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251加紺とう
     12.投手戦
「もしかして、去年の大会をずっと見てて、それをまねてるんじゃないんでしょうか?」
6回裏の攻撃中、亀井がボソリとつぶやいた。
しかし、後藤は即座に答える。
「いや、そんなことはないよ。」
なぜなのか理解に苦しむ亀井に、福田が続いて説明する。
「亀井は知らないかもしれないけど、後藤は去年の大会で肩を壊したんだ。
今では完治しているが、肩の負担を減らすために当時のフォームよりも若干スリークォーターぎみになっている。
でも、加護はその腕の角度も今の後藤を完全に真似ている。」
「つまり、今見て真似ていると…。」
「そういうことになるな。いずれにしろ、恐ろしいやつだよ。」
福田の説明に納得した亀井、そしてちょうど6回の攻撃が三者凡退で終了した。
252加紺とう:03/10/09 01:11 ID:YmbV1QhI
7回表、後藤は巧みな変化球攻めで打者三人を五球で打ち取った。
7回裏、先頭打者の辻が打席に入る。
ここに来て、加護のリズムが少し狂う。
二球続けてのボール。
加護は、なぜか自分の右手が少しだけ震えていることに気がついた。
もしや、辻を恐れているのか?
確かに力はあるが、いままで抑えてきたんだからそんなこともないだろう…。
しかし、結局加護は辻をストレートの四球で歩かせてしまった。
加護にとっては、この試合はじめてのランナーである。
だからといって、簡単に動揺する加護ではなかった。
続く亀井、福田を連続三振。
後藤も右飛(ライトフライ)に打ち取り、あっさりとこの回を乗り切った。
その後は両者ともランナーを許さない。
そして、試合はついに9回の攻防に入る。
253加紺とう:03/10/09 01:12 ID:YmbV1QhI
9回表、二死となって加護の打席。
後藤は例によって魔球『なんなんだぁ』を投げ込む。
必死に見切ろうとする加護だが、結局見極めることができず、ここも三振に倒れた。
「一体、あの球はどないなっとんのや…。」
生まれて初めて真似できない球を見せられて、困惑の色が隠せない。
しかし、加護は気持ちを切り替える。
次の回を抑えれば勝利、しかもこのままノーヒットならばノーヒットノーランだ。
本来なら緊張して力んでしまう場面だが、加護はこれを気持ちの高ぶりに上手いこと変換する。
そして最終回のマウンドへと歩を進めた。