∋oノハヽo∈
(*´D`)
( O┬O
〜 ◎-ヽJ┴◎ キコキコ
HOZEN
286 :
名無し募集中。。。:03/11/04 01:24 ID:hvq2pSCr
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
| モーヲタは包茎!!!! |
| モーヲタは童貞!!!! |
| モーヲタは悪臭!!!! |
| モーヲタは汚物!!!! |
| モーヲタは粘着!!!! |
| モーヲタは必死!!!! |
|_________|
二二 ∧ ∧ ||
≡≡(,, ゚Д゚)⊃ キモイ...
三三〜(, /
| ) )
∪
287 :
名無し:03/11/04 03:03 ID:MBvkO+EQ
@ノハ@
( ‘д‘) <保全やで〜
( O┬つ
≡ ◎-ヽJ┴◎ キコキコ
保
290 :
加紺とう:03/11/09 13:38 ID:RO39FaUN
19.新たな力
大会は順調に試合を消化している。
大会9日目、第一試合は昨年優勝校の上野学園が千葉の東海大浦安と相対する。
実は上野の後藤、浦安の保田・市井は幼い頃は近所に住んでいた。
よくキャッチボールをしたりなんかもした。
しかし、リトルリーグに入って2年ほどで後藤は東京の方へと越してきたのだ。
それでも年に何度かはあって遊び程度ながらも、一緒に野球を楽しんだりしていた。
それ故、相手の弱点をどちらも知り尽くしているのだ。
後藤と保田・市井のどちらが相手を上回るかが勝負の鍵を握っているだろうと言われていた。
291 :
加紺とう:03/11/09 13:39 ID:RO39FaUN
そして試合は始まった。
上野は後藤、浦安は市井が先発した。
先攻の上野、しかし初回は保田・市井のバッテリーに三者凡退に抑えられた。
その裏の後藤も負けてはいない。
初回は2奪三振でこちらも三者凡退と完璧な立ち上がりを見せた。
そして、2回に注目の対決が実現する。
2回表、4番の後藤が打席に立つ。
「きっと圭ちゃん達は、後藤の弱点のインハイを中心に攻めてくるはず…」
自分の弱点を完全に知り尽くす二人が相手、となれば当然弱点を徹底的に攻めてくるだろう。
そう思った後藤は、インハイに山を張った。
そして市井が第一球を投げた。
292 :
加紺とう:03/11/09 13:40 ID:RO39FaUN
「うそ、ど真ん中!?」
予想外の球に後藤は思わず手を出したが、鈍い打球音を残し、結果三飛(サードフライ)に終わった。
後藤は完全にこのバッテリーに裏をかかれた形になった。
保田はマスクの中でニヤリとうっすら笑っていた。
この後も市井は快投を続け、2回も三者凡退に抑えた。
その裏の攻撃、今度は4番の保田と5番の市井が後藤を打つ番だ。
まずは保田、後藤は徹底的に内角を直球で攻め立てた。
カウント2−1からの6球目、アウトハイの吊り球に思わず保田は手を出してしまった。
この時、電光掲示板には154km/hが表示されていた。
293 :
加紺とう:03/11/09 13:42 ID:RO39FaUN
「前よりも格段に速くなってるわね。」
保田は苦笑いしながら呟いた。
続く市井にも後藤は直球勝負を挑んだ。
今度は内外と揺さぶり、最後はインローの際どい直球で見逃し三振に仕留めた。
白熱の投手戦を繰り広げる中、試合が動いたのは4回の表だった。
依然上野打線をノーヒットに抑え込んでいた市井を最初に打ったのは、後藤ではなく意外にも2番の亀井だった。
市井の得意球、縦に落ちるカーブを狙い打ちし、センター前へとはじき返した。
そして3番の辻が続く。
カウント1−2からの4球目、カーブが若干甘めに入ってしまう。
それを辻は見逃さなかった。
豪快に掬い上げ、ボールは瞬く間にレフトスタンドへと消えていった。
辻のツーランで上野が2-0と先制した。
しかし、市井は気持ちをしっかりと切り替え、後続をきっちりと抑え込んだ。
当然、後藤には細心の注意を払っていた。
バッテリーはこの後も後藤は完全に抑え込んでいた。
294 :
加紺とう:03/11/09 13:43 ID:RO39FaUN
それでも、あの二人だけは抑えきれなかった。
6回表の亀井の第3打席目、2−2から粘ってライト線へ二塁打を放ち、続く辻が初球をセンター前へはじき返して貴重な1点を追加した。
9回表の第四打席目には亀井が右中間を深々と破り、俊足を活かしての三塁打。
辻がきっちりとレフトへ大きな犠飛を打ち、ダメ押しの4点目を叩き出した。
一方の後藤は、後半に来てもまったく球威が衰えなかった。
8回に唯一の失投を市井にライトスタンドへ運ばれて1点を返されたものの、まさにエースらしい力投を見せた。
試合後、保田はこう言っていた。
「ごっちんにばかり意識が集中しすぎてました。
あまりマークしてなかったあの二人にまんまと打たれてしまったのが敗因ですね。」
後藤の背中をいつも見ている新時代の申し子達が、この夏により逞しく成長を遂げつつあった。
295 :
加紺とう:03/11/09 13:53 ID:RO39FaUN
お待たせしました、やっとレポートが一区切りしたので復活です。
いろいろ実験的に書き方を変えてる(っぽい)ですが、準決勝あたりにはきっちり決めたいと思います。
ところで、オーダーって書いた方がいいでしょうか?
>281
お待たせしました、期待に応えられるかわかりませんが頑張ります。
>282
残念ながらメロンはキャラを把握できてないものですので…すいません。
>283-285・288-289
保全どうもでした。ぶりんこ保全隊かわいい…w
296 :
加紺とう:03/11/09 14:12 ID:RO39FaUN
その他の試合結果
7日目(2回戦)
横浜(神奈川)9-2仙台育英(宮城)
新潟明訓(新潟)8-5宇都宮工(栃木)
今治西(愛媛)6-12平安(京都)
PL学園(大阪)12-10智辯和歌山(和歌山)
8日目(2回戦)
樟南(鹿児島)4-8浦和学院(埼玉)
愛工大名電(愛知)3-4倉敷工(岡山)
宜野座(沖縄)3-1広陵(広島)
東洋大姫路(兵庫)1-0長崎日大(長崎)
言い忘れましたが、準々決勝あたりまではかなり端折りそうです。
推しがいる方には先に謝っておきます、すいません。
更新レポート乙。
オーダーは準決勝からでいいと思いますよ。
っていうかこの辺からは必然的にいるのか……
298 :
加紺とう:03/11/12 00:39 ID:wbX+TcjN
20.LAST RUN
第三試合は早大付と四日市工が対決した。
世間では早大付が圧勝だろうとの予想が圧倒的だった。
しかし、意外にも試合は緊迫した投手戦が続いていた。
早大付先発の安倍は中盤まで四日市工打線をノーヒット。
一方の四日市工先発の平家も毎回ランナーを許しながらも意地を見せ、無失点で切り抜ける。
緊迫が続いたまま試合は後半に入り、7回表の四日市工の攻撃を迎えた。
安倍は先頭打者に初安打を許してしまう。
ここからリズムが崩れたのか、犠打と四球で一死一・二塁とこの試合で初めてのピンチを迎えた。
299 :
加紺とう:03/11/12 00:41 ID:wbX+TcjN
続く打者は4番の平家。
この時、平家は観衆の大声援が全く聞こえなくなるくらい集中していた。
この試合を最後にはしたくない、その想いがとても強かったからだ。
安倍が投じた直球を平家は振りぬいた。
打球は中堅手と右翼手の間を鋭く破り、打った平家は二塁へ。
ランナー二人が返り、2点適時打で四日市工がほしかった先制点をもぎ取った。
その裏の早大付の攻撃。
徐々に疲れが見え始めた平家を早大付打線が捉え始めた。
先頭打者の里田が三塁前へのセーフティーバントで見事に内野安打を決める。
続く紺野が送り、3番の藤本はレフトへの流し打ちでチャンスを一・三塁と広げた。
300 :
加紺とう:03/11/12 00:42 ID:wbX+TcjN
そして4番の安倍が打席に入る。
平家はすかさず少し間をとった。
なんとなくわかった。
ここが勝負を決める場面になるということが。
一息つき、セットポジションに入る。
平家はもう一度集中力を高め、ボールを投じた。
『カキーン!!!』
振り返らずとも十分わかった。
完璧に真芯で捉えた当たりは、弾丸ライナーでライトスタンドへと突き刺さった。
301 :
加紺とう:03/11/12 00:43 ID:wbX+TcjN
逆転のスリーラン。
この瞬間、平家は集中力が完全に途切れてしまった。
その後も連打を浴び、平家の後を受けた投手も一度火の付いてしまった早大付を抑え込む事は出来なかった。
結局この回は8点を取るビッグイニングとなり、そのまま勝負は決した。
最後の挨拶、安倍が平家に熱い抱擁を交わした。
そして一言。
「お疲れ様、それとありがとうね。」
その時、平家の頬には一筋の線が眩しいほどに光っていた。
球場全体から沸き起こる平家コールに包まれながら、最後の試合を終えた平家が今ベンチの奥へと姿を消していった。
302 :
加紺とう:03/11/12 00:49 ID:wbX+TcjN
今日はここまでです。
準決勝あたりから以降はほぼシナリオが出来てるけど、問題はそれまでのつなぎという罠。
>297
それでは準決勝からオーダー書きますね。
その他の結果
遊学館0-1岩国
早大付札幌8-2四日市工
更新乙です。
準決勝からは壮大なドラマが待ってるのか……
楽しみにしてますよ。
304 :
加紺とう:03/11/15 11:14 ID:cdlOZg3q
21.MAKOTOの力
大会10日目、今日で娘。甲子園ベスト8が出揃うことになる。
そんな中、第一試合は優勝候補の一角の神奈川代表の横浜、対するは新潟代表の新潟明訓である。
この新潟明訓の中でも、今大会のダークホースと言われているのがエースの小川麻琴だ。
彼女の実力は確かだ。
速球にも力があり、変化球も切れ味は十分だ。
戦い様によっては後藤や安倍と同等、いや、それ以上の力を持っている。
しかし、彼女には唯一とも言える欠点があった。
制球力、いわゆるコントロールだ。
しかも、精神的に崩れてのコントロールミスが目立って多かった。
今大会もエラーがらみや微妙な判定からリズムを崩し、四球でズルズルと失点してしまった試合が何度かあった。
この精神力の弱さが、彼女の力をもうひとつ発揮できないでいる要因になっていた。
実は彼女、入部当初は強気がウリの投手だった。
しかし、当時はなかなか結果がついて来ず、次第に今の感じへとなっていったのだ。
305 :
加紺とう:03/11/15 11:14 ID:cdlOZg3q
そんな彼女を支えていたのが女房役の捕手、斉藤瞳だ。
時には優しく、時には厳しく、しかしどんな時でも小川に声をかけ続けてきた。
打っても4番の彼女は、まさにチームの柱とも言える存在だ。
その彼女が試合開始直前、小川に声をかけた。
「まこっちゃん、今日はノーサインでいくよ。」
へっ?と思わず声に出してしまった小川。
最初は斉藤が何を言ってるのか理解できずにいたようだ。
お構いなしに斉藤が続ける。
「今日の相手の横浜は、きっと一筋縄じゃいかないと思う。
おそらく私も打つ方でいっぱいいっぱいになるだろうから、今日のリードはまこっちゃんに任せるよ。」
半分口を開いたままだった小川だったが、ここでようやく言葉を発した。
「そ、そんなの無理ですよ!今までだって斉藤さんのリードで勝てたようなもので…。」
「フフッ」
何かを思い出したかのように斉藤が笑い出した。
そして小川が喋るのを遮るように、そのまま言葉を続けた。
306 :
加紺とう:03/11/15 11:16 ID:cdlOZg3q
「まこっちゃん、今まで私の要求通りのコースに投げたことがあった?
まこっちゃんは気付いてないかもしれないけど、今、まこっちゃんが新潟明訓のマウンドにいるのは紛れもなくまこっちゃんの力だからだよ。」
「私の力…ですか?」
「そう、自分に自信を持っていこうよ。まこっちゃんにはそれだけの力を持ってるんだからさ。」
斉藤のその言葉に、小川の中の何かが反応した。
試合が始まり、小川は思いっきり力強い速球を、鋭い変化球をどんどん投げ込んだ。
横浜打線も今までと明らかに違う小川の投球に戸惑い、なかなか捉えられずにいた。
一方の新潟明訓は、3回表に一死三塁から小川のスクイズで先制、6回には斉藤のツーランでさらに2点を追加した。
しかし、横浜打線も黙ってはいない。
6回裏に矢口のソロ本塁打で1点を返す。
そして9回裏、横浜が土壇場から矢口・新垣がヒットを連ねて無死一・二塁とチャンスを作った。
打席に入るのは3番の柴田。
小川・斉藤のバッテリーは敬遠も考えた。
次打者が今大会まだノーヒットの石川だからだ。
しかし、二人は勝負を選んだ。
打ててなくても横浜の4番に変わりはない、それに何よりここで逃げたくないというある種のプライドがあった。
307 :
加紺とう:03/11/15 11:17 ID:cdlOZg3q
一方の柴田は、ネクストバッターズサークルに目をやる。
石川がニコニコと手を振っていた。
しかし、今日の調子では厳しいだろうというのはわかっていた。
そして、無死とはいえ、ここは自分で決めにいかなければならないと判断した。
小川がセットポジションからボールを投じる。
初球は外のスライダーを見逃し、ストライク。
その後、直球を内・外と二球外してボール。
カウントは2ストライク1ボールとなった。
そして4球目、小川が内角へ直球でストライクを取りにいった。
柴田は待っていた、長打になりやすい内角の球を。
腰を鋭く回転させ、腕を上手くたたんでボールを捌いた。
文字通りの弾丸ライナーの打球はライトのポールを直撃した。
サヨナラ3ラン、柴田が吼えながらベースを一周する。
そんな中、斉藤は小川の元へと歩いていった。
しかし、今までとは違う、何か自信を取り戻したような小川の姿がそこにはあった。
「斉藤さん、すいません。最後に打たれちゃいました。」
「いや、アレを打たれちゃ仕方ないよ。お疲れ様。」
「はい、来年こそは絶対に勝ちましょうね!」
小川の口から、そのような積極的な言葉が出るとは思っていなかった斉藤は素直に嬉しかった。
敗れはしたが、来年につながる敗戦だ、と斉藤は思った。
結果は3−4のサヨナラ勝利で、横浜が5校目のベスト8進出を決めた。
308 :
加紺とう:03/11/15 11:25 ID:cdlOZg3q
今日はここまでです。
>307に間違いハケーン。
×2ストライク1ボール
○1ストライク2ボール
です。すいませんでした。思ったより長かったなぁ、マコ編。
>303
自分の中では壮大ではありますが…期待に応えられるかどうか…w
その他の試合結果
9日目
4.水沢0-2柳川
10日目
1.新潟明訓3-4x横浜
更新乙。
徐々に絞られてきましたね。
次の試合では梨華ちゃんの華麗なバッティングがみれるのか……
310 :
加紺とう:03/11/19 23:56 ID:jliyWG3h
22.目標
第二試合は強打を誇る関西の二校、平安とPL学園だ。
試合は両校の4番、中澤と稲葉が中心の乱打戦で展開された。
7回表を終わって中澤が4打数3本塁打5打点、稲葉が4打数3本塁打7打点、得点は5-7という状況だった。
しかし、その裏に平安は中澤が3ランを放ってなんとか逆転に成功した。
ところが、PLも8回表に2死満塁で稲葉という逆転の絶好のチャンスを迎えた。
ここで平安ベンチが動く。
捕手の中澤がマウンドへと上がったのだ。
勝負は初球だった。
ど真ん中の直球だったが、稲葉が打ち損じたのか、詰まらせてレフトフライに倒れてしまった。
この結果が勝負を分け、試合は8-7で平安がそのまま逃げ切った。
第三試合はこれまた強打の浦和学院が、第四試合は東洋大姫路がそれぞれ勝利し、これでベスト8が全て出揃った。
311 :
加紺とう:03/11/19 23:56 ID:jliyWG3h
試合を終えた、浦和学院の吉澤が宿舎へと帰ってきた。
すると…。
パ〜パ〜パラパパ〜パ〜♪
突然、携帯の着信音が鳴った。
吉澤は慌てて携帯を手に取った。
「もしもし?」
「よっすぃ〜、今日勝ったんだよね?おめでと〜!」
「なんだ梨華ちゃんか…。」
電話の主は横浜高校の石川だった。
夜中だというのに…一体何の用なんだろうか?
312 :
加紺とう:03/11/19 23:58 ID:jliyWG3h
「もう、なんだって何よ!せっかく電話してあげたのに、ひどいなぁ〜!」
「ごめんごめん。てか、こんな時間にどうかしたの?」
「明日、勝ったらいよいよ対戦だよね。」
そういえばそうだった、このままいけば横浜とは準決勝でぶつかる。
あと一つ勝てば、ひとつの目標にしていた石川との直接対決が実現するかもしれないのだ。
「そうだよねぇ、でも梨華ちゃんのとこは勝てるの?」
「当ったり前じゃん!相手は中澤さんのいる平安だから骨が折れるだろうけど、絶対に勝つよ。そういうよっすぃ〜の方こそどうなの?」
「どうだろ?東洋大姫路は投手がいいみたいだからね。でも、どんな投手でも打ち崩してみせるよ。」
「さっすがよっすぃ〜、かっこいい!」
「なんだそりゃ?ま、いいや。じゃ、準決勝で会おうね。」
「うん、それじゃ。チャオ〜♪」
吉澤は電話を切り、そして軽く一息ついた。
明日からは準々決勝、もっと気を引き締めなくっちゃ…。
そう自分に言い聞かせ、吉澤は床についた。
明日の試合が想像を絶したものになろうとは、この時の吉澤には知りえなかった。
313 :
加紺とう:03/11/20 00:05 ID:JuXE26I4
今日はここまでです。
次回(ちゃんといえばさらに次?)からもうちょっと深くなると思います。
>309
梨華ちゃん…空回りが多いからなぁw
10日目
2.平安8-7PL学園
3.浦和学院7-1倉敷工
4.宜野座0-1東洋大姫路
おもしろい展開になってきたね
ワクワクしながら待ってます
315 :
加紺とう:03/11/21 22:07 ID:GTisqz6h
23.衝撃
大会11日目、準々決勝。
安倍はスコアボードに目をやる。
その時、自らの目を疑った。
そこにはなんとも信じがたい光景があった。
いや、安倍だけではないだろう。
球場全体に、日本中に衝撃が走ったに違いない。
しかし、それは紛れもなく現実に他ならなかった…。
316 :
加紺とう:03/11/21 22:10 ID:GTisqz6h
安倍をはじめ、早大付ナインは第二試合に福岡代表の柳川と対決することになっていた。
柳川のエース、田中れいながこれまでの試合を全て4安打以内で完封しているということで、入念にアップを行っていた。
そろそろ試合も終わるかなと思った頃、球場が湧き上がった。
おそらく勝負が決まったのだろう。
しかし、この後早大付ナインは衝撃の事実を目の当たりにする。
球場から聞こえて来る勝利校の校歌。
しかし、それは明らかに上野のものとは違っていた。
上野ナインと早大付ナインがベンチですれ違う。
安倍は、泣き崩れる辻と亀井を福田が懸命に宥めている姿が目に入った。
その瞬間、後藤が球場に呑み込まれてしまいそうな位の小さな声で呟き、安倍の横を通り過ぎていった。
317 :
加紺とう:03/11/21 22:12 ID:GTisqz6h
「なっつぁん、ごめん。負けちゃったよ…。」
すぐさま振り返る安倍。
しかし、小さく小刻みに震える後藤の背中を見た時、何も声をかけることが出来なかった。
安倍はスコアボードに目をやる。
そこには信じがたい光景があった。
上野学園、サヨナラ負け。
しかも、あの上野がこともあろうにノーヒットノーランをされていたのだ。
対戦相手は山口代表の岩国高校。
正直な話、ここまで勝ち残ってるのが不思議なくらい、大して名前を知られていなかった高校だ。
今度はふと相手のオーダーに目をやる。
1番、投手、道重さゆみ。
やはり聞いたことのない名前だ。
その時、相手ベンチに岩国の背番号1が目に入った。
何かを言ったようだった。
聞こえはしなかったものの、その口の動きはこんな感じだった。
「今日の私も、やっぱりかわいかった…。」
なぜ、この投手から後藤や辻らがヒット一本すら打てずに破れたのか。
安倍は気になって仕方がなかった。
安倍だけではない。
他の選手も上野が敗れたことに衝撃を隠せずにいた。
318 :
加紺とう:03/11/21 22:13 ID:GTisqz6h
早大付ナインは試合が始まってもこの衝撃を払いきれずにいた。
明らかにいつもよりも精彩を欠いている。
6回を終えて、打線は田中に11奪三振を喫し無安打。
守っても、藤本・飯田・大谷がそれぞれ1エラーずつ。
投げる安倍もなんとか無失点で凌いではいたものの、毎回ランナーを背負うという苦しいピッチングが続いていた。
ひょんなことで完全に柳川へと流れを持っていかれてしまいそうな展開だった。
観客も上野に続いて早大付もまた敗れてしまうのではないかと微かながらざわめき出していた。
しかし、石黒がこの悪い流れを断ち切る。
8回表、藤本が田中に今日13個目となる三振に倒れ、二死となって6番の石黒が打席に向かう。
何とかここで流れを変えなきゃ…。
ここが勝負どころと読んだ石黒。
そこである行動に出た。
319 :
加紺とう:03/11/21 22:14 ID:GTisqz6h
「えっ!?」
投手の田中が驚きのあまり、思わず声を出してしまった。
あの長距離砲の石黒がバットを二握りも余して持っているのだ。
ヒット狙いに切り替えたのか?
真意を掴めないままの田中だったが、そのまま力で押し切る事にした。
初球、ど真ん中の速球を見逃しストライク。
二球目・三球目はそれぞれインハイ・アウトローに速球を外してボール。
四球目は内角への速球をファール。
その後も田中の投げる球投げる球を石黒がファールで粘る。
そうしている間に田中は十八球目を投じた。
そして石黒はまたしてもファールで逃げた。
田中はその時、自分が肩で息をし始めているのに気付いた。
320 :
加紺とう:03/11/21 22:18 ID:GTisqz6h
しまった!これが石黒さんの狙いやったと!
今まで順調に投げていた田中のペースが突如乱れ始めていた。
そしてこの瞬間を石黒は見逃さなかった。
十九球目、田中が速球でストライクを取りにきた。
この時、田中は石黒がバットをグリップエンドまで目一杯に持っていたことに気付く。
しかし、時すでに遅し。
石黒が打った打球はライナーでレフトスタンドへと消えていった。
この先制弾が早大付ナインの目を覚まさせた。
この後も点にはならなかったものの安打を2本放って、元気のなかった早大付打線がついに田中を捉えはじめた。
投げては安倍が秘球『トウモロコシと空と風(以後『TSW』)』がやっと冴えはじめて、その後はまったく危なげないピッチングを見せた。
一時はどうなるかと思われたが、このまま早大付が1-0で逃げ切り、見事準決勝へと駒を進めた。
一方、惜しくも敗れ去った田中は球場を去るときポツリとこう呟いた。
「さゆ、あたしん代わりにうちらの約束ば叶えっとよ。」
果たして田中のいう約束とは…?
そしてさゆ(道重さゆみ)の実力とは…?
全ては準決勝の第一試合に明らかになる。
321 :
加紺とう:03/11/21 22:27 ID:GTisqz6h
今日はここまでです。
思ったよかれいなが書けなかった…。
そろそろn日だった気がするからペース上げないと…。
>314
そう言ってもらえると嬉しいです。
期待に副えるよう頑張ります。
試合結果
11日目
1.上野学園0-1x岩国
2.早大付札幌1-0柳川
322 :
加紺とう:03/11/23 15:47 ID:R8vlq3yK
24.爆発、石川梨華
白熱した試合が続く準々決勝、次のカードはチーム打率3割5分を誇る横浜と平均得点9点の平安の対決だ。
両校の先発は、横浜が石川、平安が中澤。
中澤の先発に球場がどよめいた。
ここまで中澤はワンポイント、もしくはリリーフでの登板しかなかった。
しかし、防御率は0.00と完璧なリリーフをしている。
その訳は中澤独特の投法にあった。
まるで砲丸投げのような豪快なフォームから繰り出される球は、例えるなら鉛のような重さがあった。
現にこの中澤の球を完璧に打ち返した人間は過去に数えるほどしかいなかった。
だが、その一方でこの投法には副作用的なものもあった。
323 :
加紺とう:03/11/23 15:48 ID:R8vlq3yK
それはかなり豪快な投法であるがゆえに、普通の投法とは比べものにならないくらいに腕力を消耗してしまうのだ。
それ故、回を追うごとに疲労が溜まり、そうなれば自然と球に力もなくなり、しかもそれが打撃にも影響してくる。
中澤が得点源でもある平安にとって、中澤が打てなくなってしまうのは死活問題だ。
なので、先発での起用がまったくといっていいほどなかった。
では、今回先発になったのかというと、それは中澤の希望だったからだ。
一度火が付けば手に負えない横浜打線を私がいけるとこまで抑えてみせる、ということだった。
324 :
加紺とう:03/11/23 15:49 ID:R8vlq3yK
試合が始まる。
先攻の平安がいきなり石川に襲い掛かる。
2死2塁から4番の中澤、カウントを取りにきた変化球を上手く流し打った。
打球は伸びていき、ライトスタンドへ。
いきなり2点を先制した。
一方の横浜はというと、中澤の球にまったくといっていいほど歯が立たない。
1番の矢口は詰まらされてセカンドフライ。
2番の新垣は同じく詰まってファーストファールフライ。
3番の柴田はぼてぼてのピッチャーゴロに打ち取られた。
いずれも初球だった。
この後も、平安が2点を追加、対する横浜がノーヒットのまま回は進んだ。
8回表に中澤のソロで1点を追加したその裏、横浜は4番の未だに今大会ノーヒットの石川からの攻撃。
さすがに中澤も疲れが見え始めていたが、まだひとりのランナーすら許していなかった。
このまま完封するかとも思われた。
325 :
加紺とう:03/11/23 15:53 ID:R8vlq3yK
が、次の瞬間、球場全体が青ざめる。
石川への初球がすっぽ抜けた。
そして中澤の投じた直球が石川の顔面へと一直線に向かっていった。
誰もがこれは危ない!と目を瞑った瞬間…。
凄まじい打球音が球場に木霊した。
球場全体が静寂に包まれ、ひとり、またひとりと目を恐る恐る開く。
そこにはスイングを終えた石川の姿だけが残っていた。
ボールはいずこへ?
そう思った瞬間、ボールが何かにぶつかる音が響いた。
誰もがそこに目をやる。
場所はバックスクリーン、そこにはボールが転々と跳ねていた。
審判が慌てて手を回した。
326 :
加紺とう:03/11/23 15:57 ID:R8vlq3yK
「やったぁ〜!ハッピィ〜!!!」
石川はピョンピョンと飛び跳ねながらベースを一周した。
中澤はただ呆然としていた。
なぜあの球を打てたのか?
しかも、今大会ノーヒットの石川が…。
その答えが石川とハイタッチを交わす、矢口の口からこぼれた。
「やっと出たねぇ、石川の悪球打ちが!」
この石川の一発が横浜打線爆発の起爆剤となった。
この後、気落ちした中澤を攻め立て、マウンドから引き摺り下ろす。
止まらない横浜打線は2番手投手も攻め続けて、矢口、柴田のタイムリーで1点差に、そして石川が今日2本目となる満塁弾を放って一気に試合をひっくり返した。
これで勝負は決まった。
このまま横浜が逃げ切り、結果8-5で準決勝へと勝ち進んだ。
まんまとやられたよ、と少々呆れ顔の中澤。
しかし、その表情からは十分満足した試合だったことが伺えた。
そしてこの後、準決勝へと進むことのできる最後の一校が決まる。
327 :
加紺とう:03/11/23 16:01 ID:R8vlq3yK
一応ここまでです。
もしかしたら夜にもういっちょ更新するかも…。
試合結果
11日目
3.横浜8-5平安
更新乙です。
まさかの展開があったり楽しませてもらってます。
っていうか梨華ちゃん爆発やっとキタ━━━( ^▽^)━━━!!!
329 :
加紺とう:03/11/24 00:40 ID:4ruIuXFL
25.負けられない…
横浜ナインは試合後、偵察も兼ねて第四試合を見ることにした。
ダウンを終え、ナインは観客席へと向かった。
時間的にはちょうど0-0で4回が始まった頃、球場は騒然としていた。
そこでナインが見たものは…。
浦和学院の吉澤が打席で右足を押さえて倒れている姿だった。
どうやら死球を受けたようだ。
マウンドを少し降りたところで相手投手は必死に謝っている。
が、石川は次の瞬間を見逃さなかった。
相手投手が振り返り際、うっすらと笑みを溢していたことを…。
回は投手戦のまま進み、再び吉澤の打順となる。
相手投手は執拗に内角を攻める。
吉澤も何とか打ちに行くが、右足が痛むのか、なかなか捉えきれない。
そして…。
330 :
加紺とう:03/11/24 00:41 ID:4ruIuXFL
速球が再び吉澤の右足を襲った。
当たったのはさっきとまったく同じ場所。
石川も思わず声を上げた。
「よっすぃ〜〜〜!!!」
今度は相手投手は表情一つ変えていない。
誰の目にも明らかに故意とわかった。
そして、吉澤の第四打席。
またしても吉澤は右足を狙われた。
何とか交わそうとするも、打ちにいっているために逃げ切れなかった。
吉澤は見るからに立つことすら困難な状況だった。
それでも吉澤は最後までグラウンドに立ち続けた。
しかし、無情にも9回裏、本塁打を打たれてサヨナラ負けとなってしまった。
331 :
加紺とう:03/11/24 00:42 ID:4ruIuXFL
試合後、石川はすぐさま吉澤の下へと向かった。
すると、右足を引きずって歩く吉澤の痛々しい姿を見つけた。
「よっすぃ〜、大丈夫!?」
「あ、梨華ちゃん…足なら大丈夫だよ。でもごめんね、負けちゃった…。」
石川を気遣うように吉澤は言葉を返した。
が、その表情は明らかに苦痛でゆがんでいるように見えた。
「それより梨華ちゃん、次の相手は気を付けなよ…。あいつの球はマジでやばいから…。」
「よっすぃ〜、どういうこと?」
死球を平気でやってくるということだろう、と思っていた。
しかし、どうやら吉澤が言いたいのは別のことのようだ。
332 :
加紺とう:03/11/24 00:44 ID:4ruIuXFL
「あいつのシュート、ありえないから…。」
「シュート?もしかして剃刀シュートとか投げるの?」
「剃刀なんてもんじゃないよ、あれは例えるなら…チェーンソー…。」
「チェーンソー?」
想像こそつかないが、とにかくえげつないのだろう…。
石川は吉澤の肩を支えながら、迎えの車まで送っていった。
そして石川は復讐を誓う。
「よっすぃ〜、私が敵を討ってあげるから…。」
その相手は松浦亜弥。
次の試合は絶対に負けられない…。
よっすぃーのためにも、私自身のためにも…。
石川は密かに決意を固めるのであった。
これでベスト4が出揃った。
山口・岩国、北海道・早大付、神奈川・横浜、兵庫・東洋大姫路。
それぞれの様々な想いが交錯する中、この中から決勝へと進む二校が明日決まる。
333 :
加紺とう:
今日はここまでです。
次回はシゲさん、どんな闘いを見せてくれるのだろう…と楽しみにしている作者w
>328
騎馬戦で梨華ちゃんがキレたそうで(あな真里より)、こっちでもキレさせてみようかな?と思ったりw
試合結果
11日目
4.浦和学院0-1x東洋大姫路