【1094】迷うなぁ【0910】

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98ミスト

山崎渉とその子分たちは、2時間目の授業の後、学校北側の森林の草地に
ねっころがっていた。彼らは、禁じられたタバコを吸うためにここに来ていた。

「大自然で吸うタバコは、うめえなあ。Hの後のタバコもうまいらしいんすけど
 本当すかねえ、山崎さん」
「あん?当たり前だろう。うますぎて、三箱はいくぜ」
と言ったものの、山崎さんも童貞だったりする。

山崎さんは口から煙りを吐くと、タバコを草むらに放り投げた。
「こらっ、環境汚染するな」
その声に草むらに寝そべっていた山崎たちは、身を起こした。

「あんたたちがコソコソしてるから、直接、決着をつけに来たわよ」
山崎たちの前には、胸をそらせて不敵に笑っている亜依がいた。胸をそらせているためか
亜依の乳は1・3倍大きく見える。山崎含め、童貞集団のモノも大きくなる。

「この不良娘が!決着だあ?てめーら、やっちまえ!」
山崎の声を合図に男たちが亜依に飛びかかってきた。

99ミスト:03/07/17 01:10 ID:Tn5BfdOA

静かな森林にドカ、ベチという音が一瞬響いたものの再び、森林はその静けさを取り戻した。
「・・・・・・あのさあ山崎くん」
「はい、なんで・・・ございましょうか・・・亜依様」
鼻血を流しながら山崎が恐る恐る聞いてくる。180度の態度の豹変ぶりである。

「今までさんざんノートや鞄、机をボロボロにされてきたから、これくらいじゃ天使のような
 優しい心の持ち主の私でも気が済まないんだよね〜」
山崎の背中に腰をおろし、指の間接をポキポキ鳴らす。
「ちょ、ちょっと待ってください亜依様!もう、あのような嫌がらせは、絶対にいたし
 ませんので、どうか許してください」
地面につくほど頭をさげ謝る山崎渉。

やたら腰の低い山崎にうんざりしながらも亜依は明るい口調で言った。
「今後は、タバコと私との関わりは、控えることね。寿命、縮むよ」

100ミスト:03/07/17 01:14 ID:Tn5BfdOA

小柄な少女が校舎から出てくるのを亜依は、怒りというより悲しげな気持ちで眺めてた。
「どうしたの、亜依?」
少女が、不思議そうに亜依の顔をのぞきこんできた。
少女の右手は、鞄を持っていてる。仕事のために早退するようだ。

「・・・山崎たちをボコボコにしちゃった」
亜依が言うと、少女の表情がぴくっと動くのが分かった。
「れいな、そんなに仲間のことが心配?」
れいなは、亜依から視線を外した。しばらく沈黙していたが、やがて再び口を開いた時は、
ひどく静かな口調になっていた。

「・・・・・・山崎がしゃべったの?」

「いや、ただ・・・山崎に狙われてるのにれいなから危機感を感じなかったのと、保健室で
 山崎を普通に殴ったところなんかを見ると、山崎が自分に危害を加えないことが分かって
 いたんじゃないかと思ったんだ。つまり山崎と仲間なんじゃないないだろうかってね」

亜依は、沈黙しているれいなを見ながら、ゆっくりと聞いた。
「ねえ、れいな、私なんか恨まれることでもしたか」

101ミスト:03/07/17 01:18 ID:Tn5BfdOA

れいなと山崎が仲間であると気づいたとき、亜依はある程度、覚悟した。
自分が知らないうちに人を傷つけていることは、あることだ。そして恨まれることも。
ただ、れいなの口から出た言葉は、自分の予想とはずいぶん違うものだった。

「私は・・・・・・亜依と梨華さんと友達になりたかったの」
「はぁい?私らと友達になりたかったあ?」
亜依は、少しこけそうになった。

「山崎に狙われてることにしたら、私のこと気にしてくれると思ったの」

「あの・・・何でそんなことするの」
「だって、友達になるのって、きっかけがいるじゃん。亜依も梨華さんも、学年が違うし・・・」

「あのさあ、友達って、あんたいっぱいいるんでしょう」
「全然いないよ。みんな、芸能人だからって色メガネで見るんだもん。私は、自由奔放な亜依と
 すっごい綺麗な梨華さんに憧れてたの。2人と友達になれたら、ああいう人間に
 なれるんじゃないかと思ったの」

102ミスト:03/07/17 01:23 ID:Tn5BfdOA

以前、れいながクラスで人気者って言ってたけど、あれは見栄というやつだったようだ。
しかし、憧れていたと言われても困ってしまう。自分がそんな素晴らしい人間とは思えない。

二人の間に微妙な沈黙が訪れたとき、学校の中に白い乗用車が入ってきた。
車は、れいなの前に止まり、ドアがゆっくり開かれた。運転手が早く乗るように合図する。

「これから、ライブのリハーサルがあるんだ・・・もう行くね」
れいなは、亜依に軽くおじぎをすると、車に乗り込みはじめた。

れいなの背中が少し寂しそうだった。友達になって欲しかったからとはいえ、
亜依たちを騙していたには違いない。
もう以前のように接してくれることはないだろう、そしてまた、ひとりぼっちだ。
れいなが力無く笑った。そのとき、亜依の声が響いた。

「れいなー、絶対、モーニング娘で1番になってね、約束だからね」

「あっ・・・うん、あの・・・」
れいなは、何かを言おうとしたが言葉にならなかった。車は走り始めた。

103ミスト:03/07/17 01:26 ID:Tn5BfdOA

連休明けの朝、亜依の家は、食欲をそそる匂いがたちこめていた。
「はい、出来わよ〜、オムライス」
母親の元気な声が響く。いつもなら、我先と飛びついてくるはずの娘がTVの画面から
目を離そうとしない。母親は、不思議そうに娘を眺めた。

我が子が食べ物よりも興味を示すものがあることに驚いた。
娘が興味を示しているのは「めざましテレビ」というニュース番組のようだ。

ガチャピンのような司会者と体重が標準以上の軽部アナが話している。芸能コーナーを
見ているようだ。画面にアイドルグループのライブ風景が映し出される。
(確か、モーニング娘とかいうアイドルね)

新メンバーが一人一人、自己紹介を始める。

104ミスト:03/07/17 01:29 ID:Tn5BfdOA

「福岡県出身、田中れいなで〜す。この前、友達にれいな、絶対に1番になってね、
 約束だからねって励まされました。モーニング娘で1番になれるようにがんばりま〜す」

自信に満ちた女の子の声を聴きながら、うちの娘は、成績で1番を目指してくれないものかと考えた。
と、それはさておき、母親として料理は、出来たてを食べて欲しいものだ。

「こらっ!亜依、いつまでTV見てるの!早く食べなさい」
母親の一喝で亜依は我に返ったようにオムライスに目をやる。

「あっ、ずる〜い。お姉ちゃんのが大きいじゃん」
「へへ〜ん、早い者勝ちだよ〜」

娘たちのいつもの争いを背中で聴きながら 、母親はクスっと笑った。
「食欲だけは1番ね」



「赤点娘。」 了

105あとがき:03/07/17 01:33 ID:Tn5BfdOA
当初は、3日間隔で更新していこうと思ってたんですが、全然ダメでしたね。
こんなに読者を置き去りにした作者をお許しください。

この小説は、そう、あの「モーニング娘で1番をなるようにがんばります」の爆弾発言に
衝撃を受け、書いてみようと思った小説です。
うちは、地方なので実際に映像を見たのは、一ヶ月以上後でしたが・・・。

また小説を書きたいと思うんですが、今は燃え尽きて灰になっております。
いつか、また小説を書いているのを見かけたら、読んでやってください。
読者さん、本当にありがとうございました。
                    byミスト