393 :
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5月の19日
今日は初めてミュージックステーションに出る日、そしてテレビで市井さんと歌う最後の日。
生放送かぁ・・・
楽屋でちっちゃくなっている新メンバーの私たちに、なかざーさんがにやっと笑いかける。
「ええか?あんたら。
自己紹介はさせてもらえるけどそれだけで満足せんで、しっかり遠慮せんと前出なダメやで」
「「「「はい・・・・・・」」」」
上がってるから、4人とも声が小さめ。
特にリカちゃんなんかメイクの上からでも、顔色が黒いのを通りすぎて危ない色になってるのが分かる。
このままテレビに映って、大丈夫なのかなぁ?
「あ〜、それと、辻」
394 :
書いた人:03/07/29 20:36 ID:uCY9n1Uj
リカちゃんの顔に夢中になってた私に、なかざーさんが少しきつめに言い足す。
「あんた、こないだのハロモニみたいに、固まったりせんといてな。
今日は生やから、修正きかんで」
ハロモニの私・・・・・・止まってたっけ?
ハロモニをとったときの記憶があんまりない。
でも、この間あいぼんといっしょにテレビでオンエアを見たとき、
確かに私のところで自己紹介が止まっちゃってた。
あいぼんは覚えてない私にビックリしてたけど、『太らないように』なんて言ったっけか?
よっぽど上がってたんだなぁ、私って。
むぅ・・・・・・今度はちゃんとしないとね。
395 :
書いた人:03/07/29 20:36 ID:uCY9n1Uj
スタジオうらに集められて、私たちはひたすら待つ。
もうドラえもん終わっちゃったよね・・・とか、
バカなことを考えながら亜依ちゃんとさわいでいたら、やっぱりなかざーさんに怒られた。
「ほら、のの、静かにせんとダメやん」
「・・・・・・亜依ちゃんだってさわいでたのに・・・」
「とにかく、しっ!・・・・・・ね」
人さし指をくちびるの前に立てる亜依ちゃんに、私はくちびるを突き出してちょっとだけこうぎした。
ぶたいうらのなんだか冷たい空気の中で、私たちはじっと待っていた。
396 :
書いた人:03/07/29 20:37 ID:uCY9n1Uj
トントン・・・
だれかがかたをたたくのに気づく。
またあいぼんかな?
もう、合宿の時から甘えんぼさんなんだから・・・
そっちの方を見上げると、なっちゃんがいつの間にか立っている。
なっちゃんはじっと前を向いたまま、私のほうに目をやらずにつぶやいた。
「のの、そのままね」
「?」
わけが分からないので、そのまま首をかしげていると、
なっちゃんはそんなのお構いなしで続ける。
397 :
書いた人:03/07/29 20:39 ID:oydB/3yF
「あのさ・・・・・・のの、今日も前がみ分けてたよね」
ああ、このことか。
なっちゃんは下ろした方がイイ、ってずっと言ってるのに、今日も私は前がみを分けてた。
今はけっこん式のドレスを着てるから、かみを上げちゃってるけど。
ずっと言われてたのにやめないのが、なっちゃんいやなのかな?
「あの・・・・・・ごめんなさい」
「ううん・・・別にいいの、そのことは」
そう言われてホッとする。
でも、それじゃなんなんだろ?
398 :
書いた人:03/07/29 20:40 ID:oydB/3yF
なっちゃんはあい変らず前を向いたままで、私のほうに目も向けない。
それにつられて、私もなっちゃんと並んだまま、同じ方を見ていた。
「あのね、それでなっちが言いたいのはさ・・・・・のの、この前までは前髪下ろしてたっしょ?」
「え、そう・・・・・かな?」
確かこの間も、なっちゃんはそんなことを言った。
でも私にはそんな覚えが無い。
自分は前がみ分けた方が大人っぽく見えて好きだから、絶対下ろしたりしないもん。
「のの・・・・・・ホントに覚えてないの?」
「うん」
初めてなっちゃんがこっちを向いて、少しきつめに問いつめてくる。
強く言われても、おバカさんに思われるかもしれないけど、しょうがない。
だってホントに覚えてないんだもん。
399 :
書いた人:03/07/29 20:41 ID:oydB/3yF
なっちゃんは私の目をじっと見て、なんだか心の中のイケナイ部分を探しているみたいだった。
ちょっと怖かったけど、なんだか目をそらせなくって、私もなっちゃんを見つめる。
少しためらった後、なっちゃんがうすいくちびるを少し開く。
「あのね、のの。
もしかしたら・・・ホントにもしかしたらだけど、ののと・・・・・・加護、どこかで茶色い瓶の・・・」
「は〜い!!!あと1分でカメラがパンして回りますんで、皆さん準備お願いしまーす!!」
なっちゃんの最後の言葉は、ADさんの大声で聞こえなかった。
すぐに前から決めてあった並び順になる。
よし、今日はぐずぐずしないでできたかな?
番組前のせんでん(・・・って言うのかな?)が終わった後、いよいよ入場を待つだけ。
私はなっちゃんがさっきの続きを言ってくれるか待ったけれど、
それっきり、なっちゃんは何も言ってこなかった。