にゃあぉん、にゃあぉん。
真希の頭の中で毎日聞いているあの鳴き声がこだまする。
(もうすぐ、もうすぐだ…。)
真希は自分に言い聞かせながら定期を改札へ通した。
早足であの場所に向かう、途中何人かとぶつかって、
それでも早足で足を進めた。
だんだんと街灯が少なくなって、だんだんと人通りも少なくなって
それでも真希は足を進めた。
(あと少し…)
真希は少し走ったあと、足を止めた。
そこは明かりがまばらについている古いアパートだった。
「ごめんね、今日もごめんね…。」
ぴちゃぴちゃぴちゃ。
「んん…あぁ…あぁ…はぁん…。んふふ…。」
鋭利なナイフがそれを襲い、真希はナイフについた血を舌でなぞった。
真希は震えていた。
ガタガタと親に叱られている幼い子供のように、
震えながらシャベルで土をほっていた。また、夕べのように。
それを埋めまた上から土をかぶせ、公園を出た。
「どうしてかな…最近すぐ血がきれちゃうよ、なんでかな…」
真希はまだ震えていた。
初めての時の事を思い出していた。
*************
―十数年前―
「真希ちゃん、好きな食べものなにぃ??」
「…血。」
「え!それ食べ物じゃないよー、真希ちゃんヘンなの!」
「…え、なんでー。」
「なんでってなんでもだよー。真希ちゃんへんなの!」
真希は血の味が好きだった。
切れたり擦ったりしてできた傷から出た血を、
舐めるのが好きだった。
「そーんなもん舐めときゃ治るわよ。」
思えばいい加減な真希の母の言葉が始まりだった。
「あぁー、うあぁぁーん!!」
「あらあら!!大変…こっち来てね〜!」
クラスの男の子のひざが擦り剥けた。
血が大量にでていた。
あんなに血が出ているのを真希ははじめてみた。
「いたそぉだね、真希ちゃん。」
「…。」
「真希ちゃん?」
真希は何も考えずに男の子のひざに走っていった。
そして血を舐めた。
「ちょっ!!やめなさい真希ちゃん!駄目よ!」
「いたいよーいたいよー、うわぁぁぁ!」
次の日から真希は仲間はずれにされはじめた。
それが自分がおかしいのにきづいた瞬間だった。
*************
真希は自分のポケットで震えている携帯に気がついた。
画面の光が暗闇にはまぶしかった。
「ひとみ…。」
<今日帰りなんか変じゃなかった?なんかあった?>
絵文字も何もないメールだったけど真希は嬉しかった。
自分でもわかっていた、こんな事いつまでも続けるわけにはいかない。
このまま時が進んで卒業して結婚して子供を産んで
幸せな家庭を築いて、それなのに毎晩家族に隠れて
こんなことをしに行くの?
真希は身震いをした。
<何でもないって☆心配かけてごめんねっ!また明日〜(^^)/>
メールを送った後すっかり暗くなってしまった夜道を
駆け足で帰った。
毎晩毎晩月が高くあがる頃になると
あの血の匂いが鼻の奥の方でする。
真希は窓を全開に開けた。
冷たい風が頬を撫でる。
まばらな明かりに真希は目を細めた。
私はなんなんだろう。
私はどうして血を欲するんだろう。
小さい頃に見た絵本の吸血鬼なんだろうか。
目を閉じてあの匂いを忘れる事だけを考えた。
ますます濃くなってゆくその匂いに
真希は溜め息をつくしかなかった。
ありがとう、怖く見せられ嬉しいです。
もっともっとこわくなっていけれたら…。
更新乙です
まだまだ裏がありそうですね
続きも期待してます
「真希!おはよ〜!」
「あぁ、ひとみ。」
「…寝なよって言ったじゃん、バカ。くま出来てるよ。」
「寝れなくて。」
真希はひとみの目をのぞきこんで、へへっと笑った。
今まで怒っていたような気がするのに何故か自分もつられて笑っている。
エスパーなのは真希の方なんじゃん?
ひとみはそう思った。
「どうしたのぉ?」
「ううん、何にも!チャイムなるぞ。」
「うぇ〜い。」
2人はチャイムの音と一緒に校門をくぐった。
「せーふぅ。」
「や、アウトやろ。」
先生というものはいつになってもやっかいなもんだ、真希は思う。
思えばいつの時も先生とゆうものとうまくやれた事は一度もなかった。
あれ以来、幼稚園の先生は真希の行動に目を光らせ、くどくどと注意をした。
真希はこれ以上変人扱いされるのはまっぴらだったし、
あれ以来、同じような事件を起こしたわけでもないのに
真希を一番侮蔑の目で見ていたのは他でもない、先生だった。
トラウマなのか、真希はそれ以来、教師というものとある程度の距離をおいていた。
けれど、この教師は何かが違った。
高校に入学したときからやけに自分につっかかってくる。
最初は無視を決め込んでいた真希も、教師の話しやすい雰囲気に少しずつ会話をするようになっていた。
「先生、許してくださいよ、一生懸命走ってきたんですよ!」
「…おぉなんや、よっすぃもかいな。しゃあないな。出席。っと。」
「なかざわぁ…。」
「なんか文句ある?」
「いやいや、ありません、真希行くよ!」
「むぅぅぅ。」
赤く影が落ちた時、暗く真希の顔が窓に映っていた。
クラスの学習机に手をかけて立っている。
真希は久しぶりにひとみと帰る約束をしていたが、休みだったはずの部活のミーティングが
急に入り教室で待っていたのだった。
「だいじょーぶきっとだいじょぉぶ♪ふふんふん。…?おん?後藤??」
薄暗い廊下から担任の姿が窓にうつった。
「…なかざぁ。」
「何してんねん。こんな遅く。」
「…ひとみ待ってる。」
「あぁ、ミーティングかぁ。ほな。気ぃつけて帰り。」
「…はぁい。」
するすると入り込む。感じの良い声が教室で反響する。
ココロが開く。こんなに私は簡単だったか。
真希は返事をした後、椅子にかけた。
「…後藤?どうした?」
「まっ、まだいたの?!」
「おぉ、焦ったの初めて見たわ。珍しいもんみたな。」
「うるさい、早く行け。」
「おーおー。反抗期やね、ゆうちゃんにもあったわ〜。」
「…………。」
「早く行ってよ!!!!」
「…何かなぁ、後藤はそうやって何かあるの見え見えなのに、言ってくれへんし。
ゆうちゃん悲しいわ。」
「なんなの?ホント、うざい。」
「わかったわ。なんも聞かへん。そやけどゆうちゃんいつでもきいたるから。ほな気ぃつけて帰りや。ばいばーい。」
なんなの?なんなのあいつ。
なんでこんなことでおこってんの?わたし。
バンッ!
「いったぁ。」
机の上の手を思い切り叩きつけた。
「真希!?」
「あら、ひとみ。」
「何やってんの!?」
「いや、なんもだよぉ。」
「…ヘンな奴。待たせてゴメン、帰ろ!」
「ん。」
ここまで。
今でもよしごまは成立しているのでしょうか?
「久しぶりだね。」
「だねぇ。」
ひとみはカバンからはさみを取り出し、とったばかりのプリクラを切り分ける。
「美味しい?」
「うん。うまい。」
真希はもぐもぐとポテトを口をつめこみ、プリクラを受け取る。
カラオケ→プリクラ→ファーストフードの店でお喋り。
二人のお決まりのコースだ。
「ねぇ、何か…悩みとかあんの?」
ひとみがポテトにケチャップをつけ、言った。
−ドクン−
一瞬口に入っていたものが全部出そうになった。
動揺した。
全部話してしまいたい。
…いや私はそんなに弱くないハズ。
いつものわたし、いつもの。
「いやぁ、寝不足なぐらいだよぉ。」
「…そっか。まぁそんな気もしてたんだけどさ。
なんでもなくてよかった〜。ふふ。」
笑顔のひとみを見て思った。
この人には言えない。この人にあんな顔されたくないの。
あの、恐ろしい物を見るかの様な目で、わたしを見ないで?
真希はアイスティーを手に取り、一気に飲み干した。
その日は遅くまで話した。
ひとみの部活の事、真希の家族の事、バスケ部のカッコいいあの人の事。
次の日が休みなので遅くなってもかまわなかった。
そして真希が地元の駅に着いたときにはもう10時をまわっていた。
そういえば放任な母がいっていた。
「夜に制服は危ないよ〜。」
それでもあまり気にせずに夜道を照らすライトの下を進んだ。
駅に着く頃、真希の心はもうソワソワと落ち着かなかった。
またあの場所に行くのだ。
気持ちが焦る。ハヤク。
真希は少し小走りであのアパートへ向かった。
かばんからナイフを取り出す。
月に反射してキラリとまぶしく光った。
瞬間、ひとみの顔が浮かんだ。
けれどナイフはもう小さな子猫の命を奪っていた。
真希の家から5分程、この古いアパートには
住民が引越しの際に置いて行った猫が自然繁殖していた。
他の住民や、近所の人がエサを与えるため人懐こい猫が
何匹も集まり、真希もよく通ってはエサをあげ、可愛がっていた。
そう、それも中学生の頃までぐらい。
それまでにも、血が美味しいと思うことはあったけれど。
自分が怪我をしたときに、その血の味を楽しむぐらいだった。
その日学校の帰り、弁当の残りを持ってそこへ向かう途中で
のら犬にくわえられた、可愛がっていた子猫を見た。
必死で真希はのら犬を追いかけ子猫をとりかえしたが、
白い小さなからだが真っ赤に染まった子猫は真希の手のひらで息絶えた。
真希は動物の血を初めて間近で見た。
赤黒く、鈍く光っていた。
迷わず真希は舌をつけた。
それから毎日真希はここに通った。
ひたすら血を舐め、飲み干した。
そして今もそれは続いている。
人いねぇな…w
ここにいるぜぇ!!読んでるのでがんがれ。
事を終え、帰り道を急ぐ。
自分以外の足音が後ろから聞こえた気がした。
「ねぇ、待って。君良くここ歩いてるよね?」
「…。」
「ねぇ待ってよ。」
男は後ろから真希の手をつかんだ。
「…放してください。」
「ちょっとこっち来てよ。話そうよ〜。」
男の顔が近づく。
ライトに照らされて顔をはじめて見る。
生理的に受け付けないタイプだ。
「はなしてっ!!」
「うるさい!」
ドスッ!
顔を叩かれ一瞬真希はひるんだ。が、その瞬間緩んだ手を振りほどき、走った。
「おい!待てよ!」
「やめてっ!!」
真希は公園の茂みに追い込まれ、押し倒された。
「なにすんのよっ!!」
「へへへ、毎日見てたんだぁ。何してるか知ってるんだから。」
「…。」
「おかしいね。血が好きなの?」
「君処女なの?」
「僕がたくさん血を出してあげるから。ふふふ。」
誰もいない。
暗闇に男と二人。
首元に荒く息がかかる。
限界だった。
グサッ。
「うっ!?」
男の首元から血が噴き出す。
真希は倒れ掛かる男を跳ね除けてその場に座り込んだ。
「…死んだの?」
血が真希の顔にかかる。
「こんなに…。すごい…。あぁ…。」
それを惜しむように舐めた。
あんなに気持ち悪かったのに。
血は美味しいのね。
「うんん…。あぁ、うふふ。」
血の上に倒れこむと草が肌にあたりチクチクした。
思う存分に血の匂いを吸い込み、ココロから笑った。
『今日どうしたのぉ?』
「あぁ…ちょっと体調悪くて。」
『…そっかぁ…って眠いだけなんじゃないの!?』
「まぁ…それもあるけど。」
真希は次の日、ひとみの電話で目が覚めた。
あれからの事はおぼえていない。
血のついた制服は部屋にちらばっていて、
真希自身はベットの上にちゃんとパジャマに着替え寝ていた。
『今日は部活あるから行けないけどさ。もし明日も体調悪かったら
見舞いに行くし。うん。』
「まぁ、明日は行くよ。バイバイ。」
『うん。じゃあ』
「ふ…。」
何故か涙が溢れた。
ひとみの声をきいてホッとしている自分。
私は…何をしたの?
がんばる。
おいらも頑張るから加護ちゃんにも頑張ってほすぃ。
ごっちん・・・・ 更新乙です
次の日新聞に小さく記事がのっていた。
あのまま朝になり犬の散歩をしている人に発見されたらしい。
家族も友達もいなく手がかりがないため、
謎の多い事件として調べられているらしい。
いつまでも家にいるわけにはいかない。
しょうがないので学校にいくことにした。
「あ、真希、やっぱ眠かっただけかぁ。」
「ひとみ。」
一緒に学校まで向かう。
普段もあまり話すわけでもないが、今日は更に会話がない。
「…ねぇ最近おかしいけど。」
「眠いだけなんだよね。」
「んぁ。まぁね。」
「わかった。今日はさき行くわ。」
「え?」
「何も話してくんないじゃん。もういいよ。」
「…。」
特別仲のいい友達がいない。
親友なんて作らない。
だってめんどくさいじゃん。
いろいろあわせなきゃ行けないし。
「後藤さん?」
だれアンタ。
「私?吉澤ひとみ。よろしく。綺麗だよね。一目ぼれしそう。ふふ。」
レズなの?
「違うよ。男好きだし。」
ヘンなやつ。
「でも後藤さんは綺麗だし。なんか気になる。」
…ふぅん。
「友達になろうよ。」
めんどい。
「なんかそんな感じの事言うと思ったよ。まぁいっか。
気に入っちゃったもん。これからよろしくね。」
…。
春、
高校生1日目。
知らない人から声をかけられた。
そのままよく話すようになった。
キライじゃないから。
教室にはいかずにそのまま屋上へあがる。
私はいつからこんなに他の人にかかわるようになった?
真希はてすりに手をかけ、ナイフをだす。
まだあの血がかたまってこびりついている。
舌をつけると鉄の味が、匂いがする。
「ふふ。」
友達なんていらないよ。
先生も話しかけないで。
私はへんなんだもん。
おかしいからね。
近づかないで。
キーン…コーン…カーン…コーン…
耳から遠く響くチャイムの音。
そして同時に屋上のドアが開く音がした。
けれど真希は振り向かなかった。
静かに、ナイフをポケットにしまった。
「後藤。なにしてんの?授業はじまっとるよ。」
「…別に。もう行くし。」
「吉澤がな、アンタから話きいたってほしいってゆってきてん。」
「まぁ、ごっちんはな、話してくれへんと思うけど…。」
ごっちんてなんだよ。
真希は思う。
「でもな。でも…。」
―グイッー
急に中澤が真希のむなぐらをつかんだ。
もう何も聞こえない。
中澤の声以外。何も。
「アンタはそうやって粋がってればええやん。そりゃアンタの勝手。
けどな、今はもうアンタだけやない。
一緒に悩んでくれる人がおるんを忘れんな。ええか?」
手を離し、中澤は校舎へ戻る。
その場に突き放された真希はよろよろと後を追った。
「せんせー、わたしひところした。」
更新乙です
後藤の独白が始まるのかな
先が楽しみなんで次も待ってます
中澤は一瞬目を見開き目線を下へ落とした。
「わたし、その血を一気にのんだよ。
血をのむのが、気持ちいいの。血を飲むとカンジルノ。
見て、このナイフ。この血。これで男を殺したの。
新聞にものった。小さいけど。
ねぇ、中澤は知ってる?このカイカン。
この血が…わたしをくるわせる、の。」
真希はナイフに舌をつけた。
明らかに動揺している中澤はそれでも教師ぶり、冷静に話そうとした。
「な、なに冗談。あ、あとで…職員室きて。そ、れから話そぅゃ。」
「…じゅ、授業いきや。」
屋上へのドアが閉まり、風が真希の髪を揺らした。
なんだ、普通の反応。
思わず真希はふきだした。
帰りのチャイムが鳴り、生徒がばらばらといなくなる。
最後の1人になったときに真希は席をたった。
「真希」
「…なに?」
「いや…結局何にもいってこなかったね。」
「…。」
「ねぇなんで私にはなんにも言ってくれないの!?」
「聞いてんの!?真希!!!!」
―イライラする、助けて。
「人には言えないことだってあるよ。
ひとみだから言えないってこともあるんだよ。
私は…私にはひとみみたいに、なれない。
なんでもかんでも話せない。
…ひとみは私の何を知ってる?
話を聞いてもわたしの近くにいてくれるの?
ねぇ。わたしがどんな人間なのか知ってるの?」
ひとみは息を飲み込む。
真希がこんなにたくさん話したのを初めて見た。
「もう、わたしに。はなしかけないで、」
イライラ、いらいら、
胃が痛む。吐き気がする。
めまいがする。
あたまがいたい。
たすけて、たすけて。
そうだ、そうだ。こんなときはアレ。だよ。
ね、わたし、血が欲しいよ。
あ、そこ。かえらなきゃ。
私がいていいのは、ぬくぬく出来るひとみのそばじゃなく。
相談にのってくれる、先生のそばじゃなく。
あの、わたしの安らぎをくれる、あの場所。
誰か、わたしを…。
「後藤。」
「な、かざわ。」
「話があんねん、来て。」
「きょぅは、だめみたい。わたし…。」
「ええから!」
強引に腕をひっぱられ、校舎の外に連れられる。
真希は、やっと中澤に腕をほどかれそこは中澤の車の前だった。
「乗って。」
「センセ、わたし」
「はよ!のって。」
仕方なく真希は助手席に乗り、続けて中澤も乗り込んだ。
「し、新聞見たけど、こ、これか?」
中澤はポケットから小さな紙切れをだす。
真希は確かめもせず、うなずいた。
「…ほんまなんやな?」
「そうだよ。」
「…もう、吉澤に近づかんといてや!」
「なんでひとみが。」
「ひっ…馴れ馴れしく呼ばんといて!あんたくるっとる!おかしいわ!
血、なんて…吸血鬼ぃでもなったつもりか?」
中澤は間髪いれずに話し続けた。
「吸血鬼か、きいといんねん!!アンタなんてな、
…ひとみに近づく権利ないんや!!!!」
んぁ。
このひと
なにいってんのぉ〜?
…ふふふ。イキタイ、あのばしょにイキタイ。
更新乙!
先が気になる展開だ〜
乙です。ごっちん…
更新キテター
中澤と吉澤の関係も気になる・・・
「ひとみとうちは付き合っとんねん。
ひとみは、うちが、愛し…なのに…、後藤が、気になる。
気になるゆーて、先生なんとかしてって…。
うちは…、いっしょけんめ…。…なのに…こんなの、こんなの、
ひとみに言えるか?言えるか…?
ひとみ、お前が心配しとったんは吸血鬼なんやぞっ!!!!」
そっかぁ。
ひとみ、中澤とつきあってたのかぁ。
なかよかったけど。
そんなの思いもつかなかったな。
かっこいい先輩のハナシや、街中で見たあのひとや。
フェイクだったんだぁ…。
そっかぁ。
なにこのいらいら。
なにこれぇ。
チガ、ホシイノ。
喋りたくる中澤の声が時折り裏返る。
真希はそれをきいていた、ひたすらきいていた。
けれど頭の中では、口の中では。
真希が一瞬、正気に戻ったのも、その目を見たからだ。
コンコンコンッ。
車の窓ごしにはどちらにも、あの見慣れた姿があった。
「ひとみ!!!」
中澤は慌てて車から降りた。
ぼーっとひとみの姿を真希は凝視した。
「ひとみ、あかんで、」
「…ぅなっ!!!」
「この子くるっとる…。」
「言うなあぁぁぁぁ!!!!!」
「…せんせ!?真希!?」
「この子は…後藤はくるっとる!人の血を…飲んで快感を感じる子なんや!」
きっとそんなに長い時間ではなかっただろうが、
中澤の言葉を理解するまで永遠のような時間が流れた。
「…真希…。」
あの目、
あのひとみ、
澄んでけがれのない、
まっすぐなひとみ。
私は見た。
その目にあの侮蔑の光を宿した瞬間を。
―綺麗だよね…ひとめぼれしそう………
…………なんか気になる…………
トモダチニナロウヨ…−
私ね、そのことだけは知られたくなかったの。
私、あなたとは友達でいたかった。ホントだよ。
「ひとみ、ごめんね、」
刺した。
持っているナイフを何度も突き立てた。
グチャッグチャッと、音を立てて、それでもやめずに。
血しぶきが全身にかかったけれど、それも気にしない。たいしたことじゃない。
真希が中澤をグチャグチャと刺し殺す異様な光景を
ひとみは大きな瞳でまばたきもせず見ていた。
最初は呻き声があがり、逃げ、走り、涙を流した中澤も
もう最後には動きもしない、少し呻き、からだを痙攣させた。
「せっ…あ…真希やめてやめて…」
ひとみはただ何度も呟くだけで動こうとはしない。
目の前の異様な光景にただ呆然としているだけだった。
真希はナイフをおろす手をとめ、ひとみを一瞥した。
「これからだよぉ。」
真希は口をつけた。
どくどくと流れ出す血をゴクゴク飲んだ。
「はあぁぁん…おいし…。」
今までに飲んだ血の中で一番おいしかった。
今までに飲んだ血の中で一番かなしかった。
「ば、ばけ、ものぉ…。」
ひとみが呟いた言葉に一瞬動きを止めた。
そして立ち上がってゆらゆら歩き出しひとみの前にしゃがんだ。
後ろにすぐ車を壁にしてしまったひとみは、そのまま震えて、動かない。
真希はナイフを振り上げ、いった。
「ひとみ、あたしの、トモダチ。最初で最後の…」
「あっ…あんたなんかぁ、トモダチじゃないよぉぉぉ!!!!」
「バイバイ」
真希は口をつけた。
どくどくと流れ出す血をゴクゴク飲んだ。
「はあぁぁん…おいし…。」
今までに飲んだ血の中で一番おいしかった。
今までに飲んだ血の中で一番かなしかった。
「ば、ばけ、ものぉ…。」
ひとみが呟いた言葉に一瞬動きを止めた。
そして立ち上がってゆらゆら歩き出しひとみの前にしゃがんだ。
後ろにすぐ車を壁にしてしまったひとみは、そのまま震えて、動かない。
真希はナイフを振り上げ、いった。
「ひとみ、あたしの、トモダチ。最初で最後の…」
「あっ…あんたなんかぁ、トモダチじゃないよぉぉぉ!!!!」
「バイバイ」
いつだって、1人だったの。
1人で生きてきた。
けど、本当は1人なんて好きじゃなかった。
悲しかった。
けど、平気な顔をして生きてきた。
人を殺す前に、何かを話せたら何か変わっていた?
あたしの話聞いてくれたかな…。
あぁ、今度生まれたら、今度こそひとみとトモダチになりたい。
今度はあたしから話しかけよう。
そしてトモダチになろう。
なんてあたしの勝手かなぁ。
けど、何も知らなかったひとみは、あたしのことトモダチだって
思ってくれてたって、思ってもいいのかな。
思おうかな。
ありがとう、本当に、あたしあなたの事は好きだったんだぁ。
真希の血がひとみにふりかかる。
ひとみは血の雨の中、涙を流し、微笑んでいた。
END
これまで読んでくれた方ありがとうございました。
感想少なかったけど、ホント嬉しかったです。
励みになりました。ありがとう
脱稿乙です
おもしろかったですよ
ハッピーエンドに期待してたけど・・・・こういう終わりもアリだな、なんて思いました
楽しませてもらってありがとうです