61 :
ミスト:
午前中は平穏にすぎた。暑い退屈な一日なりそうだった。
しかし、そんな期待はもろくも崩れ去ることになる。
体育の授業が終わり、教室にもどると、亜依は山崎を敵にまわしたという事実を
再確認させられることになった。
亜依の机はたおされ、中の教科書は散乱し、踏みつけられた跡がある。
かばんには、たくさんの画びょうが突き刺さっている。
「あ〜あ教科書ボロボロだよ。よ〜っし、5時限目は、お昼寝に決定だ」
「・・・・・・あんた変に前向きだね」
62 :
ミスト:03/06/26 20:28 ID:ZNQB12b/
「あっ!?お姉ちゃん」
亜依の後ろには、姉の梨華がいた。そして、その隣には、昨日亜依が助けた田中れいなが立っていた。れいなは、居心地が悪そうに視線をキョロキョロ動かしている。
「さっき、そこの廊下であったの。どうやら、昨日、亜依に助けてもったお礼をしたいらしいのよ」
「えっ!?いいよ別に。ストレス解消・・・いやっ、人を助けるのは当然のことだから」
もともと好奇心とストレス解消が目的で助けたようなものなので、お礼と言われても困ってしまう。
とりあえず、言葉のお礼だけで良かったのだが、れいなは、亜依の悲惨な光景を目撃して
しまったため、お金以外のお礼が思いつかなかった。
「ごめんなさい私のせいで。これ・・・・・・少ないんですけど・・・」
そう言うと、れいなは財布の中からお札を全て取り出し、亜依の前に差し出した。
お金は大好きな亜依だが、こういうお金はあまり好きじゃなかった。
63 :
ミスト:03/06/26 20:31 ID:ZNQB12b/
「ちょっと、なんかカツアゲしてるみたいじゃん。だから、もういいって。
そうだ!今度、家に遊びにいかせてよ。それがお礼代わりということで。
だって、なかなかないでしょ、芸能人の部屋に入れることなんて」
「そんなんでいいの」
「うん。それから食事とか付けていただいたら、なお嬉しんだけど・・・」
「いいよ。今日、来る?」
れいなの瞳から活気のようなものがあふれ始めていた。
こんな目もするんだと亜依は思った。芸能人という偏見と昨日の態度から、れいなのことを
すれた女の子だと思っていたが、どうやら普通の中学生のようだ。
「今日か・・・いいよ」
「じゃ、放課後にまた来るね」
れいなは手を振りながら教室を出ていった。れいなは、すっかり亜依のことを気に入ったようだ。
「お姉ちゃん、今日、晩ご飯いらないってお母さんに言っといてよ」
「なに言ってるの。私も行くよ」
「え〜っ、お姉ちゃんも?」
田中家は、ずいぶんさわがしくなりそうだ。