【モー娘。矢口の問題疑惑写真】

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762書いた人

――――――

次の日から、私の猛勉強が始まった。
人生でこんなに一生懸命勉強したことが無いってくらい、朝から晩まで勉強ばっかり。
なるべくなら、この労力を他のことに使ってみたい。
もう、これで私の歌とかダンスに支障が出たら、皆さんのせいですからね。
・・・・・・既に支障だらけっていう意見は、即却下です。

審判準一級の試験科目は、私が立ち読みで玉砕した【一般推論】と、もひとつ【審判概論】の2つ。
正直一般推論だけだったら、絶対合格できない。
でも審判概論の方は・・・・・・なんだか、少しは私の頭で理解できる内容だった。
取り敢えずしっかり内容を覚えさえすれば何とかなる科目だから。
助かったぁ。
763書いた人:03/09/20 22:40 ID:Q3iW4utN

――――― 2週間後

「紺野ちゃん、またおべんきょ?」
「うん・・・・・・試験まであと2週間しかないから」

空き時間、楽屋で単語帳を繰る私に、のんつぁんが少し心配そうに声を掛けてきた。
今まではまこっちゃんにばれないように、お仕事の時は極力勉強はしないようにしてたけど。
でも試験が近付くに連れて、焦ってどうしようもなくって。

「これは何の科目なの?」
「うんとね・・・審判概論っていう、審判のこと色々って感じのヤツかな?」
「ふ〜ん」

そう答えたのんつぁんの顔は、殆ど分かっていないみたい。
私だって2週間前までは、審判試験なんて未知の領域だったから、のんつぁんの反応も当然といえば当然。
764書いた人:03/09/20 22:40 ID:Q3iW4utN

というか、まだのんつぁんは良いほうなのだ。
他の面々といったら、私に審判試験を押し付けたことなんか忘れてるんじゃないかってくらい、ホントに無関心。
のんつぁんの背後に広がる風景は、本当にいつもの楽屋風景。
私を置いてきぼりにして、みんなが日常を送っているのがちょっぴり悲しい。
メンバーを見つめる視線が、最近恨めしげになっているのが自分で分かる。

「ね? 紺野ちゃん。私がちょっと問題出してあげるよ」

少しボーっと向こうをみていた私は、のんつぁんの声で我に返る。
さっさと私の手から単語帳を奪い取ると、「第一問! ジャジャン!」と調子良く続ける。

「えっとね・・・審判にとって大切なことを、審判三原則といいます。
それら全てをあげて、意味も答えなさい!」
765書いた人:03/09/20 22:41 ID:Q3iW4utN

のんつぁんの行動にちょっと驚いたけど、受験モードまっしぐらな私はすぐに頭が切り替わる。

「えーーーっとねぇ、中立性でしょ?
審判は当事者どちらにも与することなく、常に公平な視線からジャッジを行うべし。
二つめはねぇ・・・正確性、だよね?
審判は常に正確であることを心がけ、けして勘に頼ることなく・・・・・・えっと、基本をおろそかにしてはならない。
えーっとぉ・・・で、三つめはねぇ・・・」

テキストの左隅に載ってたんだけどなぁ・・・なんだったっけかなぁ・・・
のんつぁんは「ふふッ」少し私に笑いかけると、
「うーんとねぇ・・・」と、上を見上げてヒントを捻り出す。

「紺野ちゃんさぁ・・・正確だったら、それだけでいいのぉ? 日が暮れちゃうよ?」
「あぁ! 迅速性・・・でしょ?
審判は常に判定に迅速であることを心がけ、
けして試合の流れを堰き止めることがあってはならない! かな?」
「あったり! だいじょぶそうじゃん」

親指を立ててウィンクをするのんつぁん・・・でもその手つきは、はっきり言ってトラウマだ。
766書いた人:03/09/20 22:42 ID:Q3iW4utN

――――――

楽屋での勉強が功を奏してきたのか、試験の日が近付くにつれて正解率が上がってくる。
でも・・・それとは反比例して、私の心は段々ブルーになってきた。

審判試験は一年に一回。
2級は一年に二回あるのに、何でか知らないけど、1級と準1級は同じ日に一度だけ。
つまり・・・もしもこの試験にとちったら、まこっちゃん更生の機会はあと1年巡って来ないのだ。

まこっちゃんは今も時々、アウトだのセーフだの、色んな相手に出している。
それに合わせるようにモーニング娘。も少しずつ変わってきて、それで納得しているメンバーもいるみたい。
でも!! まこっちゃんにアウトを出されるのが少なくなってきてても、
それでも私には、まこっちゃんにジャッジを止めさせる必要があるんだ。

まこっちゃんがこうなってから、私はメッカへの礼拝のように欠かさなかった二人でのお食事を、もうずっとしていない。

一緒にお食事に行くのが、私は怖いんだ。
別にまこっちゃんにダメ出しをされるのが怖いんじゃない。
私が大好きだったまこっちゃんがこんな風に変わっちゃった、ってことを再確認するのが怖いんだ。
767書いた人:03/09/20 22:43 ID:ug/HWDJ4

そのことに気付いてから・・・つまり、この試験が私自身にとって持つ重要性に気付いてから、
私の中の焦りは頂点に達したみたいだった。

もしもダメだったら。
もしもまこっちゃんを直せなかったら。
試験に通ったとしても、まこっちゃんにジャッジし返されて負けたら。

頭の中の樹形図は、悪い方向ばっかりに発展して。
自分がこんなにもネガティブな人間なんだって気付いて、また心は沈み込んでいく。

それが表面に出てきたらしく、私は歌もダンスも、番組の収録でも、しょっちゅう間違えていた。
私がどんなに怒られているのを見ても、メンバーは知らんぷリ。
勿論まこっちゃんを前に、大袈裟に心配して見せるわけにはいかない、ってことは分かってる。

それでも・・・
この苦しい気持ち、誰かに分かってほしかった。
768書いた人:03/09/20 22:44 ID:ug/HWDJ4

結局、最悪の形で私は試験前日を終えようとしていた。
本当なら「若島津君を見習って、試験を前に百人組み手でもやりますか」
とでも言っておきたい所だが、生憎そんな冗談を言う気力も残っていない。

「ふぅ・・・」

お風呂に浸かっても、唇から漏れるのは溜息ばかり。
なんかなぁ・・・どうなっちゃうんだろ。
口をお湯につけてぷくぷくやってみても、ちっとも楽しくない。

もぉ・・・・・・いいや、どうでも。さっさと寝よう。
ぞんざいに身体を拭いて部屋に戻って、何気に携帯の窓に目を遣る。

メール・・・・・・来てるんだ。
って・・・・・・なんでメールの着信が13通もあるの!?
慌ててメールを一つ一つ開いた私は、呆気に取られた。

みんなからだ・・・
769書いた人:03/09/20 22:45 ID:ug/HWDJ4

【詰まったら、娘。で一番可愛いこのアシスタントの顔を思い出してくださいね】
【紺野さん!! ファイトです】
【始まる前に深呼吸!】
【まぁ・・・・・・私には関係ないことだけど・・・
もしも受かったら、楽屋で一緒にハニーパイ踊ってあげるよ】
【間違ってもジュマペールとか書いちゃダメだよ】
【麻琴を取り戻せんの、あさ美だけなんよ・・・祈ってる】
【試験終わったら、おいし〜いお店、みんなで行こうね】
【ののみたいにお弁当に夢中で、試験に遅れたりせんといてな】
【分からない問題があっても、ポジティブポジティブ!】
【乳首コリコリいってま〜す・・・・・・ほら、緊張してるの解けた?】
【モーニング娘。の未来は紺野にかかってる・・・!! って、ウソだよ。
気楽にやってこいッ!】
【自分のペースでやってくればいいべ】
【紺野だけに押し付けちゃったことは、みんな悪いて思ってるよ。
頑張ってるあんたに「がんばれ」なんて圭織は言えないから、精一杯やってきて。ね?】
770書いた人:03/09/20 22:46 ID:ug/HWDJ4

13通のメールを読んで顔がほころぶのが分かる。
そして目からだらだらと流れる水分を必死で右手で拭う。

涙で霞む目で一つ一つじっくり読みながら、保護設定にしていく。
でも・・・・・・1通足りないんだ。
一番大切な人からの1通。

あれだけ嫌がっていた試験なのに。
あれだけ気に病んでた試験なのに。

私は思わず入った気合いを胸に、グッと携帯を握り締めた。
やってやるんだから!!