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177加紺とう
娘。甲子園2

1.運命の出会い

プルルル…プルルル…プルルル…
布団の中にうずくまったまま、辻が携帯に手を伸ばす。
「ふぁい、もしもし…。」
「のの、もしかしてあんた、まだ寝てたの?」
電話の向こうの声は後藤だった。
その声はえらく驚いたようで、若干早口になっていた。
「あんた、もうすぐ抽選が始まるから早く来な!」
辻は慌てて時計に目をやる。
時計の針はもうすぐ11時を指そうとしていた。

急いで制服を着替え、身支度を2分で済ませた。
民宿の玄関を飛び出し、かばんから大好物の焼きそばパンを取り出して、走りながらそれをほおばる。
「はぁ…はぁ…ちこくするのれす!」
娘。甲子園の組み合わせ抽選会は11時半からで、民宿から会場まではどんなに急いでも20分はかかる。
辻は持てる力を振り絞り、全力疾走で会場に向かった。
「どうせなら、もっとはやくおこしてくれなのれす!」
愚痴りながら走っていたら、角から飛び出してきた人とぶつかってしまった。
両者とも思いっきり尻餅をつき、痛そうにお尻を押さえていた。
「なんだ、このちっちゃい奴は?」
これが両者がシンクロしたかのように、同時に最初に口にした言葉だった。
そして、相手の方が続けて話してきた。
「ちょっと慌てとったから、ぶつかってしもてすまんかったな。
うちは娘。甲子園の奈良代表で、智辯学園の加護亜依ゆうねん。」
178加紺とう:03/09/21 05:26 ID:onfz0tHM
「つぃののみなのれす。
ののはとーきょーだいひょうのうえのがくえんなのれす。」
背格好がまったくそっくりな二人。
お互い初めて会ったのに、そんな気が全くしなかった。
「あんたも娘。甲子園の出場者か。
しかもあの王者の上野学園って、あんた見かけによらずすごいんやなぁ。」
お団子頭の関西弁少女、加護亜依は流暢に話しかける。
辻は誉められて嬉しかったのか、少し俯きながら顔を赤らめた。
が、二人は次の瞬間、同時に大事な事を思い出した。
「あ、抽選会が始まっちゃう!」
二人は大急ぎで会場に向かった。
とばした甲斐あって、かろうじて時間には間に合った。
二人はそこで再会の約束を交わし、それぞれの席へと向かう。
そして、各校の今年の命運を懸けた抽選会が始まった。