あっという間の日々だった。
中澤さんが卒業を迎えて、矢口さんでも圭ちゃんでもなく
飯田さんが新リーダーとして始まるモーニング娘。がはじまるまでの日々は。
新曲のメインが梨華ちゃんにきまり、一瞬娘。内にも不穏な空気は流れたものの、
おおむね、娘。内は忙しさにまぎれて大きな争いも、けんかもなくすぎていった。
表面上は
まぁ、正直梨華ちゃんがメインてことは本当に歌じゃなくて
人気重視に活動することになったことがはっきりしただけで。
なんだかなーと思うことはいっぱいあったけど、
本当に毎日忙しすぎて、あんまり考えられなかった。
もしかしたら考えないようにしてたのかもしれない。
中澤さんがいなくなっただけなのに、ものすごく楽屋が煩くなったのはいうまでもない。
中澤さんはヘンな迫力があったし、関西弁だし、
加護ちゃん辻ちゃんのコンビもあの人には逆らえなかったし。
飯田さんが怒ったくらいじゃ加護ちゃんにクチでまけてしまってる。
怖いお目付け役がいなくなったことで、楽しくてしょうがないみたいだし。
よくスタッフに怒られてる飯田さんをみると心が痛む。
そしてスタッフは違えど怒る内容はおんなじだし。
「リーダーなんだからしっかりしてよ!」
前にプッチの仕事のときに圭ちゃんになんで圭ちゃんが注意しないか聞いたことがある。
だって同考えても圭ちゃんの方が怒るの向いてるし、迫力あるし。
だいたい圭ちゃんだって一応サブリーダーだし、最年長だし。
すると圭ちゃんは
「カオリが怒ることに意味があるの。カオリが強くなんなきゃ意味がないの。
アタシが怒ったら意味はないの、まぁどうしようもないときは怒るけどさ。」
珍しく、まじめな顔をしてそんなことをゆっていた。
「なんとなくわくるけどさ・・・」
そういうとそばにいたごっちんが不思議な顔をして
「よっすぃーが人のこときにするなんて珍しいね、カオリのこと気になるの?」
といつもの顔できいてきた。
深い意味なんてないことくらいわかるけど、一瞬ドキっとしてしまう。
「いや、最近よく注意されてるの見るから、悪いなーなーんて。
中澤さんの場合スタッフにも注意されたりしてるのあんまりみなかったから・・・」
そう、よく怒られてる。これはみんな知ってる事実。
「そうだね、うちらもしっかりしなきゃね。」
ごっちんが珍しく神妙な顔をしている。
丁度、スタッフがあたしらを呼びにきた。いすから立ち上がって行こうとすると
「カオリにはカオリのやり方があるのよ。裕ちゃんの恐怖政治とちがって
あんたたちにもしっかりしてほしかったから、裕ちゃんはカオリをリーダーに選んだの。」
圭ちゃんがもしかしたら独り言かもしれないくらいの音量でつぶやいた。
ごっちんには聞こえなかったみたいだし、どうしようかと思っていると、
圭ちゃんがあたしを追い越して何事もなかったようにスタジオに入っていった。
どういう意味だったんだろう・・・
あたしはそのあとの撮影にあまり集中できずにごっちんにまで心配された。
あたしはそのあとの撮影にあまり集中できずにごっちんにまで心配された。
仕事が終わった後にプロ失格だよ、と軽く圭ちゃんに怒られた。
そうだね、あたしらがしっかりしなかったら飯田さんやみんなに迷惑かかるんだし。
しっかりしなきゃ。
そしてその日のメールに
「吉澤ひとみ、やるときゃやります!」
て打ったら飯田さんは
「何があったの!!!」
とすごい勢いで返信してきた。
もしかしたらあたしはまた彼女の心労を増やしてしまったのかもしれない・・・