすぐさま東棟にある
博士の研究室へと駆けつける。そして、研究室にたどり着いたときV3が見たものは、
うなだれて呆然となる一人の男性と貴子、ウィラポンの姿だった。
「V3!」
「稲葉さん、どうしたんですか?博士は!?」
「博士もワクチンも無事や。ただ、博士の息子さんが・・・」
木霊ムササビ率いるまんじ教の部隊とV3が戦っている間に、二人はヴィルット
親子を救うために研究室へと急いだ。しかし敵はもう一人存在したのだ。突然姿を
現した、まるで植物の塊のような怪人が突如現れてコチャン少年を蔦で絡め取る
と、そのまま裏庭の地中へと引きずり込んでしまったのである。
「俺はツバサ一族、『バショウガン』!お前の息子は我らが預かる。返して欲しくば
ラオスの『月の寺院』へワクチンを持って来い!!」
コチャン少年を人質にとられ、貴子とウィラポンは怪人の狼藉を黙って見ているしか
出来なかった。その一部始終をV3に語り終えた貴子は、ウィラポンとともに博士に
わびる。
『私達がいたらないばかりに、ご子息を危険な目に・・・』
しかし博士は二人の肩に手を置くと、落胆する二人を見つめて言う。
『こうなることは判っていました。ワクチンが完成してから、私たち親子は
狙われていたんです。みなさんにお見せしましょう。これがワクチンです』
そう言ってヴィルット博士は厳重に施錠されたジュラルミン製のケースを
取り出すと、それを開いて数本のアンプルを3人に見せた。
『ヒマラヤの悪魔というウィルスがその効果を完全に発揮するためには、一定の
周波数の超音波が必要です。感染者がこの超音波にさらされると、本人の意思に
関係なく操られてしまいます』
ヴィルット博士が突き止めたヒマラヤの悪魔の正体。それは感染した人間を己の
意のままに操ることの出来る恐るべきウィルスであった。
「人間を操るウィルス・・・ゼティマめ、とんでもないものを」
『したがって、超音波自体を遮断すれば感染者が操られることはありません。
しかし、それでは何の解決にもならないのです。そこで私はこのワクチンを開発
しました』
タイ王国が誇る頭脳、ヴィルット博士は比較的早い段階でこのウィルスの正体を
解明していた。そしてワクチンの開発に成功するが、その頃から親子に対する
何者かの脅迫が続いていた。そしてついに、彼の息子コチャンは敵の手に落ちて
しまった。
『私にはこのワクチンを使って人々を救う使命がある。しかし、奴らに逆らえば
息子の命が危ない。私は一体どうすれば・・・』
一人息子の命と、ヒマラヤの悪魔の猛威に苦しむ人々の命。あまりに厳しすぎる
選択である。しかし、そんな博士を勇気付けるように、V3は力強い口調で言った。
「大丈夫。仮面ライダーV3がついています。まんじ教の脅しに屈することは
ありません。ワクチンの増産をお願いします」
「あたしもウィラポンもおるし、必ず息子さんを助け出して見せます」
V3と貴子の言葉がウィラポンの通訳によって博士に伝えられると、その言葉に
勇気付けられたか博士は3人の手を取る。
『ありがとう。私も勇気が湧いてきました。コチャンのことを頼みます』
博士の言葉に、3人は力強く頷いて応える。卑劣極まる邪教の信徒に対し、反撃
の救出作戦が始まろうとしていた。
今日のところはここまで。また明日お目にかかりましょう。
>>名無し天狗さん
お互いのスレが面白くなればそれが一番ですね。ガンガらねば。
博士にコチャン少年の奪還を約束した3人は、彼がまんじ教の怪人に引き込まれる
のを目撃した裏庭に向かった。そこには確かに、何か大きな生き物が出入りしたかの
ような穴が開いている。怪人バショウガンは、この穴を通って移動したというの
だろうか。
「これを通れば敵のアジトに行けるかな?」
「んな事あるかいな。何日かかるか判ったもんやないで」
さすがにこの穴を追跡したところで敵のもとにたどり着けるはずは無い。少年の
消息を探る手がかりは、もはや『月の寺院』という言葉だけになってしまった。
と、その時穴のそばに人形のようなものが落ちているのを真里が見つけた。
「ウィラポン、これ」
そう言って真里が差し出したのは、三叉の戟を持った神様を模ったプラスチックの
人形であった。これを手に取ったウィラポンは即座にこう言った。
「それは『ハヌマーン』。白い猿の姿をした、インドの神様です。きっと博士の
お子さんが持っていたものだと思います」
「神様の人形が売ってるの?」
「東南アジアでは子供達のヒーローですよ。映画にも出てたしね。博士が拾うかも
しれないから、とりあえず置いておきましょう」
真里はその言葉に従ってハヌマーンの人形をとりあえずその場に置くと、二人とともに
駐車場へと向かった。
と、そんな3人のやり取りを物陰から眺めていた一人の少女の姿があった。時ならぬ
一陣の風に髪をなびかせたその少女は、夕べ真里がプールサイドで出会ったあの白い
ワンピースを着た少女だ。彼女は人形のそばへと駆け寄ってそれを拾い上げると、両の
手のひらにおいて息を吹きかける。すると不思議なことに人形はつむじ風とともに
空のかなたへと消えた。その様子を見届けると、一陣の風と共に少女は再びどこかへと
去っていった。
早速3人は国境を目指すべく、大学を後にした。ラオスにあるという月の寺院は、
聞けばガイドブックにも掲載されていない秘境の寺院遺跡であるという。
「月の寺院の位置はラオスの公安関係に問い合わせれば聞けば判るでしょう。それに
しても、まさか遺跡の下にアジトを築くなんて」
「ウィラポン、ここから車だとどれくらいかかるの?」
ベトナム、いや東南アジアの国土の広さを今ひとつ理解しかねる様子の真里がそう
言ってウィラポンにたずねる。しかし、彼は冗談じゃないと言った風にしてこう答えた。
「陸路?とんでもない。ハノイに行くのだって列車で40時間かかるのに。これから
ホーチミンからハノイを経由して、ラオスの首都ビエンチャンへ飛行機ですよ」
「じゃあ、またおいらバッグの中なの?」
「ハハハハ。まさか。言ったでしょ?お金の心配はありません」
その傍らで、貴子がどこかへ電話をかけている。英語でかわされる会話は真里の理解を
超えていたが、通話を終えた貴子は一仕事終えたかのような笑顔を浮かべて言った。
「ラオスの警察には話がついたで。後で担当者が寺院の正確な位置をメールで送って
くれるって」
その言葉を待っていたかのように、ウィラポンがエンジンキーに手をかける。そして
キーをひねると、年季を感じさせる調子はずれなエンジン音が鳴り出す。
「さぁ、出発!」
三人を乗せた車は一路ホーチミン空港へと向かう。そこから空路でハノイへ、そして
そこから再び飛行機でラオスの首都ビエンチャンを目指す。ついにまんじ教の懐へと
飛び込む3人。いかなる罠が待ち受けていようとも、恐れることなく突き進むだけだ。
数刻の後3人はビエンチャン入りを果たし、入手した地図をもとに月の寺院を目指す。
ちょっと短いんですが今日はここまで。多分今週いっぱいで完結の予定です。
<<STUDY!>>
「ハヌマーンとは」
インド神話に登場する、風神の子にして猿の軍団の王。その名は「骸骨を持つ者」の
意。変幻自在にして自由に空を翔け、その尾は無限に伸び、雄たけびは雷鳴の如く
地の果てまでも響いたとされる。インドはおろか東南アジア圏で人気のある神様で、
特に仏教国であるタイでは子供達のヒーローである。その日タイ両国のヒーローが手を
結んだのが、チャイヨープロの手になる例の2作品。
>ナナシマンさん
遂に・・・。
>>名無し天狗さん
もともと例の映画は「5人ライダー対キングダーク」がモチーフなのに、なぜか
V3が主役扱いらしいんですよね。「ライダー5人」合体なんていう、ウルトラの鐘
を取りに行ったウルトラマンタロウみたいなシーンもあるそうなのですが、合体後
の姿もV3ということらしいです。で、すぐ分離するという(w。
一方こちらはまんじ教のアジト、月の寺院の地下。薄暗い洞窟の中に、坊主頭の
少年が気を失って横たわっている。彼こそがバショウガンによって連れ去られた
ヴィルット博士の一人息子、コチャンである。怪人によって拉致されてから数刻
がたち、少年はようやく意識を取り戻した。少しずつそのまぶたが開いていくと
同時に、彼の目にはまた新たな闇が映し出された。
『ここは・・・どこだろう』
ゆっくりと身を起こすと、コチャンは自分の周囲を手探りしながら、その周囲を
動き回る。ひんやりとした岩壁に囲まれた独房、洞窟に穿たれた穴倉の中に
自分がいることを理解するには、そう時間はかからなかった。
『そうか・・・悪い奴らにさらわれてここに連れてこられたんだ・・・』
父親と離れ離れになった寂しさと、これから待ち受ける悪の使者達に対する不安
が入り混じって彼の心の中をぐるぐるとかき乱す。やがて少年の目からは大粒の
涙が溢れ出した。
と、その時である。孤独と不安におびえる少年の耳に、何者かの声が聞こえて
きた。
『心配しないで。正しい心を持った強い人が、きっと君を助けに来るよ』
『誰?!』
少年の声に答えるように、どこからかゆるやかに吹きつけてきた風。そしてそれが
止むと同時に、そこに立っていたのはまたも白いワンピースの少女だった。
『その人は今、森を抜けてすぐそこに来ているよ』
『教えて。その人は誰なの?』
涙をこらえて、つぶらな瞳で自分を見つめている少年の視線に、少女は柔和な
笑顔でこう言った。
『風を力に換えて悪と戦う正義の人。その人の名は仮面ライダー。日本から
やってきたの』
『仮面ライダー?日本から僕を助けに来てくれるの?』
『君だけじゃなく、まんじ教に苦しめられている全ての人を助けに来たの・・・
いけない、誰か来る』
何者かの気配を察知した少女は、再び風と共に独房から掻き消えた。コチャンはその
様子をしばし呆然と眺めていたが、少女の言葉を心に留めて涙をこらえる。やがて
通路の向こうから足音が聞こえてきた。その足音は次第に大きくなり、そして少年
が囚われた独房の前でぴたりと止まった。足音の主は彼のところにやってきたのだ。
『おい坊主、腹が減ったろう。飯を持ってきてやったぞ』
少年の足元に、適当によそわれた粥のようなものがこれまた投げやりに盆に載せられて
差し出された。自分をさらった連中の施しなど受けない、とばかりにコチャン少年は
ぷいと顔を背ける。だが、食事を差し出した男は無遠慮に房の中に足を踏み入れて言う。
『心配するな坊主、毒など入ってはおらん。お前は大事な人質だからな。さぁ、
とっとと食え』
少なくともヴィルット博士からワクチンを奪うまでは、一人息子である彼を生かして
おく必要がある。だから彼には現時点では手出しをしないのだ。そんな怪しげな男の
言葉に、思い出されたのは先ほどの少女の言葉だった。風を力に変えて悪と戦う
正義の人、その名は仮面ライダー。少年は謎の少女の言葉を信じ、差し出された
粥をひったくってすすり上げた。
『そうだ。しっかり食っておけよ。また後で見回りに来るからな』
男は満足そうな笑みを浮かべ、コチャンの囚われた房から去っていった。
一方、ラオス警察から送られてきたメールに添付されていた地図をもとに、
真里たち3人はようやく密林の奥にあるまんじ教のアジト「月の寺院」にたどり
着いた。うっそうと生い茂る熱帯性の植物に包まれた、威厳漂う仏教遺跡。
しかし密林に隠された古代の寺院は、実は邪教の使いが潜む魔窟であることは
3人には一目瞭然であった。なぜなら、寺院の周囲を見覚えのある黒い軍団が
警備に当たっていたからだ。
「やっぱりここで間違いないね」
「あぁ。奴らの悪巧みは必ず食い止めなあかん。そうや、ウィラポンあれ出して」
「はい」
貴子に促され、ウィラポンが背負っていたリュックから何かを取り出す。中から
出てきたのは、何か毛の塊のようなものであった。真里が更に良く見てみると、
どうやらそれはカツラらしいことが判った。しかも、それはかなり大きなアフロヘア
である。
「稲葉さん、これ・・・ヅラ?」
「そうや。これからウチとウィラポンはヴィルット博士とその助手トムヤンクン
に変装してあいつらの注意をひきつけるさかい、あんたはその隙を突いて寺院に
潜入してや」
(「トムヤンクン」て・・・しかもアフロのヅラかよ・・・)
真里の心の声も何のその、ウィラポンと貴子は徐々にその姿をヴィルット博士と
助手トムヤンクンへと変貌させていく。髪を丁寧にポマードで整えたウィラポンの
たたずまいはタイ王国一の頭脳としての知性を感じさせたが、一方の貴子、いや
トムヤンクンはどうか。不自然なほど大きなアフロヘアはまるで疑ってくださいと
言わんばかりである。
「稲葉さん・・・やっぱりそれヤバいって・・・」
結局真里の必死の説得によって貴子はアフロヘアを諦め、普通のサングラスを
掛ける程度の変装で準備を終えた。そして、偽のワクチンが入ったアタッシュケース
を持って、貴子とウィラポンは月の寺院入り口へ向かう。その様子を見届けると、
今度は真里が草木を掻き分け寺院の裏手へと回りこんだ。
本日は以上です。これからストーリーは終盤に向かいます。今回はかなり異色な話
ですが、もうしばらくお付き合いください。
@ノハ@
( ‘д‘)<そろそろ打ち合わせ用に使こてるスレが容量的にヤバイでしかし
月の寺院内部に侵入した真里。壁に身を隠し中の様子を伺うと、そこには二人の
戦闘員が周囲を警戒していた。彼らがいる場所が地下のアジトへの入り口に違いないと
踏んだ真里。潜入するためには二人を倒さなければならないが。
真里はおもむろに手近にあった小石を掴むと、石畳の通路に向かって放り投げる。
弾んだ石が音を立てると、それに気づいた戦闘員が身構えて周囲を見回す。
「・・・誰もいないな」
「大方石壁が崩れて、欠片が跳ねたんだろう」
二人の戦闘員が石の飛んできた方向から視線をそらしたそのとき、真里はすかさず
彼らの背後を取って、手近な戦闘員に当身を叩き込む。
「ギッ!!」
一撃の下に倒される戦闘員。しかし、敵はもう一人いる。彼とペアを組んでいたもう
一人の戦闘員はすぐさま手にしていた自動小銃を構える。
「貴様っ・・・!」
しかしここで発砲されてはたまらない。真里は敵の足元をねらって脚払いをかけて
転倒させると、すぐさま持っていた小銃を奪い取り、それで腹に一撃を加えた。
「グエエエッ!」
一瞬で二人を沈黙させたところで、真里は周囲をうかがいながら地下への階段を
降りていった。
一方、敵を欺くために変装を完了した貴子たちは、正面から堂々と敵のアジト
へと乗り込んでいく。もっともそれは敵との取引に応じた形である以上当然の
ことであったが、案の定そこにはまんじ教の軍団が待ち受けていた。木々に
隠された遺跡の中にあって、緑のじゅうたんが敷き詰められたような中庭に
両陣営が対峙していた。
『ヴィルット博士か』
『そうだ。ワクチンを持ってきたぞ。早く息子を返してくれ』
そう言ってウィラポン・・・いやヴィルット博士は手にしたアタッシュケースを
これ見よがしに突き出す。もちろんその中に入っているのは、敵を欺くために
用意した偽のワクチンである。彼の横にはトムヤンクン〜貴子の姿もあった。
『ワクチンをよこせ!!』
『息子が先だ!』
アタッシュケースを渡すよう強要するのはまんじ教の怪人火炎コンドル。その
傍らにはコチャン少年をさらったバショウガンも控えている。しかし、真里が
少年を救出するまでは何とか時間を稼ぎたいところだ。偽物とはいえ簡単に
渡すわけにはいかない。
『おのれ強情な奴らだ・・・力づくでも奪い取れ!!』
『約束が違うぞ!』
『約束を守るまんじ教か!やれ!!』
火炎コンドルの命令に、戦闘員達が一斉に襲い掛かる。博士とその助手も必死に
ワクチンを奪われまいと抵抗するが、そのとき、助手トムヤンクン、いや貴子の
サングラスがもみ合いのさなかに外れてしまったのだ。
「いったぁ〜、何すんねんな!!」
「ぬぅ、貴様・・・日本人か!さては!!」
作戦はあっけなく破綻し、二人が偽者であるということがばれてしまった。
アタッシュケースに入れた偽のワクチンも、貴子の偽名「トムヤンクン」も
この瞬間に無用のものとなってしまった。すぐさま火炎コンドルとバショウガンの
二大怪人と戦闘員が二人を取り囲み、その包囲網をじわじわと縮めていく。
「なめやがって・・・俺たちを引っ掛けようって腹だったのか」
「お前達もガキも殺してやるからな、覚悟しろ」
手にした武器を振上げて今にも襲い掛からんばかりのまんじ教軍団。火炎コンドル
は鋭い爪を振上げて威嚇し、バショウガンも不気味な奇声をあげながら二人に
にじり寄る。とその時、天空から一陣の風が吹き降ろし、やがてそれはつむじ風と
なって草原を揺らす。そして、突然の風が止んだその直後。善悪合い見えたその
只中に顕現したのは金銀に輝く装飾品に身を包んだ風神の子。神話の中の存在
でしかないと思われていた、白い猿の王が今まさに降り立ったのである。
「何やアレ・・・新手のゼティマ怪人?」
「とんでもない!!あれがハヌマーン、風神の子ハヌマーンですよ」
確かに、現れた神の使いは一見すれば目の前にいる怪人たちとそう変わらない
怪しげな風貌をしている。コチャンが残した玩具の人形そのままの姿をした白猿
は、猿がする毛づくろいのようなコミカルなしぐさをしながら、踊るように貴子
とウィラポンのところへと近づいていく。そして、二人をかばうように敵の前に
立ちはだかるとこう言った。
「話は母上から聞いている。このハヌマーンも手伝うぞ」
そう言うやハヌマーンは華麗にトンボを切って敵の眼前に降り立ち、身を躍らせて
まんじ教の軍団に斬りかかっていく。手にした三叉の戟を振るい、まるで疾風の
如き身のこなしで寄せ来る敵と切り結ぶ。
「母上って・・・言うてなかった?」
不思議そうな顔をしてウィラポンにたずねる貴子。確かに白き猿は、母より聞き
知った事情によって自分達に助太刀をすると申し出た。だが、だとすれば彼の
母は誰なのだろうか。
「そうか!矢口さんが出会った女の子は『アプサラス』の化身だったんだ」
「プールの幽霊のこと?で、何やの?そのアプサラスって」
「水の聖霊ですよ。ハヌマーンは風神ヴァーユとアプサラスのアンジャナーとの
間に生まれた子供です。矢口サンが見た女の子が、きっとそうに違いないですよ」
水の聖霊の化身であれば、プールサイドに現れて消えたことも納得がいく、と
ウィラポンはしきりに頷いている。敬虔な仏教徒である彼は眼の前で起きた仏の
御技に興奮することしきりといった風だが、一方の貴子は眼前の光景にすっかり
取り残されてしまった感じである。そもそも、真里が見た謎の少女と水の聖霊を
結びつける根拠などどこにも無いのだが、神が顕現した以上はそこに何かしらの因果を
考えなければ眼の前の現象の説明がつかないのである。貴子はこれ以上考えるのを
止めた。自分たちの危機を知ったこの世ならざる存在が助太刀をしに駆けつけた、
それで良いじゃないかと強引に自分を納得させる。
しかし、外でこのような騒ぎが起きてしまった以上、まんじ教は恐らくコチャンに
その魔の手を伸ばすことだろう。貴子の胸に不安がよぎる。
「もうあたしには何が何だか・・・って、あかん!矢口たちが危ない!!」
今日の分は以上です。また明日お目にかかりましょう。
>ナナシマンさん
ハヌマーンと言えば「6兄弟」のイメージが強かったので、
タイのライダー映画に出たと言う事実を
初めて知ったときは困惑を隠せなかったものでした・・・。
とうとう出たなハヌマーン(w。
>ナナシマンさん
でも、よく考えたら共闘者に恵まれてますよね、ハヌマーンって。
一方、当の真里はコチャン少年の姿を求めてアジトの地下通路へと足を踏み入れた。
敵の目を盗みながら、最深部へと向かう真里はやがて未舗装のむき出しの岩に覆われた
歩道が続く通路へとたどり着いた。水滴の落ちる音が時折聞こえる中、真里は暗闇に
囚われた少年の姿を探す。
しかし、彼女は気づいてはいない。外で起きた騒ぎによって、まんじ教の警戒が
基地の中に向けられたことを。真里の動きはたちまち、教団の知るところとなって
しまった。ツバサ大僧正が祈りをささげる祭壇のそばに設けられたモニターに侵入者
の姿が映し出されると、それを目ざとく見つけた戦闘員がツバサ大僧正の祈りを遮る
形で彼に報告した。
「ツバサ大僧正さま、侵入者を発見しました!」
「何だと?見せてみよ」
岩壁に隠された隠しカメラは、壁伝いに少年の姿を探す真里の姿を克明に捉えていた。
その姿に、ツバサ大僧正は邪悪な笑みを浮かべて言った。
「フフフフフ。さてはあの坊主を探しに忍び込んだか。まぁよい、行かせてやれ。
しかし独房にたどり着いたときが、あの小娘の最期よ」
そして真里はついにコチャンの囚われている独房へとたどり着いた。疲れて
すっかり眠っている少年に、真里はまずとにかく呼びかけてみることにした。
「コチャン、起きて。コチャンってば」
自分の名を呼んでいる耳慣れない少女の言葉に、少年は目を覚ましゆっくりとその
身体を起こす。彼の眼の前に立っていたのは、先ほどの謎の少女とはうって変わって
小柄な日本人の少女だった。
『あなたが日本から来た仮面ライダーなの?』
眼の前にいる少女が、風の聖霊に聞いた救い主だとは到底信じられない。見た限り
では、自分が見聞きして知っている日本人の女の子とそう変わりないのである。髪の
色が少々違うくらいで、あとは何の変哲も無い日本人にしか見えないのだ。しかし
コチャンのこの言葉も、真里に通じているかどうかは怪しいものだった。なにせ通訳の
ウィラポンは表でまんじ教とやり合っているのである。自分の意思を伝える手段は今の
彼女には無いのである。ただ、彼女にたった一つだけ耳に残る単語があった。コチャン
はしきりにこう尋ねているのである。
『ライダーなの?』
これが真里の耳に届くとこうなる。
「アイモッデーン?」
彼はしきりにこの単語を口にする。まるで何かを確認しているように、である。
とにかくまずは自分に対する警戒を解いてもらわなければ助けることも出来ない真里は
適当に相槌をうって答えた。この真里のしぐさに、コチャンは初めて警戒を解き真里に
笑顔を見せる。
「よかった・・・おいらのこと信用してくれたんだね?」
しかし、今の真里には余り時間が無かった。コチャンの房と通路を隔てる鉄格子は
太い金属の棒で作られている。迅速な救出を考えるなら、変身して一気に破壊した
方が早いに決まっている。真里はすぐさま変身の構えを取ると、少年の眼の前で仏の
奇跡に匹敵する科学の生んだ希望の光がほとばしった。この瞬間、少年は眼の前の
少女こそが正義の人、仮面ライダーであると確信したのだ。
「さぁ、下がって」
V3はコチャンに対して房の奥へ下がるようジェスチャーで伝える。一方コチャンも
それを理解したかすばやく房の一番奥へと一目散に駆けていく。V3は今一度鉄格子
の強度を手で触って確認すると、鋭い手刀をぶちかます。
「とうっ!!」
人間の力では到底破壊することなど不可能な太さの金属棒が、一瞬にして切断され
房の外へと転がり落ちる。自分の体が入る程度の隙間が確保されたところで、V3
は独房の中へと足を踏み入れ、駆け寄った少年の肩を抱く。
「よくがんばったね。えらいえらい」
後は少年と共に房を脱出し、外へと出るだけなのだが・・・その時である。
「残念だが、お前達を逃がすわけにはいかん。お前達にはここで死んでもらう」
「何だと!!」
どこかから聞こえてきた不気味な声にV3が周囲に視線を走らせる。次の瞬間、床から
分厚いガラスな壁がせり出してくると、先ほど手刀で切断した鉄格子を覆うように二人の
退路をふさぎ取り囲んだ。
「くっ・・・出せ!!」
V3は何度もガラスの壁を叩くが、その壁はびくともしない。いくら殴ろうとも、傷一つ
入らないのである。そして、ガラスの向こうに人影が現れた。それは長い金髪とひげを
蓄えた怪しげな老人の姿だった。まんじ教教祖、ツバサ大僧正がついにV3の前に姿を
現したのだ。
「お前が仮面ライダーか。この強化ガラスはバズーカ砲の直撃でもヒビ一つはいる
ことはない。そして、この房の床にはゼティマの科学力で作られた趣向が施されて
おる・・・重力発生装置のスイッチを入れろ」
そう言うや、傍らに待機していた戦闘員が壁に設置されているスイッチを押す。その
直後、独房に閉じ込められたV3とコチャンに尋常ならざる圧力がのしかかる。いや、
それだけではない。謎の力は二人の足元にも及んでいた。頭上からの力と同時に、まるで
何十人もの人間に引き込まれそうな力が二人の足を襲っているのだ。それは頭上と足元
から発生する何かの力によって身動きを取れなくされるような感覚であった。
「今、この房には地上の20倍の重力が働いてお前達を足止めしておる。そしてワシ
は今から一分後にこの寺院を爆破するつもりだ。瓦礫に埋もれて死ね、仮面ライダー!」
ゼティマの科学力によって作られた重力発生装置によって、絶体絶命の危機に立たされた
仮面ライダーV3。このままコチャン少年と共に、寺院の爆破に巻き込まれてしまうの
だろうか?!
今日の分は以上です。また明日お目にかかりましょう。
>>669さん
ついに出ました(w。ラブハロ!を購入したときから考えていた話だったので、アジア
舞台だと相方はハヌマーンしかいないだろう、と。
>>名無し天狗さん
確かにそうですね。ウルトラマンと仮面ライダー、日本が誇る二大キャラクターと唯一
競演を果たした外国ヒーロー(?)ですからね。でもライダーは東映未承諾・・・(w。
ちなみに、「アイモッデーン」は例の映画の原題から取っていまして、意味は本当に
「ライダー」らしいです。(「5アイモッデーン」で「5人ライダー」の意)で、ライダーV3は
「アイモッデーン・ブイサーム」と言うそうです。
>ナナシマンさん
翻訳装置さえあれば・・・。
通常の20倍の重力が働く閉鎖空間で、思うように動きが取れないV3とコチャン。
その姿を残忍な笑みと共に見届けているツバサ大僧正。と、そんな彼の元に戦闘員が
やってきて爆破準備が整ったことを告げる。
「ツバサ大僧正様、アジトの爆破準備が整いました。スイッチを押せば正確に1分
後にはここは跡形なく吹っ飛びます」
「よろしい。総員脱出せよ・・・それでは、さらばじゃ仮面ライダー」
黒いローブを翻し、ツバサ大僧正は独房に閉じ込められた二人の前から去っていった。
恐らく彼らが確実に脱出したのちスイッチは押され、その1分後には二人はこの世から
いなくなってしまう。それが敵の目論見だ。
「ちっくしょう・・・何とか脱出する手立てを考えないと。変身したのは良いけど
ダブルタイフーンが回らないなんて」
V3の力の源、ダブルタイフーン。そこからパワーを引き出そうにも、風の力が無い
のと20倍の重力でV3はその能力を発揮できないでいるのだ。と、その時V3の
耳に聞き覚えの無い声が聞こえてきた。
「仮面ライダー、私があげたメダルを使って・・・」
「もしかして・・・ラブリー?!」
特殊強化ガラスで隔てられた独房の向こうに、プールサイドで出会った少女の姿が
あった。声の主は彼女であった。ラブリー、いや水の聖霊アンジャナーはV3の心に
語りかけ、脱出のための力を授けに来たのである。しかし二人はまだ、彼女が水の
聖霊であることを知らない。V3は言われるがままに受け取ったメダルを取り出す。
「これをどうすればいいの?」
「あなたのベルトには、このメダルと同じ大きさの窪みがあるはず。そこにメダル
をセットすれば、聖なる風の力があなたを助けてくれるの」
V3はその言葉に従い、手探りでベルトにあるという窪みを探す。そして、腰の辺り
にそれを見つけると、V3は迷うことなくそこにメダルをセットした。すると。
『ギュイイイイイイン!!』
通常では考えられないほどのまばゆい光を放ってダブルタイフーンが猛回転し始めた。
そのとたん、V3の身体に信じられないほどのパワーが漲る。20倍の重力が押さえ
つけているのもなんのその、全く普段どおりの身のこなしが可能になった。そうなると
最初にこの力をぶつける場所は一つだ。
「よーし・・・とうっ!!」
v3は掛け声と共に、先ほどまで歯が立たなかった強化ガラスにパンチ一発。すると
その直後、まるでクモの巣のようにひび割れがはしるとガラスは粉々に砕け散った。
すると先ほどまで二人を苦しめていた通常の20倍もの重力を発生させていた装置は
まるでガラスの崩壊に呼応するかのようにものの見事に破壊され、二人は重力の罠
から解き放たれた。
「よし、行こう!」
V3はコチャンの手を引き、地下の独房から脱出する。先ほどまで外にいた少女に
礼を言うつもりだったが、いつの間にか少女の姿は消えうせていた。それと同時に、
腰にはめたはずのメダルもまた、影も形もなくなっていた。
一方、寺院の中庭ではハヌマーンが二大怪人を相手に互角の戦いを繰り広げていた。
鋭い爪で襲い来る火炎コンドルの一撃をひらりとかわし、そのまま返す刀で怪人の
胸元に三叉戟をぶち込む。
「怪人め、これでも食らえ!」
「グエエエッ!!」
噴水のように噴出する真っ赤な血。三叉戟でさされた胸に手をやりながら火炎コンドル
はヨロヨロ後退すると、苦し紛れに口から火炎を吐く。燃え上がる炎が黒煙を伴って
ハヌマーンに襲い掛かるが、風神の子は猛火を華麗にトンボを切ってかわすと、再び
三叉戟を身構えて怪人に見得を切った。しかし、そんなハヌマーンの前に新手の敵が
現れた。
「俺も助太刀するぞ!」
そう言うや、二人の戦いに割ってはいるのはバショウガンだ。コチャンを地中に引きずり
こんだ長い蔦がハヌマーンに向かって伸びる。しかし手にした三叉戟でこの蔦を切り払う
と、ハヌマーンは戟を自分の顔の前に構えて何事かを念じる。すると次の瞬間、三叉戟は
一瞬にして長剣へとその形を変えた。
「お前達もこれで終わりだ。観念しろ!」
長剣を振るいながら、ハヌマーンはまるで踊りでも踊るかのように軽やかなステップで
相手に近づいていく。怪人たちの眼の前で剣を振りかざすと、そこから不思議な風が
巻き起こり、二人の怪人をまるで金縛りにでもかけたように動けなくしてしまった。
そのままハヌマーンは動けない怪人の前で長剣をかざして念を込める。すると、次の
瞬間長剣からいかづちのような光が迸り、その光は吸い込まれるように二人の怪人に
命中した。そしてその直後、火炎コンドルとバショウガンはまさに仏罰とも言うべき
聖なる光によって粉々に吹き飛んでしまった。
長くなってしまいましたが、いよいよ明日完結です。何だかツバサ一族の2怪人が
怪獣軍団のような扱いになってしまいましたが、何せ相手はハヌマーンですので(w。
「これは!一体どうしたことだ」
V3とコチャン少年を重力の罠に掛け、地下から脱出したツバサ大僧正。しかし、
地上に出てきた彼が見たものは信じられない光景であった。外でヴィルット博士ら
を拘束しているはずの二大怪人と戦闘員が全て倒され、その累々として横たわる
屍の真ん中に踊る白い猿の姿だった。
「まさか・・・あやつがやったのか?!」
狼狽するツバサ大僧正の姿を見つけた貴子とウィラポンは、敵の親玉を逃がすまいと
ツバサ大僧正のそばに駆け寄る。
「お前たちの手下はハヌマーンが退治したぞ!観念するんだな!!」
「・・・そういうことらしいで。観念したほうが身のためや」
神仏の奇跡に心酔しきりのウィラポンと、いまだに状況を把握しきれない貴子。
しかし巨悪をみすみす見逃すつもりが無いのは同じだ。二人は呼吸を合わせ
ツバサ大僧正を捕らえようと攻撃を仕掛ける。貴子のパンチとウィラポンの跳び
膝蹴り、二人のコンビネーションが同時にツバサ大僧正を襲う。
「うらぁぁっ!」
『ハッ!』
二人の攻撃は間違いなくツバサ大僧正にヒットした。しかし、二人の身体に
伝わるのは生身の人間を殴ったときの感触ではなかった。筋肉のその下に、まるで
鉄骨でも入っているかのような硬質な感覚に、二人は互いに顔を見合わせる。
「まさか、お前も・・・」
貴子のその言葉にツバサ大僧正は邪悪な笑みと共に答えた。
「察しが良いではないか・・・その通り。ワシもまた、改造人間よ」
そう言うと、怪しげな高笑いと共にツバサ大僧正は黒いローブを翻す。そしてその
直後バサリと脱げ落ちたローブの下から現れたのは、赤黒い体毛に包まれ、鋭い
牙をむき出しにしたコウモリの怪物だった。
「ギィーッ!俺様は死人コウモリ。この姿を見たからには、生きて返さんぞ!」
ついにその正体を現したツバサ大僧正。怪人死人コウモリは一連のヒマラヤの
悪魔に関わる事件の真犯人であり、ウィルスに感染して辛うじて命を繋いでいる者は
みな彼の意のままに操られるロボットと化してしまうのである。そして、怪人は
ウィルスの邪悪な本領を発揮した。
「お前達が救おうとしている、無辜の民の手にかかって死ぬがいい。出でよ!」
死人コウモリの声が寺院に響き渡る。すると、どこに隠れていたのかあちこちから
周辺村落の住民と思われる人々が姿を現した。
「なっ・・・」
「いけない、あれはウィルスに感染した村人達だ!」
ウィラポンの言葉どおり、彼らはヒマラヤの悪魔に感染した村人達である。おそらく
は万一のときに備え、潜伏させていたものであろう。まるでホラー映画のゾンビの
ように、うつろな目のままよろよろとおぼつかない足取りで群れを成して姿を見せた
村人達は、敵の犠牲者であったとしても敵そのものではない。怪人は彼らに、良心の
呵責とともに立ちすくむ二人を無抵抗のまま殺させるつもりなのだ。全く抵抗できない
二人に対して、三叉戟を振るいながら村人を威嚇するのはハヌマーンだ。彼は命の
危機にありながら攻撃をためらう人間二人に苛立ちを隠さない。
「二人ともなぜ攻撃しないんだ!」
「罪も無い村人をどついたり殺したりできるかい!!」
「神であるあなたはともかく・・・私達にそれはできない!くそっ・・・」
まさに万事休すと思われた、まさにその時であった。
聞き覚えのある声と共に空中高く上昇するロケット。『スクランブルホッパー』
とは、ホッパーに装着されて空中へ運ばれるリング状のパーツであり、そこから
怪人の機能を狂わせる妨害電波を発することが出来る、V3「26の秘密」の
一つなのだ。そう、貴子とウィラポン、そしてハヌマーンの危機を救ったのは誰
あろう、仮面ライダーV3なのだ。そして、妨害電波が発せられたことで怪人の
命令電波が届かなくなり、ウィルスの活性化が抑えられると村人達はまるで糸の
切れた操り人形のようにその場に倒れてしまった。
「ぬうううううっ!一体誰の仕業だ!!」
ウィルスの効果を打ち消され、歯噛みする死人コウモリ。邪魔者の姿を探して
周囲を見回す。と、ひときわ高く石を積み上げた円錐状の屋根に何者かが姿を
現した。赤い仮面に白いマフラーをなびかせた正義の戦士、仮面ライダーV3だ。
「ツバサ大僧正、いや死人コウモリ!!お前のウィルスは無力化したぞ!」
眼下の敵に見得を切ると、V3は大きく跳躍して怪人の眼前に立ちはだかった。
そして挨拶代わりのパンチを叩き込み、敵を大きく吹っ飛ばした。V3の出現
と時を同じくして、解放されたコチャン少年も貴子たちのところへ駆けて来た。
「V3!!」
「稲葉さん、ウィラポン、この子を頼みます」
V3はそう言ってコチャンの身柄を二人に預ける。
「OK。任しとき!」
貴子とウィラポンはコチャンを連れて車の中に逃げ込む。一方死人コウモリも
態勢を立て直して再びV3に牙を剥いて襲い掛かる。そして、そこへハヌマーン
も駆けつけて、怪人に対して身構えた。
「V3、力をあわせて怪人を倒そう!」
「クラップ(OK)!おいら達が力をあわせれば、あんな奴敵じゃないっ!」
たとえ敵がツバサ一族最強の怪人、死人コウモリであろうとV3とハヌマーン
は恐れない。ついに正邪最終決戦の時がやってきた。
この続きは11時頃に。ちなみにタイ語でYes、OKみたいな意味の言葉は
男言葉 クラップ
女言葉 カー
というそうですが、矢口は普段「おいら」なんて言ってる女の子なので、意図的に
男言葉の方を使いました。
ハヌマーンの活躍によってほとんどの戦闘員が倒されたとはいえ、死人コウモリ
と共に地下から脱出した戦闘員達は相当数残存している。村人達がスクランブル
ホッパーによる妨害電波で操れないとわかった今、怪人の手勢といえばこの戦闘員
達だけである。
「ギギィ!お前達、やってしまえ!!」
「ギィーッ!!」
奇声と共に黒いヴェールを脱ぎ捨てて、V3とハヌマーンに殺到するのはまんじ教
の戦闘員。それぞれ手にした武器を振るって眼前の敵に襲い掛かる。踊るような
軽やかなステップを踏みながら敵に接近すると、ハヌマーンは手にした三叉戟で
戦闘員の一群を一薙ぎする。一瞬の閃光にもにた白刃のきらめきと共に、黒覆面
の戦闘員の首がまるで熟した果実のようにたやすく落ちて転がる。
「うっ!」
その光景を目の当たりにした戦闘員達は、風神の子の阿修羅のごとき戦いぶりに
恐れをなして立ちすくむ。一方のV3も寄せ来る敵をちぎっては投げ、叩きのめ
された戦闘員達はたちまちのうちに山のように折り重なっていく。気がつけば、
数の上では勝っていたまんじ教の軍団も死人コウモリただ一人を残すだけに
なっていた。
「おのれぇ・・・コレでも食らえ!!」
空中を飛翔しながら、鋭い爪で引き裂こうと襲い掛かる死人コウモリ。怪人が
頭上を掠めるたびにまがまがしく長く伸びた爪も二人の頭を掠める。そして
死人コウモリが放った一撃はV3の胸元近くにヒットし、その一撃で態勢を崩した
V3はよろめいて倒れてしまった。そこを逃さず、死人コウモリはV3の頭上から
降下し、その両脚を引っ掴んだ。
「V3ィィィ、空中回転であの世へ行け!」
「うっ、何を!」
そう言うや、死人コウモリはV3の脚を掴んだまま空中高く舞い上がり、なんと
高空でそのまま回転し始めたではないか。まるでヘリのプロペラのような高速回転
はV3の平衡感覚を麻痺させ、じわじわとダメージを与えていく。そして、十分な
回転がついたところで死人コウモリはその手を離す。
「このまま激突して死ぬがいい、V3!!」
「うわぁぁぁぁっ!」
猛回転しながら落下していくV3。尋常ならざる力で加えられた回転力は、さしもの
V3の力を持ってしても勢いを殺せない。
しかし、今のV3には風神の子がついている。ハヌマーンはV3のピンチを見逃して
はいなかった。
「任せてくれV3!つむじ風よ、吹け!!」
三叉戟をかざしてハヌマーンが再び念を込めると、剣の切っ先からつむじ風が生まれ、
それは空中を回転しながら落下するV3に近づいてく。そして、二つの回転が交わった
その時、ひときわ大きくなったつむじ風がV3の身体を宙へと持ち上げた。
「これは一体・・・」
高速回転するV3の眼下には、この風を呼び起こしたハヌマーンの姿があった。V3が
回転しながら突き進むその先には、この突然の事態に恐れおののく死人コウモリの姿
が見える。
「風でV3の身体が押し上げられた・・・馬鹿な!」
直進するその先には死人コウモリがいる。それに気がついたV3は両足をぴんとそろえ
回転に身を任せたまま怪人に突っ込んでいく。
「V3、スクリューキィーック!!」
竜巻のような空中回転とともに繰り出される両足蹴りが、空中の怪人を捉える。必殺
の一撃は敵のボディを、そしてなにより自慢の翼を完全に破壊した。
「グエエエエエ!!」
地上に叩きつけられた死人コウモリはしばらくのた打ち回っていたが、その姿はやがて
もとのツバサ大僧正の姿に戻っていく。そこへ地上で待機していたハヌマーン、そして
マフラーで風に乗りながら見事に着地したV3が駆け寄る。死を悟ったツバサ大僧正は
ヨロヨロと起き上がる。
「まだやる気か!」
身構えた二人にツバサ大僧正は最後のセリフを残し、地下に埋められていたと思しき
棺おけの中に身を横たえた。
「死が来た・・・ゼティマ大首領よ、永遠に栄えあれ・・・・」
その直後、無数に飛び交うコウモリと共に、彼の亡骸は大爆発と共に消えた。ここに
仮面ライダーV3とハヌマーンの活躍によって、まんじ教は滅びたのだ。
戦いを終えて、密林に夕日が落ちる。赤い夕日を浴びながら、コミカルに舞い踊る
ハヌマーン。その姿を見つめながら、真里は風の聖霊であるラブリーの両手を握り
心から礼を述べた。
「あなたの力がなかったら、まんじ教とは戦えなかったかもしれない。助けて
くれて、ありがとう」
一方のラブリーも恥ずかしそうに視線を落としながら、真里の言葉を理解したのか
小さく頷いた。そして、彼女はどこかにしまっておいた白い花の髪飾りを真里に
差し出した。友情の証として、彼女にプレゼントしたいようだ。それは地上のどんな
花よりも透き通った白い花びらと、天上のいかなる美酒よりも甘い香りを漂わせて
いた。真里は髪飾りを笑顔で受け取って言った。
「ありがとう。おいら大事にするよ」
その言葉を耳にした水の聖霊は、自らの子ハヌマーンと共に再び一陣の風となり、
3人の眼の前から姿を消した。二人が去った後には、コチャンが持ち歩いていた
ハヌマーンの人形だけが残されていた。貴子がそれを拾い上げ、車の中にいる
コチャンに手渡すと、一人つぶやいた。
「神様とか仏様って、やっぱおんねんな・・・」
そんな彼女の隣で、ラオス警察への連絡を終えたウィラポンが空港で出会った時の
ような屈託の無い笑顔で言った。
「諦めたりくじけたりしない限り、仏様は助けてくれます」
「せやな・・・」
そう言って二人は車に乗り込みエンジンをかける。ただ、真里だけはしばらく風の
吹きぬけた方向を、二人が去って行った方向を見つめていた。
異国の大地で悪の野望と戦った仮面ライダーV3。水の聖霊と風神の子とともに
戦いの末にまんじ教を打ち砕いた。人々の自由を守るために、仮面ライダーの戦いは
続くのだ。
Another story 「風の神話」 終
以上で今回の外伝は終わります。異色な内容でしたが、2週間以上に渡って
お付き合いいただきありがとうございました。またいづれお目にかかりましょう。
>ナナシマンさん
遅くなりましたが、お疲れ様でした。これまでにはなかった
痛快な物語をありがとうございました。次回も期待してますので
まずはゆっくりとお休み下さい。
・・・では次の方、もしいらっしゃいましたらどうぞ。
ZXこと小川麻琴が中澤家に来た頃のお話。
小川と紺野はなかなか打ち解けないでいた。
紺野の方が異常に警戒していたからである。何しろ昨日まで敵同士だったのだ。
他のみんなも同じだった。数日の間小川は中澤、辻、加護以外とはほとんど会話をしなかった。
そんな時、安倍が紺野に話し掛けてきた。
「なんか、あの娘おとなしいね。」
「・・・そうですね。でもきっと慣れない環境で緊張してるんだと思います。」
「そうだね・・来たばっかりの頃のあさ美ちゃんもあんな感じだったもんね。」
紺野はそれを聞いてハッとした。
「そうか・・・自分も来たばかりの頃は孤独だった、寂しかった。あの娘も自分と同じなんだ・・・
あの時はみんなが優しくしてくれた。今度は私の番だ。安倍さんはきっとそう言いたいんだ。」
「・・・あの・・・」
紺野は一人でソファーに座っている小川の横に座り、話し掛けた。
その後は二人でいろいろな話をした。
いままでのこと、友達のこと、家族のこと、自分の体のこと・・・
数時間後、ようやく打ち解けかけたところで小川が聞いた。
「ところで、紺・・・あさ美ちゃんはどんなことが出来るの?」
「うーん・・・空が飛べるくらいかなあ」
小川は驚いた表情で言った。
「ええ!本当に?見せて見せて!」
「え?今ここで?・・・」
「ダメ?・・・」
小川は少し寂しそうな顔を見せた。
(ここで断ったらまた心を閉ざしちゃうかも・・・)
そんな小川の表情を見た紺野は慌てて言った。
「あ・・・いいよ!・・・変身!」
「わぁ〜!すごい、すごーい!」
重力低減装置によって空高く舞い上がったスカイライダーを、小川は窓から顔を出して眺めていた。
「そこに帰るからちょっとどいてね〜」
「へ?・・」
そう言うとスカイライダーは滑空を始め、スポッと小川が眺めていた窓から入ってきた。
「ふう・・」
そう言いながら変身を解いた紺野を、小川は羨望のまなざしで見ながら言った。
「すごいねぇ〜。すごいよあさ美ちゃん!」
「そ、そーかなー?窓からあなたのお宅におじゃま〜るしぇ。なんちゃって・・・」
「・・・何それ?」
「あ、いや何でも・・ところで小川・・まこっちゃんは何が出来るの?」
「うーん・・いろいろあるんだけど、今ちょっと変身は・・・」
まだ小川には先日の闘いのダメージが残っていた。
「あ、そうだ。私のバイクを見せてあげる。」
そう言って小川は紺野を地下のガレージに連れて行った。
「ヘルダイバーっていうの。」
「へー、原子力エンジンなんだ。・・・これは?」
「それはレーザーバルカン砲。便利だよ」
「レーザー?ビームがでるの?すごーい!」
紺野は目を輝かせながら言った。
そんな紺野を見て小川が言った。
「・・・見たい?」
小川は紺野を連れてヘルダイバーで近所の空き地に向かった。
空き地に着くなり近くの立木に狙いをつけた。
ピー!(ボン!)
レーザーが発射され、一瞬にして立木は炎に包まれ崩れ落ちた。
「わー!!すごーい!まこっちゃん、このバイクカッコいいね!」
紺野がそう言うと小川は少し顔を赤らめながら言った。
「そう?よーし、じゃんじゃん撃っちゃうよ。次はあそこ!」
空き地の立木という立木を次々灰にしていく2人。
ピー!(ボン!)
ピー!(ボン!)
ピー!(ボン!)
「ピーマコ小川で・・・・」
「さっきから何やってんの!あんたたちはああああ!!」
2人の様子をずっと眺めていた中澤がたまらず怒鳴り声を上げた・・・
・・・数時間もの間、2人は散々中澤のお説教を食らった。
「あの人怖いね・・・」
「うん。怖いよ。・・・中澤さんは普通の人間だけど、この中で一番怖いの。」
「あははは・・」
ここに来て初めて小川が笑った。
紺野はその無邪気な笑顔と見て、この娘とはうまくやっていけそうだな、と思った。
「・・・とにかくこれからよろしくね。まこっちゃん。」
「こちらこそ。あさ美ちゃん」
そう言って2人は握手をした。
99%が機械だと言っていたが、小川の手は柔らかく、あたたかかった。
・・・・あまり関係ないが、そんな2人をビジンダーとXライダーは何故か複雑な表情で見ていた。
以上、保全代わりの「ネタ」ですた。
俺は5期ヲタなので「鉄の結束5期メンバー」の話は書いてみたいとは思ってますが・・
どんな話になるのかと思ったら・・・でも面白カタヨ。5期編、期待しちゃって
よいのかな?
>名無しスターさん
こういう話が読みたかった&書きたかった!
ご馳走様でございました。続きも期待しております。
しかし最後の部分、高橋はともかく、なぜ石川が……。
石川・高橋 : 元ハロプロニュースの司会
紺野・小川 : 現ハロプロワイドの司会
っちゅ〜ことなんじゃないの?
>名無しスターさん
“W”と“N”が織り成す絶妙の因果関係・・・脱帽です。
>>名無しスターさん
そう来るか、という妙味ある展開。オチにクスリとさせられました。5期メン編は
僕も期待してます。
実はちょっと僕も超ショートストーリーがたった今かけましたので、もしよろしければ
4レスくらいお借しいただければと思うのですが。
>ナナシマンさん
私は構いません。「横入り」だけはしたくないもんで・・・。
Side Story 「Four leaves in the dark」
「こんなはずじゃないんですよ・・・こんなはずじゃ・・・」
誰に言うとなく、カウンターでつぶやく一人の男。薄い色のサングラスに
よって隠されたその瞳には狼狽の色が窺える。まるで何かにおびえているかの
ような、落ち着かない様子で店の中を一通り見回すと、手にしたイェーツの
詩集−それは彼の愛読書であったが−をぱらぱらとめくる。小さく震える指で
めくられるページに彼の動揺の様が表れている。
「どうしたの・・・?琢磨君。らしくないじゃない」
そんな彼の姿を見かねてか、カウンターの向かいで一人の女バーテンダーが
シャンパンとグラスを片付けながら言葉をかける。凛としたたたずまいを見せる
その女が唇に湛える微笑は、ある種蟲惑的であると同時にそれを向ける相手如何
では非情かつ冷厳であった。しかし、男〜琢磨逸郎の動揺はなおも続く。
「僕があんな小娘に二度も不覚を取るなんて・・・あり得ない話なんです」
「聞いたわ。でも、仕事は難しいほうがやりがいがあるものよ。その方が
面白そうじゃない・・・あなたもそう思うでしょ?」
そう言って女が水を向けた先には、黒のスパンデックスキャップをかぶり、黒い
レザージャケットを羽織った黒人の大男が、そのいかつい風体とは対照的なほど
可愛らしい一匹のロングコートチワワと戯れていた。
『チャコ・・・』
自らチャコと名づけた愛犬に口付ける彼〜ジェイは、チャコとのひと時が何より
楽しいと言わんばかりに女〜影山冴子の言葉にさえも耳を傾けている様子は無い。
「ミスター・ジェイ、あなたという人は・・・」
「本当にチャコに夢中なのね・・・」
ジェイは彼らの中でも、腕っ節では並ぶ者の無いという猛者である。いや、
単に腕っ節の強さと言うだけならば彼は恐らくオルフェノクの中でも1、2を
争う存在であるといってよい。そう、このバーにいる3人はいずれも人の世に
潜む異形の者、オルフェノクであった。琢磨逸郎、影山冴子、そしてジェイ。
彼らこそ、オルフェノクでも最強の実力者と言われる四人組。誰言うとなく人は
彼らを暗黒の四葉、「ラッキークローバー」と呼んだ。
「せっかく面白くなってきたのに、どうしてるのかしら。北崎君」
「知りませんよ・・・彼がいないのはいつものことじゃないですか」
北崎と呼ばれた人物、それは暗黒の四葉最後の一人。ここにたむろしている
3人も一目置く存在だが、彼が姿を現すのはまれだ。今日も彼はこの店〜
彼らの通り名になぞらえた名前を冠されたバー、クローバーには姿を見せて
いない。
「仕方ないわね・・・今日のところは私達だけで楽しみましょう」
「今日も・・・でしょう?」
「フフッ・・・少しは元気になったみたいね、琢磨君」
そう言って冴子はシャンパングラスを琢磨とジェイの座るカウンターに置き、
店の奥にしまってあるとっておきの一本を二人のグラスに注ぐと、自らもまた
シャンパングラスにシャンパンを注ぎ、それを胸元近くまで掲げて言う。
「乾杯しましょ・・・私達ラッキークローバーの勝利と、オルフェノクの
未来に」
冴子に促されて琢磨とジェイはグラスを手に取る。杯をあおる二人の姿を
見つめながら、怪しく微笑む冴子。自らもまたシャンパンを飲み干すと、空の
シャンパングラスは彼女の指先が触れた首の辺りから一瞬で砂と化して消えた。
未だ多くの謎を秘めたまま、れいなと絵里、二人の少女の手の中にある二つの
ギア。それを狙って、今まさに最強の刺客が動き出そうとしていた。
Side Story 「Four leaves in the dark」 終
以上、甚だ手短ではありますが終わりです。
>>名無し天狗さん
すいません、譲っていただいた形になりましたね。ということはいよいよ
嵐ですか。楽しみにしてますよ。
>>708 納得。中澤姐さんとの絡みだし。
どうも有難うございました。
あっぶね、確認せずに書き込んだらSSがあってビックリ。
途中に入り込まなくて良かった。
>ナナシマンさん
いいですね、ラッキークローバー。特に蝦姐さ(ry
555関係の主要敵キャラは、後社長さんだけかな。
クロスオーバーなら、北崎くんとダグバの絡みが見てみたい。
>ナナシマンさん
こちらこそ。また「勧進帳」になりますが、折を見て始めたいと思います。
どなたの書き込みもないようですので、
僭越ながら・・・。
おそらく第44話 「父の魂・母の涙〜変身忍者嵐・第二章〜」
時は、再び徳川幕藩体制・将軍家光の治世に遡る・・・。
越前美浜藩十四万八千石・五木家に仕えるくノ一のユキは、秘法「化身忍者誕生の法」を奪い、
その力による日本征服を目論む悪の血車党を倒し、秘伝書を取り戻すべく旅に出た。
が、その彼女には、実は藩主・治部大輔(第一章の「太輔」は誤記)弘繁始め五木家一同にも秘めていた悲願があった。
それは、幼少の折りに殺された両親の仇を討ち、その怨みを晴らすことであった。
ユキが忍びの道を志したのも、動機はそれであり、本懐成就を夢見て十年(第一章の「二十年」は誤記)に亘って
辛く厳しい修業を積み重ねて来たのである。そして今やその腕前は師・谷の鬼十も認めるまでに上達の域に達したのだが、
不運にも血車党の狡猾な罠に陥って死の淵に立たされてしまう。
だが今は師たる鬼十の手で化身忍者「変身忍者嵐」として蘇り、血車党にも互角以上に渡り合える力を得ている。
全てにおいて、ここからがユキの真の修羅の道の始まりとなったのである。
そのユキは今、箱根の関所にいた。
二十一世紀の現代でこそ温泉街で有名な観光名所として広く知れ渡っているが、
江戸時代当時の箱根は江戸防衛のための重要な拠点で、数ある幕府の要害の一つであった。
箱根を流れる大井川に橋が架けられていないのも、倒幕の軍勢の侵攻を防ぐためである。
また関所において、「入り鉄砲に出女」と言う当時の言葉が示す通り、
物資の流通や江戸を出る女性には特に厳しかった。
これは箱根に限らず、物資の中に鉄砲が含まれていないか、また関所を通る女性の中に
大名の奥方が紛れていないかを深く追求し、幕府に対する敵意がないかを確かめるためであった。
因みに大名の家族は、「人質」として江戸に住まわされていた。これもまた諸大名に幕府への敵意を
起こさせないための策である。
ユキはその関所での詮議を受けているところであった。
関所役人が彼女に詰問する。
「その方、江戸を発つは何故にてか、包まず申し述べよ。」
「はい。私は生まれ育った土佐の高知に帰り、亡き父母のお墓参りをしようと思い…。」
ユキは正直に、怯えることなく詰問に応じた。
「成る程…だが念のため、怪しい物を所持してはおらぬか、調べさせてもらおう。」
関所役人は、検視役の女性を呼び、ユキの身体を調べるように命じた。
「怪しい物は所持しておりませぬ。」
検視役の女性が役人に報告する。
「そうか…相判った。最早これ以上の詮議には及ばぬ。ユキとやら、通ってよいぞ。」
かくして詮議を終えたユキは、手続きを一通り済ませて箱根を後にした。
いよいよ、ユキの本格的な茨の道が始まるのである。
東海道沿いに旅路を行くユキ。日はもう既に暮れていた。
だが、今の彼女には多少の路銀はあるものの、宿賃には程遠かった。
止むを得ず、野宿の出来そうな場所を探す。
と、その時・・・
「ユキ…。」
と、彼女の名を呼ぶ女性の声が聞こえてきた。
声に気付いたユキは辺りを見回すが誰もいない。
いるのは彼女自身と、彼女の愛馬ハヤブサオー一頭のみである。
「・・・・・・?」
不思議に思い、首を傾げるユキ。と、そこへ・・・
「ユキ…。」
また先程の声が聞こえた。
自分以外に人はいないはず・・・ユキの心に疑問と恐怖が芽生え始めた。
更に辺りを見回し、遂には草むらを掻き分けて方々を必死に探し回り出した。
「何だこの声は…どこだ、一体どこから聞こえてくるのだ!!?」
ユキは半ば狂乱しかけていた。
本日はここまで、続きはまたの講釈で。
さて、嵐・第二章、こうして始めたわけですが、ひょっとしたらまた皆様に
ご迷惑を掛けるような運びになるかもしれません。
以前のような長期中断はまずないと思いますが、頑張って納得のいくような
モノにしていきたいと思いますのでヨロシクお願いします!!
>>706-710 ありがとうございます。
ネタが思いついたので 適 当 に 書いたものなので恐縮です。
読み返すとネタならもっと簡潔に、小説としてはもっと広げられそうな感じで、
とっても中途半端なものを書いてしまったような・・・
5期編はまだ何も考えてませんが、書かざるを得ない状況になってしまったかもw
>>ナナシマンさん
遅くなりましたが外伝面白かったです。
「ムササビの怪人」が出てきた時は・・・
((((0゚〜゚)゚▽゚))))ガクガクブルブル
してしまいましたが。
>>名無し天狗さん
新作期待しています。頑張って下さい。
>名無しスターさん
ありがとうございます。次回は15日夜から16日未明にかけての予定です。
保守。
「ここ。あなたのすぐ傍よ…。」
再三に亘り、謎の女性の声はユキに呼びかける。
恐怖に怯えるユキは、恐る恐る声のする方に振り返った。
が、やはり人はなく、彼女の視線の先にあるのはハヤブサオーただ一頭のみであった。
「やはり空耳であったのか…。」
彼女がそう思いかけた時、彼女の中に先程とは違う疑念と恐怖が生じた。
「・・・!!…ま…まさか!!!??」
「そう…やっと気が付いたのね。」
「う・・・うぁああああああああ―――――っ!!!!!!」
驚きの余り、現代の距離に換算して二メートル程後方へ飛びのいたユキ。
無理もない。先刻から自分を呼んでいた声の主が実は自分の愛馬であったなどとは
夢にも思わなかったのだから。
「わわわ・・・ハ、ハヤ…ハヤブサ、オーが・・・・・・!!???」
忽ち困惑の坩堝に叩き落されたユキ。だが、“怪異”はこれだけでは終わらなかった。
「驚かせてしまったみたいね…ごめんなさい。」
そう言ったハヤブサオーの身体が突如として眩い光を放ち出したのだ。
「わわっ!こ、今度は、何だぁ!!??」
ユキは、もう既に大混乱に陥っていた。
現代で言うところの、所謂「パニクった」状況である。
その彼女をよそに、光はみるみるうちに凝縮され、見れば人の形を模っていくではないか。
やがて完全に人の形になったと同時に、あの強い光は蝋燭の灯の如く呆気なく消えた。
光が消えたのを認めたユキは恐る恐る顔を上げた。そして彼女が改めて目にしたものは・・・?
「?・・・!!あ、あなたはまさか・・・叔母上!!?」
「そう・・・お順よ。久しぶりね、ユキ。」
ユキの目の前に現われ、彼女が「叔母」と呼ぶこの旅姿の女性こそ、
先程までハヤブサオーだったもので、名を「お順」と言った。
お順はユキの亡き父の妹で、名門・柳澤家(「忠臣蔵」の黒幕格で有名な
元禄期の将軍家側用人とは別)に嫁いでいたが、その柳澤家もまた、何者かによって
滅ぼされてしまった。復讐を誓った彼女は、家を滅ぼした下手人を突き止め、
討ち果たそうとしたが力及ばず斃れたところを谷一族に救われた(因みに、この時
お順を救った谷一族は柳澤家に雇われた者で、お家を滅ぼした理由を作った償いのために
お順に加勢していた)。一命を取り留めた彼女は一族の頭領・谷の鬼十に自らの素性と
負傷に到るまでの経緯を打ち明け、その話からお順がユキの叔母であることを知った鬼十が
姪・ユキのことを話し、
「姪と共に戦うてくれまいか?」
と持ちかけたのである。
お順の決意は固かった。
「宜しくお願いします!どのような形でも構いません。
私は同じ運命(さだめ)を負った姪を・・・ユキを守りたいのです!!」
かくして、お順の迷いなき決心を受けた鬼十は、彼女に化身の手術を施した。
そうして生まれたのが、現在のユキ=嵐の愛馬・ハヤブサオーなのである。
「然様でござりましたか・・・。
しかし、お師匠様も叔母上もお人が悪い。
そのようなことを何故もっと早くに・・・。」
先程までの恐怖心から一転、自らの愛馬が身内であることを知ったユキは
笑ってお順に問いかけた。
そのお順の返事は
「そなたはこれから大きな運命に立ち向かわねばなりませぬ。
私のことがそなたの心の片隅にあっては、いずれ決心が鈍ると、そう考えていたのです。
これはおかしら様(鬼十)のご意思でもあるのです。」
と言う、暖かくも厳しい言葉であった。
が、ユキはその言葉に感謝しつつもこう返した。
「なんの、叔母上。確かにお気持ちは身に染みて嬉しゅうござるが、
決心が鈍るどころか、寧ろ私は叔母上は達者であると、心から信じてござる。
お師匠様には私から「ご懸念ご無用」とお伝えしましょう。」
「ユキ…暫く見ぬうちに強うなりましたね……。」
お順はユキの言葉から心身ともに立派に成長したことに感慨に浸った。
「叔母上、涙をお拭きなされ。久々に会えたと申しますに、涙など・・・。」
と、叔母を気遣うユキの目にも光るものがあった・・・。
「しかし・・・弱りましたな。私の愛馬が実の叔母上であったとなると・・・
その背に乗って良いのかと思うと・・・。」
「ユキ、私への遠慮はいりませぬ。最早私たちは一蓮托生、運命を同じゅうする者・・・。
私を必要とする時は、いつでもお使いなさい。互いに助け合い、
この茨の道を共に歩みましょうぞ。」
「叔母上・・・・・・!」
自らを投げ打ってまで姪を助ける、お順の覚悟の言葉に、ユキは彼女の胸に縋って泣き伏した。
こうして再会を果たした二人は、ハヤブサオーでいた時にお順が見つけた
一軒の小さな小屋で一夜を明かしたのであった。
今宵はここまで、続きはまたの講釈で。
さて、以前コソッと漏らした「ハヤブサオーの仕掛け」ですが・・・
もしかしたらポカーンとされたかもしれません。
なぜ、こうなったのかと申しますと・・・
・お順のモデルは「純情行進曲」のカバーを唄った柳澤順子女史。
・馬から人への変化は「柳澤」繋がりと言うことで
「西遊記'94」で柳沢慎吾氏が演じた、三蔵法師の愛馬・白竜をヒントに。
・・・と言うことだったんです。誠にお粗末様でした。
次回も何とか頑張りますので、どうか宜しくお願いします・・・・・・。
保全
時代活劇第二幕、始まったね。ガンガッテ。
一夜空けて、ユキとお順は駿河(静岡県)まで歩き、そこから船で高知へ向かった。
無論、ユキの亡き両親の墓参のためである。
その船の中で・・・
「きゃああああああああ!!!!!」
「へっへっへ…いいじゃねぇかよ姉ちゃん、ちょいと酌してくれるだけでいいんだからよぉ!!」
「嫌です!やめて下さい!!離して!!誰かぁ!!誰かぁー!!!」
「ヒーヒヒヒ!騒いでも無駄さ、周りは関わり合いを怖れて見て見ぬふりよぉ!!」
「いやぁああ!!誰かぁ!!助けてぇええ!!!」
いかにも柄の悪そうな男たちが四、五人程、一人の若い娘に詰め寄っているではないか!
男たちの一人が言うように、乗客たちは皆助けたいと言う気持ちがあるものの、保身からか
誰も出ようとはしなかった。
「さぁ、ささぁ!観念してうちの親分のお相手をして差し上げな!!」
「いやっ、いやああああああああ!!!!」
男たちは、なおも娘に「親分」への酌を強要する。
当然娘がそのような無体を受け入れるわけなどなく、必死に抵抗する。
やがて、あたかも駄々っ子の如く激しく振り回していた娘の脚が、
後ろから彼女を羽交い絞めにしていた男の急所を見事に捕らえた!!
「!!・・・ぐ・・・!!」
苦悶から男は娘を手放した。その隙に娘は脱兎の如く逃げ出す。
「こぉの…アマぁあああ!!!」
折角の「お楽しみ」に水を注された格好となった男たちは逆上し、娘を追う。
逃げる娘。その先にはこの船に乗り合わせていたユキとお順がいた。
ユキは必死の形相で船上を駆ける娘を見て、すぐにその娘が
危機に晒されているのだと直感し、理由を尋ねた。
「娘さん、どうなさいました?」
「あ…た、助けて下さい!怖い男の人たちに、無理矢理お酒の相手をされそうになって…!」
娘は藁をも掴む思いでユキたちに助けを求めた。
と、そこへ…!!
「ぐぇへっへっへへへへ…散々梃子摺らせやがってぇ、やっと捕まえたぜぇ……!!」
「ケェケケケ…大人しく言うこと聞いてりゃぁ、痛ぇ目を見ずに済んだのによぉ!!」
娘に追いついた男たちが、鬼そのものの形相で彼女に迫る!!
そして、片目に傷の入った禿頭の細身で長身の男が娘の胸座に掴みかかった!!
彼は娘に急所を蹴られたこともあり、一味の中では一際怒髪天を突いていた。
「よぉくもこの俺様に赤っ恥をかかせてくれたな!この礼は高くつくぜオラァ!!!」
言うが早いか、男は娘の着物の襟元を押し広げようとした!
「ひっ…いやぁああああああああ!!!!」
「さぁて…先ずはこの大勢の前で裸踊りでもして貰おうかな…!!」
「ケッへヘへ…そいつぁいいや。」
「やれー、やれー!」
「やっちまぇー!!」
嫌がる娘を無視して、男たちは勝手に盛り上がる。
そして娘が絶望の淵に立たされてしまった…その時!!
「ちょいとお待ちよ。」
「…?な…何だぁ?」
不意に聞こえた女の声に、男たちは呆気に取られた。
「誰でぇ?今俺たちに「待った」をかけやがったのぁ!?」
訝しげに船上を見回す男たち。やがて彼らの目に留まったのは…
「ふふ…あたいだよ。」
只事ならぬ色気を醸し出す、鳥越風の女であった。
彼女は色っぽい眼差しで彼らを見つめる。
「兄さん方、そんな嫌がってる娘さんを相手にしたって仕方ないだろ?
何なら、その娘(こ)の代わりにあたいが付き合ってやってもいいよ。」
女は襟元に指を掛け、男たちを誘う。
彼女の誘いを受けた男たちは、戸惑いつつも彼女に声をかけた。
「・・・おい、姐さんよぉ、お前さんが俺たちの相手をしてくれるのかぃ?」
「勿論じゃないか。さぁ、こっちに来なよぉ…。」
女は艶かしい流し目を男たちに遣りつつ、襟元に掛けた指をツツツー…と下ろしてゆく。
男たちにやたらと挑発的な様を見せるこの女、果たして何者なのか…?
そのうち男の一人が、彼女に寄ってきた。
しまりなく緩みきった顔には、既に好色の相が面に現われていた。
「へへへ…そいつぁありがてぇや。親分、いっそこの姐さんの酌でお楽しみってことにゃあ…。」
「全く…しょうがねぇ野郎だな。でも悪くぁねぇか…おぅ姐さん!じゃああんたに決めたぜ!!」
男たちの興味は完全に自分たちを誘う女の方に傾いていた。
その女の傍らに、一片の鳥の羽が落ちていることなど全く気付くことなく、彼らは彼女に夢中になっていた。
今宵はここまで、続きはまたの講釈で…。
さて…「時代劇特有の定番パターン」を盛り込んでみたわけですが、
書いておいてからこんなこと言うのもなんですが・・・・・・
ひょっとしたら、とんでもないことをやらかしてしまったのかも・・・!?
色仕掛けで悪い男を誘うなんて、今の今までなかったわけですし・・・。
もしスレ的に拙かったら申し訳ございません。
ではまた次回に・・・。
742 :
:03/10/17 01:18 ID:Sv4d2Tkk
>>741 いいんじゃないの?外伝というか番外編なんだし。
>742さん
「これでも」「本編の一環」なんですが・・・。(汗)
21世紀に渡ってライダーたちとの共闘を既に決めてますし。
女と戯れ、男たちはこの上ない至福の時に浸っていた。
その間にも鳥の羽はジワ、ジワ、とその数を増やしてゆく。
…もうお判りであろうが、実はこの女、くノ一・ユキの変装したものである。
か弱い娘を無体に苛める男たちに、同じ女として怒りを覚え、懲らしめるために
一計を案じたのだ。
これだけの無頼の徒を、臆することなく色香で誑かし、手玉に取るなど
余程でない限り、並の女に出来ることではない。まさにくノ一の「本領発揮」と言ったところである。
男たちの頭の中は、もうすっかり目の前の女=ユキと戯れ合うことで一杯であった。
ユキもまた、目一杯の「女」っぷりを振り撒いて男たちを更なる極楽、
いや、地獄へと招く。
羽の数の増加も留まることを知らず、遂には床一面を埋め尽くしてしまった。
当然と言うべきか、男たちの目にはその不思議な現象は全く映っていない。
やがて男たちが完全に油断しきった頃合いを見計らい、
ユキは彼らに聞こえるか聞こえないかの小声でボソッと一言、こう呟いた。
「…忍法、羽隠れ羽分身…。」
その刹那・・・
床を覆っていた無数の鳥の羽がババーッと舞い上がり、規則正しくかつ
縦横無尽に飛び回り、男たちをスッポリと包み込んで羽の牢獄を作り上げた。
羽の牢獄は彼らを嘲るかの如く、その形を崩さず回転を続ける。
お順の傍らでその光景を目の当たりにしていた娘は、驚きから言葉を失っていた。
その娘の下に、術を仕掛けた隙に男たちから離れたユキが歩み寄る。
「もう大丈夫ですよ。危ないところでした…。」
「あ…ありがとうございます。・・・お、おか、おかげで…た、助かりました…。」
娘は何が何だか要領を得ぬと言った面持ちで、戦慄から声が上ずってしまっていた。
「…すっかり興奮していますね。もう少し気を落ち着けてから
お話を伺いましょう…。」
ユキたちは暫く、娘の気持ちが静まるのを待つことにした。
一方、ユキの術によって羽牢獄に閉じ込められた男たち。
「えへへへ…へへ…へぇ…え、えぇ!!?」
「うひ、ひ…ひゃあ!!な、何だこりゃ!!??」
無数の羽が舞う様を見て、彼らは漸く正気に返った。
「おおお…親ぶ〜〜〜ん!!!」
「オイオイ、一体何が…どうなってるんでぇ!!?」
忽ち狼狽する男たち。そこへ・・・・・・
「んっふふふふふ……」
「くすくす……」
「おほほほほほほ……」
「あははははは……」
媚を含んだ妖艶な女の笑い声が複数聞こえてきた。
「ひぃぃぃぃぃ!!!」
「一体、どうなってるってんだ!!?」
「んなこと俺が知るかよぉ!!」
事態が呑み込めず、またユキが忽然と消えたのも知らず
ただただ狼狽する男たち。
そのうちの一人が何かに気付いたのか、「親分」に告げる。
「?・・・親分!誰か、来ますぜ!!」
「何だとぉ?・・・・・・う、うぉ!!!???」
激流のように飛び回る羽の群れに紛れて、薄地の衣を纏った
艶やかな美女たちが現われたのだ。
男たちと同じ人数の美女たちは、艶然な笑みを浮かべて彼らにしな垂れ掛かる。
これ以上の描写は、この板を更なる危機に追い遣ってしまう恐れがあるので割愛するが、
いかなるいかがわしい展開であるかは容易に知れよう。
因みに彼らは、高知に到着するまで、ユキが作り出した幻の美女たちに淫らに翻弄され続け、
終いには船着場にて、乗客からの知らせを受けた高知城下の役人たちに残らず捕縛された。
話は変わって、ユキたちは落ち着きを取り戻した娘から事情を尋ねていた。
「色々といざこざがあって名乗るのを忘れてましたね。
私の名はユキ。で、私の隣にいるのが…。」
「ユキの叔母のお順です。どうぞ宜しく…。」
娘は、二人に改めて感謝して自らの素性を打ち明けた。
「先程は危ういところをお助け頂き、誠にありがとうございました。
私はお美和と申します。生まれは、安房の小湊です。」
「安房の小湊と申しますと…鎌倉政権の頃の高僧・日蓮上人のお生まれになったと言う…」
「はい、その小湊です。」
お美和と名乗る娘の素性を知った二人は、何のために高知へ赴くのかを問うた。
「高知へは何用で…?私たちは亡き家族のお墓参りに行くところですが…。」
「う・・・そ・・・それは・・・・・・。」
何故か口を噤むお美和。
「あ…お美和さん、言いたくないなら無理に言わなくても構いません。
私たちはあなたをどうこうするつもりは微塵もございませんから…。」
「…すみません……。」
・・・やがて三人は、長い船旅を終えて高知の地を踏み締めた。
今回はここまで、続きはまたの講釈で…。
次回から軌道修正に入ります。皆様大変申し訳ありませんでした。
さて、今日の分から初めて登場し、ユキ・お順と共に旅をすることになった娘。
ご覧の通り元T&Cボンバーの小湊美和をここで出すことにしました。
彼女の前身(今でもそうですが)はご存じの通り民謡の家元。
古風なイメージが強いのでそれならば、と思い登場させた次第でございます。
さて、三人の行く手に待つは果たして何か?ではまた次回!
「♪高知の城下へ来てみぃや〜、じんばもばんばもよう踊るぅ〜…♪」
土佐の民謡「よさこい節」を口ずさむユキとお美和。
お美和は諸国巡りが好きで、四国八十八箇所行脚のお遍路に勧んで加わるほど
大の旅好きであった。
また、ユキも三歳で両親を失って以来、谷一族に入門するまでの八年間、
独学で武術の腕を磨くために諸国を巡ってきた。
それ故、行く先々の土地柄に造詣が深くなり、その土地に伝わる民謡も覚えてきたのである。
ましてユキはここ、土佐の高知の生まれで、人生の転機を余儀なくされるまでの三年間、
この「よさこい節」を子守唄代わりに母から聞かされていた。
その二人の吟ずる「よさこい節」にお順は聞き惚れ、先の船旅の疲れが癒されるような心地であった。
かくして、この三人の道中は、終始和やかに進んでいった。談笑する三人。
そんな中、今度はお美和がユキに尋ねてきた。
「あの…ユキさんのお父様とお母様って、どのようなお方だったのですか?」
「・・・・・・!」
このお美和の問いかけにユキは一瞬返答を躊躇ったが、改めて「隠すようなことではない」と思い、
話すことにした。
「・・・とても優しい、それでいて厳しい人たちだった…。
私はここ、土佐の農村の貧しい家に生まれた。
不自由な暮らしではあったが、幸せな家庭だった…。
私は物心付いた時から、よく両親の手伝いをしたものだった。
百姓仕事だけでは食い繋げず、父は笠や草鞋を作り、それを売って生計を立てて、
私も父を手伝って草鞋などを作って売りに出ていたものだった・・・。」
ここでユキの口が止まった。お美和はそれを見て、嫌なことを思い出させてしまったか、と思い、
「あ…すみません!何だか、悪いこと聞いてしまったみたいで…。」
と慌ててユキに詫びた。
僅かな沈黙のあと、ユキは再び口を開いた。が、が、その口調はどこか苦しかった。
「いや、お気に召されるな…。
先程も申したように、暮らしは貧しくとも私は幸せであったのだ。
そう…私があと数日で四つになる、あの日までは……!」
「・・・・・・!!」
ユキの言葉を聞き、お美和は息を呑んだ。
その彼女に、ユキは思い切ってその衷情を打ち明けた。
「四つになる生まれ日を数日後に控えたある日の夜、眠っていたところに
突然誰かが言い争う声や物を荒らし回る騒がしい音が聞こえ、目を覚ました私は
何事か、と音の出所を探した。そして居間に辿り着いた時、私は余りの凄惨さに言葉を失った!
部屋中は嵐に見舞われたかの如く荒らされ、床一面は血の海と化し、
そこには身体中をズタズタに斬り刻まれた父と母が横たわって……!!」
いつしか、ユキの声は嗚咽交じりになり、時折上ずっていた。
「私は思わず両親の遺体に縋って泣きじゃくった!!
その時、家の外から何人かの声が・・・!!
『チッ…結局金になりそうな物はなかったみてぇだな!』
『全く、あの二人も大人しくしてたら命だけは助かったろうによ…馬鹿な奴らよ。』
『ねぇ〜え、今度はもっとましなところに行きましょうよぉ。』
『そうだな、畜生!』
・・・あいつらが父と母を……!!
私の心は奴らへの復讐に燃えていた!!
私は表へ飛び出し、奴らを追った!…だが、悲しいかな、その頃の私はまだ幼く、
いくら走っても、奴らに追いつくことは出来なかった……。
だが、あの時の憎々しい声は今でも鮮明に覚えている。必ず見つけ出して、両親の無念を晴らす!
私は改めて復讐を誓い、強くなるための修業の旅に出た。」
複雑な面持ちでユキの話を聞くお美和。
「・・・それでユキさんは…その旅の途中で、その谷一族って言う忍者の集団のことを知って…。」
「・・・そうだ。あの日から私の全てが決まったのだ。
…辛い話を聞かせてしまったようだな。」
「私の方こそ、すみません。嫌なことを思い出させてしまったみたいで……。」
悪気がなかったとは言え、ユキの心の傷に触れてしまったことを、お美和は悔いた。
「いや、良いのだ…。
実は此度の両親の墓参は、仇討ちのお許しをご公儀より頂いたので、その報告をするのだ。
これで仇討ちの大儀は得た、あとは仇を捜すのみ…。」
当時、仇討ちをするためには、幕府にその理由を述べた上で申し出て、
「仇討ち免許状」を獲得する必要があった。
ユキは江戸を発つ前に、その手続きを済ませていたのだ。
お順もまた同様に、「柳澤家を滅ぼされた無念を晴らし、お家を再興する」と
申し出て「仇討ち免許状」を貰っている。
因みに、元禄期に赤穂藩浅野内匠頭の元家臣たちが「藩を破滅に追い遣った」と言う理由で
吉良上野介の屋敷に討ち入り、上野介を「仇敵」として殺したが、彼らは元々幕府への反逆を意図していたため
手続きを踏まえぬまま「仇討ち」に乗り出したのである。故に、将軍家と幕閣上層部には
「私怨」「私闘」と捉えられていた。
「本当に申し訳ありません。
この上は、ユキさんとお順さんの本懐成就を八十八箇所に祈念する所存…。」
「あ、いや、そこまで思い詰めずとも…。」
先程の悔し涙から一変、お美和の飛躍した言動を慌てて宥めるユキ。
その彼女の顔には、照れ笑いと苦笑いが入り混じっていた。
賑やかさを取り戻した三人の旅。果たしてその先に待ち受けるのは・・・・・・!?
今宵はここまで、続きはまたの講釈で…。
さて、軌道修正のために今夜はユキが忍びの道を志すに到るまでの詳細を
紹介したわけですが…書いていくうちに「真・仮面ライダー」の前田有紀と八割方
被ってしまい「拙かったかなぁ…」な心境になってしまいました…。
「真・ライダー」の作者さん、本当に申し訳ありませんでした。
この場を借りて心よりお詫びします……。
ではまた次回…。
今回も良かったでつよ。異色作だけに今後の展開に興味は尽きないでつ。
>755さん
ありがとうございます。
確かに異色ですが、本編の流れを決して遮ってるわけではありませんので…念のため。
次回以降も頑張ります!
所変わって、こちらは某藩城跡・血車党の本拠地。
その頭領の間に入ってきた一人の奇ッ怪な人相の男。
「おかしら様。物見よりの報せによりますれば、あのユキとか言う小娘め、
どうやらただ今土佐の高知に身を潜めておるとか…。」
物見の乱破(らっぱ。密偵の役目をする忍者のこと)を使ってユキの素性
(初対面時は嵐に化身するくノ一が何者かを掴めていなかった)とその行方を探り、
“おかしら様”に報告した、頭蓋骨が半分露わになっているこの男、嵐=ユキによって
辛酸を舐めさせられた血車党の前線指揮官で、名を骸丸(むくろまる)と言う。
「何、土佐の高知とな?」
「はっ、恐らくは亡き父母の墓参のためと…。」
髑髏の鉄仮面に西洋風の甲冑姿の頭領・血車魔神斎の問い返しに、骸丸は更に事の詳細を報告する。
「しかも奴め、父母を殺した仇を捜して旅をしておるとも聞き及んでおります。」
「そうか。」
報告を続ける骸丸。その彼の報告を聞き、魔神斎の眼が邪まに光る。
「それならば…骸丸、近う寄って耳を貸せ。」
「?…は、はぁ…然らば、ご無礼仕りまする…。」
おかしら様は一体何を思い付かれたのか?不思議に思いつつ骸丸は魔神斎の前に歩み出た。
その骸丸に、今思い付いた策をそっと耳打ちする魔神斎。
「!・・・おお!それはご名案!!流石はおかしら様、お見逸れ致しました!!」
「じゃが骸丸、この策、活かすも殺すもその方次第ということを決して忘れるでないぞ!!」
「ははー!肝に銘じまする…。」
魔神斎から一計を授けられた骸丸は、早速支度に執りかかった。
数日後・・・
ユキの生まれ故郷の村に辿り着いた三人は、
ユキの父母が弔われていると言う寺に向かった。
と言っても、ユキの生まれた村には、寺は一つしかない。
この寺に、この村で死んだ者たちが、村内外を問わず葬られているのである。
「いよいよですね、ユキさん、お順さん。」
「ああ、あのお寺に父母が弔われている筈だ。まずは此度の免状のことをご報告し、
父母を安堵させねば。」
「私も、兄を失った辛さは深うござりまする。ユキと共に、兄を殺めた仇をこの手で…!」
仇討ちの本懐を間近に向かえ、ユキとお順の心は高潮していた。と、その時…
“ぐぅううぅ〜〜〜…”
誰かの空腹を告げる物と思しき、けったいな音が鳴り響いた。
「?…あれ?」
ユキは忍びなので、ある程度の空腹には耐えられる。
となると・・・腹を空かせたのはお順か、お美和か?
「ごめんなさい…ちょっとお腹が…。」
決まり悪そうに苦笑いしながら告白したのはお美和であった。
「そうか…ここのところ、殆ど飲まず食わずで急ぎ足に付き合わせてしまったからな。
お美和さん、済まない。」
「いえ、いいんです…。」
「茶店を捜して、そこで一休みしましょう。」
三人は茶店を捜すことにしたが、この広い農村、家同士が隣り合うと言っても
数間も離れているような村である。そんな環境のもと、茶店一軒を捜し出すのは
殆ど至難の業に近い。
方々を歩くうちに、お美和の顔に疲労の色が見え始めた。
お順もまた、お美和ほどではないものの、空腹から徐々に元気がなくなりつつあった。
「ん〜〜む…困ったな。」
流石のユキも、腕組みをして考え込む有様であった。
「・・・!?そうだ、あれがあったではないか!!
何故早うに思い付かなんだか、ユキの愚か者め。」
ユキは「あること」に気付き、己をなじった。
そして彼女は、己の懐に手を遣り、何かを探す。
「おお、これこれ。」
そう言ってユキが懐から取り出したのは、ビー玉程の大きさの、
粉をふいた飴の様な球体であった。
「さぁ、お美和さん、叔母上、これを。
これは「飢渇丸(きかつがん)」と申して、忍びの任の際、誰にも気取られず
その場で飢えや渇きを癒せる物。一時凌ぎの上、味は保障しかねるが、これで持ち直せましょう。
茶店が見つかるまでの辛抱でござる。ささ…。」
ユキは、用意した「飢渇丸」を食べるよう尾順・お美和に勧めた。
体力を回復させた二人は、ユキと共に改めて茶店を捜す。
「今暫くの辛抱でござるぞ!!」
二人を励ましつつ、ユキは茶店捜しに奔走する。
やがて・・・
「お美和さん!叔母上!ここより一町(現代の距離に換算して百九メートル)先に
一軒、茶店がありましたぞ!!」
茶店を発見したユキが、二人の下に駆けながら告げる。
その「吉報」に二人は望みを託し、ユキに続いて道を急いだ。
暫くして・・・
「ハァ、ハァ…。」
「漸く辿り着けましたね…。」
茶店に辿り着いた三人。だが、お美和とお順は、「飢渇丸」のお陰で
一時的に体力を回復させたものの、今この時にはすっかり困憊していた。
早速ユキは、店主の初老の男に注文を始めた。
「ご免、茶漬けを三杯所望したい。あと水も。」
「へい、毎度あり。」
注文を受けて、男は店の奥に引っ込んだ。
「よかったですねぇ、お美和さん。」
「ええ、ええ、本当にもう死にそうでしたぁ…。ユキさんのお陰です。
何とお礼を申して良いのやら…。」
だが、嬉しそうに礼を述べるお美和の声は、何故かユキには届いていない。
「・・・・・・。」
ユキには、店主の男の動きに何か引っ掛かる物があるようだった。
「どうも怪しいが…まさか、そんな筈は…いや、気のせいかもしれんが…やはりどこか…。」
「あの…ユキさん?」
お美和は不審に思い、なおもユキに呼び掛ける。
「?…あ、ああ、済まぬ。ちと、考え事をしていた。許されよ。」
漸くお美和の声に気付き、ユキは決まり悪そうに頭を下げた。
「いえ、いいんです。それより、本当に助かりました。あなた方は私の恩人です!」
「いやいや、そんな大袈裟な程のことでも…。」
顔を赤らめるユキ。と、そこへ・・・
「へい、茶漬けにお水、三人分お待ちどお様でした。ではごゆっくり。」
注文の品々が届いた。
やっと空腹を凌げる…特にお美和とお順はそれだけで幸せそうであった。
今宵はここまで、続きはまたの講釈で…。
血車党も動き出し、今回もまた波乱の予感!
江戸開府400年の節目を迎えた今年中には仕上げたいと思いますので
今度も長編になるかもしれませんが暫しのお付き合いを…。
ではまた次回。
何か細かいディテールが凝ってるね。時代物って好き?それとそろそろ次スレの
ことを考えたほうが良いかもよ?作者さん方。
>764さん
好きですね。ディテールは、時代物を文面で表現する以上、出来る限り
それらしさを出さねば、と言うのがありますから…ありがとうございます。
次スレですか…そうですね。どうしよう…。
熱々の茶漬けにフーフーと息を吹き掛け、
「いただきまぁ〜す。」
とお美和、お順が口にしようとした…その時!
「待ったぁ!!
…亭主、済まぬが、ちとど…あ、いや、味見をしてはくれまいか?」
突然ユキが二人を制し、店主に味見を勧めた。
「どうしてですか?ユキさん!」
「そうですよ!一体何があると言うのです!?」
訝しげな表情でユキを見る二人。だがユキは構わずこう続けた。
「叔母上とお美和さんには判らぬであろうが…何やら妙な臭いが…。」
「き…気のせいでございますよお客様…。
お客様に平気で傷んだ物をお出しする店が…どこにあると言うんですか!?」
店主は必死に被りを振る。だが、ユキの猜疑心は消えない。
「それならば尚のこと、ささ亭主、先ずはそなたが食してみてくれ。
傷んでおらぬのであれば大事はなかろう!?さぁ!さぁ!!」
「・・・・・・!」
店主の顔に脂汗がジットリと浮かび出した。
と、そこへ丁度折りを見たかの如く一羽の鳩が舞い降りてきた。
鳩は餌を求めているのか、ユキたちの目の前をウロウロと徘徊する。
ユキはその鳩の姿を認めるや、手にしていた茶漬けを地面にぶちまけた。
鳩はやっと餌に有りつけた安堵感から、地面に汁が染み込んだ茶漬けに歩み寄り、
そのふやけた米粒を一粒啄ばんだ。
すると・・・!!
鳩が突然苦しみ出し、痙攣を起こしてその場にのたうち回ったではないか!
そして苦悶の末、その鳩は…程無くしてピクリとも動かなくなった。
この光景に驚いたのはお美和だ。
「は…鳩が…死んだ……毒!!?」
ユキは鳩に手を合わせ、土に埋めて懇ろに弔うと、
背の太刀・ハヤカゼを抜いて身構えた!
「貴様ら…もしや血車党か!!?」
「クックック…よくぞ見破ったなユキとやら!この前の礼を
キッチリ返させて貰うぞ!死ねぇ!!」
と言うが早いか、店主と毒茶漬けを作った小女は
着ていた衣類をバァッ!と剥ぎ取った!!
着衣の下から姿を現したのは…
迷彩模様の忍び装束に全身鎖帷子に鎖覆面。
紛れもなくユキの父母の仇と並ぶ怨敵・血車党の下忍たちだ!
が、男下忍の方は短い袖があって袴を着けているのに対し、
女下忍の装束には袖と袴がない。性別によって区別されているようだ。
二人は短刀を携え、ユキたちに肉薄する。
「このままではいかん!叔母上、お美和さんを頼みます!!」
「ええ!」
お順はユキの呼び掛けに応じ、お美和を背負うと、その身を一頭の白馬…
ハヤブサオーへと変えていく。
お順のこの「化身」に驚くお美和。
「あ…あなた方は…一体!?」
「詳しいことをお話ししている余裕はござりませぬ!さ、しっかり掴まって!!」
言われるままにハヤブサオー=お順の手綱にしがみ付くお美和。
「さぁ、行きますよ!それっ!!」
「え・・・ぅわ、きゃああ!!」
かくしてお美和を乗せたハヤブサオーは、
彼女に危害が及ばぬ所を求めて走駆した。
ハヤブサオーがお美和を無事逃がしたのを見届けたユキは、改めて血車党の下忍と対峙する。
「貴様ら…何故我々がここにいると判った!?」
「うるさい、貴様の知ったことか!!」
「今度こそその首…貰っていくよ!覚悟しな!!」
一斉にユキに飛び掛かる下忍たち。ユキもまた駆け出す。
忽ち乾いた空気を斬り裂く剣戟の響きが轟き渡る!!
だが、二人の下忍たちは絶妙な連携を以って
ユキの攻撃を巧みにかわし、即座に反撃に転じる。
二人の息の合った妙技の冴えに、ユキは手も足も出せなかった。
そして遂には追い詰められてしまう・・・危うし、ユキ!!
「貰ったぁ!」
男の下忍が疾風の如くユキに突進し斬り掛かる!万事休すか!?
今宵はここまで、続きはまたの講釈で…
さて、船上に続いて「時代劇の定番パターン」・茶店の者に化けた敵が
主人公を待ち伏せして毒殺を狙う…と言うシチュエーションを
実施してみたわけですが…いかがでしたでしょうか?
あと、何とかこのスレ内で次の方にバトンを渡せるようにしたいとは思うのですが…
最悪の場合、私が最後になってしまうかもしれません…申し訳ないです。
ではまた次回…何とかします!
保全。
さて、今宵の講釈に入る前に訂正です。
昨日、「飢渇丸」のことを「飢えや渇きを癒す」と書きましたが、
実は「飢えを癒すのが<飢渇丸>、渇きを癒すのが<水渇丸(すいかつがん)>」
と言うのが正当です。よって非常食を出したユキのセリフを以下のように変更させて頂きます。
「さぁ、お美和さん、叔母上、これを。
これは忍びの任の際、誰にも気取られずにその場で飢えや渇きを癒せるもので
こちらが飢えを癒す「飢渇丸(きかつがん)」、もう一方が渇きを癒す「水渇丸(すいかつがん)」
にござる。一時凌ぎの上、味は保障しかねるが、これで持ち直せましょう。
茶店が見つかるまでの辛抱でござる。ささ…。」
・・・この場を借りて、お詫びして訂正致します。では、今宵の講釈に参ります。
「うぉぉおおおおああああぁぁぁぁあああ!!!」
狂ったような叫びと共に、男の下忍は逆手に持った短刀をユキ目掛け突き下ろす!!
そしてその切っ先は確実にユキを捕らえた!!
・・・筈だった。
何と、短刀の切っ先が捕らえたのはユキではなく、屋内の柱であった!
「な、何ぃ!?馬鹿な…!!」
柱から力任せに短刀を引き抜き、男の下忍は周りを見回す。
「どこだ!…奴はどこに・・・…ぐ!!?」
突如、彼の背中に衝撃が走った!その痛みとも言える衝撃に、彼の顔が苦悶に歪む。
ユキは寸でのところで敵の刃をかわし、
残像を残して彼の背後に回り込んだのである!
この刹那に、女の下忍は息を呑んだ。
「…兄者!!」
どうやら彼ら二人は兄妹のようだ。
徐々に生気を失っていく兄下忍の顔色を凝視できずに、妹下忍は顔を覆う。
一方のユキは、その兄下忍に止めを差す。
「忍法…朧(おぼろ)分身……!!」
柄も通れよと、深々と兄下忍の身体を貫くハヤカゼの刃。
やがて、ハヤカゼの鍔(つば)が兄下忍の背中に密着したと同時に、
兄下忍は息絶えた。
「…っきしょおおおおお!!!」
目の前で兄を殺された妹下忍は、我を忘れてユキに闇雲に斬り掛かってゆく。
ユキは妹下忍の狂ったような動きの刃をかわし、その短刀を払い落とした。
「やめろっ!!」
そのままユキは、妹下忍の腕を後ろに回して押さえ込んだ。
「くそっ…殺せ、殺すなら殺せぇ!!
兄者を亡くしては…最早生きてはおれぬ!!」
なおも抵抗を続ける妹下忍。そんな彼女にユキはこう語り掛ける。
「そうか・・・知らぬこととは申せ、兄を殺めてしまったことは詫びよう。
だが、お主も忍びなら、たとえ相手が何者であれ、己を妨げる者は討たねばならぬ!!
お主も辛いが私も辛い!!まして私もお主も、その忍びの悲しい宿命を負った同じ女・・・!!」
忍びの掟、宿命のためなら非情にもなるユキも、元を糺せばひとりの女であった…。
だが、その彼女の呼び掛けに妹下忍、いや、女下忍は決して応えようとはしない。
「ふざけるな!敵に情けを掛けられるくらいならあたしは…!!」
そう吐き捨てるように叫んだのを最後に…女下忍の動きが止まった。
舌を…噛み切ったのだ…。
「・・・・・・。」
改めて、忍びの道の過酷さを思い知らされたユキは、
この二人の名も無き不幸な兄妹を先程の鳩同様に手厚く葬った。
「まだまだ甘いかな、私も…。」
溜息と共に寂しくこう漏らしたユキの頬を一筋の涙が伝う。
恐らく身寄りがなかったのであろう。道を踏み外さねば、いつか幸せになれたかもしれないのに…。
ユキは、彼らの冥福を祈った。
と・・・
店の中から呻き声が聞こえてきた。
どうやらこの茶店の本当の店主たちらしい。
ユキは店内外を探し回り、
裏手に縛られていたところを見つけ出して彼らを助けた。
「はぁ、はぁ・・・いやぁ、助かりました…。」
店主は深々と頭を下げて、ユキに感謝の意を表した。
更にそこへ・・・
「ユキさぁ―――――ん!!」
ユキに呼び掛ける若い娘の声と蹄の音が。
「・・・!お美和さん、叔母上!!」
二人〜いや、「一人と一頭」と言うべきか〜はユキの身を案じて引き返してきたのだ。
ハヤブサオーから降りてユキに駆け寄るお美和。
ハヤブサオーもまたお順の姿に戻って(変じて)、三人でお互いの無事を喜び合った。
「ところで…ユキさん、この方たちは?」
「ああ、本物の茶店の人たちだ。
もう心配はいらない、改めて腹ごしらえを致そうぞ!」
「はい!!」
かくして三人は、改めて茶店の者たちが丹精込めて用意した
茶漬けと水をご馳走になり、気力と体力を取り戻したのであった。
尚、代金は店の好意によって免ぜられたことも書き記しておこう。
今宵はここまで、続きはまたの講釈で…。
本当にゆるゆる過ぎて申し訳ありません。漸くまた一区切り着いたところです。
>771さん、保全ありがとうございます。作者陣を代表して、御礼申し上げます。
さて、ここから一体どうなっていくのか、全ては私次第!(・・・・・・)
既に長丁場は決してしまいました!!(オイ!!)皆様お辛いでしょうが
もう暫くのお付き合いを…。(←偉そーにすンなよ…)
では、また次回…。
スイマセン、一部修正です!
>775のユキの長ゼリフ
「己を妨げる者は討たねばならぬ!!」
↓
「己を妨げる者は討たねばならぬと言う忍びの掟を知っていよう!!」
お疲れさん。今日の分も楽しませていただきますた。
>780さん
ありがとうございます。次回も頑張りますのでヨロシクです!
「申し訳ござりませぬ。先発隊、敢え無く失敗致した由(よし)にて…。」
ここは血車党本拠地。
その頭領の間では、ユキ暗殺の第一陣失敗の報せが
頭領・魔神斎とその腹心・骸丸にもたらされていた。
「骸丸様…。」
「良い、結果はとうに見えておった。
あの兄妹は“策”を着々と進めるに当たって時を稼がせるための捨て駒に過ぎぬ。」
「うむ、いかにも。
十重二十重に張り巡らせた我が血車地獄の罠、その恐怖はここからが本番なのだ!」
骸丸と魔神斎は、己の人生を投げ打ってまで血車党に尽くした下忍の兄妹に
微塵の憐れみも見せず、そればかりか「死んで当然」と平気で割り切り、声高らかに笑った。
確かに、この「忍びの世界」は非情である。が、血車党の掟はどの忍群よりも
飛び抜けて冷酷極まりない。
暫くして、魔神斎は念押しにこう切り出した。
「ところで…第二陣以降に抜かりはないであろうな?」
「はっ、万事滞りなく…。」
更なる過酷な罠を以ってユキ抹殺を目論む血車党。
ああ、「第二陣以降」と呼ばれた彼らをも、魔神斎らは
あたかも蜥蜴の尻尾の如く容易く「消耗品」として斬り捨てると言うのか。
一方、旅路を行くユキの一行。
「茶店の危機」から三日後の夜、河原の洞窟で野宿をしていたユキは、
不思議な夢を見ていた・・・・・・。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
気が付いた時には、ユキの身体は何故か宙に浮いていた。
狼狽するユキ。
「な・・・何だ、どうなっているんだこれは!
わ、私は…一体・・・・・・???」
ユキは何とか地上に降りようと自分の真下に目を遣る。
その瞬間、ユキは目の前の光景に甚く驚愕した。
果たして、その眼中に飛び込んできた物は・・・・・・!?
「これは一体・・・どう考えてもあれは江戸じゃない・・・いや、日本じゃない!!
判らない・・・益々判らない!!一体どこなんだここはぁ!!!」
ユキの目に映ったもの・・・それは彼女の想像を遥かに絶する、摩訶不思議な光景であった。
いや、ユキでなくとも、「ユキと同じ世を生きている者」にとっても、この「異様な世界」を目の当たりにしたならば
忽ちのうちに錯乱に陥るであろう。
その「異様な世界」とは・・・
目の前に広がるのは、天まで届けよと高くそびえる大小様々な特異な形の建造物。
民家もあることにはあるのだが、ユキの知る物とは大きく異なり、色とりどりの壁に
藁とは違う無機質な屋根と言った見慣れぬ作りをしている。
その建造物の密集している所では、オランダ人(江戸時代、家光の頃から
日本は“鎖国”政策を採っていたため、海外の国ではオランダやポルトガル、中国と
長崎の出島でのみ交易していた)のようで、オランダ人とも違う
得体の知れない服を着た人々が行き交い、聞き慣れぬ言葉を交わしている。
更によく見ると、洋式の畏まったような服を着た者が小箱のような物を手に、
それを耳に当てて、まるで誰かと会話しているみたいに独り言を喋っているではないか。
その上、広い公道と思しき路面を四つの輪を獣の脚のように並べた箱のような乗り物が、
煙を噴き出しながら走っている。見れば、馬に似た乗り物まで存在する。
その賑わいを、更にユキ(たち)には理解し難い得体の知れない音楽が彩っている。
・・・ここまでご覧頂き、もうお判りのことであろうと思うが…
ユキが今いるのは、“二十一世紀の日本の首都・「東京」”。
即ち、江戸の約四百年後の姿なのである!!
その「未来の江戸」の上空に自分がいるなど思いもよらず、ユキは困惑する。
「これは夢なのか・・・そ、そうだ!夢に違いない…ならば早く覚めてくれ!!」
混乱から絶叫するユキの姿が、眼下の人々には全く見えないことなど
彼女は気付いていない。
そして彼女が悲観にくれかけた・・・その時!
ド ゴ ォ ォ ォ ・・・・・・ ン ン !!!!!!
地上の「街」から爆発音が聞こえた!!
と同時に、「群衆」の逃げ惑う声もユキの耳を衝く!!
「な・・・何ィ!!?」
下界を見遣るユキ。その視線の先には・・・!
「ば・・・馬鹿な!!?あれは…血車の…化身忍者!!??」
そう、見ようによっては血車党の化身忍者に見えなくもない異形の者たちが
我が物顔で跳梁跋扈・横行闊歩の限りを尽くし、破壊・略奪・殺戮を繰り返していた。
当然と言うべきか、この者らは血車党ではない。そう、この二十一世紀において
最も忌まわしき「悪」と言えば……!!
「ウワッハッハッハッハハハハ……
愚かな人間共め、お前たちは我々ゼティマの足元に跪くしか
生きる道はないのだ!!」
血車党とは違う未来の悪…ゼティマの一団は、逃げ惑う人々を片っ端から
血祭りに上げ、或いは次々と攫っていく。
人々は成すすべなく、ただゼティマのいいようにされるがまま、
絶望の淵に立たされるのみであった。
だが、そのような無法がいつまでもまかり通るわけなど有り得ない。
そのことばかりは、いつの時代も同じである。
「待てぇ!!」
突如聞こえた若い娘の声。
それはこの時代の人々にとって希望に満ち溢れ、
幾度と無く危機を救われた天の使いの声である。
「む!!…貴様らは!!??」
声のする方向に視線を移すぜティマ。
そこにいるのは、最早何の説明も要るまい。
「また性懲りもなく暴れとるんか、ゼティマ!」
「いい加減これ以上何の罪もない人たちをいじめるのはやめなしゃい!!」
彼らに怒りの一喝を浴びせる二人の少女。
いずれもあどけない印象を与えており、その口調は
一人は関西弁、もう一人は舌足らずで子供っぽい。
だが、幼い顔とは言え、その二人の瞳には、正義に燃える怒りの炎があった。
その光景を上空で見ていたユキは、以前にも増して驚愕の色を強める。
「何…馬鹿な!見ればまだ子供ではないか!!一体何が出来ると…
助けねば!!」
だが、ユキの身体は宙に浮いたままその場を動けず、
ただ目の前で繰り広げられる展開を見守るしかなかった。
止むを得ずユキは、二人の少女に逃げるよう呼び掛けるが、
姿が見えないのと同様に、その声もまた聞こえていない。
「どうすればいい…どうすればいいんだ私は!!??」
焦燥に駆られるユキ。
一方、地上の少女たちはユキの存在など全く気付かぬまま、
自分らの目の前のゼティマに対し身構える。
「あいぼん!!」
「判っとる…こいつら一人残らず倒さなあかん!
このまま野放しにしとったら、この街はお終いや!!
いくで、のの!!」
「うん!!」
二人の少女=辻希美と加護亜依は
許せぬ悪の群れ目掛け猛然と突進する。
その悪=ゼティマもまた、怪人が戦闘員に迎撃の号令を掛ける。
「小癪な…かかれぇ!!」
大挙して、二人に殺到するゼティマの戦闘員たち。
亜依と希美は、そのうちの何人かを軽くあしらうと、近くのビルの屋上へと
大きくジャンプする!
それを見て、ユキは絶句する。
「し…信じられぬ…あの力はどこから…もしや!?」
今宵はここまで、続きはまたの講釈で…
さて、今回は血車党の今後の動きと
ユキの見ている不思議な夢の物語です。
嵐の運命はもう決まってますが、今回と次回は
その「前フリ」とでも思って下さい。
念のため、この時点では、ユキはまだ夢の中なので
まだまだ二十一世紀の事柄に関与することは出来ません。
果たしてユキは己の夢の中から何を見出すのか!?
続きは次回、乞う、ご期待!!