42 :
mmndk:
「りかは冬に死んだんだ」
「私の話をちゃんと聞いていたら分かると思うけど」
「りかは自分からは水以外口にしなかったんだ」
「それにからだが弱かった」
「秋の終わりから・・・虫も少なくなってきた頃からりかはよく熱を出し始めた」
「だから私の無理矢理口移しでもう残り少ない肉を食べさせた」
「それでなんとかりかは元気になっていった」
「けど・・・・・」
「雪が降り出した頃から・・・・」
「りかは治りづらくなった」
「それに食べる物も無くなった」
「・・・・・・何だか悲しくなってきたからかな・・・・・・」
「りかとの楽しい思い出を思い出した」
「夏の終わりにりかが不思議なものを見つけた」
「ピアノってやつだ」
「りかはピアノを見つけると嬉しそうの顔で」
「聞いててねって言った」
「私が不思議そうにしてると綺麗な音楽が聞こえてきた」
「びっくりしたよ」
「あんな変な物であんなに綺麗な音楽がでるんだっておもって」
「りかは凄いなって思った」
「楽しそうに弾くんだ・・・とっても楽しそうに」
「ピアノを弾いてるりかを見るとまたドキドキした」
「私はりかのピアノが大好きだった」
「は・・・・また話を戻すか・・・」
「りかが死んだ日の事を話すよ」
「あの日は多分冬の中でも特に寒かった朝だった」
「もう虫もいない、取っておいた肉も底をついた日だった」
43 :
mmndk:03/08/18 07:35 ID:rBFS/tIB
「私は目を覚ますとすぐにりかの熱が下がっているか確認した」
「前の日にまた熱を出した」
「それに眠い、寒い、苦しいって何度も何度も言ってた」
「いつもの風邪とは何か違った」
「前の日の朝から私はずっとりかの傍にいた」
「やっぱり熱は下がってなかった」
「冷やすのに使ったビニール袋に入れた雪もすぐに水になっちまうくらい」
「りかの熱は高かった」
「もう食べる物もない」
「私はりかの傍にいて暖めてやるしかなかった」
「りかはこの日も前の日と一緒で、苦しんでいた」
「そんなりかを助けてやりたくて私は食べ物を探しに車をでた」
「歩いても歩いても虫も鳥もなにも居なくて」
「雪の上に座り込んだ」
「もうりかも助ける事は出来ないのかと思ったその時」
「目の前にあった割れた鏡に自分の姿が映った」
「私はすぐに起き上がり持っていた包丁をどーしたと思う?」
「痛かったよ」
「足を切る時よりはるかに痛かった」
「叫びそーになったけどりかに気づかれたくなかったから我慢したんだ」
「2.3回力いっぱい切ろうとしても切れないから」
「包丁を腕にセットし杖代わりに使っていた鉄の棒で思いっきり包丁を叩いた」
「そしたら綺麗に切れたよ」
「すぐ血を止める為にハンカチで切り口を押さえた」
「切れた腕の肉を小さく切ろうとしても左手が無いから上手く切れないんだ」
44 :
mmndk:03/08/18 07:36 ID:rBFS/tIB
「急いでりかの所に食べ物を持って行きたかったから」
「噛み千切った」
「車に戻るとりかに気づかれないように切った腕を隠し」
「小さくした肉を口移しで食べさせた」
「りか!起きてるか?肉だ、ちゃんと食えって言ってどうにか飲み込ませた」
「けど一口食い終わると、もういいから瞳が食べてって言って食べなくなった」
「私は仕方なく口の中にあった肉を食べた」
「気がつけばもう夜だった」
「もう夜だってりかに教えてやるとりかは外に出たいと言った」
「私は、だめだ!って言ったけどりかはママに会いたいからお願いって言ったから」
「二人でいつも星を見る場所に行った」
「りかが寒くないように、私がりかの後ろで抱きかかえて座った」
「少しの間何もしゃべらないで星を見ていた」
「りかは震えながらママ、ママって言っていた」
「私はりかをギュッと抱きしめると、今日の星は今まで1番綺麗だよって教えて」
「うそじゃなかった、本当にそんな気がしたから言ったんだ」
「りかは、途切れ途切れの声で嬉しそうにママがいるんだわっと言った」
「そーだねと言うと、今夜は一緒にここに居てくれる?お願いって涙目で言った」
45 :
mmndk:03/08/18 07:36 ID:rBFS/tIB
「わかったと言うとさらに強く抱きしめた」
「時間が経つにつれりかは息を荒らくしていった、不安だった」
「突然りかがこっちを向き咳き込みながらゆっくり言った・・・それが最期の言葉だった」
「瞳に出会えてよかったよ、ありがと・・・」
「そした眠る様に目を閉じた」
「信じられなかった」
「震える声でりかって呼んでよ」
「でも目を覚ます事はなかった、ずっと」
「大切な物なんて無いはずの私なのに、世界で一番大切な物をなくした気がした」
「その日は朝までりかと一緒にいたよ」
三階、給湯室には3人の女子社員がいる。
「私、凄い噂聞いちゃった」
と不味そうな煎茶を淹れながら笑顔で彼女は言った。
「何?何々?れいな!」
亀井はお茶を淹れるのを中断して興味いっぱいの顔で聞いた。
「それがね・・・・」
こっちで再開されたか 期待sage
保
>>45 なかなか良いスレが手に入りましたね。
小説総合スレで再開した事を告知した方がよいのでは
気付いてない人多そう。
再開おめです。
期待して待ってま〜す。
50 :
wetty:03/08/22 01:22 ID:riV7js95
祝再開。
更新分読みました。。。・゚・(ノД`)・゚・。
展開からいくともうすぐ完結なのかな
がんがってくらさい。
アク禁解除テスト
ヤターやっと解除だ
串探しからも開放される
55 :
:03/08/27 13:21 ID:TUPQflh4
てすと
56 :
mmndk:03/08/27 14:57 ID:lh4DxArM
田中の言葉で2人のおじゃべりが始まった。それを横目でちらりと見ていた道重は溜息をついた。この2人のおしゃべりは終わらないんじゃないかと思う位長いのだ。噂話を聞くのも話すのも得意ではない道重にとっては苦痛な時間な始まりであった。
「・・・・なんだって!!」
「なんか悲惨だね〜」
亀井はふと振り向くと道重が珍しく噂話に参加(聞いていただけだが)していたのでビックリした。
「さゆみも聞いてたんだ!なんか可哀想じゃない?ねぇ〜」
道長は亀井の言葉で自分が田中の話に聞き入ってた事に気づいた。
「こら!!早くお茶持って行く!!サボるなよ〜」
と声が聞こえたので3人は顔を見合わせ急いで給湯室をでた。
「すみません〜藤本先輩〜」
給湯室はさっきまでの騒がしさを失った。
(あの死体と紺野先輩が関係してたなんて意外だな〜)と道重は思っていた。
57 :
mmndk:03/08/27 14:58 ID:lh4DxArM
「周りが明るくなってくると私はりかをなるべく綺麗な毛布で包んだ」
「りかを川に流す事にしたんだ」
「いつかは海とつながっている川に・・・・」
「だってりかが言ってただろ?りかのお母さんは海に帰って星になったって」
「だから私はりかを海に帰した」
「私はりかが見えなくなるまで川から離れなかった」
「きっとりかは綺麗なまま海に帰って世界で一番綺麗な星になったよ」
紺野は険しい顔でスーツのポケットを見つめた。そして一時停止のボタンを押して8人の顔を見渡した。それぞれ思いつめた顔をしている。紺野はもう十分だと思い8人に優しく語りかけた。
「皆さんにお聞き頂きたかったにはここまでです。まだテープは少し残ってますがもう結構です。Mブリッチの現状がお分かり頂けたと思いますので、これから先なにをしていただけたら良いのか個々で考えて頂きたい」
58 :
mmndk:03/08/27 15:13 ID:lh4DxArM
紺野は言い終わるとテープを取り出そうと停止ボタンに手を伸ばした。その時
「待って下さい!!」
安倍の声で手を止めた。
「待って下さい。私達には残りの分も聞く義務があります!」
安倍の言葉を聞いた7人の娘は次々に口を開いた。何故なら皆同じ意見だから。
始めは驚いていた紺野も最後には再生ボタンを押した。
乙。
かなり期待sage
60 :
mmndk:03/08/30 14:43 ID:r3H0q0Pr
「あー、もう話すことなくなったよー」
「それに何だか眠くなって来た・・・・」
「すげー体だるいし」
「私ももうだめかな・・・・」
「それなら・・・最後によく聞けよ!!」
「私は・・・いや!私とりかはここで生きてたんだ!!!」
「ここに居たんだからな!!」
「捨てられても・・・・ここで一生懸命生きてたんだ・・・」
「もう・・マジでや・・・ばい」
「目が・・・・っクラクラす・・・る」
「本・・・っ当に・・っこれで・・・さい・・・ごだ・・・」
「わた・・・したちはこ・・・こで生きて・・・っここで・・・死ぬ」
「覚え・・・ってお・・け・・・・・・・・・」
車のクラクションが遠くに聞こえ、音はすぐ消えてしまう。
ザーという雑音が数分流れテープは停止した。
61 :
mmndk:03/08/30 15:59 ID:r3H0q0Pr
「では、お掃除終わりましたので失礼します」
会釈をして道重は第二会議室を出た。
紺野は椅子に深く腰掛けた。1つの大きな仕事を終えたかのように満足気な笑顔で何処か罪
悪感に満ちた溜息をつき思った。
(私達の社会では欠かす事の出来ない橋となった『M・ブリッチ』だが、当初から破滅的な
通行料で運営していた為とあのテロの為に利用者が経営側の予想を遥かに下回り『M・ブリ
ッチ』は開通2年で経営難に陥った。それと同時にもう1つの問題も起こってしまった。
橋下のゴミ問題。住宅地から離れていて、広い空き地のような『M・ブリッチ』の下は粗大
ゴミを捨てる場所には持ってこいなのだ。その噂を聞きつけた人々は次々とゴミを捨てて
行った。経営難で悩まされていた管理者側は始めはゴミ問題などは苦情も無いので聞き流
していた。しかし・・・・彼らはのちにゴミ問題を上手く利用し経営難を乗り越えた。その方
法は・・・・ゴミの投棄を有料化したのだ。もちろんそれは行ってはいけない事。なので知っ
ていたのは各会社、グループの社長や会長のみ、広告のやり方も非合法なマーケットで行
われていた。その為今では『死の橋下』と呼ばれる程ゴミで溢れている。しかも彼らはど
んなゴミでも指定の金を払えば請け入れた。たとえ人間でも・・・・だから私は経営・管理を
受け継ぐ彼女達にこのテープを聞かせた。・・・・・・・彼女達は分かってくれたであろう
か・・・・)
62 :
mmndk:03/08/30 16:00 ID:r3H0q0Pr
紺野はポケットからゆっくり一枚の写真を取り出した。写真の少女はブランコで遊んでいるのが楽しいのか大きな美しい瞳をこっちに向けて笑っている。紺野の涙が写真に落ちた。
真珠のような大粒の涙を流しながら一言ぽつりと呟いた。
「お姉ちゃん・・・・」
63 :
mmndk:03/08/30 16:01 ID:r3H0q0Pr
エピローグ
20XX年8月某日 夜
松浦は愛犬と海岸をいつもの様に散歩していた。ふと夜空を見上げた。
「わぁぁぁ〜今夜は珍しく星が見えるね」
空を見上げながら愛犬に語りかけていると、信じられないモノが見えた。
「えっ!!今、星と星がくっついた!!!」
間違いない、他の星より一段と輝く2つの星が1つになった。目をゴシゴシしてもう一度問題の星をよーく見た。2つの星は1つになりさらに一段と輝いていた。ふっと微笑して松浦は何だか幸せな気分になった。
「あの2つの星は恋人同士だったのかな?1つになって何だか嬉しそうだね〜」
と愛犬話しかけ、砂浜に座った。もうちょっとあの幸せそうな星を見ていたいと思ったから。