168 :
書いた人:
「やったぁ――――――――――!!!!」
朝6時半の洗面所、私の絶叫は隣3軒にまで確実に届いただろう。
思わず出るガッツポーズ。
噛み癖があったから人より短い爪も、容赦なく手のひらに食い込む。
その痛みも、ちっとも気にならない。
遂に私は手に入れたんだ。
いや、取り戻したんだ!
洗面所の大きな鏡の中には、ちっちゃくてか細い、女の子。
その外見に似合わず、唇の端からとめどなくこぼれる不敵な笑みが怖い。
169 :
書いた人:03/07/07 04:31 ID:+z3ZKgCT
「ふふふふふ・・・・・・」
朝6時半から絶叫の上、更に笑みを浮かべつづける私。
外から見たら、さぞかし心の中が真っ黒な人間に思われるかもしれない。
でもいいんだ。
心の中が梨華ちゃんのお肌なみに真っ黒だとしても、いいんだ。
だって今の私には、この外見があるんだから。
170 :
書いた人:03/07/07 04:32 ID:+z3ZKgCT
締まった腰周り。
たるみなんか一切無い二の腕。
力を入れたら『ポキッ』っていっちゃいそうな首。
はっきり言って『懐かしい』
でもこれが現実だ。
遥か遠くに飛んでいった昔じゃない、今現在。
なのに私は、まるで数年前みたいな体つきを手に入れて。
171 :
書いた人:03/07/07 04:34 ID:99BE2bAA
今日お仕事で私を見たら、みんな何て言うだろう?
矢口さんのぽかーんとしたハニワみたいな口。
梨華ちゃんの見開かれた目。
よっすぃ〜の少し羨望の混ざった眼差し。
それにあのマネージャー。
『お菓子食べ過ぎ』などと言う理不尽な理由で、
私の楽屋の愛しきポッキーさんが奴の手に奪われて、どんなに悔しかったか。
待ってろよ、ポッキーさん。
きっと君の仇は討ってやるんだから。
そんなのを想像するだけで、また『くふふっ』と嫌な笑いがこぼれる。
姉文子がそんな私を心配そうに見ていたことにも気付かず、あと15分、私は笑いつづけていた。
172 :
書いた人:03/07/07 04:35 ID:99BE2bAA
ニヤニヤしながら朝の街を歩く。
いつも来ているオーバーオールが何故か見つからなかったのも、ちっとも気にならない。
だって今の私には、あのオーバーオールは多分ぶかぶかなのだ。
そう考えると、また笑みがこぼれる。
こんな姿が飯田さんに見つかったら、
「のんちゃん・・・・・・だらしない!!」
とかお説教の末、鉄格子の付いた病院に入れられそうだけど。
今の私は体が軽くて、足を運ぶのさえ楽しい。
173 :
書いた人:03/07/07 04:35 ID:99BE2bAA
「そういやぁ、あいぼんや紺野ちゃんはどうなったのかな?」
さっきまでは自分の変化に夢中で気付かなかったけど、あの二人もあれを飲んだんだ。
私なみの変化を手に入れたはずだから、二人ともびっくりするような外見になってるはず。
これでもう、梨華ちゃんや愛ちゃんにでかい顔されなくて済む・・・
明日のモーニングは、私たちのものなのだ!!
道端で拳を突き上げ『うぷぷ』と笑う私を、サラリーマンが避けて通っていた。
174 :
書いた人:03/07/07 04:36 ID:99BE2bAA
―――――――― 24時間ほど前 楽屋前廊下
「やせ薬ぃ?」
楽屋から私を連れ出したまこっちゃんが茶色い薬瓶を私に見せてくれた。
どう考えても厚生労働省の認可をもらえそうに無いその物体は、蛍光灯の光に薄く光る。
まこっちゃんがいかにも貴重なもののように、その瓶を両の手のひらで包んでいるけれど、
その動作も私には怪しさを倍増させているようにしか見えないのだ。
痛々しい車椅子姿も、今日は健気ではなく、妙に晴れやかに映る。
この薬が彼女をここまで生き生きとさせているとすれば、それはそれでヤバイ。
175 :
書いた人:03/07/07 04:38 ID:FJmSHsbl
「そう、やせ薬!やっと手に入れたんだから」
朝からなんでそんなにハイテンションでいられるのか分からないけれど、まこっちゃんは私に向かって胸を張る。
それ以前に、何でこんな得体の知れない物体Aに、ここまで威張れるのかが分からない。
「あ?その目は辻ちゃん・・・・・・もしかして疑ってるなぁ?」
「うん、疑ってる」
疑惑度120%の視線が流石にばれたらしい。
隠す必要も無いので私も即答。
いくら天然でお馬鹿さんなことをやっていても、辻希美16歳、こんなことには騙されないのだ。
176 :
書いた人:03/07/07 04:38 ID:FJmSHsbl
私の反応なんて折込済み、とばかりにまこっちゃんはいんちき臭い説明を始める。
「これねぇ、ホントに貴重な薬なんだよ?
寝る前に一口飲むと、カレン=カーペンターもびっくりのダイエットができるんだよ!!」
「それって拒食症じゃんよ」
突っ込む気力も失せるが、とりあえず反応はしておく。
何でそんな古いことまで知っているかは、ヒミツ。
177 :
書いた人:03/07/07 04:39 ID:FJmSHsbl
私の今一な反応に、まこっちゃんは頬を膨らませる。
「もう、辻ちゃんはうたがり深いなぁ。
とにかく今夜、一口飲んでみな!絶対にやせられるから!」
モーニング辞めても、深夜の通販番組で司会が張れるから安心だね。
みのさんも仰け反る見事な商品の勧め方に、思わず溜息が漏れる。
そんな私の心の内を知ってか知らずか、まこっちゃんの商品説明は続く。
・・・・・・なんだよ、アセトアルテヒドって。
『聞いたことあるけど、絶対説明できないだろ』
と言いたくなるような物質名が、まこっちゃんの口からぽんぽんと飛び出す。
178 :
書いた人:03/07/07 04:39 ID:FJmSHsbl
―――― 10分後
うざい。
梅雨空よりも何よりも、今日のまこっちゃんはうざい。
ぎっくり腰は気の毒だけど、その辺差し引いてもお札でお釣りが来るくらいにうざい。
「あぁぁ・・・分かったよ。それじゃ貰うだけ貰っとくから!」
「きっと飲んでね!!絶対だよ!約束だよ!」
私の言葉を聞くと、まこっちゃんは瞳を輝かせた。
車椅子で、私を壁際にまで追い詰めてにじり寄る。
その迫力に負けて、私は思わずコクコクと首を縦に振るのだった。
179 :
書いた人:03/07/07 04:41 ID:teVbVuve
もういいや、根負け。
こうして私の手の中に、茶色の子瓶が残った。
代金はいらない、って所も胡散臭さを増すんだけどさ。
私に瓶を渡すと、嬉しそうにまこっちゃんは車椅子を駆って行ってしまった。
車椅子って、あんなにスピード出るんだ。
でもさっきのまこっちゃん、なんだったんだろう・・・
しばらくボ――ッと楽屋口で佇む私に、
「あれ?こんな所で何してるの?」
ケータリング仲間の紺野ちゃんが、今日もお皿を抱えながら首をかしげていた。
180 :
書いた人:03/07/07 04:42 ID:teVbVuve
「昨日見た日々」
181 :
書いた人:03/07/07 04:44 ID:teVbVuve
ここまでプロローグと言うことで、今日はこの辺までで続きます。
ホントは
>>180の題名を、
>>173と
>>174の間に入れるつもりでしたが、
素で忘れてしまいました。
と言うことで続きます。
それはそうと、俺の赤裸々な私生活を聞いてくれよ、
>>1よ。
俺はまず朝は辻希美の舌をチョロチョロ使ったフェラで目覚める。
そして辻希美と小島奈津子に抱きかかえられて風呂へ入る。
当然ローションを使ったマットプレイ。バックと騎乗位でズコバコはめまくり。
メシは周富徳に作らせた中華。朝っぱらから油っこい中華。もうビンビン。ビンラディン。
で、メシのあとは朝っぱらから酒飲みながら2ch。いい身分だな。
手は使わず後藤真希と仲間由紀恵に両脇からムギュッと抱えられて
加護亜依がポテトチップを口に運び、加藤あいが上目づかいのフェラ。口内射精。
そして米倉涼子が口移しで俺にヘネシーと越の寒梅を飲ませる。
昼頃にいったん2chをやめ、「よし、今日はソープでも逝くか」と言うと
辻希美、小島奈津子、後藤真希、仲間由紀恵、加護亜依、加藤あい、米倉涼子が
泣きながら 「イヤイヤ、もっと私を抱いて!私の体を慰めて!」と引き止める。
「うっせーな、今日はソープな気分なんだよ!!」と家を出る。面倒なので裸のまま。
車に備え付けのPCで最高級ソープを検索。 直行して5Pする。粉が出る。
帰りに焼き肉屋へ行ってタン塩とレバーと上カルビを死ぬほど食う。勃起してきた。
そしてすし屋へ行ってトロとウニだけ食っている頃、女達が迎えに来る。
女達が泣いているので、今日のところは女体盛りは食わないで帰ることにする。
しかし女たちは朝のメンバーとは完全に入れ替わっている。
メンバーは鈴木杏、松浦あや、安部なつみ、石川梨華。
全裸で騎馬を組んで家まで帰る。ワショーイ!
帰ると焼酎で沸かした風呂に入る。入るメンバーは酒井若菜と広末涼子と真鍋かをり。
アナルまで綺麗に舐めさせる。騎乗位で4発発射。もう粉も出ない。
いっさい手をつかわずにさっぱりとして、風呂を出る。
風呂を出ると優香と乙葉に抱きかかえられてPC前に座る。
小一時間ほど毒男を煽って遊ぶ。この頃、田代マーシーは自由行動。頑張れよ!
遊んでいる最中は、飯田圭織のバキューームフェラ。顔射。 出たのは赤玉。
その後、木村優子と八木亜希子にママになってもらって赤ちゃんプレイ。
で、吉澤ひとみと井川遥と本上まなみと4Pして寝ると。 こんなもんかな
>>181 @ノハ@ 書いた人タンの小説や〜♪ 続き楽しみにしとるでー
( *‘д‘) __________
./ つ_|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
(, |\|| <二:彡 . |
'\,,|==========|
>>181 新作キタ━川o・-・)━川o・ー・)━川oT-T)━川o`д´)━川o-_-)━川o´-`)━川o・∀・)━!!!
>>181 書いた人さん、新作おもしろーい!
続き楽しみにしてます。
186 :
書いた人:03/07/08 02:07 ID:3TTy7z3I
「変ですねぇ・・・・・・・・・」
「変だよねぇ・・・・・・・・・」
楽屋の鏡台に瓶を乗せ、二人で顔を並べて覗き込む。
鏡の向こうには丸々とした私と紺野ちゃんの顔が並んでいた。
おかしなことは山ほどある。
このお薬は本物なのか。
本物だとして、何でまこっちゃんはこれを只で私にくれたのか。
そして何で私だけに、特に親友である紺野ちゃんを差し置いて、くれたのか。
つんくさんがホントに全部の曲を作っているのかと同じくらい、ナゾは尽きない。
187 :
書いた人:03/07/08 02:08 ID:3TTy7z3I
「「う〜〜ん・・・・・・」」
「・・・・・・二人とも・・・何しとるん?」
二人して考え込んでいるところに、我が相棒あいぼんが通りかかった。
鏡越しに見える相棒は、顔を並べる私たちに訝しげな視線を送っていた。
あいぼん、ますます丸くなりましたねぇ・・・・・と、自分のことは差し置いて思う。
そうなのだ。
娘。の中には、この薬が欲しくてやまない人が何人もいることくらい、まこっちゃんも分かっているはず。
それなのに何で、私だけが貰えたのか。
188 :
書いた人:03/07/08 02:08 ID:3TTy7z3I
「辻ちゃん・・・・・話してみようよ」
「・・・・・・そだねぇ」
紺野ちゃんも同じようなことを思っていたらしい。
まあ二人で考えるよりは、三人で考えた方が知恵も回るだろう。
『三人寄れば文殊の知恵』と、いつか紺野ちゃんも教えてくれたではないか。
―――――― 3分後
「う〜ん・・・・・・そりゃ、分からんなぁ・・・」
「ですよねぇ・・・・・・・」
「なんなんだろうねぇ・・・」
私たち三人が集まっても、碌な知恵は出てこないことを思い知っただけだった。
189 :
書いた人:03/07/08 02:10 ID:MlmWsrXY
コトコト・・・・・・
ちょっとだけコップに注いでみる。
「無色ですね」
「そやなぁ・・・・・でも、なんか怪しない?」
あいぼんや紺野ちゃんの言うとおり、茶色の瓶の中身は無色透明。
しかも別に嫌な匂いもしない。
でもそれが却って妙に怪しい。
例えるなら、なっちゃんが笑顔の下で何考えてるか分かんないみたいに、
私の本能が危険信号を発しているのだ。
全然例えになってないんだけどさ。
190 :
書いた人:03/07/08 02:11 ID:MlmWsrXY
お仕事を終えた私たちは、誰が提案するとはなしに、屋上に向かった。
重い扉に体を預けて押し開く。
私たちは思わず目を細めた。
梅雨の晴れ間で太陽が容赦なく照り付けていて。
その光は屋上を覆う白い塗料に反射して、とっても眩しかった。
それでも地上から遥かに離れたこの場所では、吹きぬける風が気持ちいい。
屋上は私たちのほかは誰もいなかった。
191 :
書いた人:03/07/08 02:12 ID:MlmWsrXY
「さて・・・どうしようか?」
あいぼんと紺野ちゃんに目を遣ると、二人は目を伏せた。
二人の言いたいことは、分かっている。
そりゃあ確かにこの薬は怪しい。
でも・・・・・・飲んでみたい!!
痩せられないかも知れないけれど、それでももしかしたら、痩せられるのかも知れない。
もしホントの薬だったとすれば、私たちは最高のチャンスをフイにすることになるのだ。
192 :
書いた人:03/07/08 02:13 ID:0MEv2R8W
でも言い出せないんだ。
拾った物を食べるのと同じくらい、危ないもんなぁ・・・・・・
屋上の真ん中で輪になって腰を下ろしたまま、牽制しあう私たち。
ここで『飲んでみよ!』と元気に言えるほど、私たちは無邪気ではない。
顔をあげると不意に二人と目が合った。
「えへへへへ・・・・・・」
「・・・・・・ふふふふ・・・」
「・・・・・・・・ハハ・・・」
微妙な笑い。
笑い声はお互いの目を見ながら、段々大きくなっていく。
何が可笑しいのか分からないけれど、なんだか笑わずにいられない。
紺野ちゃんが吹き出したのを合図に、一気に笑いがこみ上げてきた。
193 :
書いた人:03/07/08 02:15 ID:0MEv2R8W
三人の笑い声が、木霊する。
笑い声はビルに跳ね返って、なんだかますます大きく聞こえてくる。
もう何が可笑しいのか全く分からないけれど、私たちはお腹を抱えて笑いつづける。
紺野ちゃんはうずくまって苦しそう。
あいぼんは私を指差して、目を細めて笑ってる。
そして私は仰け反りながら、腹筋の痛みに耐えていた。
194 :
書いた人:03/07/08 02:16 ID:0MEv2R8W
腹筋の痛みが限界に達してきた頃、ようやく笑いが治まってきた。
それでも、ひいひい言いながら、あいぼんが目尻にたまった涙を指で飛ばす。
「なあ、のの」
「ん?」
私もようやく治まってきた笑いを喉の奥に押し込めて、やっとのことで返事。
「・・・・・・取り敢えずののが、飲んでみいや」
わが相棒はこんな状況でも、冷徹だった。
195 :
書いた人:03/07/08 02:19 ID:0MEv2R8W
今日はここまでです。
毎日更新、などという器用な真似はできませんので、今日は偶然です。
それじゃまた。
>>183 あいぼんさん、烏賊お気に入りなんですか?
>>184 こんこんさん、ご期待に添えるのか自信ゼロです。
>>185 たまにはこういうのも書いてみようかなぁ、という思いつきの産物です。
>>195 @ノハ@ えーっと「烏賊は、おめめに愛嬌があるので」と。
( *‘д‘) __________ しかしナゾだらけで続きが気になるわ〜。
./ つ_|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| でもマターリ待つでー。
(, |\|| <二:彡 . |
'\,,|==========|
交信Zです
今回も名作の予感
小説読むのは小川地獄に堕ちろスレ以来
200 :
ihihijijj:03/07/09 17:54 ID:J1fccr+Q
200
201 :
名無し募集中。。。:03/07/09 18:35 ID:QA/tuwbR
@ノハ@
( ‘д‘) <ほぜんせんでも大丈夫やな
(∪ つ
(_)_) といいつつ。
203 :
書いた人:03/07/10 01:29 ID:bGKn03JI
話し合いは大紛糾。
あいぼん議員の猛烈な攻勢にも関わらず、紺野議員と私の二票で阻止。
私が生贄になってあいぼんと紺野ちゃんが助かっても、ハッキリ言って浮かばれない。
確実に夜な夜な二人の(特にあいぼんに重点的に)枕もとに立ってしまいそうだ。
・・・・・・結局瓶の中身を三分割して、それぞれが家に帰って飲むことにした。
これぞ正しい民主主義。
紺野ちゃんに賄賂(チーズケーキ)を約束したことは内緒なのだ。
「・・・・・・民主主義がいっつも正しいとは限らんで」
瓶を鞄に仕舞うときなっても、あいぼんはぶつぶつ文句を垂れる。
まったく、往生際の悪い相棒だ。
そう言いつつも、この薬を手に入れてちょっぴり嬉しそうなのは、
・・・・・・まぁ、触れないでおいてあげよう。
204 :
書いた人:03/07/10 01:30 ID:bGKn03JI
夜
ベッドに腰掛け、瓶を振ってみる。
外から見るとただの水みたい。
こんなのでホントに痩せれるのかなぁ・・・
疑問が尽きないのはあの二人も一緒だろう。
でも、いや、だからこそ、多分あの二人もこれを飲むと思う。
誰かが飲んでその効果を確かめてから・・・それじゃ遅いから。
私たちモーニング娘。は、みんながライバルなんだ。
あいぼんも紺野ちゃんも、もちろんまこっちゃんもみんな友達だけど、負けられない敵。
205 :
書いた人:03/07/10 01:30 ID:bGKn03JI
・・・・・・でもそう考えると、ますますナゾだ。
何でまこっちゃんはこの薬をくれたのか。
彼女が入ってきたことのことは、今もすっごくよく覚えてる。
生意気そうで、それでも歌も踊りも上手くて。
『ヤバイ、絶対に抜かれる』
そんな危機感をもった。
・・・・・半年もしないうちに、そんな危機感なくしちゃったけど。
原因は二つ。
私はそもそも長期的に頑張れる性格ではない。
それと、まこっちゃん。段々キャラが変わってきた。
でもそんな闘争心の塊だったまこっちゃんが私の減量を応援してくれる?
206 :
書いた人:03/07/10 01:32 ID:gCxFDM+U
ダメだな、私。
そこまで考えて、私はゲンコツで自分の頭を軽く叩いた。
いくら何でも疑いすぎだ。
確かにライバルだけど、それ以上にみんないい友達なんだから。
その好意を素直に受け入れられないなんて、いつの間にこんなにひねくれちゃったんだろう。
207 :
書いた人:03/07/10 01:32 ID:gCxFDM+U
ブゥゥゥゥン・・・・・・
携帯のバイブとともに、着メロが鳴った。
ボーっと考え事をしていたから、少しその音にビクっと体が震える。
うーん、我ながら神経が小動物並みだ。
慌てて携帯を手にとる。
「・・・・・・もしもし?」
「あ?辻ちゃん?私だけど」
電話の向こうは過去の威厳を2年前に置き忘れたその人、まこっちゃんだった。
208 :
書いた人:03/07/10 01:33 ID:gCxFDM+U
「あのお薬・・・・・・飲んでみる気になった?」
なんだか話を急いでいるみたいに、やたら早口にまこっちゃんが言葉を紡ぐ。
「あれさ、ホントに身体に悪かったりしないから。だから飲んでみな!ね?」
「・・・・・・飲むことにしたよ」
また朝と同じ商品説明を聞くのがうざかったので、早々に核心を言っておく。
つーか普通、『ホントに身体に悪くないから』って断るか?
そんなの飯田さんがボーっとしてたくせに『カオ、ちゃんと聞いてたよ』って言うのくらい怪しい。
そんなこと考えつつも、この薬に頼ろうとする自分が少し情けない。
でも私だけを選んでくれたその好意に気が引けて、あいぼんと紺野ちゃんのことは黙っていた。
私の返事に、まこっちゃんは心底安心したような安堵の溜息を洩らす。
「そうかぁ、よかった。これで私もやり直せるよ」
209 :
書いた人:03/07/10 01:37 ID:i+C2oCF+
「は?何を?」
まこっちゃんが最後にポツリと洩らした言葉を、私は聞き逃さなかった。
それに慌ててまこっちゃんは反応する。
「いや!ああ、やり直せる、って言うのはね・・・
辻ちゃんが痩せると、人気が急上昇するからさ・・・
えっと、だから・・・私も初心に戻って闘争心が持てるっていうこと!」
何を焦っているのか、まこっちゃんは慌てたように返事を返す。
それでも、私がさっき考えていたことに妙に一致したその返事が、すんなりと受け入れられた。
210 :
書いた人:03/07/10 01:38 ID:i+C2oCF+
二言三言、言葉を交わして電話を切る。
「そんじゃ、飲んでみますか」
先にマロンに飲ませてみようかと思ったけれど、
これ以上やると本気で家出されかねないので止めておいた。
瓶を開けて、一気に一口分飲み干す。
うわぁ・・・・・まずい。
梨華ちゃんの焼きそばよりもまずい。
もうとっくに液体は胃に入っているっていうのに。
口の中では紺野・石川・道重のある意味三強が、
『理解して女の子』をそれぞれのキーで好き勝手に歌っているみたい。
苦さと渋さが強烈なハーモニーを醸し出す。
211 :
書いた人:03/07/10 01:39 ID:i+C2oCF+
良薬口に苦し、って言うけど、バイアグラだってもうちょっと普通の味するでしょ。
・・・・・・飲んだこと無いけど。
いや、その前にバイアグラって、内服薬なのかなぁ?
中澤さんにいつか聞いてみよっと・・・・・
つーかこの薬、もしや、まこっちゃんが私を暗殺するための陰謀!?
なるほど・・・・・そう考えるとナゾも解けるなぁ・・・
薬のせいなのか、徐々にとろけていく意識の中でぼんやりとそんなことを考えた。
まぁ・・・死にゃしないでしょ。
――――――
翌朝、目が覚めた私が見たのは、完璧に痩せた自分だった。
212 :
書いた人:03/07/10 01:45 ID:i+C2oCF+
今日はここまでです。
紺野→辻の呼び名を『辻ちゃん』にしておいたそばから、
オソロで『のんちゃん』って言ってるし・・・・・あの辺の呼び方はナゾですなぁ。
一応この中では『辻ちゃん』で固定します。
>>196 お返事乙です。
>>197 いくら愛嬌があってもホタルイカの目はとらないとダメですよ、あいぼんさん。
>>198 判断早っ
>>199 凄いスレタイですね。読んで頂いてありがとうございます。
>>200 おめ
>>201 まじですか。
>>202 今のところは大丈夫ですね。といいつつ乙です。
更新乙です。
そしてオレも矢口AVにだまされた。
@ノハ@
( *‘д‘) <まこっちゃん、一体何考えてるんかなー?
/ _∪⌒⌒ヽ. とりあえず更新乙。
( ̄⊂人 //⌒ ノ あとホタルイカは、富山産が通やな。
⊂ニニニニニニニニニニニニニ⊃ ほな、寝るわ。
>書いた人様
小説総合スレで紹介&更新情報お伝えしてもよろしいですか?
217 :
書いた人:03/07/11 20:32 ID:JPups0AO
>>いつもの報告人様
ふつつかな小説ですが、よろしくお願いします。
218 :
書いた人:03/07/11 23:02 ID:FJLYzEqw
1時間も早く到着してしまったのも、私の行く手に障害物が無かったから。
仕事場までの道中、ずーっとおかしな笑いを浮かべていたおかげか、
路上の人は私に凄い勢いで道を空けてくれた。
中には『ヒィィイ!!』と農民Aのような悲鳴を上げていたおじいちゃんもいたけれど、まあいいや。
今日の私の道中に障害物は無かった。
そう、そしてこれから私が行く道にも・・・・・・障害なんて存在しないのだ!
頭の中で危ない想像をしていた上に、
更にみんなの反応や、あいぼんと紺野ちゃんの変わり様を想像し続けていたからか、
気がついたら楽屋口に着いていた。
この辺り、飯田さんが伝染ったのかもしれない。
もう誰か来てるといいな・・・
そんなことを考えながら、ドアを一気に押し開く。
219 :
書いた人:03/07/11 23:03 ID:FJLYzEqw
「おはよーございまーす!!」
自分でも無遠慮と思える大声に、楽屋内に座っていた人がビクッと肩を震わせた。
入り口に背を向けていたその人は、私の声に大急ぎで立ち上がり、
「おはようございます!!」
と、体育会系丸出しの大声で、深々と礼をする。
大きめの背、短い髪。
礼をしている彼女のうなじから見える肌は、羨ましいくらいに白い。
・・・・・・こんな人、いたっけ?
220 :
書いた人:03/07/11 23:04 ID:FJLYzEqw
飯田さん?
まさか、飯田さんは私がモーニングが始まった頃からずーっとロングだ。
伊達にあの人に育てられてはいない。
つーか私が忘れたら、飯田さんが荒れるのが簡単に予測できる。
ふじもっちゃんかな?
まさか、こんな礼儀正しさを発揮すると思えない。
・・・・・・ってことは、新メンかな?
いや、こんなにおっきい子いなかったよなぁ・・・・・・
私からの返事が無いのを不審に思ったのか、彼女はおそるおそる顔をあげる。
眉を寄せ、顎に手を掛けて考え込んでいる私の顔を一瞥すると、
彼女は急にほっとしたような顔をして、微笑んだ。
「なんだぁ・・・・・・ののじゃん。おはよ」
221 :
書いた人:03/07/11 23:06 ID:hpJNKJbH
朝から顔をひと目見られて『なんだ』とか言われた時点で、虚脱感でいっぱいになる。
効果音で言えば、ふにゃにゃにゃにゃ〜、って感じ。
ボッシュートの音楽でも良いんだけど。
『のの』と私の名前を呼んだ彼女は、何事もなかったかのように元座っていた椅子に腰掛けた。
彼女の落ち着いた動作に反して、私は事態がちっともつかめない。
もしかして楽屋間違えたのかなぁ?
何で私のこの変化を見ても、全然驚かない?
って言うか、あんた誰?
222 :
書いた人:03/07/11 23:07 ID:hpJNKJbH
まじまじと見つめつづける視線に耐えかねたのか、彼女は不審そうに私の顔を覗き込んだ。
「ねえ?のの、大丈夫?もしかして、今日プロモ撮影だから緊張してる?
ま、私も緊張してるんだけどさ。だからこんなに早く来ちゃったんだ」
『先輩たちにやる気があるとこ、見せないとねぇ〜』
と殊勝なことを言ってのけるその人を、至近距離でぼんやりと眺め続ける。
このホクロの数・・・もしや?
「あの〜、もしかして、吉澤ひとみさんですか?」
223 :
書いた人:03/07/11 23:07 ID:hpJNKJbH
もしも地獄に行って閻魔様に、
『お前が生きてるうちに言った、最もバカバカしい言葉は何だ』
と聞かれたら、私は迷わずこの言葉を選ぶだろう。
『ぶりんこ』も捨て難いが、あいぼんとの友情の日々を考えると、こちらでいかせてもらう。
しかし3年間も慣れ親しんだ同僚を呼ぶ言葉にしては、酷すぎる。
誰だよ、吉澤ひとみさん、って。
でも今の彼女は、そう呼ばざるをえない雰囲気を持っている。
224 :
書いた人:03/07/11 23:09 ID:xS5CRa4p
顔のほうはあんまり変わっていない。
よっすぃ〜は太っても、あんまり顔のほうには出なかったから。
でも驚くべきはその身体。
細ッ!
ノースリーブの両肩から伸びる腕が、まるで鞭のようにしなやか。
『バレーやってた』という言葉が、なるほどと頷けてしまう。
あわせて亀井ちゃんに『よっすぃ〜のバレーのポジションはラインズマン』と嘘をついたことを、
心の底からざんげしておく。
昨日までのよっすぃ〜には、そんな嘘も余裕で信じられる貫禄があったのだ。
225 :
書いた人:03/07/11 23:10 ID:xS5CRa4p
「え?何言ってんの?そうだよ、吉澤。ホントに大丈夫?」
彼女は笑顔の奥に、どこか影を秘めて私の顔をもう一度覗き込んだ。
うっ・・・・・・可愛い。
流石は天才的美少女。
今日のよっすぃ〜に、『綺麗なお姉さんは好きですか?』と聞かれたら、
私は首を、脱臼するまで縦に振りつづけるだろう。
226 :
書いた人:03/07/11 23:11 ID:xS5CRa4p
なるほど・・・
どうやらまこっちゃんは、私以外にも薬を渡したようだ。
よっすぃ〜も心の中では同じことを思っているんだろう。
でもそこは私よりも大人。
『この状態を普通のこととして、やっていこう』
という意志の現われなんだろう。
その方がみんなのショックが大きくておもしろい、っていうのを読んでいるのだ。
策士ですねぇ、よっすぃ〜。
227 :
書いた人:03/07/11 23:13 ID:xS5CRa4p
確かに痩せることができた私たち同士で驚きあったって、しょうがない。
「分かったよ、よっすぃ〜。私のほうは大丈夫だから」
よっすぃ〜は『はぁ?何が大丈夫なの?』と言いたさげな、疑問120%の顔のまま。
今日のよっすぃ〜は、演技が冴えている。
しかし私がこれで、よっすぃ〜がこれ。
こうなると、紺野ちゃんやあいぼんの変化が無性に楽しみになると同時に怖くもなる。
どうしよう?
もしも太刀打ちできないくらいに完璧な痩せ方をされていたら。
確かに同僚としては嬉しいけれど、ライバルとしては複雑だ。
よっすぃ〜の横にちょこんと座りながら考えていると、再びドアが開かれた。
228 :
書いた人:03/07/11 23:17 ID:S/bFaDh0
今日はここまでです。
初めて『お茶でも飲みましょう』が出てびっくりでした。
ボッシュートが一発変換だったのもびっくり。
>>213 ありがとうございます。はげみになります。
>>214 あれは反則だと思います。
>>215 あいぼんさん、艶かしすぎ。
>>216 改めて、どうぞ宜しくお願いします。
>>228 うーむ。面白いです。
作者さん更新乙です。
うわ〜。書いた人さんがいる!!ぶっちゃけファンです。これからもガンガッテクダサイ。応援してます。
>>228 コロコロ
, ((( ´D`)))
. _,,..-:':':"~^~^~^":':':-:,,._
.~~ ~ ~ ~ ~ |~~ ~ ~ ~ ~ ~~~
| 更新乙!イイ感じやで
@ノハ@ | しっかし、美少女なよっしー
( *‘д‘)つj めっちゃ見たいわ・・・
232 :
書いた人:03/07/13 01:54 ID:CGuRRgWq
「・・・・・・あの・・・おはようございます・・・」
色に例えればピンク色の声が、弱々しく楽屋に響いた。
『アニメ声』、又は『永遠のヘリウム声』。棒読み機能が標準装備された彼女。
声だけ聞けば、視線を向けなくても誰だか分かる。
その声の主、梨華ちゃんは、入り口で深々と頭を下げていた。
きしょいファッションは相変わらず。
今日も彼女は上下をピンクに揃えるという、
午後のワイドショーでマダムの服飾センスを罵倒しつづけるオカマが見たら、卒倒しそうな色使いだった。
このファッションを見ても平気になってきた辺り、私の美的センスが平常であるのか疑わしくなる。
さぁ〜て、私とよっすぃ〜を見て、どんな反応するかな?
ふふふ、私たちにひざまずくのも時間の問題だよ、梨華ちゃん。
233 :
書いた人:03/07/13 01:55 ID:CGuRRgWq
が、顔をあげても梨華ちゃんは何の反応もなし。
今にも東尋坊からダイブできます!!って感じの、黒いオーラを放ちながら近付いてくる。
「あ、梨華ちゃん、おはよ」
「・・・・・・うん、おはよう」
心が暗黒面に取り込まれたんじゃないか、と思うくらい、よっすぃ〜の挨拶にも暗い返事。
よっすぃ〜は、そんな梨華ちゃんをまるでいつも見ているかのように、普通に接している。
私は梨華ちゃんが私たちの変化に気付いてくれないことよりも、何より彼女の変化に呆気に取られていた。
234 :
書いた人:03/07/13 01:56 ID:CGuRRgWq
梨華ちゃん・・・・・・化粧へったくそ。
しかも髪の色が黒く戻っている。
更に今日の梨華ちゃんには、何て言うのかなぁ、オーラが無い。
『普通人』って感じ。
いつもは『何かヤバイ薬やってんじゃないの?』って位にハイテンションだから、それとのギャップが余計に目に付く。
違う、梨華ちゃん。
あんたそんなんじゃないよ。
悔しいけれど、いつもの梨華ちゃんは輝いてる。
すらっとしてて、可愛くて。
確かに歌はアレだし、空気の読めなさはあるけれど、それでも梨華ちゃんはモーニングのエースだ。
235 :
書いた人:03/07/13 01:58 ID:gZOt0Btu
私の視線が少し反抗的なものになっていたのに気付き、梨華ちゃんは突っ立ったまま、私に小首を傾げた。
私が見上げる構図になっているのに、梨華ちゃんの目付きはどこか下から覗き込むような感触を受ける。
「ねぇ、のの・・・・・・何か私に怒ってるの?」
「え?別に・・・何も・・・」
「そう・・・・・・ホントに?」
「うん」
「・・・・・・・・・嘘ついてるでしょ」
「ハァ?」
彼女はネガティブ全開だった。
確かに目付きがちょっと怖くなっていたのかもしれない。
でもいつもだったら
『なぁに?のの、あんたアレでしょ。反抗期ってやつ?ハハン、若いな!』とか、脳の病を心配したくなるような返し方をするのに。
236 :
書いた人:03/07/13 01:59 ID:gZOt0Btu
「あ、今日なんだかのの変なんだよ。緊張してんじゃない?
だから梨華ちゃんもそんな気にしちゃダメだって」
「・・・・・・そう」
見兼ねたよっすぃ〜が助け舟を出し、ようやく解放される。
何故か私のせいになっているのが気になるが、仕方が無いか。
しかし梨華ちゃんが私たちに驚かない上に、これって・・・・・・
少しだけ、私には推理ができてきた。
もちろん、『まこっちゃんが梨華ちゃんを貶めるために、別の薬を渡した』というのは有り得ない。
今は推測するのもかなり怖いけど、でも・・・多分、私の推理はあっていると思うんだけど。
だとしたら、あのケロンパ。恐ろしい物を私にくれたことになる。
とりあえず・・・あいぼんが早く楽屋に来てくれないと・・・
237 :
書いた人:03/07/13 02:00 ID:gZOt0Btu
「あれ?ねえ、梨華ちゃん。あいぼんはまだ来ないのかなぁ?」
「あいぼん・・・・・・?のの、いつからそう呼ぶようになったの?」
私の呼び掛けに何故か梨華ちゃんは、びくびくしながら応えた。
でも私には、梨華ちゃんのそんな答え方よりも、もっともっと気になることがある。
「ハァ?梨華ちゃん何言ってんの?そんなんずっと前からに決まってんじゃん」
いつものように、少し悪っぽく言ってみる。
梨華ちゃんの場合はこんなことを言っても、あんまり気にしないから好き放題できて楽しいのだ。
Mの人間と接するのは楽だなぁ、とあいぼんに昔言ったところ、
『絶対に人前でそんなん言うたらあかん』と怒られたなぁ。
238 :
書いた人:03/07/13 02:02 ID:BAMmRxsD
でも私の目の前には今にも泣き出しそうな、目をうるうるさせた梨華ちゃんがいる。
ヤバッ・・・!泣かした?
でも、こんなことで梨華ちゃん泣くっけ?
ハロモニで肉取れなかった時も泣いてたけどさぁ・・・アレはアレで驚いたんだけど。
焼きそばで泣く私に言われたくないだろうけどさ。
私は思いもしない反応にびっくりして、慌ててフォローする。
「あぁぁ、ごめん・・・?なのかな?この場合。
私はさぁ、あいぼん何処にいるのかなぁ?って聞いただけなんだけど・・・」
「酷いよ・・・・・・いつものの、あいぼんのこと『あいちゃん』って呼んでるから、
だから不思議に思っただけなのに・・・」
肉食えなかった時と同じように、よっすぃ〜が必死に梨華ちゃんを慰める。
二人ともあの時とは全然違う風貌なのに、こういうところは変わらない。
239 :
書いた人:03/07/13 02:03 ID:BAMmRxsD
でも、梨華ちゃんの言葉。
私があいぼんを「あいちゃん」って呼ぶ?
その言葉に、今までの幾つもの疑問が一気に結びつき始めた。
・・・・・・梨華ちゃん、ご褒美に後でアイス奢ってあげるからね。
『まるで昔みたいに』痩せた私
天才的美少女のよっすぃ〜
ネガティブ全開の梨華ちゃん
なくなっていたオーバーオール
「あいちゃん」
まさか・・・もしかして、いや、絶対に・・・・・・
240 :
書いた人:03/07/13 02:04 ID:BAMmRxsD
バァン!!
楽屋のドアが勢いよく開かれると、私と同じくらいに小さい茶髪の女の子が、元気よく頭を下げた。
聞きなれた関西弁。
姿こそ違うけれど、その関西弁が異様に懐かしくて私を安心させてくれる。
「すいませぇん!!おそぅなりました!おはようございます!!」
「あいぼ〜ん!!」
我ながら情けない声を出しながら、少女に向かって駆け寄る。
彼女は一瞬私に『?』という表情をすると、眉を寄せて目を潤ませ、
「ののぉ〜!!やっと来てくれたんやなぁ〜〜!?」
遂には涙を流しながら、私をしっかりと受け止めた。
抱き合ったまま、さめざめと泣く私たち。
よっすぃ〜と梨華ちゃんは自分たちのことも忘れ、
朝から突然始まったメロドラマに困惑しているのだった。
241 :
書いた人:03/07/13 02:09 ID:BAMmRxsD
今日はここまでです。
ランク王国はなんであんなに見ていて恥ずかしいのだろう。
どーでもいいことなんですけど。
>>229 ありがとうございます。バカな話ですいません。
>>230 おひさしぶりです。恐れ多いお言葉ですな。
>>231 いつか再び見ることができると、信じたいです。
>>241 うーむ。またしても面白いです。
作者さん更新乙です。
交信乙です
こういう展開できましたか…今後が楽しみです
更新乙です。
とっても面白いです。次の更新も期待して待ってます。
更新乙です。あとレスありがとうございます。覚えててもらえてうれしいです。物語これからどう進むか楽しみです。
@ノハ@
( *‘д‘) <更新乙!そうきましたかー、ほー。
( つ凵O 確かにランク王国はこっぱずかしいな、なんでやろう?
と__)_) 梨華ちゃん並の演技と子供だましなCGかなー?
247 :
書いた人:03/07/14 17:08 ID:lzBaA/uX
朝っぱらから挨拶もそこそこに抱き合って泣く、二人の女の子。
コンサートでよく見る、おやびんが眉をしかめる種類の人々なら、
涎でも垂らしそうなシチュエーションなのかもしれないけれど、こちらとしては必死だ。
少し落ち着いてきたところで、目の前の我が相棒を眺めてみる。
細くてつりあがった黒目がちな目。
下ろした髪は明るめの茶色・・・・・・前線がやや後退しているのは変わらないけれど。
忘れることができようはずが無い。
我が相棒、加護亜依・・・・・・正確に言えば3年前の加護亜依。
あいぼんも同じ事をしていたらしく、ひとしきり私をつま先から頭のてっぺんまで観察すると、ふぅ、と息を吐いた。
「のの・・・・・・・・・やっとこっちに来てくれたんか・・・会いたかったで」
「それはお互い様だよ・・・・・・」
姿かたちは変わっていても、その口調は間違いなく、私が昨日まで会っていたあいぼんのものだった。
変わった、と言うよりは戻った、のほうが的確なのかもしれないけど。
248 :
書いた人:03/07/14 17:09 ID:lzBaA/uX
「・・・・・・二人とも、大丈夫?」
朝から泣き始める同僚三人に囲まれて、流石にうんざりした様子で、それでもよっすぃ〜が声を掛けてくれた。
この辺り、よっすぃ〜は非常に人間ができていた。
私のよく知るよっすぃ〜には、こういう側面よりも妙にはっちゃけた面が目立つけれど。
彼女もいつの間にやらキャラクターがおかしな方向に進んでいるが、
私は今のよっすぃ〜は宇宙人にさらわれて、何かと入れ代わったのではないかと踏んでいる。
「うん、大丈夫やで。なぁ?のの」
「そうなの・・・・・・えっと・・・・・あいちゃんに会えて嬉しかったから・・・ね」
アドリブを利かせて『あいちゃん』と呼んでみたら、何だか無性に懐かしくて、再び涙が出そうになった。
249 :
書いた人:03/07/14 17:10 ID:lzBaA/uX
「そう、今は2000年の4月や・・・・・・」
先輩たちが来る僅かな時間を縫って、私とあいぼんは第1回ぶりんこ対策会議を開催した(開催地:楽屋の端っこ)。
「・・・・・・じゃああいぼんは、私よりも早くこっちに来ちゃったんだ」
「そやな・・・・・・3日前の朝から。きつかったで。
ののもおんなじやと思ったら、『あいちゃ〜ん』って言って、まとわりついてくるだけやったからな」
「へへへ・・・・・・じゃあ3日前の私に代わって、謝っとくよ」
あいぼんは私と違って、感情を小出しにする方ではない。
どっちかって言ったら、感情を溜めて、それがいつか『ぽんっ』って出るタイプ。
さっき私と同じように泣きじゃくるあいぼんを見て、この3日間がよっぽど辛かったんだろうな、と想像がつく。
250 :
書いた人:03/07/14 17:11 ID:lzBaA/uX
「・・・・・・ってことは、紺野ちゃんもこっちに来てるのかな?」
「せやろなぁ。でもこの時期って、まだ北海道にいるんちゃう?」
「そっか・・・・・なら、電話して確かめてみよっか?」
そういった私に、あいぼんは半開きにした、なんとも言えない視線を送る。
心の中では『アホやなぁ、ののは』と思っているに違いないのだ。
「・・・・・アホやなぁ、ののは」
声に出されてしまった。
「それとも何か?ののは紺野ちゃんの実家の電話番号、きっちり覚えとるんか?」
「覚えてるって、携帯に・・・・・・・・・あ」
251 :
書いた人:03/07/14 17:15 ID:KhEUWwBH
そこまで言って気付く、なるほど私はアホだ。
今の私の携帯電話・・・
モーニング娘。に入るから買って貰ったんだろう、機種が古いのに新品みたいだった
・・・には、もちろん紺野ちゃんの電話番号は入っていない。
ましてや実家なんて掛けたことすらないから、ますます分からない。
当然そんな番号、覚えていられるような脳の構造を私は持ち合わせていない。
「それに・・・・・・」
私が考えるよりも早く、この3日の間に考えていたのだろう、あいぼんは難しそうな顔をして呟く。
「紺野ちゃんが2000年にもう来てるのか、分からへん。
うちとののも、3日違ったから・・・・・・紺野ちゃんもまだこっちに来てへんのかもしれん。
だから紺野ちゃんのほうから連絡してくる、っていうのも・・・」
「あんまり期待できないねぇ」
置かれた状況が『シャボン玉』での紺野ちゃんのパート割りよりも悲惨すぎて、溜息しか出なかった。
252 :
書いた人:03/07/14 17:16 ID:KhEUWwBH
「あぁぁ、それとな、今の時期・・・大変やで今日も・・・」
山積みの問題に眉を寄せながらあいぼんがそう言いかけた時、
楽屋のドアが三度(みたび)開かれ、3年後には到底発見できないようなギャルが入ってきた。
小さな背丈、金色に近い髪、気が強そうな眼差し、太い二の腕。
「おはよぉございまぁす、おっ!!早めの入りなんて偉いね!新入り!」
・・・・・・とは言ってもあんまり変わっていないかな?
3年後とおんなじようなテンションの高さ。
でもどこか、いい意味での『プライド』を持っているような雰囲気がある。
私はおやびんがおやびんのままで、少し安心した、まぁこの頃は、『おやびん』ではないんだけど。
私たちの返事の挨拶に満足そうに頷くと、やぐっさんは部屋の隅にいる私たちを訝しげに見つめた。
253 :
書いた人:03/07/14 17:17 ID:KhEUWwBH
「お前らなぁ、水槽のザリガニじゃないんだから、そんな端っこに固まってんなって!
あ?あれか?プロモ撮るから緊張してんのか?」
『私も最初にプロモ撮った時はさぁ〜』・・・とやぐっさんは遠い目をして語り始めた。
甲殻類に例えられたのがなんとなく不名誉だったけど、別に太った生物でないのは気分がいい。
いつものやぐっさんなら、『羊追いも出来ないベイブ』とか『ムーミン一家の一員』とか、毒舌満載の呼称しか出てこないから。
その度にあいぼんと二人で、『うっせ、チビ』とか毒づいているんだけど。
私はやぐっさんの方へ近寄りつつ、小声で相棒に問いただす。
「ねえ、プロモって・・・・・・なんの?」
「自分の初めてのプロモくらい覚えとかな・・・ハピサマや」
254 :
書いた人:03/07/14 17:18 ID:KhEUWwBH
やぐっさんの方を見たまま、あいぼんは小声で更に続けた。
「のの、うちも早く元に戻りたいのは山々やけどな・・・とりあえず今は、なるべく卒無くこっちの時代もやっていかなって思うん。
だってもしうちらが元に戻った時に、こっちの時代の自分らが苦労するだけやん」
「・・・・・・うん、なんとなく・・・分かった」
確かにこの時期の私たちは、新しい環境に慣れるのに必死だった。
その中で矢継ぎ早に新曲や番組の収録があって、何とかやっていった、って言うのがホントの所。
とりあえず元に戻る方法や、紺野ちゃんとの連絡のつけ方は考える。
でもこっちの時代の自分たちのことも、おろそかにはしない。
・・・・・・これしかないんだよね、多分。
255 :
書いた人:03/07/14 17:19 ID:3mDqiznv
「あれ!?」
そこまで考えた私は、不意に素晴らしい思いつき。
今私は2000年にいる。
まあいずれ向こうに帰らないといけないとして・・・・・・
もしかしたら、加入当初に起こした数々の失敗を防げるんじゃないんだろうか。
日頃脳みそが休眠状態にあるからか、こういう思いつきの力は天下一品だと我ながら思う。
私には防いでおきたい失敗がこの時期には幾つもある。
そしてそのうちの一つは、今日起こるんだってことも分かっている。
忘れたくても忘れられないあの失敗。
「ふふふ・・・・・・まこっちゃんも良い薬くれたもんだね」
そう言いつつ、目をキュピーンと光らせている私に、あいぼんは
『遂にイカれたか?脳が』
とでも言いたさげな視線を送っているのだった。
256 :
書いた人:03/07/14 17:28 ID:3mDqiznv
今日はここまでです。
早く梅雨が明けて欲しいなぁ、と思うこの頃。
個人的には真冬が好きなんですが。
>>242 ありがとうございます。こんな時間までご苦労様です。
>>243 交信は・・・( ゜皿 ゜)<シナイヨ
>>244 ご期待にこたえられる自信が零です。
>>245 どう進むんでしょうね?あんまり考えてなかったり。
>>246 おそらくそれが原因かと。
あいぼんさん、そんなじかんに飲むとトイレ近くなりますよ。
更新乙です。辻ちゃんが犯した失敗とはあのことですね。なんとなくわかります。読んでいくたびに次ぎなにが起こるんだろう。とドキドキします。
@ノハ@
( *‘д‘) <更新乙!
.∬φ___⊂)__ そうそうと思わせる表現がイイなー
./旦/三/ /| こうなったらうちも小説書くで
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| | ・・・
| あいぼん .| | アカン、AAネタしか浮かばんわ
うーむ。またまた面白いです。
作者さん更新乙です。
260 :
書いた人:03/07/15 21:54 ID:4+1T7cAr
集合時間30分前を切ったあたりから、続々とメンバーが集まってくる。
その面子を見るに従って、私は自分が2000年、
まだ21世紀にもなっていないこの時期にいることを痛感していった。
なかざーさん・・・・・なんか3年後の方が綺麗になってる感じがするのは気のせいかな?
三十路前には結婚できない、って知ったらどんな顔するんだろう?
いちーさん・・・・・脱退を控えているからか、何だか近寄り難いオーラを感じる。
彼女が3年後どうなってるかは・・・・・・記憶の奥底に封印しておくとしよう。
ごっちんとおばちゃん・・・・・まだメンバーなんだよね。
この二人がごく自然にモーニング娘。でいられるのを見ると、何だか切なくなってくる。
それにしても、おばちゃん影薄ッ。
こう見ると、3年の間に随分変わったんだなぁ、と思う。
それと同時に、この11人がモーニング娘。であることに、あんまり違和感を抱かないのも不思議。
加入当時のこのメンバーが私には印象深いのだろう。
それだけじゃなく、まだ私が・・・この時代の私が、頭の中に残っているのかも。
だから今日、このスタジオまでボーッとしていても辿り着けたし、集合時間だって間違えなかったのだろうか。
261 :
書いた人:03/07/15 21:55 ID:4+1T7cAr
うわぁ、なっちゃんぷっくぷくだ。
そう言えばこの時期のなっちゃんって、多分一番ふっくらしていた時期。
ふふふ、1年後には私に『食べ過ぎ』とか説教するくせに。
でもそんな外見に似合わず、なっちゃんはちょっとトゲトゲした感じで楽屋に入ってきた。
あぁ、まだごっちんとあんまり仲良くなかったっけ?
飯田さんはあんまり変わってないかな?
でもどこか、交信状態がこの頃は多そうな感じがする。
真っ黒で綺麗なストレートの髪が、まだ色っぽさよりは若さの方を際立たせる。
262 :
書いた人:03/07/15 21:56 ID:4+1T7cAr
座ったままボケーッとみんなを観察している私と不意に目が合うと、
飯田さんはにこっと微笑んで、心優しく話し掛けてきてくれた。
「いい?のんちゃん。分からないことがあったら、何でもカオリに聞いていいんだよ。
今日初めてのプロモで緊張してるだろうけど、あんまり気張らなくていいんだからね」
「は〜い」
『後輩』としてここまで気を遣ってくれることが懐かしくて、そしてちょっぴりくすぐったい。
自分がこんな風に後輩に接してこれたのかは、非常に疑わしいんだけど。
飯田さんは返事をする私を、何が楽しいのかニコニコと見ていた。
見つめていた。
・・・・・・まだ見つめている。
・・・・・・・・・・・・どうやら多少の交信に入ったらしい。
263 :
書いた人:03/07/15 21:57 ID:4+1T7cAr
私たち新メンを迎えて、どこか優しい感じが表面上あるものの、楽屋にはどこか緊迫した空気が漂っていた。
こんな雰囲気、ここんところずっと味わったことが無い。
みんなそれなりに言葉を交わしているけれど、どこか感じるのは『あなたには負けない』って言う空気。
この間オソロに出させてもらった時に梨華ちゃんが言っていた、『緊張感』だろうか。
レコーディングの時に、ガラスの向こうで厳しい目で見ている先輩たち。
ハピサマのパートなんて有るようで無いようなものだったけれど、それでも肩甲骨の間が震えたっけ。
メンバーは最高の友達であって、最高のライバル。
3年経っても私はそう思っているけれど、
この時期はみんな、多分後者の意識の方がずっと大きかったのかもしれない。
・・・・・・・・・・・・多分『強敵』とか『好敵手』と書いて、『とも』とか読んじゃうんだろうなぁ。
264 :
書いた人:03/07/15 22:00 ID:Qqg0Jki5
「あ〜、そんじゃ時間かな?」
中澤さんの一声に、一気に楽屋が静まりかえる。
特によっすぃ〜と梨華ちゃんは、まるでお通夜みたいに神妙な顔つき。
そんなんじゃ、プロモ撮り終わるころには気疲れで倒れちゃいそうだ。
「今日プロモの撮影やから、ちゃんとテキパキ動いてな。
特に新メン、分からんことあったら一人でマゴマゴしとらんで、さっさと教育係に聞くんやで」
「「はいぃ!!!!」」
元気よく返事をしたのは、私とあいぼん。
もうこういうのには慣れっこになっている。
どんな時でも挨拶と返事は元気に・・・・・・基本だ。
よっすぃ〜と梨華ちゃんはそんな私たちの変化に驚き、目を見広げている。
「お!?いい返事やなぁ、辻、加護。姐さん嬉しいわぁ」
「「えへへへ・・・・・・」」
中澤さんに誉められるのもすっごい久しぶりで、思わずあいぼんと顔を見合わせて笑った。
265 :
書いた人:03/07/15 22:01 ID:Qqg0Jki5
ついこの間『シャボン玉』のプロモを撮ったばかりなのに、またプロモを撮るというのが何だか不思議。
ハピサマのプロモ撮影・・・忘れもしない、いや、忘れられない。
誰にだってある、思い出すとまるで身を切られるような記憶。
この撮影日は間違いなくその一つに当たるだろう、私にとっては嫌な想い出だ。
この日衣装替えの途中、私は撮影で着るドレスに真っ赤なマニキュアをぶちまけたのだ。
まだ耳の底にこびりついている、スタッフさんの叫び声。
泣きじゃくる私に、ひたすら優しく声を掛けてくれた飯田さん。
『みんな怒ってないよ。もう大丈夫だから、おいで』
あの声は、忘れない。
多分何年経っても・・・・・・私が芸能界を辞めたって、ずっと覚えてるんだと思う。
そのせいで撮影は2時間押した。
変えられるなら・・・変えたい過去。
266 :
書いた人:03/07/15 22:02 ID:Qqg0Jki5
撮影に使われる大量の衣装と、そしてメイクさんや衣装さんやら、スタッフさんが大量に入ってきた。
楽屋の中は、まるで蟻塚をアリクイがぶち壊した後みたいな大騒ぎ。
喧騒の中、あいぼんが私につつつ・・・と近寄ってくると、そっと耳打ちしてくる。
「なあ、のの・・・さっき『まこっちゃんがいい薬くれた』って言うてたけど・・・
もしかして、マニキュアのこと?」
流石は我が相棒。
私の思考回路を読むのは御茶の子さいさいのようだ。
・・・・・それだけ私の考えが浅墓だ、とも言うのかもしれないけど。
「・・・うん」
「それは・・・・・・止めといた方がええかもしれんで」
私の思考は読まれ放題なのに、相棒の思考は一向に読めないのだった。
267 :
書いた人:03/07/15 22:02 ID:Qqg0Jki5
「なんで!?」
思わず大声を出してしまう。
あいぼんもあの状況に居合わせていたんだから、
私が今までどれだけこのことを悔やんでいたのか分かっているはず。
それなのにあいぼんは、眉を寄せたしかめっ面のまま呟いた。
「あのな、うちもののも、3年後ああいう風に過ごしとるのは、色んなことが積み重なってるからやん」
「・・・・・・うん」
「せやから、今はなるべく、昔あったことはそのまんまにして過ごした方がええと思う。
もしもこの時代に変化が起きると、それが3年後にどう影響してくるか分からんやん?」
その言葉に、私は虚ろな返事をした。
あいぼんの言いたいことは分かる。
バカ女に輝いたとはいえ、私にだってこれくらいの理解力はある。
ちなみに、いけないのはあの敵性言語だ。
268 :
書いた人:03/07/15 22:04 ID:Ln/x0oAv
私がマニキュアを倒さなかったら。
もしかしたら凄い勢いで未来が変わってしまうかもしれない。
私はあんなに太ったりしないかもしれない。
飯田さんがリーダーにならないかもしれない。
そして・・・モーニング娘。が3年後には存在しないかもしれない。
・・・・・そんなこと無い、って言い切れない。
そして私たちが未来に戻ったら・・・・・・戻れたら、の話だけど・・・その『変わった後の』の未来に帰ることになる。
もしかしたらその変化とは無関係に、私は元いた3年後に帰れるのかもしれないけど。
知り合いにこんな経験ある人なんていないから、実際どうなるのかは分からない。
そして分からないからこそ、なるべく危険は避けなければならない、っていうのは理解している。
269 :
書いた人:03/07/15 22:05 ID:Ln/x0oAv
でも!!
でも、あいぼんには分からないんだ。
私があのことでどんなに苦しんだか。
傍目には三歩で全てを忘れる、鳥類並みの感性の持ち主に見えるかもしれないけれど、あの事件は忘れられない。
あいぼんは色んなことを、昔っから卒無くこなせたから、私の気持ちを分かってくれないんだ。
「ううん・・・・・・・・・・・でも・・・」
「のの・・・・・・ののの気持ちは充分分かってるつもりや・・・だから・・・」
あいぼんはまるで懇願するように私を説得する。
そんな目されたって・・・・・・
「ごめん、あいぼん・・・・・・私どうしても、やってみたい」
私の答えにあいぼんは少し非難めいた、でもどこか悲しい眼差しを返した。
3年間一緒にいて、初めてされた表情だった。
270 :
書いた人:03/07/15 22:10 ID:Ln/x0oAv
今日はここまでです。
ご感想など宜しくお願いします。
>>257 バレバレですか。ごめんなさい。
>>258 AAできるほうが羨ましいです。
>>259 ありがとうございます。結構考えてません。
作者さん連日の更新乙です。
うーむ。これまた面白かったです。
緊張してきました。
作者さん乙です。
面白いです。
更新待ちの小説があると2ちゃんに来るのがこんなに楽しいものだということを思い出しました。
敵性言語ってなんのことかと数秒考えてしまった
274 :
書いた人:03/07/17 00:11 ID:PM5HWPv8
私たちがそんな空気の中で立ち止まることを許さないかのように、撮影の準備は戦場のように続く。
「それじゃ、辻ちゃんはこっちに来て下さいね」
「は〜い、加護ちゃんはそこに座って〜」
私たちも例外ではなく、スタッフに背中を押されるように連れて行かれる。
私から遠ざかりながら、それでも尚、あいぼんはあの目つきを変えなかった。
こういう状況で頭の中にドナドナが流れる自分の神経が、少し危ないと思う。
あいぼん、ごめん。
やっぱり、防げるものなら防いでみたいんだ。
もう一度、今度は声に出さずに呟いた。
275 :
書いた人:03/07/17 00:12 ID:PM5HWPv8
「それでは最初は、こちらの色の衣装でーす!!」
衣装さんの中で一番年長と思われる人物が声を張り上げる。
そこかしこから『うぃーっす』とだらしの無い返事が聞こえた。
「えーと、辻ちゃん用のは・・・・・・これね」
薄い布地の、それでも煌びやかな衣装が運ばれた時、私は思わず目をぱちくりさせた。
「お?結構立派でビックリした?」
私担当と思われる男の衣装さんが、私の反応を面白そうに笑った。
『ちげーよ、バーカ』とは、流石に口には出さない。
私の心の中は、所詮あんたには分からないんだから。
因縁の衣装に3年の時を経て再び出会う、この気持ちなんか。
私がマニキュアをこぼした、あの衣装だ。
276 :
書いた人:03/07/17 00:13 ID:PM5HWPv8
お久しぶり・・・
と、おかしな挨拶を心の中で唱えると、私の脳はまるで爆弾処理班のような注意力を発揮し始めた。
慎重に鏡台のマニキュアの瓶を手にとると、栓がしっかり閉まっているか確かめる。
衣装が何かに当たらないように、少し鏡台から距離をおいて慎重に着替える。
人生の中で、これほど神経を使ったことがあるだろうか。
多分、なっちゃんの前で『プレステ』って言わないように気を使いまくった、遥か昔の日々以来だ。
確かあの時は、梨華ちゃんとプレステの話で盛り上がっている所に突然なっちゃんが入ってきたもんだから、
『プレ・・・・・・・・・−ンヨーグルト、何処のが美味しいかなぁ?』
などという、おかしな誤魔化しかたをしたんだっけ。
しかも梨華ちゃんが全く空気を読めず、アドリブについてきてくれなくて、ドキドキしたっけ?
277 :
書いた人:03/07/17 00:13 ID:PM5HWPv8
心臓が高鳴るのが分かる。
流石にマニキュアをどの時点でこぼしたかまでは覚えていないから、全ての動作に神経を払う。
ゆっくりと衣装を着終わった私は、今度は慎重にメイク。
あくまでもマニキュアとの距離を保ちつつ、メイクさんの手つきを鏡越しに厳しい目で見つめる。
顔も髪も終わって、そしてマニキュアも無事に終了。
終わったら即座に瓶に栓をする。
まるでロボットのように性格で緻密な動き。
我ながら惚れ惚れする。
・・・・・・よし、これで終了。
全てを終わった私は、即座にスタジオに向かう。
心の中で『ミッション・コンプリート』という声が響いた・・・・・・スペルは知らないけどね。
278 :
書いた人:03/07/17 00:14 ID:PM5HWPv8
撮影はつつがなく進む。
衣装を着て、踊り、そして着替えて、また踊る。
楽しかった。
自分がモーニング娘。に入って最初の経験、それを二回もできるなんて、最高の贅沢かもしれない。
マニキュアの件だけでなく、私はまこっちゃんに再び少しだけ感謝した。
あいぼんもおんなじみたいで、はしゃぎながら、そしてミスも無く、撮影をこなしている。
結婚式衣装の方はいくつか色のパターンがあるので、何度目かの着替えをする。
複数のシーンをつなぎ合わせるから、結局私たちが踊る量もそれなりに多くなる。
フォーメーションやプロモ用の踊りを思い出しながらなので、体力よりも気疲れの方が大きい。
これで・・・・・・最後かな?
279 :
書いた人:03/07/17 00:16 ID:84vVnhqG
最後の着替えを黙々とこなしていると、我が教育係飯田さんが後ろに立っていた。
何も言わずに後ろに立たれると、正直少し怖い。
それでも気配で分かっちゃう辺り、やっぱり慣れてるんだろうなぁ、私。
「どうしたんですかぁ?」
「・・・・・・のんちゃん、ちゃんと出来てるね。偉いよ」
まるで子供に接するような言葉遣い。
昔の私って、ホントに幼かったんだなぁ、って実感する。
「えへへ・・・・・・ありがとうございます」
満足そうに渡しに頷くと、飯田さんはふと怪訝な顔をした。
最後の着替えを黙々とこなしていると、我が教育係飯田さんが後ろに立っていた。
何も言わずに後ろに立たれると、正直少し怖い。
それでも気配で分かっちゃう辺り、やっぱり慣れてるんだろうなぁ、私。
「どうしたんですかぁ?」
「のんちゃん、ちゃんと出来てるね。偉いよ」
まるで子供に接するような言葉遣い。
昔の私って、ホントに幼かったんだなぁ、って実感する。
「えへへ・・・・・・ありがとうございます」
満足そうに私に頷くと、飯田さんはふと怪訝な顔をした。
281 :
書いた人:03/07/17 00:19 ID:84vVnhqG
「あれ?のんちゃん、少し頭飾りずれてるよ。直してあげるから、むこう向きな」
「は〜い」
こういう風に接してもらえることが嬉しくって、私はくるっと体を半回転させた。
ドレスの裾が舞い上がり、鏡台をかすめる。
コトッ・・・・・・
回転する視界の中で、私は何気に鏡台の方に視線を移す。
ゆっくりとマニキュアの瓶が倒れ始めていた。
いや、大丈夫。
あれほど栓を確かめたじゃない。
そう思うと同時に、私の視覚はありえないものを捉える。
・・・・・・・・・瓶の上に乗っているはずの黒い栓が・・・・・・無い。
282 :
書いた人:03/07/17 00:20 ID:84vVnhqG
・・・・・・・・・・・・時が止まる
マニキュア瓶は私の膝元で一回転すると、中の真っ赤な液体を私の衣装に塗りたくっていく。
まるでスローモーションみたいに、ゆっくりゆっくりと、それは弧を描いていって。
私はそれを避けることもせず、ただその様子を見守ることしか出来なかった。
カラン、と軽い音を響かせて床に落ちると、再び時間が動き出す。
「うッきゃぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
私の近くにいた衣装さんが、まるで女の子みたいな声で叫ぶ。
一気に部屋の中の全ての視線が私に集まる。
そう、この声・・・・・・3年前に聞いたこの声。
「つ・・・辻ちゃん、早く衣装脱いで!!!」
彼が叫びながら、無理やり私の衣装を脱がしに掛かる。
私はただそれに従いながら、呆然としていた。
マニキュア瓶をひっくり返しちゃったからじゃない。
私は・・・・・・・・・未来を変えられなかった。
283 :
書いた人:03/07/17 00:27 ID:84vVnhqG
今日はここまで。
短めの上に、あまり可笑しな文章を入れるわけにもいかないシーンなので、
ちょっぴり読んでて退屈かもしれませんが、スマソ。
>>279は校正ミスを書き込み直後に見つけてしまったので、
申し訳ありませんが、
>>280がホント、ということで。
明日は更新できませぬので、ご了承を・・・・・・
>>271 ありがとうございます。レスを貰えるのがこんなに嬉しいとは、
小説書くまで気付きませんでした。
>>272 そういうお気持ちになって下さったなら、多分上手くいっているのでしょう。
毎日は更新できないと思いますが、これからも宜しくお願いします。
>>273 ( ´D`)<ストライクはよし、ボールはだめ、が基本れす。
でもなんで、『パーマネントは敵だ!』なんでしょうね?
思いっきり敵性言語使ってるのれす。
作者さん続けて更新乙です
うーん。スリリングですね。
本当に面白いです。
[ ゜皿 ゜]交信乙です
何気にペース早いですね
無理せずこれからもがんがってください
@ノハ@ もうドキドキですわ。
( *‘д‘) __________ 歴史変わるんかなー思たら
./ つ_|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| 結局・・・
(, |\|| 更新乙! | よっしゃ、こうなったら「記憶の中の『あの人』」 も読むで
'\,,|==========| って、まだ読んでなかったんかい!うち
やっぱり歴史は変えられないんですね。
のんつぁんが可哀相だ。
更新乙です。いや〜おもしろい。けど結局辻ちゃんは過去を変えられなかったのか。
289 :
書いた人:03/07/18 19:11 ID:9M34nSDo
「のんちゃ〜ん、大丈夫だからスタジオ降りておいで」
「・・・・・・・・・みんな怒ってるもん・・・・・」
ドア越しに聞こえる飯田さんの声に、見えるはずがないのに首を振る。
私の返事に飯田さんは少しだけ、溜息交じりの吐息を洩らしたようだった。
ドレスの汚れはあの時と同じように、除光液とシンナーを駆使することで30分ほどで何とかなった。
やっぱりあの時と同じように、その間ずっと飯田さんは私の肩を抱いていてくれた。
そして再び服を着せられ、撮影が再開されようとした時になっても、
30分前から流れつづけていた涙を止めることができなかった。
いつでも始められるように他のメンバーが移動したあと、私は一人っきりの楽屋で泣きつづけていた。
一人には広すぎる楽屋には、ひたすら私の嗚咽だけが木霊する。
290 :
書いた人:03/07/18 19:11 ID:9M34nSDo
私はみんなの所へ行けなかった。
衣装を汚してしまった事に申し訳ない、と言うのが無いとはいえない。
でもそれだけじゃない、あれだけ注意したというのに同じ失敗を繰り返したことが、私にはショックだった。
流石にそんなことは言えないから、飯田さんには1回目と同じ『みんながまだ怒ってる』という駄々のこね方を使うけれど。
鏡の中の女の子は、目を真っ赤にさせて唇をへの字にまげて、3年後の私だったら抱きしめてあげたくなるほど可愛い。
これじゃ、3年前と何にも変わんない・・・
私はそんなに進歩できてないんだろうか。
「のんちゃん・・・・・・ね、誰も怒ってないよ?」
外から聞こえる飯田さんの声があまりに優しすぎるのが悲しくて、私は自分の身体をぎゅっと抱きしめた。
こうしていないと、自分がまるでどっかに行ってしまいそうで怖かった。
291 :
書いた人:03/07/18 19:12 ID:9M34nSDo
みんなが怒っていないことは知っている。
私があと1時間30分後スタジオに降りていった時も、
みんなは私を叱るどころか懸命に慰めてくれるんだ。
私は失敗を変えられなかった。
それだけ私は成長していなかったのだろうか。
でもそれ以外に、どうしても納得できないことがある。
あれだけ注意していた瓶の栓が、何で開いていたんだろう。
誰が開けたか、が重要なんじゃない。何で開いていたか、が重要なんだ。
・・・・・・・・・一瞬、過去の物事は全て変えられないのか、とも思った。
でもそれは違う。
私がマニキュアをこぼしたドレスの色は、別の色だった。
そしてもう少し、早い時間帯だった。
少なくとも、飯田さんにお直ししてもらっている時に起こったりはしなかった。
――コンコン
私の重い考えとは正反対の軽やかなノックに、思考が中断される。
292 :
書いた人:03/07/18 19:13 ID:9M34nSDo
「のの、入るで」
私の答えを聞くまでもなく、楽屋に入ってきた我が相棒。
その顔はどこか嬉しそう。
釣り目がちの目を三日月みたいに細くして、唇の端がかすかに上がっている。
「のの、やっぱりうちの言うこと、分かってくれたんやな」
彼女はそう言って、私の右肩に軽く手を置いた。
私は彼女の態度が意外すぎて、呆然としたまま動けない。
「いや〜、やっぱり迷っとって、最後の最後に決断したん?
そんでもちゃんと、飯田さんに言う『みんな怒ってるも〜ん』って言葉まで同じなんて、大したもんやで」
「・・・・・・・・・あいぼん、違うよ。私、最後まで変えようとしてた」
下手くそな私のまねを得意げにやる相棒に、
いつもだったら紺野ちゃん直伝の正拳突きをお見舞いしてくれる所だ。
でも今日は違う。
辛い気持ちの中で精一杯の気力を使って言うと、再び涙が溢れてきた。
293 :
書いた人:03/07/18 19:15 ID:0XuoV25e
「え?そうやったん?
うちてっきり、ののがもう諦めたんかと・・・・・・」
心底私の返事が意外だったらしく、あいぼんはらしくない動揺を見せる。
「ううん、私、最後の最後まで、絶対に失敗しないようにしてた。
でもね・・・・・・できなかったんだ」
一度話しだしてしまうと、もう感情が出てくるのを止められなかった。
「私、そんなに進歩無いのかなぁ?
もしかして、これって絶対に起きなくちゃいけないことだったのかなぁ?
やっぱり・・・・・・私って・・・・・・」
喉がしゃくりあげてしまって、続けられない。
それすらも悔しくて、目をつぶって下を向く。
・・・・・・と、何かが私の両肩をつかんだ。
294 :
書いた人:03/07/18 19:16 ID:0XuoV25e
「あんな、のの。進歩なんかめっちゃしとるで。
もしかしたら『絶対起きないかんこと』なんかもしれんけど、でも、それはのののせいやない」
私の両肩に置いた彼女の手が、ぎゅっと強まる。
私よりも遥かに力が弱いあいぼんにしては、かなり力を入れてるんだろう。
「変えられんこと、ないと思うで。
たとえば今、ののとうちが喋ってるのだって、ホントは無かったことちゃうの?」
「・・・・・・・・・うん」
全てのことが変えられないわけではない。
でも・・・・・・『絶対変えられない何か』があるんじゃないか・・・・・・
わたしはぼんやりと考えていた。
295 :
書いた人:03/07/18 19:17 ID:0XuoV25e
「ちっとは落ち着いたん?」
私が喋らなくなったのを心配したのか、あいぼんが覗き込んでくる。
さっきの目を三日月にしていた笑いではなく、優しい微笑。
「・・・・・・うん、大丈夫。それより・・・・・・」
「うん?」
「早く、紺野ちゃんに連絡つけられるようにしよう。
で、早く元に戻れるように考えよう!」
私の言葉にあいぼんは力強く頷いた。
彼女は多分、あんまり過去を変えてしまわないようにって思ってるから、賛成してくれたんだと思う。
でも私はちょっと違った。
もし変えられない何か、があるんだとしたら、ここにいる私の存在が、酷く異常なものに思えていたから。
早くこの場から、元に戻りたかったから。
296 :
書いた人:03/07/18 19:17 ID:0XuoV25e
「さて・・・・・・で、どうするん?」
ひとしきり泣いて落ち着いた私に、あいぼんが小首を傾げて尋ねる。
『どうするん?』って聞かれても、目的語が無いから分からない。
しょうがないので、私も一緒に小首を傾げる。
傍から見ればただのバカだ。
「いや、ののが楽屋に閉じこもったのって、2時間やったけど・・・・・
まだ1時間ちょいしか経ってないで。あと1時間どうする?」
相棒の言葉に、私は大きく頷いた。
決まってるじゃない、そんなこと。
確かにあの過去を変えられなかったけど、これから起こることは多分、変えられるはず。
だってこれは、完全に私の意志次第だから。
私の不敵な笑みに、あいぼんはほくそえんだ。
297 :
書いた人:03/07/18 19:20 ID:tsIubuxH
「まぁ、しゃあないか。好きにしぃ」
ありがとう、あいぼん。
心の中で礼を言うと、私は立ち上がる。
楽屋に閉じこもった時間を1時間に変えても・・・・・・多分、大丈夫だよね。
私とあいぼんの意識が過去に来て、もうかなり変化が生じているんだと思う。
確かに大幅に何かを変えていくのは無理だけど、完璧に何も変えない、って言うのも不可能。
だから私は、今の私が納得いくように努力するだけ。
あいぼんの言うようにそれで何かが大きく変わってしまうかもしれないけれど。
彼女の気付いているんだろう。
全てを変えないことは不可能だから、とりあえず今を一生懸命やるしかないってことを。
許してくれた相棒に感謝。
メイク直しを入れて、押しが1時間15分。
ほんの少し。ほんの少しだけだけど、私の不名誉な過去は変わった。
298 :
書いた人:03/07/18 19:25 ID:tsIubuxH
今日はここまでです。
次回から元の調子に戻ります。
>>284 ありがとうございます。「うーん」は口癖なのでしょうか。
毎回のレス、本当に感謝してます。
>>285 自分でビックリです。お気遣いありがとうございます。
無理はあんまりしてないんですよ、ホントに
>>286 あいぼんさん、是非読んでやってください。
シリアス場面の書き方を、忘れてしまったので苦労しております。
>>287 あの事件を喋っているオソロを聞いて、悶え死にそうになりました。
やっぱり可哀想ではあるのですが。
>>288 ちょっぴりだけ、です。お返事乙です。
ありがとうございます。
作者さん更新乙です。
うーん。同一人物だと見破られましたかw
このあとどんな展開になるのか
とても楽しみです。わくわくわくわく。
300 :
書いた人:03/07/19 16:27 ID:K9gIGIE/
―――― 5日後 某所図書館
「こんなにあるのかぁ・・・・・・」
「そやなぁ・・・」
机の上に開いた電話帳を目の前に、私とあいぼんは『はふぅ』と溜息を洩らした。
私たちが娘。に入っての最初のオフ。私がこっちに来てから5日目。
あいぼんの誘いで、私は図書館にやってきたのだった。
本当なら芸能人になって最初のオフだったら、とりあえず家族と一緒にのんびり、
というのが基本なんだろうけど、生憎今はそんなことをしていられない。
マロンも家を出ようとする私を止めようとしたが、カップラーメンをあてがってその隙に外に出た。
カップラーメンよりも私の順位は下なのか・・・
マロン、よく覚えておくよ。
301 :
書いた人:03/07/19 16:28 ID:K9gIGIE/
何故図書館なんていう、私には半永久的に縁の無い空間に来たのかというと、
あいぼんが紺野ちゃんへの連絡のつけ方を思いついたから。
あいぼんの案は『電話帳で札幌の紺野さん宅に電話を掛けまくる』という、
関係者でない皆さんには果てしなく迷惑この上ないもの。
そのために北海道の電話帳が必要だ、ということらしい。
休日、二人の中学生が図書館で字ばかりの本を熟読・・・
と言えば聞こえが良いけれど、残念ながら私たちが目の前に広げているのは、文字と数字の羅列。
こんな物を他人が熱心に読んでいたら、少し精神の調子を疑いたくなる代物だ。
これを上回る危なさって、乱数表しかないような気がする。
302 :
書いた人:03/07/19 16:29 ID:K9gIGIE/
「まあ、2人でやれば何とかなるんちゃう?」
私が無駄な考えをしている間『ひぃ、ふぅ、みぃ』と、
おばあちゃん子丸出しの数え方をしていたあいぼんが、顔をあげて満足げに微笑む。
そんなに微笑まれても電話の相手は減らないよ、とは言わない。
「それでも・・・・・・やっぱり多いなぁ」
「まあ・・・・・・でも、しゃあないやん。早いとこ紺野ちゃん見付けんと」
そうなのだ。
今は紺野ちゃんを見つけることが先決。
とりあえず電話してみて、紺野ちゃんがもうこっちに来てるのか確かめないと。
来てれば三人で戻り方を考えればよし、
来てなければとりあえず私たちだけでも考えるようにしなくちゃいけない。
「そだね。ドラクエだって、2人パーティーより3人パーティーの方が強いんだから」
「うちら三人が揃っても、商人・武闘家・遊び人にしかならん気がするけどな」
あいぼん・・・・・・それは言っちゃダメだって。
って、『遊び人』って・・・・・・私?
303 :
書いた人:03/07/19 16:30 ID:K9gIGIE/
その後『よく考えれば、シャッフルユニットは人数少ない方が売れてるじゃん』という、
してはいけない発想をしてしまった私は少しブルー。
あいぼんは私の突然のブルーの意味が分からなかったらしく、
「まあほら、うちら三人寄っても文殊にはならひんけど、じぞぽんくらいにはなるんちゃう?」
などと言うよく分からないフォローをしてくれた。
あいぼん、所詮あんたには
『絶対これ、鉛筆倒してコード進行決めたんじゃないの?』
ってくらいに適当な曲をあてがわれる余り者グループの気持ちは分からないのだ。
やっと今年は勝った、って思った途端に抱合せ販売だもんなぁ。
でもじぞぽんレベルの知恵って・・・・・・
ちょっぴり未来に帰るのを諦めた瞬間だった。
304 :
書いた人:03/07/19 16:32 ID:LPAYfxwU
電話帳をコピーして、さっさと用済みの図書館を後にする。
さらば図書館よ。
もう二度とお目にかかることは無いだろう。
「・・・・・・考えたんだけどさぁ、紺野ちゃんがもしこっちに来てれば、連絡くらいくれるんじゃないのかなぁ?」
あいぼんと肩を並べて図書館を出るとき、私は電話帳をコピーしながら考えたことを口にしてみた。
そうなのだ。
私とあいぼんが思いつくような方法なら、紺野ちゃんがやっていてもおかしくはない。
なぜなら紺野ちゃんの知的レベルがハーバード大学なら、私とあいぼんはハロモニ女子学園くらいだから。
しかしあのコントの学校名、もっとひねれよ、と思ったのは私だけじゃないはずだ。
305 :
書いた人:03/07/19 16:32 ID:LPAYfxwU
自動ドアをくぐりながら、あいぼんは幼い顔を横に向けると、心底哀れなものを見るような目付きをする。
「アホやなぁ、のの。
もしうちらよりずっと前に紺野ちゃんが来とったら、なんもわからん3年前のうちらと話してたことになんよ?
それに、モーニング娘。に入った後やったら、それこそ電話番号変えてもうたやん」
「あぁぁ、そうかぁ」
極めてお馬鹿さんな返事をしつつ、あいぼんの言うことに頷いた。
私たちが来るより前に紺野ちゃんが来てても、
モーニング娘。に入ってヲタ対策に電話番号を変えてしまってるから、電話帳や番号案内では辿り着けない。
それに番号を変える前じゃ、私たちがそもそもこっちの時代に来てないから、話しても成り立たない。
相方の『アホ』発言に怒ることも忘れて、私はだらしなく口をあけて感心していた。
306 :
書いた人:03/07/19 16:33 ID:LPAYfxwU
流石に携帯電話から北海道に電話する勇気は無いので、あいぼんを引き連れて私の家に帰還。
よく考えたらあいぼんを家に連れてくるのは、まだ片手で数えるくらいしかない・・・はずだ。
「あら〜、亜依ちゃん。こんにちは。
いつも希美がお世話になってますねぇ。
ホント、この娘だらしなくて甘えんぼだから、くっついてきて大変でしょう?」
玄関先で出迎えた母が、満面の笑みを浮かべてあいぼんを迎えてくれた。
ぐぅ・・・・・・なんで母親ってのは、こういう時に自分の娘の恥部を曝け出せるのだろうか。
しかも『だらしなくて甘えんぼ』とは・・・・・・二冠王だ。
実は泣き虫も入れて三冠王だということは、胸の内に秘めておこう。
「こんにちわぁ。うちもお世話になっとりますぅ」
あいぼんは世渡りが上手だと思う。
母親と何故か『10年前から知ってます』ってな感じで、普通に会話を成り立たせている。
しかも娘(私)についてのリップサービスも欠かさない。
まああの目をしている時は、大体心にも無いことを言ってる時だけど。
307 :
書いた人:03/07/19 16:35 ID:LPAYfxwU
母親の話が私の幼稚園時代の失敗談に及びそうになった時、私はあいぼんを急かして部屋に通した。
「マロン・・・・・・痩せとるな」
飼い主よりもラーメンを選ぶ、という偉業を達成した我が飼い犬を見て、あいぼんはポツリと洩らす。
その言葉、多分マロンも同じ状況ならあいぼんに言うよ、とは言わない。
まあ確かに今のマロンは『犬』だが、3年後は『マシュマロマン』に近い。
あいぼんがマロンと戯れている間、私は電話機を部屋の中央に持ってくる。
テーブルの上に電話機を置いて、気分はちょっぴり刑事ドラマだ。
『ラーメン犬』はこの間オソロで使っちゃったから、コードネームは今度は『焼きそば刑事』で行かせてもらおう。
「あ〜、そんじゃ始めようか、テフロン刑事」
「・・・・・・やっぱのの、アホやろ」
あいぼんの視線は、某アイドルグループグループのコンセプトが『半農半芸』だと初めて聞いた時のような、
驚きと・・・ちょっぴり呆れた感じだった。
308 :
書いた人:03/07/19 16:39 ID:LPAYfxwU
今日はここまでです。
ののさんシャッフルで輝きすぎ。
国民の休日は、一つくらい言えるようになりましょう。
>>299 レスありがとうございます。
結構初期の段階でばれてますw
私も文中に『まあ』を入れる癖があり、今回も・・・ありますね。
更新乙です。
のんつぁんかわいいッスねぇ。
更新乙です。加護は世渡りがうまくていいなぁ。自分も…
作者さん更新乙です。
うーん、面白い。とにかく面白いです。
@ノハ@ 更新乙、お茶どーぞ。
( *‘д‘)∬ あっ、「記憶の中の『あの人』」 読んだで、一気に読んだで。
( つ つ旦 ええな、引きこまれましたわ。こんなんが上にあったんやな
と__)_) もっと早く読んどけばよかったわー。
交信乙です。
作者さん、ほんと芸が細かいですね。
いろんなところに笑えるネタがあって面白いです。
314 :
ななし:03/07/20 13:47 ID:RJNjPlay
>>312 「記憶の中の『あの人』」ってどこで読めるんですか?
他にも作者さんの作品はあるのでしょうか?
316 :
314:03/07/20 14:50 ID:RJNjPlay
ああ恥ずかしい……
「記憶の中の『あの人』」。
確かに
>>312さんが、"上に"って書いてますね。
もちろん既に読んでました。
いや、自分も
>>315さんと同じく、
前スレの件を聞きたかったのです…
|ハ@
|д‘) うわっ、被ってもうた。
⊂
|
321 :
314:03/07/20 16:56 ID:n713zyRX
みなさま、ありがとうございます。
>>317 >>318 同じスレで、ex鯖に移ったあと掲載された作品ありませんでしたっけ?
調べようにもhtml化されないから調べられない・・・鬱
>>322 「ユキノヒ」 って作品があるよ
ログコンバーターでhtml化したのならあるけどいります?
>>324 すでに落としてた(w
こんろだで「小説のログ」って書いてあるの見てもしやと思ったんだよね。
>>324 |ハ@
|д‘) ありがと、DLしましたで。
⊂ 実のとこ、2chやりはじめたんは
| 4月からやから知らへんかったとか(w
へ,, へ `┳━━━━━━━━━━━━━━━┳ '(_)i'''i~~,,,,/
(_(__),..,..┴,...,....,....,..,,...,...,...,.,...,....,....,..,,...,...,...,..,...,...,...,...┴,,,,.. (_)|_______|
329 :
書いた人:03/07/21 21:56 ID:7DjXq40V
「むぅ・・・・・・」
「あかんなぁ・・・・・・」
電話を掛けだしてから一時間が過ぎた。
最初の頃こそ、『これがホントのミニモニテレホンだ』などという、
馬鹿丸出しの発言をしながらやっていたのだが、いい加減私もあいぼんも疲れてきた。
途中あいぼんと、
『テフロン加工なんて昔の発言覚えとるか!!そやなぁ・・・・・・ほんなら、うちのコードネームは「雲のジュウザ」でええわ』
『え〜?どっちかっつったら「山のフドウ」の方が近いじゃん』
などと言う、人生のオリコンチャートでトップ10入りを果たすようなくだらない理由で喧嘩をしたものの、それなりに私たちはしっかりやっていた。
それでも成果が伴わない仕事、って言うのは疲労が溜まる。
330 :
書いた人:03/07/21 21:57 ID:7DjXq40V
確かに『コンノアサミ』は今までに2名確認できた。
でも電話口に出たのは、一人は陽気なおばちゃん。
しかも運悪く、おばちゃんの知り合いに『辻』がいたらしく、私に話す隙も与えずに延々と喋る喋る。
いつの間にか、スーパーでのお買い物に付き合う約束が締結されていた。
私のほうも切れば良かったんだけど、何故かこういう時にだけ、私の中の優しさ機能が発動。
伊達にバファリン並みの優しさ配合率ではないのだ。
あいぼんには『もっと日常でその優しさを発揮せえ』と嫌味を言われたが。
ちなみにもう一人は高校生の口が悪い女。
『ハァ?あんたなんか知りませんけど?つーか、誰?』
と彼女が言ったのが我が相方の気に障ったらしく、こちらはあいぼんが凄まじい勢いで口喧嘩を始めてしまった。
しかしリアル関西弁での罵詈雑言は恐ろしい。
更に『いてまう』『風呂にしずめる』『潰す』・・・・・・
あんたの前職はナニワ金融道ですか、ってくらいの単語の嵐に、
私は『あいぼんとマジ喧嘩は絶対にやめよう』と心に誓った。
331 :
書いた人:03/07/21 21:58 ID:7DjXq40V
黒ペンの印で塗りつぶされた、まるで警察関係の情報公開文書のようになったコピーを前に、
私とあいぼんは今日何回目かの溜息をついた。
ちらほら残った電話に出ない家を除いて、ひとまず終了。
成果はゼロ。
「おかしぃなぁ・・・・・」
「なにがぁ?」
お母さんが差し入れてくれたジュースを両手で包んで飲みながら、あいぼんは眉を寄せた。
母ナイス!と思いつつ、後ろについてきた姉文子には閉口したが。
「だってな、紺野ちゃんがこっちに来とらんくても、12歳の紺野ちゃんっていうのは、この時代にちゃんと存在しとるわけやろ?
なら、電話に出ないわけないんちゃう?」
「元々紺野ちゃんの実家が、電話帳に載せるの断ってるのかもよ?」
「なら、もうこっちの手でやんのは不可能かぁ・・・・・・」
そう言いつつドーナツをつまむ。
332 :
書いた人:03/07/21 21:59 ID:7DjXq40V
「そんなら、うちらだけで帰る方法考えないかんなぁ・・・・・・」
「やっぱり、あの薬のせいなんだよねぇ」
問題を解決するにはまず原因から、これは基本
少なくとも私たちがあの薬を飲んだから、こんなことが起こった。
これは分かっている・・・・・・って言うか、これしか分かっていない。
「まこっちゃんに聞けば何かわかるかもしれないんだけどねぇ・・・」
相方に『アホ』呼ばわりされるの覚悟で口に出してみる。
でも今回は、あいぼんも必死に考えているみたいだった。
「せやけど、こっちにいるまこっちゃんは、薬のことなんか知らん方のまこっちゃんやもんなぁ・・・
つーか、まこっちゃんの実家って・・・・・・新潟?」
「確か、柏崎ってとこじゃない?」
ちなみにそれを覚えていたのは『まこっちゃんの出身地だから』ではなく、
『蓮池さんの本拠地だから』とは言えない。
333 :
書いた人:03/07/21 22:00 ID:7DjXq40V
あいぼんも記憶の奥底にあったその地名を思い出したらしく、ほっそい目を少しだけ見広げた。
「ああ、それや。確か拉致されたり、10年くらい小学生が監禁されてたり、ってとこやんな?
その上あんな危険な薬のませる奴まで出るなんて・・・・・・物騒なとこやなぁ」
「それは・・・他の柏崎市民の人に失礼でしょ」
とりあえずあの薬を飲ませることが物騒だ、って所には反論はしない。事実だから。
「それでも、この時代のまこっちゃんに会ってみるのも、少しは意味あるんじゃない?
ちょっとは手掛かり掴めるかもよ?」
「他の人に相談してみる、って手もあるんやけどなぁ・・・・・・信じひんもんなぁ」
あいぼんの言葉に私は大きく頷いた。
そんなこと言った日には、間違いなく病院に送られてしまう。
334 :
書いた人:03/07/21 22:01 ID:7DjXq40V
「・・・・・・でもなぁ、まこっちゃんの家に行くんも、当分先にならんと無理ちゃうん?」
更にドーナツをつまみながら、あいぼんは小首を傾げる。
その姿はまさにロリコン界のペレ。
なんつーか・・・・・・『神』って感じだ。
生憎私にそっちの気が無いので、あいぼんのその姿を見ても何も感じないんだけど。
私はバッグから、マネージャーさんに貰ったスケジュール表を引っ張り出した。
飴やらガムの包み紙やら、いろいろ飛び出してきたが気にしない。
あいぼんも私のバッグの中が散らかってることを分かっているのか、気にもしなかった。
確かにあいぼんの言う通り、スケジュール表はテレビ欄のようにぎっしりと詰まっている。
まさに法律スレスレ。
150年程前までアメリカ南部でひたすら綿摘みをさせられていた、色黒の人たちの気分だ。
「そだねぇ・・・・・これじゃ、当分そんなヒマないよ」
「ほんなら、当分はこのまんまやなぁ・・・」
顔を見合わせて溜息をつくと、ちょっぴり涙が出てきそうだった。
335 :
書いた人:03/07/21 22:07 ID:7DjXq40V
今日はここまでです。
比喩がかなりコアになってしまい、分からない方も居られるかもしれませんが、
「雲のジュウザ」と「山のフドウ」はググれば出てきます。
ちなみに柏崎市に何の恨みもありませぬので、ご了承を。
>>309 いつもあれくらいの露出が欲しいのですが。
やきそば、焼きすぎ、と毎年この時期はののさんの為にありますなぁ。
>>310 実際は結構自分のやりたいことをやれないタイプ、にも見れます。
つーか、どうされたのでしょうか。
>>311 ありがとうございます。
やっぱりシリアスよりこちらの方が書きやすいですな。
>>312 読んで下さってありがとうございます。
>>313 バカな知識ばかりで困ります。
>>314>>315 見つかってよかったですね。自分でも久々に見ました。
>>317 どうやって見つけたのですか?
>>318-319 流れに萌え死にました。
>>322 よく覚えてましたねぇ。
>>323 持ってらっしゃった事に驚きました。
作者さん更新乙です。
うーん。ホントに面白いです。
このままいつまでも続けて
楽しませてほしいと本気で思っていますよ。
|ハ@ 更新乙!北海道へのつなぎは取れませんでしたか〜
|д‘) これからどーなるのかさっぱりですわ
⊂ それから「雲のジュウザ」は常識ちゃう?多分、ウタダさんも知ってはるで
| あと、うち、やっぱり被ってへんわ。そうや、被ってへん・・・ゴラァ、どこ見とんねん!
あいぼん風呂に沈めるはまずいよあいぼん
保 田
全 快
340 :
書いた人:03/07/24 18:17 ID:11LpPtOs
――――
『今のところはどうにもならない』
一見すれば絶望的な言葉だけど、割り切ってしまえば結構それなりに楽しめるのかもしれない。
私とあいぼんは、とりあえず3年前の世界で普通に過ごすことにした。
誰かに相談するわけにもいかない。
紺野ちゃんは今のところ見つからない。
私たちが飲んだ薬の中身がなんなのか、よく分からない。
『ダメだこりゃ』な状況なんだけど、実際ダメってことが明白だから諦めもつく。
とりあえず柏崎に行ける時間ができるまでは、しっかりこっちの生活をやっておく。
あいぼんと約束した。
それともう一つ。
なるべく余計なことはしないこと。
私もあいぼんも3年前どこでなにをやったか、なんてこと覚えていないから、
完璧に過去を再現することは不可能だ。
だから・・・・・・余計なことはせず、自然なままの行動をとればいいんじゃないか。
これが結論だった。
341 :
書いた人:03/07/24 18:19 ID:11LpPtOs
――――
「ののさぁ、なんだかモーニング娘。入って変わったよね」
「へ?何が?」
初めてのハロモニ収録の日の楽屋。
少し早めについた私を迎えたのは、時間間隔が麻痺してるんじゃないか、
ってくらいに早く来ているよっすぃ〜の悲しそうな眼差しだった。
3年後の自分が今とは比べ物にならないような、
『生命の神秘』とも言うべき変貌を遂げていることを知らないとは、なんて幸せなのだろう。
「何て言うのかなぁ・・・・・・いい意味で、緊張感無いよね。ののも、あいぼんも。
すぐに現場に打ち解けていけるじゃん・・・・・・羨ましいよ」
ここ最近、というか2年ほどまともに見たことの無い、よっすぃ〜の真剣な表情。
打ち解けすぎて、現場でもジャージで平気な3年後の彼女に、この初々しさを分けてあげたい。
「そっかなぁ・・・?別に私も、あいぼ・・・・・・亜依ちゃんも、あんまり意識してないよ」
こう言うしかないじゃない。
まさか『実は3年間、アイドルやってるからね。エヘ』なんて言えないもん。
342 :
書いた人:03/07/24 18:20 ID:11LpPtOs
でもそんな答えでよっすぃ〜が納得するはずも無い。
『なんでなんでなんでなんで・・・・・・』
個人的には何故何故どうして言っていいのは『それ行けノンタック』までが限界なので、
はっきり言えばうざい。
弱ったなぁ・・・・・・
聞いてくるよっすぃ〜は真剣そのもの。
でも『こうすれば甦ると思った』とか言って、
ホテルの一室でミイラを作っちゃう団体みたいなストイックな真剣さが、ちょっと怖い。
ホントのこと言うわけにいかないし・・・・・・
言った所で信じてくれるはずが無いし・・・・・・
「ねぇ、のの・・・・・・私ってさぁ、モーニング娘。でやっていけるのかなぁ?」
「それは・・・・・・」
と、私を救うドアの音がする。
343 :
書いた人:03/07/24 18:21 ID:11LpPtOs
「おはよございまぁす」
朝から気の抜けた声で挨拶をしたあいぼんは、私とよっすぃ〜の姿を見て不思議な顔をした。
少しは察してくれたっていいのになぁ・・・
「何やっとるの?2人とも」
「あ、あいぼん・・・・・・教えてよ。
どうしてののやあいぼんは、そんなに上手く溶け込めてるの?」
「?」
あいぼんはその問いに困った、というよりは意味が分からないようだった。
小首を傾げて、詰め寄ってくるよっすぃ〜を見上げる。
「私や梨華ちゃん、全然上手くトークできないし、歌や踊りだって2人とも手馴れてるじゃん。
合宿のときはそんなこと無かったのに、どうしてこの1週間くらいで、こんなに変わったの?」
よっすぃ〜の疑問は適切かつ正確だった。
確かに私とあいぼんが3年前に戻ってきて一週間ちょっと。
変わってないはずが無いし、別人と言っていい位の変化が生じているはずだ。
344 :
書いた人:03/07/24 18:23 ID:334aSC5A
「何言っとるの?よっすい〜。
ののもうちも、そんな変わってへんし・・・」
あいぼんは顔色一つ変えずに・・・むしろ、さっきの『?』という表情のまま、考え込んでいた。
このまま誤魔化しつづけるつもりなのかな?
詰問を続けるよっすぃ〜に、終始あいぼんはとぼけ続けていた。
最後には、『何言うとるのかわからへん』と逆切れまで見せて。
あいぼん、あんた・・・・・・やるね。
スタジオに向かう途中、あいぼんに駆け寄って耳打ちをする。
「あいぼん、さっきの誤魔化しかた、凄かったね。
やっぱりとぼけ続けないとダメだよね」
あいぼんは立ち止まると、私のほうに向き直った。
345 :
書いた人:03/07/24 18:24 ID:334aSC5A
あいぼんは眉を寄せて、細い目をますます細くしていて。
「のの・・・・・・何言っとるん?
誤魔化したって言うか、ほんまに分からんかっただけやもん。
それに・・・・・・」
「それに?」
「いつからのの、うちのこと『あいぼん』って呼ぶようになったん?」
「え・・・・・・!?」
そう言って踵を返して、あいぼんはスタジオに向かっていった。
私はただ呆然と、彼女の後姿を見ていた。
何が・・・・・・どうなっているんだろう?
346 :
書いた人:03/07/24 18:27 ID:334aSC5A
今日はここまで。
諸事情により、少し短めで申し訳なく。
こんこんさんが表紙で、ヤングジャンプ衝動買い。
>>336 あと2ヶ月くらい、かな?と思います。
>>337 ウタダさんより数年上の私の周りには、
「雲のジュウザ」を知らない人が半分いるのです。
>>338 的確に意味が分かっていただけたようで、ありがとうございます。
>>339 個人的には『全開』でも(・∀・)イイ!!かと。保全乙です。
更新乙です
ん〜何が起こったんだろう・・・つづきに期待してます
うわぁぁぁぁぁ!まじやばいです、めちゃくちゃ面白いです!
むちゃくちゃ続きが気になります!!!待ってます!!!
朝からこんなもん読んでとっても気分がいいよ。
350 :
書いた人:03/07/25 13:03 ID:ip3mbxOH
「はぁ〜い、それじゃ今回はですね、モーニング娘。に新たに入る、4人が初登場です!」
『絶対無理してテンション上げてるでしょ?』と言いたくなるのをぐっとこらえて、中澤さんの司会を見上げる。
何だかんだ言って、モーニング娘。抜けた後も中澤さんはハロモニ出てたから、あんまり違和感が無い。
台本にある通り、自己紹介では名前と出身地、そして目標を一人ずつ言いなさい、か・・・・・・
一番右側に並んだ私は、左隣の同期の面々を見上げる。
よっすぃ〜、そんなにがちがちになってて、ホントにちゃんと言えるのかな?
梨華ちゃん、下向きっぱなしでそのままで自己紹介するつもりなんだろうか?
そしてあいぼん・・・・・・
あいぼんはじっと前を向いたまま、どこか毅然とした空気を出している。
こういう所は、今も昔もあんまり変わらない。
351 :
書いた人:03/07/25 13:04 ID:ip3mbxOH
「はい、それじゃ順番に自己紹介!」
中澤さんに促されて、よっすぃ〜が一歩前に出る。
おいおい・・・・・・右足と右手が同時に出てるんだけど。
まるで腹話術の人形になったみたい。
「埼玉県出身の吉澤ひとみです。先輩たちに早く追いつけるように、頑張ります!」
・・・・・・というような趣旨のことを、よっすぃ〜は言った。
正確には『サイタマケンシュッシンノ・・・・・・』って感じで、
海の向こうの国からきた方のような話し方だったんだけど。
・・・・・・あ、やぐっさん、下向いて、肩プルプルさせてる。
352 :
書いた人:03/07/25 13:05 ID:ip3mbxOH
よっすぃ〜はそれだけ言いきって、
深々と、まるで叙勲式の出席者みたいに一礼すると、一歩下がる。
一日のエネルギーをここで全て使い切ったんじゃないだろうか。
それを見て、梨華ちゃんがゆっくりと前に出る。
うわぁ・・・・・・負のオーラが出まくってるんだけど。
変なスタンドでも背負ってるんじゃないんだろうか。
ちなみに3年後に背負っているスタンドは『ザ・フール(愚者)』だと思う。
「神奈川県出身の・・・・・・・・・石川梨華です。目標は、明るくやっていくことです」
『できねーよ』と、恐らくこのスタジオにいる全ての人間が心の中でつっこみを入れる。
明るくなることは明るくなるんだけど、変な方向に行ったのはやっぱり天性なんだろうなぁ。
個人的には明るいのは、あいぼんの生え際で充分だ。
・・・・・・しかし今の自己紹介、ちゃんとマイクで拾えたのかな?
353 :
書いた人:03/07/25 13:05 ID:ip3mbxOH
「奈良県出身の、加護亜依です!
目標は、先輩のみんなみたいにかっこよく歌って踊れるようになることです!」
収録用の関西弁を抜かした話し方で、あいぼんはパーフェクトな発言。
でもいつもは完璧に関西弁を抜かすのに、今日はなんだか、少しだけイントネーションが残ってる。
もしかして今日がハロモニ初日だ、ってことまで見越して、わざとこの喋りなのだろうか。
後ろであいぼんの師匠のごっちんが、ちょっぴり嬉しそうに微笑んでいた。
他の先輩たちも、『やるな』って感じの笑みを浮かべてる。
「のの、あんたの番やで」
あいぼんが前を向いたまま、小声で囁く。
やばっ・・・・・・目標なんて考えて無いや。
354 :
書いた人:03/07/25 13:07 ID:8ZKk45ZW
私は困り顔を笑顔で誤魔化しながら、前へ出る。
どうしよう・・・・・・
「東京都出身の、辻希美です。目標は・・・・・・・えーと・・・・・・・」
弱ったなぁ・・・・・・ホントに考えてなかった。
モニターをチラッと除くと、飯田さんが最終順位でゴールするマラソンランナーを迎えるような鎮痛な顔つき。
あぁぁ・・・・・・そんな顔しないでって。
「あ〜、辻。『こういうところに気を付けたい』とかでもええよ」
中澤さんが苦笑いしながら助け舟を出してくれた。
え〜!?でも・・・・・・気を付けたいこと?
未来から来てるってことにばれないように・・・・・・って言えないもんなぁ。
なんだろう、なんだろう・・・・・・なんでだろうに似てるね、このフレーズ。
いつかつんくさん、『なんだろう』とか言うパクリソング作るんじゃないでしょうね。
って・・・・・・どうでもいいよ、こんなこと。
しょうがないなぁ・・・・・・まあ、この時点で一番気を付けたいことって、これかな?
355 :
書いた人:03/07/25 13:09 ID:8ZKk45ZW
「え、と・・・・・・太らないように・・・・・・
収録中にホックが『ポン』っていったりしないように、気をつけます」
言った瞬間、スタジオの空気が凍りついた。
え!?なんで?
うわぁ・・・・・・カメラさんまで顔引きつってるんだけど。
後ろをチラッと振り返ると、やぐっさんは下を向いて『うぷぷぷ』と今度は笑いを漏らしている。
なんでだろ?
中澤さんがそっぽを向きながらも、チラッと見る方向に・・・・・・
あ。
天使のような笑顔でこっちを見ている安倍さんがいた。
・・・・・・すまん、この時代の私。
なんだかとんでもない遺恨をこの時代に残してしまったようだ。
356 :
書いた人:03/07/25 13:10 ID:8ZKk45ZW
結局微妙な空気のまま、収録は続行されてしまった。
これをこのまま放映するのだろうか。
でもさすがに新メンの自己紹介切れないからなぁ・・・・・・
まあ常日頃からダルダルの番組に、少しスパイスを効かせたと思えば可愛いものだ。
ちょっぴり効かせすぎちゃったけどさ。
番組の方はなんだかこの間の収録でも見た覚えがある、
三十路を大きくフライングした女性ゲストが一人で喋りまくっていた。
貴理子さん、あんた全然変わってないのはある意味凄いよ。
私の隣ではあいぼんが、何か私に言いたさそうにしたままだったのが少し気になったけど。
357 :
書いた人:03/07/25 13:10 ID:8ZKk45ZW
収録を終えて、私たち子供組は解散になった。
あの異常な事務所も法律には刃向かえないらしい・・・・・・脱税はするけど。
安倍さんの100万ドルの笑顔が死ぬほど気になるんだけど、まあ今日はいいか。
『後でできることは後で』が、私のモットーだもん。
「のの!!」
通用門に向かって廊下を歩く私を、後ろからあいぼんが呼び止めた。
いつもは呼び止めたら私が行くのを待ってるのに、今日はこっちに向かって全力疾走。
いつか『息をするのもめんどくせえ』とか言いそうなあいぼんにしては、珍しい光景だ。
そんなに息せき切って・・・・・・運動できないんだから無理しない方が良いよ。
私に追いつくと、あいぼんは膝に手をついてしばらく息を整える。
358 :
書いた人:03/07/25 13:12 ID:uovi+zao
「どうしたの?あいぼ・・・・・・亜依ちゃん?」
朝あいぼんと呼んで怒られたので、とりあえず昔の呼び方で言ってみる。
それを聞いて、あいぼんは顔を上げると大きく首を横に振った。
つぶらな瞳が何かを訴えようとしてるけど、彼女の肺がそれを許してくれないらしい。
まだ赤血球が酸素を要求してるんだね。
「ちゃう・・・・・・」
「え?何が?」
「あのな・・・・・・呼び方、あいぼんでええんよ。
朝、うち変なこと言うとったやろ?」
『あいぼん』と呼ばれて不審な顔をしたことを言っているんだろう。
けして『いつもあいぼんは変なこと言ってるじゃん』とは言ってはいけない。
「うちの・・・・・・3年後のうちの意識が、朝はその意識が無かったんや」
話してもらったところで、やっぱり何を言っているかは分からなかった。
359 :
書いた人:03/07/25 13:16 ID:uovi+zao
今日はここまでです。
明日は更新できませんので、あしからず。
実際のハロモニとは多少違いますが、ご勘弁を。
>>347 解決までもう少し掛かります。次回は少し暗めかも。
>>348 ありがとうございます。落ち着いてください。
>>349 まだ夢の中でした、その時間。
更新乙です。これから先どうなるんでしょう。
交信乙です。
またも急展開でほんと楽しみです。
安倍さんが太っていた時期のことを話せるように
なったのが最近うれしかったことのひとつ
作者さん更新乙です。
うーん。前回更新分とまとめて読んじゃいました。
大変なことになってきましたね、これは。
続きがとても楽しみです。
更新乙です。
そしてオレは今日も朝読む。
365 :
書いた人:03/07/27 17:55 ID:5QjdG1GU
――――
「・・・・・・・・・じゃあ、ちょっとだけだけど、戻ったってこと?」
局内の喫茶店。
時間が時間だから流石に2人で外に出て行くわけもいかず、
私はあいぼんの手を引っ張って無理やりここに連れてきた。
あいぼんは何とか自分に起こったことを伝えようとしてるんだけど、
何を言ってるかほとんど理解できない。
いつもは立場が逆なのになぁ・・・
その意外さと少しの優越感に、笑みを浮かべながら、私は局の長い長い廊下を早足で歩いた。
そして今、私の目の前には少し落ち着きを取り戻した相棒がいるってわけ。
366 :
書いた人:03/07/27 17:56 ID:5QjdG1GU
「ちゃう・・・・・・戻れたって言うても、別に3年後にうちが戻ったわけやないし。
ただ3年前の・・・・・・この時代のうちに戻ってた、ってだけ」
聞いていて頭痛がしてくるほど、あいぼんの話は荒唐無稽で意味が分からなかった。
それはあいぼんも同じなのかな?
眉を寄せたまま、どうやったら私に上手く伝えられるかを必死で考えているみたいだった。
「ってことは、今朝からさっきまでは、この時代のあいぼんだった、ってことだよね?
じゃあその間、あいぼんは・・・えっと・・・・・・3年後のあいぼんはどうなってたの?」
「分からひん。自分の言ったこととかやったことは覚えとるんけど、気がついたらもう収録途中だったし」
「はぁ・・・・・・なるほど」
多分私以外の人間、こんな話絶対に信じないだろう。
367 :
書いた人:03/07/27 17:57 ID:5QjdG1GU
あいぼんの言うことに心当たりが無いわけじゃない。
私がこっちにきた最初の日の朝、私は『ボーっとしている間に』楽屋に来ていた。
集合時間も集合場所も、けして間違えずに。
ってことは、多分『こっちの時代の』私が何か影響をもたらしたんだとしか思えない。
その時はメインが3年後の私だっただけで、
もしかしたら意識のメインが3年前の私になることもありうる、ってことだ。
「そんなに悩んだら、髪の毛に悪いよ」とは言わないが、あいぼんの顔は今まで見たことが無いくらい険しい。
「あれ?でもさ、どうしてあいぼんは、また3年後のあいぼんに戻れたのかな?」
「・・・・・・さぁ・・・・・・でも、ののが『ポンっていわないように・・・』とか言うてたのがきっかけかもしれん。
多分そのことは3年後のうちしか知らんから、それがきっかけで戻れた、としか思えんけど・・・」
慎重に言葉を選びながら、あいぼんは話を続ける。
368 :
書いた人:03/07/27 17:58 ID:5QjdG1GU
「多分・・・・・・そーいうきっかけがあれば、戻れるんやと思う。
でもな、それはこの時代のうちに戻るんも同じことやないかな?
うちらこっちの時代におるから、どうしたって『3年前の加護亜依』が出てくるきっかけの方が周りには多い」
落ち着くためのとっくに飲み終えたオレンジジュースのストローを、意味もなくあいぼんは手で弄ぶ。
こっちの時代にいればいるほど、私たちは3年前の私たちになって行っちゃうってことか。
またどうすることもできない要素が増えて、私は思わず下を向いてしまう。
どうしよう。
私たちはこのままずっと3年後に戻れなくなって、そしていつか、こっちの自分になっちゃうんだろうか。
「でもな・・・・・・」
あいぼんの声に、私はゆっくりと顔を上げた。
369 :
書いた人:03/07/27 17:59 ID:5QjdG1GU
そこにあったのは、やるせない感じだけど、それでも努めて明るくしようと頑張っているあいぼんの姿だった。
手を大きく広げたり、インチキアメリカ人みたいなジェスチャーを交えながら、あいぼんは笑って続ける。
「うちにはののがおるし、ののにはうちがおるから。
がんばって、未来の話ばっかしとけば、あんなガキんちょのうちらなんか出てこれへんって!」
「そう・・・・・・かな?」
「そうやって!!
実際うち、ののがあんなしょーもない話してくれたから、戻ってこれたんよ!」
「・・・・・・そう、だよね!!!」
370 :
書いた人:03/07/27 18:00 ID:5QjdG1GU
私には分かっていた。
あいぼんは私が落ち込まないように、必死で明るく振舞っていることを。
あいぼんの言ってることは確かにあってるけど、どうしたって3年前の『刺激』の方が多いってことも。
それでも私は、あいぼんに頷いた。
こんなにも私のことを考えていてくれるから。
紺野ちゃんのことがそうなると心配だけど・・・・・・
だからこそ、今私たちが3年後の意識をなくすわけにいかない。
この日から私とあいぼんの間に、もう一つ約束ができた。
私とあいぼん、どっちでもいいから早く起きた方が電話する。
そして未来のことをしゃべりまくる。
『私たち2人が顔を合わせない時が一番危ない』というのがその根拠。
371 :
書いた人:03/07/27 18:00 ID:5QjdG1GU
――――――
【はい・・・・・・あ、あいぼん?おはよう。
エヘへ・・・・・・そうだね。私があいぼん、って言ってるうちは、とりあえず大丈夫だよね?】
――――――
372 :
書いた人:03/07/27 18:01 ID:5QjdG1GU
――――――
【もしもし?あ、あいぼん起きた?
・・・・・・うぅ・・・・・・そうだ!ピース歌える?そう、ピース!・・・・・・・・・思い出した?
・・・・・・やっぱあいぼんの方が先にこっちに来てたから、戻りやすいのかな?
・・・・・・・・・・・・ううん、気にしなくていいよ。それじゃ、また後でね】
――――――
373 :
書いた人:03/07/27 18:02 ID:5QjdG1GU
――――――
【はぃ、もしもし?あれぇ、亜依ちゃん、どうしたの?
・・・・・・・・・なぁに?ミニモニって?
ミニモニ・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん、はい、大丈夫だよ。
危なかったぁ・・・これで大丈夫・・・・・・かな?】
――――――
374 :
書いた人:03/07/27 18:03 ID:5QjdG1GU
――――――
【あ、もしもし?おはよう。
え?なんでこんな朝から電話したかって?
・・・・・・・・・・・・あれ?なんでだろう?
うん、大丈夫だよ、ごめんね・・・朝から、それじゃまたねぇ】
――――――
375 :
書いた人:03/07/27 18:04 ID:5QjdG1GU
ピッ
電話をきって、しばらくかんがえた。
なんで亜依ちゃんに電話したんだろう?
まあいいか。
「希美〜!!朝ご飯よ〜!!」
「はぁ〜い!!」
おかあさんにいつもみたいに大声で返事をして、すぐに着がえる。
今日もおしごと、しっかりがんばろっと!
376 :
書いた人:03/07/27 18:06 ID:5QjdG1GU
今日はここまでです。
余震起こりすぎて鬱。
>>360 ありがとうございます。楽しんで頂ければ幸いです。
>>361 急展開させつづけないと話が書けない私。
>>362 過去をしっかり振り返られるほど、大人になったんでしょうね。
>>363 続きです。楽しんでいただけたでしょうか?
>>362 今回は起きてましたよ・・・・・・地震で。
更新乙です
じわじわと切なさが込み上げてくる・・・・
もう何も言うまい、、、ただただ次回に期待sage
ううー。どうなっちゃうんだぁー!!
作者さん更新乙です。
うーん。怖い。
この続きを読むのが地震と同じくらい怖い。
書いた人さん乙です。
ずっとROMってただけですが、今回はせつなすぎてドキドキもんです。
地震の方、気を付けて下さいね。
次回、楽しみにしてます。
@ノハ@ <更新乙!ちょっと来ーへん間に・・・
ほんま、もうどうなんねんどうなんねんですわー。
あと地震、きーつけてなー
382 :
書いた人:03/07/28 22:03 ID:IdlvmprB
モーニング娘。に入ったのが4月の12日。
もうすぐ一か月になるけど、あっという間だった。
気がついたら歌のレコーディングも、プロモのさつえいも終わってた、って感じ。
今日は『うたばん』の、初めての出演の日。
「あれま!ののぉ〜、まぁ〜た前髪分けちゃってる。
こないだまでは、ちゃあんと垂らしてたのに・・・・・・分けない方がいいべ」
「あぅ・・・・・・」
楽屋でなっちゃんにつかまって、前がみをくしでもどされる。
分けた方がイイのになぁ・・・・・・
カガミをじっと見ながら、なっちゃんはお人形遊びをするみたいにていねいにもどしていく。
「ほぉら!ちゃんと鏡見てごらん!こっちの方が良いっしょ!?」
とっても満足そうななっちゃん。
でもなぁ・・・・・・やっぱり、分けた方がイイ。
前がみを全部ストレートに下ろすと、なんだかすっごく子どもっぽくなるからイヤだ。
383 :
書いた人:03/07/28 22:04 ID:IdlvmprB
なっちゃんが行ってしまったすきに、いつもみたいにかみをもどしてしまった。
うん、やっぱりこっちのほうが大人っぽく見えるよね。
小声でよし、とつぶやくと、カガミごしに亜依ちゃんと目が合った。
「のの、なんでそっちの方がイイん?」
亜依ちゃんはさっきのを見てたようで、私のところにツツツ・・・・・・とよって来る。
「だってさぁ・・・・・・みぃんな大人なのに、
なんだか私だけ子ども子どもしてるの、いやなんだもん」
あ
言った後に失敗に気付く。
亜依ちゃんだっておんなじことを気にしてるんだ、ってことわすれてた。
大体亜依ちゃんの方が私より少しだけ年下だ。
384 :
書いた人:03/07/28 22:05 ID:IdlvmprB
すぐに亜依ちゃんがしょんぼりした顔になる。
「そんなん言うたら、ののよりうちのほうが子どもっぽいやん」
「そんなことないもん!
亜依ちゃんしっかりしてるし、ちゃんと思ったこと言えるし・・・・・・」
これはホントに思ってること。
別に亜依ちゃんをなぐさめたくって言ってるわけじゃない。
それでも亜依ちゃんは、その気持ちに気付いてくれない。
「のののウソつき!」
「ホントに思ってるもん!」
「あ〜、ほら。のんちゃんもあいぼんも止めなさい、ね」
私たちが大声を出しているのに気づいたのか、飯田さんが止めに入ってくれた。
亜依ちゃんとこんなケンカをするのはいつもだけど、いっつもすぐに仲直りできる。
385 :
書いた人:03/07/28 22:06 ID:IdlvmprB
「あんたたちもねぇ〜、入ってしばらくはなんだか落ち着いた感じだったのに。
やっぱりそーいうケンカするんだねぇ」
飯田さんはうんうん、とうなずいて一人でなっとくしてる。
そうなのかなぁ?
私も亜依ちゃんも、合宿の時からこんなんだったのに。
そう言えば私はずっと前がみ分けてるのに、なっちゃんは『この間までは垂らしてた』と言っていた。
なんでだろう?
よく分からない。
386 :
書いた人:03/07/28 22:07 ID:IdlvmprB
――――――――
モーニング娘。に入って、いくつも番組に出させてもらったけど、
やっぱり初めての番組は上がる。
あっという間に収録は終わってしまった。
ほとんどまともにしゃべれなかったなぁ・・・・・・
でもごっちんが怒ってなくてよかった。
目の前でふうせんがどんどんふくらむから、ついつい手を伸ばしちゃったけど。
終わった後、『まあ、あれはあれで面白かったからいいよ』と言ってた。
なかざーさんには『もっと自分から前出て行かんとダメ』と怒られてしまった。
でも、亜依ちゃんと私がすっごく落ち込んじゃったから、すぐに笑顔にもどってくれた。
387 :
書いた人:03/07/28 22:09 ID:IdlvmprB
帰り道、亜依ちゃんにバイバイして電車を乗りかえる。
一人で電車に乗って、私はちょっと考えごと。
中澤さんはお説教の最後に言っていた。
『辻も加護も、ついこないだまでもっと前出て喋れてたのに、どうした?』
そうだったっけ?
ついこの間のことなのに、ほとんど覚えてない。
収録の前になっちゃんが言ってた、『この間までは前髪垂らしてたのに』って言葉。
それと飯田さんが言ってた、『あんまりケンカしなかった』ってことも。
やっぱり今まで、私はボーっとしすぎてたんだなぁ。反省。
もうすぐミュージックステーションにも出る。
今度は生だから、もっとしっかりしなくちゃいけない。
亜依ちゃんも私も、子どもだからって甘えてばっかりいられないんだから。
よしッ!
と気合を入れたら、
考えるのに必死で降りる駅を乗りすごしてしまったことに気付いた。
388 :
書いた人:03/07/28 22:13 ID:IdlvmprB
今日はここまでです。
小説書きにできるのは、まあいつも通りに更新することくらいかな、と。
ホントならもう少し面白い文章とかできればよいのですが、
シーンがシーンですので、申し訳なく。
>>377 お早いレスありがとうございます。もう少しこんなんです。
>>378 どうなるんでしょうね?
>>379 もうちょっとコミカルにもいけそうだったんですが、シリアスにしてみました。
>>380 ありがとうございます。今回都合上、短くて申し訳ありません。
>>381 あいぼんさん、頭しか見えないんですが。コンサ、羨ましいです。
更新乙です。毎回同じ感想しか述べられないので申し訳なんですが、次はどうなるんだろう…。あと飼育の短編読みましたよ。
次回、伝説のMステですか
大変な中、更新お疲れ様です。
一体どうなっていくのか、期待と不安(?)で一杯ですw
つか、3年前のあいぼんに萌えッ!
393 :
書いた人:03/07/29 20:35 ID:uCY9n1Uj
5月の19日
今日は初めてミュージックステーションに出る日、そしてテレビで市井さんと歌う最後の日。
生放送かぁ・・・
楽屋でちっちゃくなっている新メンバーの私たちに、なかざーさんがにやっと笑いかける。
「ええか?あんたら。
自己紹介はさせてもらえるけどそれだけで満足せんで、しっかり遠慮せんと前出なダメやで」
「「「「はい・・・・・・」」」」
上がってるから、4人とも声が小さめ。
特にリカちゃんなんかメイクの上からでも、顔色が黒いのを通りすぎて危ない色になってるのが分かる。
このままテレビに映って、大丈夫なのかなぁ?
「あ〜、それと、辻」
394 :
書いた人:03/07/29 20:36 ID:uCY9n1Uj
リカちゃんの顔に夢中になってた私に、なかざーさんが少しきつめに言い足す。
「あんた、こないだのハロモニみたいに、固まったりせんといてな。
今日は生やから、修正きかんで」
ハロモニの私・・・・・・止まってたっけ?
ハロモニをとったときの記憶があんまりない。
でも、この間あいぼんといっしょにテレビでオンエアを見たとき、
確かに私のところで自己紹介が止まっちゃってた。
あいぼんは覚えてない私にビックリしてたけど、『太らないように』なんて言ったっけか?
よっぽど上がってたんだなぁ、私って。
むぅ・・・・・・今度はちゃんとしないとね。
395 :
書いた人:03/07/29 20:36 ID:uCY9n1Uj
スタジオうらに集められて、私たちはひたすら待つ。
もうドラえもん終わっちゃったよね・・・とか、
バカなことを考えながら亜依ちゃんとさわいでいたら、やっぱりなかざーさんに怒られた。
「ほら、のの、静かにせんとダメやん」
「・・・・・・亜依ちゃんだってさわいでたのに・・・」
「とにかく、しっ!・・・・・・ね」
人さし指をくちびるの前に立てる亜依ちゃんに、私はくちびるを突き出してちょっとだけこうぎした。
ぶたいうらのなんだか冷たい空気の中で、私たちはじっと待っていた。
396 :
書いた人:03/07/29 20:37 ID:uCY9n1Uj
トントン・・・
だれかがかたをたたくのに気づく。
またあいぼんかな?
もう、合宿の時から甘えんぼさんなんだから・・・
そっちの方を見上げると、なっちゃんがいつの間にか立っている。
なっちゃんはじっと前を向いたまま、私のほうに目をやらずにつぶやいた。
「のの、そのままね」
「?」
わけが分からないので、そのまま首をかしげていると、
なっちゃんはそんなのお構いなしで続ける。
397 :
書いた人:03/07/29 20:39 ID:oydB/3yF
「あのさ・・・・・・のの、今日も前がみ分けてたよね」
ああ、このことか。
なっちゃんは下ろした方がイイ、ってずっと言ってるのに、今日も私は前がみを分けてた。
今はけっこん式のドレスを着てるから、かみを上げちゃってるけど。
ずっと言われてたのにやめないのが、なっちゃんいやなのかな?
「あの・・・・・・ごめんなさい」
「ううん・・・別にいいの、そのことは」
そう言われてホッとする。
でも、それじゃなんなんだろ?
398 :
書いた人:03/07/29 20:40 ID:oydB/3yF
なっちゃんはあい変らず前を向いたままで、私のほうに目も向けない。
それにつられて、私もなっちゃんと並んだまま、同じ方を見ていた。
「あのね、それでなっちが言いたいのはさ・・・・・のの、この前までは前髪下ろしてたっしょ?」
「え、そう・・・・・かな?」
確かこの間も、なっちゃんはそんなことを言った。
でも私にはそんな覚えが無い。
自分は前がみ分けた方が大人っぽく見えて好きだから、絶対下ろしたりしないもん。
「のの・・・・・・ホントに覚えてないの?」
「うん」
初めてなっちゃんがこっちを向いて、少しきつめに問いつめてくる。
強く言われても、おバカさんに思われるかもしれないけど、しょうがない。
だってホントに覚えてないんだもん。
399 :
書いた人:03/07/29 20:41 ID:oydB/3yF
なっちゃんは私の目をじっと見て、なんだか心の中のイケナイ部分を探しているみたいだった。
ちょっと怖かったけど、なんだか目をそらせなくって、私もなっちゃんを見つめる。
少しためらった後、なっちゃんがうすいくちびるを少し開く。
「あのね、のの。
もしかしたら・・・ホントにもしかしたらだけど、ののと・・・・・・加護、どこかで茶色い瓶の・・・」
「は〜い!!!あと1分でカメラがパンして回りますんで、皆さん準備お願いしまーす!!」
なっちゃんの最後の言葉は、ADさんの大声で聞こえなかった。
すぐに前から決めてあった並び順になる。
よし、今日はぐずぐずしないでできたかな?
番組前のせんでん(・・・って言うのかな?)が終わった後、いよいよ入場を待つだけ。
私はなっちゃんがさっきの続きを言ってくれるか待ったけれど、
それっきり、なっちゃんは何も言ってこなかった。
400 :
書いた人:03/07/29 20:45 ID:oydB/3yF
今日はここまでです。
これから一週間、諸事情で今までのような更新ができません。
マターリとお待ちください。保全には訪れます。
>>389 その短編は私ではないのですが・・・羊でしか書いたことが無いもので。
>>390 どの辺が伝説だったか、というのをほとんど忘れてしまった私。
読んでおられて≪違う≫と思われる箇所が多いかと思いますが、ご容赦を。
>>391 というわけで、それは私ではないのです。
>>392 4期加入の頃、『絶対加護より辻だろ』と思っていたのですが、
過去の映像とか見ると、ホントに可愛かったんですね、あの頃の加護。
今は・・・・・・とか、言いません。
なんかミスリードされてる気がしないでもない
あ、伝説はこの次のMステでした
(0^〜^) <ふぅ〜・・・作者さん更新乙です。
( つ旦O うーん。意外な展開でハラハラドキドキ。
と_)_) 続きを楽しみにしています。
安倍さんはなにか知ってそうでつね。ハラハラドキドキ
更新乙です。
違う人でしたか。すいません同じ名前の人だったもので…。
>>391 一応赤板の作者フリー短編スレッドです。
更新お疲れ様です。
ひょっとして、メンバー全(ry
あまり無理なさらず、御自分のペースで書いてくださいな
さて「しゃぼん玉」どうすっかな
406 :
書いた人:03/07/31 09:30 ID:b3RzK+9/
なかざーさんに教えられたとおり、きょろきょろしたくなるのをぐっとがまんして、前を見ながら笑顔、笑顔。
自己紹介はさせてもらったけれど、今度は止まんないように、
って急いだら『つじののみです!』になっちゃってた。
こないだまでテレビでしか見たことが無いような、出演者の人たちに囲まれて私はちっちゃくなってしまう。
それに今日は、いちーさんが最後の日。
これで前に出て行けるって、ちょっと私にはできない。
前に出ろって言われてもなぁ・・・・・・何話したらいいか分かんないもん。
407 :
書いた人:03/07/31 09:32 ID:b3RzK+9/
結局私や亜依ちゃん、よっすぃ〜に梨華ちゃんは、おき物みたいにひなだんにすわっていただけだった。
で、番組が終わった後、やっぱりなかざーさんに怒られた。
すっごいいきおいで出てくるおせっきょうにちっちゃくなっていたけど、
マネージャーさんがとりなしてくれて、やっとおしまい。
なんだか10何才より下の人は、夜9時より後に働いちゃいけない、っていうのが決まってる、っていつか聞いた。
だからなのかな?
マネージャーさんは顔を真っ赤にして、楽屋を行ったり来たり、いそがしそう。
いしょうをぬいじゃった私と亜依ちゃんは、楽屋のすみでボーっとしてるしかない。
408 :
書いた人:03/07/31 09:33 ID:b3RzK+9/
「のの、やっぱなかざーさんに言われたの、気にしとるん?」
あんまり私がしゃべんないのが気になったのかな?
亜依ちゃんは心配そうに私の顔をのぞきこんできた。
ただボーっとしてただけなんだけどなぁ・・・・・・
「ううん」
とりあえず首を横にふった。
でも亜依ちゃんのほうが、何だか沈んだ顔してる。
やっぱなかざーさんに言われたの、こたえたのかなぁ?
「亜依ちゃんは?」
「いや、そのことはしゃあないけどな・・・・・・ちょっと気になってん」
「何が?」
亜依ちゃんの話し方って、まるでさっきのなっちゃんみたい。
話したいんだけど、話そうかどうか、すっごく迷ってる感じ。
409 :
書いた人:03/07/31 09:34 ID:b3RzK+9/
「あんな、のの・・・・・・」
「うん?」
「安倍さんに、うち、変なこと聞かれてん。
こないだまでは雑誌のインタビューとか、すっごく手馴れた感じでしゃべっとったのに、
なんで急におとなしゅうなった?って。」
「あ、私も聞かれたよ」
亜依ちゃんといっしょのところがあってちょっぴりうれしくって、つい声がはずんじゃう。
でも亜依ちゃんは、そんな風じゃない。
「でな、結局安倍さん、そのまま何も言わんかったんけど、なんかすっごく気になってん。
別に聞かれたことだけやったら、ぜんぜん普通のことやん?
でもな、なんか自分の中で、安倍さんの聞いてることって、すっごく大切なことみたいな気がしてん」
亜依ちゃんの可愛い目の中で、何かがびくびくしてるのが見えた。
410 :
書いた人:03/07/31 09:36 ID:0U7mb8xP
なんて言ったらいいんだろ?
私もおんなじだった、っていって、亜依ちゃんはよろこぶかな?
私は亜依ちゃんとおんなじところがあってうれしいけど、亜依ちゃんが困ってるのがそれで何とかなるわけじゃない。
うーん・・・・・・あ、このこと言えばいいかな?
私は亜依ちゃんの目をのぞきこんだ。
「あのね、私もおんなじようなこと聞かれたとき、なっちゃんなんか言いかけてたよ。
茶色いビンが・・・どうとか、ってやつ。それ、亜依ちゃんも聞かれた?」
「聞かれてへん」
ちょっとは解決できるかと思ったけど、何の足しにもなんなかった。
考えてみたってしょうがない。
やっぱりなっちゃんに聞いてみるのが早そうだね。
411 :
書いた人:03/07/31 09:37 ID:0U7mb8xP
モーニング娘。の片づけが終わったのか、マネージャーさんが、私たちを集めて解散の指示をする。
文字通りせなかを押されて、私たちは楽屋から出されてしまった。
なっちゃんがさっきの話の続きを言うのか気になってたけど、
何にも言ってこないどころか、先にタクシーに乗っちゃった。
私は亜依ちゃんと、そしてマネージャーさんといっしょにタクシー乗り場に向かう。
「なっちゃんに聞けなかったね」
「そやな・・・・・・ま、別の日に聞いてみよ、な」
「うん」
「はぁい、辻、加護。喋ってないで、もちょっと急いで!
工事で地下の乗り場使えないからちょっと歩くけど、
ファンの人に声掛けられても、立ち止まっちゃ駄目だからね!」
「「はぁい」」
マネージャーさんにせかされて、私と亜依ちゃんは急ぎ足。
タクシー乗り場はうらてにあるのに、ファンの人たちがすっごいたくさんいた。
412 :
書いた人:03/07/31 09:38 ID:0U7mb8xP
わかいお姉さんや、お兄さん、私よりも年下みたいな子までいる。
中には何だかずいぶん年とった人もいるけど。
『あ、新メンの子じゃない?』『どっちが加護?』『まだちっちゃいねぇ』『サインして−!!』
いろんな声が聞こえてくる中、私と亜依ちゃんはひたすら歩く。
ドアを開けて待ちかまえてるタクシーまであとちょっと、
ってところで、となりを歩いてた亜依ちゃんが急に立ち止まった。
マネージャーさんは気付かないで、先に行っちゃってる。
「どうしたの?亜依ちゃん?」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・亜依ちゃん!!」
私が怒鳴って、やっと亜依ちゃんはびくっとして私の方を見た。
亜依ちゃんは何もしゃべらないで、口をわなわなふるわせたまま、ゆっくりと左手で何かを指さす。
つられてそっちに目が行った・・・・・・
413 :
書いた人:03/07/31 09:39 ID:0U7mb8xP
女の子?
私たちと同じか、一つ上くらいの女の子。
大してとくちょうも無い、メガネで地味そうな子。
タクシーのすぐ手前のところで、ぽつんと立って何か口ずさんでる。
「あの子がどーしたの?亜依ちゃん?」
「・・・・・・声」
「あの子の声?」
「よっく聞いてみ」
そう言いながらも、亜依ちゃんはその子から目が離せないみたい。
私も思わずその子の口元を見ながら、耳をすませた。
414 :
書いた人:03/07/31 09:41 ID:pECNwy8G
「・・・・・・なんか、懐かしぅない?」
もう、亜依ちゃん、まだ聞こえてないよ。
どれどれ・・・・・・
・・・・・・歌?・・・歌かな?
すごく小さな声。多分声量が無いのかな?
それでもその声その歌が、大勢が声を上げている中で、
まるでむなぐらをつかまれたみたいによく聞こえてきた。
なんだろう・・・・・・懐かしい。
おんなじフレーズをくり返しくり返し、あきもせずに、それでも何だか必死にその子は歌っている。
「♪ じゅーうさんにん がーかーりーのー くーりすーまーすー 」
その子がだれかよく分かんないし、その曲がなんて曲かも知らない。
でも一つだけ言えることは・・・・・・
・・・・・・それにしてもへったくそな歌だ、ってことだ。
415 :
書いた人:03/07/31 09:45 ID:pECNwy8G
今日はここまでです。
慣れないパソコンからの書き込みは難しいですな。
>>401 何か不快にさせたなら、申し訳ないです。
>>402 よしこさん、お初です。
>>403 さりとてあまり考えていなかったりして。
>>404 お気になさらず。よくあるHNですので。
>>405 未だに『シャボン玉』を実は聴いていない私。
乙です。
「しゃぼん玉」のDVD買いましたが、1回見て終了w
小説の感想と違いスマソ
更新乙です。違う人でしたか。まちがいスマソ。
>>391 一応。赤板の作者フリー短編スレッドです。
不快だなんてそんな。
ただ読者を騙す系の推理小説っぽい要素も入ってるのかなと思っただけでして。
でもそのレスの感じだと深読みせずにそのまま楽しめばいい作品みたいですね。
(0^〜^) <ふぅ〜・・・作者さん更新乙です。
( つ旦O うーん。正体を見抜かれないとは私の変身も完璧ですな。
と_)_) 作品、次々と新しい展開になって面白いです。
420 :
む:03/08/01 10:16 ID:TeiuYAWd
電話のやりとりだけのところが泣ける。
必死に歌ってる子もイイ!
421 :
にぃ:03/08/01 10:18 ID:4EVG9IbE
422 :
書いた人:03/08/01 16:53 ID:y7ZmAIll
私と亜依ちゃん、そしてその女の子は向き合ったまま立ちつくしていた。
まるでスポットライトが当たってるみたいに、私たちだけ切り離されたみたいに。
私たちに気付いたマネージャーさんが後ろで何かわめいているけど、そんなのちっとも気にならない。
すごくいっしょうけんめいに、そしてすごく悲しそうな目をして、女の子は歌っていた。
長い前がみとメガネででよくみえないけれど、それでもすっごく印象に残る大きな目。
しまいには良く分からない振りまでつけて、女の子はまだ歌ってる。
「ダメなのかなぁ・・・・・・?
二人とも、これでも思い出してくれない?
もっと想い出に残ってる曲の方が良いのかなぁ?」
そう言って、女の子はさっきと違う曲を歌い始めた。
423 :
書いた人:03/08/01 16:54 ID:y7ZmAIll
どこかで聴いたことがあるような・・・・・・
でも懐かしいのは曲だけじゃなくて、この女の子。
この女の子に変な感情の原因があるような気がする。
亜依ちゃんはいつのまにか、女の子に合わせて歌っていた。
亜依ちゃんは知ってるのかな、この曲?
「♪す・き・な・ひとっが〜 し・ん・せ・つだった〜 う・れ・し・いで・き・ご・と・が〜 増えました」
「・・・・・・亜依ちゃん、何で歌えるの?この曲」
「え?わからひん・・・・・・でも、どっかで・・・・・・」
そう言って亜依ちゃんはまた女の子に合わせて歌いはじめる。
なんで?
頭が・・・・・・・・・・・・痛い。
424 :
書いた人:03/08/01 16:54 ID:y7ZmAIll
――――――――――
『私の見立てだとねぇ、東京だとここが一番美味しいんだよ』
『へぇ・・・・・・そう、なんだ・・・』
『あれ?どしたの?もしかしてあんま美味しくなかった?』
『ううん・・・・・・ただ、札幌でもよくラーメン食べたなぁ、って』
『そっかぁ・・・じゃあ今度、北海道にコンサート行った時、美味しいとこ連れてってよ』
『うん!でも・・・抜け出せるかな?ホテル』
『根性でどうにかする』
――――――――――
425 :
書いた人:03/08/01 16:55 ID:y7ZmAIll
「ちょっと、辻!加護!何やってんの!早く乗って!」
426 :
書いた人:03/08/01 16:56 ID:y7ZmAIll
――――――――――
『こんどさぁ、うちにお泊りおいでよ。まこっちゃんと豆はくるっつってるよ』
『えぇぇえ・・・・・・絶対行く!つんくさんが死んでも行く!』
『いや、つんくさんが死んだらそっち行ってやんなよ。
それじゃ、来週のオフの前の日からね!・・・・・・って、どしたのよ?』
『ふふふ・・・・・・あのね、こういう風にお泊りするのって、すっごい久しぶりだなぁ、って。
むかしはよくやってさ、クラスの好きな人の話とかしたじゃない。楽しみだぁ』
『ふっ、楽しみにしてなよ。夜はこの世で一番うまいお菓子は何かで、朝まで行くから』
『それは・・・・・・勘弁だなぁ』
――――――――――
427 :
書いた人:03/08/01 16:57 ID:ec2Ztl9O
「♪い〜つも〜い〜つ〜まで〜も〜 な〜んね〜ん たって・・・も・・・・・・」
「ごめんね、この二人、もう行かなくちゃいけないから、そろそろ止めてもらえるかな、あなたも。
大体、もう声かすれてるじゃない。
さあ二人とも、お願いだから、もう行くよ」
「・・・・・・お願い、思い出してよ」
428 :
書いた人:03/08/01 16:58 ID:ec2Ztl9O
―――――――――――
『え?なぁんで一人だけ居残りなの?』
『うん・・・・・・私、辻ちゃんみたいに声大きくないからさ、もっとお腹から声出せって言われて・・・』
『それかぁ・・・』
『ねぇ、どうしたらあんなに大きな声で歌えるのかなぁ?』
『え?そりゃあ・・・・・・なんでだろ?
でもさ、いっつも喋ってるときみたいな声だったら、充分大きいじゃん』
『うん・・・でもね、歌の歌詞とか台本とかって、自分の思ってることそのままじゃないでしょ?
だからあんまり、自信持って声に出せないんだよねぇ・・・』
『まぁ・・・・・・自分を信じていくのだぴょん、とかを自分自身の言葉、って言われてもアレだよね、確かに』
――――――――――
429 :
書いた人:03/08/01 16:58 ID:ec2Ztl9O
「まったく、入って一月しか経ってないのに、抱えなくっちゃいけなくなると思わなかったわ。
まだ軽いわねぇ・・・体重」
「ねえ、お願い、思い出して!」
「あなたもちょっとしつこいわよ」
「私、私だよ・・・・・・紺野あさ美!」
430 :
書いた人:03/08/01 16:59 ID:ec2Ztl9O
――――――――――
『へぇ〜、あさ美ちゃん同い年なんだ』
『・・・・・・うん』
『何で緊張してんのよ』
『だって・・・・・・今までテレビでしか見たこと無いのに、今こうやって喋ってるから・・・』
『あぁぁ・・・・・・私も入ったばっかのとき、そうだったなぁ』
『そうなの?』
『そうなの』
『・・・・・・ふふふ・・・・・・そうなんだぁ』
『これからよろしくね、紺野ちゃん』
『私も、辻ちゃん』
――――――――――
431 :
書いた人:03/08/01 17:01 ID:adTmStIb
ごめん、3年前の私。
もう少し、もう少しだけ・・・・・・借りるね。
私を抱きかかえてるマネージャーさんの手を、振りほどく。
あいぼんも思い出したみたい、どこかいたずらっぽさが目の中に見えてる。
目の前の女の子・・・・・・・紺野ちゃんは、私たちの動きを息を呑んで見つめてる。
「辻、加護!もうお願いだから、早く乗って!」
「えっとね・・・・・・あの子、私の友達なんだ・・・・・・だから一緒に乗ってもらって良い?」
私の言葉に、あいぼんがにやりと笑いかけたのが見えた。
紺野ちゃんは大きな目をますます見開いて、口を開けたままこっちを見てる。
眼鏡の奥に見える目は、どこか涙目。
かすれた声が、喉の奥から聞こえてくる。
「・・・・・・戻ってくれた?」
「「ばっちり」」
思わず声が揃って、あいぼんと顔を見合わせて笑う。
そんな私たちに紺野ちゃんが飛び込んできて、3人で抱き合った。
すこし、ほんのすこしだけ、重かった。
432 :
書いた人:03/08/01 17:05 ID:adTmStIb
今日はここまでです。
FUNよりもルパンが楽しみ。
>>416 DVDだったら買ってみたい、と思うのですがねぇ・・・
>>417 ちょっぴりデジャヴ。
>>418 なるほど。一応伏線とか張ってますが、あんまり考えない性格なので、
どきどきしながらご覧くだされ。
>>419 結構バレバレだったりもしてます。
>>420 ありがとうございます。何故に『む』?
>>421 すいません。
更新乙です。
はぁそろそろクライマックスだぁ〜。
今はこの小説の更新が一番楽しみです。
@""@
(o・-・) <作者さん更新乙です。
〜( O旦O うーん。私のほうから行きましたか。
(´⌒⌒"⌒⌒;) 続き楽しみです。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
乙です。
DVDの2つ目のトラックは、俺が希望してたモノやったよ。
でも、曲が・・・・・
今回はちょっと涙ぐみそうになった15の夜。
|ハ@ 更新乙!
|д‘) しばらくぽーっとしているうちに
⊂ とんとんとーんといったもんやな
| あとはなっちがどう絡んでくるか楽しみですわ〜
今初めてこのスレを見つけて一気に読ませていただきました。
面白すぎる…作者さんがんばってください!
更新乙です
電話の辺りではどうしようもなく悲しい結末になってしまうのでは、
と心配しましたが、どうやら回避しそうでヨカッタ-
飯田さんは出るのか(w、など色々気になる小説です
439 :
書いた人:03/08/02 19:49 ID:ASh+Sfli
今日明日は更新できません、ということで保全。
保全。
交信乙です。
そろそろラストでしょうか…
素敵なエンディングを期待してます。
442 :
書いた人:03/08/04 09:00 ID:tBES+BNc
――――――――――
「「「かんぱ〜い」」」
もう日付が変わった私の部屋。
紙コップじゃないけれど、コンビニで買ってきたジュースで乾杯する。
私とあいぼんと紺野ちゃん、見慣れた顔とは違うけど、みんな笑顔で。
いつもだったらとっくに寝ている時間なのに、興奮でちっとも眠くならない。
あれからマネージャーに頼み込んで、紺野ちゃんも一緒にタクシーに乗っけてってもらった。
助手席でぶつくさ文句を言うのを放っておいて、私たち三人ははしゃぎまくる。
で、そのまま私の家に連れてきたってわけ。
中1の娘がこんなことをやって、何にも文句を言わないあたり、今まで先例を作ってきた姉文子に感謝。
ありがとう、文子姉ちゃん。
あなたの存在は、多分このためにあったんだよ。
443 :
書いた人:03/08/04 09:01 ID:tBES+BNc
目の前で嬉しそうにジュースを飲む紺野ちゃんは、やっぱり少し幼い。
でも眼鏡の紺野ちゃんは見慣れてるし、全体的な印象はあんまり変わっていない。
どこかとろんとしてるけど、それでも大事なところではキレる、あの感じ。
でも紺野ちゃんが変わっていない、というよりは私とあいぼんが変わりすぎなんだろう、やっぱり。
どんなにはしゃいでいても、口から出てくるのは尽きない疑問ばかりだった。
紺野ちゃんが何で3年後の意識のままでいられたのかは、
スナフキンとミーが腹違いの姉弟であることみたいに意外で、不思議なことだから。
あいぼんもそこら辺は同じで、タクシーの中から聞きたくて仕方が無かったらしい。
一杯目のジュースを空けると、早速疑問を口にする。
「そやけど、どうやって紺野ちゃん戻れたん?」
「そだよねぇ。私とあいぼん二人一緒にいても、こっちの時代に染まっていったのに・・・」
「へへへ・・・・・・これだよ」
紺野ちゃんはがさがさと、さっきまで背負っていたリュックサックを漁る。
444 :
書いた人:03/08/04 09:02 ID:tBES+BNc
「・・・・・・そう、これ」
「これって・・・・・・ただのウォークマンじゃん。つーか、久しぶりに見た」
サラリーマンのおじさんが英会話の勉強をするときくらいにしか見かけなくなった、ただのカセットウォークマン。
だいぶ使い込んであるのを見ると、昔買ってもらったのを大事に扱っていたんだろう。
買ってもすぐに破壊してしまう私との違いを感じる。
紺野ちゃん、あんた、いいお嫁さんになるよ。
私とおんなじように『?』という表情をしているあいぼんに、紺野ちゃんは微笑みかけると、
「聴いてみる?」
と言って、私たちにイヤホンを渡す。
あいぼんと顔を寄せ合って、片方ずつイヤホンを耳に入れた。
445 :
書いた人:03/08/04 09:03 ID:tBES+BNc
「それじゃ、流すね」
心底楽しそうに言うと、紺野ちゃんは再生ボタンを押した。
・・・・・・・・・
おいおい、下手な歌だなぁ。
再生された途端、となりであいぼんが吹き出していた。
聞こえてきたのは、完全にアカペラの歌(by紺野ちゃん)。
歌詞からすると、多分『恋のやじろべえ』なんだろうけど。
メロディーラインで判断できないあたり、なぜか私の目頭まで熱くなってくる。
「4月の頭くらいかな・・・こっちの時代に来て、すぐに気付いたの。
油断してると3年前の自分のほうが勝ってきちゃうって。
だから、もしも何かあっても困らないように、未来の曲を吹き込んでおいたんだ」
私たちの反応はお構いなしに、紺野ちゃんは続ける。
「それでもね、やっぱりたまに聴くんじゃダメらしくて、一度はこっちの時代に私に戻っちゃったんだ」
「・・・・・・じゃあ、紺野ちゃんはそこからどうやって戻ったん?」
イヤホンを外したあいぼんは、真面目な顔つきに戻っていた。
446 :
書いた人:03/08/04 09:07 ID:kuiGnsXC
「・・・・・・それはね、辻ちゃんのおかげなの」
そう言って少し眩しそうに目を細めて、紺野ちゃんは私を見つめる。
すごく照れるんだけど、まったく自覚が無いからわけが分からない。
『ムーミンママの着けてる衣装は前掛けじゃなくてパンツだ!』っていう、
やぐっさんの主張と同じくらいわけが分からない。
あの人はいつもエロエロだから、そんな発想しか出てこないんだ、多分。
「辻ちゃんさぁ、ハロモニの自己紹介で、『ホックがポンッとか行かないように』とか言ってたでしょ?」
「あぁ・・・・・・確か言ったような気がする。
それ言ったから、あの日あいぼんが元に戻ったんだもんね」
「でね、まだ意識が戻らないうちに、モーニング娘。が出る番組をビデオに録って送ってもらうように、千葉に引っ越してった友達に頼んでおいたの。
もし私自身が3年前に戻っても、もしかしたらそのビデオの中の手がかりで戻れるようになるんじゃないかって・・・」
「で、3年前に戻ってもうた紺野ちゃんは、そのビデオを見て思い出した、っちゅーわけか。
ミュージックスの思い出っつったら、あの場面が強烈すぎやもんな。記憶取り戻すわけや。
つーかミュージックスの思い出は、あの縄跳びと肉くらいしかない。
なんだか出っ歯のコーチがいた気もするが、私は速攻で記憶から消しちゃった。
「よく記憶なくした後も、ちゃんとビデオ見てたねぇ」
「見てるうちにね・・・段々はまっていったんだ、3年前の私」
447 :
書いた人:03/08/04 09:08 ID:kuiGnsXC
そう言って、照れくさそうに紺野ちゃんは笑った。
今回ばかりは、紺野ちゃんのヲタ素質に救われたってわけか。
結局紺野ちゃんはそのあとも、自分の歌声をモーニングコールにしたりして、
何とか難を逃れたということらしい。
やっぱり自分のヲタ要素を、こうもあからさまに言わなくちゃいけないのは照れくさいんだろう。
うつむいて顔を真っ赤にする紺野ちゃんに、心の中でつぶやく。
大丈夫、紺野ちゃんがヲタだってことなんか、みんな知ってるから。
私はすぐに文子姉ちゃんの部屋からカセットレコーダーをかっぱらってきて、みんなで未来のことを吹き込み始めた。
初めて前列で歌わせてもらった I wish
中澤さんとの最後の曲になった 恋レボ
その後のシングル曲からアルバム、カップリング、ミニモニやタンポポ、プッチモニ。
さらにふじもっちゃんや亜弥ちゃん、メロンやシャッフルまであらゆる曲を詰め込む。
あいぼんと紺野ちゃんの分をダビングし終わったときには、もう外で鳥が鳴き始めていた。
448 :
書いた人:03/08/04 09:09 ID:kuiGnsXC
――――――――――
布団を並べて敷いて、電気を消す。
遮光カーテンの隙間から、少し朝の光が射し込むけれど、そんなの気にならない。
今日丸一日オフであることに、信じてもいない神様に心から感謝した。
紺野ちゃんはその『千葉に引っ越した友達』のところへ泊まりに行く、と嘘をついてきたらしい。
そうでもしないと私たちのスケジュールにピンポイントで合わせられる、この日を逃してしまうから。
『一応口裏合わせてもらうようにしといたから、大丈夫でしょ』と紺野ちゃん。
でもそう考えると、今日と明日しか、私たちが揃う日は無い。
まだ芸能界に入っていないこの時期の紺野ちゃんに、迷惑を掛けるのは避けたいのだ。
「でもなぁ・・・・・・」
暗闇の中、あいぼんがつぶやく。
449 :
書いた人:03/08/04 09:10 ID:kuiGnsXC
「でも・・・・・・せっかくうちら揃うても、帰れないんやったらどうしようもないなぁ」
「うん・・・」
「ふっふっふっ・・・・・・・」
私の溜息と一緒に、紺野ちゃんの不敵な笑いが聞こえてきた。
この期に及んで、よくもまあ、そんな笑みができたもんだ。
「実はね・・・・・・このためだけに来たんじゃないよ、私。
とにかく今日、10時には起きよう、ね」
次に発せられた紺野ちゃんの言葉に、私とあいぼんは耳を疑った。
「・・・・・・1時半に渋谷で・・・待ち合わせしてるの。
私たちだけじゃなかったんだよ・・・・・・淋しかったのは。
私たちだけじゃ・・・・・・・・・グゥ」
「そこまで言っといて寝るんかい!!」
あいぼんの大声でのつっこみにも、紺野ちゃんは目を覚まさずに寝息を立てている。
いろんなことあったから、疲れたんだよね・・・・・・目が覚めたら教えてもらうよ、紺野ちゃん。
私はさっき録ったテープの再生予約を確認すると、すぐに睡魔に無条件降伏した。
450 :
書いた人:03/08/04 09:18 ID:9uUZpyHe
今日はここまでです。
明日明後日は再び更新できませぬので、ご了承を。
>>433 妙なペースで更新していますので、今月中には終わりそうですね。
>>434 孫悟空に見えなくもない。
>>435 15歳なんて、何年前だろう(遠い目)。
>>436 ありがとうございます。その覗いてるAAは可愛くて好きです。
>>437 ありがとうございます。一気読みして視力は大丈夫ですか?
>>438 とりあえず終わり方だけは考えてあります。
>>440 保全乙です。
>>441 「素敵な」・・・・・・考えてあるエンディングが、「素敵か」は・・・どうでしょう?
乙です。
いよいよって感じですね。
渋谷にいるのはあの人ですね。
って、3人+1人=4人という事で、拉致監禁とかいうネタにはなったら怖いw
そこへ偶然通りかかるよっすぃー
乙。毎日の更新チェックが一番楽しいよ。
どうなるんだこれから・・・。
今日初めて読んだ。面白いので期待してます。
ただ、3年前の辻が安倍の事を「なっちゃん」て呼んでることに
ちょっと違和感が。
野暮な事書いてごめんね。
■■■■■■■■
■■■■■■■■■
■■■■√ === │
■■■■√ 彡 ミ │
■■■√ ━ ━ \
■■■ ∵ (● ●)∴│
■■■ 丿■■■( │
■■■ ■ 3 ■ │
■■■■ ■■ ■■ ■
■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■
/⌒ - - ⌒\
/⌒\ ・ ・ /⌒\
/ \∩/ \
/\/⊃ ∞' ⊂\/\
/ / \_)*(_/ \ \
|_/ \_|
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□■■■■■■■■■■■■■□□□□□□□□□□□
□□□□□□□■■■■■■■■■■■■■■■□□□□□□□□□□
□□□□□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□□□□□□□□□
□□□□□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□□□□□□□□
□□□□□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□□□□□□□
□□□□■■■■■□□□□□□□□□□□■■■■■■□□□□□□
□□□□■■■■□■■■□□□■■■■□□■■■■■□□□□□□
□□□■■■■□□□□□□□□□□□□□□□■■■■■□□□□□
□□□■■■■□□■■■□□□■■■□□□□■■■■■■□□□□
□□□■■■□□■□□□□□□□□□■□□□□■■■■■□□□□
□□□■■■□■□□■■■■□□□□□■□□□■■■■■□□□□
□□■■■■□□□□■□□□□□□□□□□□□□■■■■■□□□
□■■■■□□□□□■■■■□□□□□□□□□□■■■■■□□□
□■■■■□□□□□□■■■■■■□□□□□□□■■■■■■□□
□■■■□□□□□■■■□□□□■■□□□□□□■■■■■■□□
□■■■□□□□□■□■■■■■□■■□□□□□■■■■■■□□
□■■■■□□□■■□■□□□□□□■■□□□□□■■■■■□□
□■■■■□□■■□□■■■□□□□■■□□□□■■■■■■□□
□■■■■■■■■□□■□□□□□□□■■□■■■■■■■■□□
□■■■■■■■■□□■■■■■□□□■■■■■■■■■■■□□
□■■■■■■■■□□□□□□□□□■■■■■■■■■■■■□□
□□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□□□
□□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□□□□
□□□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□□□□
□□□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□□□□□□
□□□□□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
457 :
書いた人:03/08/07 14:25 ID:B/YCcXRW
「・・・・・・ホントに来るとは思えんけどなぁ」
「うぅん・・・・・・どうだろねぇ?」
蟻塚をアリクイがひっくり返した後みたいに、駅前は人で溢れていた。
ごみごみした雑踏が気持ち悪いけど、いい具合に私たちを目立たなくさせてくれる。
私の横には深々と帽子をかぶって、後ろで髪を二つにまとめたあいぼん。
そして紺野ちゃんは、20mくらい先の街路樹の陰で、5月の暑さに少しだれた顔をしていた。
約束の時間まであと10分。
他の人たちが使う待ち合わせ場所だと目立つからって、
やぐっさんがこの半年後に考えた秘密の場所で、紺野ちゃんは立っている。
「あと10分で分かるよ・・・」
紺野ちゃんの近くを通る人に注意深く目を向けながら、私の言葉にあいぼんは軽く頷いた。
458 :
書いた人:03/08/07 14:26 ID:B/YCcXRW
―――――――――― 2時間前 レストラン
「はぁ!?まこっちゃん?」
「うん、そうなの・・・・・・あ、そのスープ、一口貰っていい?」
あいぼんの素っ頓狂な叫び声にも動じないで、紺野ちゃんは私のスープ皿を引き寄せた。
おいおい、それは一口とは言わないよ。
私たちとは対照的に、向かいの席で美味しそうにスープをすする紺野ちゃんに、苛立ちすら覚える。
待ち合わせの相手はまこっちゃん。
そう聞いて私たちは落ち着いていられない。
いつか、なんとかして手掛かりを得ようとしていたのに、そのチャンスが突然やってくるから。
「でも・・・どうやって?まこっちゃんと待ち合わせなんて・・・」
「そやで。渋谷までよく呼び出せたなぁ。
大体自分、まだまこっちゃんと赤の他人と違う?」
あいぼんの言葉に、紺野ちゃんのスプーンをを持つ手が止まった。
459 :
書いた人:03/08/07 14:27 ID:B/YCcXRW
少し窓の外を見て、紺野ちゃんはほとんど口を動かさないで呟いた。
「・・・・・・多分・・・ううん、絶対・・・・・・今日来るの、3年後のまこっちゃんだよ」
?
紺野ちゃんの言ってる意味が分からなくなる。
今日・・・・・・つまり、3年前の今日の待ち合わせに来るまこっちゃんも、3年後のまこっちゃん?
「それに・・・・・・ね」
動揺する私たちをそのままに、紺野ちゃんは続ける。
まるで、自分自身の頭の中でも、必死に状況を整理しようとしているみたいに。
460 :
書いた人:03/08/07 14:29 ID:B/YCcXRW
「電話掛けてきたの、まこっちゃんの方だよ。
北海道の私の家に、この前の水曜日」
「でも・・・・・・うちらが掛けようとしても、紺野ちゃんちって、電話帳載っとらんかった・・・」
「多分、まこっちゃん覚えてたんだよ。
だって私たちみたいに何の準備もなくってこっちの時代に来たんじゃないもん。
あのお薬をなんでまこっちゃんも飲んだか・・・分かんないけど」
まこっちゃんが・・・しかもこの時代じゃなくて、3年後のまこっちゃんが来る。
なんであんな薬を飲ませたのか。
まこっちゃんは何をしにこっちの時代に来てるのか。
そして、どうやったら元に戻れるのか。
聞きたいことは山ほどある・・・・・・
あれ?
一つだけ、おかしなことに気付いた。
461 :
書いた人:03/08/07 14:31 ID:22n1JZQz
「あれ?でもさ、まこっちゃんはあの薬飲んだの、私だけだって思ってるはずだよ。
あいぼんと紺野ちゃんに分けてあげた、って一言も言ってないし。
なんでそれなのに、まこっちゃんは紺野ちゃんに電話したの?」
私の言葉にあいぼんはうんうん、と頷いている。
紺野ちゃんはその言葉にはっとして、目を見広げた。
少しだけ恥ずかしそうに、ほのかに顔を赤くして俯く。
462 :
書いた人:03/08/07 14:32 ID:22n1JZQz
「あ、あのね・・・まこっちゃんは多分、この時代の私とちょっとでもお話がしたかったんだと思うの。
どうしてなのかは分からないし、なんでまこっちゃんがこっちに来てるのかも分かんないけど・・・
まこっちゃんからの電話、すごく余所余所しかった。
だから私が3年後から来てる、ってことは知らないと思う。
電話来たとき、突然でビックリしちゃって、私まともに反応できなくって・・・だからばれなかったんだろうけど」
「・・・・・・で、金曜にうちらん所へ行くことにしとったから、かろうじて待ち合わせだけは言ってみて、向こうものったっつーわけ?」
目を細めて少しきつめに言うあいぼんに、紺野ちゃんは申し訳なさそうに頷いた。
どっちもどっち、って言うか・・・
まこっちゃんも気付けよ。
見ず知らずの中学生の女の子が、渋谷なんかで待ち合わせするわけ無いじゃん。
ホントに紺野ちゃんとまこっちゃんって、二人が言ってるほど親友なんだろうか。
463 :
書いた人:03/08/07 14:33 ID:22n1JZQz
――――――――――
5月だって言うのがウソみたいな暑さに、あいぼんが額の汗をぬぐった。
『まこっちゃんがどう出るか分からないから、一応私だけで待ってた方がいいね』
もしまこっちゃん来て、紺野ちゃんがあの薬を飲んだって知って逃げたら、容赦なく追いかける。
私とあいぼんが待ち合わせ場所から離れているのは、その意味もある。
もし逃げたりしたら、世界の果てまでだって追い掛けてやるんだから。
でも・・・・・・
もし、誰も来なかったら?
そう考えるとお手上げだ。
全てはまた振り出しにもどってしまう。
心臓が高鳴るのが、胸に手を置いていなくても簡単に分かる。
464 :
書いた人:03/08/07 14:33 ID:22n1JZQz
「のの、来たみたい」
ボーっとしていた私の袖をあいぼんがきつく引っ張る。
紺野ちゃんが何かを見つけ、そっちに手を振っているのが見えた。
いつでも飛び出せるように前のめりになりながら、紺野ちゃんの視線を追う。
・・・・・・
なんで?
「ウソやろ・・・・・・」
横であいぼんが呟く。
彼女が見ていないのは分かっていても、その言葉に私は首を縦に振った。
約束の時間3分前。
まこっちゃんは来ていた。
茶色い髪、きちんとした化粧・・・・・・そして、車椅子。
来ていたのは3年後のまこっちゃん、そのものだった。
465 :
書いた人:03/08/07 14:38 ID:z2tTolue
今日はここまでです。
やはりかちゅは使いやすいですな。
>>451 多分お考えの人と違うかもしれませんね。そのネタは嫌ですな。
>>452 それは多分ないです、はい。
>>453 ありがとうございます。またいつも通りのペースに戻ります。
>>454 いえ、その辺無頓着に書いていましたので。
ご指摘ありがとうございます。
夏ですね。
うひょー!!どうなっちゃうんだー!
更新乙です。
まったく展開が読めなくなってきた・・・・
一体何人の娘。が3年前に来てるんだろう。
468 :
書いた人:03/08/07 23:14 ID:NmQGYI6a
ちょいと閑話休題
日頃『昨日見た日々』を読んで頂いてありがとうございます。
元々校正が不得意でして、「私」を「渡し」にしたりミスが多い作者です。
先ほど書き込んだのを読み返していましたら、
>>423のピースの歌詞がめちゃくちゃな事に気付きました。
ぐぅ・・・どうしよう。
「好きな人が優しかった」であり、「道行く人が親切だった」んですよね。
日頃しっかり聞いてないのがバレバレだ、これじゃ。
優しく見守ってくださった皆様に感謝です。
私がよっぽど突飛なストーリーを思いついたりしない限り、
あと2・3週間ほどで完結となる予定であります。
引き続き、ご愛顧のほど宜しくお願いします。
☆ノハヽヽ 作者さん更新乙です。
川*‘〜‘)|| <うーん。意外なの。またまた意外な展開なの。
( ⊃⊂) 続きがとっても楽しみな22歳の私。
(__Y__) モジモジ なっち、CM料ちょーだい。
470 :
書いた人へ:03/08/08 12:06 ID:ln8BnL5H
今までに書いた話しも、
読みたいのですが、
他にはどこに書き込みして
ありますか?
471 :
名無し募集中。。。:03/08/08 15:37 ID:rF+n7Y3f
初カキコっす!(何気に2chも初。)
小説イイッ━(゜∀゜)━!
こういうの大好きだべさ〜!
ANNのラジオドラマプロットに送ってもらいたいくらいイイお話っす!
次回交信楽しみにしてます〜!
472 :
書いた人:03/08/08 19:46 ID:M/uVD1re
「・・・・・・あれ・・・・・・どうなってんの?」
「うちもわからん」
車椅子を漕ぎ漕ぎ、まこっちゃんは笑顔を浮かべながら紺野ちゃんに近付いている。
紺野ちゃんのあの驚いた顔つきは、けして2人が初対面だってことを装いっているだけじゃない。
「紺野ちゃんも・・・・・・知らんかった、ってわけか・・・」
あいぼんはそれだけ言うと、私の脇腹をつついて、既に話を始めている二人に歩き始めた。
慌てて私も、相棒の小さな背中を追う。
初対面の相手、っていう筈なのにやたら親しげに、もう何年間も会ってなかったみたいな眩しい目をしているまこっちゃん。
そんなまこっちゃんに、いつもの1.5倍増し(紺野ちゃん比)でキョドッてみせる紺野ちゃん。
何がなんだかまるっきり分からない。
この人込みの中で自然に溶け込んでいる3年後のまこっちゃんを見ると、
ホントはこの街全体も、3年後の姿のような気がしてくる。
少しくらくらする頭を抱えて、わたしは人の流れをかいくぐった。
473 :
書いた人:03/08/08 19:48 ID:M/uVD1re
「紺野・・・・・・あさ美さんだよね。よかった・・・・・・会えて」
「はぁ・・・」
近付くに連れて二人の会話が断片的に聞き取れるようになってくる。
あいぼんはまるで怒っているみたいに、ずんずんと早足で進んで行った。
「あの・・・・・・なんで?」
「・・・・・・?あぁ、なんでいきなり電話したかってこと?
うーんとねぇ・・・・・・なんて説明したらいいのかなぁ?」
紺野ちゃんの言葉は『なんで私たちを3年前に戻したか』なのに、気付かないんだろう。
お姉さん面して眉を寄せたまこっちゃんに、あいぼんが後ろから強く肩をつかむ。
「そやな・・・きっちりと、うちらみんなに分かるように説明してもらわひんとな」
「・・・・・・え?
・・・・・・・・・・・・ウソ、なんで!?」
「それはこっちのセリフだよ、まこっちゃん」
「・・・・・・辻ちゃん・・・・・・どうして?」
474 :
書いた人:03/08/08 19:49 ID:M/uVD1re
渋谷駅前の片隅。
私とあいぼんと紺野ちゃん、そしてその三人の丁度真ん中に車椅子のまこっちゃん。
私たち三人は、わけが分からなかった。
なんでまこっちゃんは3年後の姿のまま、ここにいるのか。
あいぼんは腕を組んで、キッとまこっちゃんを睨み下している。
紺野ちゃんは事態がつかめずに、左手を口に当てて、まこっちゃんとあいぼんを交互に見比べて。
ホントはこの状況を一番良く理解しているはずのまこっちゃんが、
一番混乱しているみたいに、私たちの顔を何度も見返している。
「まこっちゃん・・・・・・話してくれへん?」
「ウソ・・・・・・どうして私の名前を知ってるの・・・」
475 :
書いた人:03/08/08 19:50 ID:M/uVD1re
まだ事態を掴めないでいる様子に、あいぼんがキレた。
まこっちゃんの肩を思いっきりつかむと、前後に大きく揺さぶる。
「いい加減しらばっくれんのやめといて!!
さっきからどうしてって、そんなん自分がののにやった薬のせいに決まっとるやろ!
うちとののと紺野ちゃん、一ヶ月もこんな風にしといて、何が『どうして?』や!!」
「え・・・・・・・・・」
まこっちゃんの的を射ない反応に、ますますあいぼんのボルテージが上がる。
あいぼんはつばを飛ばしながら、大声で更にがなり立てる。
「そんなアホ面で誤魔化されると思わんといてや!
うちら三人3年前に戻して、一体何狙っとったんや!
ほんでもって紺野ちゃんに連絡コソコソつけたりして・・・・・・うちらがまこっちゃんに・・・」
そこまで言うと、急にあいぼんは言葉を詰まらせた。
目には涙が浮かべて。
476 :
書いた人:03/08/08 19:52 ID:f0/WGmLD
通り過ぎる人込みは、まるで私たちがいないかのようで。
時々振り返る人も、興味が無さそうにまた視線を戻していた。
「うちや・・・・・・紺野ちゃんはええ。
まこっちゃんから薬貰ったんと違うから・・・・・・でもな。
なんで・・・・・・ののを騙すようなことしたんや」
あいぼんの顔は涙でくしゃくしゃになっていた。
何度も何度も涙を拭うあいぼんの右手をぼんやり眺めて、私は彼女の空いている左手を強く握った。
477 :
書いた人:03/08/08 19:54 ID:f0/WGmLD
『ののはアホや』って、あいぼんはよく言う。
実際あいぼんみたいに人付き合いも上手くないし、『バカ女』になってしまったことは事実だ。
今回だって、まこっちゃんの狙いがなんであれ、私が簡単に騙されたことが原因。
もちろん薬を飲むことはみんなで決めたけれど、やっぱり元凶はまこっちゃんと・・・私だと思う。
それでもあいぼんはこのひと月、けして私を責めることはなかった。
私はずっと考えていた。
いつもだったら冗談めかして私を責めてもいいところなのに、やっぱり気を使っているんだろうかって。
でも、それだけじゃなかったんだと思う。
あいぼんは気付いていたんだ。
私を責めるってことは、私が友達を(結果的には)騙してしまったと追い詰めることにもなるって。
478 :
書いた人:03/08/08 19:54 ID:f0/WGmLD
紺野ちゃんの差し出すハンカチを受け取って、まだ泣きつづけるあいぼんを見る。
最近では滅多に見なくなった、泣き顔。
馬鹿にされたり、ソロパートがあいぼんの方が多かったり、人気があいぼんの方があったり、ケンカもしたり・・・
なんだか私のほうに随分マイナス要素が多い気もするけど。
それでも、最高の友達だよね。
あいぼんの左手を握る右手に、少し力を込めた。
479 :
書いた人:03/08/08 19:56 ID:f0/WGmLD
「まこっちゃん・・・・・・なんであんな薬をくれたのかとか、もうそんなことどうでもいいよ」
あいぼんに代わって、私がまこっちゃんの正面に向き直る。
まだまこっちゃんは何が起こっているのか分かんないみたいに、ぼんやりと私の顔を見上げた。
「あのね・・・・・どうやったら戻れるか、それだけ教えて。
私たちは、早く3年後に帰りたいんだ」
私の言葉に紺野ちゃんが小さく頷いた。
まこっちゃんは口を半開きにしたまま、まるで夢を見ているみたいに止まっている。
お願い、教えて。
もうそれだけでいいから。
まこっちゃんに何があったか、何でこうなったか、そんなことどうでもいいから。
ここで帰る方法を教えてくれれば、全てが丸く収まるから。
まこっちゃんの口が小さく息をしたのも、私たちは見逃さない。
お願い・・・・・・戻らせて。
「あのさ・・・・・・辻ちゃんやあさ美ちゃん、加護ちゃんも・・・・・・3年後から来てるの?」
私たちの必死の願いは、神様にはちっとも通じていないのだった。
480 :
書いた人:03/08/08 20:05 ID:f0/WGmLD
今日はここまでです。
やぐっさんに似てるスーパーのレジ店員を発見。
生きる楽しみが増えました。
>>466 そのテンションが少しおかしかったです。
>>467 どうでしょうね?
>>469 飯田さん、おめ。写真集を持っているというのは内緒です。
>>470 ここの
>>68からと、あと
>>317のスレに一つあります。
もう一つ、凄く短い話がありますが、ex鯖で書いたのでログが無いのです。
ログを私は持ってないので、親切な方を待ってください。
ちなみに作風が全然違うので、あしからず。
>>471 こんなに口の悪いののさんでは採用されないでしょう。
>>420氏の「む」の意味が理解できたこの頃。
私は気にしておりませぬので猛省なさらずとも、と私信。
ぐあー!!今日もいいところで終ってるー!
更新乙ですぅ!
今日もお持ち帰りします。
483 :
名無し募集中。。。:03/08/09 01:37 ID:psufK1xA
更新乙です〜
今後の展開がまったく読めないとこがおもろいですね〜(いい意味で見事に予想を裏切っております)
プロットに関してはシナリオ(話の流れ、展開の仕方)がいいんで十分狙う価値はあると思いますよ〜(そんな偉そうなこと言えるような奴じゃないですが…)
次号に期待しつつ、自分もお話を考えてみたり。(駄文申しわけ。m__m)
|ハ@ 更新乙!にしても、小説のあいぼんカッコええな〜
|д‘) 現実、越えとるんちゃうんか?
⊂ ちなみに西武池袋線沿線で
| うちも矢口さん似のウエイトレスさんにあったわ
作者さん更新乙です。うーん。 先が読みたくて
堪らなくなる作品ですね。そうですか。かおりんの・・・
(0^〜^)y--┛~~秘密ですか。いいですね。こうすると
私の顔は字に埋もれて判別し辛いじゃないですか。
まぁいいですけどね。続きを楽しみにしています。
486 :
書いた人:03/08/10 08:35 ID:N0xwxHEe
――――――――――
「ホントなの・・・・・・?まこっちゃん」
「こうまですっとぼけてられないやろ、普通」
「・・・・・・ごめん・・・・・・みんな、ホントにごめんね・・・」
「あぁぁ・・・いい加減泣き止んでよ。私たちが悪いことしてるみたいだよ、これじゃ」
なるべく人のいない場所を探して、4人で喫茶店に入って1時間。
ひたすら嗚咽を漏らすまこっちゃんを前に、私たちは憔悴しきっていた。
まこっちゃんに言いたいことは腐るほどあるけれど、今は情報収集が先。
あれから泣いたり怒ったり、何とかしてまこっちゃんにホントのことを言わせようとしたけれど、
結局出た結論はコレ。
まこっちゃんはあの薬がなんなのか知らなかった。
そしてまこっちゃんは、私たちの治し方も知らない。
で、まこっちゃんも3年後から来ている。
魔女裁判並みの追及をしたんだから、多分コレが最終結論。
・・・・・・その割りには、なんて収穫のない結論だろう。
487 :
書いた人:03/08/10 08:35 ID:N0xwxHEe
「あ〜、すんません。かぼちゃプリン、も一つ貰えます?」
泣いているのに早くも二皿目を胃袋に消し去ったまこっちゃんを見て、あいぼんがすかさず追加オーダー。
この辺の飴と鞭の使い分けの見事さには、溜息すら出てくる。
前世が特高の捜査官かなんかだったんじゃないだろうか。
そしてまこっちゃんの横では、
「あ・・・・・・すいません、それを私も・・・」
と、5皿目に突入する紺野ちゃん。
この辺の食べっぷりのよさには、溜息しか出てこない。
前世がパックマンかなんかだったんじゃないだろうか。
488 :
書いた人:03/08/10 08:36 ID:N0xwxHEe
「お待たせいたしました〜、かぼちゃプリンになります」
明るい声とは裏腹に、『こいつらまだ喰うの?』という真情を込めて、
ウエイトレスのお姉さんが細い眉をひそめた。
涙を拭きながら視線をお皿に移すまこっちゃん。
颯爽とスプーンを持ち直す紺野ちゃん。
おい、紺野ちゃん。あんたは尋問する側なんだけど・・・
「でもな、まこっちゃん・・・・・・うちら聞きたいこと、まだ半分も聞いてへん」
あいぼんの言葉に、まこっちゃんは落とした視線を上げた。
紺野・イーター・あさ美は放っておいて、わたしとあいぼんはまこっちゃんの目を見つづける。
気まずそうに視線を逸らそうとしつつも、まこっちゃんは私たちの迫力に気圧されていた。
489 :
書いた人:03/08/10 08:37 ID:N0xwxHEe
あいぼんが横目で、私に合図を送る。
そうか・・・・・・ことの始まりは、私とまこっちゃんだったんだもんね。
自分の中で一つ一つ整理しながら、それでもけしてまこっちゃんの瞳を逃さない。
「まこっちゃんがくれた薬あったでしょ・・・・・・あれを私が紺野ちゃんとあいぼんに分けたから、
多分、だから私たちは内面だけこの時代に戻ってきちゃったんだと思うの。
まこっちゃんはそんな効果があるなんて知らなかったんでしょ?」
「・・・・・・うん」
私の口調がさっきよりも優しいものになっていたせいか、意外にすんなりとまこっちゃんは反応してくれた。
その余韻を逃さないように、すぐに、それでも焦らずに続ける。
「教えて欲しいの。どうやったら元に戻れるんだろう?
分かんないよね・・・・・・じゃあ、これ作ったの・・・・・・誰?」
490 :
書いた人:03/08/10 08:38 ID:P9fRideh
一番聞きたいこと。言わば核心。
元に戻る方法をまこっちゃんが知らないことなんか、もう充分分かってる。
最後の聞いたことの方が、むしろ今一番知りたいこと。
さっきあいぼんとトイレに行って、これだけは聞こうと決めておいた。
まこっちゃんの目を見据えたまま、今日何度目かの神様へのお願い。
お願い・・・・・・またお願い聞いてくれなかったら・・・・・・焼き討ち。
「私も・・・・・・」
「「私も?」」
思わずあいぼんと声が揃った。
いつものおバカさんっぽい表情はなりを潜めて、まこっちゃんは下唇を噛む。
491 :
書いた人:03/08/10 08:39 ID:P9fRideh
「私も・・・あの薬の効果をどうやったら解けるかは、知らないよ。でも・・・・・・」
今度は私たちは続きを促さなかった。
目線だけで必死の圧力。
紺野ちゃんもいつの間にかすべて平らげて、まこっちゃんに向き直っていた。
「でも、あの薬を私にくれた人は・・・言えるよ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・つんくさんだから」
あいぼんが唾を飲んだ音が、まるで拡声器を通したみたいにはっきり聴こえた。
紺野ちゃんは目を大きく見広げて、口を開けっ放しにして。
まこっちゃんは・・・・・・相当の覚悟が必要だったんだろう、慌てて目線を窓の外に移した。
492 :
書いた人:03/08/10 08:40 ID:P9fRideh
無言
何でつんくさんがあんな薬を?って言う疑問と、近い人でよかった、って言うのが頭の中で渦巻いていた。
つんくさんだったら・・・今会える人間だ。
正直、この時代に私たちの身の回りに存在しない人間だったらどうしよう、って思っていたから。
「そう・・・・・・か」
あいぼんはやっとのことで息を整えると、もう一度キツイ視線に戻る。
「じゃあ、まこっちゃんがこっちの世界にきたって言うのも、つんくさんがやったん?」
「・・・・・・・・・・・・」
コクン
しばらく迷ったんだろう。
沈黙のあと、ほんの少しの動作だけど、まこっちゃんは首を縦に振った。
493 :
書いた人:03/08/10 08:40 ID:P9fRideh
「何でこっちに来たかって、聞いてええんかな?」
あいぼんが突き刺さるような口調で告げると、まこっちゃんは眉を寄せて、嘆願するような目をした。
聞かないで、ってことだろうなぁ。
再び目を伏せたまこっちゃんに、あいぼんがもう一度、問い掛けようとした。
「・・・・・・まこっちゃ・・・・・・ん?」
あいぼんが言葉を止めて、紺野ちゃんを睨みつける。
紺野ちゃんがあいぼんに向けて、右の手のひらを真っ直ぐにかざしていた。
もうこれ以上聞かないでおこう、ってことなんだろう。
親友がこれ以上、針の筵の上で座禅をすることが耐えられないらしい。
494 :
書いた人:03/08/10 08:42 ID:9+fENANp
「ま、ええわ・・・・・・」
「ありがとう・・・」
あいぼんに礼を言った紺野ちゃんを、隣のまこっちゃんは信じられない顔つきで見上げた。
あいぼんだって分かっているんだろう。
親友を傷つけないでおきたい、って言う気持ち。
じゃなかったら、そんなニヤッとした笑いは出て来ない。
まこっちゃん・・・・・・感謝しないとダメだよ。
彼女が私たちの気持ち・・・・・・けして怒っているだけじゃない、
問題があったら一緒に解決したい、って気持ちに気付いてくれているかは分からないけれど。
少なくとも、紺野ちゃんが自分をかばってくれたんだ、ってことには気付いて欲しい。
「ほんなら・・・・・・行こっか」
満足げに、紺野ちゃんとまこっちゃんを見比べて、そして私に微笑みかけると、あいぼんは立ち上がった。
私たち3人の視線に気付いて、あいぼんはも一度笑う。
「つんくさんに会わんと・・・・・・紺野ちゃんがこっちにいられるの、あと1日ないんやから」
495 :
書いた人:03/08/10 08:47 ID:9+fENANp
今日はここまでです。
そろそろ佳境。
>>481 実際に一日で書く量がこれくらいなので、申し訳なく。
>>482 実はネカフェに行ったことが無かったりします。
>>483 でも口の悪いののさんが結構好き。
>>484 以前、私の書いたダーヤスも『現実よりかっこいい』と言われました。
・・・・・・どうしても書いてるうちに、かっこよくしてしまう私。
>>485 未成年は吸っちゃいけませんよ。
ひょえー!!つんくさ〜ん!
497 :
名無し募集中。。。:03/08/10 17:59 ID:q76h7UaN
交信乙です〜!
つんくPキタ━(゜∀゜)━!
もう一度なっちが出て来るのかが気になります。(なんか知ってたっぽいですし。)
おいらも口悪のんちゃんは大好きっすよ〜!
それにしても、あいぼんの関西弁が本物っぽくて気に入ってます!(ちなみにおいらはあいぼんと同郷。)
あ〜、次号も楽しみですのでがむばってください〜♪
♪ |\o/| ルンルン♪
♪ ∂/ハ)ヽヽ
(0^〜^0) <作者さん更新乙です。
∩ ∪ヽ うーん。この作品は読んでてとても楽しいですね。
(( (⌒)-、 ) 次の場面のことを考えるとワクワクしますYO。
 ̄ (__丿
更新乙です。
やっぱ、あいぼんはええですな♪
あいぼんカコイイ!紺野ちゃんもまこっちゃんも食べすぎ!
そしてこの話のののさんはなんだか賢そうに感じるw
それにしても続きが気になります・・・。いつもいいところで終わりすぎ。
ネタバレになったら困るけど、
>>497さんと同じくあの人の存在が気になります。
ムハー(;゚∀゚)=зワクワク
501 :
書いた人:03/08/12 18:28 ID:5tLQb0Oe
――――――――――
『おっ!お前らちゃんとやっとるか?』
『あ、つんくさん。おはよぉございま〜す』
『おう、今日も元気だけが取り得やな、辻』
『・・・・・・・・・・・・・えへへへ』
『・・・怒るところやと思うんけどな。冗談や、じょーだん』
『あれぇ!?つんくさん、どーされたんですかぁ?』
『お、加護に紺野と、小川か。いやな、プロデューサーなんやから、一度は舞台だって見にこんと・・・・・・な』
『珍しいですね』
『・・・・・・真顔で言うなや、紺野。おぅ、そうや。ちょっと心理テストやってみんか?』
『まぁた、うちらに合わせんでもええんですよ、つんくさん』
『大体心理テストが流行ったのなんて、すっごい昔だよねぇ』
『・・・・・・あぅ』
『あ・・・・・・・・・・まぁ、ね。みんな折角つんくさん教えてくれるんだから、やってみようよ』
『・・・・・・仕方ないですね』
『ありがとな、小川に紺野。お前らだけがモーニングの良心や』
『・・・どーでもええから、早くしてくれません?』
502 :
書いた人:03/08/12 18:29 ID:5tLQb0Oe
『ああ、うん。一度だけ、自分の人生のどこかに戻れるとする。
だったらいつに戻る?もちろん戻らんでもええで。何年前か、で答えてくれや』
『私たちまだ、15年とちょっとしか生きてないんですけど・・・』
『まあ、そう言わんと答えてや。お前はどうなん?加護』
『うちは・・・・・・・別に今のまんまでええかなぁ・・・』
『私は・・・・・・うーん・・・マニキュアひっくり返さないようにしたいから・・・・・・3年前かな?』
『怪我してみんなに迷惑かけちゃったんで、2年前の秋ですね』
『ほぉ・・・・・お前はどうや?小川』
『私は・・・・・・別に今はいいですよぉ。
でもぉ、この先にそのチャンスをとっておいて、その時に使います』
『なんかせこいなぁ・・・まこっちゃん。で、これで何が分かるんですか?』
『これか?これでなぁ・・・』
『『『『これで??』』』』
『・・・・・・・・・・・・あかん、忘れてもうた』
『さぁて、みんなでケータリングでもしばきに行こか』
『ぐあぁぁ・・・・・頼む、俺を見捨てんでくれぇ』
――――――――――
503 :
書いた人:03/08/12 18:29 ID:5tLQb0Oe
「の・の!!!!!」
「はい!?」
耳元で炸裂したあいぼんの大声に、思わずおかしな返事をしてしまった。
つんくさんって名前が出てきて思い出した、あの心理テスト・・・・・・答えはなんだったんだろう?
お店を出て少し歩いた場所の、ベンチの周り。
まこっちゃんがこっちの時代のつんくさんから貰ったプリペイド携帯で連絡をつける間、私は少し考え込んでいた。
「・・・・・・のの、あんまりボーっとしとらんといて。
つんくさんが何考えてるんか分からんから、これから気ぃ抜いてられんで」
「・・・・・・ごめん。あのさ・・・・・・つんくさんが私たちに心理テストやったの、覚えてる?」
携帯に耳を押し当て神妙な顔をしているまこっちゃんを横目に、隣に立っているあいぼんを見上げる。
あいぼんは一瞬顔をしかめて、小さく唸りながら私の目を見た。
「うーんと・・・・・・そんなんあったかな?紺野ちゃん、覚えてる?」
「・・・・・・さぁ?あったって言えばあったような気がするけど・・・」
かぼちゃプリンで満たされた胃をさすりながら、紺野ちゃんも首を傾げる。
どうやらあいぼんは髪の毛に、紺野ちゃんは消化に、栄養が優先配分されているらしい。
504 :
書いた人:03/08/12 18:30 ID:5tLQb0Oe
「・・・・・・ダメだぁ・・・・・・出てくれないよぉ」
携帯を閉じたまこっちゃんが、『今日いきなりこの世の終わりが来ちゃいました』って感じの頼りない声をあげる。
メンタル面がのび太くんのまこっちゃんに、体の丸っこさならドラえもん基準の紺野ちゃんが頬を膨らませた。
「えぇ?でもこっちのつんくさんにだって、まこっちゃん会ってるんでしょ?」
「うん・・・・・・何かあったら電話しろ、って言って、この携帯渡してくれたんだよ」
「もう一回やってみなよ。番号間違えてないよね?ちゃんと番号通知にした?」
「ちゃんとやったと思うけどぉ・・・・・・分かった、もう一回やる」
車椅子の後ろから紺野ちゃんに見守られて、まこっちゃんは再び携帯を操作。
その姿から、なんだか紺野ちゃんのお姉さんな部分が見れて、とっても微笑ましい。
紺野ちゃんの長い髪が風に揺れて、まこっちゃんの頬に当たる。
くすぐったそうに、でもそれがとっても嬉しそうで、まこっちゃんは目を細めていた。
505 :
書いた人:03/08/12 18:31 ID:1rHu5Y9R
「・・・・・・・なあ、のの。まこっちゃん、結局何しにこっちに来たんかなぁ?」
その姿を笑顔で見守る振りをして、あいぼんが声を潜めた。
私もそれに倣って、視線を二人に向けたまま、話を続ける。
「・・・・・・さぁ。私たちがこっちに来たことと、関係有りそで無いんだよねぇ」
「うちらがこっちに来たんは・・・・・・事故みたいなもんやん?
そんでもまこっちゃんは、自分の意思で来たと思うんけど・・・」
「あの薬の出元もつんくさんだし、まこっちゃんをこっちに送ったのもつんくさんなんでしょ?
一緒の目的だったのかなぁ?」
「そこが分からん・・・・・・そこだけ、まこっちゃんは言いたなさそうやったしなぁ。
あんま問い詰めすぎても話が進まんから、深追いせんかったけど」
「それでよかったと思うよ・・・・・・あぁ!」
506 :
書いた人:03/08/12 18:31 ID:1rHu5Y9R
思い出した。
ちょっと手掛かりになるかもしれない、まこっちゃんの言葉。
私の声に、初めてあいぼんが私に向き直る。
それを横目で確認すると、とっさにまこっちゃんを見た。
・・・・・・まだ紺野ちゃんが気を引いている。
「あのね・・・・・・まこっちゃんが薬をくれた日の夜、電話があったんだ」
私の言葉に、あいぼんが唾を飲んだ。
横目であいぼんの目を見つめながら、続ける。
「そのときね・・・まこっちゃんが言ったの。
『これでやっと私もやり直せるよ』って。
その時は私が痩せればまた向上心を持てるから、
初心に返ってやり直せる・・・って言いくるめられたけど」
507 :
書いた人:03/08/12 18:32 ID:1rHu5Y9R
隣で相棒が、深く息をついたのが聴こえた。
「・・・・・・なら、まこっちゃんはこっちに戻って自分をやり直そうとしたっちゅーことかな?」
「分かんないよ。そうかもしれないし・・・・・・違うかも」
私の口から正解が出ることなんか、最初から期待してなかったんだろう。
あいぼんは私の言葉に頷くと、初めて私に向けて微笑みかけた。
「とりあえず、つんくさんに聞けば分かることちゃう?
元に戻る糸口だけはつかめたんやから、上出来、ってことにせんと・・・・・・な?」
「そだね」
私も合わせて笑う。
深い深い闇にいたことの反動が来たんだろう、
やっと掴みかけた光に、私たちは愉快で仕方が無かった。
508 :
書いた人:03/08/12 18:33 ID:1rHu5Y9R
「ダメだぁ・・・・・・通じないよぉ」
まこっちゃんのミドルネームを『のび太』に決定したくなるような声で、彼女は口を縦長に空けた。
紺野ちゃんも横で首を傾げて、『おかしいなぁ』と呟いている。
少し諦めがかった表情で、紺野ちゃんは左手をこめかみに当てた。
「何度やっても、つんくさん出てくれないみたい」
「んなわけないやん・・・・・・この時代のつんくさんと一番近いの、多分まこっちゃんちゃう?
それなのに出てくれないって・・・・・・ウソの番号教えられたんちゃうの?」
およそ考えたくない推論をぽんぽんと口に出すあたり、あいぼんは怖いもの知らずだ。
『違うよぉ』とまこっちゃんは、信憑性の無い反論をしている。
509 :
書いた人:03/08/12 18:34 ID:Z8RCppkc
「まだ私たちも、この時代のつんくさんの番号とか聞いてないもんねぇ」
自分の携帯のアドレスをスクロールしてみても、3年後にはあるつんくさんの項は無い。
マネージャーに聞くって手もあるけど、
昨日あんな傾き者(かぶきもの)なことしちゃった私たちに教えてくれるかは疑わしい。
「貸してみ?まこっちゃん。うちの携帯から掛けてみる」
事ここに至っては携帯の性能の問題じゃないと思うけど、あいぼんはまこっちゃんの携帯を奪うと、窓を見ながら自分の携帯を操る。
その様子を心配そうにまこっちゃんは見上げていた。
腰に手を当てて仁王立ちしたまま、あいぼんは携帯を耳に、顔をしかめた。
「・・・・・・・・・鳴ってんけど・・・・・・・・・」
「通じはするんだよ。でも出てくれないの」
「今お仕事中とかじゃないの?」
「ううん・・・・・・今日は一日中オフだから、絶対に電話に出れる、って言ってたもん」
そんじゃどうしようもないね・・・と言おうとしたときに、あいぼんの顔色が変わった。
突然声質が半オクターブほど上がる。
510 :
書いた人:03/08/12 18:35 ID:Z8RCppkc
「あ?もしもし?つんくさんですかぁ?」
「・・・・・・通じてんじゃん」
私の言葉に、まこっちゃんは首をブンブン振って必死に何かを言おうとした。
でも紺野ちゃんが人さし指を唇の前に立てて、それを押し止める。
「はいぃ・・・・・・加護ですぅ。え?どーしてって・・・・・・・・・いえ、いろいろあってですねぇ。
それで、今からちょっとお会いしたいんですけどぉ・・・・・・いぃえ、ののも一緒です。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・それちゃうんですけど・・・・・・」
ここで電話を掛けたのがあいぼんで正解だったと思う。
私だったら、つんくさん相手にちゃんと交渉する自信が無い。
511 :
書いた人:03/08/12 18:35 ID:Z8RCppkc
「・・・・・・・・・・・まあ、ズバッと言うと、小川麻琴の件なんですけど・・・
・・・・・・いや、そんな大声出さんでも聞こえてますぅ・・・・・・・
はい、います・・・・・・・・・・・・そーですね、お願いします。そんじゃ、今から行きますんで」
『これでも何か文句有る?』って感じで、あいぼんがまこっちゃんに携帯を叩き返した。
紺野ちゃんは『すごぉい』って感じで感嘆の目を向けて、まこっちゃんは呆気にとられて。
「さっきは出なかったんだよぉ」
まるで私たちに、わざと自分が連絡をつけなかったとは思われたくないように、言い訳がましくまこっちゃんは呟いた。
そんなこと言われなくても、疑いなんかしないのにな・・・
そう思ってあいぼんを見上げると、
彼女は『思いっきり疑ってますッ』って感じの視線を、まこっちゃんに突き刺していた。
512 :
書いた人:03/08/12 18:41 ID:EGC2JLEN
今日はここまでです。
高校の卒業式、担任(女)への寄せ書きに
『傾け!!』と一言だけ書いたS君は元気だろうか・・・
>>496 唐突でごめん。
>>497 私が東人なので、凄い適当に関西弁は書いてます。
次からはsageて書いてくださいね。
>>498 そう言っていただけると、ありがたいです。
>>499 最近あいぼんさんの魅力を再認識してきた私。
>>500 書けば書くほど実体像から乖離していきます。
やったー!!更新されてるー!
最近ずっとレス一番乗りで非常にうれしい。
だんだん小ネタの面白さが増してきたような気がします。
更新乙です〜
sageの存在は今日知りました(^_^;)
以後注意しますm(_ _)m
それにしても、またしても意味深なのが出てきましたなぁ〜(心理テストですか…)
今後の展開も楽しみにしてます〜
(0^〜^)<作者さん更新乙です。
つ日 うーん。いいですねー。雰囲気サイコーです。
続きを読みたいよー。
516 :
前田慶次:03/08/13 02:38 ID:qV6e/c3e
小川麻琴とやらのヘタレ具合、まさにのび太級よ
だがそれがいい
更新乙です。
つんくPは一体何者だ?
518 :
書いた人:03/08/14 19:46 ID:4elOkau1
――――――――――
「・・・・・・大丈夫?まこっちゃん」
「・・・・・・・・・・・・うん」
「つーか、顔蒼いの通り越して、どす黒いで。ホンに大丈夫なん?自分」
「・・・大丈夫」
つんくさんに指定されたマンションのエレベーターは、いい具合に空調が効いていた。
イイとこ住んでるなぁ、とか言いたい所なんだけど、それ以上にまこっちゃんの変化の方が気になる。
さっきから・・・・・・いや、あのベンチからここに向かうタクシーの中、
次第にまこっちゃんの顔色が悪くなっていった。
その度にまこっちゃんを心配して3人のうちの誰かしらが声を掛けるけど、
返事とは裏腹にちっとも大丈夫そうじゃない。
死刑台に向かう死刑囚・・・連行される宇宙人・・・
いや、どっちも見たことないけど、そんな感じ。
『お客さん、吐かないで下さいね』って、運転手さんが心配する気持ちが痛いほど分かる。
519 :
書いた人:03/08/14 19:47 ID:4elOkau1
−チン・・・
私たちの心とは正反対の、軽やかなベルの音がして、エレベーターのドアが開いた。
音も立てずに、スーッと開いた金属の扉の向こうには、見知った影が立っていた。
少しだけ若々しさが見えるその顔は、
プロデューサーとして大成功したことなんか他人事みたいに、疲れきっていた。
つーか何で、室内なのにサングラス掛けてんのよ。
「・・・・・・つんくさん」
「よう来たな。はよ、上がれや」
そう言って廊下を先導するつんくさんが、歩きながら少し不思議そうな顔をする。
「辻と加護と小川は分かるんやけど・・・・・・その子はどういった人なん?」
「あぁ・・・この子はですねぇ・・・・・・」
・・・まこっちゃんと同期の紺野あさ美ちゃん、って言おうとした所を、つんくさんが私の目の前に手のひらを向ける。
突然の事に驚いて、言葉を止めた。
520 :
書いた人:03/08/14 19:48 ID:4elOkau1
「・・・・・・いや、聞かんとこう。茶色い瓶の薬を飲んだんやろ?
せやったら、俺と将来関わりのある人間かも知れんしな。
下手に先のことなんか知らん方がええし・・・・・・君って呼ばせてもらうけど、ええか?」
「その方がよさそうですね」
紺野ちゃんの言葉に、つんくさんは学校の先生みたいな微笑を向けた。
つんくさんが鍵を使った後、何枚かの扉を通される。
まこっちゃんの顔色がいよいよ悪くなってきた。
「・・・・・・この先、何があるんですか?」
「・・・そう結論急ぐなや、加護。こっちも少し聞いとかなあかんことが有るしな。
・・・・・・・・・とりあえず、ここや」
通されたのは、ソファーとテーブルしかない、なんつーか質素を通り越して殺風景な部屋だった。
521 :
書いた人:03/08/14 19:48 ID:4elOkau1
――――――――――
「ふぅん・・・・・・辻も加護も、全然変わんないと思うんやけどなぁ・・・
内面だけは、3年後のってことか」
テーブルの上に並べられたジュースのグラスには、誰も手をつけなかった。
向かいに座ったつんくさんの話に、まこっちゃん以外の私たち3人が身を乗り出す。
まこっちゃんはって言えば・・・・・・何かの論点に来るのが恐ろしいみたいに、身体を縮ませていた。
じろじろと私たちの顔を舐めるように見るつんくさんに、あいぼんはあからさまに嫌な顔をした。
「証明しろっていわれても、無理ですけど・・・確かに、3年後です」
「そう言われれば、中学一年生にしたら、しっかりしとるかもしれんなぁ」
「もーちょっと、自分んとこの人間よっく見といて下さいよ」
唇を尖らせて抗議したあいぼんに、照れくさそうにつんくさんが頭を下げた。
「え?じゃあつんくさんも、あのお薬の効果知らなかったんですか?」
522 :
書いた人:03/08/14 19:50 ID:iGxw1jSU
目を見広げて、慌てたように早口で喋る紺野ちゃんに、つんくさんは優しく微笑み掛けた。
「いや、知っとったで。ただ実際にあれを飲んだ人間を目にするのは、初めてってことや。
・・・・・・とにかく、3年後に君と辻と加護が、あの薬を飲んで、こっちに来てもうた、ってことか?」
「正確には薬を貰ったのはののだけです。まこっちゃん経由で。
うちと・・・・・・この子は、ののから分けてもらって、それを飲んでもうただけですから」
けして『紺野あさ美』って名前を出さないように注意して、あいぼんが続ける。
「・・・・・・手っ取り早く聞きますけど、あの薬、
確かにつんくさんがまこっちゃんに・・・・・・小川に渡したんですよね?」
あいぼんが『小川』と言い直したのを、まこっちゃんはどこか悲しそうに見つめる。
頷くつんくさんに、あいぼんは少し警戒してるんだろう、言葉を選びながら続ける。
「別に・・・・・・その辺の目的なんかええんですけど・・・戻ること、できるんですよね?」
523 :
書いた人:03/08/14 19:51 ID:iGxw1jSU
つんくさんの細い眉がピクッと上がる。
少しまこっちゃんの方を見て、彼女の青白い顔を一瞥すると再び私たちに視線を戻した。
紺野ちゃんはそれを見逃さなかったらしい。
不安げな表情を、さらに強める。
「戻ることは、できるで」
「「「よかったぁ・・・・・・」」」
3人の声が揃ったのは、多分それが心からの言葉だったから。
つんくさんはそんな私たちを見て、前歯を少し出して笑った。
「大丈夫。あの薬も・・・・・・小川をこっちによこした機械も・・・どっちも俺が造ったもんちゃうけど。
まぁ、知り合いに・・・もう死んだけどな・・・頼んで譲ってもらった、ってとこか・・・
これ以上、お前らが知る必要もないやろ。
その・・・譲ってもらった時に、ちゃんと戻し方も聞いてあるから。
その気なら、今すぐにだって3年後に帰れるで」
ホッとする私たちを見て、つんくさんはどこか怪しむような顔をした。
「・・・・・・つーか、何で俺が・・・3年後の俺が、小川にあの薬を渡したのか。
何で小川がこっちに来てるのか。その辺は聞いとらんのか?」
524 :
書いた人:03/08/14 19:52 ID:iGxw1jSU
まるで怒られた子どもみたいに、まこっちゃんは肩を震わせて、
私たちを覗き込むように見つめる。
ファンデーションのせいだけじゃない、顔色は蒼白になっていて。
小動物のような目付きが、びくびくと揺れていて。
膝の上に置いた指が、小刻みに震えていた。
「あのですねぇ、ホントは聞こうかって思っとったんですけど・・・・・・」
まこっちゃんの様子を横目で見ながら、あいぼんは言葉を詰まらせた。
尖らせた口先を少し曲げて、そして両脇の私と紺野ちゃんに、交互に目を移した。
「・・・・・・聞けなかったんだもねぇ」
私の言葉に、つんくさんが『悪い冗談を言うな』とでも言いたさそうに、頬の筋肉を上げる。
「んなわけないやろ。
3年後の俺かて、多分小川にホントの薬の効果なんか言うとらんからな。
お前ら・・・・・・特に辻、お前は、こいつに騙されたんやで」
『騙す』という言葉にまこっちゃんは少しピクッと動いたけれど、
その目は私たちではなく、ただ自分の膝頭だけを見つめていた。
525 :
書いた人:03/08/14 19:53 ID:iGxw1jSU
つんくさんは憂鬱そうに、どこか哀れんだ目で、まこっちゃんを見遣る。
「なあ、小川。言うとったほうがええんちゃうかな?
何でお前がこっちの時代に来てるのか。
何でお前が辻にあの薬を・・・効果も分からんのに、ウソついてまで渡したか。
・・・・・・それと、何で俺がお前からの電話に絶対出んかったか、これはお前も知っときたいやろ?」
畳み掛けるような言葉に、まこっちゃんは顔をサッと上げると、大きく首を横に振った。
つんくさんは目を細めて、どこか軽蔑するような視線を投げかける。
「・・・・・・そうか?例えこいつらが聞きたくない、って言うても、俺は言わなあかんと思うけどな。
俺の考えが3年後も変わってなかったら・・・・・・多分、小川がこっちに来たってのは・・・」
「待ってください!!」
まこっちゃんの大声に、紺野ちゃんもあいぼんも、俯きがちだった顔を上げた。
サングラスの上から、つんくさんの目付きはさっきのままで、まこっちゃんを突き刺す。
「私が・・・・・・私から言いますから。
・・・・・・・・・・3人とも・・・本当にごめんなさい」
まこっちゃんの言葉の後、部屋の換気の音だけが静かに響いていた。
526 :
書いた人:03/08/14 19:58 ID:iGxw1jSU
今日はここまでです。
今更ながら、このスレの
>>18が自分であることに気付きました。
>>513 同一人物だったんですか。
>>514 意味深といえば意味深ですが、あまり深く考えなくても可です。
>>515 続きです。またしばらくシリアスになりますが、宜しくです。
>>516 蛮頭大虎が死ぬ辺りは、何度読んでも泣けてきます。
>>517 その辺を受け入れてもらえるかが、凄く不安。
更新乙です〜
個人的に深読みするのが大好きなんで勝手に妄想しときます
さあ、いよいよ真実の扉が開かれるって感じっすね〜
次回も楽しみにしてます〜^^
更新乙です。小川が三年前に戻った理由とはなんだろう。次回を楽しみにしてます。それにしても、更新ペース早いですね。読者としてはとてもうれしいです。
(0;^〜^)<作者さん更新乙です。
つ日 うーん。い、息が出来ん・・・
つ、続きを・・・
まこっちゃ〜ん!!どうなっちゃうのよー!
更新がこれほど待ち遠しい小説は過去にもないなぁ。
531 :
書いた人:03/08/15 23:29 ID:u03D6QK8
車椅子に座ったまま、どこか覚悟を決めたように一言一言搾り出す。
「腰が・・・・・・こうなった次の日にね・・・つんくさんが来たの。
3年後のつんくさんなんだけど・・・・・・」
そう言ってまこっちゃんはつんくさんに目を遣る。
つんくさんは深くソファーに腰掛けたまま、目を閉じ、腕を組んでじっと話を聞いていた。
「つんくさんがね・・・・・・言ったの。
お前は本当に、モーニング娘。で今まで満足にやってこれたかって」
「酷い・・・・・・」
紺野ちゃんが思わず呟いたその声に、まこっちゃんは何も反応しなかった。
訥々(とつとつ)としたその口調が、どこか諦めを感じさせて怖い。
532 :
書いた人:03/08/15 23:30 ID:u03D6QK8
『モーニング娘。に入って今まで満足にやってこれたか』
これに心からはい、って答えられる人なんて、メンバーにいるんだろうか。
誰だって・・・私だってあいぼんだって、紺野ちゃんだって。
勿論やぐっさんもおばちゃんもなっちゃんも、飯田さんも・・・
多分、あの能天気な梨華ちゃんだってそうだ。
どこかに満足していないことがある。
ましてや、怪我をした直後のまこっちゃんにそんな言葉を浴びせるなんて。
私たちから少し非難めいた視線を送られているのにも、
目を閉じたつんくさんには届いていないようだった。
533 :
書いた人:03/08/15 23:31 ID:u03D6QK8
「でね・・・・・・・・・言われたの。
やり直したくないか?
俺はお前を3年前に・・・あの装置はこの時代にしか繋げないらしいんだけど・・・
3年前に戻すことができるけど、その時に帰って、やり直してみたくはないか、って」
その言葉に、つんくさんは腕を組んで目を閉じたまま、続ける。
「時間を行き来できるからって言うても、自由にどんな時間にも行ける、ってわけちゃうで。
入り口と出口が決まっとる・・・・・・トンネルみたいなもんや。
その穴が3年後と・・・この時代に2つある。
お前らがあの薬を飲んでも、この時代に来るっていうのは・・・
やっぱり何か時間的に強いもんが、2000年の4月にあるんやろうな」
つんくさんの言葉は、耳から入っても、どこかへ抜けていった。
ただひたすら、吐き気がした。
534 :
書いた人:03/08/15 23:32 ID:u03D6QK8
「だけど・・・・・・条件があるって。
お前を過去に送るには・・・・・・誰かにこの薬を飲ませなくっちゃいけないって・・・・・・」
まこっちゃんの声が、しゃくりあげて段々途切れてきた。
瞬きもせず、私たちは彼女を見つめる。
精一杯、まこっちゃんは顔を上げて、私たちを見ようとする。
でも・・・・・・多分、涙に曇って何も見えていないだろう。
「でね・・・・・・どんな薬かって聞いても、教えてくれなくて・・・・・・
ただ・・・・・取り返しがつかないかも・・・・・・って・・・・・・・言われた・・・
けど!・・・私は!・・・・・・やり直したかったの・・・・・・・・・
いつの間にかみんなから離されていって、同期のみんなにも・・・」
隣であいぼんが鼻をすすった音が聞こえた。
泣いてるんだ・・・・・・
その時初めて、自分の目からも涙が出ていたことに気付いた。
535 :
書いた人:03/08/15 23:33 ID:u03D6QK8
涙を拭くことも忘れて、まこっちゃんは私たちに叫ぶ。
「だからね・・・・・・・・・だから!
どうしても戻りたかったの!
まだ自信に溢れてた頃の自分にッ・・・・・・
3年前に戻って・・・それで、私を・・・この時代の私を、失敗しないようにずっと見つめたかった!」
まるで今の言葉に全てのエネルギーを込めてしまったみたいに、まこっちゃんは大きく息を吸った。
分からなかった。
まこっちゃんが私を騙したことが、じゃない。
まこっちゃんがそこまで思い悩んで、そこまで決意していたなんて・・・・・・分からなかった。
「・・・・・・・・・だから」
少しトーンダウンしたみたいで、でも涙を溢れさせたまま続ける。
「だから、辻ちゃんに・・・・・・・・・・ウソついて・・・・・・・・・」
536 :
書いた人:03/08/15 23:34 ID:u03D6QK8
『もういいよ!』
って口に出したくても出せなかった。
でもその代わり、紺野ちゃんが隣にいるまこっちゃんの上半身をきつく抱きしめた。
泣きじゃくるまこっちゃんを胸に抱いて、紺野ちゃんだけは泣かずに、じっと前を見ていた。
「・・・・・・あとは俺が説明した方が良さそうやな」
私たちの様子を、複雑な・・・・・・多分複雑だったんだと思う。
『複雑な』無表情で見ていたつんくさんが、サングラスをかけなおした。
「挫けそうになった時に・・・・・・自分で頑張るか、友達に頼るか、人それぞれや。
モーニング娘。はライバルやけど、それでもお互い信頼してて欲しい。
本当に苦しい時にも、仲間を信じて努力できるか・・・それとも、仲間を踏み台にするか」
多分・・・・・・私の目は、つんくさんを睨みつけていたと思う。
537 :
書いた人:03/08/15 23:35 ID:u03D6QK8
「もしも・・・・・・本当に薬を飲ませたら・・・その時は薬を飲んだ人間に処置すればすぐ治る。
3年後の俺は、誰に薬を渡したか聞いとったはずや。
だから、薬を飲まされよった人間は、すぐに治すつもりやった。
でも・・・・・飲ませた奴は・・・」
つんくさんが次の言葉を吐きかけたとき、その言葉をあいぼんが遮った。
・・・・・・予測は・・・私でもつく。
「せやから・・・・・さっきのまこっちゃんの電話・・・出んかったんですね?」
静かに頷くつんくさん。
つんくさんは・・・・・・多分今のつんくさんも3年後のつんくさんも・・・決めていたんだ。
もし本当にあの薬を他人に飲ませてまで過去に来るようなメンバーがいたら、
その時はつんくさんは過去にその人を置き去りにするつもりだった。
今の今まで気付いなかったんだろう・・・まこっちゃんはハッと顔を上げたけれど、すぐに目を伏せた。
そんな事実よりも、もっと彼女にとっては今は大切なことがあるってことだろう。
「ゴメン・・・・・・・ね」
「最低やな・・・」
今日何度目かのまこっちゃんの謝罪に、あいぼんが吐き捨てるような声が重なった。
538 :
書いた人:03/08/15 23:37 ID:u03D6QK8
今日はここまでです。
16・17両日は更新できませぬので、ご了承を。
場面が場面なので、失礼ですが個別レスは少し控えます。
作者さん更新乙です。
うーん。場面が場面なので
私もAAを控えます・・・
作者さん、更新乙です。
今日はじめて読みました。
くわわ、こんなところで止まるなんて。
それはともかく、この小説の辻の性格、すごい好みです。
541 :
ウナ:03/08/18 10:49 ID:JehzucO4
書いた人さん(・∀・)イイ!小説書きはりますな〜
542 :
書いた人:03/08/18 11:53 ID:DN0FLaJX
「ゴメン・・・・・ね」
搾り出すようなまこっちゃんの声に、あいぼんは一瞥をくれるとつんくさんに向き直った。
「別に・・・まこっちゃんが最低なんて言うてない。
つんくさん・・・・・・なんでそこまでするんですか?
人陥れるような真似して、何が嬉しいんですか?」
泣きながら睨みつけるあいぼんに、つんくさんは少し目を見広げたように見えた。
まこっちゃんを肩に抱き寄せたまま、紺野ちゃんが呟く。
「まこっちゃんも・・・・・・帰してください。
私も、加護ちゃんも・・・・・・直接お薬渡された辻ちゃんだって、多分、そう思ってます」
「・・・・・・加護の言う通り・・・最低なんやろうな、俺は」
紺野ちゃんに少し笑いかけて・・・・・・あのいつもの人を馬鹿にしたような笑いじゃなくって、
少し寂しそうに、つんくさんは口の端だけでそう言った。
543 :
書いた人:03/08/18 11:54 ID:DN0FLaJX
「最初な、こいつがこっちの時代に来て、すぐに今の自分の所にすっ飛んでくと思っとった。
未来変えるんには、早めにせんとあかんからな。
で、さっさとこいつとの連絡切ろうと思っとった」
サングラスをとったつんくさんの目には、大きく隈ができていた。
「せやけどな・・・・・・最初にこいつが言ったんは、この時代に来れたことへの喜びでもない、
自分が騙した辻や、出し抜く事になる同期の奴らへの気兼ねやったわ」
「だから・・・・・・私の所に電話してきたの?」
しゃくりあげながら頷くまこっちゃん。
「何で・・・・・・そう思ってくれるんだったら、こっちに来る前に・・・
辻ちゃんにお薬渡す前に・・・・・言ってくれなかったの?」
紺野ちゃんは大きな瞳を揺らしながら、強くまこっちゃんの両肩をつかんでいた。
でもまこっちゃんは答えられずに、ただ首を横に振るだけで。
544 :
書いた人:03/08/18 11:55 ID:DN0FLaJX
「・・・・・・小川が君に電話してるの見て、考えたわ。
まあ・・・・・少しは自分の友達のこと考える気持ちもあったんかな、って。
それに加護と辻がついてきたのは、ホンマ、凄い偶然やけどな。
・・・・・・・・・そんでも自分がやったことが全部知られてしまうんも、受け入れられたんなら、
まだこいつがお前らを信じておることの証拠かもしれん。
でなかったら、お前らと一緒に俺に会うのなんか、でけんわ」
つんくさんの声に振り向いた紺野ちゃんの目は、いつものとろんとした感じと違う、
強い意志に溢れた目だった。
それに思わず、つんくさんは背筋を伸ばす。
「多分・・・・・・大事なものって・・・なくなっちゃうかもしれない、
って気付いて初めて、大切だって思うんじゃないですか?」
「そうなんかもな・・・・・・」
545 :
書いた人:03/08/18 11:56 ID:DN0FLaJX
つんくさんは人さし指と中指を口に当てて、何かをじっと考えているようだった。
多分、まこっちゃんがこっちに来て、それから考えていることの結論を出そうとしているんだろう。
あの疲れきった顔の意味が、ようやく分かった。
つんくさんだって神様じゃないんだ。
いくら凄い機械を持っていて、とんでもない決意をしたとしても、迷うから。
そう考えると、少しつんくさんを睨んでいたこの目も緩んだ気がした。
「あの・・・・・・」
「なんや?辻」
「私はまこっちゃんに騙されたんですけど・・・・・・
でも、別にだからって、まこっちゃんを憎い、って思わないです。
私だって・・・まこっちゃんと同じことを言われて・・・本当に、誘いにのらない自信なんて無いです」
「・・・・・・・・・・・・」
「つんくさんだって・・・」
「?」
「そうなんじゃないですか?」
546 :
書いた人:03/08/18 11:58 ID:9mEeBTUD
その言葉に、微かにつんくさんがはにかむ。
あいぼんはまだ、つんくさんを睨んでいた。
高校1年生の女の子が背負うには、アイドルって言うのは重過ぎる。
いつ自分が不要とされるか、びくびくしながら、それでも頑張らなくちゃいけない。
そしてどんなに頑張ったからって、結果が付いてくるとも限らない。
「まこっちゃんがしたのは・・・・・・確かにちょっぴり酷いけど・・・
でも、一回だけで全部のチャンスを奪っちゃうのは・・・もっと酷いです」
私の言葉を、あいぼんがつなげる。
「・・・・・・・・・もうまこっちゃんも、分かったんと違いますか?
どんなに辛い時でも、友達がおれば・・・・・・その辛いことを全部解決できんけど、
それでも少しは・・・・・・心の救いになるってこと」
547 :
書いた人:03/08/18 11:58 ID:9mEeBTUD
つんくさんが自嘲気味に笑った。
少し視線を落として、まるで溜息をつくように。
「・・・・・・・中学一年生に諭されると思わんかったわ」
「中身は高校1年生ですって」
紺野ちゃんはまだ涙に震えるまこっちゃんを抱き寄せていた。
つんくさんはそれを見て大きく頷いた。
「・・・・・・分かった。小川は未来に帰す。
3年後の俺も・・・まあ、分かっとったんやろうな、こういう結論になんのは」
その言葉に、明るい笑いで返したのは・・・・・・私だけだった。
あいぼんはまだつんくさんを睨みつけていたし、紺野ちゃんはすこし上の空で。
そしてまこっちゃんは、まだ泣きつづけていた。
548 :
書いた人:03/08/18 12:00 ID:9mEeBTUD
――――――――――
窓の外はもう真っ暗になっていた。
5人で夕食をとった時も、私たちは言葉少なで。
こんなに重苦しい食事は、初めて。
最後にお皿に残った覚めかけのスパゲティーを、私はいつまでも食べることができずに、
ひたすらフォークに巻き続けていた。
「今日はもう遅いから・・・」
聞いているか分からない私たちに構わずに、つんくさんは続ける。
「4人で一緒に泊まっていけや。
明日になったら、辻と加護と君・・・すぐに解除薬を飲んでな」
「あの・・・・・・この子はちょっと遠くから来てるんで、帰らないといけないんです」
「だったら尚更や。ホントなら君は東京にいないはずなんやから。
明日一番にでも、すぐに地元に帰るんやな」
下を向きながら、紺野ちゃんが微かに頷いた。
549 :
書いた人:03/08/18 12:00 ID:9mEeBTUD
――――――――――
4人で布団を並べて、あいぼん、私、紺野ちゃん、まこっちゃんの順に床に着いた。
あいぼんはさっさと壁の方を向いて、動きもしない。
この間お泊まりした時なら、色んなこと話して、いつまでも眠れなかったのに。
誰も話をしないのは、今日一日で色んなことがありすぎて眠いからだけじゃない。
何を話していいのか・・・・・・分からないからだ。
暗闇の中で、外で走る車の音だけが聞こえる。
目を開いていても、見えるのは横で微かに身体を動かした紺野ちゃんだけ。
この暗闇と同じだ。
私たちには見えやしないんだ、お互いが何を考えて、どう感じているのかなんて。
つんくさんにはああ言ったものの、私たちはそこまで『信頼しあえる』友達なんだろうか。
自信が無かった。
550 :
書いた人:03/08/18 12:02 ID:vb/UDwq3
明日になれば・・・・・・
紺野ちゃんは北海道に帰る。
私たち3人はあの薬の効果を無くして、また3年後に戻るはずだ。
そしてまこっちゃんも・・・・・・
帰った後、私たちは今まで通りに接することができるんだろうか?
『今まで』があまりに脆い関係だったって分かった後も、本当に?
「私・・・・・・」
空耳かどうか分からないような、小さな声で呟く声が聞こえた。
まこっちゃんのその言葉に誰も答えない。
紺野ちゃんは横で寝息を立てている。
そしてあいぼんは、まだ壁を向いたままだ。
「私・・・・・・帰れないよ、もう」
あいぼんの背中が、少しだけ震えたのが分かった。
551 :
書いた人:03/08/18 12:03 ID:vb/UDwq3
「だって・・・・・・みんなにあんなことして・・・それでも帰るなんて・・・」
少しずつ涙声になるまこっちゃん。
でもその言葉を、あいぼんが静かに遮った。
「勝手なこと言うなや」
「・・・・・・でも・・・・・・」
「確かにうちらが友達だったかなんて、考えてみれば危ういもんやけど・・・
だったら、これからどうすればいいか、考えんといけないんちゃうの?」
あいぼんの声も、少し上ずっていた。
「それはまこっちゃんだけやないで。うちも、ののも、紺野ちゃんもや」
「そだね」
そう言って紺野ちゃんのほうを見た。
さっきよりも暗闇になれた目は、紺野ちゃんの表情も微かに見て取れた。
まだ目を閉じて、寝息を立てていたけれど、涙の筋が外からの光に照らされて光っていた。
「・・・・・・・・・宿題や、まこっちゃん。
3年後に・・・・・また会った時に、うちらがその成果をどんだけ出せるか・・・・・・な」
「・・・・・・・・・分かったよ」
まこっちゃんのその声は、もう涙声ではなかった。
552 :
書いた人:03/08/18 12:08 ID:vb/UDwq3
今日はここまでです。
あともう少しです。
>>527 一応小説を始めた当初から、決めていた結論です。
>>528 ただ単に、今ヒマだから、というのもあるかもしれませんが。
>>529>>539 レス再開。気を遣わせてごめんなさいです。
>>530 ありがとうございます。そのお言葉は本当に嬉しいです。
>>540 「くわわ」に笑いました。
>>541 ありがとうございます。
「小説書きはりますな」の意味がよく分からないのですが。
場面が場面なんで感想は控えてましたが、やっぱりイイッ━(・∀・)━!
もうすぐ終わってしまうわけですな…。
最後まで頑張ってください〜!
554 :
541:03/08/18 17:55 ID:JehzucO4
>>552 良い小説書きはりますなという意味ですが余計なことをしてしまったため分かりにくくなってしまいいました。
すいませんですた
555 :
書いた人:03/08/18 22:28 ID:DS3wnBmi
―――――――――― 翌朝
つんくさんに今度は白い瓶を渡された。
寝る前にこれを一口・・・・・・どこかで聞いた話だけど。
つんくさんの口調は、深夜のアメリカのテレビショッピングの吹き替えみたいに
インチキっぽかった。
「ホントは今日、お前らはここにいる筈やないから・・・もうここには帰ってくんな。
この子を空港まで送ったら、そのまま自分の家まで帰りや」
見送りに行きたい、って言うまこっちゃんの申し出を、紺野ちゃん自身が断ったのは意外だった。
そもそもまこっちゃんの存在自体がこの時代にはイレギュラーだから、
つんくさんもそれを許すつもりはなかったんだろうけど。
黙って首を振る紺野ちゃんを、まこっちゃんは寂しそうな目で見上げていた。
556 :
書いた人:03/08/18 22:29 ID:DS3wnBmi
あいぼんと紺野ちゃんがタクシーに乗り込んだあと、つんくさんに振り向いた。
最後に・・・聞いておきたかったこと。
「あの・・・・・・つんくさん?」
「どうした?辻」
「昨日『3年後の俺も考えが変わってなかったら』って言ってましたよね?
ってことは、今も誰かに同じこと・・・・・・」
そこまで聞くと、わざとらしくつんくさんは腕時計を見ると、頭を掻いた。
「お!?もう行かんと、その子飛行機間にあわんとちゃうか?」
はぐらかせやがった・・・・・・不満だ。
頬を膨らませた私に、つんくさんは眉を寄せて、くちびるを曲げた。
「本人から・・・・・なんか聞いたんか?
まあ・・・・・・・・・3年後に話したるわ。
俺も今・・・色々頭ん中、整理したいからな」
つんくさんと、なんの話だか分かんなくてきょとんとしたままのまこっちゃんとを残して、
私たちを乗せたタクシーは滑り出した。
557 :
書いた人:03/08/18 22:29 ID:DS3wnBmi
タクシーの中で、紺野ちゃんはずっと無言だった。
私もあいぼんも、何も話し掛けられない。
タクシーのエンジンの音だけが、静かに私たちの鼓膜を震わせていて。
空港についた後も、紺野ちゃんは言葉少なだった。
先を歩く紺野ちゃんの半歩後ろを、私とあいぼんは困り顔で着いて行く。
「あ、もうここまででいいよ」
『お見送りはここまでです』と、ご丁寧に書かれた看板を前に、紺野ちゃんは振り返った。
いつもボーっとしているその目は、今はさらに上の空で。
私たちを目の前にして、心の中は・・・・・・多分、まこっちゃんのことだろう。
558 :
書いた人:03/08/18 22:30 ID:DS3wnBmi
「それじゃ、また・・・・・・」
「気を付けてね」
「うん、未来で・・・・・・ね」
紺野ちゃんは最後にぎこちなく、それでも精一杯微笑むと、くるりと回れ右した。
私たちに一度も振り返らずに、段々とその背中が人込みに消えていく。
紺野ちゃんはこれから眠りに付くまでの間、一人ぼっちだ。
目が覚めれば、また3年後の私たちに会えるけど、すくなくともあと数時間は一人ぼっち。
飛行機のシートに埋もれて、紺野ちゃんは何を考えるんだろう。
自分が友人だと思ってた相手が、心の底を打ち明けてくれなかった、
その想いを、何にぶつけるんだろう。
あの暗闇の中を別にして、私たちを前に紺野ちゃんはここまで泣かなかった。
でも・・・・・・搭乗口まで歩いたあの後姿が、少し震えていたのを私は忘れない。
多分・・・窓の外の雲を眺めながら、紺野ちゃんは泣くのかもしれない。
559 :
書いた人:03/08/18 22:32 ID:YndvMzUS
紺野ちゃんの背中が見えなくなるまで見送った。
こんな人込みにモーニング娘。がいると思わないんだろう、私たちには誰も気づかない。
それがまるで・・・・・・私たちが別の時代から来てるから、
まるで異質なものとして扱われてるみたいで。
「帰ろっか・・・」
「そやな」
そういった私の右手を、あいぼんがぎゅっと握った。
そのままゆっくりと、タクシー乗り場まで歩く。
お互いの顔を見ないけれど、充分気持ちは伝わってくる。
真っ直ぐ前を向いたまま、あいぼんは呟いた。
「なあ・・・・・・のの」
「なぁに?あいぼん」
「友達って・・・・・・なんなんやろ?」
560 :
書いた人:03/08/18 22:33 ID:YndvMzUS
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「自分では友達って思うとっても、相手がそう思ってくれてるとは限らひん。
本当の友達同士って、なんやろうな?」
「多分・・・・・・分かんないんじゃない?」
「?」
あいぼんの歩調が止まる。
色の白い頬が、少し赤ばんでいるように見えた。
私の方に向けたその目は、泣いているわけじゃないけど、濡れていた。
「・・・・・・うん、多分、分かんないんだよ。
だってさ、口では『友達だよ』って伝えてても、
自分の考えてる『友達』と相手の考えてる『友達』が違うかもしれないでしょ?
だったら・・・・・・」
「・・・・・・・分からんな」
「分かんないね・・・・・・」
561 :
書いた人:03/08/18 22:34 ID:YndvMzUS
再び歩き出す。
子ども2人が手をつないでいるのに遠慮してか、すれ違う人たちが自然と道を空けてくれる。
私もあいぼんも黙ったまま。
私があいぼんの友達であるか分からないのと同じで、あいぼんが私の友達であるのかも分からない。
「・・・・・・・・・・・・」
「でもね・・・」
今度は歩いたまま、あいぼは私の顔を見た。
少し泣きそうなその顔は、16歳の私だったら、すぐにぎゅっと抱きしめていたんだと思う。
でも今の私はそうしなかった。
ぎゅっと抱きしめてもあいぼんは分かってくれると思うけど、それでも伝えておきたいから。
562 :
書いた人:03/08/18 22:36 ID:YndvMzUS
「でも・・・分かんないから、私は大切な人にはホントの気持ちで接していきたいと思うの。
もし相手が自分のことを友達だって思ってなくっても、私にとっては友達だから。
それってただの自己満足かもしれないけど・・・・・・
でも、それで友達にウソの心で接するよりは、いいかなって思うもん」
「そやな・・・・・・」
どこか納得したように、再び前を向く。
「私はあいぼんに、そうやって接してるつもりだよ」
あいぼんには遠慮なんかしない。
いつだって言いたいことを言う。
確かにあいぼんはライバルだけど、でも・・・隠し事はしたくない。
私の言葉にあいぼんは照れくさそうにそっぽを向いた。
かすかに見える左の頬が、にやけて上がっているのが分かる。
「・・・・・・言わんでもわかってる」
それだけ言うと、あいぼんはぎゅっと右手を握ってきた。
私も握り返したら、いつもだったら『痛い』って言って手を離すのに、
今日は手をギュッとしたまま、二人で歩きつづけた。
563 :
書いた人:03/08/18 22:36 ID:YndvMzUS
――――――――――
夜。
もう一度、部屋の中を確認する。
「未来の形跡を残さないように、整理しておけ」ってつんくさんに言われたから、それに随分手間取ったけど。
この時期にはまだ使ってなかった化粧品も処分した。
一昨日の夜、あいぼんと紺野ちゃんとで吹き込んだテープも、上から重ね録りをして消した。
新しく服は買わなかったし・・・・・・
「よし、大丈夫かな?」
いざこの時代から出て行くとなると、少し悲しい。
そして少し・・・・・・もったいない。
564 :
書いた人:03/08/18 22:37 ID:YndvMzUS
「そうだ!」
未来へのささやかな抵抗。
ノートを破ると、マジックで大きく書く。
未来を明確に暗示させることなく、それでもそれなりの抵抗・・・
書き終わるとすぐに、ドアに貼り付ける。
よし、ここならよく目立つね。
『揚げパンに注意!!!』
気付けよ、中学1年生の私。
そして少しでも・・・・・・スリムになってくれ。
これだけ大変なことやってきたんだもん・・・
少しはつんくさんも見逃してくれるでしょ。
565 :
書いた人:03/08/18 22:39 ID:YndvMzUS
「さてと・・・」
ベッドの上に座って、白いビンを開ける。
今度も匂いは・・・・・・無いね。
・・・・・・・よし!!
コクッと口に含んだ瞬間、えもいわれぬ味が口内を支配する。
いつ飲んでも・・・この系統の薬はまずいねぇ。
バニラコーラの方がまだマシでしょ、これじゃ。
さらば、中学1年生の私。
そう思うと同時に、もう一つ『本当に戻れるんだろうか?』って言う気持ち。
そんな心の流れもスルーして、そして意識は遠ざかる。
どーでもいいけど、『寝る前に飲む』って言うよりは、
『飲むと意識を失う』の方が正しいんじゃないのかなぁ・・・・・・
566 :
書いた人:03/08/18 22:42 ID:YndvMzUS
何故かすいすい筆が進んだので、今日2回目の更新です。
今度こそ、今日はここまでです。
次回最終回。
>>553 ということで、次でラストです。少し長くなるかもしれません。
>>554 いえ、お気になさらず。『小説書きは』で区切ってしまったので、
私の脳みそがエラーを起こしてしまいまして。
書き込んでしばらくして、ちゃんと理解できました。こちらもスマソ。
交信乙(二回)です。なんかすごいです。読んでいてすごいいろんなことを考えさせられました。加護と辻の友情いいですねぇ。
更新乙です。
いよいよラストですか。
夏休みの読書感想文をこれで書いてみようかな?いいですか?
|ハ@ 更新乙!
|д‘) コソーリ見てましたわ
⊂ じみーに、こんこんええなー
| 最終回はげしく期待してますわ、って誰がは(ry
570 :
書いた人:03/08/20 23:04 ID:iTkx5HM3
――――――――――
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・じ」
?
「・・・・・・・・・辻」
誰?
「・・・・・・やっと気付いたか。俺や」
うわぁ、つんくさん。
「『うわぁ』ってなんや、『うわぁ』って。失敬な」
571 :
書いた人:03/08/20 23:05 ID:iTkx5HM3
何ですか?って、あれ?
もう2003年に戻ったんですかね、私。
「あ〜、そいつはまだや。これはお前の夢ん中やからな」
・・・・・・・・・ってことはつんくさん、私の夢に出てきてるんですか・・・・・・最悪だ。
「・・・・・・素で凹むようなこと言わんといてくれや。
大体これはお前の意識の中なんやから、こっちがギャランティー貰いたいくらいなんやけど」
・・・・・・あ〜、夢って分かったら一気にテンション下がった。
で、何の御用ですか?さっさと済ませましょ。
ちなみにちょっとでも変なことしたら、すぐに夢から叩き出しますよ。
「少しは人の話聞いてくれや。あのな、質問、もう一度したくってな」
質問?
「そう、質問。昔一度した心理テスト・・・・・・もう一度な」
572 :
書いた人:03/08/20 23:05 ID:iTkx5HM3
あ〜、あれ。
あれ、あいぼんも紺野ちゃんも覚えてませんでしたよ。
「むぅ・・・・・・そんなに印象に残んなかったんか。
・・・・・・・ま、ええわ。お前は覚えとるんやろ?も一度答えてもらってええか?」
あれですよね?
『過去に戻れるなら、いつに戻るか』でしたっけ?
「そうそう、それや。確か前やった時は、お前は3年前、って答えとったけどな」
うーん、でも実際に3年前に帰ってみても、結局変えられませんでしたしねぇ、過去。
「世の中そうそう上手く行くもんや無いからな。
で、どうなんや?」
573 :
書いた人:03/08/20 23:06 ID:aTjmLAcu
あれですか?
もしかして過去に戻るってことは、そこで過去を変えると、
未来も色々変わってくるかもしれないんですよね?
「少しは賢くなったなぁ、辻。当たり前や」
・・・・・・消しますよ?
「・・・・・・・・・・・・スマン」
う〜ん・・・・・・だったら・・・別に戻らなくってもいいかなぁ?
「ほぉ?またどうして?」
だって・・・・・・・・・・・・なんでだろ?感覚で思っただけですけど。
574 :
書いた人:03/08/20 23:07 ID:aTjmLAcu
「・・・・・・ま、ええわ。その答えが聞けたから、俺は充分。
じゃ、俺はもう行くで」
いや・・・・・・その前に、その心理テストの答え、まだ聞いてないんですけど。
なんでしたっけね?
・・・・・・ってあれ?もう出てっちゃったんですか?
つんくさん!
・・・・・・つんくさん・・・
575 :
書いた人:03/08/20 23:07 ID:aTjmLAcu
――――――――――
「つんくさん!」
自分の出した声にびっくりして、目が覚めた。
なんだか・・・・・人生で一二を争う最悪な夢を見た気が・・・・・
真っ暗な中で、自分の状況を何とか確かめようとする。
ベッドの中・・・・・・かな。
瞬きを2・3回して、自分の身体が動くことを確かめる。
・・・・・・携帯を・・・・・・・・・枕元にあるはずの携帯に手を伸ばして、すぐに開く。
日付欄を・・・・・
576 :
書いた人:03/08/20 23:09 ID:xM69mSmm
「・・・・・・2003年か」
2003年
まこっちゃんから薬を貰った次の日。
日付を確認すると、私は下を向いたまま洗面所へと向かった。
怖い?
それもある。
私はどうなっているんだろう・・・
577 :
書いた人:03/08/20 23:09 ID:xM69mSmm
鏡の前に立った。
よしッ!
気合を入れると一気に鏡の真正面に向き直る。
「・・・・・・へへ、私だ・・・」
鏡の中にはわたしが・・・そう、2003年の私が立っていた。
あの頃よりも丸くなって、でも少しだけ大人になって。
やっぱりこれが、今の私なんだ。
窓から差し込む朝の光の中で、鏡の向こうの私が『おかえり』と言っていた。
578 :
書いた人:03/08/20 23:09 ID:xM69mSmm
「ッ!!」
突然の携帯の着信に腰が抜けそうになった。
誰からか確認せずに、すぐに出る。
「・・・・・・もしもし?」
【あ、のの・・・・・・起きとったか?】
聞きなれた関西弁。
「・・・・・・あいぼん・・・・・・あのさ、ねえ・・・ちゃんと・・・戻ってる?」
【うちもそれ確認したかったんやけど・・・・・・大丈夫。ののは?】
「うん、大丈夫」
【・・・・・・さっき紺野ちゃんにも電話したけど、向こうも治ってたで。
まあ、起きてへんかったけど】
「そっか・・・・・・良かった」
【でな・・・・・・・】
あいぼんの次の言葉に、私はビックリして携帯を落としそうになった。
579 :
書いた人:03/08/20 23:11 ID:JkRGJbgQ
――――――――――
「・・・・・・しっかし、よくつんくさんもオッケーしたねぇ」
妙に見覚えのある・・・って言うか、昨日見たマンションを見上げる。
いや、正確には3年前に見たんだけど・・・・・・どうでもいいや。
時間は朝7時半。
夜明けの澄んだ空気の余韻が、まだどこか残ってる。
『今から・・・・・・つんくさんに会いに行く!』
あいぼんの言葉に仰け反ったけれど、考えてみれば当然のことだ。
まこっちゃんが・・・帰っているか、一刻も早く確かめたいから。
紺野ちゃんがまこっちゃんの携帯に電話しても、繋がらなかったらしい。
580 :
書いた人:03/08/20 23:12 ID:JkRGJbgQ
「半分寝惚けとったけどな・・・つんくさん。
『いや、あかんて!まだ15歳のお前が、俺にモーニングコールなんて・・・・・・今まで加護の気持ちに気付かんで、ゴメンな』
とか、意味不明なこと言うとったし」
「セクハラ大魔王だ」
・・・・・・嫌だなぁ、その魔王。
紺野ちゃんの言葉に、黒いマントを翻して下卑た笑いを浮かべる某プロデューサーの姿が浮かぶ。
・・・・・・・・・・・・寒気がした。
ちなみに私たちがこの日以来、つんくさんを裏で『大魔王』、と呼ぶようになったのは内緒だ。
581 :
書いた人:03/08/20 23:12 ID:JkRGJbgQ
部屋に迎えたつんくさんは、私たちの姿を見て、ようやくことを察したみたいだった。
私たちにとってはつい昨日のことでも、つんくさんにとってはもう3年以上前の話だから仕方ないか。
「そっか・・・・・・昨日の夜小川を向こうに送ったから・・・
今朝、お前らが帰ってくることになるんやな」
少し眠そうにコーヒーをすする。
「・・・・・・で、まこっちゃんは・・・・・・」
そのゆっくりとした空気に耐えられなかったんだろう。
あいぼんが身を乗り出して詰め寄った。
思わずそれにつられて、私と紺野ちゃんもじっとつんくさんを見る。
582 :
書いた人:03/08/20 23:14 ID:XoLoGVZc
お願い・・・・・・
帰ってきてる、って言って。
とっくに帰ってきて、もうお仕事に向かってるって・・・言って。
「小川は・・・・・・」
つんくさんは少し困ったように、人さし指で頬を掻いた。
「・・・・・・まだ帰ってへん」
まるで揃えたみたいに、一斉に私たちは肩を落とす。
それを見て、つんくさんはふっと優しく笑った。
「あのな・・・・・・でも、別に小川が帰って来るのやめたってわけとちゃうで。
向こうの時代からトンネル開いても、その出口をもう一度見つけないかんから・・・」
「じゃあ・・・・・・今度、そのトンネルが開くのって、いつなんですか?」
焦ったように早口で繋げる紺野ちゃん。
つんくさんも少したじろいでいた。
583 :
書いた人:03/08/20 23:14 ID:XoLoGVZc
「・・・・・・分からん。10秒後かも知れんし、3日後かもしれん」
その言葉に、紺野ちゃんはもう一度肩を落とす。
まこっちゃんはまだ帰っていない。
でも・・・・・・もしかしたら、まこっちゃんはそのまま帰ってこないんじゃないだろうか。
私たちが行った後、心変わりして帰るのを止めっちゃったんじゃ・・・
私たちの落ち込みように、つんくさんも何て声を掛けていいか分からないみたいにおろおろしていた。
下手に『いつ頃には・・・』って言われても、何の慰めにもならないから。
「なあ・・・・・・今はもう、小川を信じて待つしかないやん?」
「そんでも・・・つんくさんは3年前、確かにまこっちゃんを送り出したんですよね?」
「3年前はな・・・・・・でも・・・もしかしたら、過去が変わってもうてるかも・・・」
あいぼんの言葉に、つんくさんは力無く首を振る。
584 :
書いた人:03/08/20 23:15 ID:XoLoGVZc
窓から差し込む朝の光が私たちの心情とは裏腹で、恨めしい。
やっぱり・・・まこっちゃんが帰りにつくまで、ちゃんと見とっておいた方が良かったかなぁ・・・
「とにかく・・・・・・今はお前らも、いつも通りに過ごせ・・・・・・な?
そろそろ仕事行かんと間にあわんやろ?」
掛け時計を仰ぎ見るその目線の先には、もうそろそろいい時刻になっている時計があった。
力なく立ち上がるあいぼんと紺野ちゃん。
「タクシー使ってええから・・・・・・それに、小川が帰ってきたら、すぐ電話するよう言うとくわ」
せめてもの慰めなんだろう、つんくさんが私たちの背中に呼びかける。
でも最後に玄関をくぐろうとした私は、「ちょっと・・・・・・」と呼び止められた。
585 :
書いた人:03/08/20 23:16 ID:5kp6E5Hl
「何ですか?」
「お前の3年前の質問に答えなあかんと思ってな・・・」
「・・・・・・?」
あいぼんと紺野ちゃんを廊下に出したまま、自然と声も低くなる。
手を離したドアは、音を立ててゆっくりと閉まった。
「俺があの薬渡して、過去に戻してやるって言うたの、小川が初めてじゃない」
「やっぱり・・・・・」
「ああ、もう一人・・・・・・安倍にやった」
安倍?
安倍・・・・・・って・・・・・・・なっちゃん?
「他にどの安倍がいると思う?」
どうやら思考は読まれているみたいだった。
586 :
書いた人:03/08/20 23:17 ID:5kp6E5Hl
「3年前・・・丁度お前らが入ってきたくらいかな?
お前かて・・・・・・なんとなく分かるやろ?あいつがどんだけ思い悩んでたか」
遠い目をして語るつんくさん。
彼の瞼には3年前の情景が浮かんでいるんだろう。
でも私にとっては、つい昨日見ていた風景。
確かになっちゃんは・・・あの時期・・・・・・
私にはよくは分からないけれど、それでもきつかった時期だってことだけは分かる。
「それじゃあ、他にも誰かあの瓶の薬を飲んで、昔に行っちゃったんですか?
で、なっちゃんも一度どこかへ戻ったんですか?」
「いや・・・・・・あいつは小川みたいにはせんかった。
あいつのおもろかったんは俺を騙そうとしてな、飲ませてへんのに飲ませたって言おうとしたんや。
そのために、色々不思議なことがあるたんびに、人に『それってあの薬?』って考えとったわ」
「・・・・・・・・・・・・あ」
587 :
書いた人:03/08/20 23:18 ID:5kp6E5Hl
ほんのちょっぴり。
3年前の私に戻っていた時だから微かにしか覚えてないけれど、舞台裏でのやりとりを思い出した。
【あのね、のの。もしかしたら・・・ホントにもしかしたらだけど、ののと・・・・・・加護、どこかで茶色・・・】
・・・・・・あの時だ。
「なんや?辻。もしかして心当たりでもあったんか?」
「・・・・・・エヘへ」
笑って誤魔化した私に、首をかしげながらつんくさんは続ける。
「・・・・・・それで、結局分からんかったけど・・・あいつは誰にもあの薬を飲ませんかった。
別に他の奴に飲ませんのが気が引けたって訳とちゃうで、
多分・・・・・・自分の渡した薬を飲んでくれる相手がいるか、自信がなかったんやと思う」
「・・・・・・・・・結構キツイですね」
まこっちゃんはまだ、騙す相手がいただけ幸せだったのかもしれない。
588 :
書いた人:03/08/20 23:19 ID:5kp6E5Hl
「それじゃなっちゃんは、戻ること諦めたんですか?」
「いや・・・・・・それでも諦められんかったんやろうな。
『いつか誰かに飲ませます』って言うて、そのまま・・・3年くらい持ったままやったわ」
「今も?」
つんくさんが微かに笑ったように見えた。
「・・・・・・・・・いや。この間返しに来たわ。
もう要らんと。もう今のままで充分だから、やり直したくないから・・・・・・って」
「・・・・・・・・・」
「そんだけ自分のやってきたことを振り返る余裕が出て来たんかもしれんし・・・」
「それに?」
「・・・・・・・・・多分、色々話せる仲間ができたんと違うか?」
つんくさんの顔は、どこか満足げで・・・・・・それでいて寂しげだった。
589 :
書いた人:03/08/20 23:20 ID:5kp6E5Hl
「さ!はよう行かんと、間にあわんで。
このこと・・・・・・あんま人に言うなよ。お前が気にしとると思うたから、言っただけなんやから」
大きく礼をして、ドアノブに手を伸ばす・・・・・・
そしてもう一度、私はつんくさんに振り返った。
もう一つだけ・・・・・・
「あ!そうだ・・・つんくさん」
「なんや?まだ分からんことあるんか?」
「いえ・・・・・・あの・・・ずっと前、心理テストしてくれましたよね?
その答え、忘れちゃったんで聞きたいんです」
「心理テスト・・・・・・おう、あれか?いつに戻るか?ってやつ?」
少し考えてからそれでも思い出したのは、流石は張本人ってところだろう。
間を置いてから、もったいぶるようにゆっくりと口を開いた。
590 :
書いた人:03/08/20 23:21 ID:5kp6E5Hl
「あれで戻りたい時間ってのはな、今の自分にどんだけ満足してるかや・・・・・・
遡りたい時間が長ければ長いほど、今の自分に納得行ってない、ってことかな」
「そうなんだ・・・・・・あの、それじゃ・・・・・・まこっちゃんは・・・・・・」
「多分昨日これ聞いたら、喜んで何年前に戻りたい!って言うんやろうな」
昔まこっちゃんは確か、『将来必要になったら使う』って答えてた。
昨日の時点では、多分まこっちゃんはちっとも今に納得なんかしてなかっただろう。
少し考えて、私はドアを押し開けた。
あいぼんと紺野ちゃんが、心配そうに廊下で腕組みしていて。
身体を半分だけ外に出して、つんくさんに振り向く。
「こっちに戻ってきたら、絶対、もう過去になんか戻りたくない、って言わせてみせますよ」
「・・・・・・・・・!!」
少しビックリしたように口の端を上げた後、もう一度つんくさんは微笑んだ。
591 :
書いた人:03/08/20 23:22 ID:5kp6E5Hl
――――――――――
仕事場についたあとの私たちは、早足で楽屋に急いだ。
やっぱり少し、怖かったんだと思う。
何が変わって、何が変わっていないのか。
ホントにみんな・・・・・・モーニング娘。のままなのか?
でもそんなの、余計な心配だった。
私もあいぼんも紺野ちゃんも、モーニング娘。のままだった。
変わってたことと言えば、私が昔ほどおやつについてキツイ注意を受けないこと。
よくよく見てみると、あいぼんの前髪の前線が結構がんばっていたこと。
紺野ちゃんが先輩たちから、娘ヲタとしての扱いを受けていたこと。
・・・・・・・・・まあ・・・許容してもいい範囲の変化だった。
って言うか、あんたたち、過去にいる間に何やってたんだよ。
そんな変化の中、やっぱりまこっちゃんもモーニング娘。のメンバーだった。
それを聞いたとき、私たちは歓喜の声をあげたけれど・・・・・・
でもこの日、まこっちゃんはお仕事に現れなかった。
592 :
書いた人:03/08/20 23:23 ID:5kp6E5Hl
お仕事が終わった後、私はなんだか無性に屋上に行きたくなった。
重い扉に体を預けて押し開く。
梅雨の合間、キツイ午後の陽射しの中で、屋上にはよく見知った二つの影が並んでいた。
「辻ちゃん・・・」
「ののか・・・・・・」
この世界には、なるべくしてなっていることがあるのかもしれない。
私の体重が増えちゃったことも。
紺野ちゃんが補欠でモーニングに入ったのも。
あいぼんのまぶたがだんだん二重になっていったのも。
そして、私たちが昨日に引き続いて今、この屋上に集まっていることも。
593 :
書いた人:03/08/20 23:24 ID:5kp6E5Hl
あいぼんはまこっちゃんが最後まで姿を見せなかったことが、ショックみたいだった。
『怪我の治療』ってマネージャーは言ってたけれど、
本当はまこっちゃんが見つからないのを誤魔化してるって思っているらしい。
「やっぱり・・・・・帰ってくんのやめたんかなぁ?」
「でも・・・あの夜、宿題やってくるって言ってたけど・・・」
私たちのやりとりを、紺野ちゃんが不意に制した。
「携帯も通じないままだし・・・・・・どうなんだろう?
帰ってきてそのまま病院に行ってるだけかもしれないし、もしかしたら帰ってきてないのかもしれない」
紺野ちゃんの表情は痛々しかった。
・・・・・・親友なんだもんね。
あんなことをされても、やっぱりこの世界でも、まこっちゃんと紺野ちゃんは親友同士。
なんだか少しだけ、羨ましかった。
私の視線に気付いたのか、紺野ちゃんはちょっと照れた風に俯く。
長い前髪がその表情を覆い尽くしてしまう。
次第に私たちは無口になっていった。
594 :
書いた人:03/08/20 23:25 ID:5kp6E5Hl
『あの時やり直せたら』
誰だって考えることだと思う。
事実私だって、そんなの数え上げれば切りが無い。
私の脳みそに詰まっている想い出の中には、まだ私の胸を苦しめるものが幾つもある。
・・・・・・でも
そんな辛い想い出も、もちろん楽しい想い出も、全部あるから今の私があるんだ。
屋上を撫でる初夏の風は、今日も澄んで。
私たちは肩を並べて、遥か遠くのビルの群を見ていた。
595 :
書いた人:03/08/20 23:26 ID:fTJcKahW
あの日私がマニキュアを倒したから。
あの日紺野ちゃんが怪我をしたから。
あの日あいぼんが泣きながらお化粧が嫌だといったから。
そしてあの日、まこっちゃんがぎっくり腰になったから。
だから今、私たちはここにいる。
もう私たちは分かっていた。
辛い過去も、全ては今のため。
じゃあ、今に納得がいかなかったら・・・?
そう、これからがんばっていけばいいんだ。
・・・・・もちろん、まこっちゃんも分かっているはず。
596 :
書いた人:03/08/20 23:27 ID:fTJcKahW
ギィィ・・・・・・・・・
背後で空耳みたいにぼんやりと、鈍い音がする。
扉が・・・・・・開いた?
私たちはぼんやりとその音の方に振り返った。
「まこっちゃん・・・」
紺野ちゃんが夢でも見ているように呟く。
そこにはまこっちゃんが気恥ずかしそうに立っていた。
薄い生地のスカートの下から、しっかりとした二本の足が見える。
車椅子なんて使わない、私たちが見慣れたまこっちゃん。
「・・・・・・みんな、その・・・・・・」
そこまで口にしたものの、言いよどむ。
私たちが帰った後、それでも帰ってくるまでにしばらく掛かったんだろう。
まこっちゃんの腰はもう、車椅子なんかいないくらいにまで回復していた。
597 :
書いた人:03/08/20 23:27 ID:fTJcKahW
入り口の所で立ち止まったまま、まこっちゃんは両手で顔を覆う。
離れていても聞こえてくる、嗚咽。
もう・・・・・・分かってくれたんだね?
言葉で伝えられないなら、態度で示せばいいんだ。
まこっちゃんがすればいいのは、ただ自分の思うがままに、私たちに接することだけ。
今は思い切り泣いておきたい・・・・・・それが気持ちなんだね。
と、紺野ちゃんがつかつかと歩み寄る。
私とあいぼんもそれにつられて、まこっちゃんの下に駆け寄った。
598 :
書いた人:03/08/20 23:29 ID:aTjmLAcu
紺野ちゃんが優しく声をかけてあげるのか、
それとも嗚咽に震えるその肩を抱きしめるのか、
それとも茶色い髪を優しく撫でてあげるのか。
私には分からない。
でも・・・私は紺野ちゃんの選択を、心から受け入れられるだろう。
599 :
書いた人:03/08/20 23:29 ID:aTjmLAcu
もし変えられない出来事が存在しているとしても。
私は精一杯、今現在をがんばっていけばいい。
もちろん未来に、諦めを持っているわけじゃない。
ただ過去にこだわることを止めただけ。
今頑張れればきっと未来でも、納得がいくはずだから。
それに、こんなに素敵な仲間たちがいるんだから・・・
紺野ちゃんがまこっちゃんの肩に手をかけた。
「あさ美ちゃん・・・・・・」
涙に濡れた瞳をまこっちゃんが向ける。
ふっ・・・と、紺野ちゃんが微笑んだように見えた。
600 :
書いた人:03/08/20 23:30 ID:aTjmLAcu
―― エピローグ
601 :
書いた人:03/08/20 23:32 ID:B/QLJyIY
翌日
「おはよぅ〜、のの。遅かったね」
「えへへへ・・・・・・おはよ、よっすぃ〜・・・・・・あ、今日も買ってあるんだ。見せてぇ」
よっすぃ〜がマネージャーにナイショで買ってきたスポーツ紙を拝借。
「小川麻琴(15) やはり完全復帰には遠い?
腰部捻挫が再発!!更なる休養、と事務所発表」
ゲンコツくらいの大きさの赤い文字が躍っていた。
あいぼんが私の横から紙面を覗き込み、隣で朝からお菓子を頬張る紺野ちゃんに非難めいた眼差しを送る。
「やっぱ、治ったばっかの人間に正拳突きは酷かったんちゃう?
しかも思いっきりみぞおちに入れるって・・・
まこっちゃん、衝撃で腰再発してもうたで」
「いいの!!私がやらなくても、どっち道ぎっくり腰で全治あと1週間だったんだから!」
お菓子で膨らんだ頬をますます膨らませて、紺野ちゃんはその想いをお菓子にぶつける。
あの時正拳突きをした紺野ちゃんは、そのすぐ後にまこっちゃんを抱き寄せた。
紺野ちゃんなりの・・・蹴りのつけ方だったんだろう、多分。
602 :
書いた人:03/08/20 23:33 ID:B/QLJyIY
結局まこっちゃんも、未来は変えられなかったんだなぁ・・・
あんな方法じゃなくって、地道に頑張んないとダメなんだよね。
二人のやりとりを横目で見ながら、私は朝のコンビニで仕入れたポッキーさん2号の封を開けるのだった。
・・・・・・痩せる努力?
まあ、そのうち・・・・・・ね?
603 :
書いた人:03/08/20 23:33 ID:B/QLJyIY
横目でなっちゃんを見る。
なんだか楽しそうに、やぐっさんや飯田さんとおしゃべりしてる。
お薬飲ませる相手探してる間に、とっても大切な相手見つかったんだね・・・・・・・・・
私の視線に気付いたのかな?
「もぉ、のの。そんなに見られると照れるべ」
そう言ってなっちゃんは笑っていた。
なんだかその表情が、つい昨日見た3年前のなっちゃんと全然違ってて、それがとっても可笑しくて。
私は舌を出して笑った。
604 :
書いた人:03/08/20 23:35 ID:V+SfW0b9
【過去に戻れるとしたら、いつに戻るか?】
605 :
書いた人:03/08/20 23:35 ID:V+SfW0b9
今ならなっちゃんは戻りたくない、って言うと思う。
私だってそうだ。
まこっちゃんは・・・・・・どうだろう?
つんくさんとした約束。
もうまこっちゃんが戻りたいなんて思わないように、友達の私たちが今できること。
ううん、今一番しなくちゃいけないことは・・・と・・・・・・
立ち上がった私は、まだ言い争いを続けている二人に向き直る。
これから言う台詞は、何が起こったって絶対に変えられない、変わらない言葉。
もう心に決めたんだから。
「あいぼん!紺野ちゃん!まこっちゃんのお見舞い・・・・・・行こうよ!!」
606 :
書いた人:03/08/20 23:36 ID:V+SfW0b9
「昨日見た日々」
おわり