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229加紺とう
     8.奇襲
ここで後藤の頭によぎったのは、対福井商戦で見せた加護の足だ。
無警戒なら確実に三塁まで奪われてしまう。
後藤はセットポジションに入る。
二度ほど速い牽制球を投げる、が加護はゆうゆうと塁へ戻っている。
再びセットポジションに入り、目で何度か牽制をして、後藤は投球モーションに入ろうとした。
その時、加護がスタートを切った。
一方の打者はというと、バントの構えをしている。
『コンッ!』
打球はピッチャー横へと転がっていった。
後藤はボールを捕球し、すぐさま二塁を見る。
加護はすでに二塁に到達していた。
後藤は体を切りかえ、一塁へゆっくりとボールを送った。
230加紺とう:03/10/02 22:37 ID:OGZegq/8
その時だった。
加護が狙っていたかの如く、三塁へ向かって猛然と走り出した。
慌てた一塁手がすかさず三塁へ送球する。
しかし、間一髪セーフ。
後藤は一死三塁のピンチを迎えた。
ここで後藤は一旦間を取り、辻をマウンドへ呼んだ。
「のの、わかってるよね?」
「へい、すくいずがきそうになったらすぐにうぇすと、れすね?」
「そう、本盗もあり得るから配球は外中心でお願いね。」
「わかったのれす。」
手短に打ち合わせを終え、辻は元の場所へと戻っていく。
打順は3番、内野ゴロ・犠牲フライでも1点の場面だ。
上野学園は内外野前進守備を取る。
そして、後藤がセットポジションに入った。
231加紺とう:03/10/02 22:38 ID:OGZegq/8
すると、後藤と辻があることに気付く。
加護のリードがあまりに大きい。
おそらく本来より2・3歩は大きく取っている。
本盗を狙っているのか?
念のため、後藤はクイックモーションで投げる。
しかし、加護は全く走る気配を見せない。
辻がボールを捕球して横目で加護が慌てて塁に戻ろうとするのを見る。
刺せる、そう判断した辻はすぐさまボールを三塁へと送った。
が、その時だった。
加護が本塁へ向かって突っ込んで来たのだ。
三塁手の福田は慌ててボールを本塁へと返す。
若干送球が横に逸れてタイミングはかなり微妙だ。
辻がタッチしに行く。
しかし、加護はそのタッチを上手く掻い潜り、ヘッドスライディングで本塁に触れた。
土煙が舞う中、主審の手が大きく横に開いた。
あっという間の出来事に、観衆も、上野ナインもただ呆然としている。
加護はベンチへと戻り、笑顔でチームメイトとハイタッチを交わす。
膠着状態だった試合の中、智辯の想像を絶する奇襲攻撃に上野はなす術もなく先制点を許してしまったのだった。