【1094】迷うなぁ【0910】

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158ミスト:03/09/01 23:44 ID:yuQan1NB

つんくという詩人が作った詩の一節にこういうものがある。

  午前の授業は長いんです

学生生活のあらゆることが、この短い一節にこめられているような気がする。
学生生活なんて単調で退屈なもんだ。

なのに何で大人は、学生生活というものを青春という陳腐な言葉を使ってまで賛美するのか。
それは、この学生生活の大部分を占めるこの単調と退屈を忘れてしまっているからじゃないだろうか。

わずかに起こる事件や出来事をだけが記憶の中に残り、振り返ったときに
それがさも毎日起こっていたかのように思い出されるからじゃないだろうか。

159ミスト:03/09/01 23:47 ID:yuQan1NB

「こら絵里、なに難しい顔してんの」

友人の声に絵里の思想は中断させられた。4時間目の授業が終了し、給食の時間に
なっていた。友人は絵里の顔をのぞきこんだ。

「なんか最近の絵里、変だよ。授業中は寝るし、休み時間はなんか考えてるし、
 悩んでることがあるなら相談に乗るよ」

「あ・・・ありがとう。でも大丈夫だよ」

絵里は弱々しく笑った。
確かにここ最近の自分が、変なのはうすうす気づいていた。何か物事をさめた視線で
見ているというか、斜めから眺めているというか・・・・・・

160ミスト:03/09/01 23:50 ID:yuQan1NB

「また難しい顔してるよ」

友人はけたけた笑った。箸が転がっただけでも可笑しい年頃の女の子らしい無邪気な笑いだ。
絵里はうらやましいと思った。こんな笑いを最近してない、というかもう自分には
もう無邪気に笑うことはできないんじゃないかと思っていた。

161ミスト:03/09/01 23:54 ID:yuQan1NB

給食の準備が始まり、さっきまで意気消沈していた教室がにぎやかになってきた。
絵里はそんな教室を抜け出して外へ出た。
なにかこの学校という空間から飛び出したいと思った。

( 今、ここから飛び出したら何か変わるのかな )

絵里は吸い込まれるように校門に近づいた。近づけば近づくほど背後が気になった。
ふり返れば自分のことを信頼してくれている人がじっと自分を見ているように思われた。

まじめで上品なお嬢様・・・・・・これが他人が信じている亀井絵里だ。
これを裏切るとどうなるんだろう。

162ミスト:03/09/01 23:56 ID:yuQan1NB

絵里は1度ふり返った。後ろには誰もいなかった。

( 今がチャンスだ )

絵里は走った。校門を越え、住宅街に紛れこんだ。ふいに楽しい気分になってきた。
何度もふり返り、学校が小さく見えるたびに絵里はうれしさで笑いそうになった。

ただ学校が見えなくなると、押しよせてきた波が一気に引いていくように
絵里の気持ちの高揚も一気にさめていった。

「どうしようこれから・・・」

制服姿の自分が行ける場所なんであるのだろうか、自宅はだめだし・・・
街に出れば警察官に補導されるような気がする。

163ミスト:03/09/02 00:00 ID:WsNbwtm7

何かに導かれるように絵里は思い出の塾にやって来た。絵里が小5まで通っていたが
先生 兼 経営者の女性が亡くなってしまったため、潰れてしまった塾だ。
木造平屋建ての塾は当時の姿を保ったままそこにあった。

「へ〜、てっきり取り壊されてると思ったら、そのまま残ってるんだね」

絵里は少し明るい気分になってきた。
さすがに古びた感じは隠せなかったが、壁や床はいかにも清潔だった。
勉強するための台や黒板もあった。

「あそこで勉強してたんだよなあ」

なつかしい気持ちがこみ上げてきた。

そのとき、塾に一台の自転車が勢いよくやって来た。男の人が乗ってる。
絵里は一瞬のうちに現実に引き戻された。自分が学校をさぼって
ここに来ているということを・・・

逃げたい衝動にかられたが体が動かなかった。

164ミスト:03/09/02 00:16 ID:WsNbwtm7
>>152-153-155
レスありがとうございます。

ごらんの通り、今回は笑いの要素は、極少です。
なんていうか、もう少し深い小説を書きたいと思ったんで。
前回の小説が好きな方には退屈な小説だと思いますが許してください。
続きは明日、更新します。
165名無し募集中。。。:03/09/02 00:47 ID:S9Ao4R/f
ミストさん更新乙です。
いやいや、いい感じですよ。
続き楽しみです。
166t:03/09/02 04:10 ID:VkkN8JAE
t
167sage:03/09/03 00:48 ID:7RJWnFYI
t
168ミスト:03/09/03 02:13 ID:3CpPNj8f

やって来た男は最初、高校生に見えたが、こんな時間帯に私服でいるところを見ると、
大学生か、あるいはフリーターの方じゃないかと思われた。
絵里を見ると青年は、少し困惑した表情をした。

「あれ?え〜っと・・・・・・」

何で中学生がいるのか不思議がりながらも、その理由を聞いていいものか悩んでるようだ。

絵里は学校名や名前を聞かれるのが嫌だったので、今すぐここを去りたかったのだが、
青年に不審に思われるのも嫌なので、愛想よく会釈をした。

「あ・・・入塾される方ですか」
「・・・え?、違いますけど・・・」

と、断ったあとに青年をばっと見た。

「あの・・・塾をやってるんですか」
「ええ、最近、僕が始めたんですけど・・・・・・といっても生徒は一人だけの赤字塾ですけど」

悲惨な経営状態なのだが、彼の口調は明るく、この状況を楽しんでいるかのようでもあった。

169ミスト:03/09/03 02:17 ID:3CpPNj8f

「もしかして以前、ここの塾に通ってたことある方ですか?」

青年は、絵里に聞いた。

「はい・・・小学2年から5年まで通ってました」

「そうですか。僕も元ここの塾生でね、小、中とこの塾に通ってたんだ。
 もっとも僕の場合はもっぱら遊びにきているようなもんで真剣に勉強したのは、
 中3の1年間だけという、まじめな生徒だったけどね」

「私もそんな感じでした」

絵里は笑った。なにかこの青年は話しやすさがあった。
絵里は異性と話すのが苦手だった、というより嫌いだった。

彼らと話してると、ある瞬間からゴリゴリと強引に距離を縮めようとしてくるのだ。
そういう空気を感じとると、絵里の感情は警戒し、亀のように殻に閉じこもってしまう。
この青年は絵里に対して無関心というか、女として見てないふしが感じられた。
そのため変に緊張せずに自然に話せた。

170ミスト:03/09/03 02:21 ID:3CpPNj8f

青年は近くに置いておいた脚立を持ってきて、壁にかけると塾の屋根の上に登っていった。
絵里も脚立で屋根に上がろうとしたが、ずうずうしく思われそうなのでやめた。

何かしら声をかけてくれれば、上がっていこうと思ったが、一向にその気配はない。
しょうがないのでしばらく眺めていたが、我慢できずに勝手に登っていくことにした。

屋根の上は、すっかり色のあせた瓦がぎっしり敷かれていて、さわるとぐらぐらし、
何かの拍子に一気にはがれ落ちるんじゃないかと思われた。

171ミスト:03/09/03 02:24 ID:3CpPNj8f

いつの間にかスカートには汚れがついていて、たたいてもたたいても落ちなかった。
そんな絵里を見て、青年は「中学生が来るには早いですよ」と笑った。

青年は落とし物を探すかのようにうろうろして、ふいに「あった、あった」と叫んだ。
見るとひびのはいった瓦がそこにあった。

「ここから雨が入ったのか・・・・昨日ひどく雨漏りしましてね。
 僕も生徒も雨漏りなんて経験、初めてだったんで、感動したんですけど、
 いつまでもほっとくわけにもいきませんしね」

青年は立ちあがると大きく伸びをし、絵里の方に向きなおった。

「これから補修用具を買いに行くんですけど、来ます?」
「今からですか・・・・・・え〜と・・・・・」

と悩んだふりをしてみたが答えは決まっていた。

「行きます」

172ミスト:03/09/03 02:28 ID:3CpPNj8f

2人を乗せた自転車は走りはじめた。2人乗りが初めての絵里は、不安定さと
スカートがめくれそうなのとで、とても快適とはいえなかったが、楽しいと思った。
ただ、自転車がずいぶんと見覚えのある道を走りはじめたのが気になった。

( まさか中学校に行かないよね )

不安な気持ちにかられて、青年の背中を見つめた。
自転車は中学校の5メートル手前で止まったり、絵里の悪い予感は的中した。

「さ、もう学校に行きなさい。今なら5時間目に間に合いますよ」

青年は明るい口調で言った。だがその明るさが絵里には腹立たしく思えた。
無言で自転車から降りると、すたすたと学校の方に歩きはじめ、一度もふり返らなかった。

女心と秋の空とはよく言ったもんで、絵里はこの青年が大嫌いになっていた。

173ミスト:03/09/03 02:37 ID:3CpPNj8f
>>165
レス毎回ありがとうございます。
はげみになります。

間に合わなかった〜。日付的には約束を守った形ですが・・・・
しかし、小説書いてると恐ろしいほど時間が過ぎるのが早いなあ。
174名無し募集中。。。:03/09/03 05:06 ID:o6uuendM
更新乙です。
この作品の絵里ちゃんは現実の亀井絵里ちゃんと
非常によく似ているのではないか
そんな気がしてます。
175名無し募集中。。。:03/09/09 19:27 ID:g4S377FB
176ミスト:03/09/10 23:34 ID:Lkx8kI54

近所迷惑この上ない大音響で音楽がなりひびく。ただ体育祭である今日だけは許される。
保護者の人だろうと思われる人たちが、盛んにカメラを片手に、我が子の活躍をやきつけよ
うと必死になっている。若干名、違う目的でカメラを撮る者もいるが・・・・

今日最初の競技をおえた絵里は、自分の座席へと向かっていた。
赤・白・黄色・紫の色に分かれて対抗する体育祭において、それぞれの色をモチーフとし
た巨大な絵のパネルは、体育祭に活気と華を添えてくれる。

そのパネルの裏では、日よけがてらに生徒や一般の人たちが集まっている。
と言っても、大部分の生徒は、まじめに席につき、炎天下のなか、競技を応援している。

と、気になる、というか、鼻につく人物が絵里の目に飛び込んできた。

177ミスト:03/09/10 23:37 ID:Lkx8kI54

数日前に出会った塾の先生をしているとかいう青年が、パネルの裏で休んでいたのだ。
絵里はにらむように青年を見た。こっちに気づいたら、無視してやろうと考えていたが、いざ視線がぶつかると、いつものくせで微笑してしまった。

( 何やってるんだ、わたしは。ああ〜、絶対誤解されたよぉ〜。言っとくけど、

わたしは、あなたなんかに、これっぽっちも好意を抱いてないんだからね )
絵里は心のなかで叫びまくった。

「暑いですね」

青年はのんびりとした口調で言ってきた。

178ミスト:03/09/10 23:42 ID:Lkx8kI54

「なんでここにいるんです?」

自分でもいやだなと思う、冷たい口調で聞いた。

「応援にきたんですよ」

「・・・・・・応援?」

絵里は5秒半ほど、きょとんとして我に返った。

「わたしの応援にきたんですか?」

絵里は不思議そうに聞いた。なんで1度しか面識のない自分のために応援なんてしにきたのか・・・
分からない。いやもしかして、恋、恋だろうか。この青年は自分に恋をしてるんじゃ・・・・・
きっとあの日、わたしと会ったあの日に一目惚れしちゃったんだあ。
自分の容姿に、密かに自信をもっていた絵里はそう考えた。

179ミスト:03/09/10 23:46 ID:Lkx8kI54

「・・・・・・なに、ぶつぶつ言ってるんですか」

青年は心配そうに聞いてきたが、その声は絵里の耳には届かなかった。
訳が分からずポカーンとしていると、ふいに青年の背中に何かが体当たりしてきた。
ふり返って青年は笑顔になった。

「おお、れいなか」

つやのある黒髪に、活気のある瞳、美少女というより悪童という印象の強い女の子がそこにいた。

「なに先生、ナンパするためにここに来たの」

れいなは、いたずらぽく言った。青年にとっての唯一の生徒さんである。

「違いますよ。約束通りれいなの応援にきましたよ」

「そっか」

れいなはそっけなく言うと、うれしそうに笑った。

180ミスト:03/09/10 23:50 ID:Lkx8kI54

「障害物リレー1番だったら、アイスクリームね」

「いいですよ」

青年は少しふところの深いところを見せた。

「その人、だれ?」

れいなは青年に聞いた。

「ああ・・・幼なじみの女の子ですよ」

「違います!幼なじみなんかじゃありません」

絵里は全力で否定した。

「確かに昔、同じ塾に通ってたみたいですけど、話したこともないですし・・・」

と、言いながら絵里はふいに恥ずかしくなってきた。こんなにも感情むき出しになって
いる自分が、周りにどう見られているか気になりはじめたのだ。

181ミスト:03/09/10 23:53 ID:Lkx8kI54

「あのさぁ、先生は今日どうするの食事は?」

「近くの吉牛でも行こうと思ってるんですが・・・」

「それなら、うちに来なよ。お母さんが先生の分まで作ってきたからさあ」

「本当ですか!いや〜持つべきものは生徒ですね。5日連続、吉牛という記録更新は
 避けられましたよ」

青年のうれしそうな様子に絵里は、なぜか苛立っていた。ただ、その苛立ちは青年というより
れいなに対して向けられているようだった。

( なんで、れいなちゃんに・・・・・・ )

自分のこの負の感情におどろきつつ、それを隠すように絵里は、笑顔を作った。

182ミスト:03/09/10 23:56 ID:Lkx8kI54

青年のなけなし金が、アイスクリームへと変わり、れいなの胃の中に消えた頃、
絵里はクラスメートの木下に呼び出された。

183ミスト:03/09/11 00:04 ID:wIk+9SUV
>>174
そう言ってもらえて嬉しいんです。
今日はここまでですが、次回は近いうちに。
184名無し募集中。。。:03/09/11 04:27 ID:8VLaqP1d
作者さん更新乙です。
れいなちゃん、来ましたねぇ!
今度は如何なる展開に・・・。
185名無し募集中。。。:03/09/12 23:05 ID:+FaZ4SkB
いいっすねー
6期が小説に出てくると新鮮で面白いです
がんばってください!
186ミスト:03/09/17 01:37 ID:FfJ4oYBo

グランドの熱気や喧騒が、どこか他人事のように思えてくる静かな場所に絵里はいた。
絵里を呼び出した木下という男は、楽しそうにハチマキをくるくる回した。
この夏までバスケ部に所属していて、運動神経、ルックスとも申し分ない男だ。
もちろん、リレーの走者にも選ばれていて、その足の速さは学校内一とも言われている。

「いよいよ午後からは、色別対抗リレーがあるけど、がんばろうな、亀井」
「あ・・・うん」
木下と同様、絵里もリレーの走者に選ばれていた。

「なんか元気ねえなあ」
「・・・そんなことないよ」
絵里は小さな声で言った。その声を聴きとろうとするように、木下はグッと絵里に近づいてきた。
絵里は思わず後ずさりした。反射的に、体が動いのだ。
絵里は木下との距離が近すぎることに、一瞬で恐怖した。

( あっ・・・嫌な感じ与えちゃったかな・・・・・・ )

離れたあとで後悔した。木下はその端正な目で、じっと絵里を見てくる。

187ミスト:03/09/17 01:40 ID:FfJ4oYBo

「そうだ」
木下はぐっと体を乗りだすと、絵里の耳元に顔を近づけ、

「もし、俺がリレーで1番取ったら、付き合おうよ」
とささやくように言った。絵里の心臓は、飛び出しそうになった。

「じゃ、この事は内緒だぜ。考えといてくれよ」
木下は、にこっと笑うと、グランドの方に走っていった。その姿を直視することは、
できなかった。うつむいたまま、混乱している頭を、落ち着けることで必死だった。
頬が異常に赤くなり、胸の鼓動は激しくなり、苦しいほどになった。

( どうしよう人に見られてたら・・・・・・ )

絵里はおびえた瞳で周りを見渡すと、逃げるようにその場から立ち去った。

188ミスト:03/09/17 01:43 ID:FfJ4oYBo

そんな様子をしっかりと見ていた2人の人物がいた。

「なかなか、いいものを見させてもらいました」
青年は、建物の影に隠れてる、れいなに言った。
「でしょ」
「・・・なんて言うと思いましたか!まったく、田代さんにでもなった気分でしたよ。
 面白いもんが見られるからって言うから、ついて来てみれば、こういうことですか」

青年はあきれ気味に言った。れいなは、肩をすくめて、いたずらぽく笑った。

189ミスト:03/09/17 01:46 ID:FfJ4oYBo

「先生は、あの2人をどう思う?」
「・・・美男美女の理想的な組み合わせですね」
「それだけ?」
れいなは、のぞき込むように青年の瞳を見た。
ドキッとして後ずさりする。

「それだけですけど・・・」
なにか尋問で受けているかのような、妙な威圧感を覚えた。
「そう」と、れいなはそっけなく言うと、背を向けて歩きはじめ、
ふいに思い出したようにふり返った。

「先生、絵里とどういう関係なの?」

190ミスト:03/09/17 01:50 ID:FfJ4oYBo

「絵里ってだれですか?」

青年にとっては、初めて聞く名前だった。知ってる女性の名前を思い出してみるも、
絵里という名前は出てこなかった。

「さっきの女の子のことだよ。亀井絵里って言うの彼女の名前」
「そうなんですか・・・なんで知ってるんですか?」

「結構、人気あるんだ、あの子。うちのクラスの男子にも狙ってる子、多いよ。
 ただ極度の男性恐怖症で、付き合うはおろか、会話することだって難しいんだから」

れいなは口調に力を込めながら、近づいてきた。そしてビシッと指さす。
「なのに、なんで先生と普通にしゃべってんの」

「女性だと勘違いしてるんじゃないでしょうか・・・僕のこと」
青年の言葉は、1グラムの笑いも生み出さなかった。そこそこ自信はあったのだが・・・

191ミスト:03/09/17 01:55 ID:FfJ4oYBo

「あの〜、邪推するのは止めてください。絵里さんは、昔、同じ塾に通っていたと
 いうだけです。彼女が僕と話すのは、男として見ていないからでしょう。
 男として見てないから、普通に話せる。学生時代から死守してる僕のポジションです」

なぜか青年は誇らしげに言った。そのポジションをかたくなに守り続けているため、
青年は今でも、清らかな身なのだが。

れいなは、うつむいて足下の小石をけった。
「ま、でも先生・・・・・・・いっぱい、良いところあるよ」
静かにつぶやいた。言ったあと、はずかしくなった。

「うれしいこと、言ってくれますね・・・・・・おごりませんよ」
「あっ!ひどい。本心で言ったのに」

せっかくいい雰囲気なのにぶち壊す。ここら辺が童貞でいられる秘訣のようだ。

192ミスト:03/09/17 01:58 ID:FfJ4oYBo
>>184-185
レスありがとうございます。
全然、近いうちじゃなかったですね、すいません。
193名無し募集中。。。:03/09/17 04:36 ID:NPjMN/fP
作者さん更新乙です。
ホントいい雰囲気の作品ですね。
面白いです。続き楽しみ。
194     :03/09/21 22:47 ID:au5JenoJ
195名無し募集中。。。:03/09/22 19:04 ID:iEUua0xb
これおもしろいか?
196名無し募集中。。。:03/09/22 21:51 ID:cojcLKeB
充分おもしろいよ
197ミスト:03/09/23 15:57 ID:7mr9NGgb

今、ネットカフェから更新しようとしてます。
正直、周りに人はいるし、仕切りはないはで、困っています。
さすがに隣に人が座ってまで、ノートを見ながら更新する男気は
ボクにはありません。
変な更新量になるかもしれませんが、許してください。
198ミスト:03/09/23 19:48 ID:7mr9NGgb

何人かの熱中症を出したものの無事ケガもなく、最後の大イベント、
色別対抗リレーを残すのみとなった。
絵里もれいなもリレーの選手に選ばれていた。

さすがにそれぞれの色を代表した走者たちなので、肥満で悩んでいそうな体格の方は、
見当たらない。
あっという間に半周すると、次々とバトンを渡していく。

れいなの出番はすぐに回ってきた。他の走者が足をたたいたり、屈伸運動するなか、
群集のなかに青年を見つけると、手をあげて応える余裕もみせた。

( リレーに集中しなさい )
青年は目で注意した。そんな青年の気持ちが伝わったのか、れいなの表情がひきしまった。
バトンを受け取ると、猛然とダッシュし、前の走者を一気に抜き去り、トップに踊り出た。
そして、そのまま後続をつき放し、次の走者にバトンを渡す。
れいなが属する赤組から大歓声が起こった。

199ミスト:03/09/23 19:50 ID:7mr9NGgb

れいなが仲間から熱い祝福を受けているころ、絵里は白線の上に立って、
何度も太ももを叩いていた。緊張から呼吸もしずらいほどだった。
周りの期待や声援も絵里にとっては、苦しめるだけのものでしかない。

走者はすぐにやって来た。絵里はバトンを落とさないように全集中力を指先にかける。
しかしバトンは絵里の手からすべり落ち、地面を何度かバウンドしながら転がっていった。

( !! )
絵里の頭は、文字通り真っ白になった。最悪な予感が現実となって襲いかかってきたのだ。
絵里は急いでバトンを拾うと走り出した。何か無音の世界を一人で走っているような感覚だった。
自分の息遣いだけが、妙にリアルに聴こえた。

最後のアンカーにバトンを渡したようだが、覚えていなかった。
走り終え、座りこむなり、絵里は声を殺して泣いた。

200ミスト:03/09/23 19:51 ID:7mr9NGgb

全員が自分を非難の視線で見ているような気がした。
ただ、大部分の人間の視線は、アンカーの木下に向けられていた。

木下は絵里からバトンを受け取ると、ものすごいスピードで一気に先頭集団に追いつくと、
そのままの勢いでトップに踊り出たのだった。
グランド内に女生徒たちの黄色い歓声がとどろいた。

201ミスト:03/09/23 19:53 ID:7mr9NGgb

「もー、めっちゃ悔しいですぅー」
今日、3回目のれいなのグチ・・・というか、某銀メダリストの物まねを、なかば強制的に聞かされながら、
青年は次々とかたずけられていくテントを眺めていた。

れいなが属する赤組は、青組の木下が1位を取ってしまったため、れいなの健闘もむなしく、
総合で2位になっていた。

「ま、しょうがないですよ。2位なんてすばらしい成績じゃないですか」

もはや120%の義務感で言っているのを自覚しながら、青年は言った。

「・・・・・・全然だよ。もーっ最悪」
れいなは叫ぶと、ちらっと青年の方を見た。

「先生は絵里のこと応援してたし・・・・・・」
独り言のように言うと、グッと青年をにらんだ。
どうやら体育祭の結果より、そのことが気に入らないようだ。

202ミスト:03/09/23 19:55 ID:7mr9NGgb

「・・・・・・ああ、あのバトンを落とした子ですか?しょうがないですよ、かわいそすぎじゃないですか」

浮気がバレた男の気分に似たものを満喫しながら、青年は答えた。
れいなの応援に来たものの、不幸に見舞われた絵里をついつい応援してしまったのだ。

「・・・・・・泣くほどのことじゃないよ。あれくらいで落ちこんでたら、人生つらいことばっかりになっちゃうよ」
「れいなだったら、どうしてました?」
「わたしなら・・・落としちゃったハハハ・・・って笑ってごまかすかな」

確かにそう言いそうであった。そして、それを言っても許されてしまうのが、この娘のうらやましいところだろう。

「先生、明日は塾あるの?」
「今日のれいなは、大変がんばっていたので、明日もこの調子でがんばりましょうか」
「えーっ、もうヘトヘトなのに・・・」

れいなは弱々しく抗議の声をあげた。さすがの彼女も少々お疲れのようだ。

203ミスト:03/09/23 19:57 ID:7mr9NGgb

「と言うのは冗談ですよ。ただ親御さんから授業料はしっかりいただいているので、休みというわけには・・・
 なので、明日は参考書でも買いに近くの本屋でも行ってみますか」

「先生、品揃えとか考えたら、街の本屋のがいいよ」

急に元気になったれいなを見ながら、青年は少しのあいだ、思案した。

「ま、そうですけど・・・・・・どうも、不純な動機が見え隠れしてるような・・・・・・・
 言っとくけど、参考書を買いに行くだけで、遊びにいくんじゃないですよ」

「分かってるよ。別に観覧車に乗りたいとか、ボーリングやりたいなんて言わないから。
 でも洋服を見たりするくらいならいいよね」

ある意味、それが一番イヤかもしれない。
女の買い物、とくに洋服に関しては、おそろしいほど時間を費やすらしいので。

「・・・・・・それぐらいならいいでしょう」

ただそういう経験も知識もない青年は、容易に認めてしまうのだった。

204ミスト:03/09/23 20:09 ID:7mr9NGgb
なんとか更新できた。もう少し推敲の時間が欲しかったけど。

>>193
そんな大それた事を言われると・・・・うれしいです。

>>195
もう少しお付き合いしていただければ、面白くなるかも(w

205名無し募集中。。。:03/09/23 23:48 ID:V+qkt6Ip
なんか更新に苦労されてるみたいですけど、乙です。
慌てなくても大丈夫ですよw
ゆったりと楽しませてもらいます。
206名無し募集中。。。:03/09/30 17:54 ID:ujLW7b41
n日保全開始
207名無し募集中。。。
保全