350 :
書いた人:
「はぁ〜い、それじゃ今回はですね、モーニング娘。に新たに入る、4人が初登場です!」
『絶対無理してテンション上げてるでしょ?』と言いたくなるのをぐっとこらえて、中澤さんの司会を見上げる。
何だかんだ言って、モーニング娘。抜けた後も中澤さんはハロモニ出てたから、あんまり違和感が無い。
台本にある通り、自己紹介では名前と出身地、そして目標を一人ずつ言いなさい、か・・・・・・
一番右側に並んだ私は、左隣の同期の面々を見上げる。
よっすぃ〜、そんなにがちがちになってて、ホントにちゃんと言えるのかな?
梨華ちゃん、下向きっぱなしでそのままで自己紹介するつもりなんだろうか?
そしてあいぼん・・・・・・
あいぼんはじっと前を向いたまま、どこか毅然とした空気を出している。
こういう所は、今も昔もあんまり変わらない。
351 :
書いた人:03/07/25 13:04 ID:ip3mbxOH
「はい、それじゃ順番に自己紹介!」
中澤さんに促されて、よっすぃ〜が一歩前に出る。
おいおい・・・・・・右足と右手が同時に出てるんだけど。
まるで腹話術の人形になったみたい。
「埼玉県出身の吉澤ひとみです。先輩たちに早く追いつけるように、頑張ります!」
・・・・・・というような趣旨のことを、よっすぃ〜は言った。
正確には『サイタマケンシュッシンノ・・・・・・』って感じで、
海の向こうの国からきた方のような話し方だったんだけど。
・・・・・・あ、やぐっさん、下向いて、肩プルプルさせてる。
352 :
書いた人:03/07/25 13:05 ID:ip3mbxOH
よっすぃ〜はそれだけ言いきって、
深々と、まるで叙勲式の出席者みたいに一礼すると、一歩下がる。
一日のエネルギーをここで全て使い切ったんじゃないだろうか。
それを見て、梨華ちゃんがゆっくりと前に出る。
うわぁ・・・・・・負のオーラが出まくってるんだけど。
変なスタンドでも背負ってるんじゃないんだろうか。
ちなみに3年後に背負っているスタンドは『ザ・フール(愚者)』だと思う。
「神奈川県出身の・・・・・・・・・石川梨華です。目標は、明るくやっていくことです」
『できねーよ』と、恐らくこのスタジオにいる全ての人間が心の中でつっこみを入れる。
明るくなることは明るくなるんだけど、変な方向に行ったのはやっぱり天性なんだろうなぁ。
個人的には明るいのは、あいぼんの生え際で充分だ。
・・・・・・しかし今の自己紹介、ちゃんとマイクで拾えたのかな?
353 :
書いた人:03/07/25 13:05 ID:ip3mbxOH
「奈良県出身の、加護亜依です!
目標は、先輩のみんなみたいにかっこよく歌って踊れるようになることです!」
収録用の関西弁を抜かした話し方で、あいぼんはパーフェクトな発言。
でもいつもは完璧に関西弁を抜かすのに、今日はなんだか、少しだけイントネーションが残ってる。
もしかして今日がハロモニ初日だ、ってことまで見越して、わざとこの喋りなのだろうか。
後ろであいぼんの師匠のごっちんが、ちょっぴり嬉しそうに微笑んでいた。
他の先輩たちも、『やるな』って感じの笑みを浮かべてる。
「のの、あんたの番やで」
あいぼんが前を向いたまま、小声で囁く。
やばっ・・・・・・目標なんて考えて無いや。
354 :
書いた人:03/07/25 13:07 ID:8ZKk45ZW
私は困り顔を笑顔で誤魔化しながら、前へ出る。
どうしよう・・・・・・
「東京都出身の、辻希美です。目標は・・・・・・・えーと・・・・・・・」
弱ったなぁ・・・・・・ホントに考えてなかった。
モニターをチラッと除くと、飯田さんが最終順位でゴールするマラソンランナーを迎えるような鎮痛な顔つき。
あぁぁ・・・・・・そんな顔しないでって。
「あ〜、辻。『こういうところに気を付けたい』とかでもええよ」
中澤さんが苦笑いしながら助け舟を出してくれた。
え〜!?でも・・・・・・気を付けたいこと?
未来から来てるってことにばれないように・・・・・・って言えないもんなぁ。
なんだろう、なんだろう・・・・・・なんでだろうに似てるね、このフレーズ。
いつかつんくさん、『なんだろう』とか言うパクリソング作るんじゃないでしょうね。
って・・・・・・どうでもいいよ、こんなこと。
しょうがないなぁ・・・・・・まあ、この時点で一番気を付けたいことって、これかな?
355 :
書いた人:03/07/25 13:09 ID:8ZKk45ZW
「え、と・・・・・・太らないように・・・・・・
収録中にホックが『ポン』っていったりしないように、気をつけます」
言った瞬間、スタジオの空気が凍りついた。
え!?なんで?
うわぁ・・・・・・カメラさんまで顔引きつってるんだけど。
後ろをチラッと振り返ると、やぐっさんは下を向いて『うぷぷぷ』と今度は笑いを漏らしている。
なんでだろ?
中澤さんがそっぽを向きながらも、チラッと見る方向に・・・・・・
あ。
天使のような笑顔でこっちを見ている安倍さんがいた。
・・・・・・すまん、この時代の私。
なんだかとんでもない遺恨をこの時代に残してしまったようだ。
356 :
書いた人:03/07/25 13:10 ID:8ZKk45ZW
結局微妙な空気のまま、収録は続行されてしまった。
これをこのまま放映するのだろうか。
でもさすがに新メンの自己紹介切れないからなぁ・・・・・・
まあ常日頃からダルダルの番組に、少しスパイスを効かせたと思えば可愛いものだ。
ちょっぴり効かせすぎちゃったけどさ。
番組の方はなんだかこの間の収録でも見た覚えがある、
三十路を大きくフライングした女性ゲストが一人で喋りまくっていた。
貴理子さん、あんた全然変わってないのはある意味凄いよ。
私の隣ではあいぼんが、何か私に言いたさそうにしたままだったのが少し気になったけど。
357 :
書いた人:03/07/25 13:10 ID:8ZKk45ZW
収録を終えて、私たち子供組は解散になった。
あの異常な事務所も法律には刃向かえないらしい・・・・・・脱税はするけど。
安倍さんの100万ドルの笑顔が死ぬほど気になるんだけど、まあ今日はいいか。
『後でできることは後で』が、私のモットーだもん。
「のの!!」
通用門に向かって廊下を歩く私を、後ろからあいぼんが呼び止めた。
いつもは呼び止めたら私が行くのを待ってるのに、今日はこっちに向かって全力疾走。
いつか『息をするのもめんどくせえ』とか言いそうなあいぼんにしては、珍しい光景だ。
そんなに息せき切って・・・・・・運動できないんだから無理しない方が良いよ。
私に追いつくと、あいぼんは膝に手をついてしばらく息を整える。
358 :
書いた人:03/07/25 13:12 ID:uovi+zao
「どうしたの?あいぼ・・・・・・亜依ちゃん?」
朝あいぼんと呼んで怒られたので、とりあえず昔の呼び方で言ってみる。
それを聞いて、あいぼんは顔を上げると大きく首を横に振った。
つぶらな瞳が何かを訴えようとしてるけど、彼女の肺がそれを許してくれないらしい。
まだ赤血球が酸素を要求してるんだね。
「ちゃう・・・・・・」
「え?何が?」
「あのな・・・・・・呼び方、あいぼんでええんよ。
朝、うち変なこと言うとったやろ?」
『あいぼん』と呼ばれて不審な顔をしたことを言っているんだろう。
けして『いつもあいぼんは変なこと言ってるじゃん』とは言ってはいけない。
「うちの・・・・・・3年後のうちの意識が、朝はその意識が無かったんや」
話してもらったところで、やっぱり何を言っているかは分からなかった。