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191加紺とう
3.娘。甲子園開幕

数日後、甲子園前に娘。甲子園参加校が集まっている。
もうすぐ開会式が始まるのだ。
東京上野学園の後藤、北海道早大付札幌の安倍、などなどまさにオールスターともいえるメンツだ。
この中に他校同士で知り合いというのもかなり多いようで、あちらこちらで雑談が飛び交っている。
192加紺とう:03/09/23 21:25 ID:s3xOH7c9
「よっすぃ〜、今年はどうなの?」
「こっちはそれほど強豪ってのがいないから、いいとこまでいけると思うよ。梨華ちゃんは?」
「どうだろう、中澤さんのいる京都平安とも当たるから。でも、私がいるから大丈夫だよ♪」
「梨華ちゃんてホントにポジティブだね…。」
埼玉代表浦和学院の吉澤ひとみと、神奈川代表横浜高校の石川梨華。
埼玉一のスラッガーと神奈川一のエースの二人は、練習試合で対戦して以来ちょくちょくメールをしたりしている仲だ。
実はこの二人、練習試合以外で直接対決というのはまだない。
大概は、共に上野学園か早大付札幌の前に敗れ去ってしまっていたからだ。
だが、今回はどちらも決勝まではその二校とは当たらない。
初めて直接対決を迎える可能性が極めて高いのだ。
その日が来ることが待ち遠しい。
二人にとっては、娘。甲子園優勝と同じくらい夢にまで見た対決なのだ。
「じゃ梨華ちゃん、準決勝で会おうよ!」
「そうだね、よっすぃ〜!」
そういって二人は自分のチームの元へと帰っていった。
193加紺とう:03/09/23 21:26 ID:s3xOH7c9
名勝負はこの二人の対決だけではない。
東京上野の後藤と北海道札幌の安倍のリベンジ対決。
東京上野の後藤と千葉東海大の保田・市井の幼馴染対決。
神奈川横浜の矢口と京都平安の中澤の親友対決。
実現するかはわからないが、数え切れない程の名勝負がこの先待っていることだろう。
そんな中、それぞれが様々な想いを胸に抱き、ついに開会式が始まった。

威風堂々な入場行進に始まり、着々とプログラムがこなされていく。
そして、福岡柳川の田中れいなによる選手宣誓が行われた。
「宣誓!我々選手一同は娘。精神に則り、この娘。甲子園の高みを目指して、一試合一試合、誰一人とて悔いのない試合をすることを誓います!2003年7月22日、娘。甲子園福岡代表柳川高校、田中れいな!」
初出場とは思えない見事な宣誓に、観衆は大きな拍手でそれを讃えた。
その後、そのまま全てのプログラムが無事に終了した。
194加紺とう:03/09/23 21:28 ID:s3xOH7c9
開会式終了後すぐ、第一試合が始まろうとしていた。
福井代表福井商業vs奈良代表智辯学園。
福井商業は、本格派右腕の高橋愛を擁す守り主体のチーム。
一方の智辯学園は、これまた本格派右腕の加護亜依を擁す機動力でかき回すチームということで、
かなりの投手戦になるだろうと予想されている。
この試合が開幕試合ということもあって、バックネット裏には各校の選手達がぞろぞろと座っていた。
もちろん、あの人も…。
「かごあい…どんなせんしゅなんれしょー?」
「のの、あの子の知り合い?」
辻がぼやくのを見て、後藤が加護の方を指差しながら辻に尋ねる。
「このまえ、ちゅーせんかいのときにあったのれす。」
そう、アレが運命の出会いだったと辻はあの時の一部始終を思い出す。
「ふ〜ん、それで仲良くなったんだ。」
後藤が納得した様子でそう言った時、辻が間髪入れずに口を開いた。
195加紺とう:03/09/23 21:32 ID:s3xOH7c9
「らいばるなのれす。」
後藤もビックリしていたが、これには辻自身も驚いていた。
別にライバルだと相手が言ってきた訳でもなければ、自分もそんな風に意識していたわけでもなかった。
ただ、口から勝手にこの言葉が出てきたのだ。
だが、辻はあの出会った瞬間から加護に対して確実に何かを感じていた。
それが負けたくないという気持ち、『闘争心』であることに辻はこの時初めて気付かされた。
おそらくそういう風になる運命だったのだ、と辻は自分に言い聞かせた。
二人がグラウンドへ目を移すと、もうすぐ試合が始まろうとしていた。
マウンドには加護亜依が立っていた。
そして審判のコールと同時にサイレンが鳴る。
今、娘。甲子園の新たな幕が上がった。