168 :
書いた人:
「やったぁ――――――――――!!!!」
朝6時半の洗面所、私の絶叫は隣3軒にまで確実に届いただろう。
思わず出るガッツポーズ。
噛み癖があったから人より短い爪も、容赦なく手のひらに食い込む。
その痛みも、ちっとも気にならない。
遂に私は手に入れたんだ。
いや、取り戻したんだ!
洗面所の大きな鏡の中には、ちっちゃくてか細い、女の子。
その外見に似合わず、唇の端からとめどなくこぼれる不敵な笑みが怖い。
169 :
書いた人:03/07/07 04:31 ID:+z3ZKgCT
「ふふふふふ・・・・・・」
朝6時半から絶叫の上、更に笑みを浮かべつづける私。
外から見たら、さぞかし心の中が真っ黒な人間に思われるかもしれない。
でもいいんだ。
心の中が梨華ちゃんのお肌なみに真っ黒だとしても、いいんだ。
だって今の私には、この外見があるんだから。
170 :
書いた人:03/07/07 04:32 ID:+z3ZKgCT
締まった腰周り。
たるみなんか一切無い二の腕。
力を入れたら『ポキッ』っていっちゃいそうな首。
はっきり言って『懐かしい』
でもこれが現実だ。
遥か遠くに飛んでいった昔じゃない、今現在。
なのに私は、まるで数年前みたいな体つきを手に入れて。
171 :
書いた人:03/07/07 04:34 ID:99BE2bAA
今日お仕事で私を見たら、みんな何て言うだろう?
矢口さんのぽかーんとしたハニワみたいな口。
梨華ちゃんの見開かれた目。
よっすぃ〜の少し羨望の混ざった眼差し。
それにあのマネージャー。
『お菓子食べ過ぎ』などと言う理不尽な理由で、
私の楽屋の愛しきポッキーさんが奴の手に奪われて、どんなに悔しかったか。
待ってろよ、ポッキーさん。
きっと君の仇は討ってやるんだから。
そんなのを想像するだけで、また『くふふっ』と嫌な笑いがこぼれる。
姉文子がそんな私を心配そうに見ていたことにも気付かず、あと15分、私は笑いつづけていた。
172 :
書いた人:03/07/07 04:35 ID:99BE2bAA
ニヤニヤしながら朝の街を歩く。
いつも来ているオーバーオールが何故か見つからなかったのも、ちっとも気にならない。
だって今の私には、あのオーバーオールは多分ぶかぶかなのだ。
そう考えると、また笑みがこぼれる。
こんな姿が飯田さんに見つかったら、
「のんちゃん・・・・・・だらしない!!」
とかお説教の末、鉄格子の付いた病院に入れられそうだけど。
今の私は体が軽くて、足を運ぶのさえ楽しい。
173 :
書いた人:03/07/07 04:35 ID:99BE2bAA
「そういやぁ、あいぼんや紺野ちゃんはどうなったのかな?」
さっきまでは自分の変化に夢中で気付かなかったけど、あの二人もあれを飲んだんだ。
私なみの変化を手に入れたはずだから、二人ともびっくりするような外見になってるはず。
これでもう、梨華ちゃんや愛ちゃんにでかい顔されなくて済む・・・
明日のモーニングは、私たちのものなのだ!!
道端で拳を突き上げ『うぷぷ』と笑う私を、サラリーマンが避けて通っていた。
174 :
書いた人:03/07/07 04:36 ID:99BE2bAA
―――――――― 24時間ほど前 楽屋前廊下
「やせ薬ぃ?」
楽屋から私を連れ出したまこっちゃんが茶色い薬瓶を私に見せてくれた。
どう考えても厚生労働省の認可をもらえそうに無いその物体は、蛍光灯の光に薄く光る。
まこっちゃんがいかにも貴重なもののように、その瓶を両の手のひらで包んでいるけれど、
その動作も私には怪しさを倍増させているようにしか見えないのだ。
痛々しい車椅子姿も、今日は健気ではなく、妙に晴れやかに映る。
この薬が彼女をここまで生き生きとさせているとすれば、それはそれでヤバイ。
175 :
書いた人:03/07/07 04:38 ID:FJmSHsbl
「そう、やせ薬!やっと手に入れたんだから」
朝からなんでそんなにハイテンションでいられるのか分からないけれど、まこっちゃんは私に向かって胸を張る。
それ以前に、何でこんな得体の知れない物体Aに、ここまで威張れるのかが分からない。
「あ?その目は辻ちゃん・・・・・・もしかして疑ってるなぁ?」
「うん、疑ってる」
疑惑度120%の視線が流石にばれたらしい。
隠す必要も無いので私も即答。
いくら天然でお馬鹿さんなことをやっていても、辻希美16歳、こんなことには騙されないのだ。
176 :
書いた人:03/07/07 04:38 ID:FJmSHsbl
私の反応なんて折込済み、とばかりにまこっちゃんはいんちき臭い説明を始める。
「これねぇ、ホントに貴重な薬なんだよ?
寝る前に一口飲むと、カレン=カーペンターもびっくりのダイエットができるんだよ!!」
「それって拒食症じゃんよ」
突っ込む気力も失せるが、とりあえず反応はしておく。
何でそんな古いことまで知っているかは、ヒミツ。
177 :
書いた人:03/07/07 04:39 ID:FJmSHsbl
私の今一な反応に、まこっちゃんは頬を膨らませる。
「もう、辻ちゃんはうたがり深いなぁ。
とにかく今夜、一口飲んでみな!絶対にやせられるから!」
モーニング辞めても、深夜の通販番組で司会が張れるから安心だね。
みのさんも仰け反る見事な商品の勧め方に、思わず溜息が漏れる。
そんな私の心の内を知ってか知らずか、まこっちゃんの商品説明は続く。
・・・・・・なんだよ、アセトアルテヒドって。
『聞いたことあるけど、絶対説明できないだろ』
と言いたくなるような物質名が、まこっちゃんの口からぽんぽんと飛び出す。
178 :
書いた人:03/07/07 04:39 ID:FJmSHsbl
―――― 10分後
うざい。
梅雨空よりも何よりも、今日のまこっちゃんはうざい。
ぎっくり腰は気の毒だけど、その辺差し引いてもお札でお釣りが来るくらいにうざい。
「あぁぁ・・・分かったよ。それじゃ貰うだけ貰っとくから!」
「きっと飲んでね!!絶対だよ!約束だよ!」
私の言葉を聞くと、まこっちゃんは瞳を輝かせた。
車椅子で、私を壁際にまで追い詰めてにじり寄る。
その迫力に負けて、私は思わずコクコクと首を縦に振るのだった。
179 :
書いた人:03/07/07 04:41 ID:teVbVuve
もういいや、根負け。
こうして私の手の中に、茶色の子瓶が残った。
代金はいらない、って所も胡散臭さを増すんだけどさ。
私に瓶を渡すと、嬉しそうにまこっちゃんは車椅子を駆って行ってしまった。
車椅子って、あんなにスピード出るんだ。
でもさっきのまこっちゃん、なんだったんだろう・・・
しばらくボ――ッと楽屋口で佇む私に、
「あれ?こんな所で何してるの?」
ケータリング仲間の紺野ちゃんが、今日もお皿を抱えながら首をかしげていた。
180 :
書いた人:03/07/07 04:42 ID:teVbVuve
「昨日見た日々」
181 :
書いた人:03/07/07 04:44 ID:teVbVuve
ここまでプロローグと言うことで、今日はこの辺までで続きます。
ホントは
>>180の題名を、
>>173と
>>174の間に入れるつもりでしたが、
素で忘れてしまいました。
と言うことで続きます。
それはそうと、俺の赤裸々な私生活を聞いてくれよ、
>>1よ。
俺はまず朝は辻希美の舌をチョロチョロ使ったフェラで目覚める。
そして辻希美と小島奈津子に抱きかかえられて風呂へ入る。
当然ローションを使ったマットプレイ。バックと騎乗位でズコバコはめまくり。
メシは周富徳に作らせた中華。朝っぱらから油っこい中華。もうビンビン。ビンラディン。
で、メシのあとは朝っぱらから酒飲みながら2ch。いい身分だな。
手は使わず後藤真希と仲間由紀恵に両脇からムギュッと抱えられて
加護亜依がポテトチップを口に運び、加藤あいが上目づかいのフェラ。口内射精。
そして米倉涼子が口移しで俺にヘネシーと越の寒梅を飲ませる。
昼頃にいったん2chをやめ、「よし、今日はソープでも逝くか」と言うと
辻希美、小島奈津子、後藤真希、仲間由紀恵、加護亜依、加藤あい、米倉涼子が
泣きながら 「イヤイヤ、もっと私を抱いて!私の体を慰めて!」と引き止める。
「うっせーな、今日はソープな気分なんだよ!!」と家を出る。面倒なので裸のまま。
車に備え付けのPCで最高級ソープを検索。 直行して5Pする。粉が出る。
帰りに焼き肉屋へ行ってタン塩とレバーと上カルビを死ぬほど食う。勃起してきた。
そしてすし屋へ行ってトロとウニだけ食っている頃、女達が迎えに来る。
女達が泣いているので、今日のところは女体盛りは食わないで帰ることにする。
しかし女たちは朝のメンバーとは完全に入れ替わっている。
メンバーは鈴木杏、松浦あや、安部なつみ、石川梨華。
全裸で騎馬を組んで家まで帰る。ワショーイ!
帰ると焼酎で沸かした風呂に入る。入るメンバーは酒井若菜と広末涼子と真鍋かをり。
アナルまで綺麗に舐めさせる。騎乗位で4発発射。もう粉も出ない。
いっさい手をつかわずにさっぱりとして、風呂を出る。
風呂を出ると優香と乙葉に抱きかかえられてPC前に座る。
小一時間ほど毒男を煽って遊ぶ。この頃、田代マーシーは自由行動。頑張れよ!
遊んでいる最中は、飯田圭織のバキューームフェラ。顔射。 出たのは赤玉。
その後、木村優子と八木亜希子にママになってもらって赤ちゃんプレイ。
で、吉澤ひとみと井川遥と本上まなみと4Pして寝ると。 こんなもんかな
>>181 @ノハ@ 書いた人タンの小説や〜♪ 続き楽しみにしとるでー
( *‘д‘) __________
./ つ_|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
(, |\|| <二:彡 . |
'\,,|==========|
>>181 新作キタ━川o・-・)━川o・ー・)━川oT-T)━川o`д´)━川o-_-)━川o´-`)━川o・∀・)━!!!
>>181 書いた人さん、新作おもしろーい!
続き楽しみにしてます。
186 :
書いた人:03/07/08 02:07 ID:3TTy7z3I
「変ですねぇ・・・・・・・・・」
「変だよねぇ・・・・・・・・・」
楽屋の鏡台に瓶を乗せ、二人で顔を並べて覗き込む。
鏡の向こうには丸々とした私と紺野ちゃんの顔が並んでいた。
おかしなことは山ほどある。
このお薬は本物なのか。
本物だとして、何でまこっちゃんはこれを只で私にくれたのか。
そして何で私だけに、特に親友である紺野ちゃんを差し置いて、くれたのか。
つんくさんがホントに全部の曲を作っているのかと同じくらい、ナゾは尽きない。
187 :
書いた人:03/07/08 02:08 ID:3TTy7z3I
「「う〜〜ん・・・・・・」」
「・・・・・・二人とも・・・何しとるん?」
二人して考え込んでいるところに、我が相棒あいぼんが通りかかった。
鏡越しに見える相棒は、顔を並べる私たちに訝しげな視線を送っていた。
あいぼん、ますます丸くなりましたねぇ・・・・・と、自分のことは差し置いて思う。
そうなのだ。
娘。の中には、この薬が欲しくてやまない人が何人もいることくらい、まこっちゃんも分かっているはず。
それなのに何で、私だけが貰えたのか。
188 :
書いた人:03/07/08 02:08 ID:3TTy7z3I
「辻ちゃん・・・・・話してみようよ」
「・・・・・・そだねぇ」
紺野ちゃんも同じようなことを思っていたらしい。
まあ二人で考えるよりは、三人で考えた方が知恵も回るだろう。
『三人寄れば文殊の知恵』と、いつか紺野ちゃんも教えてくれたではないか。
―――――― 3分後
「う〜ん・・・・・・そりゃ、分からんなぁ・・・」
「ですよねぇ・・・・・・・」
「なんなんだろうねぇ・・・」
私たち三人が集まっても、碌な知恵は出てこないことを思い知っただけだった。
189 :
書いた人:03/07/08 02:10 ID:MlmWsrXY
コトコト・・・・・・
ちょっとだけコップに注いでみる。
「無色ですね」
「そやなぁ・・・・・でも、なんか怪しない?」
あいぼんや紺野ちゃんの言うとおり、茶色の瓶の中身は無色透明。
しかも別に嫌な匂いもしない。
でもそれが却って妙に怪しい。
例えるなら、なっちゃんが笑顔の下で何考えてるか分かんないみたいに、
私の本能が危険信号を発しているのだ。
全然例えになってないんだけどさ。
190 :
書いた人:03/07/08 02:11 ID:MlmWsrXY
お仕事を終えた私たちは、誰が提案するとはなしに、屋上に向かった。
重い扉に体を預けて押し開く。
私たちは思わず目を細めた。
梅雨の晴れ間で太陽が容赦なく照り付けていて。
その光は屋上を覆う白い塗料に反射して、とっても眩しかった。
それでも地上から遥かに離れたこの場所では、吹きぬける風が気持ちいい。
屋上は私たちのほかは誰もいなかった。
191 :
書いた人:03/07/08 02:12 ID:MlmWsrXY
「さて・・・どうしようか?」
あいぼんと紺野ちゃんに目を遣ると、二人は目を伏せた。
二人の言いたいことは、分かっている。
そりゃあ確かにこの薬は怪しい。
でも・・・・・・飲んでみたい!!
痩せられないかも知れないけれど、それでももしかしたら、痩せられるのかも知れない。
もしホントの薬だったとすれば、私たちは最高のチャンスをフイにすることになるのだ。
192 :
書いた人:03/07/08 02:13 ID:0MEv2R8W
でも言い出せないんだ。
拾った物を食べるのと同じくらい、危ないもんなぁ・・・・・・
屋上の真ん中で輪になって腰を下ろしたまま、牽制しあう私たち。
ここで『飲んでみよ!』と元気に言えるほど、私たちは無邪気ではない。
顔をあげると不意に二人と目が合った。
「えへへへへ・・・・・・」
「・・・・・・ふふふふ・・・」
「・・・・・・・・ハハ・・・」
微妙な笑い。
笑い声はお互いの目を見ながら、段々大きくなっていく。
何が可笑しいのか分からないけれど、なんだか笑わずにいられない。
紺野ちゃんが吹き出したのを合図に、一気に笑いがこみ上げてきた。
193 :
書いた人:03/07/08 02:15 ID:0MEv2R8W
三人の笑い声が、木霊する。
笑い声はビルに跳ね返って、なんだかますます大きく聞こえてくる。
もう何が可笑しいのか全く分からないけれど、私たちはお腹を抱えて笑いつづける。
紺野ちゃんはうずくまって苦しそう。
あいぼんは私を指差して、目を細めて笑ってる。
そして私は仰け反りながら、腹筋の痛みに耐えていた。
194 :
書いた人:03/07/08 02:16 ID:0MEv2R8W
腹筋の痛みが限界に達してきた頃、ようやく笑いが治まってきた。
それでも、ひいひい言いながら、あいぼんが目尻にたまった涙を指で飛ばす。
「なあ、のの」
「ん?」
私もようやく治まってきた笑いを喉の奥に押し込めて、やっとのことで返事。
「・・・・・・取り敢えずののが、飲んでみいや」
わが相棒はこんな状況でも、冷徹だった。
195 :
書いた人:03/07/08 02:19 ID:0MEv2R8W
今日はここまでです。
毎日更新、などという器用な真似はできませんので、今日は偶然です。
それじゃまた。
>>183 あいぼんさん、烏賊お気に入りなんですか?
>>184 こんこんさん、ご期待に添えるのか自信ゼロです。
>>185 たまにはこういうのも書いてみようかなぁ、という思いつきの産物です。
>>195 @ノハ@ えーっと「烏賊は、おめめに愛嬌があるので」と。
( *‘д‘) __________ しかしナゾだらけで続きが気になるわ〜。
./ つ_|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| でもマターリ待つでー。
(, |\|| <二:彡 . |
'\,,|==========|
交信Zです
今回も名作の予感
小説読むのは小川地獄に堕ちろスレ以来
200 :
ihihijijj:03/07/09 17:54 ID:J1fccr+Q
200
201 :
名無し募集中。。。:03/07/09 18:35 ID:QA/tuwbR
@ノハ@
( ‘д‘) <ほぜんせんでも大丈夫やな
(∪ つ
(_)_) といいつつ。
203 :
書いた人:03/07/10 01:29 ID:bGKn03JI
話し合いは大紛糾。
あいぼん議員の猛烈な攻勢にも関わらず、紺野議員と私の二票で阻止。
私が生贄になってあいぼんと紺野ちゃんが助かっても、ハッキリ言って浮かばれない。
確実に夜な夜な二人の(特にあいぼんに重点的に)枕もとに立ってしまいそうだ。
・・・・・・結局瓶の中身を三分割して、それぞれが家に帰って飲むことにした。
これぞ正しい民主主義。
紺野ちゃんに賄賂(チーズケーキ)を約束したことは内緒なのだ。
「・・・・・・民主主義がいっつも正しいとは限らんで」
瓶を鞄に仕舞うときなっても、あいぼんはぶつぶつ文句を垂れる。
まったく、往生際の悪い相棒だ。
そう言いつつも、この薬を手に入れてちょっぴり嬉しそうなのは、
・・・・・・まぁ、触れないでおいてあげよう。
204 :
書いた人:03/07/10 01:30 ID:bGKn03JI
夜
ベッドに腰掛け、瓶を振ってみる。
外から見るとただの水みたい。
こんなのでホントに痩せれるのかなぁ・・・
疑問が尽きないのはあの二人も一緒だろう。
でも、いや、だからこそ、多分あの二人もこれを飲むと思う。
誰かが飲んでその効果を確かめてから・・・それじゃ遅いから。
私たちモーニング娘。は、みんながライバルなんだ。
あいぼんも紺野ちゃんも、もちろんまこっちゃんもみんな友達だけど、負けられない敵。
205 :
書いた人:03/07/10 01:30 ID:bGKn03JI
・・・・・・でもそう考えると、ますますナゾだ。
何でまこっちゃんはこの薬をくれたのか。
彼女が入ってきたことのことは、今もすっごくよく覚えてる。
生意気そうで、それでも歌も踊りも上手くて。
『ヤバイ、絶対に抜かれる』
そんな危機感をもった。
・・・・・半年もしないうちに、そんな危機感なくしちゃったけど。
原因は二つ。
私はそもそも長期的に頑張れる性格ではない。
それと、まこっちゃん。段々キャラが変わってきた。
でもそんな闘争心の塊だったまこっちゃんが私の減量を応援してくれる?
206 :
書いた人:03/07/10 01:32 ID:gCxFDM+U
ダメだな、私。
そこまで考えて、私はゲンコツで自分の頭を軽く叩いた。
いくら何でも疑いすぎだ。
確かにライバルだけど、それ以上にみんないい友達なんだから。
その好意を素直に受け入れられないなんて、いつの間にこんなにひねくれちゃったんだろう。
207 :
書いた人:03/07/10 01:32 ID:gCxFDM+U
ブゥゥゥゥン・・・・・・
携帯のバイブとともに、着メロが鳴った。
ボーっと考え事をしていたから、少しその音にビクっと体が震える。
うーん、我ながら神経が小動物並みだ。
慌てて携帯を手にとる。
「・・・・・・もしもし?」
「あ?辻ちゃん?私だけど」
電話の向こうは過去の威厳を2年前に置き忘れたその人、まこっちゃんだった。
208 :
書いた人:03/07/10 01:33 ID:gCxFDM+U
「あのお薬・・・・・・飲んでみる気になった?」
なんだか話を急いでいるみたいに、やたら早口にまこっちゃんが言葉を紡ぐ。
「あれさ、ホントに身体に悪かったりしないから。だから飲んでみな!ね?」
「・・・・・・飲むことにしたよ」
また朝と同じ商品説明を聞くのがうざかったので、早々に核心を言っておく。
つーか普通、『ホントに身体に悪くないから』って断るか?
そんなの飯田さんがボーっとしてたくせに『カオ、ちゃんと聞いてたよ』って言うのくらい怪しい。
そんなこと考えつつも、この薬に頼ろうとする自分が少し情けない。
でも私だけを選んでくれたその好意に気が引けて、あいぼんと紺野ちゃんのことは黙っていた。
私の返事に、まこっちゃんは心底安心したような安堵の溜息を洩らす。
「そうかぁ、よかった。これで私もやり直せるよ」
209 :
書いた人:03/07/10 01:37 ID:i+C2oCF+
「は?何を?」
まこっちゃんが最後にポツリと洩らした言葉を、私は聞き逃さなかった。
それに慌ててまこっちゃんは反応する。
「いや!ああ、やり直せる、って言うのはね・・・
辻ちゃんが痩せると、人気が急上昇するからさ・・・
えっと、だから・・・私も初心に戻って闘争心が持てるっていうこと!」
何を焦っているのか、まこっちゃんは慌てたように返事を返す。
それでも、私がさっき考えていたことに妙に一致したその返事が、すんなりと受け入れられた。
210 :
書いた人:03/07/10 01:38 ID:i+C2oCF+
二言三言、言葉を交わして電話を切る。
「そんじゃ、飲んでみますか」
先にマロンに飲ませてみようかと思ったけれど、
これ以上やると本気で家出されかねないので止めておいた。
瓶を開けて、一気に一口分飲み干す。
うわぁ・・・・・まずい。
梨華ちゃんの焼きそばよりもまずい。
もうとっくに液体は胃に入っているっていうのに。
口の中では紺野・石川・道重のある意味三強が、
『理解して女の子』をそれぞれのキーで好き勝手に歌っているみたい。
苦さと渋さが強烈なハーモニーを醸し出す。
211 :
書いた人:03/07/10 01:39 ID:i+C2oCF+
良薬口に苦し、って言うけど、バイアグラだってもうちょっと普通の味するでしょ。
・・・・・・飲んだこと無いけど。
いや、その前にバイアグラって、内服薬なのかなぁ?
中澤さんにいつか聞いてみよっと・・・・・
つーかこの薬、もしや、まこっちゃんが私を暗殺するための陰謀!?
なるほど・・・・・そう考えるとナゾも解けるなぁ・・・
薬のせいなのか、徐々にとろけていく意識の中でぼんやりとそんなことを考えた。
まぁ・・・死にゃしないでしょ。
――――――
翌朝、目が覚めた私が見たのは、完璧に痩せた自分だった。
212 :
書いた人:03/07/10 01:45 ID:i+C2oCF+
今日はここまでです。
紺野→辻の呼び名を『辻ちゃん』にしておいたそばから、
オソロで『のんちゃん』って言ってるし・・・・・あの辺の呼び方はナゾですなぁ。
一応この中では『辻ちゃん』で固定します。
>>196 お返事乙です。
>>197 いくら愛嬌があってもホタルイカの目はとらないとダメですよ、あいぼんさん。
>>198 判断早っ
>>199 凄いスレタイですね。読んで頂いてありがとうございます。
>>200 おめ
>>201 まじですか。
>>202 今のところは大丈夫ですね。といいつつ乙です。
更新乙です。
そしてオレも矢口AVにだまされた。
@ノハ@
( *‘д‘) <まこっちゃん、一体何考えてるんかなー?
/ _∪⌒⌒ヽ. とりあえず更新乙。
( ̄⊂人 //⌒ ノ あとホタルイカは、富山産が通やな。
⊂ニニニニニニニニニニニニニ⊃ ほな、寝るわ。
>書いた人様
小説総合スレで紹介&更新情報お伝えしてもよろしいですか?
217 :
書いた人:03/07/11 20:32 ID:JPups0AO
>>いつもの報告人様
ふつつかな小説ですが、よろしくお願いします。
218 :
書いた人:03/07/11 23:02 ID:FJLYzEqw
1時間も早く到着してしまったのも、私の行く手に障害物が無かったから。
仕事場までの道中、ずーっとおかしな笑いを浮かべていたおかげか、
路上の人は私に凄い勢いで道を空けてくれた。
中には『ヒィィイ!!』と農民Aのような悲鳴を上げていたおじいちゃんもいたけれど、まあいいや。
今日の私の道中に障害物は無かった。
そう、そしてこれから私が行く道にも・・・・・・障害なんて存在しないのだ!
頭の中で危ない想像をしていた上に、
更にみんなの反応や、あいぼんと紺野ちゃんの変わり様を想像し続けていたからか、
気がついたら楽屋口に着いていた。
この辺り、飯田さんが伝染ったのかもしれない。
もう誰か来てるといいな・・・
そんなことを考えながら、ドアを一気に押し開く。
219 :
書いた人:03/07/11 23:03 ID:FJLYzEqw
「おはよーございまーす!!」
自分でも無遠慮と思える大声に、楽屋内に座っていた人がビクッと肩を震わせた。
入り口に背を向けていたその人は、私の声に大急ぎで立ち上がり、
「おはようございます!!」
と、体育会系丸出しの大声で、深々と礼をする。
大きめの背、短い髪。
礼をしている彼女のうなじから見える肌は、羨ましいくらいに白い。
・・・・・・こんな人、いたっけ?
220 :
書いた人:03/07/11 23:04 ID:FJLYzEqw
飯田さん?
まさか、飯田さんは私がモーニングが始まった頃からずーっとロングだ。
伊達にあの人に育てられてはいない。
つーか私が忘れたら、飯田さんが荒れるのが簡単に予測できる。
ふじもっちゃんかな?
まさか、こんな礼儀正しさを発揮すると思えない。
・・・・・・ってことは、新メンかな?
いや、こんなにおっきい子いなかったよなぁ・・・・・・
私からの返事が無いのを不審に思ったのか、彼女はおそるおそる顔をあげる。
眉を寄せ、顎に手を掛けて考え込んでいる私の顔を一瞥すると、
彼女は急にほっとしたような顔をして、微笑んだ。
「なんだぁ・・・・・・ののじゃん。おはよ」
221 :
書いた人:03/07/11 23:06 ID:hpJNKJbH
朝から顔をひと目見られて『なんだ』とか言われた時点で、虚脱感でいっぱいになる。
効果音で言えば、ふにゃにゃにゃにゃ〜、って感じ。
ボッシュートの音楽でも良いんだけど。
『のの』と私の名前を呼んだ彼女は、何事もなかったかのように元座っていた椅子に腰掛けた。
彼女の落ち着いた動作に反して、私は事態がちっともつかめない。
もしかして楽屋間違えたのかなぁ?
何で私のこの変化を見ても、全然驚かない?
って言うか、あんた誰?
222 :
書いた人:03/07/11 23:07 ID:hpJNKJbH
まじまじと見つめつづける視線に耐えかねたのか、彼女は不審そうに私の顔を覗き込んだ。
「ねえ?のの、大丈夫?もしかして、今日プロモ撮影だから緊張してる?
ま、私も緊張してるんだけどさ。だからこんなに早く来ちゃったんだ」
『先輩たちにやる気があるとこ、見せないとねぇ〜』
と殊勝なことを言ってのけるその人を、至近距離でぼんやりと眺め続ける。
このホクロの数・・・もしや?
「あの〜、もしかして、吉澤ひとみさんですか?」
223 :
書いた人:03/07/11 23:07 ID:hpJNKJbH
もしも地獄に行って閻魔様に、
『お前が生きてるうちに言った、最もバカバカしい言葉は何だ』
と聞かれたら、私は迷わずこの言葉を選ぶだろう。
『ぶりんこ』も捨て難いが、あいぼんとの友情の日々を考えると、こちらでいかせてもらう。
しかし3年間も慣れ親しんだ同僚を呼ぶ言葉にしては、酷すぎる。
誰だよ、吉澤ひとみさん、って。
でも今の彼女は、そう呼ばざるをえない雰囲気を持っている。
224 :
書いた人:03/07/11 23:09 ID:xS5CRa4p
顔のほうはあんまり変わっていない。
よっすぃ〜は太っても、あんまり顔のほうには出なかったから。
でも驚くべきはその身体。
細ッ!
ノースリーブの両肩から伸びる腕が、まるで鞭のようにしなやか。
『バレーやってた』という言葉が、なるほどと頷けてしまう。
あわせて亀井ちゃんに『よっすぃ〜のバレーのポジションはラインズマン』と嘘をついたことを、
心の底からざんげしておく。
昨日までのよっすぃ〜には、そんな嘘も余裕で信じられる貫禄があったのだ。
225 :
書いた人:03/07/11 23:10 ID:xS5CRa4p
「え?何言ってんの?そうだよ、吉澤。ホントに大丈夫?」
彼女は笑顔の奥に、どこか影を秘めて私の顔をもう一度覗き込んだ。
うっ・・・・・・可愛い。
流石は天才的美少女。
今日のよっすぃ〜に、『綺麗なお姉さんは好きですか?』と聞かれたら、
私は首を、脱臼するまで縦に振りつづけるだろう。
226 :
書いた人:03/07/11 23:11 ID:xS5CRa4p
なるほど・・・
どうやらまこっちゃんは、私以外にも薬を渡したようだ。
よっすぃ〜も心の中では同じことを思っているんだろう。
でもそこは私よりも大人。
『この状態を普通のこととして、やっていこう』
という意志の現われなんだろう。
その方がみんなのショックが大きくておもしろい、っていうのを読んでいるのだ。
策士ですねぇ、よっすぃ〜。
227 :
書いた人:03/07/11 23:13 ID:xS5CRa4p
確かに痩せることができた私たち同士で驚きあったって、しょうがない。
「分かったよ、よっすぃ〜。私のほうは大丈夫だから」
よっすぃ〜は『はぁ?何が大丈夫なの?』と言いたさげな、疑問120%の顔のまま。
今日のよっすぃ〜は、演技が冴えている。
しかし私がこれで、よっすぃ〜がこれ。
こうなると、紺野ちゃんやあいぼんの変化が無性に楽しみになると同時に怖くもなる。
どうしよう?
もしも太刀打ちできないくらいに完璧な痩せ方をされていたら。
確かに同僚としては嬉しいけれど、ライバルとしては複雑だ。
よっすぃ〜の横にちょこんと座りながら考えていると、再びドアが開かれた。
228 :
書いた人:03/07/11 23:17 ID:S/bFaDh0
今日はここまでです。
初めて『お茶でも飲みましょう』が出てびっくりでした。
ボッシュートが一発変換だったのもびっくり。
>>213 ありがとうございます。はげみになります。
>>214 あれは反則だと思います。
>>215 あいぼんさん、艶かしすぎ。
>>216 改めて、どうぞ宜しくお願いします。
>>228 うーむ。面白いです。
作者さん更新乙です。
うわ〜。書いた人さんがいる!!ぶっちゃけファンです。これからもガンガッテクダサイ。応援してます。
>>228 コロコロ
, ((( ´D`)))
. _,,..-:':':"~^~^~^":':':-:,,._
.~~ ~ ~ ~ ~ |~~ ~ ~ ~ ~ ~~~
| 更新乙!イイ感じやで
@ノハ@ | しっかし、美少女なよっしー
( *‘д‘)つj めっちゃ見たいわ・・・
232 :
書いた人:03/07/13 01:54 ID:CGuRRgWq
「・・・・・・あの・・・おはようございます・・・」
色に例えればピンク色の声が、弱々しく楽屋に響いた。
『アニメ声』、又は『永遠のヘリウム声』。棒読み機能が標準装備された彼女。
声だけ聞けば、視線を向けなくても誰だか分かる。
その声の主、梨華ちゃんは、入り口で深々と頭を下げていた。
きしょいファッションは相変わらず。
今日も彼女は上下をピンクに揃えるという、
午後のワイドショーでマダムの服飾センスを罵倒しつづけるオカマが見たら、卒倒しそうな色使いだった。
このファッションを見ても平気になってきた辺り、私の美的センスが平常であるのか疑わしくなる。
さぁ〜て、私とよっすぃ〜を見て、どんな反応するかな?
ふふふ、私たちにひざまずくのも時間の問題だよ、梨華ちゃん。
233 :
書いた人:03/07/13 01:55 ID:CGuRRgWq
が、顔をあげても梨華ちゃんは何の反応もなし。
今にも東尋坊からダイブできます!!って感じの、黒いオーラを放ちながら近付いてくる。
「あ、梨華ちゃん、おはよ」
「・・・・・・うん、おはよう」
心が暗黒面に取り込まれたんじゃないか、と思うくらい、よっすぃ〜の挨拶にも暗い返事。
よっすぃ〜は、そんな梨華ちゃんをまるでいつも見ているかのように、普通に接している。
私は梨華ちゃんが私たちの変化に気付いてくれないことよりも、何より彼女の変化に呆気に取られていた。
234 :
書いた人:03/07/13 01:56 ID:CGuRRgWq
梨華ちゃん・・・・・・化粧へったくそ。
しかも髪の色が黒く戻っている。
更に今日の梨華ちゃんには、何て言うのかなぁ、オーラが無い。
『普通人』って感じ。
いつもは『何かヤバイ薬やってんじゃないの?』って位にハイテンションだから、それとのギャップが余計に目に付く。
違う、梨華ちゃん。
あんたそんなんじゃないよ。
悔しいけれど、いつもの梨華ちゃんは輝いてる。
すらっとしてて、可愛くて。
確かに歌はアレだし、空気の読めなさはあるけれど、それでも梨華ちゃんはモーニングのエースだ。
235 :
書いた人:03/07/13 01:58 ID:gZOt0Btu
私の視線が少し反抗的なものになっていたのに気付き、梨華ちゃんは突っ立ったまま、私に小首を傾げた。
私が見上げる構図になっているのに、梨華ちゃんの目付きはどこか下から覗き込むような感触を受ける。
「ねぇ、のの・・・・・・何か私に怒ってるの?」
「え?別に・・・何も・・・」
「そう・・・・・・ホントに?」
「うん」
「・・・・・・・・・嘘ついてるでしょ」
「ハァ?」
彼女はネガティブ全開だった。
確かに目付きがちょっと怖くなっていたのかもしれない。
でもいつもだったら
『なぁに?のの、あんたアレでしょ。反抗期ってやつ?ハハン、若いな!』とか、脳の病を心配したくなるような返し方をするのに。
236 :
書いた人:03/07/13 01:59 ID:gZOt0Btu
「あ、今日なんだかのの変なんだよ。緊張してんじゃない?
だから梨華ちゃんもそんな気にしちゃダメだって」
「・・・・・・そう」
見兼ねたよっすぃ〜が助け舟を出し、ようやく解放される。
何故か私のせいになっているのが気になるが、仕方が無いか。
しかし梨華ちゃんが私たちに驚かない上に、これって・・・・・・
少しだけ、私には推理ができてきた。
もちろん、『まこっちゃんが梨華ちゃんを貶めるために、別の薬を渡した』というのは有り得ない。
今は推測するのもかなり怖いけど、でも・・・多分、私の推理はあっていると思うんだけど。
だとしたら、あのケロンパ。恐ろしい物を私にくれたことになる。
とりあえず・・・あいぼんが早く楽屋に来てくれないと・・・
237 :
書いた人:03/07/13 02:00 ID:gZOt0Btu
「あれ?ねえ、梨華ちゃん。あいぼんはまだ来ないのかなぁ?」
「あいぼん・・・・・・?のの、いつからそう呼ぶようになったの?」
私の呼び掛けに何故か梨華ちゃんは、びくびくしながら応えた。
でも私には、梨華ちゃんのそんな答え方よりも、もっともっと気になることがある。
「ハァ?梨華ちゃん何言ってんの?そんなんずっと前からに決まってんじゃん」
いつものように、少し悪っぽく言ってみる。
梨華ちゃんの場合はこんなことを言っても、あんまり気にしないから好き放題できて楽しいのだ。
Mの人間と接するのは楽だなぁ、とあいぼんに昔言ったところ、
『絶対に人前でそんなん言うたらあかん』と怒られたなぁ。
238 :
書いた人:03/07/13 02:02 ID:BAMmRxsD
でも私の目の前には今にも泣き出しそうな、目をうるうるさせた梨華ちゃんがいる。
ヤバッ・・・!泣かした?
でも、こんなことで梨華ちゃん泣くっけ?
ハロモニで肉取れなかった時も泣いてたけどさぁ・・・アレはアレで驚いたんだけど。
焼きそばで泣く私に言われたくないだろうけどさ。
私は思いもしない反応にびっくりして、慌ててフォローする。
「あぁぁ、ごめん・・・?なのかな?この場合。
私はさぁ、あいぼん何処にいるのかなぁ?って聞いただけなんだけど・・・」
「酷いよ・・・・・・いつものの、あいぼんのこと『あいちゃん』って呼んでるから、
だから不思議に思っただけなのに・・・」
肉食えなかった時と同じように、よっすぃ〜が必死に梨華ちゃんを慰める。
二人ともあの時とは全然違う風貌なのに、こういうところは変わらない。
239 :
書いた人:03/07/13 02:03 ID:BAMmRxsD
でも、梨華ちゃんの言葉。
私があいぼんを「あいちゃん」って呼ぶ?
その言葉に、今までの幾つもの疑問が一気に結びつき始めた。
・・・・・・梨華ちゃん、ご褒美に後でアイス奢ってあげるからね。
『まるで昔みたいに』痩せた私
天才的美少女のよっすぃ〜
ネガティブ全開の梨華ちゃん
なくなっていたオーバーオール
「あいちゃん」
まさか・・・もしかして、いや、絶対に・・・・・・
240 :
書いた人:03/07/13 02:04 ID:BAMmRxsD
バァン!!
楽屋のドアが勢いよく開かれると、私と同じくらいに小さい茶髪の女の子が、元気よく頭を下げた。
聞きなれた関西弁。
姿こそ違うけれど、その関西弁が異様に懐かしくて私を安心させてくれる。
「すいませぇん!!おそぅなりました!おはようございます!!」
「あいぼ〜ん!!」
我ながら情けない声を出しながら、少女に向かって駆け寄る。
彼女は一瞬私に『?』という表情をすると、眉を寄せて目を潤ませ、
「ののぉ〜!!やっと来てくれたんやなぁ〜〜!?」
遂には涙を流しながら、私をしっかりと受け止めた。
抱き合ったまま、さめざめと泣く私たち。
よっすぃ〜と梨華ちゃんは自分たちのことも忘れ、
朝から突然始まったメロドラマに困惑しているのだった。
241 :
書いた人:03/07/13 02:09 ID:BAMmRxsD
今日はここまでです。
ランク王国はなんであんなに見ていて恥ずかしいのだろう。
どーでもいいことなんですけど。
>>229 ありがとうございます。バカな話ですいません。
>>230 おひさしぶりです。恐れ多いお言葉ですな。
>>231 いつか再び見ることができると、信じたいです。
>>241 うーむ。またしても面白いです。
作者さん更新乙です。
交信乙です
こういう展開できましたか…今後が楽しみです
更新乙です。
とっても面白いです。次の更新も期待して待ってます。
更新乙です。あとレスありがとうございます。覚えててもらえてうれしいです。物語これからどう進むか楽しみです。
@ノハ@
( *‘д‘) <更新乙!そうきましたかー、ほー。
( つ凵O 確かにランク王国はこっぱずかしいな、なんでやろう?
と__)_) 梨華ちゃん並の演技と子供だましなCGかなー?
247 :
書いた人:03/07/14 17:08 ID:lzBaA/uX
朝っぱらから挨拶もそこそこに抱き合って泣く、二人の女の子。
コンサートでよく見る、おやびんが眉をしかめる種類の人々なら、
涎でも垂らしそうなシチュエーションなのかもしれないけれど、こちらとしては必死だ。
少し落ち着いてきたところで、目の前の我が相棒を眺めてみる。
細くてつりあがった黒目がちな目。
下ろした髪は明るめの茶色・・・・・・前線がやや後退しているのは変わらないけれど。
忘れることができようはずが無い。
我が相棒、加護亜依・・・・・・正確に言えば3年前の加護亜依。
あいぼんも同じ事をしていたらしく、ひとしきり私をつま先から頭のてっぺんまで観察すると、ふぅ、と息を吐いた。
「のの・・・・・・・・・やっとこっちに来てくれたんか・・・会いたかったで」
「それはお互い様だよ・・・・・・」
姿かたちは変わっていても、その口調は間違いなく、私が昨日まで会っていたあいぼんのものだった。
変わった、と言うよりは戻った、のほうが的確なのかもしれないけど。
248 :
書いた人:03/07/14 17:09 ID:lzBaA/uX
「・・・・・・二人とも、大丈夫?」
朝から泣き始める同僚三人に囲まれて、流石にうんざりした様子で、それでもよっすぃ〜が声を掛けてくれた。
この辺り、よっすぃ〜は非常に人間ができていた。
私のよく知るよっすぃ〜には、こういう側面よりも妙にはっちゃけた面が目立つけれど。
彼女もいつの間にやらキャラクターがおかしな方向に進んでいるが、
私は今のよっすぃ〜は宇宙人にさらわれて、何かと入れ代わったのではないかと踏んでいる。
「うん、大丈夫やで。なぁ?のの」
「そうなの・・・・・・えっと・・・・・あいちゃんに会えて嬉しかったから・・・ね」
アドリブを利かせて『あいちゃん』と呼んでみたら、何だか無性に懐かしくて、再び涙が出そうになった。
249 :
書いた人:03/07/14 17:10 ID:lzBaA/uX
「そう、今は2000年の4月や・・・・・・」
先輩たちが来る僅かな時間を縫って、私とあいぼんは第1回ぶりんこ対策会議を開催した(開催地:楽屋の端っこ)。
「・・・・・・じゃああいぼんは、私よりも早くこっちに来ちゃったんだ」
「そやな・・・・・・3日前の朝から。きつかったで。
ののもおんなじやと思ったら、『あいちゃ〜ん』って言って、まとわりついてくるだけやったからな」
「へへへ・・・・・・じゃあ3日前の私に代わって、謝っとくよ」
あいぼんは私と違って、感情を小出しにする方ではない。
どっちかって言ったら、感情を溜めて、それがいつか『ぽんっ』って出るタイプ。
さっき私と同じように泣きじゃくるあいぼんを見て、この3日間がよっぽど辛かったんだろうな、と想像がつく。
250 :
書いた人:03/07/14 17:11 ID:lzBaA/uX
「・・・・・・ってことは、紺野ちゃんもこっちに来てるのかな?」
「せやろなぁ。でもこの時期って、まだ北海道にいるんちゃう?」
「そっか・・・・・なら、電話して確かめてみよっか?」
そういった私に、あいぼんは半開きにした、なんとも言えない視線を送る。
心の中では『アホやなぁ、ののは』と思っているに違いないのだ。
「・・・・・アホやなぁ、ののは」
声に出されてしまった。
「それとも何か?ののは紺野ちゃんの実家の電話番号、きっちり覚えとるんか?」
「覚えてるって、携帯に・・・・・・・・・あ」
251 :
書いた人:03/07/14 17:15 ID:KhEUWwBH
そこまで言って気付く、なるほど私はアホだ。
今の私の携帯電話・・・
モーニング娘。に入るから買って貰ったんだろう、機種が古いのに新品みたいだった
・・・には、もちろん紺野ちゃんの電話番号は入っていない。
ましてや実家なんて掛けたことすらないから、ますます分からない。
当然そんな番号、覚えていられるような脳の構造を私は持ち合わせていない。
「それに・・・・・・」
私が考えるよりも早く、この3日の間に考えていたのだろう、あいぼんは難しそうな顔をして呟く。
「紺野ちゃんが2000年にもう来てるのか、分からへん。
うちとののも、3日違ったから・・・・・・紺野ちゃんもまだこっちに来てへんのかもしれん。
だから紺野ちゃんのほうから連絡してくる、っていうのも・・・」
「あんまり期待できないねぇ」
置かれた状況が『シャボン玉』での紺野ちゃんのパート割りよりも悲惨すぎて、溜息しか出なかった。
252 :
書いた人:03/07/14 17:16 ID:KhEUWwBH
「あぁぁ、それとな、今の時期・・・大変やで今日も・・・」
山積みの問題に眉を寄せながらあいぼんがそう言いかけた時、
楽屋のドアが三度(みたび)開かれ、3年後には到底発見できないようなギャルが入ってきた。
小さな背丈、金色に近い髪、気が強そうな眼差し、太い二の腕。
「おはよぉございまぁす、おっ!!早めの入りなんて偉いね!新入り!」
・・・・・・とは言ってもあんまり変わっていないかな?
3年後とおんなじようなテンションの高さ。
でもどこか、いい意味での『プライド』を持っているような雰囲気がある。
私はおやびんがおやびんのままで、少し安心した、まぁこの頃は、『おやびん』ではないんだけど。
私たちの返事の挨拶に満足そうに頷くと、やぐっさんは部屋の隅にいる私たちを訝しげに見つめた。
253 :
書いた人:03/07/14 17:17 ID:KhEUWwBH
「お前らなぁ、水槽のザリガニじゃないんだから、そんな端っこに固まってんなって!
あ?あれか?プロモ撮るから緊張してんのか?」
『私も最初にプロモ撮った時はさぁ〜』・・・とやぐっさんは遠い目をして語り始めた。
甲殻類に例えられたのがなんとなく不名誉だったけど、別に太った生物でないのは気分がいい。
いつものやぐっさんなら、『羊追いも出来ないベイブ』とか『ムーミン一家の一員』とか、毒舌満載の呼称しか出てこないから。
その度にあいぼんと二人で、『うっせ、チビ』とか毒づいているんだけど。
私はやぐっさんの方へ近寄りつつ、小声で相棒に問いただす。
「ねえ、プロモって・・・・・・なんの?」
「自分の初めてのプロモくらい覚えとかな・・・ハピサマや」
254 :
書いた人:03/07/14 17:18 ID:KhEUWwBH
やぐっさんの方を見たまま、あいぼんは小声で更に続けた。
「のの、うちも早く元に戻りたいのは山々やけどな・・・とりあえず今は、なるべく卒無くこっちの時代もやっていかなって思うん。
だってもしうちらが元に戻った時に、こっちの時代の自分らが苦労するだけやん」
「・・・・・・うん、なんとなく・・・分かった」
確かにこの時期の私たちは、新しい環境に慣れるのに必死だった。
その中で矢継ぎ早に新曲や番組の収録があって、何とかやっていった、って言うのがホントの所。
とりあえず元に戻る方法や、紺野ちゃんとの連絡のつけ方は考える。
でもこっちの時代の自分たちのことも、おろそかにはしない。
・・・・・・これしかないんだよね、多分。
255 :
書いた人:03/07/14 17:19 ID:3mDqiznv
「あれ!?」
そこまで考えた私は、不意に素晴らしい思いつき。
今私は2000年にいる。
まあいずれ向こうに帰らないといけないとして・・・・・・
もしかしたら、加入当初に起こした数々の失敗を防げるんじゃないんだろうか。
日頃脳みそが休眠状態にあるからか、こういう思いつきの力は天下一品だと我ながら思う。
私には防いでおきたい失敗がこの時期には幾つもある。
そしてそのうちの一つは、今日起こるんだってことも分かっている。
忘れたくても忘れられないあの失敗。
「ふふふ・・・・・・まこっちゃんも良い薬くれたもんだね」
そう言いつつ、目をキュピーンと光らせている私に、あいぼんは
『遂にイカれたか?脳が』
とでも言いたさげな視線を送っているのだった。
256 :
書いた人:03/07/14 17:28 ID:3mDqiznv
今日はここまでです。
早く梅雨が明けて欲しいなぁ、と思うこの頃。
個人的には真冬が好きなんですが。
>>242 ありがとうございます。こんな時間までご苦労様です。
>>243 交信は・・・( ゜皿 ゜)<シナイヨ
>>244 ご期待にこたえられる自信が零です。
>>245 どう進むんでしょうね?あんまり考えてなかったり。
>>246 おそらくそれが原因かと。
あいぼんさん、そんなじかんに飲むとトイレ近くなりますよ。
更新乙です。辻ちゃんが犯した失敗とはあのことですね。なんとなくわかります。読んでいくたびに次ぎなにが起こるんだろう。とドキドキします。
@ノハ@
( *‘д‘) <更新乙!
.∬φ___⊂)__ そうそうと思わせる表現がイイなー
./旦/三/ /| こうなったらうちも小説書くで
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| | ・・・
| あいぼん .| | アカン、AAネタしか浮かばんわ
うーむ。またまた面白いです。
作者さん更新乙です。
260 :
書いた人:03/07/15 21:54 ID:4+1T7cAr
集合時間30分前を切ったあたりから、続々とメンバーが集まってくる。
その面子を見るに従って、私は自分が2000年、
まだ21世紀にもなっていないこの時期にいることを痛感していった。
なかざーさん・・・・・なんか3年後の方が綺麗になってる感じがするのは気のせいかな?
三十路前には結婚できない、って知ったらどんな顔するんだろう?
いちーさん・・・・・脱退を控えているからか、何だか近寄り難いオーラを感じる。
彼女が3年後どうなってるかは・・・・・・記憶の奥底に封印しておくとしよう。
ごっちんとおばちゃん・・・・・まだメンバーなんだよね。
この二人がごく自然にモーニング娘。でいられるのを見ると、何だか切なくなってくる。
それにしても、おばちゃん影薄ッ。
こう見ると、3年の間に随分変わったんだなぁ、と思う。
それと同時に、この11人がモーニング娘。であることに、あんまり違和感を抱かないのも不思議。
加入当時のこのメンバーが私には印象深いのだろう。
それだけじゃなく、まだ私が・・・この時代の私が、頭の中に残っているのかも。
だから今日、このスタジオまでボーッとしていても辿り着けたし、集合時間だって間違えなかったのだろうか。
261 :
書いた人:03/07/15 21:55 ID:4+1T7cAr
うわぁ、なっちゃんぷっくぷくだ。
そう言えばこの時期のなっちゃんって、多分一番ふっくらしていた時期。
ふふふ、1年後には私に『食べ過ぎ』とか説教するくせに。
でもそんな外見に似合わず、なっちゃんはちょっとトゲトゲした感じで楽屋に入ってきた。
あぁ、まだごっちんとあんまり仲良くなかったっけ?
飯田さんはあんまり変わってないかな?
でもどこか、交信状態がこの頃は多そうな感じがする。
真っ黒で綺麗なストレートの髪が、まだ色っぽさよりは若さの方を際立たせる。
262 :
書いた人:03/07/15 21:56 ID:4+1T7cAr
座ったままボケーッとみんなを観察している私と不意に目が合うと、
飯田さんはにこっと微笑んで、心優しく話し掛けてきてくれた。
「いい?のんちゃん。分からないことがあったら、何でもカオリに聞いていいんだよ。
今日初めてのプロモで緊張してるだろうけど、あんまり気張らなくていいんだからね」
「は〜い」
『後輩』としてここまで気を遣ってくれることが懐かしくて、そしてちょっぴりくすぐったい。
自分がこんな風に後輩に接してこれたのかは、非常に疑わしいんだけど。
飯田さんは返事をする私を、何が楽しいのかニコニコと見ていた。
見つめていた。
・・・・・・まだ見つめている。
・・・・・・・・・・・・どうやら多少の交信に入ったらしい。
263 :
書いた人:03/07/15 21:57 ID:4+1T7cAr
私たち新メンを迎えて、どこか優しい感じが表面上あるものの、楽屋にはどこか緊迫した空気が漂っていた。
こんな雰囲気、ここんところずっと味わったことが無い。
みんなそれなりに言葉を交わしているけれど、どこか感じるのは『あなたには負けない』って言う空気。
この間オソロに出させてもらった時に梨華ちゃんが言っていた、『緊張感』だろうか。
レコーディングの時に、ガラスの向こうで厳しい目で見ている先輩たち。
ハピサマのパートなんて有るようで無いようなものだったけれど、それでも肩甲骨の間が震えたっけ。
メンバーは最高の友達であって、最高のライバル。
3年経っても私はそう思っているけれど、
この時期はみんな、多分後者の意識の方がずっと大きかったのかもしれない。
・・・・・・・・・・・・多分『強敵』とか『好敵手』と書いて、『とも』とか読んじゃうんだろうなぁ。
264 :
書いた人:03/07/15 22:00 ID:Qqg0Jki5
「あ〜、そんじゃ時間かな?」
中澤さんの一声に、一気に楽屋が静まりかえる。
特によっすぃ〜と梨華ちゃんは、まるでお通夜みたいに神妙な顔つき。
そんなんじゃ、プロモ撮り終わるころには気疲れで倒れちゃいそうだ。
「今日プロモの撮影やから、ちゃんとテキパキ動いてな。
特に新メン、分からんことあったら一人でマゴマゴしとらんで、さっさと教育係に聞くんやで」
「「はいぃ!!!!」」
元気よく返事をしたのは、私とあいぼん。
もうこういうのには慣れっこになっている。
どんな時でも挨拶と返事は元気に・・・・・・基本だ。
よっすぃ〜と梨華ちゃんはそんな私たちの変化に驚き、目を見広げている。
「お!?いい返事やなぁ、辻、加護。姐さん嬉しいわぁ」
「「えへへへ・・・・・・」」
中澤さんに誉められるのもすっごい久しぶりで、思わずあいぼんと顔を見合わせて笑った。
265 :
書いた人:03/07/15 22:01 ID:Qqg0Jki5
ついこの間『シャボン玉』のプロモを撮ったばかりなのに、またプロモを撮るというのが何だか不思議。
ハピサマのプロモ撮影・・・忘れもしない、いや、忘れられない。
誰にだってある、思い出すとまるで身を切られるような記憶。
この撮影日は間違いなくその一つに当たるだろう、私にとっては嫌な想い出だ。
この日衣装替えの途中、私は撮影で着るドレスに真っ赤なマニキュアをぶちまけたのだ。
まだ耳の底にこびりついている、スタッフさんの叫び声。
泣きじゃくる私に、ひたすら優しく声を掛けてくれた飯田さん。
『みんな怒ってないよ。もう大丈夫だから、おいで』
あの声は、忘れない。
多分何年経っても・・・・・・私が芸能界を辞めたって、ずっと覚えてるんだと思う。
そのせいで撮影は2時間押した。
変えられるなら・・・変えたい過去。
266 :
書いた人:03/07/15 22:02 ID:Qqg0Jki5
撮影に使われる大量の衣装と、そしてメイクさんや衣装さんやら、スタッフさんが大量に入ってきた。
楽屋の中は、まるで蟻塚をアリクイがぶち壊した後みたいな大騒ぎ。
喧騒の中、あいぼんが私につつつ・・・と近寄ってくると、そっと耳打ちしてくる。
「なあ、のの・・・さっき『まこっちゃんがいい薬くれた』って言うてたけど・・・
もしかして、マニキュアのこと?」
流石は我が相棒。
私の思考回路を読むのは御茶の子さいさいのようだ。
・・・・・それだけ私の考えが浅墓だ、とも言うのかもしれないけど。
「・・・うん」
「それは・・・・・・止めといた方がええかもしれんで」
私の思考は読まれ放題なのに、相棒の思考は一向に読めないのだった。
267 :
書いた人:03/07/15 22:02 ID:Qqg0Jki5
「なんで!?」
思わず大声を出してしまう。
あいぼんもあの状況に居合わせていたんだから、
私が今までどれだけこのことを悔やんでいたのか分かっているはず。
それなのにあいぼんは、眉を寄せたしかめっ面のまま呟いた。
「あのな、うちもののも、3年後ああいう風に過ごしとるのは、色んなことが積み重なってるからやん」
「・・・・・・うん」
「せやから、今はなるべく、昔あったことはそのまんまにして過ごした方がええと思う。
もしもこの時代に変化が起きると、それが3年後にどう影響してくるか分からんやん?」
その言葉に、私は虚ろな返事をした。
あいぼんの言いたいことは分かる。
バカ女に輝いたとはいえ、私にだってこれくらいの理解力はある。
ちなみに、いけないのはあの敵性言語だ。
268 :
書いた人:03/07/15 22:04 ID:Ln/x0oAv
私がマニキュアを倒さなかったら。
もしかしたら凄い勢いで未来が変わってしまうかもしれない。
私はあんなに太ったりしないかもしれない。
飯田さんがリーダーにならないかもしれない。
そして・・・モーニング娘。が3年後には存在しないかもしれない。
・・・・・そんなこと無い、って言い切れない。
そして私たちが未来に戻ったら・・・・・・戻れたら、の話だけど・・・その『変わった後の』の未来に帰ることになる。
もしかしたらその変化とは無関係に、私は元いた3年後に帰れるのかもしれないけど。
知り合いにこんな経験ある人なんていないから、実際どうなるのかは分からない。
そして分からないからこそ、なるべく危険は避けなければならない、っていうのは理解している。
269 :
書いた人:03/07/15 22:05 ID:Ln/x0oAv
でも!!
でも、あいぼんには分からないんだ。
私があのことでどんなに苦しんだか。
傍目には三歩で全てを忘れる、鳥類並みの感性の持ち主に見えるかもしれないけれど、あの事件は忘れられない。
あいぼんは色んなことを、昔っから卒無くこなせたから、私の気持ちを分かってくれないんだ。
「ううん・・・・・・・・・・・でも・・・」
「のの・・・・・・ののの気持ちは充分分かってるつもりや・・・だから・・・」
あいぼんはまるで懇願するように私を説得する。
そんな目されたって・・・・・・
「ごめん、あいぼん・・・・・・私どうしても、やってみたい」
私の答えにあいぼんは少し非難めいた、でもどこか悲しい眼差しを返した。
3年間一緒にいて、初めてされた表情だった。
270 :
書いた人:03/07/15 22:10 ID:Ln/x0oAv
今日はここまでです。
ご感想など宜しくお願いします。
>>257 バレバレですか。ごめんなさい。
>>258 AAできるほうが羨ましいです。
>>259 ありがとうございます。結構考えてません。
作者さん連日の更新乙です。
うーむ。これまた面白かったです。
緊張してきました。
作者さん乙です。
面白いです。
更新待ちの小説があると2ちゃんに来るのがこんなに楽しいものだということを思い出しました。
敵性言語ってなんのことかと数秒考えてしまった
274 :
書いた人:03/07/17 00:11 ID:PM5HWPv8
私たちがそんな空気の中で立ち止まることを許さないかのように、撮影の準備は戦場のように続く。
「それじゃ、辻ちゃんはこっちに来て下さいね」
「は〜い、加護ちゃんはそこに座って〜」
私たちも例外ではなく、スタッフに背中を押されるように連れて行かれる。
私から遠ざかりながら、それでも尚、あいぼんはあの目つきを変えなかった。
こういう状況で頭の中にドナドナが流れる自分の神経が、少し危ないと思う。
あいぼん、ごめん。
やっぱり、防げるものなら防いでみたいんだ。
もう一度、今度は声に出さずに呟いた。
275 :
書いた人:03/07/17 00:12 ID:PM5HWPv8
「それでは最初は、こちらの色の衣装でーす!!」
衣装さんの中で一番年長と思われる人物が声を張り上げる。
そこかしこから『うぃーっす』とだらしの無い返事が聞こえた。
「えーと、辻ちゃん用のは・・・・・・これね」
薄い布地の、それでも煌びやかな衣装が運ばれた時、私は思わず目をぱちくりさせた。
「お?結構立派でビックリした?」
私担当と思われる男の衣装さんが、私の反応を面白そうに笑った。
『ちげーよ、バーカ』とは、流石に口には出さない。
私の心の中は、所詮あんたには分からないんだから。
因縁の衣装に3年の時を経て再び出会う、この気持ちなんか。
私がマニキュアをこぼした、あの衣装だ。
276 :
書いた人:03/07/17 00:13 ID:PM5HWPv8
お久しぶり・・・
と、おかしな挨拶を心の中で唱えると、私の脳はまるで爆弾処理班のような注意力を発揮し始めた。
慎重に鏡台のマニキュアの瓶を手にとると、栓がしっかり閉まっているか確かめる。
衣装が何かに当たらないように、少し鏡台から距離をおいて慎重に着替える。
人生の中で、これほど神経を使ったことがあるだろうか。
多分、なっちゃんの前で『プレステ』って言わないように気を使いまくった、遥か昔の日々以来だ。
確かあの時は、梨華ちゃんとプレステの話で盛り上がっている所に突然なっちゃんが入ってきたもんだから、
『プレ・・・・・・・・・−ンヨーグルト、何処のが美味しいかなぁ?』
などという、おかしな誤魔化しかたをしたんだっけ。
しかも梨華ちゃんが全く空気を読めず、アドリブについてきてくれなくて、ドキドキしたっけ?
277 :
書いた人:03/07/17 00:13 ID:PM5HWPv8
心臓が高鳴るのが分かる。
流石にマニキュアをどの時点でこぼしたかまでは覚えていないから、全ての動作に神経を払う。
ゆっくりと衣装を着終わった私は、今度は慎重にメイク。
あくまでもマニキュアとの距離を保ちつつ、メイクさんの手つきを鏡越しに厳しい目で見つめる。
顔も髪も終わって、そしてマニキュアも無事に終了。
終わったら即座に瓶に栓をする。
まるでロボットのように性格で緻密な動き。
我ながら惚れ惚れする。
・・・・・・よし、これで終了。
全てを終わった私は、即座にスタジオに向かう。
心の中で『ミッション・コンプリート』という声が響いた・・・・・・スペルは知らないけどね。
278 :
書いた人:03/07/17 00:14 ID:PM5HWPv8
撮影はつつがなく進む。
衣装を着て、踊り、そして着替えて、また踊る。
楽しかった。
自分がモーニング娘。に入って最初の経験、それを二回もできるなんて、最高の贅沢かもしれない。
マニキュアの件だけでなく、私はまこっちゃんに再び少しだけ感謝した。
あいぼんもおんなじみたいで、はしゃぎながら、そしてミスも無く、撮影をこなしている。
結婚式衣装の方はいくつか色のパターンがあるので、何度目かの着替えをする。
複数のシーンをつなぎ合わせるから、結局私たちが踊る量もそれなりに多くなる。
フォーメーションやプロモ用の踊りを思い出しながらなので、体力よりも気疲れの方が大きい。
これで・・・・・・最後かな?
279 :
書いた人:03/07/17 00:16 ID:84vVnhqG
最後の着替えを黙々とこなしていると、我が教育係飯田さんが後ろに立っていた。
何も言わずに後ろに立たれると、正直少し怖い。
それでも気配で分かっちゃう辺り、やっぱり慣れてるんだろうなぁ、私。
「どうしたんですかぁ?」
「・・・・・・のんちゃん、ちゃんと出来てるね。偉いよ」
まるで子供に接するような言葉遣い。
昔の私って、ホントに幼かったんだなぁ、って実感する。
「えへへ・・・・・・ありがとうございます」
満足そうに渡しに頷くと、飯田さんはふと怪訝な顔をした。
最後の着替えを黙々とこなしていると、我が教育係飯田さんが後ろに立っていた。
何も言わずに後ろに立たれると、正直少し怖い。
それでも気配で分かっちゃう辺り、やっぱり慣れてるんだろうなぁ、私。
「どうしたんですかぁ?」
「のんちゃん、ちゃんと出来てるね。偉いよ」
まるで子供に接するような言葉遣い。
昔の私って、ホントに幼かったんだなぁ、って実感する。
「えへへ・・・・・・ありがとうございます」
満足そうに私に頷くと、飯田さんはふと怪訝な顔をした。
281 :
書いた人:03/07/17 00:19 ID:84vVnhqG
「あれ?のんちゃん、少し頭飾りずれてるよ。直してあげるから、むこう向きな」
「は〜い」
こういう風に接してもらえることが嬉しくって、私はくるっと体を半回転させた。
ドレスの裾が舞い上がり、鏡台をかすめる。
コトッ・・・・・・
回転する視界の中で、私は何気に鏡台の方に視線を移す。
ゆっくりとマニキュアの瓶が倒れ始めていた。
いや、大丈夫。
あれほど栓を確かめたじゃない。
そう思うと同時に、私の視覚はありえないものを捉える。
・・・・・・・・・瓶の上に乗っているはずの黒い栓が・・・・・・無い。
282 :
書いた人:03/07/17 00:20 ID:84vVnhqG
・・・・・・・・・・・・時が止まる
マニキュア瓶は私の膝元で一回転すると、中の真っ赤な液体を私の衣装に塗りたくっていく。
まるでスローモーションみたいに、ゆっくりゆっくりと、それは弧を描いていって。
私はそれを避けることもせず、ただその様子を見守ることしか出来なかった。
カラン、と軽い音を響かせて床に落ちると、再び時間が動き出す。
「うッきゃぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
私の近くにいた衣装さんが、まるで女の子みたいな声で叫ぶ。
一気に部屋の中の全ての視線が私に集まる。
そう、この声・・・・・・3年前に聞いたこの声。
「つ・・・辻ちゃん、早く衣装脱いで!!!」
彼が叫びながら、無理やり私の衣装を脱がしに掛かる。
私はただそれに従いながら、呆然としていた。
マニキュア瓶をひっくり返しちゃったからじゃない。
私は・・・・・・・・・未来を変えられなかった。
283 :
書いた人:03/07/17 00:27 ID:84vVnhqG
今日はここまで。
短めの上に、あまり可笑しな文章を入れるわけにもいかないシーンなので、
ちょっぴり読んでて退屈かもしれませんが、スマソ。
>>279は校正ミスを書き込み直後に見つけてしまったので、
申し訳ありませんが、
>>280がホント、ということで。
明日は更新できませぬので、ご了承を・・・・・・
>>271 ありがとうございます。レスを貰えるのがこんなに嬉しいとは、
小説書くまで気付きませんでした。
>>272 そういうお気持ちになって下さったなら、多分上手くいっているのでしょう。
毎日は更新できないと思いますが、これからも宜しくお願いします。
>>273 ( ´D`)<ストライクはよし、ボールはだめ、が基本れす。
でもなんで、『パーマネントは敵だ!』なんでしょうね?
思いっきり敵性言語使ってるのれす。
作者さん続けて更新乙です
うーん。スリリングですね。
本当に面白いです。
[ ゜皿 ゜]交信乙です
何気にペース早いですね
無理せずこれからもがんがってください
@ノハ@ もうドキドキですわ。
( *‘д‘) __________ 歴史変わるんかなー思たら
./ つ_|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| 結局・・・
(, |\|| 更新乙! | よっしゃ、こうなったら「記憶の中の『あの人』」 も読むで
'\,,|==========| って、まだ読んでなかったんかい!うち
やっぱり歴史は変えられないんですね。
のんつぁんが可哀相だ。
更新乙です。いや〜おもしろい。けど結局辻ちゃんは過去を変えられなかったのか。
289 :
書いた人:03/07/18 19:11 ID:9M34nSDo
「のんちゃ〜ん、大丈夫だからスタジオ降りておいで」
「・・・・・・・・・みんな怒ってるもん・・・・・」
ドア越しに聞こえる飯田さんの声に、見えるはずがないのに首を振る。
私の返事に飯田さんは少しだけ、溜息交じりの吐息を洩らしたようだった。
ドレスの汚れはあの時と同じように、除光液とシンナーを駆使することで30分ほどで何とかなった。
やっぱりあの時と同じように、その間ずっと飯田さんは私の肩を抱いていてくれた。
そして再び服を着せられ、撮影が再開されようとした時になっても、
30分前から流れつづけていた涙を止めることができなかった。
いつでも始められるように他のメンバーが移動したあと、私は一人っきりの楽屋で泣きつづけていた。
一人には広すぎる楽屋には、ひたすら私の嗚咽だけが木霊する。
290 :
書いた人:03/07/18 19:11 ID:9M34nSDo
私はみんなの所へ行けなかった。
衣装を汚してしまった事に申し訳ない、と言うのが無いとはいえない。
でもそれだけじゃない、あれだけ注意したというのに同じ失敗を繰り返したことが、私にはショックだった。
流石にそんなことは言えないから、飯田さんには1回目と同じ『みんながまだ怒ってる』という駄々のこね方を使うけれど。
鏡の中の女の子は、目を真っ赤にさせて唇をへの字にまげて、3年後の私だったら抱きしめてあげたくなるほど可愛い。
これじゃ、3年前と何にも変わんない・・・
私はそんなに進歩できてないんだろうか。
「のんちゃん・・・・・・ね、誰も怒ってないよ?」
外から聞こえる飯田さんの声があまりに優しすぎるのが悲しくて、私は自分の身体をぎゅっと抱きしめた。
こうしていないと、自分がまるでどっかに行ってしまいそうで怖かった。
291 :
書いた人:03/07/18 19:12 ID:9M34nSDo
みんなが怒っていないことは知っている。
私があと1時間30分後スタジオに降りていった時も、
みんなは私を叱るどころか懸命に慰めてくれるんだ。
私は失敗を変えられなかった。
それだけ私は成長していなかったのだろうか。
でもそれ以外に、どうしても納得できないことがある。
あれだけ注意していた瓶の栓が、何で開いていたんだろう。
誰が開けたか、が重要なんじゃない。何で開いていたか、が重要なんだ。
・・・・・・・・・一瞬、過去の物事は全て変えられないのか、とも思った。
でもそれは違う。
私がマニキュアをこぼしたドレスの色は、別の色だった。
そしてもう少し、早い時間帯だった。
少なくとも、飯田さんにお直ししてもらっている時に起こったりはしなかった。
――コンコン
私の重い考えとは正反対の軽やかなノックに、思考が中断される。
292 :
書いた人:03/07/18 19:13 ID:9M34nSDo
「のの、入るで」
私の答えを聞くまでもなく、楽屋に入ってきた我が相棒。
その顔はどこか嬉しそう。
釣り目がちの目を三日月みたいに細くして、唇の端がかすかに上がっている。
「のの、やっぱりうちの言うこと、分かってくれたんやな」
彼女はそう言って、私の右肩に軽く手を置いた。
私は彼女の態度が意外すぎて、呆然としたまま動けない。
「いや〜、やっぱり迷っとって、最後の最後に決断したん?
そんでもちゃんと、飯田さんに言う『みんな怒ってるも〜ん』って言葉まで同じなんて、大したもんやで」
「・・・・・・・・・あいぼん、違うよ。私、最後まで変えようとしてた」
下手くそな私のまねを得意げにやる相棒に、
いつもだったら紺野ちゃん直伝の正拳突きをお見舞いしてくれる所だ。
でも今日は違う。
辛い気持ちの中で精一杯の気力を使って言うと、再び涙が溢れてきた。
293 :
書いた人:03/07/18 19:15 ID:0XuoV25e
「え?そうやったん?
うちてっきり、ののがもう諦めたんかと・・・・・・」
心底私の返事が意外だったらしく、あいぼんはらしくない動揺を見せる。
「ううん、私、最後の最後まで、絶対に失敗しないようにしてた。
でもね・・・・・・できなかったんだ」
一度話しだしてしまうと、もう感情が出てくるのを止められなかった。
「私、そんなに進歩無いのかなぁ?
もしかして、これって絶対に起きなくちゃいけないことだったのかなぁ?
やっぱり・・・・・・私って・・・・・・」
喉がしゃくりあげてしまって、続けられない。
それすらも悔しくて、目をつぶって下を向く。
・・・・・・と、何かが私の両肩をつかんだ。
294 :
書いた人:03/07/18 19:16 ID:0XuoV25e
「あんな、のの。進歩なんかめっちゃしとるで。
もしかしたら『絶対起きないかんこと』なんかもしれんけど、でも、それはのののせいやない」
私の両肩に置いた彼女の手が、ぎゅっと強まる。
私よりも遥かに力が弱いあいぼんにしては、かなり力を入れてるんだろう。
「変えられんこと、ないと思うで。
たとえば今、ののとうちが喋ってるのだって、ホントは無かったことちゃうの?」
「・・・・・・・・・うん」
全てのことが変えられないわけではない。
でも・・・・・・『絶対変えられない何か』があるんじゃないか・・・・・・
わたしはぼんやりと考えていた。
295 :
書いた人:03/07/18 19:17 ID:0XuoV25e
「ちっとは落ち着いたん?」
私が喋らなくなったのを心配したのか、あいぼんが覗き込んでくる。
さっきの目を三日月にしていた笑いではなく、優しい微笑。
「・・・・・・うん、大丈夫。それより・・・・・・」
「うん?」
「早く、紺野ちゃんに連絡つけられるようにしよう。
で、早く元に戻れるように考えよう!」
私の言葉にあいぼんは力強く頷いた。
彼女は多分、あんまり過去を変えてしまわないようにって思ってるから、賛成してくれたんだと思う。
でも私はちょっと違った。
もし変えられない何か、があるんだとしたら、ここにいる私の存在が、酷く異常なものに思えていたから。
早くこの場から、元に戻りたかったから。
296 :
書いた人:03/07/18 19:17 ID:0XuoV25e
「さて・・・・・・で、どうするん?」
ひとしきり泣いて落ち着いた私に、あいぼんが小首を傾げて尋ねる。
『どうするん?』って聞かれても、目的語が無いから分からない。
しょうがないので、私も一緒に小首を傾げる。
傍から見ればただのバカだ。
「いや、ののが楽屋に閉じこもったのって、2時間やったけど・・・・・
まだ1時間ちょいしか経ってないで。あと1時間どうする?」
相棒の言葉に、私は大きく頷いた。
決まってるじゃない、そんなこと。
確かにあの過去を変えられなかったけど、これから起こることは多分、変えられるはず。
だってこれは、完全に私の意志次第だから。
私の不敵な笑みに、あいぼんはほくそえんだ。
297 :
書いた人:03/07/18 19:20 ID:tsIubuxH
「まぁ、しゃあないか。好きにしぃ」
ありがとう、あいぼん。
心の中で礼を言うと、私は立ち上がる。
楽屋に閉じこもった時間を1時間に変えても・・・・・・多分、大丈夫だよね。
私とあいぼんの意識が過去に来て、もうかなり変化が生じているんだと思う。
確かに大幅に何かを変えていくのは無理だけど、完璧に何も変えない、って言うのも不可能。
だから私は、今の私が納得いくように努力するだけ。
あいぼんの言うようにそれで何かが大きく変わってしまうかもしれないけれど。
彼女の気付いているんだろう。
全てを変えないことは不可能だから、とりあえず今を一生懸命やるしかないってことを。
許してくれた相棒に感謝。
メイク直しを入れて、押しが1時間15分。
ほんの少し。ほんの少しだけだけど、私の不名誉な過去は変わった。
298 :
書いた人:03/07/18 19:25 ID:tsIubuxH
今日はここまでです。
次回から元の調子に戻ります。
>>284 ありがとうございます。「うーん」は口癖なのでしょうか。
毎回のレス、本当に感謝してます。
>>285 自分でビックリです。お気遣いありがとうございます。
無理はあんまりしてないんですよ、ホントに
>>286 あいぼんさん、是非読んでやってください。
シリアス場面の書き方を、忘れてしまったので苦労しております。
>>287 あの事件を喋っているオソロを聞いて、悶え死にそうになりました。
やっぱり可哀想ではあるのですが。
>>288 ちょっぴりだけ、です。お返事乙です。
ありがとうございます。
作者さん更新乙です。
うーん。同一人物だと見破られましたかw
このあとどんな展開になるのか
とても楽しみです。わくわくわくわく。
300 :
書いた人:03/07/19 16:27 ID:K9gIGIE/
―――― 5日後 某所図書館
「こんなにあるのかぁ・・・・・・」
「そやなぁ・・・」
机の上に開いた電話帳を目の前に、私とあいぼんは『はふぅ』と溜息を洩らした。
私たちが娘。に入っての最初のオフ。私がこっちに来てから5日目。
あいぼんの誘いで、私は図書館にやってきたのだった。
本当なら芸能人になって最初のオフだったら、とりあえず家族と一緒にのんびり、
というのが基本なんだろうけど、生憎今はそんなことをしていられない。
マロンも家を出ようとする私を止めようとしたが、カップラーメンをあてがってその隙に外に出た。
カップラーメンよりも私の順位は下なのか・・・
マロン、よく覚えておくよ。
301 :
書いた人:03/07/19 16:28 ID:K9gIGIE/
何故図書館なんていう、私には半永久的に縁の無い空間に来たのかというと、
あいぼんが紺野ちゃんへの連絡のつけ方を思いついたから。
あいぼんの案は『電話帳で札幌の紺野さん宅に電話を掛けまくる』という、
関係者でない皆さんには果てしなく迷惑この上ないもの。
そのために北海道の電話帳が必要だ、ということらしい。
休日、二人の中学生が図書館で字ばかりの本を熟読・・・
と言えば聞こえが良いけれど、残念ながら私たちが目の前に広げているのは、文字と数字の羅列。
こんな物を他人が熱心に読んでいたら、少し精神の調子を疑いたくなる代物だ。
これを上回る危なさって、乱数表しかないような気がする。
302 :
書いた人:03/07/19 16:29 ID:K9gIGIE/
「まあ、2人でやれば何とかなるんちゃう?」
私が無駄な考えをしている間『ひぃ、ふぅ、みぃ』と、
おばあちゃん子丸出しの数え方をしていたあいぼんが、顔をあげて満足げに微笑む。
そんなに微笑まれても電話の相手は減らないよ、とは言わない。
「それでも・・・・・・やっぱり多いなぁ」
「まあ・・・・・・でも、しゃあないやん。早いとこ紺野ちゃん見付けんと」
そうなのだ。
今は紺野ちゃんを見つけることが先決。
とりあえず電話してみて、紺野ちゃんがもうこっちに来てるのか確かめないと。
来てれば三人で戻り方を考えればよし、
来てなければとりあえず私たちだけでも考えるようにしなくちゃいけない。
「そだね。ドラクエだって、2人パーティーより3人パーティーの方が強いんだから」
「うちら三人が揃っても、商人・武闘家・遊び人にしかならん気がするけどな」
あいぼん・・・・・・それは言っちゃダメだって。
って、『遊び人』って・・・・・・私?
303 :
書いた人:03/07/19 16:30 ID:K9gIGIE/
その後『よく考えれば、シャッフルユニットは人数少ない方が売れてるじゃん』という、
してはいけない発想をしてしまった私は少しブルー。
あいぼんは私の突然のブルーの意味が分からなかったらしく、
「まあほら、うちら三人寄っても文殊にはならひんけど、じぞぽんくらいにはなるんちゃう?」
などと言うよく分からないフォローをしてくれた。
あいぼん、所詮あんたには
『絶対これ、鉛筆倒してコード進行決めたんじゃないの?』
ってくらいに適当な曲をあてがわれる余り者グループの気持ちは分からないのだ。
やっと今年は勝った、って思った途端に抱合せ販売だもんなぁ。
でもじぞぽんレベルの知恵って・・・・・・
ちょっぴり未来に帰るのを諦めた瞬間だった。
304 :
書いた人:03/07/19 16:32 ID:LPAYfxwU
電話帳をコピーして、さっさと用済みの図書館を後にする。
さらば図書館よ。
もう二度とお目にかかることは無いだろう。
「・・・・・・考えたんだけどさぁ、紺野ちゃんがもしこっちに来てれば、連絡くらいくれるんじゃないのかなぁ?」
あいぼんと肩を並べて図書館を出るとき、私は電話帳をコピーしながら考えたことを口にしてみた。
そうなのだ。
私とあいぼんが思いつくような方法なら、紺野ちゃんがやっていてもおかしくはない。
なぜなら紺野ちゃんの知的レベルがハーバード大学なら、私とあいぼんはハロモニ女子学園くらいだから。
しかしあのコントの学校名、もっとひねれよ、と思ったのは私だけじゃないはずだ。
305 :
書いた人:03/07/19 16:32 ID:LPAYfxwU
自動ドアをくぐりながら、あいぼんは幼い顔を横に向けると、心底哀れなものを見るような目付きをする。
「アホやなぁ、のの。
もしうちらよりずっと前に紺野ちゃんが来とったら、なんもわからん3年前のうちらと話してたことになんよ?
それに、モーニング娘。に入った後やったら、それこそ電話番号変えてもうたやん」
「あぁぁ、そうかぁ」
極めてお馬鹿さんな返事をしつつ、あいぼんの言うことに頷いた。
私たちが来るより前に紺野ちゃんが来てても、
モーニング娘。に入ってヲタ対策に電話番号を変えてしまってるから、電話帳や番号案内では辿り着けない。
それに番号を変える前じゃ、私たちがそもそもこっちの時代に来てないから、話しても成り立たない。
相方の『アホ』発言に怒ることも忘れて、私はだらしなく口をあけて感心していた。
306 :
書いた人:03/07/19 16:33 ID:LPAYfxwU
流石に携帯電話から北海道に電話する勇気は無いので、あいぼんを引き連れて私の家に帰還。
よく考えたらあいぼんを家に連れてくるのは、まだ片手で数えるくらいしかない・・・はずだ。
「あら〜、亜依ちゃん。こんにちは。
いつも希美がお世話になってますねぇ。
ホント、この娘だらしなくて甘えんぼだから、くっついてきて大変でしょう?」
玄関先で出迎えた母が、満面の笑みを浮かべてあいぼんを迎えてくれた。
ぐぅ・・・・・・なんで母親ってのは、こういう時に自分の娘の恥部を曝け出せるのだろうか。
しかも『だらしなくて甘えんぼ』とは・・・・・・二冠王だ。
実は泣き虫も入れて三冠王だということは、胸の内に秘めておこう。
「こんにちわぁ。うちもお世話になっとりますぅ」
あいぼんは世渡りが上手だと思う。
母親と何故か『10年前から知ってます』ってな感じで、普通に会話を成り立たせている。
しかも娘(私)についてのリップサービスも欠かさない。
まああの目をしている時は、大体心にも無いことを言ってる時だけど。
307 :
書いた人:03/07/19 16:35 ID:LPAYfxwU
母親の話が私の幼稚園時代の失敗談に及びそうになった時、私はあいぼんを急かして部屋に通した。
「マロン・・・・・・痩せとるな」
飼い主よりもラーメンを選ぶ、という偉業を達成した我が飼い犬を見て、あいぼんはポツリと洩らす。
その言葉、多分マロンも同じ状況ならあいぼんに言うよ、とは言わない。
まあ確かに今のマロンは『犬』だが、3年後は『マシュマロマン』に近い。
あいぼんがマロンと戯れている間、私は電話機を部屋の中央に持ってくる。
テーブルの上に電話機を置いて、気分はちょっぴり刑事ドラマだ。
『ラーメン犬』はこの間オソロで使っちゃったから、コードネームは今度は『焼きそば刑事』で行かせてもらおう。
「あ〜、そんじゃ始めようか、テフロン刑事」
「・・・・・・やっぱのの、アホやろ」
あいぼんの視線は、某アイドルグループグループのコンセプトが『半農半芸』だと初めて聞いた時のような、
驚きと・・・ちょっぴり呆れた感じだった。
308 :
書いた人:03/07/19 16:39 ID:LPAYfxwU
今日はここまでです。
ののさんシャッフルで輝きすぎ。
国民の休日は、一つくらい言えるようになりましょう。
>>299 レスありがとうございます。
結構初期の段階でばれてますw
私も文中に『まあ』を入れる癖があり、今回も・・・ありますね。
更新乙です。
のんつぁんかわいいッスねぇ。
更新乙です。加護は世渡りがうまくていいなぁ。自分も…
作者さん更新乙です。
うーん、面白い。とにかく面白いです。
@ノハ@ 更新乙、お茶どーぞ。
( *‘д‘)∬ あっ、「記憶の中の『あの人』」 読んだで、一気に読んだで。
( つ つ旦 ええな、引きこまれましたわ。こんなんが上にあったんやな
と__)_) もっと早く読んどけばよかったわー。
交信乙です。
作者さん、ほんと芸が細かいですね。
いろんなところに笑えるネタがあって面白いです。
314 :
ななし:03/07/20 13:47 ID:RJNjPlay
>>312 「記憶の中の『あの人』」ってどこで読めるんですか?
他にも作者さんの作品はあるのでしょうか?
316 :
314:03/07/20 14:50 ID:RJNjPlay
ああ恥ずかしい……
「記憶の中の『あの人』」。
確かに
>>312さんが、"上に"って書いてますね。
もちろん既に読んでました。
いや、自分も
>>315さんと同じく、
前スレの件を聞きたかったのです…
|ハ@
|д‘) うわっ、被ってもうた。
⊂
|
321 :
314:03/07/20 16:56 ID:n713zyRX
みなさま、ありがとうございます。
>>317 >>318 同じスレで、ex鯖に移ったあと掲載された作品ありませんでしたっけ?
調べようにもhtml化されないから調べられない・・・鬱
>>322 「ユキノヒ」 って作品があるよ
ログコンバーターでhtml化したのならあるけどいります?
>>324 すでに落としてた(w
こんろだで「小説のログ」って書いてあるの見てもしやと思ったんだよね。
>>324 |ハ@
|д‘) ありがと、DLしましたで。
⊂ 実のとこ、2chやりはじめたんは
| 4月からやから知らへんかったとか(w
へ,, へ `┳━━━━━━━━━━━━━━━┳ '(_)i'''i~~,,,,/
(_(__),..,..┴,...,....,....,..,,...,...,...,.,...,....,....,..,,...,...,...,..,...,...,...,...┴,,,,.. (_)|_______|
329 :
書いた人:03/07/21 21:56 ID:7DjXq40V
「むぅ・・・・・・」
「あかんなぁ・・・・・・」
電話を掛けだしてから一時間が過ぎた。
最初の頃こそ、『これがホントのミニモニテレホンだ』などという、
馬鹿丸出しの発言をしながらやっていたのだが、いい加減私もあいぼんも疲れてきた。
途中あいぼんと、
『テフロン加工なんて昔の発言覚えとるか!!そやなぁ・・・・・・ほんなら、うちのコードネームは「雲のジュウザ」でええわ』
『え〜?どっちかっつったら「山のフドウ」の方が近いじゃん』
などと言う、人生のオリコンチャートでトップ10入りを果たすようなくだらない理由で喧嘩をしたものの、それなりに私たちはしっかりやっていた。
それでも成果が伴わない仕事、って言うのは疲労が溜まる。
330 :
書いた人:03/07/21 21:57 ID:7DjXq40V
確かに『コンノアサミ』は今までに2名確認できた。
でも電話口に出たのは、一人は陽気なおばちゃん。
しかも運悪く、おばちゃんの知り合いに『辻』がいたらしく、私に話す隙も与えずに延々と喋る喋る。
いつの間にか、スーパーでのお買い物に付き合う約束が締結されていた。
私のほうも切れば良かったんだけど、何故かこういう時にだけ、私の中の優しさ機能が発動。
伊達にバファリン並みの優しさ配合率ではないのだ。
あいぼんには『もっと日常でその優しさを発揮せえ』と嫌味を言われたが。
ちなみにもう一人は高校生の口が悪い女。
『ハァ?あんたなんか知りませんけど?つーか、誰?』
と彼女が言ったのが我が相方の気に障ったらしく、こちらはあいぼんが凄まじい勢いで口喧嘩を始めてしまった。
しかしリアル関西弁での罵詈雑言は恐ろしい。
更に『いてまう』『風呂にしずめる』『潰す』・・・・・・
あんたの前職はナニワ金融道ですか、ってくらいの単語の嵐に、
私は『あいぼんとマジ喧嘩は絶対にやめよう』と心に誓った。
331 :
書いた人:03/07/21 21:58 ID:7DjXq40V
黒ペンの印で塗りつぶされた、まるで警察関係の情報公開文書のようになったコピーを前に、
私とあいぼんは今日何回目かの溜息をついた。
ちらほら残った電話に出ない家を除いて、ひとまず終了。
成果はゼロ。
「おかしぃなぁ・・・・・」
「なにがぁ?」
お母さんが差し入れてくれたジュースを両手で包んで飲みながら、あいぼんは眉を寄せた。
母ナイス!と思いつつ、後ろについてきた姉文子には閉口したが。
「だってな、紺野ちゃんがこっちに来とらんくても、12歳の紺野ちゃんっていうのは、この時代にちゃんと存在しとるわけやろ?
なら、電話に出ないわけないんちゃう?」
「元々紺野ちゃんの実家が、電話帳に載せるの断ってるのかもよ?」
「なら、もうこっちの手でやんのは不可能かぁ・・・・・・」
そう言いつつドーナツをつまむ。
332 :
書いた人:03/07/21 21:59 ID:7DjXq40V
「そんなら、うちらだけで帰る方法考えないかんなぁ・・・・・・」
「やっぱり、あの薬のせいなんだよねぇ」
問題を解決するにはまず原因から、これは基本
少なくとも私たちがあの薬を飲んだから、こんなことが起こった。
これは分かっている・・・・・・って言うか、これしか分かっていない。
「まこっちゃんに聞けば何かわかるかもしれないんだけどねぇ・・・」
相方に『アホ』呼ばわりされるの覚悟で口に出してみる。
でも今回は、あいぼんも必死に考えているみたいだった。
「せやけど、こっちにいるまこっちゃんは、薬のことなんか知らん方のまこっちゃんやもんなぁ・・・
つーか、まこっちゃんの実家って・・・・・・新潟?」
「確か、柏崎ってとこじゃない?」
ちなみにそれを覚えていたのは『まこっちゃんの出身地だから』ではなく、
『蓮池さんの本拠地だから』とは言えない。
333 :
書いた人:03/07/21 22:00 ID:7DjXq40V
あいぼんも記憶の奥底にあったその地名を思い出したらしく、ほっそい目を少しだけ見広げた。
「ああ、それや。確か拉致されたり、10年くらい小学生が監禁されてたり、ってとこやんな?
その上あんな危険な薬のませる奴まで出るなんて・・・・・・物騒なとこやなぁ」
「それは・・・他の柏崎市民の人に失礼でしょ」
とりあえずあの薬を飲ませることが物騒だ、って所には反論はしない。事実だから。
「それでも、この時代のまこっちゃんに会ってみるのも、少しは意味あるんじゃない?
ちょっとは手掛かり掴めるかもよ?」
「他の人に相談してみる、って手もあるんやけどなぁ・・・・・・信じひんもんなぁ」
あいぼんの言葉に私は大きく頷いた。
そんなこと言った日には、間違いなく病院に送られてしまう。
334 :
書いた人:03/07/21 22:01 ID:7DjXq40V
「・・・・・・でもなぁ、まこっちゃんの家に行くんも、当分先にならんと無理ちゃうん?」
更にドーナツをつまみながら、あいぼんは小首を傾げる。
その姿はまさにロリコン界のペレ。
なんつーか・・・・・・『神』って感じだ。
生憎私にそっちの気が無いので、あいぼんのその姿を見ても何も感じないんだけど。
私はバッグから、マネージャーさんに貰ったスケジュール表を引っ張り出した。
飴やらガムの包み紙やら、いろいろ飛び出してきたが気にしない。
あいぼんも私のバッグの中が散らかってることを分かっているのか、気にもしなかった。
確かにあいぼんの言う通り、スケジュール表はテレビ欄のようにぎっしりと詰まっている。
まさに法律スレスレ。
150年程前までアメリカ南部でひたすら綿摘みをさせられていた、色黒の人たちの気分だ。
「そだねぇ・・・・・これじゃ、当分そんなヒマないよ」
「ほんなら、当分はこのまんまやなぁ・・・」
顔を見合わせて溜息をつくと、ちょっぴり涙が出てきそうだった。
335 :
書いた人:03/07/21 22:07 ID:7DjXq40V
今日はここまでです。
比喩がかなりコアになってしまい、分からない方も居られるかもしれませんが、
「雲のジュウザ」と「山のフドウ」はググれば出てきます。
ちなみに柏崎市に何の恨みもありませぬので、ご了承を。
>>309 いつもあれくらいの露出が欲しいのですが。
やきそば、焼きすぎ、と毎年この時期はののさんの為にありますなぁ。
>>310 実際は結構自分のやりたいことをやれないタイプ、にも見れます。
つーか、どうされたのでしょうか。
>>311 ありがとうございます。
やっぱりシリアスよりこちらの方が書きやすいですな。
>>312 読んで下さってありがとうございます。
>>313 バカな知識ばかりで困ります。
>>314>>315 見つかってよかったですね。自分でも久々に見ました。
>>317 どうやって見つけたのですか?
>>318-319 流れに萌え死にました。
>>322 よく覚えてましたねぇ。
>>323 持ってらっしゃった事に驚きました。
作者さん更新乙です。
うーん。ホントに面白いです。
このままいつまでも続けて
楽しませてほしいと本気で思っていますよ。
|ハ@ 更新乙!北海道へのつなぎは取れませんでしたか〜
|д‘) これからどーなるのかさっぱりですわ
⊂ それから「雲のジュウザ」は常識ちゃう?多分、ウタダさんも知ってはるで
| あと、うち、やっぱり被ってへんわ。そうや、被ってへん・・・ゴラァ、どこ見とんねん!
あいぼん風呂に沈めるはまずいよあいぼん
保 田
全 快
340 :
書いた人:03/07/24 18:17 ID:11LpPtOs
――――
『今のところはどうにもならない』
一見すれば絶望的な言葉だけど、割り切ってしまえば結構それなりに楽しめるのかもしれない。
私とあいぼんは、とりあえず3年前の世界で普通に過ごすことにした。
誰かに相談するわけにもいかない。
紺野ちゃんは今のところ見つからない。
私たちが飲んだ薬の中身がなんなのか、よく分からない。
『ダメだこりゃ』な状況なんだけど、実際ダメってことが明白だから諦めもつく。
とりあえず柏崎に行ける時間ができるまでは、しっかりこっちの生活をやっておく。
あいぼんと約束した。
それともう一つ。
なるべく余計なことはしないこと。
私もあいぼんも3年前どこでなにをやったか、なんてこと覚えていないから、
完璧に過去を再現することは不可能だ。
だから・・・・・・余計なことはせず、自然なままの行動をとればいいんじゃないか。
これが結論だった。
341 :
書いた人:03/07/24 18:19 ID:11LpPtOs
――――
「ののさぁ、なんだかモーニング娘。入って変わったよね」
「へ?何が?」
初めてのハロモニ収録の日の楽屋。
少し早めについた私を迎えたのは、時間間隔が麻痺してるんじゃないか、
ってくらいに早く来ているよっすぃ〜の悲しそうな眼差しだった。
3年後の自分が今とは比べ物にならないような、
『生命の神秘』とも言うべき変貌を遂げていることを知らないとは、なんて幸せなのだろう。
「何て言うのかなぁ・・・・・・いい意味で、緊張感無いよね。ののも、あいぼんも。
すぐに現場に打ち解けていけるじゃん・・・・・・羨ましいよ」
ここ最近、というか2年ほどまともに見たことの無い、よっすぃ〜の真剣な表情。
打ち解けすぎて、現場でもジャージで平気な3年後の彼女に、この初々しさを分けてあげたい。
「そっかなぁ・・・?別に私も、あいぼ・・・・・・亜依ちゃんも、あんまり意識してないよ」
こう言うしかないじゃない。
まさか『実は3年間、アイドルやってるからね。エヘ』なんて言えないもん。
342 :
書いた人:03/07/24 18:20 ID:11LpPtOs
でもそんな答えでよっすぃ〜が納得するはずも無い。
『なんでなんでなんでなんで・・・・・・』
個人的には何故何故どうして言っていいのは『それ行けノンタック』までが限界なので、
はっきり言えばうざい。
弱ったなぁ・・・・・・
聞いてくるよっすぃ〜は真剣そのもの。
でも『こうすれば甦ると思った』とか言って、
ホテルの一室でミイラを作っちゃう団体みたいなストイックな真剣さが、ちょっと怖い。
ホントのこと言うわけにいかないし・・・・・・
言った所で信じてくれるはずが無いし・・・・・・
「ねぇ、のの・・・・・・私ってさぁ、モーニング娘。でやっていけるのかなぁ?」
「それは・・・・・・」
と、私を救うドアの音がする。
343 :
書いた人:03/07/24 18:21 ID:11LpPtOs
「おはよございまぁす」
朝から気の抜けた声で挨拶をしたあいぼんは、私とよっすぃ〜の姿を見て不思議な顔をした。
少しは察してくれたっていいのになぁ・・・
「何やっとるの?2人とも」
「あ、あいぼん・・・・・・教えてよ。
どうしてののやあいぼんは、そんなに上手く溶け込めてるの?」
「?」
あいぼんはその問いに困った、というよりは意味が分からないようだった。
小首を傾げて、詰め寄ってくるよっすぃ〜を見上げる。
「私や梨華ちゃん、全然上手くトークできないし、歌や踊りだって2人とも手馴れてるじゃん。
合宿のときはそんなこと無かったのに、どうしてこの1週間くらいで、こんなに変わったの?」
よっすぃ〜の疑問は適切かつ正確だった。
確かに私とあいぼんが3年前に戻ってきて一週間ちょっと。
変わってないはずが無いし、別人と言っていい位の変化が生じているはずだ。
344 :
書いた人:03/07/24 18:23 ID:334aSC5A
「何言っとるの?よっすい〜。
ののもうちも、そんな変わってへんし・・・」
あいぼんは顔色一つ変えずに・・・むしろ、さっきの『?』という表情のまま、考え込んでいた。
このまま誤魔化しつづけるつもりなのかな?
詰問を続けるよっすぃ〜に、終始あいぼんはとぼけ続けていた。
最後には、『何言うとるのかわからへん』と逆切れまで見せて。
あいぼん、あんた・・・・・・やるね。
スタジオに向かう途中、あいぼんに駆け寄って耳打ちをする。
「あいぼん、さっきの誤魔化しかた、凄かったね。
やっぱりとぼけ続けないとダメだよね」
あいぼんは立ち止まると、私のほうに向き直った。
345 :
書いた人:03/07/24 18:24 ID:334aSC5A
あいぼんは眉を寄せて、細い目をますます細くしていて。
「のの・・・・・・何言っとるん?
誤魔化したって言うか、ほんまに分からんかっただけやもん。
それに・・・・・・」
「それに?」
「いつからのの、うちのこと『あいぼん』って呼ぶようになったん?」
「え・・・・・・!?」
そう言って踵を返して、あいぼんはスタジオに向かっていった。
私はただ呆然と、彼女の後姿を見ていた。
何が・・・・・・どうなっているんだろう?
346 :
書いた人:03/07/24 18:27 ID:334aSC5A
今日はここまで。
諸事情により、少し短めで申し訳なく。
こんこんさんが表紙で、ヤングジャンプ衝動買い。
>>336 あと2ヶ月くらい、かな?と思います。
>>337 ウタダさんより数年上の私の周りには、
「雲のジュウザ」を知らない人が半分いるのです。
>>338 的確に意味が分かっていただけたようで、ありがとうございます。
>>339 個人的には『全開』でも(・∀・)イイ!!かと。保全乙です。
更新乙です
ん〜何が起こったんだろう・・・つづきに期待してます
うわぁぁぁぁぁ!まじやばいです、めちゃくちゃ面白いです!
むちゃくちゃ続きが気になります!!!待ってます!!!
朝からこんなもん読んでとっても気分がいいよ。
350 :
書いた人:03/07/25 13:03 ID:ip3mbxOH
「はぁ〜い、それじゃ今回はですね、モーニング娘。に新たに入る、4人が初登場です!」
『絶対無理してテンション上げてるでしょ?』と言いたくなるのをぐっとこらえて、中澤さんの司会を見上げる。
何だかんだ言って、モーニング娘。抜けた後も中澤さんはハロモニ出てたから、あんまり違和感が無い。
台本にある通り、自己紹介では名前と出身地、そして目標を一人ずつ言いなさい、か・・・・・・
一番右側に並んだ私は、左隣の同期の面々を見上げる。
よっすぃ〜、そんなにがちがちになってて、ホントにちゃんと言えるのかな?
梨華ちゃん、下向きっぱなしでそのままで自己紹介するつもりなんだろうか?
そしてあいぼん・・・・・・
あいぼんはじっと前を向いたまま、どこか毅然とした空気を出している。
こういう所は、今も昔もあんまり変わらない。
351 :
書いた人:03/07/25 13:04 ID:ip3mbxOH
「はい、それじゃ順番に自己紹介!」
中澤さんに促されて、よっすぃ〜が一歩前に出る。
おいおい・・・・・・右足と右手が同時に出てるんだけど。
まるで腹話術の人形になったみたい。
「埼玉県出身の吉澤ひとみです。先輩たちに早く追いつけるように、頑張ります!」
・・・・・・というような趣旨のことを、よっすぃ〜は言った。
正確には『サイタマケンシュッシンノ・・・・・・』って感じで、
海の向こうの国からきた方のような話し方だったんだけど。
・・・・・・あ、やぐっさん、下向いて、肩プルプルさせてる。
352 :
書いた人:03/07/25 13:05 ID:ip3mbxOH
よっすぃ〜はそれだけ言いきって、
深々と、まるで叙勲式の出席者みたいに一礼すると、一歩下がる。
一日のエネルギーをここで全て使い切ったんじゃないだろうか。
それを見て、梨華ちゃんがゆっくりと前に出る。
うわぁ・・・・・・負のオーラが出まくってるんだけど。
変なスタンドでも背負ってるんじゃないんだろうか。
ちなみに3年後に背負っているスタンドは『ザ・フール(愚者)』だと思う。
「神奈川県出身の・・・・・・・・・石川梨華です。目標は、明るくやっていくことです」
『できねーよ』と、恐らくこのスタジオにいる全ての人間が心の中でつっこみを入れる。
明るくなることは明るくなるんだけど、変な方向に行ったのはやっぱり天性なんだろうなぁ。
個人的には明るいのは、あいぼんの生え際で充分だ。
・・・・・・しかし今の自己紹介、ちゃんとマイクで拾えたのかな?
353 :
書いた人:03/07/25 13:05 ID:ip3mbxOH
「奈良県出身の、加護亜依です!
目標は、先輩のみんなみたいにかっこよく歌って踊れるようになることです!」
収録用の関西弁を抜かした話し方で、あいぼんはパーフェクトな発言。
でもいつもは完璧に関西弁を抜かすのに、今日はなんだか、少しだけイントネーションが残ってる。
もしかして今日がハロモニ初日だ、ってことまで見越して、わざとこの喋りなのだろうか。
後ろであいぼんの師匠のごっちんが、ちょっぴり嬉しそうに微笑んでいた。
他の先輩たちも、『やるな』って感じの笑みを浮かべてる。
「のの、あんたの番やで」
あいぼんが前を向いたまま、小声で囁く。
やばっ・・・・・・目標なんて考えて無いや。
354 :
書いた人:03/07/25 13:07 ID:8ZKk45ZW
私は困り顔を笑顔で誤魔化しながら、前へ出る。
どうしよう・・・・・・
「東京都出身の、辻希美です。目標は・・・・・・・えーと・・・・・・・」
弱ったなぁ・・・・・・ホントに考えてなかった。
モニターをチラッと除くと、飯田さんが最終順位でゴールするマラソンランナーを迎えるような鎮痛な顔つき。
あぁぁ・・・・・・そんな顔しないでって。
「あ〜、辻。『こういうところに気を付けたい』とかでもええよ」
中澤さんが苦笑いしながら助け舟を出してくれた。
え〜!?でも・・・・・・気を付けたいこと?
未来から来てるってことにばれないように・・・・・・って言えないもんなぁ。
なんだろう、なんだろう・・・・・・なんでだろうに似てるね、このフレーズ。
いつかつんくさん、『なんだろう』とか言うパクリソング作るんじゃないでしょうね。
って・・・・・・どうでもいいよ、こんなこと。
しょうがないなぁ・・・・・・まあ、この時点で一番気を付けたいことって、これかな?
355 :
書いた人:03/07/25 13:09 ID:8ZKk45ZW
「え、と・・・・・・太らないように・・・・・・
収録中にホックが『ポン』っていったりしないように、気をつけます」
言った瞬間、スタジオの空気が凍りついた。
え!?なんで?
うわぁ・・・・・・カメラさんまで顔引きつってるんだけど。
後ろをチラッと振り返ると、やぐっさんは下を向いて『うぷぷぷ』と今度は笑いを漏らしている。
なんでだろ?
中澤さんがそっぽを向きながらも、チラッと見る方向に・・・・・・
あ。
天使のような笑顔でこっちを見ている安倍さんがいた。
・・・・・・すまん、この時代の私。
なんだかとんでもない遺恨をこの時代に残してしまったようだ。
356 :
書いた人:03/07/25 13:10 ID:8ZKk45ZW
結局微妙な空気のまま、収録は続行されてしまった。
これをこのまま放映するのだろうか。
でもさすがに新メンの自己紹介切れないからなぁ・・・・・・
まあ常日頃からダルダルの番組に、少しスパイスを効かせたと思えば可愛いものだ。
ちょっぴり効かせすぎちゃったけどさ。
番組の方はなんだかこの間の収録でも見た覚えがある、
三十路を大きくフライングした女性ゲストが一人で喋りまくっていた。
貴理子さん、あんた全然変わってないのはある意味凄いよ。
私の隣ではあいぼんが、何か私に言いたさそうにしたままだったのが少し気になったけど。
357 :
書いた人:03/07/25 13:10 ID:8ZKk45ZW
収録を終えて、私たち子供組は解散になった。
あの異常な事務所も法律には刃向かえないらしい・・・・・・脱税はするけど。
安倍さんの100万ドルの笑顔が死ぬほど気になるんだけど、まあ今日はいいか。
『後でできることは後で』が、私のモットーだもん。
「のの!!」
通用門に向かって廊下を歩く私を、後ろからあいぼんが呼び止めた。
いつもは呼び止めたら私が行くのを待ってるのに、今日はこっちに向かって全力疾走。
いつか『息をするのもめんどくせえ』とか言いそうなあいぼんにしては、珍しい光景だ。
そんなに息せき切って・・・・・・運動できないんだから無理しない方が良いよ。
私に追いつくと、あいぼんは膝に手をついてしばらく息を整える。
358 :
書いた人:03/07/25 13:12 ID:uovi+zao
「どうしたの?あいぼ・・・・・・亜依ちゃん?」
朝あいぼんと呼んで怒られたので、とりあえず昔の呼び方で言ってみる。
それを聞いて、あいぼんは顔を上げると大きく首を横に振った。
つぶらな瞳が何かを訴えようとしてるけど、彼女の肺がそれを許してくれないらしい。
まだ赤血球が酸素を要求してるんだね。
「ちゃう・・・・・・」
「え?何が?」
「あのな・・・・・・呼び方、あいぼんでええんよ。
朝、うち変なこと言うとったやろ?」
『あいぼん』と呼ばれて不審な顔をしたことを言っているんだろう。
けして『いつもあいぼんは変なこと言ってるじゃん』とは言ってはいけない。
「うちの・・・・・・3年後のうちの意識が、朝はその意識が無かったんや」
話してもらったところで、やっぱり何を言っているかは分からなかった。
359 :
書いた人:03/07/25 13:16 ID:uovi+zao
今日はここまでです。
明日は更新できませんので、あしからず。
実際のハロモニとは多少違いますが、ご勘弁を。
>>347 解決までもう少し掛かります。次回は少し暗めかも。
>>348 ありがとうございます。落ち着いてください。
>>349 まだ夢の中でした、その時間。
更新乙です。これから先どうなるんでしょう。
交信乙です。
またも急展開でほんと楽しみです。
安倍さんが太っていた時期のことを話せるように
なったのが最近うれしかったことのひとつ
作者さん更新乙です。
うーん。前回更新分とまとめて読んじゃいました。
大変なことになってきましたね、これは。
続きがとても楽しみです。
更新乙です。
そしてオレは今日も朝読む。
365 :
書いた人:03/07/27 17:55 ID:5QjdG1GU
――――
「・・・・・・・・・じゃあ、ちょっとだけだけど、戻ったってこと?」
局内の喫茶店。
時間が時間だから流石に2人で外に出て行くわけもいかず、
私はあいぼんの手を引っ張って無理やりここに連れてきた。
あいぼんは何とか自分に起こったことを伝えようとしてるんだけど、
何を言ってるかほとんど理解できない。
いつもは立場が逆なのになぁ・・・
その意外さと少しの優越感に、笑みを浮かべながら、私は局の長い長い廊下を早足で歩いた。
そして今、私の目の前には少し落ち着きを取り戻した相棒がいるってわけ。
366 :
書いた人:03/07/27 17:56 ID:5QjdG1GU
「ちゃう・・・・・・戻れたって言うても、別に3年後にうちが戻ったわけやないし。
ただ3年前の・・・・・・この時代のうちに戻ってた、ってだけ」
聞いていて頭痛がしてくるほど、あいぼんの話は荒唐無稽で意味が分からなかった。
それはあいぼんも同じなのかな?
眉を寄せたまま、どうやったら私に上手く伝えられるかを必死で考えているみたいだった。
「ってことは、今朝からさっきまでは、この時代のあいぼんだった、ってことだよね?
じゃあその間、あいぼんは・・・えっと・・・・・・3年後のあいぼんはどうなってたの?」
「分からひん。自分の言ったこととかやったことは覚えとるんけど、気がついたらもう収録途中だったし」
「はぁ・・・・・・なるほど」
多分私以外の人間、こんな話絶対に信じないだろう。
367 :
書いた人:03/07/27 17:57 ID:5QjdG1GU
あいぼんの言うことに心当たりが無いわけじゃない。
私がこっちにきた最初の日の朝、私は『ボーっとしている間に』楽屋に来ていた。
集合時間も集合場所も、けして間違えずに。
ってことは、多分『こっちの時代の』私が何か影響をもたらしたんだとしか思えない。
その時はメインが3年後の私だっただけで、
もしかしたら意識のメインが3年前の私になることもありうる、ってことだ。
「そんなに悩んだら、髪の毛に悪いよ」とは言わないが、あいぼんの顔は今まで見たことが無いくらい険しい。
「あれ?でもさ、どうしてあいぼんは、また3年後のあいぼんに戻れたのかな?」
「・・・・・・さぁ・・・・・・でも、ののが『ポンっていわないように・・・』とか言うてたのがきっかけかもしれん。
多分そのことは3年後のうちしか知らんから、それがきっかけで戻れた、としか思えんけど・・・」
慎重に言葉を選びながら、あいぼんは話を続ける。
368 :
書いた人:03/07/27 17:58 ID:5QjdG1GU
「多分・・・・・・そーいうきっかけがあれば、戻れるんやと思う。
でもな、それはこの時代のうちに戻るんも同じことやないかな?
うちらこっちの時代におるから、どうしたって『3年前の加護亜依』が出てくるきっかけの方が周りには多い」
落ち着くためのとっくに飲み終えたオレンジジュースのストローを、意味もなくあいぼんは手で弄ぶ。
こっちの時代にいればいるほど、私たちは3年前の私たちになって行っちゃうってことか。
またどうすることもできない要素が増えて、私は思わず下を向いてしまう。
どうしよう。
私たちはこのままずっと3年後に戻れなくなって、そしていつか、こっちの自分になっちゃうんだろうか。
「でもな・・・・・・」
あいぼんの声に、私はゆっくりと顔を上げた。
369 :
書いた人:03/07/27 17:59 ID:5QjdG1GU
そこにあったのは、やるせない感じだけど、それでも努めて明るくしようと頑張っているあいぼんの姿だった。
手を大きく広げたり、インチキアメリカ人みたいなジェスチャーを交えながら、あいぼんは笑って続ける。
「うちにはののがおるし、ののにはうちがおるから。
がんばって、未来の話ばっかしとけば、あんなガキんちょのうちらなんか出てこれへんって!」
「そう・・・・・・かな?」
「そうやって!!
実際うち、ののがあんなしょーもない話してくれたから、戻ってこれたんよ!」
「・・・・・・そう、だよね!!!」
370 :
書いた人:03/07/27 18:00 ID:5QjdG1GU
私には分かっていた。
あいぼんは私が落ち込まないように、必死で明るく振舞っていることを。
あいぼんの言ってることは確かにあってるけど、どうしたって3年前の『刺激』の方が多いってことも。
それでも私は、あいぼんに頷いた。
こんなにも私のことを考えていてくれるから。
紺野ちゃんのことがそうなると心配だけど・・・・・・
だからこそ、今私たちが3年後の意識をなくすわけにいかない。
この日から私とあいぼんの間に、もう一つ約束ができた。
私とあいぼん、どっちでもいいから早く起きた方が電話する。
そして未来のことをしゃべりまくる。
『私たち2人が顔を合わせない時が一番危ない』というのがその根拠。
371 :
書いた人:03/07/27 18:00 ID:5QjdG1GU
――――――
【はい・・・・・・あ、あいぼん?おはよう。
エヘへ・・・・・・そうだね。私があいぼん、って言ってるうちは、とりあえず大丈夫だよね?】
――――――
372 :
書いた人:03/07/27 18:01 ID:5QjdG1GU
――――――
【もしもし?あ、あいぼん起きた?
・・・・・・うぅ・・・・・・そうだ!ピース歌える?そう、ピース!・・・・・・・・・思い出した?
・・・・・・やっぱあいぼんの方が先にこっちに来てたから、戻りやすいのかな?
・・・・・・・・・・・・ううん、気にしなくていいよ。それじゃ、また後でね】
――――――
373 :
書いた人:03/07/27 18:02 ID:5QjdG1GU
――――――
【はぃ、もしもし?あれぇ、亜依ちゃん、どうしたの?
・・・・・・・・・なぁに?ミニモニって?
ミニモニ・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん、はい、大丈夫だよ。
危なかったぁ・・・これで大丈夫・・・・・・かな?】
――――――
374 :
書いた人:03/07/27 18:03 ID:5QjdG1GU
――――――
【あ、もしもし?おはよう。
え?なんでこんな朝から電話したかって?
・・・・・・・・・・・・あれ?なんでだろう?
うん、大丈夫だよ、ごめんね・・・朝から、それじゃまたねぇ】
――――――
375 :
書いた人:03/07/27 18:04 ID:5QjdG1GU
ピッ
電話をきって、しばらくかんがえた。
なんで亜依ちゃんに電話したんだろう?
まあいいか。
「希美〜!!朝ご飯よ〜!!」
「はぁ〜い!!」
おかあさんにいつもみたいに大声で返事をして、すぐに着がえる。
今日もおしごと、しっかりがんばろっと!
376 :
書いた人:03/07/27 18:06 ID:5QjdG1GU
今日はここまでです。
余震起こりすぎて鬱。
>>360 ありがとうございます。楽しんで頂ければ幸いです。
>>361 急展開させつづけないと話が書けない私。
>>362 過去をしっかり振り返られるほど、大人になったんでしょうね。
>>363 続きです。楽しんでいただけたでしょうか?
>>362 今回は起きてましたよ・・・・・・地震で。
更新乙です
じわじわと切なさが込み上げてくる・・・・
もう何も言うまい、、、ただただ次回に期待sage
ううー。どうなっちゃうんだぁー!!
作者さん更新乙です。
うーん。怖い。
この続きを読むのが地震と同じくらい怖い。
書いた人さん乙です。
ずっとROMってただけですが、今回はせつなすぎてドキドキもんです。
地震の方、気を付けて下さいね。
次回、楽しみにしてます。
@ノハ@ <更新乙!ちょっと来ーへん間に・・・
ほんま、もうどうなんねんどうなんねんですわー。
あと地震、きーつけてなー
382 :
書いた人:03/07/28 22:03 ID:IdlvmprB
モーニング娘。に入ったのが4月の12日。
もうすぐ一か月になるけど、あっという間だった。
気がついたら歌のレコーディングも、プロモのさつえいも終わってた、って感じ。
今日は『うたばん』の、初めての出演の日。
「あれま!ののぉ〜、まぁ〜た前髪分けちゃってる。
こないだまでは、ちゃあんと垂らしてたのに・・・・・・分けない方がいいべ」
「あぅ・・・・・・」
楽屋でなっちゃんにつかまって、前がみをくしでもどされる。
分けた方がイイのになぁ・・・・・・
カガミをじっと見ながら、なっちゃんはお人形遊びをするみたいにていねいにもどしていく。
「ほぉら!ちゃんと鏡見てごらん!こっちの方が良いっしょ!?」
とっても満足そうななっちゃん。
でもなぁ・・・・・・やっぱり、分けた方がイイ。
前がみを全部ストレートに下ろすと、なんだかすっごく子どもっぽくなるからイヤだ。
383 :
書いた人:03/07/28 22:04 ID:IdlvmprB
なっちゃんが行ってしまったすきに、いつもみたいにかみをもどしてしまった。
うん、やっぱりこっちのほうが大人っぽく見えるよね。
小声でよし、とつぶやくと、カガミごしに亜依ちゃんと目が合った。
「のの、なんでそっちの方がイイん?」
亜依ちゃんはさっきのを見てたようで、私のところにツツツ・・・・・・とよって来る。
「だってさぁ・・・・・・みぃんな大人なのに、
なんだか私だけ子ども子どもしてるの、いやなんだもん」
あ
言った後に失敗に気付く。
亜依ちゃんだっておんなじことを気にしてるんだ、ってことわすれてた。
大体亜依ちゃんの方が私より少しだけ年下だ。
384 :
書いた人:03/07/28 22:05 ID:IdlvmprB
すぐに亜依ちゃんがしょんぼりした顔になる。
「そんなん言うたら、ののよりうちのほうが子どもっぽいやん」
「そんなことないもん!
亜依ちゃんしっかりしてるし、ちゃんと思ったこと言えるし・・・・・・」
これはホントに思ってること。
別に亜依ちゃんをなぐさめたくって言ってるわけじゃない。
それでも亜依ちゃんは、その気持ちに気付いてくれない。
「のののウソつき!」
「ホントに思ってるもん!」
「あ〜、ほら。のんちゃんもあいぼんも止めなさい、ね」
私たちが大声を出しているのに気づいたのか、飯田さんが止めに入ってくれた。
亜依ちゃんとこんなケンカをするのはいつもだけど、いっつもすぐに仲直りできる。
385 :
書いた人:03/07/28 22:06 ID:IdlvmprB
「あんたたちもねぇ〜、入ってしばらくはなんだか落ち着いた感じだったのに。
やっぱりそーいうケンカするんだねぇ」
飯田さんはうんうん、とうなずいて一人でなっとくしてる。
そうなのかなぁ?
私も亜依ちゃんも、合宿の時からこんなんだったのに。
そう言えば私はずっと前がみ分けてるのに、なっちゃんは『この間までは垂らしてた』と言っていた。
なんでだろう?
よく分からない。
386 :
書いた人:03/07/28 22:07 ID:IdlvmprB
――――――――
モーニング娘。に入って、いくつも番組に出させてもらったけど、
やっぱり初めての番組は上がる。
あっという間に収録は終わってしまった。
ほとんどまともにしゃべれなかったなぁ・・・・・・
でもごっちんが怒ってなくてよかった。
目の前でふうせんがどんどんふくらむから、ついつい手を伸ばしちゃったけど。
終わった後、『まあ、あれはあれで面白かったからいいよ』と言ってた。
なかざーさんには『もっと自分から前出て行かんとダメ』と怒られてしまった。
でも、亜依ちゃんと私がすっごく落ち込んじゃったから、すぐに笑顔にもどってくれた。
387 :
書いた人:03/07/28 22:09 ID:IdlvmprB
帰り道、亜依ちゃんにバイバイして電車を乗りかえる。
一人で電車に乗って、私はちょっと考えごと。
中澤さんはお説教の最後に言っていた。
『辻も加護も、ついこないだまでもっと前出て喋れてたのに、どうした?』
そうだったっけ?
ついこの間のことなのに、ほとんど覚えてない。
収録の前になっちゃんが言ってた、『この間までは前髪垂らしてたのに』って言葉。
それと飯田さんが言ってた、『あんまりケンカしなかった』ってことも。
やっぱり今まで、私はボーっとしすぎてたんだなぁ。反省。
もうすぐミュージックステーションにも出る。
今度は生だから、もっとしっかりしなくちゃいけない。
亜依ちゃんも私も、子どもだからって甘えてばっかりいられないんだから。
よしッ!
と気合を入れたら、
考えるのに必死で降りる駅を乗りすごしてしまったことに気付いた。
388 :
書いた人:03/07/28 22:13 ID:IdlvmprB
今日はここまでです。
小説書きにできるのは、まあいつも通りに更新することくらいかな、と。
ホントならもう少し面白い文章とかできればよいのですが、
シーンがシーンですので、申し訳なく。
>>377 お早いレスありがとうございます。もう少しこんなんです。
>>378 どうなるんでしょうね?
>>379 もうちょっとコミカルにもいけそうだったんですが、シリアスにしてみました。
>>380 ありがとうございます。今回都合上、短くて申し訳ありません。
>>381 あいぼんさん、頭しか見えないんですが。コンサ、羨ましいです。
更新乙です。毎回同じ感想しか述べられないので申し訳なんですが、次はどうなるんだろう…。あと飼育の短編読みましたよ。
次回、伝説のMステですか
大変な中、更新お疲れ様です。
一体どうなっていくのか、期待と不安(?)で一杯ですw
つか、3年前のあいぼんに萌えッ!
393 :
書いた人:03/07/29 20:35 ID:uCY9n1Uj
5月の19日
今日は初めてミュージックステーションに出る日、そしてテレビで市井さんと歌う最後の日。
生放送かぁ・・・
楽屋でちっちゃくなっている新メンバーの私たちに、なかざーさんがにやっと笑いかける。
「ええか?あんたら。
自己紹介はさせてもらえるけどそれだけで満足せんで、しっかり遠慮せんと前出なダメやで」
「「「「はい・・・・・・」」」」
上がってるから、4人とも声が小さめ。
特にリカちゃんなんかメイクの上からでも、顔色が黒いのを通りすぎて危ない色になってるのが分かる。
このままテレビに映って、大丈夫なのかなぁ?
「あ〜、それと、辻」
394 :
書いた人:03/07/29 20:36 ID:uCY9n1Uj
リカちゃんの顔に夢中になってた私に、なかざーさんが少しきつめに言い足す。
「あんた、こないだのハロモニみたいに、固まったりせんといてな。
今日は生やから、修正きかんで」
ハロモニの私・・・・・・止まってたっけ?
ハロモニをとったときの記憶があんまりない。
でも、この間あいぼんといっしょにテレビでオンエアを見たとき、
確かに私のところで自己紹介が止まっちゃってた。
あいぼんは覚えてない私にビックリしてたけど、『太らないように』なんて言ったっけか?
よっぽど上がってたんだなぁ、私って。
むぅ・・・・・・今度はちゃんとしないとね。
395 :
書いた人:03/07/29 20:36 ID:uCY9n1Uj
スタジオうらに集められて、私たちはひたすら待つ。
もうドラえもん終わっちゃったよね・・・とか、
バカなことを考えながら亜依ちゃんとさわいでいたら、やっぱりなかざーさんに怒られた。
「ほら、のの、静かにせんとダメやん」
「・・・・・・亜依ちゃんだってさわいでたのに・・・」
「とにかく、しっ!・・・・・・ね」
人さし指をくちびるの前に立てる亜依ちゃんに、私はくちびるを突き出してちょっとだけこうぎした。
ぶたいうらのなんだか冷たい空気の中で、私たちはじっと待っていた。
396 :
書いた人:03/07/29 20:37 ID:uCY9n1Uj
トントン・・・
だれかがかたをたたくのに気づく。
またあいぼんかな?
もう、合宿の時から甘えんぼさんなんだから・・・
そっちの方を見上げると、なっちゃんがいつの間にか立っている。
なっちゃんはじっと前を向いたまま、私のほうに目をやらずにつぶやいた。
「のの、そのままね」
「?」
わけが分からないので、そのまま首をかしげていると、
なっちゃんはそんなのお構いなしで続ける。
397 :
書いた人:03/07/29 20:39 ID:oydB/3yF
「あのさ・・・・・・のの、今日も前がみ分けてたよね」
ああ、このことか。
なっちゃんは下ろした方がイイ、ってずっと言ってるのに、今日も私は前がみを分けてた。
今はけっこん式のドレスを着てるから、かみを上げちゃってるけど。
ずっと言われてたのにやめないのが、なっちゃんいやなのかな?
「あの・・・・・・ごめんなさい」
「ううん・・・別にいいの、そのことは」
そう言われてホッとする。
でも、それじゃなんなんだろ?
398 :
書いた人:03/07/29 20:40 ID:oydB/3yF
なっちゃんはあい変らず前を向いたままで、私のほうに目も向けない。
それにつられて、私もなっちゃんと並んだまま、同じ方を見ていた。
「あのね、それでなっちが言いたいのはさ・・・・・のの、この前までは前髪下ろしてたっしょ?」
「え、そう・・・・・かな?」
確かこの間も、なっちゃんはそんなことを言った。
でも私にはそんな覚えが無い。
自分は前がみ分けた方が大人っぽく見えて好きだから、絶対下ろしたりしないもん。
「のの・・・・・・ホントに覚えてないの?」
「うん」
初めてなっちゃんがこっちを向いて、少しきつめに問いつめてくる。
強く言われても、おバカさんに思われるかもしれないけど、しょうがない。
だってホントに覚えてないんだもん。
399 :
書いた人:03/07/29 20:41 ID:oydB/3yF
なっちゃんは私の目をじっと見て、なんだか心の中のイケナイ部分を探しているみたいだった。
ちょっと怖かったけど、なんだか目をそらせなくって、私もなっちゃんを見つめる。
少しためらった後、なっちゃんがうすいくちびるを少し開く。
「あのね、のの。
もしかしたら・・・ホントにもしかしたらだけど、ののと・・・・・・加護、どこかで茶色い瓶の・・・」
「は〜い!!!あと1分でカメラがパンして回りますんで、皆さん準備お願いしまーす!!」
なっちゃんの最後の言葉は、ADさんの大声で聞こえなかった。
すぐに前から決めてあった並び順になる。
よし、今日はぐずぐずしないでできたかな?
番組前のせんでん(・・・って言うのかな?)が終わった後、いよいよ入場を待つだけ。
私はなっちゃんがさっきの続きを言ってくれるか待ったけれど、
それっきり、なっちゃんは何も言ってこなかった。
400 :
書いた人:03/07/29 20:45 ID:oydB/3yF
今日はここまでです。
これから一週間、諸事情で今までのような更新ができません。
マターリとお待ちください。保全には訪れます。
>>389 その短編は私ではないのですが・・・羊でしか書いたことが無いもので。
>>390 どの辺が伝説だったか、というのをほとんど忘れてしまった私。
読んでおられて≪違う≫と思われる箇所が多いかと思いますが、ご容赦を。
>>391 というわけで、それは私ではないのです。
>>392 4期加入の頃、『絶対加護より辻だろ』と思っていたのですが、
過去の映像とか見ると、ホントに可愛かったんですね、あの頃の加護。
今は・・・・・・とか、言いません。
なんかミスリードされてる気がしないでもない
あ、伝説はこの次のMステでした
(0^〜^) <ふぅ〜・・・作者さん更新乙です。
( つ旦O うーん。意外な展開でハラハラドキドキ。
と_)_) 続きを楽しみにしています。
安倍さんはなにか知ってそうでつね。ハラハラドキドキ
更新乙です。
違う人でしたか。すいません同じ名前の人だったもので…。
>>391 一応赤板の作者フリー短編スレッドです。
更新お疲れ様です。
ひょっとして、メンバー全(ry
あまり無理なさらず、御自分のペースで書いてくださいな
さて「しゃぼん玉」どうすっかな
406 :
書いた人:03/07/31 09:30 ID:b3RzK+9/
なかざーさんに教えられたとおり、きょろきょろしたくなるのをぐっとがまんして、前を見ながら笑顔、笑顔。
自己紹介はさせてもらったけれど、今度は止まんないように、
って急いだら『つじののみです!』になっちゃってた。
こないだまでテレビでしか見たことが無いような、出演者の人たちに囲まれて私はちっちゃくなってしまう。
それに今日は、いちーさんが最後の日。
これで前に出て行けるって、ちょっと私にはできない。
前に出ろって言われてもなぁ・・・・・・何話したらいいか分かんないもん。
407 :
書いた人:03/07/31 09:32 ID:b3RzK+9/
結局私や亜依ちゃん、よっすぃ〜に梨華ちゃんは、おき物みたいにひなだんにすわっていただけだった。
で、番組が終わった後、やっぱりなかざーさんに怒られた。
すっごいいきおいで出てくるおせっきょうにちっちゃくなっていたけど、
マネージャーさんがとりなしてくれて、やっとおしまい。
なんだか10何才より下の人は、夜9時より後に働いちゃいけない、っていうのが決まってる、っていつか聞いた。
だからなのかな?
マネージャーさんは顔を真っ赤にして、楽屋を行ったり来たり、いそがしそう。
いしょうをぬいじゃった私と亜依ちゃんは、楽屋のすみでボーっとしてるしかない。
408 :
書いた人:03/07/31 09:33 ID:b3RzK+9/
「のの、やっぱなかざーさんに言われたの、気にしとるん?」
あんまり私がしゃべんないのが気になったのかな?
亜依ちゃんは心配そうに私の顔をのぞきこんできた。
ただボーっとしてただけなんだけどなぁ・・・・・・
「ううん」
とりあえず首を横にふった。
でも亜依ちゃんのほうが、何だか沈んだ顔してる。
やっぱなかざーさんに言われたの、こたえたのかなぁ?
「亜依ちゃんは?」
「いや、そのことはしゃあないけどな・・・・・・ちょっと気になってん」
「何が?」
亜依ちゃんの話し方って、まるでさっきのなっちゃんみたい。
話したいんだけど、話そうかどうか、すっごく迷ってる感じ。
409 :
書いた人:03/07/31 09:34 ID:b3RzK+9/
「あんな、のの・・・・・・」
「うん?」
「安倍さんに、うち、変なこと聞かれてん。
こないだまでは雑誌のインタビューとか、すっごく手馴れた感じでしゃべっとったのに、
なんで急におとなしゅうなった?って。」
「あ、私も聞かれたよ」
亜依ちゃんといっしょのところがあってちょっぴりうれしくって、つい声がはずんじゃう。
でも亜依ちゃんは、そんな風じゃない。
「でな、結局安倍さん、そのまま何も言わんかったんけど、なんかすっごく気になってん。
別に聞かれたことだけやったら、ぜんぜん普通のことやん?
でもな、なんか自分の中で、安倍さんの聞いてることって、すっごく大切なことみたいな気がしてん」
亜依ちゃんの可愛い目の中で、何かがびくびくしてるのが見えた。
410 :
書いた人:03/07/31 09:36 ID:0U7mb8xP
なんて言ったらいいんだろ?
私もおんなじだった、っていって、亜依ちゃんはよろこぶかな?
私は亜依ちゃんとおんなじところがあってうれしいけど、亜依ちゃんが困ってるのがそれで何とかなるわけじゃない。
うーん・・・・・・あ、このこと言えばいいかな?
私は亜依ちゃんの目をのぞきこんだ。
「あのね、私もおんなじようなこと聞かれたとき、なっちゃんなんか言いかけてたよ。
茶色いビンが・・・どうとか、ってやつ。それ、亜依ちゃんも聞かれた?」
「聞かれてへん」
ちょっとは解決できるかと思ったけど、何の足しにもなんなかった。
考えてみたってしょうがない。
やっぱりなっちゃんに聞いてみるのが早そうだね。
411 :
書いた人:03/07/31 09:37 ID:0U7mb8xP
モーニング娘。の片づけが終わったのか、マネージャーさんが、私たちを集めて解散の指示をする。
文字通りせなかを押されて、私たちは楽屋から出されてしまった。
なっちゃんがさっきの話の続きを言うのか気になってたけど、
何にも言ってこないどころか、先にタクシーに乗っちゃった。
私は亜依ちゃんと、そしてマネージャーさんといっしょにタクシー乗り場に向かう。
「なっちゃんに聞けなかったね」
「そやな・・・・・・ま、別の日に聞いてみよ、な」
「うん」
「はぁい、辻、加護。喋ってないで、もちょっと急いで!
工事で地下の乗り場使えないからちょっと歩くけど、
ファンの人に声掛けられても、立ち止まっちゃ駄目だからね!」
「「はぁい」」
マネージャーさんにせかされて、私と亜依ちゃんは急ぎ足。
タクシー乗り場はうらてにあるのに、ファンの人たちがすっごいたくさんいた。
412 :
書いた人:03/07/31 09:38 ID:0U7mb8xP
わかいお姉さんや、お兄さん、私よりも年下みたいな子までいる。
中には何だかずいぶん年とった人もいるけど。
『あ、新メンの子じゃない?』『どっちが加護?』『まだちっちゃいねぇ』『サインして−!!』
いろんな声が聞こえてくる中、私と亜依ちゃんはひたすら歩く。
ドアを開けて待ちかまえてるタクシーまであとちょっと、
ってところで、となりを歩いてた亜依ちゃんが急に立ち止まった。
マネージャーさんは気付かないで、先に行っちゃってる。
「どうしたの?亜依ちゃん?」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・亜依ちゃん!!」
私が怒鳴って、やっと亜依ちゃんはびくっとして私の方を見た。
亜依ちゃんは何もしゃべらないで、口をわなわなふるわせたまま、ゆっくりと左手で何かを指さす。
つられてそっちに目が行った・・・・・・
413 :
書いた人:03/07/31 09:39 ID:0U7mb8xP
女の子?
私たちと同じか、一つ上くらいの女の子。
大してとくちょうも無い、メガネで地味そうな子。
タクシーのすぐ手前のところで、ぽつんと立って何か口ずさんでる。
「あの子がどーしたの?亜依ちゃん?」
「・・・・・・声」
「あの子の声?」
「よっく聞いてみ」
そう言いながらも、亜依ちゃんはその子から目が離せないみたい。
私も思わずその子の口元を見ながら、耳をすませた。
414 :
書いた人:03/07/31 09:41 ID:pECNwy8G
「・・・・・・なんか、懐かしぅない?」
もう、亜依ちゃん、まだ聞こえてないよ。
どれどれ・・・・・・
・・・・・・歌?・・・歌かな?
すごく小さな声。多分声量が無いのかな?
それでもその声その歌が、大勢が声を上げている中で、
まるでむなぐらをつかまれたみたいによく聞こえてきた。
なんだろう・・・・・・懐かしい。
おんなじフレーズをくり返しくり返し、あきもせずに、それでも何だか必死にその子は歌っている。
「♪ じゅーうさんにん がーかーりーのー くーりすーまーすー 」
その子がだれかよく分かんないし、その曲がなんて曲かも知らない。
でも一つだけ言えることは・・・・・・
・・・・・・それにしてもへったくそな歌だ、ってことだ。
415 :
書いた人:03/07/31 09:45 ID:pECNwy8G
今日はここまでです。
慣れないパソコンからの書き込みは難しいですな。
>>401 何か不快にさせたなら、申し訳ないです。
>>402 よしこさん、お初です。
>>403 さりとてあまり考えていなかったりして。
>>404 お気になさらず。よくあるHNですので。
>>405 未だに『シャボン玉』を実は聴いていない私。
乙です。
「しゃぼん玉」のDVD買いましたが、1回見て終了w
小説の感想と違いスマソ
更新乙です。違う人でしたか。まちがいスマソ。
>>391 一応。赤板の作者フリー短編スレッドです。
不快だなんてそんな。
ただ読者を騙す系の推理小説っぽい要素も入ってるのかなと思っただけでして。
でもそのレスの感じだと深読みせずにそのまま楽しめばいい作品みたいですね。
(0^〜^) <ふぅ〜・・・作者さん更新乙です。
( つ旦O うーん。正体を見抜かれないとは私の変身も完璧ですな。
と_)_) 作品、次々と新しい展開になって面白いです。
420 :
む:03/08/01 10:16 ID:TeiuYAWd
電話のやりとりだけのところが泣ける。
必死に歌ってる子もイイ!
421 :
にぃ:03/08/01 10:18 ID:4EVG9IbE
422 :
書いた人:03/08/01 16:53 ID:y7ZmAIll
私と亜依ちゃん、そしてその女の子は向き合ったまま立ちつくしていた。
まるでスポットライトが当たってるみたいに、私たちだけ切り離されたみたいに。
私たちに気付いたマネージャーさんが後ろで何かわめいているけど、そんなのちっとも気にならない。
すごくいっしょうけんめいに、そしてすごく悲しそうな目をして、女の子は歌っていた。
長い前がみとメガネででよくみえないけれど、それでもすっごく印象に残る大きな目。
しまいには良く分からない振りまでつけて、女の子はまだ歌ってる。
「ダメなのかなぁ・・・・・・?
二人とも、これでも思い出してくれない?
もっと想い出に残ってる曲の方が良いのかなぁ?」
そう言って、女の子はさっきと違う曲を歌い始めた。
423 :
書いた人:03/08/01 16:54 ID:y7ZmAIll
どこかで聴いたことがあるような・・・・・・
でも懐かしいのは曲だけじゃなくて、この女の子。
この女の子に変な感情の原因があるような気がする。
亜依ちゃんはいつのまにか、女の子に合わせて歌っていた。
亜依ちゃんは知ってるのかな、この曲?
「♪す・き・な・ひとっが〜 し・ん・せ・つだった〜 う・れ・し・いで・き・ご・と・が〜 増えました」
「・・・・・・亜依ちゃん、何で歌えるの?この曲」
「え?わからひん・・・・・・でも、どっかで・・・・・・」
そう言って亜依ちゃんはまた女の子に合わせて歌いはじめる。
なんで?
頭が・・・・・・・・・・・・痛い。
424 :
書いた人:03/08/01 16:54 ID:y7ZmAIll
――――――――――
『私の見立てだとねぇ、東京だとここが一番美味しいんだよ』
『へぇ・・・・・・そう、なんだ・・・』
『あれ?どしたの?もしかしてあんま美味しくなかった?』
『ううん・・・・・・ただ、札幌でもよくラーメン食べたなぁ、って』
『そっかぁ・・・じゃあ今度、北海道にコンサート行った時、美味しいとこ連れてってよ』
『うん!でも・・・抜け出せるかな?ホテル』
『根性でどうにかする』
――――――――――
425 :
書いた人:03/08/01 16:55 ID:y7ZmAIll
「ちょっと、辻!加護!何やってんの!早く乗って!」
426 :
書いた人:03/08/01 16:56 ID:y7ZmAIll
――――――――――
『こんどさぁ、うちにお泊りおいでよ。まこっちゃんと豆はくるっつってるよ』
『えぇぇえ・・・・・・絶対行く!つんくさんが死んでも行く!』
『いや、つんくさんが死んだらそっち行ってやんなよ。
それじゃ、来週のオフの前の日からね!・・・・・・って、どしたのよ?』
『ふふふ・・・・・・あのね、こういう風にお泊りするのって、すっごい久しぶりだなぁ、って。
むかしはよくやってさ、クラスの好きな人の話とかしたじゃない。楽しみだぁ』
『ふっ、楽しみにしてなよ。夜はこの世で一番うまいお菓子は何かで、朝まで行くから』
『それは・・・・・・勘弁だなぁ』
――――――――――
427 :
書いた人:03/08/01 16:57 ID:ec2Ztl9O
「♪い〜つも〜い〜つ〜まで〜も〜 な〜んね〜ん たって・・・も・・・・・・」
「ごめんね、この二人、もう行かなくちゃいけないから、そろそろ止めてもらえるかな、あなたも。
大体、もう声かすれてるじゃない。
さあ二人とも、お願いだから、もう行くよ」
「・・・・・・お願い、思い出してよ」
428 :
書いた人:03/08/01 16:58 ID:ec2Ztl9O
―――――――――――
『え?なぁんで一人だけ居残りなの?』
『うん・・・・・・私、辻ちゃんみたいに声大きくないからさ、もっとお腹から声出せって言われて・・・』
『それかぁ・・・』
『ねぇ、どうしたらあんなに大きな声で歌えるのかなぁ?』
『え?そりゃあ・・・・・・なんでだろ?
でもさ、いっつも喋ってるときみたいな声だったら、充分大きいじゃん』
『うん・・・でもね、歌の歌詞とか台本とかって、自分の思ってることそのままじゃないでしょ?
だからあんまり、自信持って声に出せないんだよねぇ・・・』
『まぁ・・・・・・自分を信じていくのだぴょん、とかを自分自身の言葉、って言われてもアレだよね、確かに』
――――――――――
429 :
書いた人:03/08/01 16:58 ID:ec2Ztl9O
「まったく、入って一月しか経ってないのに、抱えなくっちゃいけなくなると思わなかったわ。
まだ軽いわねぇ・・・体重」
「ねえ、お願い、思い出して!」
「あなたもちょっとしつこいわよ」
「私、私だよ・・・・・・紺野あさ美!」
430 :
書いた人:03/08/01 16:59 ID:ec2Ztl9O
――――――――――
『へぇ〜、あさ美ちゃん同い年なんだ』
『・・・・・・うん』
『何で緊張してんのよ』
『だって・・・・・・今までテレビでしか見たこと無いのに、今こうやって喋ってるから・・・』
『あぁぁ・・・・・・私も入ったばっかのとき、そうだったなぁ』
『そうなの?』
『そうなの』
『・・・・・・ふふふ・・・・・・そうなんだぁ』
『これからよろしくね、紺野ちゃん』
『私も、辻ちゃん』
――――――――――
431 :
書いた人:03/08/01 17:01 ID:adTmStIb
ごめん、3年前の私。
もう少し、もう少しだけ・・・・・・借りるね。
私を抱きかかえてるマネージャーさんの手を、振りほどく。
あいぼんも思い出したみたい、どこかいたずらっぽさが目の中に見えてる。
目の前の女の子・・・・・・・紺野ちゃんは、私たちの動きを息を呑んで見つめてる。
「辻、加護!もうお願いだから、早く乗って!」
「えっとね・・・・・・あの子、私の友達なんだ・・・・・・だから一緒に乗ってもらって良い?」
私の言葉に、あいぼんがにやりと笑いかけたのが見えた。
紺野ちゃんは大きな目をますます見開いて、口を開けたままこっちを見てる。
眼鏡の奥に見える目は、どこか涙目。
かすれた声が、喉の奥から聞こえてくる。
「・・・・・・戻ってくれた?」
「「ばっちり」」
思わず声が揃って、あいぼんと顔を見合わせて笑う。
そんな私たちに紺野ちゃんが飛び込んできて、3人で抱き合った。
すこし、ほんのすこしだけ、重かった。
432 :
書いた人:03/08/01 17:05 ID:adTmStIb
今日はここまでです。
FUNよりもルパンが楽しみ。
>>416 DVDだったら買ってみたい、と思うのですがねぇ・・・
>>417 ちょっぴりデジャヴ。
>>418 なるほど。一応伏線とか張ってますが、あんまり考えない性格なので、
どきどきしながらご覧くだされ。
>>419 結構バレバレだったりもしてます。
>>420 ありがとうございます。何故に『む』?
>>421 すいません。
更新乙です。
はぁそろそろクライマックスだぁ〜。
今はこの小説の更新が一番楽しみです。
@""@
(o・-・) <作者さん更新乙です。
〜( O旦O うーん。私のほうから行きましたか。
(´⌒⌒"⌒⌒;) 続き楽しみです。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
乙です。
DVDの2つ目のトラックは、俺が希望してたモノやったよ。
でも、曲が・・・・・
今回はちょっと涙ぐみそうになった15の夜。
|ハ@ 更新乙!
|д‘) しばらくぽーっとしているうちに
⊂ とんとんとーんといったもんやな
| あとはなっちがどう絡んでくるか楽しみですわ〜
今初めてこのスレを見つけて一気に読ませていただきました。
面白すぎる…作者さんがんばってください!
更新乙です
電話の辺りではどうしようもなく悲しい結末になってしまうのでは、
と心配しましたが、どうやら回避しそうでヨカッタ-
飯田さんは出るのか(w、など色々気になる小説です
439 :
書いた人:03/08/02 19:49 ID:ASh+Sfli
今日明日は更新できません、ということで保全。
保全。
交信乙です。
そろそろラストでしょうか…
素敵なエンディングを期待してます。
442 :
書いた人:03/08/04 09:00 ID:tBES+BNc
――――――――――
「「「かんぱ〜い」」」
もう日付が変わった私の部屋。
紙コップじゃないけれど、コンビニで買ってきたジュースで乾杯する。
私とあいぼんと紺野ちゃん、見慣れた顔とは違うけど、みんな笑顔で。
いつもだったらとっくに寝ている時間なのに、興奮でちっとも眠くならない。
あれからマネージャーに頼み込んで、紺野ちゃんも一緒にタクシーに乗っけてってもらった。
助手席でぶつくさ文句を言うのを放っておいて、私たち三人ははしゃぎまくる。
で、そのまま私の家に連れてきたってわけ。
中1の娘がこんなことをやって、何にも文句を言わないあたり、今まで先例を作ってきた姉文子に感謝。
ありがとう、文子姉ちゃん。
あなたの存在は、多分このためにあったんだよ。
443 :
書いた人:03/08/04 09:01 ID:tBES+BNc
目の前で嬉しそうにジュースを飲む紺野ちゃんは、やっぱり少し幼い。
でも眼鏡の紺野ちゃんは見慣れてるし、全体的な印象はあんまり変わっていない。
どこかとろんとしてるけど、それでも大事なところではキレる、あの感じ。
でも紺野ちゃんが変わっていない、というよりは私とあいぼんが変わりすぎなんだろう、やっぱり。
どんなにはしゃいでいても、口から出てくるのは尽きない疑問ばかりだった。
紺野ちゃんが何で3年後の意識のままでいられたのかは、
スナフキンとミーが腹違いの姉弟であることみたいに意外で、不思議なことだから。
あいぼんもそこら辺は同じで、タクシーの中から聞きたくて仕方が無かったらしい。
一杯目のジュースを空けると、早速疑問を口にする。
「そやけど、どうやって紺野ちゃん戻れたん?」
「そだよねぇ。私とあいぼん二人一緒にいても、こっちの時代に染まっていったのに・・・」
「へへへ・・・・・・これだよ」
紺野ちゃんはがさがさと、さっきまで背負っていたリュックサックを漁る。
444 :
書いた人:03/08/04 09:02 ID:tBES+BNc
「・・・・・・そう、これ」
「これって・・・・・・ただのウォークマンじゃん。つーか、久しぶりに見た」
サラリーマンのおじさんが英会話の勉強をするときくらいにしか見かけなくなった、ただのカセットウォークマン。
だいぶ使い込んであるのを見ると、昔買ってもらったのを大事に扱っていたんだろう。
買ってもすぐに破壊してしまう私との違いを感じる。
紺野ちゃん、あんた、いいお嫁さんになるよ。
私とおんなじように『?』という表情をしているあいぼんに、紺野ちゃんは微笑みかけると、
「聴いてみる?」
と言って、私たちにイヤホンを渡す。
あいぼんと顔を寄せ合って、片方ずつイヤホンを耳に入れた。
445 :
書いた人:03/08/04 09:03 ID:tBES+BNc
「それじゃ、流すね」
心底楽しそうに言うと、紺野ちゃんは再生ボタンを押した。
・・・・・・・・・
おいおい、下手な歌だなぁ。
再生された途端、となりであいぼんが吹き出していた。
聞こえてきたのは、完全にアカペラの歌(by紺野ちゃん)。
歌詞からすると、多分『恋のやじろべえ』なんだろうけど。
メロディーラインで判断できないあたり、なぜか私の目頭まで熱くなってくる。
「4月の頭くらいかな・・・こっちの時代に来て、すぐに気付いたの。
油断してると3年前の自分のほうが勝ってきちゃうって。
だから、もしも何かあっても困らないように、未来の曲を吹き込んでおいたんだ」
私たちの反応はお構いなしに、紺野ちゃんは続ける。
「それでもね、やっぱりたまに聴くんじゃダメらしくて、一度はこっちの時代に私に戻っちゃったんだ」
「・・・・・・じゃあ、紺野ちゃんはそこからどうやって戻ったん?」
イヤホンを外したあいぼんは、真面目な顔つきに戻っていた。
446 :
書いた人:03/08/04 09:07 ID:kuiGnsXC
「・・・・・・それはね、辻ちゃんのおかげなの」
そう言って少し眩しそうに目を細めて、紺野ちゃんは私を見つめる。
すごく照れるんだけど、まったく自覚が無いからわけが分からない。
『ムーミンママの着けてる衣装は前掛けじゃなくてパンツだ!』っていう、
やぐっさんの主張と同じくらいわけが分からない。
あの人はいつもエロエロだから、そんな発想しか出てこないんだ、多分。
「辻ちゃんさぁ、ハロモニの自己紹介で、『ホックがポンッとか行かないように』とか言ってたでしょ?」
「あぁ・・・・・・確か言ったような気がする。
それ言ったから、あの日あいぼんが元に戻ったんだもんね」
「でね、まだ意識が戻らないうちに、モーニング娘。が出る番組をビデオに録って送ってもらうように、千葉に引っ越してった友達に頼んでおいたの。
もし私自身が3年前に戻っても、もしかしたらそのビデオの中の手がかりで戻れるようになるんじゃないかって・・・」
「で、3年前に戻ってもうた紺野ちゃんは、そのビデオを見て思い出した、っちゅーわけか。
ミュージックスの思い出っつったら、あの場面が強烈すぎやもんな。記憶取り戻すわけや。
つーかミュージックスの思い出は、あの縄跳びと肉くらいしかない。
なんだか出っ歯のコーチがいた気もするが、私は速攻で記憶から消しちゃった。
「よく記憶なくした後も、ちゃんとビデオ見てたねぇ」
「見てるうちにね・・・段々はまっていったんだ、3年前の私」
447 :
書いた人:03/08/04 09:08 ID:kuiGnsXC
そう言って、照れくさそうに紺野ちゃんは笑った。
今回ばかりは、紺野ちゃんのヲタ素質に救われたってわけか。
結局紺野ちゃんはそのあとも、自分の歌声をモーニングコールにしたりして、
何とか難を逃れたということらしい。
やっぱり自分のヲタ要素を、こうもあからさまに言わなくちゃいけないのは照れくさいんだろう。
うつむいて顔を真っ赤にする紺野ちゃんに、心の中でつぶやく。
大丈夫、紺野ちゃんがヲタだってことなんか、みんな知ってるから。
私はすぐに文子姉ちゃんの部屋からカセットレコーダーをかっぱらってきて、みんなで未来のことを吹き込み始めた。
初めて前列で歌わせてもらった I wish
中澤さんとの最後の曲になった 恋レボ
その後のシングル曲からアルバム、カップリング、ミニモニやタンポポ、プッチモニ。
さらにふじもっちゃんや亜弥ちゃん、メロンやシャッフルまであらゆる曲を詰め込む。
あいぼんと紺野ちゃんの分をダビングし終わったときには、もう外で鳥が鳴き始めていた。
448 :
書いた人:03/08/04 09:09 ID:kuiGnsXC
――――――――――
布団を並べて敷いて、電気を消す。
遮光カーテンの隙間から、少し朝の光が射し込むけれど、そんなの気にならない。
今日丸一日オフであることに、信じてもいない神様に心から感謝した。
紺野ちゃんはその『千葉に引っ越した友達』のところへ泊まりに行く、と嘘をついてきたらしい。
そうでもしないと私たちのスケジュールにピンポイントで合わせられる、この日を逃してしまうから。
『一応口裏合わせてもらうようにしといたから、大丈夫でしょ』と紺野ちゃん。
でもそう考えると、今日と明日しか、私たちが揃う日は無い。
まだ芸能界に入っていないこの時期の紺野ちゃんに、迷惑を掛けるのは避けたいのだ。
「でもなぁ・・・・・・」
暗闇の中、あいぼんがつぶやく。
449 :
書いた人:03/08/04 09:10 ID:kuiGnsXC
「でも・・・・・・せっかくうちら揃うても、帰れないんやったらどうしようもないなぁ」
「うん・・・」
「ふっふっふっ・・・・・・・」
私の溜息と一緒に、紺野ちゃんの不敵な笑いが聞こえてきた。
この期に及んで、よくもまあ、そんな笑みができたもんだ。
「実はね・・・・・・このためだけに来たんじゃないよ、私。
とにかく今日、10時には起きよう、ね」
次に発せられた紺野ちゃんの言葉に、私とあいぼんは耳を疑った。
「・・・・・・1時半に渋谷で・・・待ち合わせしてるの。
私たちだけじゃなかったんだよ・・・・・・淋しかったのは。
私たちだけじゃ・・・・・・・・・グゥ」
「そこまで言っといて寝るんかい!!」
あいぼんの大声でのつっこみにも、紺野ちゃんは目を覚まさずに寝息を立てている。
いろんなことあったから、疲れたんだよね・・・・・・目が覚めたら教えてもらうよ、紺野ちゃん。
私はさっき録ったテープの再生予約を確認すると、すぐに睡魔に無条件降伏した。
450 :
書いた人:03/08/04 09:18 ID:9uUZpyHe
今日はここまでです。
明日明後日は再び更新できませぬので、ご了承を。
>>433 妙なペースで更新していますので、今月中には終わりそうですね。
>>434 孫悟空に見えなくもない。
>>435 15歳なんて、何年前だろう(遠い目)。
>>436 ありがとうございます。その覗いてるAAは可愛くて好きです。
>>437 ありがとうございます。一気読みして視力は大丈夫ですか?
>>438 とりあえず終わり方だけは考えてあります。
>>440 保全乙です。
>>441 「素敵な」・・・・・・考えてあるエンディングが、「素敵か」は・・・どうでしょう?
乙です。
いよいよって感じですね。
渋谷にいるのはあの人ですね。
って、3人+1人=4人という事で、拉致監禁とかいうネタにはなったら怖いw
そこへ偶然通りかかるよっすぃー
乙。毎日の更新チェックが一番楽しいよ。
どうなるんだこれから・・・。
今日初めて読んだ。面白いので期待してます。
ただ、3年前の辻が安倍の事を「なっちゃん」て呼んでることに
ちょっと違和感が。
野暮な事書いてごめんね。
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457 :
書いた人:03/08/07 14:25 ID:B/YCcXRW
「・・・・・・ホントに来るとは思えんけどなぁ」
「うぅん・・・・・・どうだろねぇ?」
蟻塚をアリクイがひっくり返した後みたいに、駅前は人で溢れていた。
ごみごみした雑踏が気持ち悪いけど、いい具合に私たちを目立たなくさせてくれる。
私の横には深々と帽子をかぶって、後ろで髪を二つにまとめたあいぼん。
そして紺野ちゃんは、20mくらい先の街路樹の陰で、5月の暑さに少しだれた顔をしていた。
約束の時間まであと10分。
他の人たちが使う待ち合わせ場所だと目立つからって、
やぐっさんがこの半年後に考えた秘密の場所で、紺野ちゃんは立っている。
「あと10分で分かるよ・・・」
紺野ちゃんの近くを通る人に注意深く目を向けながら、私の言葉にあいぼんは軽く頷いた。
458 :
書いた人:03/08/07 14:26 ID:B/YCcXRW
―――――――――― 2時間前 レストラン
「はぁ!?まこっちゃん?」
「うん、そうなの・・・・・・あ、そのスープ、一口貰っていい?」
あいぼんの素っ頓狂な叫び声にも動じないで、紺野ちゃんは私のスープ皿を引き寄せた。
おいおい、それは一口とは言わないよ。
私たちとは対照的に、向かいの席で美味しそうにスープをすする紺野ちゃんに、苛立ちすら覚える。
待ち合わせの相手はまこっちゃん。
そう聞いて私たちは落ち着いていられない。
いつか、なんとかして手掛かりを得ようとしていたのに、そのチャンスが突然やってくるから。
「でも・・・どうやって?まこっちゃんと待ち合わせなんて・・・」
「そやで。渋谷までよく呼び出せたなぁ。
大体自分、まだまこっちゃんと赤の他人と違う?」
あいぼんの言葉に、紺野ちゃんのスプーンをを持つ手が止まった。
459 :
書いた人:03/08/07 14:27 ID:B/YCcXRW
少し窓の外を見て、紺野ちゃんはほとんど口を動かさないで呟いた。
「・・・・・・多分・・・ううん、絶対・・・・・・今日来るの、3年後のまこっちゃんだよ」
?
紺野ちゃんの言ってる意味が分からなくなる。
今日・・・・・・つまり、3年前の今日の待ち合わせに来るまこっちゃんも、3年後のまこっちゃん?
「それに・・・・・・ね」
動揺する私たちをそのままに、紺野ちゃんは続ける。
まるで、自分自身の頭の中でも、必死に状況を整理しようとしているみたいに。
460 :
書いた人:03/08/07 14:29 ID:B/YCcXRW
「電話掛けてきたの、まこっちゃんの方だよ。
北海道の私の家に、この前の水曜日」
「でも・・・・・・うちらが掛けようとしても、紺野ちゃんちって、電話帳載っとらんかった・・・」
「多分、まこっちゃん覚えてたんだよ。
だって私たちみたいに何の準備もなくってこっちの時代に来たんじゃないもん。
あのお薬をなんでまこっちゃんも飲んだか・・・分かんないけど」
まこっちゃんが・・・しかもこの時代じゃなくて、3年後のまこっちゃんが来る。
なんであんな薬を飲ませたのか。
まこっちゃんは何をしにこっちの時代に来てるのか。
そして、どうやったら元に戻れるのか。
聞きたいことは山ほどある・・・・・・
あれ?
一つだけ、おかしなことに気付いた。
461 :
書いた人:03/08/07 14:31 ID:22n1JZQz
「あれ?でもさ、まこっちゃんはあの薬飲んだの、私だけだって思ってるはずだよ。
あいぼんと紺野ちゃんに分けてあげた、って一言も言ってないし。
なんでそれなのに、まこっちゃんは紺野ちゃんに電話したの?」
私の言葉にあいぼんはうんうん、と頷いている。
紺野ちゃんはその言葉にはっとして、目を見広げた。
少しだけ恥ずかしそうに、ほのかに顔を赤くして俯く。
462 :
書いた人:03/08/07 14:32 ID:22n1JZQz
「あ、あのね・・・まこっちゃんは多分、この時代の私とちょっとでもお話がしたかったんだと思うの。
どうしてなのかは分からないし、なんでまこっちゃんがこっちに来てるのかも分かんないけど・・・
まこっちゃんからの電話、すごく余所余所しかった。
だから私が3年後から来てる、ってことは知らないと思う。
電話来たとき、突然でビックリしちゃって、私まともに反応できなくって・・・だからばれなかったんだろうけど」
「・・・・・・で、金曜にうちらん所へ行くことにしとったから、かろうじて待ち合わせだけは言ってみて、向こうものったっつーわけ?」
目を細めて少しきつめに言うあいぼんに、紺野ちゃんは申し訳なさそうに頷いた。
どっちもどっち、って言うか・・・
まこっちゃんも気付けよ。
見ず知らずの中学生の女の子が、渋谷なんかで待ち合わせするわけ無いじゃん。
ホントに紺野ちゃんとまこっちゃんって、二人が言ってるほど親友なんだろうか。
463 :
書いた人:03/08/07 14:33 ID:22n1JZQz
――――――――――
5月だって言うのがウソみたいな暑さに、あいぼんが額の汗をぬぐった。
『まこっちゃんがどう出るか分からないから、一応私だけで待ってた方がいいね』
もしまこっちゃん来て、紺野ちゃんがあの薬を飲んだって知って逃げたら、容赦なく追いかける。
私とあいぼんが待ち合わせ場所から離れているのは、その意味もある。
もし逃げたりしたら、世界の果てまでだって追い掛けてやるんだから。
でも・・・・・・
もし、誰も来なかったら?
そう考えるとお手上げだ。
全てはまた振り出しにもどってしまう。
心臓が高鳴るのが、胸に手を置いていなくても簡単に分かる。
464 :
書いた人:03/08/07 14:33 ID:22n1JZQz
「のの、来たみたい」
ボーっとしていた私の袖をあいぼんがきつく引っ張る。
紺野ちゃんが何かを見つけ、そっちに手を振っているのが見えた。
いつでも飛び出せるように前のめりになりながら、紺野ちゃんの視線を追う。
・・・・・・
なんで?
「ウソやろ・・・・・・」
横であいぼんが呟く。
彼女が見ていないのは分かっていても、その言葉に私は首を縦に振った。
約束の時間3分前。
まこっちゃんは来ていた。
茶色い髪、きちんとした化粧・・・・・・そして、車椅子。
来ていたのは3年後のまこっちゃん、そのものだった。
465 :
書いた人:03/08/07 14:38 ID:z2tTolue
今日はここまでです。
やはりかちゅは使いやすいですな。
>>451 多分お考えの人と違うかもしれませんね。そのネタは嫌ですな。
>>452 それは多分ないです、はい。
>>453 ありがとうございます。またいつも通りのペースに戻ります。
>>454 いえ、その辺無頓着に書いていましたので。
ご指摘ありがとうございます。
夏ですね。
うひょー!!どうなっちゃうんだー!
更新乙です。
まったく展開が読めなくなってきた・・・・
一体何人の娘。が3年前に来てるんだろう。
468 :
書いた人:03/08/07 23:14 ID:NmQGYI6a
ちょいと閑話休題
日頃『昨日見た日々』を読んで頂いてありがとうございます。
元々校正が不得意でして、「私」を「渡し」にしたりミスが多い作者です。
先ほど書き込んだのを読み返していましたら、
>>423のピースの歌詞がめちゃくちゃな事に気付きました。
ぐぅ・・・どうしよう。
「好きな人が優しかった」であり、「道行く人が親切だった」んですよね。
日頃しっかり聞いてないのがバレバレだ、これじゃ。
優しく見守ってくださった皆様に感謝です。
私がよっぽど突飛なストーリーを思いついたりしない限り、
あと2・3週間ほどで完結となる予定であります。
引き続き、ご愛顧のほど宜しくお願いします。
☆ノハヽヽ 作者さん更新乙です。
川*‘〜‘)|| <うーん。意外なの。またまた意外な展開なの。
( ⊃⊂) 続きがとっても楽しみな22歳の私。
(__Y__) モジモジ なっち、CM料ちょーだい。
470 :
書いた人へ:03/08/08 12:06 ID:ln8BnL5H
今までに書いた話しも、
読みたいのですが、
他にはどこに書き込みして
ありますか?
471 :
名無し募集中。。。:03/08/08 15:37 ID:rF+n7Y3f
初カキコっす!(何気に2chも初。)
小説イイッ━(゜∀゜)━!
こういうの大好きだべさ〜!
ANNのラジオドラマプロットに送ってもらいたいくらいイイお話っす!
次回交信楽しみにしてます〜!
472 :
書いた人:03/08/08 19:46 ID:M/uVD1re
「・・・・・・あれ・・・・・・どうなってんの?」
「うちもわからん」
車椅子を漕ぎ漕ぎ、まこっちゃんは笑顔を浮かべながら紺野ちゃんに近付いている。
紺野ちゃんのあの驚いた顔つきは、けして2人が初対面だってことを装いっているだけじゃない。
「紺野ちゃんも・・・・・・知らんかった、ってわけか・・・」
あいぼんはそれだけ言うと、私の脇腹をつついて、既に話を始めている二人に歩き始めた。
慌てて私も、相棒の小さな背中を追う。
初対面の相手、っていう筈なのにやたら親しげに、もう何年間も会ってなかったみたいな眩しい目をしているまこっちゃん。
そんなまこっちゃんに、いつもの1.5倍増し(紺野ちゃん比)でキョドッてみせる紺野ちゃん。
何がなんだかまるっきり分からない。
この人込みの中で自然に溶け込んでいる3年後のまこっちゃんを見ると、
ホントはこの街全体も、3年後の姿のような気がしてくる。
少しくらくらする頭を抱えて、わたしは人の流れをかいくぐった。
473 :
書いた人:03/08/08 19:48 ID:M/uVD1re
「紺野・・・・・・あさ美さんだよね。よかった・・・・・・会えて」
「はぁ・・・」
近付くに連れて二人の会話が断片的に聞き取れるようになってくる。
あいぼんはまるで怒っているみたいに、ずんずんと早足で進んで行った。
「あの・・・・・・なんで?」
「・・・・・・?あぁ、なんでいきなり電話したかってこと?
うーんとねぇ・・・・・・なんて説明したらいいのかなぁ?」
紺野ちゃんの言葉は『なんで私たちを3年前に戻したか』なのに、気付かないんだろう。
お姉さん面して眉を寄せたまこっちゃんに、あいぼんが後ろから強く肩をつかむ。
「そやな・・・きっちりと、うちらみんなに分かるように説明してもらわひんとな」
「・・・・・・え?
・・・・・・・・・・・・ウソ、なんで!?」
「それはこっちのセリフだよ、まこっちゃん」
「・・・・・・辻ちゃん・・・・・・どうして?」
474 :
書いた人:03/08/08 19:49 ID:M/uVD1re
渋谷駅前の片隅。
私とあいぼんと紺野ちゃん、そしてその三人の丁度真ん中に車椅子のまこっちゃん。
私たち三人は、わけが分からなかった。
なんでまこっちゃんは3年後の姿のまま、ここにいるのか。
あいぼんは腕を組んで、キッとまこっちゃんを睨み下している。
紺野ちゃんは事態がつかめずに、左手を口に当てて、まこっちゃんとあいぼんを交互に見比べて。
ホントはこの状況を一番良く理解しているはずのまこっちゃんが、
一番混乱しているみたいに、私たちの顔を何度も見返している。
「まこっちゃん・・・・・・話してくれへん?」
「ウソ・・・・・・どうして私の名前を知ってるの・・・」
475 :
書いた人:03/08/08 19:50 ID:M/uVD1re
まだ事態を掴めないでいる様子に、あいぼんがキレた。
まこっちゃんの肩を思いっきりつかむと、前後に大きく揺さぶる。
「いい加減しらばっくれんのやめといて!!
さっきからどうしてって、そんなん自分がののにやった薬のせいに決まっとるやろ!
うちとののと紺野ちゃん、一ヶ月もこんな風にしといて、何が『どうして?』や!!」
「え・・・・・・・・・」
まこっちゃんの的を射ない反応に、ますますあいぼんのボルテージが上がる。
あいぼんはつばを飛ばしながら、大声で更にがなり立てる。
「そんなアホ面で誤魔化されると思わんといてや!
うちら三人3年前に戻して、一体何狙っとったんや!
ほんでもって紺野ちゃんに連絡コソコソつけたりして・・・・・・うちらがまこっちゃんに・・・」
そこまで言うと、急にあいぼんは言葉を詰まらせた。
目には涙が浮かべて。
476 :
書いた人:03/08/08 19:52 ID:f0/WGmLD
通り過ぎる人込みは、まるで私たちがいないかのようで。
時々振り返る人も、興味が無さそうにまた視線を戻していた。
「うちや・・・・・・紺野ちゃんはええ。
まこっちゃんから薬貰ったんと違うから・・・・・・でもな。
なんで・・・・・・ののを騙すようなことしたんや」
あいぼんの顔は涙でくしゃくしゃになっていた。
何度も何度も涙を拭うあいぼんの右手をぼんやり眺めて、私は彼女の空いている左手を強く握った。
477 :
書いた人:03/08/08 19:54 ID:f0/WGmLD
『ののはアホや』って、あいぼんはよく言う。
実際あいぼんみたいに人付き合いも上手くないし、『バカ女』になってしまったことは事実だ。
今回だって、まこっちゃんの狙いがなんであれ、私が簡単に騙されたことが原因。
もちろん薬を飲むことはみんなで決めたけれど、やっぱり元凶はまこっちゃんと・・・私だと思う。
それでもあいぼんはこのひと月、けして私を責めることはなかった。
私はずっと考えていた。
いつもだったら冗談めかして私を責めてもいいところなのに、やっぱり気を使っているんだろうかって。
でも、それだけじゃなかったんだと思う。
あいぼんは気付いていたんだ。
私を責めるってことは、私が友達を(結果的には)騙してしまったと追い詰めることにもなるって。
478 :
書いた人:03/08/08 19:54 ID:f0/WGmLD
紺野ちゃんの差し出すハンカチを受け取って、まだ泣きつづけるあいぼんを見る。
最近では滅多に見なくなった、泣き顔。
馬鹿にされたり、ソロパートがあいぼんの方が多かったり、人気があいぼんの方があったり、ケンカもしたり・・・
なんだか私のほうに随分マイナス要素が多い気もするけど。
それでも、最高の友達だよね。
あいぼんの左手を握る右手に、少し力を込めた。
479 :
書いた人:03/08/08 19:56 ID:f0/WGmLD
「まこっちゃん・・・・・・なんであんな薬をくれたのかとか、もうそんなことどうでもいいよ」
あいぼんに代わって、私がまこっちゃんの正面に向き直る。
まだまこっちゃんは何が起こっているのか分かんないみたいに、ぼんやりと私の顔を見上げた。
「あのね・・・・・どうやったら戻れるか、それだけ教えて。
私たちは、早く3年後に帰りたいんだ」
私の言葉に紺野ちゃんが小さく頷いた。
まこっちゃんは口を半開きにしたまま、まるで夢を見ているみたいに止まっている。
お願い、教えて。
もうそれだけでいいから。
まこっちゃんに何があったか、何でこうなったか、そんなことどうでもいいから。
ここで帰る方法を教えてくれれば、全てが丸く収まるから。
まこっちゃんの口が小さく息をしたのも、私たちは見逃さない。
お願い・・・・・・戻らせて。
「あのさ・・・・・・辻ちゃんやあさ美ちゃん、加護ちゃんも・・・・・・3年後から来てるの?」
私たちの必死の願いは、神様にはちっとも通じていないのだった。
480 :
書いた人:03/08/08 20:05 ID:f0/WGmLD
今日はここまでです。
やぐっさんに似てるスーパーのレジ店員を発見。
生きる楽しみが増えました。
>>466 そのテンションが少しおかしかったです。
>>467 どうでしょうね?
>>469 飯田さん、おめ。写真集を持っているというのは内緒です。
>>470 ここの
>>68からと、あと
>>317のスレに一つあります。
もう一つ、凄く短い話がありますが、ex鯖で書いたのでログが無いのです。
ログを私は持ってないので、親切な方を待ってください。
ちなみに作風が全然違うので、あしからず。
>>471 こんなに口の悪いののさんでは採用されないでしょう。
>>420氏の「む」の意味が理解できたこの頃。
私は気にしておりませぬので猛省なさらずとも、と私信。
ぐあー!!今日もいいところで終ってるー!
更新乙ですぅ!
今日もお持ち帰りします。
483 :
名無し募集中。。。:03/08/09 01:37 ID:psufK1xA
更新乙です〜
今後の展開がまったく読めないとこがおもろいですね〜(いい意味で見事に予想を裏切っております)
プロットに関してはシナリオ(話の流れ、展開の仕方)がいいんで十分狙う価値はあると思いますよ〜(そんな偉そうなこと言えるような奴じゃないですが…)
次号に期待しつつ、自分もお話を考えてみたり。(駄文申しわけ。m__m)
|ハ@ 更新乙!にしても、小説のあいぼんカッコええな〜
|д‘) 現実、越えとるんちゃうんか?
⊂ ちなみに西武池袋線沿線で
| うちも矢口さん似のウエイトレスさんにあったわ
作者さん更新乙です。うーん。 先が読みたくて
堪らなくなる作品ですね。そうですか。かおりんの・・・
(0^〜^)y--┛~~秘密ですか。いいですね。こうすると
私の顔は字に埋もれて判別し辛いじゃないですか。
まぁいいですけどね。続きを楽しみにしています。
486 :
書いた人:03/08/10 08:35 ID:N0xwxHEe
――――――――――
「ホントなの・・・・・・?まこっちゃん」
「こうまですっとぼけてられないやろ、普通」
「・・・・・・ごめん・・・・・・みんな、ホントにごめんね・・・」
「あぁぁ・・・いい加減泣き止んでよ。私たちが悪いことしてるみたいだよ、これじゃ」
なるべく人のいない場所を探して、4人で喫茶店に入って1時間。
ひたすら嗚咽を漏らすまこっちゃんを前に、私たちは憔悴しきっていた。
まこっちゃんに言いたいことは腐るほどあるけれど、今は情報収集が先。
あれから泣いたり怒ったり、何とかしてまこっちゃんにホントのことを言わせようとしたけれど、
結局出た結論はコレ。
まこっちゃんはあの薬がなんなのか知らなかった。
そしてまこっちゃんは、私たちの治し方も知らない。
で、まこっちゃんも3年後から来ている。
魔女裁判並みの追及をしたんだから、多分コレが最終結論。
・・・・・・その割りには、なんて収穫のない結論だろう。
487 :
書いた人:03/08/10 08:35 ID:N0xwxHEe
「あ〜、すんません。かぼちゃプリン、も一つ貰えます?」
泣いているのに早くも二皿目を胃袋に消し去ったまこっちゃんを見て、あいぼんがすかさず追加オーダー。
この辺の飴と鞭の使い分けの見事さには、溜息すら出てくる。
前世が特高の捜査官かなんかだったんじゃないだろうか。
そしてまこっちゃんの横では、
「あ・・・・・・すいません、それを私も・・・」
と、5皿目に突入する紺野ちゃん。
この辺の食べっぷりのよさには、溜息しか出てこない。
前世がパックマンかなんかだったんじゃないだろうか。
488 :
書いた人:03/08/10 08:36 ID:N0xwxHEe
「お待たせいたしました〜、かぼちゃプリンになります」
明るい声とは裏腹に、『こいつらまだ喰うの?』という真情を込めて、
ウエイトレスのお姉さんが細い眉をひそめた。
涙を拭きながら視線をお皿に移すまこっちゃん。
颯爽とスプーンを持ち直す紺野ちゃん。
おい、紺野ちゃん。あんたは尋問する側なんだけど・・・
「でもな、まこっちゃん・・・・・・うちら聞きたいこと、まだ半分も聞いてへん」
あいぼんの言葉に、まこっちゃんは落とした視線を上げた。
紺野・イーター・あさ美は放っておいて、わたしとあいぼんはまこっちゃんの目を見つづける。
気まずそうに視線を逸らそうとしつつも、まこっちゃんは私たちの迫力に気圧されていた。
489 :
書いた人:03/08/10 08:37 ID:N0xwxHEe
あいぼんが横目で、私に合図を送る。
そうか・・・・・・ことの始まりは、私とまこっちゃんだったんだもんね。
自分の中で一つ一つ整理しながら、それでもけしてまこっちゃんの瞳を逃さない。
「まこっちゃんがくれた薬あったでしょ・・・・・・あれを私が紺野ちゃんとあいぼんに分けたから、
多分、だから私たちは内面だけこの時代に戻ってきちゃったんだと思うの。
まこっちゃんはそんな効果があるなんて知らなかったんでしょ?」
「・・・・・・うん」
私の口調がさっきよりも優しいものになっていたせいか、意外にすんなりとまこっちゃんは反応してくれた。
その余韻を逃さないように、すぐに、それでも焦らずに続ける。
「教えて欲しいの。どうやったら元に戻れるんだろう?
分かんないよね・・・・・・じゃあ、これ作ったの・・・・・・誰?」
490 :
書いた人:03/08/10 08:38 ID:P9fRideh
一番聞きたいこと。言わば核心。
元に戻る方法をまこっちゃんが知らないことなんか、もう充分分かってる。
最後の聞いたことの方が、むしろ今一番知りたいこと。
さっきあいぼんとトイレに行って、これだけは聞こうと決めておいた。
まこっちゃんの目を見据えたまま、今日何度目かの神様へのお願い。
お願い・・・・・・またお願い聞いてくれなかったら・・・・・・焼き討ち。
「私も・・・・・・」
「「私も?」」
思わずあいぼんと声が揃った。
いつものおバカさんっぽい表情はなりを潜めて、まこっちゃんは下唇を噛む。
491 :
書いた人:03/08/10 08:39 ID:P9fRideh
「私も・・・あの薬の効果をどうやったら解けるかは、知らないよ。でも・・・・・・」
今度は私たちは続きを促さなかった。
目線だけで必死の圧力。
紺野ちゃんもいつの間にかすべて平らげて、まこっちゃんに向き直っていた。
「でも、あの薬を私にくれた人は・・・言えるよ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・つんくさんだから」
あいぼんが唾を飲んだ音が、まるで拡声器を通したみたいにはっきり聴こえた。
紺野ちゃんは目を大きく見広げて、口を開けっ放しにして。
まこっちゃんは・・・・・・相当の覚悟が必要だったんだろう、慌てて目線を窓の外に移した。
492 :
書いた人:03/08/10 08:40 ID:P9fRideh
無言
何でつんくさんがあんな薬を?って言う疑問と、近い人でよかった、って言うのが頭の中で渦巻いていた。
つんくさんだったら・・・今会える人間だ。
正直、この時代に私たちの身の回りに存在しない人間だったらどうしよう、って思っていたから。
「そう・・・・・・か」
あいぼんはやっとのことで息を整えると、もう一度キツイ視線に戻る。
「じゃあ、まこっちゃんがこっちの世界にきたって言うのも、つんくさんがやったん?」
「・・・・・・・・・・・・」
コクン
しばらく迷ったんだろう。
沈黙のあと、ほんの少しの動作だけど、まこっちゃんは首を縦に振った。
493 :
書いた人:03/08/10 08:40 ID:P9fRideh
「何でこっちに来たかって、聞いてええんかな?」
あいぼんが突き刺さるような口調で告げると、まこっちゃんは眉を寄せて、嘆願するような目をした。
聞かないで、ってことだろうなぁ。
再び目を伏せたまこっちゃんに、あいぼんがもう一度、問い掛けようとした。
「・・・・・・まこっちゃ・・・・・・ん?」
あいぼんが言葉を止めて、紺野ちゃんを睨みつける。
紺野ちゃんがあいぼんに向けて、右の手のひらを真っ直ぐにかざしていた。
もうこれ以上聞かないでおこう、ってことなんだろう。
親友がこれ以上、針の筵の上で座禅をすることが耐えられないらしい。
494 :
書いた人:03/08/10 08:42 ID:9+fENANp
「ま、ええわ・・・・・・」
「ありがとう・・・」
あいぼんに礼を言った紺野ちゃんを、隣のまこっちゃんは信じられない顔つきで見上げた。
あいぼんだって分かっているんだろう。
親友を傷つけないでおきたい、って言う気持ち。
じゃなかったら、そんなニヤッとした笑いは出て来ない。
まこっちゃん・・・・・・感謝しないとダメだよ。
彼女が私たちの気持ち・・・・・・けして怒っているだけじゃない、
問題があったら一緒に解決したい、って気持ちに気付いてくれているかは分からないけれど。
少なくとも、紺野ちゃんが自分をかばってくれたんだ、ってことには気付いて欲しい。
「ほんなら・・・・・・行こっか」
満足げに、紺野ちゃんとまこっちゃんを見比べて、そして私に微笑みかけると、あいぼんは立ち上がった。
私たち3人の視線に気付いて、あいぼんはも一度笑う。
「つんくさんに会わんと・・・・・・紺野ちゃんがこっちにいられるの、あと1日ないんやから」
495 :
書いた人:03/08/10 08:47 ID:9+fENANp
今日はここまでです。
そろそろ佳境。
>>481 実際に一日で書く量がこれくらいなので、申し訳なく。
>>482 実はネカフェに行ったことが無かったりします。
>>483 でも口の悪いののさんが結構好き。
>>484 以前、私の書いたダーヤスも『現実よりかっこいい』と言われました。
・・・・・・どうしても書いてるうちに、かっこよくしてしまう私。
>>485 未成年は吸っちゃいけませんよ。
ひょえー!!つんくさ〜ん!
497 :
名無し募集中。。。:03/08/10 17:59 ID:q76h7UaN
交信乙です〜!
つんくPキタ━(゜∀゜)━!
もう一度なっちが出て来るのかが気になります。(なんか知ってたっぽいですし。)
おいらも口悪のんちゃんは大好きっすよ〜!
それにしても、あいぼんの関西弁が本物っぽくて気に入ってます!(ちなみにおいらはあいぼんと同郷。)
あ〜、次号も楽しみですのでがむばってください〜♪
♪ |\o/| ルンルン♪
♪ ∂/ハ)ヽヽ
(0^〜^0) <作者さん更新乙です。
∩ ∪ヽ うーん。この作品は読んでてとても楽しいですね。
(( (⌒)-、 ) 次の場面のことを考えるとワクワクしますYO。
 ̄ (__丿
更新乙です。
やっぱ、あいぼんはええですな♪
あいぼんカコイイ!紺野ちゃんもまこっちゃんも食べすぎ!
そしてこの話のののさんはなんだか賢そうに感じるw
それにしても続きが気になります・・・。いつもいいところで終わりすぎ。
ネタバレになったら困るけど、
>>497さんと同じくあの人の存在が気になります。
ムハー(;゚∀゚)=зワクワク
501 :
書いた人:03/08/12 18:28 ID:5tLQb0Oe
――――――――――
『おっ!お前らちゃんとやっとるか?』
『あ、つんくさん。おはよぉございま〜す』
『おう、今日も元気だけが取り得やな、辻』
『・・・・・・・・・・・・・えへへへ』
『・・・怒るところやと思うんけどな。冗談や、じょーだん』
『あれぇ!?つんくさん、どーされたんですかぁ?』
『お、加護に紺野と、小川か。いやな、プロデューサーなんやから、一度は舞台だって見にこんと・・・・・・な』
『珍しいですね』
『・・・・・・真顔で言うなや、紺野。おぅ、そうや。ちょっと心理テストやってみんか?』
『まぁた、うちらに合わせんでもええんですよ、つんくさん』
『大体心理テストが流行ったのなんて、すっごい昔だよねぇ』
『・・・・・・あぅ』
『あ・・・・・・・・・・まぁ、ね。みんな折角つんくさん教えてくれるんだから、やってみようよ』
『・・・・・・仕方ないですね』
『ありがとな、小川に紺野。お前らだけがモーニングの良心や』
『・・・どーでもええから、早くしてくれません?』
502 :
書いた人:03/08/12 18:29 ID:5tLQb0Oe
『ああ、うん。一度だけ、自分の人生のどこかに戻れるとする。
だったらいつに戻る?もちろん戻らんでもええで。何年前か、で答えてくれや』
『私たちまだ、15年とちょっとしか生きてないんですけど・・・』
『まあ、そう言わんと答えてや。お前はどうなん?加護』
『うちは・・・・・・・別に今のまんまでええかなぁ・・・』
『私は・・・・・・うーん・・・マニキュアひっくり返さないようにしたいから・・・・・・3年前かな?』
『怪我してみんなに迷惑かけちゃったんで、2年前の秋ですね』
『ほぉ・・・・・お前はどうや?小川』
『私は・・・・・・別に今はいいですよぉ。
でもぉ、この先にそのチャンスをとっておいて、その時に使います』
『なんかせこいなぁ・・・まこっちゃん。で、これで何が分かるんですか?』
『これか?これでなぁ・・・』
『『『『これで??』』』』
『・・・・・・・・・・・・あかん、忘れてもうた』
『さぁて、みんなでケータリングでもしばきに行こか』
『ぐあぁぁ・・・・・頼む、俺を見捨てんでくれぇ』
――――――――――
503 :
書いた人:03/08/12 18:29 ID:5tLQb0Oe
「の・の!!!!!」
「はい!?」
耳元で炸裂したあいぼんの大声に、思わずおかしな返事をしてしまった。
つんくさんって名前が出てきて思い出した、あの心理テスト・・・・・・答えはなんだったんだろう?
お店を出て少し歩いた場所の、ベンチの周り。
まこっちゃんがこっちの時代のつんくさんから貰ったプリペイド携帯で連絡をつける間、私は少し考え込んでいた。
「・・・・・・のの、あんまりボーっとしとらんといて。
つんくさんが何考えてるんか分からんから、これから気ぃ抜いてられんで」
「・・・・・・ごめん。あのさ・・・・・・つんくさんが私たちに心理テストやったの、覚えてる?」
携帯に耳を押し当て神妙な顔をしているまこっちゃんを横目に、隣に立っているあいぼんを見上げる。
あいぼんは一瞬顔をしかめて、小さく唸りながら私の目を見た。
「うーんと・・・・・・そんなんあったかな?紺野ちゃん、覚えてる?」
「・・・・・・さぁ?あったって言えばあったような気がするけど・・・」
かぼちゃプリンで満たされた胃をさすりながら、紺野ちゃんも首を傾げる。
どうやらあいぼんは髪の毛に、紺野ちゃんは消化に、栄養が優先配分されているらしい。
504 :
書いた人:03/08/12 18:30 ID:5tLQb0Oe
「・・・・・・ダメだぁ・・・・・・出てくれないよぉ」
携帯を閉じたまこっちゃんが、『今日いきなりこの世の終わりが来ちゃいました』って感じの頼りない声をあげる。
メンタル面がのび太くんのまこっちゃんに、体の丸っこさならドラえもん基準の紺野ちゃんが頬を膨らませた。
「えぇ?でもこっちのつんくさんにだって、まこっちゃん会ってるんでしょ?」
「うん・・・・・・何かあったら電話しろ、って言って、この携帯渡してくれたんだよ」
「もう一回やってみなよ。番号間違えてないよね?ちゃんと番号通知にした?」
「ちゃんとやったと思うけどぉ・・・・・・分かった、もう一回やる」
車椅子の後ろから紺野ちゃんに見守られて、まこっちゃんは再び携帯を操作。
その姿から、なんだか紺野ちゃんのお姉さんな部分が見れて、とっても微笑ましい。
紺野ちゃんの長い髪が風に揺れて、まこっちゃんの頬に当たる。
くすぐったそうに、でもそれがとっても嬉しそうで、まこっちゃんは目を細めていた。
505 :
書いた人:03/08/12 18:31 ID:1rHu5Y9R
「・・・・・・・なあ、のの。まこっちゃん、結局何しにこっちに来たんかなぁ?」
その姿を笑顔で見守る振りをして、あいぼんが声を潜めた。
私もそれに倣って、視線を二人に向けたまま、話を続ける。
「・・・・・・さぁ。私たちがこっちに来たことと、関係有りそで無いんだよねぇ」
「うちらがこっちに来たんは・・・・・・事故みたいなもんやん?
そんでもまこっちゃんは、自分の意思で来たと思うんけど・・・」
「あの薬の出元もつんくさんだし、まこっちゃんをこっちに送ったのもつんくさんなんでしょ?
一緒の目的だったのかなぁ?」
「そこが分からん・・・・・・そこだけ、まこっちゃんは言いたなさそうやったしなぁ。
あんま問い詰めすぎても話が進まんから、深追いせんかったけど」
「それでよかったと思うよ・・・・・・あぁ!」
506 :
書いた人:03/08/12 18:31 ID:1rHu5Y9R
思い出した。
ちょっと手掛かりになるかもしれない、まこっちゃんの言葉。
私の声に、初めてあいぼんが私に向き直る。
それを横目で確認すると、とっさにまこっちゃんを見た。
・・・・・・まだ紺野ちゃんが気を引いている。
「あのね・・・・・・まこっちゃんが薬をくれた日の夜、電話があったんだ」
私の言葉に、あいぼんが唾を飲んだ。
横目であいぼんの目を見つめながら、続ける。
「そのときね・・・まこっちゃんが言ったの。
『これでやっと私もやり直せるよ』って。
その時は私が痩せればまた向上心を持てるから、
初心に返ってやり直せる・・・って言いくるめられたけど」
507 :
書いた人:03/08/12 18:32 ID:1rHu5Y9R
隣で相棒が、深く息をついたのが聴こえた。
「・・・・・・なら、まこっちゃんはこっちに戻って自分をやり直そうとしたっちゅーことかな?」
「分かんないよ。そうかもしれないし・・・・・・違うかも」
私の口から正解が出ることなんか、最初から期待してなかったんだろう。
あいぼんは私の言葉に頷くと、初めて私に向けて微笑みかけた。
「とりあえず、つんくさんに聞けば分かることちゃう?
元に戻る糸口だけはつかめたんやから、上出来、ってことにせんと・・・・・・な?」
「そだね」
私も合わせて笑う。
深い深い闇にいたことの反動が来たんだろう、
やっと掴みかけた光に、私たちは愉快で仕方が無かった。
508 :
書いた人:03/08/12 18:33 ID:1rHu5Y9R
「ダメだぁ・・・・・・通じないよぉ」
まこっちゃんのミドルネームを『のび太』に決定したくなるような声で、彼女は口を縦長に空けた。
紺野ちゃんも横で首を傾げて、『おかしいなぁ』と呟いている。
少し諦めがかった表情で、紺野ちゃんは左手をこめかみに当てた。
「何度やっても、つんくさん出てくれないみたい」
「んなわけないやん・・・・・・この時代のつんくさんと一番近いの、多分まこっちゃんちゃう?
それなのに出てくれないって・・・・・・ウソの番号教えられたんちゃうの?」
およそ考えたくない推論をぽんぽんと口に出すあたり、あいぼんは怖いもの知らずだ。
『違うよぉ』とまこっちゃんは、信憑性の無い反論をしている。
509 :
書いた人:03/08/12 18:34 ID:Z8RCppkc
「まだ私たちも、この時代のつんくさんの番号とか聞いてないもんねぇ」
自分の携帯のアドレスをスクロールしてみても、3年後にはあるつんくさんの項は無い。
マネージャーに聞くって手もあるけど、
昨日あんな傾き者(かぶきもの)なことしちゃった私たちに教えてくれるかは疑わしい。
「貸してみ?まこっちゃん。うちの携帯から掛けてみる」
事ここに至っては携帯の性能の問題じゃないと思うけど、あいぼんはまこっちゃんの携帯を奪うと、窓を見ながら自分の携帯を操る。
その様子を心配そうにまこっちゃんは見上げていた。
腰に手を当てて仁王立ちしたまま、あいぼんは携帯を耳に、顔をしかめた。
「・・・・・・・・・鳴ってんけど・・・・・・・・・」
「通じはするんだよ。でも出てくれないの」
「今お仕事中とかじゃないの?」
「ううん・・・・・・今日は一日中オフだから、絶対に電話に出れる、って言ってたもん」
そんじゃどうしようもないね・・・と言おうとしたときに、あいぼんの顔色が変わった。
突然声質が半オクターブほど上がる。
510 :
書いた人:03/08/12 18:35 ID:Z8RCppkc
「あ?もしもし?つんくさんですかぁ?」
「・・・・・・通じてんじゃん」
私の言葉に、まこっちゃんは首をブンブン振って必死に何かを言おうとした。
でも紺野ちゃんが人さし指を唇の前に立てて、それを押し止める。
「はいぃ・・・・・・加護ですぅ。え?どーしてって・・・・・・・・・いえ、いろいろあってですねぇ。
それで、今からちょっとお会いしたいんですけどぉ・・・・・・いぃえ、ののも一緒です。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・それちゃうんですけど・・・・・・」
ここで電話を掛けたのがあいぼんで正解だったと思う。
私だったら、つんくさん相手にちゃんと交渉する自信が無い。
511 :
書いた人:03/08/12 18:35 ID:Z8RCppkc
「・・・・・・・・・・・まあ、ズバッと言うと、小川麻琴の件なんですけど・・・
・・・・・・いや、そんな大声出さんでも聞こえてますぅ・・・・・・・
はい、います・・・・・・・・・・・・そーですね、お願いします。そんじゃ、今から行きますんで」
『これでも何か文句有る?』って感じで、あいぼんがまこっちゃんに携帯を叩き返した。
紺野ちゃんは『すごぉい』って感じで感嘆の目を向けて、まこっちゃんは呆気にとられて。
「さっきは出なかったんだよぉ」
まるで私たちに、わざと自分が連絡をつけなかったとは思われたくないように、言い訳がましくまこっちゃんは呟いた。
そんなこと言われなくても、疑いなんかしないのにな・・・
そう思ってあいぼんを見上げると、
彼女は『思いっきり疑ってますッ』って感じの視線を、まこっちゃんに突き刺していた。
512 :
書いた人:03/08/12 18:41 ID:EGC2JLEN
今日はここまでです。
高校の卒業式、担任(女)への寄せ書きに
『傾け!!』と一言だけ書いたS君は元気だろうか・・・
>>496 唐突でごめん。
>>497 私が東人なので、凄い適当に関西弁は書いてます。
次からはsageて書いてくださいね。
>>498 そう言っていただけると、ありがたいです。
>>499 最近あいぼんさんの魅力を再認識してきた私。
>>500 書けば書くほど実体像から乖離していきます。
やったー!!更新されてるー!
最近ずっとレス一番乗りで非常にうれしい。
だんだん小ネタの面白さが増してきたような気がします。
更新乙です〜
sageの存在は今日知りました(^_^;)
以後注意しますm(_ _)m
それにしても、またしても意味深なのが出てきましたなぁ〜(心理テストですか…)
今後の展開も楽しみにしてます〜
(0^〜^)<作者さん更新乙です。
つ日 うーん。いいですねー。雰囲気サイコーです。
続きを読みたいよー。
516 :
前田慶次:03/08/13 02:38 ID:qV6e/c3e
小川麻琴とやらのヘタレ具合、まさにのび太級よ
だがそれがいい
更新乙です。
つんくPは一体何者だ?
518 :
書いた人:03/08/14 19:46 ID:4elOkau1
――――――――――
「・・・・・・大丈夫?まこっちゃん」
「・・・・・・・・・・・・うん」
「つーか、顔蒼いの通り越して、どす黒いで。ホンに大丈夫なん?自分」
「・・・大丈夫」
つんくさんに指定されたマンションのエレベーターは、いい具合に空調が効いていた。
イイとこ住んでるなぁ、とか言いたい所なんだけど、それ以上にまこっちゃんの変化の方が気になる。
さっきから・・・・・・いや、あのベンチからここに向かうタクシーの中、
次第にまこっちゃんの顔色が悪くなっていった。
その度にまこっちゃんを心配して3人のうちの誰かしらが声を掛けるけど、
返事とは裏腹にちっとも大丈夫そうじゃない。
死刑台に向かう死刑囚・・・連行される宇宙人・・・
いや、どっちも見たことないけど、そんな感じ。
『お客さん、吐かないで下さいね』って、運転手さんが心配する気持ちが痛いほど分かる。
519 :
書いた人:03/08/14 19:47 ID:4elOkau1
−チン・・・
私たちの心とは正反対の、軽やかなベルの音がして、エレベーターのドアが開いた。
音も立てずに、スーッと開いた金属の扉の向こうには、見知った影が立っていた。
少しだけ若々しさが見えるその顔は、
プロデューサーとして大成功したことなんか他人事みたいに、疲れきっていた。
つーか何で、室内なのにサングラス掛けてんのよ。
「・・・・・・つんくさん」
「よう来たな。はよ、上がれや」
そう言って廊下を先導するつんくさんが、歩きながら少し不思議そうな顔をする。
「辻と加護と小川は分かるんやけど・・・・・・その子はどういった人なん?」
「あぁ・・・この子はですねぇ・・・・・・」
・・・まこっちゃんと同期の紺野あさ美ちゃん、って言おうとした所を、つんくさんが私の目の前に手のひらを向ける。
突然の事に驚いて、言葉を止めた。
520 :
書いた人:03/08/14 19:48 ID:4elOkau1
「・・・・・・いや、聞かんとこう。茶色い瓶の薬を飲んだんやろ?
せやったら、俺と将来関わりのある人間かも知れんしな。
下手に先のことなんか知らん方がええし・・・・・・君って呼ばせてもらうけど、ええか?」
「その方がよさそうですね」
紺野ちゃんの言葉に、つんくさんは学校の先生みたいな微笑を向けた。
つんくさんが鍵を使った後、何枚かの扉を通される。
まこっちゃんの顔色がいよいよ悪くなってきた。
「・・・・・・この先、何があるんですか?」
「・・・そう結論急ぐなや、加護。こっちも少し聞いとかなあかんことが有るしな。
・・・・・・・・・とりあえず、ここや」
通されたのは、ソファーとテーブルしかない、なんつーか質素を通り越して殺風景な部屋だった。
521 :
書いた人:03/08/14 19:48 ID:4elOkau1
――――――――――
「ふぅん・・・・・・辻も加護も、全然変わんないと思うんやけどなぁ・・・
内面だけは、3年後のってことか」
テーブルの上に並べられたジュースのグラスには、誰も手をつけなかった。
向かいに座ったつんくさんの話に、まこっちゃん以外の私たち3人が身を乗り出す。
まこっちゃんはって言えば・・・・・・何かの論点に来るのが恐ろしいみたいに、身体を縮ませていた。
じろじろと私たちの顔を舐めるように見るつんくさんに、あいぼんはあからさまに嫌な顔をした。
「証明しろっていわれても、無理ですけど・・・確かに、3年後です」
「そう言われれば、中学一年生にしたら、しっかりしとるかもしれんなぁ」
「もーちょっと、自分んとこの人間よっく見といて下さいよ」
唇を尖らせて抗議したあいぼんに、照れくさそうにつんくさんが頭を下げた。
「え?じゃあつんくさんも、あのお薬の効果知らなかったんですか?」
522 :
書いた人:03/08/14 19:50 ID:iGxw1jSU
目を見広げて、慌てたように早口で喋る紺野ちゃんに、つんくさんは優しく微笑み掛けた。
「いや、知っとったで。ただ実際にあれを飲んだ人間を目にするのは、初めてってことや。
・・・・・・とにかく、3年後に君と辻と加護が、あの薬を飲んで、こっちに来てもうた、ってことか?」
「正確には薬を貰ったのはののだけです。まこっちゃん経由で。
うちと・・・・・・この子は、ののから分けてもらって、それを飲んでもうただけですから」
けして『紺野あさ美』って名前を出さないように注意して、あいぼんが続ける。
「・・・・・・手っ取り早く聞きますけど、あの薬、
確かにつんくさんがまこっちゃんに・・・・・・小川に渡したんですよね?」
あいぼんが『小川』と言い直したのを、まこっちゃんはどこか悲しそうに見つめる。
頷くつんくさんに、あいぼんは少し警戒してるんだろう、言葉を選びながら続ける。
「別に・・・・・・その辺の目的なんかええんですけど・・・戻ること、できるんですよね?」
523 :
書いた人:03/08/14 19:51 ID:iGxw1jSU
つんくさんの細い眉がピクッと上がる。
少しまこっちゃんの方を見て、彼女の青白い顔を一瞥すると再び私たちに視線を戻した。
紺野ちゃんはそれを見逃さなかったらしい。
不安げな表情を、さらに強める。
「戻ることは、できるで」
「「「よかったぁ・・・・・・」」」
3人の声が揃ったのは、多分それが心からの言葉だったから。
つんくさんはそんな私たちを見て、前歯を少し出して笑った。
「大丈夫。あの薬も・・・・・・小川をこっちによこした機械も・・・どっちも俺が造ったもんちゃうけど。
まぁ、知り合いに・・・もう死んだけどな・・・頼んで譲ってもらった、ってとこか・・・
これ以上、お前らが知る必要もないやろ。
その・・・譲ってもらった時に、ちゃんと戻し方も聞いてあるから。
その気なら、今すぐにだって3年後に帰れるで」
ホッとする私たちを見て、つんくさんはどこか怪しむような顔をした。
「・・・・・・つーか、何で俺が・・・3年後の俺が、小川にあの薬を渡したのか。
何で小川がこっちに来てるのか。その辺は聞いとらんのか?」
524 :
書いた人:03/08/14 19:52 ID:iGxw1jSU
まるで怒られた子どもみたいに、まこっちゃんは肩を震わせて、
私たちを覗き込むように見つめる。
ファンデーションのせいだけじゃない、顔色は蒼白になっていて。
小動物のような目付きが、びくびくと揺れていて。
膝の上に置いた指が、小刻みに震えていた。
「あのですねぇ、ホントは聞こうかって思っとったんですけど・・・・・・」
まこっちゃんの様子を横目で見ながら、あいぼんは言葉を詰まらせた。
尖らせた口先を少し曲げて、そして両脇の私と紺野ちゃんに、交互に目を移した。
「・・・・・・聞けなかったんだもねぇ」
私の言葉に、つんくさんが『悪い冗談を言うな』とでも言いたさそうに、頬の筋肉を上げる。
「んなわけないやろ。
3年後の俺かて、多分小川にホントの薬の効果なんか言うとらんからな。
お前ら・・・・・・特に辻、お前は、こいつに騙されたんやで」
『騙す』という言葉にまこっちゃんは少しピクッと動いたけれど、
その目は私たちではなく、ただ自分の膝頭だけを見つめていた。
525 :
書いた人:03/08/14 19:53 ID:iGxw1jSU
つんくさんは憂鬱そうに、どこか哀れんだ目で、まこっちゃんを見遣る。
「なあ、小川。言うとったほうがええんちゃうかな?
何でお前がこっちの時代に来てるのか。
何でお前が辻にあの薬を・・・効果も分からんのに、ウソついてまで渡したか。
・・・・・・それと、何で俺がお前からの電話に絶対出んかったか、これはお前も知っときたいやろ?」
畳み掛けるような言葉に、まこっちゃんは顔をサッと上げると、大きく首を横に振った。
つんくさんは目を細めて、どこか軽蔑するような視線を投げかける。
「・・・・・・そうか?例えこいつらが聞きたくない、って言うても、俺は言わなあかんと思うけどな。
俺の考えが3年後も変わってなかったら・・・・・・多分、小川がこっちに来たってのは・・・」
「待ってください!!」
まこっちゃんの大声に、紺野ちゃんもあいぼんも、俯きがちだった顔を上げた。
サングラスの上から、つんくさんの目付きはさっきのままで、まこっちゃんを突き刺す。
「私が・・・・・・私から言いますから。
・・・・・・・・・・3人とも・・・本当にごめんなさい」
まこっちゃんの言葉の後、部屋の換気の音だけが静かに響いていた。
526 :
書いた人:03/08/14 19:58 ID:iGxw1jSU
今日はここまでです。
今更ながら、このスレの
>>18が自分であることに気付きました。
>>513 同一人物だったんですか。
>>514 意味深といえば意味深ですが、あまり深く考えなくても可です。
>>515 続きです。またしばらくシリアスになりますが、宜しくです。
>>516 蛮頭大虎が死ぬ辺りは、何度読んでも泣けてきます。
>>517 その辺を受け入れてもらえるかが、凄く不安。
更新乙です〜
個人的に深読みするのが大好きなんで勝手に妄想しときます
さあ、いよいよ真実の扉が開かれるって感じっすね〜
次回も楽しみにしてます〜^^
更新乙です。小川が三年前に戻った理由とはなんだろう。次回を楽しみにしてます。それにしても、更新ペース早いですね。読者としてはとてもうれしいです。
(0;^〜^)<作者さん更新乙です。
つ日 うーん。い、息が出来ん・・・
つ、続きを・・・
まこっちゃ〜ん!!どうなっちゃうのよー!
更新がこれほど待ち遠しい小説は過去にもないなぁ。
531 :
書いた人:03/08/15 23:29 ID:u03D6QK8
車椅子に座ったまま、どこか覚悟を決めたように一言一言搾り出す。
「腰が・・・・・・こうなった次の日にね・・・つんくさんが来たの。
3年後のつんくさんなんだけど・・・・・・」
そう言ってまこっちゃんはつんくさんに目を遣る。
つんくさんは深くソファーに腰掛けたまま、目を閉じ、腕を組んでじっと話を聞いていた。
「つんくさんがね・・・・・・言ったの。
お前は本当に、モーニング娘。で今まで満足にやってこれたかって」
「酷い・・・・・・」
紺野ちゃんが思わず呟いたその声に、まこっちゃんは何も反応しなかった。
訥々(とつとつ)としたその口調が、どこか諦めを感じさせて怖い。
532 :
書いた人:03/08/15 23:30 ID:u03D6QK8
『モーニング娘。に入って今まで満足にやってこれたか』
これに心からはい、って答えられる人なんて、メンバーにいるんだろうか。
誰だって・・・私だってあいぼんだって、紺野ちゃんだって。
勿論やぐっさんもおばちゃんもなっちゃんも、飯田さんも・・・
多分、あの能天気な梨華ちゃんだってそうだ。
どこかに満足していないことがある。
ましてや、怪我をした直後のまこっちゃんにそんな言葉を浴びせるなんて。
私たちから少し非難めいた視線を送られているのにも、
目を閉じたつんくさんには届いていないようだった。
533 :
書いた人:03/08/15 23:31 ID:u03D6QK8
「でね・・・・・・・・・言われたの。
やり直したくないか?
俺はお前を3年前に・・・あの装置はこの時代にしか繋げないらしいんだけど・・・
3年前に戻すことができるけど、その時に帰って、やり直してみたくはないか、って」
その言葉に、つんくさんは腕を組んで目を閉じたまま、続ける。
「時間を行き来できるからって言うても、自由にどんな時間にも行ける、ってわけちゃうで。
入り口と出口が決まっとる・・・・・・トンネルみたいなもんや。
その穴が3年後と・・・この時代に2つある。
お前らがあの薬を飲んでも、この時代に来るっていうのは・・・
やっぱり何か時間的に強いもんが、2000年の4月にあるんやろうな」
つんくさんの言葉は、耳から入っても、どこかへ抜けていった。
ただひたすら、吐き気がした。
534 :
書いた人:03/08/15 23:32 ID:u03D6QK8
「だけど・・・・・・条件があるって。
お前を過去に送るには・・・・・・誰かにこの薬を飲ませなくっちゃいけないって・・・・・・」
まこっちゃんの声が、しゃくりあげて段々途切れてきた。
瞬きもせず、私たちは彼女を見つめる。
精一杯、まこっちゃんは顔を上げて、私たちを見ようとする。
でも・・・・・・多分、涙に曇って何も見えていないだろう。
「でね・・・・・・どんな薬かって聞いても、教えてくれなくて・・・・・・
ただ・・・・・取り返しがつかないかも・・・・・・って・・・・・・・言われた・・・
けど!・・・私は!・・・・・・やり直したかったの・・・・・・・・・
いつの間にかみんなから離されていって、同期のみんなにも・・・」
隣であいぼんが鼻をすすった音が聞こえた。
泣いてるんだ・・・・・・
その時初めて、自分の目からも涙が出ていたことに気付いた。
535 :
書いた人:03/08/15 23:33 ID:u03D6QK8
涙を拭くことも忘れて、まこっちゃんは私たちに叫ぶ。
「だからね・・・・・・・・・だから!
どうしても戻りたかったの!
まだ自信に溢れてた頃の自分にッ・・・・・・
3年前に戻って・・・それで、私を・・・この時代の私を、失敗しないようにずっと見つめたかった!」
まるで今の言葉に全てのエネルギーを込めてしまったみたいに、まこっちゃんは大きく息を吸った。
分からなかった。
まこっちゃんが私を騙したことが、じゃない。
まこっちゃんがそこまで思い悩んで、そこまで決意していたなんて・・・・・・分からなかった。
「・・・・・・・・・だから」
少しトーンダウンしたみたいで、でも涙を溢れさせたまま続ける。
「だから、辻ちゃんに・・・・・・・・・・ウソついて・・・・・・・・・」
536 :
書いた人:03/08/15 23:34 ID:u03D6QK8
『もういいよ!』
って口に出したくても出せなかった。
でもその代わり、紺野ちゃんが隣にいるまこっちゃんの上半身をきつく抱きしめた。
泣きじゃくるまこっちゃんを胸に抱いて、紺野ちゃんだけは泣かずに、じっと前を見ていた。
「・・・・・・あとは俺が説明した方が良さそうやな」
私たちの様子を、複雑な・・・・・・多分複雑だったんだと思う。
『複雑な』無表情で見ていたつんくさんが、サングラスをかけなおした。
「挫けそうになった時に・・・・・・自分で頑張るか、友達に頼るか、人それぞれや。
モーニング娘。はライバルやけど、それでもお互い信頼してて欲しい。
本当に苦しい時にも、仲間を信じて努力できるか・・・それとも、仲間を踏み台にするか」
多分・・・・・・私の目は、つんくさんを睨みつけていたと思う。
537 :
書いた人:03/08/15 23:35 ID:u03D6QK8
「もしも・・・・・・本当に薬を飲ませたら・・・その時は薬を飲んだ人間に処置すればすぐ治る。
3年後の俺は、誰に薬を渡したか聞いとったはずや。
だから、薬を飲まされよった人間は、すぐに治すつもりやった。
でも・・・・・飲ませた奴は・・・」
つんくさんが次の言葉を吐きかけたとき、その言葉をあいぼんが遮った。
・・・・・・予測は・・・私でもつく。
「せやから・・・・・さっきのまこっちゃんの電話・・・出んかったんですね?」
静かに頷くつんくさん。
つんくさんは・・・・・・多分今のつんくさんも3年後のつんくさんも・・・決めていたんだ。
もし本当にあの薬を他人に飲ませてまで過去に来るようなメンバーがいたら、
その時はつんくさんは過去にその人を置き去りにするつもりだった。
今の今まで気付いなかったんだろう・・・まこっちゃんはハッと顔を上げたけれど、すぐに目を伏せた。
そんな事実よりも、もっと彼女にとっては今は大切なことがあるってことだろう。
「ゴメン・・・・・・・ね」
「最低やな・・・」
今日何度目かのまこっちゃんの謝罪に、あいぼんが吐き捨てるような声が重なった。
538 :
書いた人:03/08/15 23:37 ID:u03D6QK8
今日はここまでです。
16・17両日は更新できませぬので、ご了承を。
場面が場面なので、失礼ですが個別レスは少し控えます。
作者さん更新乙です。
うーん。場面が場面なので
私もAAを控えます・・・
作者さん、更新乙です。
今日はじめて読みました。
くわわ、こんなところで止まるなんて。
それはともかく、この小説の辻の性格、すごい好みです。
541 :
ウナ:03/08/18 10:49 ID:JehzucO4
書いた人さん(・∀・)イイ!小説書きはりますな〜
542 :
書いた人:03/08/18 11:53 ID:DN0FLaJX
「ゴメン・・・・・ね」
搾り出すようなまこっちゃんの声に、あいぼんは一瞥をくれるとつんくさんに向き直った。
「別に・・・まこっちゃんが最低なんて言うてない。
つんくさん・・・・・・なんでそこまでするんですか?
人陥れるような真似して、何が嬉しいんですか?」
泣きながら睨みつけるあいぼんに、つんくさんは少し目を見広げたように見えた。
まこっちゃんを肩に抱き寄せたまま、紺野ちゃんが呟く。
「まこっちゃんも・・・・・・帰してください。
私も、加護ちゃんも・・・・・・直接お薬渡された辻ちゃんだって、多分、そう思ってます」
「・・・・・・加護の言う通り・・・最低なんやろうな、俺は」
紺野ちゃんに少し笑いかけて・・・・・・あのいつもの人を馬鹿にしたような笑いじゃなくって、
少し寂しそうに、つんくさんは口の端だけでそう言った。
543 :
書いた人:03/08/18 11:54 ID:DN0FLaJX
「最初な、こいつがこっちの時代に来て、すぐに今の自分の所にすっ飛んでくと思っとった。
未来変えるんには、早めにせんとあかんからな。
で、さっさとこいつとの連絡切ろうと思っとった」
サングラスをとったつんくさんの目には、大きく隈ができていた。
「せやけどな・・・・・・最初にこいつが言ったんは、この時代に来れたことへの喜びでもない、
自分が騙した辻や、出し抜く事になる同期の奴らへの気兼ねやったわ」
「だから・・・・・・私の所に電話してきたの?」
しゃくりあげながら頷くまこっちゃん。
「何で・・・・・・そう思ってくれるんだったら、こっちに来る前に・・・
辻ちゃんにお薬渡す前に・・・・・言ってくれなかったの?」
紺野ちゃんは大きな瞳を揺らしながら、強くまこっちゃんの両肩をつかんでいた。
でもまこっちゃんは答えられずに、ただ首を横に振るだけで。
544 :
書いた人:03/08/18 11:55 ID:DN0FLaJX
「・・・・・・小川が君に電話してるの見て、考えたわ。
まあ・・・・・少しは自分の友達のこと考える気持ちもあったんかな、って。
それに加護と辻がついてきたのは、ホンマ、凄い偶然やけどな。
・・・・・・・・・そんでも自分がやったことが全部知られてしまうんも、受け入れられたんなら、
まだこいつがお前らを信じておることの証拠かもしれん。
でなかったら、お前らと一緒に俺に会うのなんか、でけんわ」
つんくさんの声に振り向いた紺野ちゃんの目は、いつものとろんとした感じと違う、
強い意志に溢れた目だった。
それに思わず、つんくさんは背筋を伸ばす。
「多分・・・・・・大事なものって・・・なくなっちゃうかもしれない、
って気付いて初めて、大切だって思うんじゃないですか?」
「そうなんかもな・・・・・・」
545 :
書いた人:03/08/18 11:56 ID:DN0FLaJX
つんくさんは人さし指と中指を口に当てて、何かをじっと考えているようだった。
多分、まこっちゃんがこっちに来て、それから考えていることの結論を出そうとしているんだろう。
あの疲れきった顔の意味が、ようやく分かった。
つんくさんだって神様じゃないんだ。
いくら凄い機械を持っていて、とんでもない決意をしたとしても、迷うから。
そう考えると、少しつんくさんを睨んでいたこの目も緩んだ気がした。
「あの・・・・・・」
「なんや?辻」
「私はまこっちゃんに騙されたんですけど・・・・・・
でも、別にだからって、まこっちゃんを憎い、って思わないです。
私だって・・・まこっちゃんと同じことを言われて・・・本当に、誘いにのらない自信なんて無いです」
「・・・・・・・・・・・・」
「つんくさんだって・・・」
「?」
「そうなんじゃないですか?」
546 :
書いた人:03/08/18 11:58 ID:9mEeBTUD
その言葉に、微かにつんくさんがはにかむ。
あいぼんはまだ、つんくさんを睨んでいた。
高校1年生の女の子が背負うには、アイドルって言うのは重過ぎる。
いつ自分が不要とされるか、びくびくしながら、それでも頑張らなくちゃいけない。
そしてどんなに頑張ったからって、結果が付いてくるとも限らない。
「まこっちゃんがしたのは・・・・・・確かにちょっぴり酷いけど・・・
でも、一回だけで全部のチャンスを奪っちゃうのは・・・もっと酷いです」
私の言葉を、あいぼんがつなげる。
「・・・・・・・・・もうまこっちゃんも、分かったんと違いますか?
どんなに辛い時でも、友達がおれば・・・・・・その辛いことを全部解決できんけど、
それでも少しは・・・・・・心の救いになるってこと」
547 :
書いた人:03/08/18 11:58 ID:9mEeBTUD
つんくさんが自嘲気味に笑った。
少し視線を落として、まるで溜息をつくように。
「・・・・・・・中学一年生に諭されると思わんかったわ」
「中身は高校1年生ですって」
紺野ちゃんはまだ涙に震えるまこっちゃんを抱き寄せていた。
つんくさんはそれを見て大きく頷いた。
「・・・・・・分かった。小川は未来に帰す。
3年後の俺も・・・まあ、分かっとったんやろうな、こういう結論になんのは」
その言葉に、明るい笑いで返したのは・・・・・・私だけだった。
あいぼんはまだつんくさんを睨みつけていたし、紺野ちゃんはすこし上の空で。
そしてまこっちゃんは、まだ泣きつづけていた。
548 :
書いた人:03/08/18 12:00 ID:9mEeBTUD
――――――――――
窓の外はもう真っ暗になっていた。
5人で夕食をとった時も、私たちは言葉少なで。
こんなに重苦しい食事は、初めて。
最後にお皿に残った覚めかけのスパゲティーを、私はいつまでも食べることができずに、
ひたすらフォークに巻き続けていた。
「今日はもう遅いから・・・」
聞いているか分からない私たちに構わずに、つんくさんは続ける。
「4人で一緒に泊まっていけや。
明日になったら、辻と加護と君・・・すぐに解除薬を飲んでな」
「あの・・・・・・この子はちょっと遠くから来てるんで、帰らないといけないんです」
「だったら尚更や。ホントなら君は東京にいないはずなんやから。
明日一番にでも、すぐに地元に帰るんやな」
下を向きながら、紺野ちゃんが微かに頷いた。
549 :
書いた人:03/08/18 12:00 ID:9mEeBTUD
――――――――――
4人で布団を並べて、あいぼん、私、紺野ちゃん、まこっちゃんの順に床に着いた。
あいぼんはさっさと壁の方を向いて、動きもしない。
この間お泊まりした時なら、色んなこと話して、いつまでも眠れなかったのに。
誰も話をしないのは、今日一日で色んなことがありすぎて眠いからだけじゃない。
何を話していいのか・・・・・・分からないからだ。
暗闇の中で、外で走る車の音だけが聞こえる。
目を開いていても、見えるのは横で微かに身体を動かした紺野ちゃんだけ。
この暗闇と同じだ。
私たちには見えやしないんだ、お互いが何を考えて、どう感じているのかなんて。
つんくさんにはああ言ったものの、私たちはそこまで『信頼しあえる』友達なんだろうか。
自信が無かった。
550 :
書いた人:03/08/18 12:02 ID:vb/UDwq3
明日になれば・・・・・・
紺野ちゃんは北海道に帰る。
私たち3人はあの薬の効果を無くして、また3年後に戻るはずだ。
そしてまこっちゃんも・・・・・・
帰った後、私たちは今まで通りに接することができるんだろうか?
『今まで』があまりに脆い関係だったって分かった後も、本当に?
「私・・・・・・」
空耳かどうか分からないような、小さな声で呟く声が聞こえた。
まこっちゃんのその言葉に誰も答えない。
紺野ちゃんは横で寝息を立てている。
そしてあいぼんは、まだ壁を向いたままだ。
「私・・・・・・帰れないよ、もう」
あいぼんの背中が、少しだけ震えたのが分かった。
551 :
書いた人:03/08/18 12:03 ID:vb/UDwq3
「だって・・・・・・みんなにあんなことして・・・それでも帰るなんて・・・」
少しずつ涙声になるまこっちゃん。
でもその言葉を、あいぼんが静かに遮った。
「勝手なこと言うなや」
「・・・・・・でも・・・・・・」
「確かにうちらが友達だったかなんて、考えてみれば危ういもんやけど・・・
だったら、これからどうすればいいか、考えんといけないんちゃうの?」
あいぼんの声も、少し上ずっていた。
「それはまこっちゃんだけやないで。うちも、ののも、紺野ちゃんもや」
「そだね」
そう言って紺野ちゃんのほうを見た。
さっきよりも暗闇になれた目は、紺野ちゃんの表情も微かに見て取れた。
まだ目を閉じて、寝息を立てていたけれど、涙の筋が外からの光に照らされて光っていた。
「・・・・・・・・・宿題や、まこっちゃん。
3年後に・・・・・また会った時に、うちらがその成果をどんだけ出せるか・・・・・・な」
「・・・・・・・・・分かったよ」
まこっちゃんのその声は、もう涙声ではなかった。
552 :
書いた人:03/08/18 12:08 ID:vb/UDwq3
今日はここまでです。
あともう少しです。
>>527 一応小説を始めた当初から、決めていた結論です。
>>528 ただ単に、今ヒマだから、というのもあるかもしれませんが。
>>529>>539 レス再開。気を遣わせてごめんなさいです。
>>530 ありがとうございます。そのお言葉は本当に嬉しいです。
>>540 「くわわ」に笑いました。
>>541 ありがとうございます。
「小説書きはりますな」の意味がよく分からないのですが。
場面が場面なんで感想は控えてましたが、やっぱりイイッ━(・∀・)━!
もうすぐ終わってしまうわけですな…。
最後まで頑張ってください〜!
554 :
541:03/08/18 17:55 ID:JehzucO4
>>552 良い小説書きはりますなという意味ですが余計なことをしてしまったため分かりにくくなってしまいいました。
すいませんですた
555 :
書いた人:03/08/18 22:28 ID:DS3wnBmi
―――――――――― 翌朝
つんくさんに今度は白い瓶を渡された。
寝る前にこれを一口・・・・・・どこかで聞いた話だけど。
つんくさんの口調は、深夜のアメリカのテレビショッピングの吹き替えみたいに
インチキっぽかった。
「ホントは今日、お前らはここにいる筈やないから・・・もうここには帰ってくんな。
この子を空港まで送ったら、そのまま自分の家まで帰りや」
見送りに行きたい、って言うまこっちゃんの申し出を、紺野ちゃん自身が断ったのは意外だった。
そもそもまこっちゃんの存在自体がこの時代にはイレギュラーだから、
つんくさんもそれを許すつもりはなかったんだろうけど。
黙って首を振る紺野ちゃんを、まこっちゃんは寂しそうな目で見上げていた。
556 :
書いた人:03/08/18 22:29 ID:DS3wnBmi
あいぼんと紺野ちゃんがタクシーに乗り込んだあと、つんくさんに振り向いた。
最後に・・・聞いておきたかったこと。
「あの・・・・・・つんくさん?」
「どうした?辻」
「昨日『3年後の俺も考えが変わってなかったら』って言ってましたよね?
ってことは、今も誰かに同じこと・・・・・・」
そこまで聞くと、わざとらしくつんくさんは腕時計を見ると、頭を掻いた。
「お!?もう行かんと、その子飛行機間にあわんとちゃうか?」
はぐらかせやがった・・・・・・不満だ。
頬を膨らませた私に、つんくさんは眉を寄せて、くちびるを曲げた。
「本人から・・・・・なんか聞いたんか?
まあ・・・・・・・・・3年後に話したるわ。
俺も今・・・色々頭ん中、整理したいからな」
つんくさんと、なんの話だか分かんなくてきょとんとしたままのまこっちゃんとを残して、
私たちを乗せたタクシーは滑り出した。
557 :
書いた人:03/08/18 22:29 ID:DS3wnBmi
タクシーの中で、紺野ちゃんはずっと無言だった。
私もあいぼんも、何も話し掛けられない。
タクシーのエンジンの音だけが、静かに私たちの鼓膜を震わせていて。
空港についた後も、紺野ちゃんは言葉少なだった。
先を歩く紺野ちゃんの半歩後ろを、私とあいぼんは困り顔で着いて行く。
「あ、もうここまででいいよ」
『お見送りはここまでです』と、ご丁寧に書かれた看板を前に、紺野ちゃんは振り返った。
いつもボーっとしているその目は、今はさらに上の空で。
私たちを目の前にして、心の中は・・・・・・多分、まこっちゃんのことだろう。
558 :
書いた人:03/08/18 22:30 ID:DS3wnBmi
「それじゃ、また・・・・・・」
「気を付けてね」
「うん、未来で・・・・・・ね」
紺野ちゃんは最後にぎこちなく、それでも精一杯微笑むと、くるりと回れ右した。
私たちに一度も振り返らずに、段々とその背中が人込みに消えていく。
紺野ちゃんはこれから眠りに付くまでの間、一人ぼっちだ。
目が覚めれば、また3年後の私たちに会えるけど、すくなくともあと数時間は一人ぼっち。
飛行機のシートに埋もれて、紺野ちゃんは何を考えるんだろう。
自分が友人だと思ってた相手が、心の底を打ち明けてくれなかった、
その想いを、何にぶつけるんだろう。
あの暗闇の中を別にして、私たちを前に紺野ちゃんはここまで泣かなかった。
でも・・・・・・搭乗口まで歩いたあの後姿が、少し震えていたのを私は忘れない。
多分・・・窓の外の雲を眺めながら、紺野ちゃんは泣くのかもしれない。
559 :
書いた人:03/08/18 22:32 ID:YndvMzUS
紺野ちゃんの背中が見えなくなるまで見送った。
こんな人込みにモーニング娘。がいると思わないんだろう、私たちには誰も気づかない。
それがまるで・・・・・・私たちが別の時代から来てるから、
まるで異質なものとして扱われてるみたいで。
「帰ろっか・・・」
「そやな」
そういった私の右手を、あいぼんがぎゅっと握った。
そのままゆっくりと、タクシー乗り場まで歩く。
お互いの顔を見ないけれど、充分気持ちは伝わってくる。
真っ直ぐ前を向いたまま、あいぼんは呟いた。
「なあ・・・・・・のの」
「なぁに?あいぼん」
「友達って・・・・・・なんなんやろ?」
560 :
書いた人:03/08/18 22:33 ID:YndvMzUS
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「自分では友達って思うとっても、相手がそう思ってくれてるとは限らひん。
本当の友達同士って、なんやろうな?」
「多分・・・・・・分かんないんじゃない?」
「?」
あいぼんの歩調が止まる。
色の白い頬が、少し赤ばんでいるように見えた。
私の方に向けたその目は、泣いているわけじゃないけど、濡れていた。
「・・・・・・うん、多分、分かんないんだよ。
だってさ、口では『友達だよ』って伝えてても、
自分の考えてる『友達』と相手の考えてる『友達』が違うかもしれないでしょ?
だったら・・・・・・」
「・・・・・・・分からんな」
「分かんないね・・・・・・」
561 :
書いた人:03/08/18 22:34 ID:YndvMzUS
再び歩き出す。
子ども2人が手をつないでいるのに遠慮してか、すれ違う人たちが自然と道を空けてくれる。
私もあいぼんも黙ったまま。
私があいぼんの友達であるか分からないのと同じで、あいぼんが私の友達であるのかも分からない。
「・・・・・・・・・・・・」
「でもね・・・」
今度は歩いたまま、あいぼは私の顔を見た。
少し泣きそうなその顔は、16歳の私だったら、すぐにぎゅっと抱きしめていたんだと思う。
でも今の私はそうしなかった。
ぎゅっと抱きしめてもあいぼんは分かってくれると思うけど、それでも伝えておきたいから。
562 :
書いた人:03/08/18 22:36 ID:YndvMzUS
「でも・・・分かんないから、私は大切な人にはホントの気持ちで接していきたいと思うの。
もし相手が自分のことを友達だって思ってなくっても、私にとっては友達だから。
それってただの自己満足かもしれないけど・・・・・・
でも、それで友達にウソの心で接するよりは、いいかなって思うもん」
「そやな・・・・・・」
どこか納得したように、再び前を向く。
「私はあいぼんに、そうやって接してるつもりだよ」
あいぼんには遠慮なんかしない。
いつだって言いたいことを言う。
確かにあいぼんはライバルだけど、でも・・・隠し事はしたくない。
私の言葉にあいぼんは照れくさそうにそっぽを向いた。
かすかに見える左の頬が、にやけて上がっているのが分かる。
「・・・・・・言わんでもわかってる」
それだけ言うと、あいぼんはぎゅっと右手を握ってきた。
私も握り返したら、いつもだったら『痛い』って言って手を離すのに、
今日は手をギュッとしたまま、二人で歩きつづけた。
563 :
書いた人:03/08/18 22:36 ID:YndvMzUS
――――――――――
夜。
もう一度、部屋の中を確認する。
「未来の形跡を残さないように、整理しておけ」ってつんくさんに言われたから、それに随分手間取ったけど。
この時期にはまだ使ってなかった化粧品も処分した。
一昨日の夜、あいぼんと紺野ちゃんとで吹き込んだテープも、上から重ね録りをして消した。
新しく服は買わなかったし・・・・・・
「よし、大丈夫かな?」
いざこの時代から出て行くとなると、少し悲しい。
そして少し・・・・・・もったいない。
564 :
書いた人:03/08/18 22:37 ID:YndvMzUS
「そうだ!」
未来へのささやかな抵抗。
ノートを破ると、マジックで大きく書く。
未来を明確に暗示させることなく、それでもそれなりの抵抗・・・
書き終わるとすぐに、ドアに貼り付ける。
よし、ここならよく目立つね。
『揚げパンに注意!!!』
気付けよ、中学1年生の私。
そして少しでも・・・・・・スリムになってくれ。
これだけ大変なことやってきたんだもん・・・
少しはつんくさんも見逃してくれるでしょ。
565 :
書いた人:03/08/18 22:39 ID:YndvMzUS
「さてと・・・」
ベッドの上に座って、白いビンを開ける。
今度も匂いは・・・・・・無いね。
・・・・・・・よし!!
コクッと口に含んだ瞬間、えもいわれぬ味が口内を支配する。
いつ飲んでも・・・この系統の薬はまずいねぇ。
バニラコーラの方がまだマシでしょ、これじゃ。
さらば、中学1年生の私。
そう思うと同時に、もう一つ『本当に戻れるんだろうか?』って言う気持ち。
そんな心の流れもスルーして、そして意識は遠ざかる。
どーでもいいけど、『寝る前に飲む』って言うよりは、
『飲むと意識を失う』の方が正しいんじゃないのかなぁ・・・・・・
566 :
書いた人:03/08/18 22:42 ID:YndvMzUS
何故かすいすい筆が進んだので、今日2回目の更新です。
今度こそ、今日はここまでです。
次回最終回。
>>553 ということで、次でラストです。少し長くなるかもしれません。
>>554 いえ、お気になさらず。『小説書きは』で区切ってしまったので、
私の脳みそがエラーを起こしてしまいまして。
書き込んでしばらくして、ちゃんと理解できました。こちらもスマソ。
交信乙(二回)です。なんかすごいです。読んでいてすごいいろんなことを考えさせられました。加護と辻の友情いいですねぇ。
更新乙です。
いよいよラストですか。
夏休みの読書感想文をこれで書いてみようかな?いいですか?
|ハ@ 更新乙!
|д‘) コソーリ見てましたわ
⊂ じみーに、こんこんええなー
| 最終回はげしく期待してますわ、って誰がは(ry
570 :
書いた人:03/08/20 23:04 ID:iTkx5HM3
――――――――――
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・じ」
?
「・・・・・・・・・辻」
誰?
「・・・・・・やっと気付いたか。俺や」
うわぁ、つんくさん。
「『うわぁ』ってなんや、『うわぁ』って。失敬な」
571 :
書いた人:03/08/20 23:05 ID:iTkx5HM3
何ですか?って、あれ?
もう2003年に戻ったんですかね、私。
「あ〜、そいつはまだや。これはお前の夢ん中やからな」
・・・・・・・・・ってことはつんくさん、私の夢に出てきてるんですか・・・・・・最悪だ。
「・・・・・・素で凹むようなこと言わんといてくれや。
大体これはお前の意識の中なんやから、こっちがギャランティー貰いたいくらいなんやけど」
・・・・・・あ〜、夢って分かったら一気にテンション下がった。
で、何の御用ですか?さっさと済ませましょ。
ちなみにちょっとでも変なことしたら、すぐに夢から叩き出しますよ。
「少しは人の話聞いてくれや。あのな、質問、もう一度したくってな」
質問?
「そう、質問。昔一度した心理テスト・・・・・・もう一度な」
572 :
書いた人:03/08/20 23:05 ID:iTkx5HM3
あ〜、あれ。
あれ、あいぼんも紺野ちゃんも覚えてませんでしたよ。
「むぅ・・・・・・そんなに印象に残んなかったんか。
・・・・・・・ま、ええわ。お前は覚えとるんやろ?も一度答えてもらってええか?」
あれですよね?
『過去に戻れるなら、いつに戻るか』でしたっけ?
「そうそう、それや。確か前やった時は、お前は3年前、って答えとったけどな」
うーん、でも実際に3年前に帰ってみても、結局変えられませんでしたしねぇ、過去。
「世の中そうそう上手く行くもんや無いからな。
で、どうなんや?」
573 :
書いた人:03/08/20 23:06 ID:aTjmLAcu
あれですか?
もしかして過去に戻るってことは、そこで過去を変えると、
未来も色々変わってくるかもしれないんですよね?
「少しは賢くなったなぁ、辻。当たり前や」
・・・・・・消しますよ?
「・・・・・・・・・・・・スマン」
う〜ん・・・・・・だったら・・・別に戻らなくってもいいかなぁ?
「ほぉ?またどうして?」
だって・・・・・・・・・・・・なんでだろ?感覚で思っただけですけど。
574 :
書いた人:03/08/20 23:07 ID:aTjmLAcu
「・・・・・・ま、ええわ。その答えが聞けたから、俺は充分。
じゃ、俺はもう行くで」
いや・・・・・・その前に、その心理テストの答え、まだ聞いてないんですけど。
なんでしたっけね?
・・・・・・ってあれ?もう出てっちゃったんですか?
つんくさん!
・・・・・・つんくさん・・・
575 :
書いた人:03/08/20 23:07 ID:aTjmLAcu
――――――――――
「つんくさん!」
自分の出した声にびっくりして、目が覚めた。
なんだか・・・・・人生で一二を争う最悪な夢を見た気が・・・・・
真っ暗な中で、自分の状況を何とか確かめようとする。
ベッドの中・・・・・・かな。
瞬きを2・3回して、自分の身体が動くことを確かめる。
・・・・・・携帯を・・・・・・・・・枕元にあるはずの携帯に手を伸ばして、すぐに開く。
日付欄を・・・・・
576 :
書いた人:03/08/20 23:09 ID:xM69mSmm
「・・・・・・2003年か」
2003年
まこっちゃんから薬を貰った次の日。
日付を確認すると、私は下を向いたまま洗面所へと向かった。
怖い?
それもある。
私はどうなっているんだろう・・・
577 :
書いた人:03/08/20 23:09 ID:xM69mSmm
鏡の前に立った。
よしッ!
気合を入れると一気に鏡の真正面に向き直る。
「・・・・・・へへ、私だ・・・」
鏡の中にはわたしが・・・そう、2003年の私が立っていた。
あの頃よりも丸くなって、でも少しだけ大人になって。
やっぱりこれが、今の私なんだ。
窓から差し込む朝の光の中で、鏡の向こうの私が『おかえり』と言っていた。
578 :
書いた人:03/08/20 23:09 ID:xM69mSmm
「ッ!!」
突然の携帯の着信に腰が抜けそうになった。
誰からか確認せずに、すぐに出る。
「・・・・・・もしもし?」
【あ、のの・・・・・・起きとったか?】
聞きなれた関西弁。
「・・・・・・あいぼん・・・・・・あのさ、ねえ・・・ちゃんと・・・戻ってる?」
【うちもそれ確認したかったんやけど・・・・・・大丈夫。ののは?】
「うん、大丈夫」
【・・・・・・さっき紺野ちゃんにも電話したけど、向こうも治ってたで。
まあ、起きてへんかったけど】
「そっか・・・・・・良かった」
【でな・・・・・・・】
あいぼんの次の言葉に、私はビックリして携帯を落としそうになった。
579 :
書いた人:03/08/20 23:11 ID:JkRGJbgQ
――――――――――
「・・・・・・しっかし、よくつんくさんもオッケーしたねぇ」
妙に見覚えのある・・・って言うか、昨日見たマンションを見上げる。
いや、正確には3年前に見たんだけど・・・・・・どうでもいいや。
時間は朝7時半。
夜明けの澄んだ空気の余韻が、まだどこか残ってる。
『今から・・・・・・つんくさんに会いに行く!』
あいぼんの言葉に仰け反ったけれど、考えてみれば当然のことだ。
まこっちゃんが・・・帰っているか、一刻も早く確かめたいから。
紺野ちゃんがまこっちゃんの携帯に電話しても、繋がらなかったらしい。
580 :
書いた人:03/08/20 23:12 ID:JkRGJbgQ
「半分寝惚けとったけどな・・・つんくさん。
『いや、あかんて!まだ15歳のお前が、俺にモーニングコールなんて・・・・・・今まで加護の気持ちに気付かんで、ゴメンな』
とか、意味不明なこと言うとったし」
「セクハラ大魔王だ」
・・・・・・嫌だなぁ、その魔王。
紺野ちゃんの言葉に、黒いマントを翻して下卑た笑いを浮かべる某プロデューサーの姿が浮かぶ。
・・・・・・・・・・・・寒気がした。
ちなみに私たちがこの日以来、つんくさんを裏で『大魔王』、と呼ぶようになったのは内緒だ。
581 :
書いた人:03/08/20 23:12 ID:JkRGJbgQ
部屋に迎えたつんくさんは、私たちの姿を見て、ようやくことを察したみたいだった。
私たちにとってはつい昨日のことでも、つんくさんにとってはもう3年以上前の話だから仕方ないか。
「そっか・・・・・・昨日の夜小川を向こうに送ったから・・・
今朝、お前らが帰ってくることになるんやな」
少し眠そうにコーヒーをすする。
「・・・・・・で、まこっちゃんは・・・・・・」
そのゆっくりとした空気に耐えられなかったんだろう。
あいぼんが身を乗り出して詰め寄った。
思わずそれにつられて、私と紺野ちゃんもじっとつんくさんを見る。
582 :
書いた人:03/08/20 23:14 ID:XoLoGVZc
お願い・・・・・・
帰ってきてる、って言って。
とっくに帰ってきて、もうお仕事に向かってるって・・・言って。
「小川は・・・・・・」
つんくさんは少し困ったように、人さし指で頬を掻いた。
「・・・・・・まだ帰ってへん」
まるで揃えたみたいに、一斉に私たちは肩を落とす。
それを見て、つんくさんはふっと優しく笑った。
「あのな・・・・・・でも、別に小川が帰って来るのやめたってわけとちゃうで。
向こうの時代からトンネル開いても、その出口をもう一度見つけないかんから・・・」
「じゃあ・・・・・・今度、そのトンネルが開くのって、いつなんですか?」
焦ったように早口で繋げる紺野ちゃん。
つんくさんも少したじろいでいた。
583 :
書いた人:03/08/20 23:14 ID:XoLoGVZc
「・・・・・・分からん。10秒後かも知れんし、3日後かもしれん」
その言葉に、紺野ちゃんはもう一度肩を落とす。
まこっちゃんはまだ帰っていない。
でも・・・・・・もしかしたら、まこっちゃんはそのまま帰ってこないんじゃないだろうか。
私たちが行った後、心変わりして帰るのを止めっちゃったんじゃ・・・
私たちの落ち込みように、つんくさんも何て声を掛けていいか分からないみたいにおろおろしていた。
下手に『いつ頃には・・・』って言われても、何の慰めにもならないから。
「なあ・・・・・・今はもう、小川を信じて待つしかないやん?」
「そんでも・・・つんくさんは3年前、確かにまこっちゃんを送り出したんですよね?」
「3年前はな・・・・・・でも・・・もしかしたら、過去が変わってもうてるかも・・・」
あいぼんの言葉に、つんくさんは力無く首を振る。
584 :
書いた人:03/08/20 23:15 ID:XoLoGVZc
窓から差し込む朝の光が私たちの心情とは裏腹で、恨めしい。
やっぱり・・・まこっちゃんが帰りにつくまで、ちゃんと見とっておいた方が良かったかなぁ・・・
「とにかく・・・・・・今はお前らも、いつも通りに過ごせ・・・・・・な?
そろそろ仕事行かんと間にあわんやろ?」
掛け時計を仰ぎ見るその目線の先には、もうそろそろいい時刻になっている時計があった。
力なく立ち上がるあいぼんと紺野ちゃん。
「タクシー使ってええから・・・・・・それに、小川が帰ってきたら、すぐ電話するよう言うとくわ」
せめてもの慰めなんだろう、つんくさんが私たちの背中に呼びかける。
でも最後に玄関をくぐろうとした私は、「ちょっと・・・・・・」と呼び止められた。
585 :
書いた人:03/08/20 23:16 ID:5kp6E5Hl
「何ですか?」
「お前の3年前の質問に答えなあかんと思ってな・・・」
「・・・・・・?」
あいぼんと紺野ちゃんを廊下に出したまま、自然と声も低くなる。
手を離したドアは、音を立ててゆっくりと閉まった。
「俺があの薬渡して、過去に戻してやるって言うたの、小川が初めてじゃない」
「やっぱり・・・・・」
「ああ、もう一人・・・・・・安倍にやった」
安倍?
安倍・・・・・・って・・・・・・・なっちゃん?
「他にどの安倍がいると思う?」
どうやら思考は読まれているみたいだった。
586 :
書いた人:03/08/20 23:17 ID:5kp6E5Hl
「3年前・・・丁度お前らが入ってきたくらいかな?
お前かて・・・・・・なんとなく分かるやろ?あいつがどんだけ思い悩んでたか」
遠い目をして語るつんくさん。
彼の瞼には3年前の情景が浮かんでいるんだろう。
でも私にとっては、つい昨日見ていた風景。
確かになっちゃんは・・・あの時期・・・・・・
私にはよくは分からないけれど、それでもきつかった時期だってことだけは分かる。
「それじゃあ、他にも誰かあの瓶の薬を飲んで、昔に行っちゃったんですか?
で、なっちゃんも一度どこかへ戻ったんですか?」
「いや・・・・・・あいつは小川みたいにはせんかった。
あいつのおもろかったんは俺を騙そうとしてな、飲ませてへんのに飲ませたって言おうとしたんや。
そのために、色々不思議なことがあるたんびに、人に『それってあの薬?』って考えとったわ」
「・・・・・・・・・・・・あ」
587 :
書いた人:03/08/20 23:18 ID:5kp6E5Hl
ほんのちょっぴり。
3年前の私に戻っていた時だから微かにしか覚えてないけれど、舞台裏でのやりとりを思い出した。
【あのね、のの。もしかしたら・・・ホントにもしかしたらだけど、ののと・・・・・・加護、どこかで茶色・・・】
・・・・・・あの時だ。
「なんや?辻。もしかして心当たりでもあったんか?」
「・・・・・・エヘへ」
笑って誤魔化した私に、首をかしげながらつんくさんは続ける。
「・・・・・・それで、結局分からんかったけど・・・あいつは誰にもあの薬を飲ませんかった。
別に他の奴に飲ませんのが気が引けたって訳とちゃうで、
多分・・・・・・自分の渡した薬を飲んでくれる相手がいるか、自信がなかったんやと思う」
「・・・・・・・・・結構キツイですね」
まこっちゃんはまだ、騙す相手がいただけ幸せだったのかもしれない。
588 :
書いた人:03/08/20 23:19 ID:5kp6E5Hl
「それじゃなっちゃんは、戻ること諦めたんですか?」
「いや・・・・・・それでも諦められんかったんやろうな。
『いつか誰かに飲ませます』って言うて、そのまま・・・3年くらい持ったままやったわ」
「今も?」
つんくさんが微かに笑ったように見えた。
「・・・・・・・・・いや。この間返しに来たわ。
もう要らんと。もう今のままで充分だから、やり直したくないから・・・・・・って」
「・・・・・・・・・」
「そんだけ自分のやってきたことを振り返る余裕が出て来たんかもしれんし・・・」
「それに?」
「・・・・・・・・・多分、色々話せる仲間ができたんと違うか?」
つんくさんの顔は、どこか満足げで・・・・・・それでいて寂しげだった。
589 :
書いた人:03/08/20 23:20 ID:5kp6E5Hl
「さ!はよう行かんと、間にあわんで。
このこと・・・・・・あんま人に言うなよ。お前が気にしとると思うたから、言っただけなんやから」
大きく礼をして、ドアノブに手を伸ばす・・・・・・
そしてもう一度、私はつんくさんに振り返った。
もう一つだけ・・・・・・
「あ!そうだ・・・つんくさん」
「なんや?まだ分からんことあるんか?」
「いえ・・・・・・あの・・・ずっと前、心理テストしてくれましたよね?
その答え、忘れちゃったんで聞きたいんです」
「心理テスト・・・・・・おう、あれか?いつに戻るか?ってやつ?」
少し考えてからそれでも思い出したのは、流石は張本人ってところだろう。
間を置いてから、もったいぶるようにゆっくりと口を開いた。
590 :
書いた人:03/08/20 23:21 ID:5kp6E5Hl
「あれで戻りたい時間ってのはな、今の自分にどんだけ満足してるかや・・・・・・
遡りたい時間が長ければ長いほど、今の自分に納得行ってない、ってことかな」
「そうなんだ・・・・・・あの、それじゃ・・・・・・まこっちゃんは・・・・・・」
「多分昨日これ聞いたら、喜んで何年前に戻りたい!って言うんやろうな」
昔まこっちゃんは確か、『将来必要になったら使う』って答えてた。
昨日の時点では、多分まこっちゃんはちっとも今に納得なんかしてなかっただろう。
少し考えて、私はドアを押し開けた。
あいぼんと紺野ちゃんが、心配そうに廊下で腕組みしていて。
身体を半分だけ外に出して、つんくさんに振り向く。
「こっちに戻ってきたら、絶対、もう過去になんか戻りたくない、って言わせてみせますよ」
「・・・・・・・・・!!」
少しビックリしたように口の端を上げた後、もう一度つんくさんは微笑んだ。
591 :
書いた人:03/08/20 23:22 ID:5kp6E5Hl
――――――――――
仕事場についたあとの私たちは、早足で楽屋に急いだ。
やっぱり少し、怖かったんだと思う。
何が変わって、何が変わっていないのか。
ホントにみんな・・・・・・モーニング娘。のままなのか?
でもそんなの、余計な心配だった。
私もあいぼんも紺野ちゃんも、モーニング娘。のままだった。
変わってたことと言えば、私が昔ほどおやつについてキツイ注意を受けないこと。
よくよく見てみると、あいぼんの前髪の前線が結構がんばっていたこと。
紺野ちゃんが先輩たちから、娘ヲタとしての扱いを受けていたこと。
・・・・・・・・・まあ・・・許容してもいい範囲の変化だった。
って言うか、あんたたち、過去にいる間に何やってたんだよ。
そんな変化の中、やっぱりまこっちゃんもモーニング娘。のメンバーだった。
それを聞いたとき、私たちは歓喜の声をあげたけれど・・・・・・
でもこの日、まこっちゃんはお仕事に現れなかった。
592 :
書いた人:03/08/20 23:23 ID:5kp6E5Hl
お仕事が終わった後、私はなんだか無性に屋上に行きたくなった。
重い扉に体を預けて押し開く。
梅雨の合間、キツイ午後の陽射しの中で、屋上にはよく見知った二つの影が並んでいた。
「辻ちゃん・・・」
「ののか・・・・・・」
この世界には、なるべくしてなっていることがあるのかもしれない。
私の体重が増えちゃったことも。
紺野ちゃんが補欠でモーニングに入ったのも。
あいぼんのまぶたがだんだん二重になっていったのも。
そして、私たちが昨日に引き続いて今、この屋上に集まっていることも。
593 :
書いた人:03/08/20 23:24 ID:5kp6E5Hl
あいぼんはまこっちゃんが最後まで姿を見せなかったことが、ショックみたいだった。
『怪我の治療』ってマネージャーは言ってたけれど、
本当はまこっちゃんが見つからないのを誤魔化してるって思っているらしい。
「やっぱり・・・・・帰ってくんのやめたんかなぁ?」
「でも・・・あの夜、宿題やってくるって言ってたけど・・・」
私たちのやりとりを、紺野ちゃんが不意に制した。
「携帯も通じないままだし・・・・・・どうなんだろう?
帰ってきてそのまま病院に行ってるだけかもしれないし、もしかしたら帰ってきてないのかもしれない」
紺野ちゃんの表情は痛々しかった。
・・・・・・親友なんだもんね。
あんなことをされても、やっぱりこの世界でも、まこっちゃんと紺野ちゃんは親友同士。
なんだか少しだけ、羨ましかった。
私の視線に気付いたのか、紺野ちゃんはちょっと照れた風に俯く。
長い前髪がその表情を覆い尽くしてしまう。
次第に私たちは無口になっていった。
594 :
書いた人:03/08/20 23:25 ID:5kp6E5Hl
『あの時やり直せたら』
誰だって考えることだと思う。
事実私だって、そんなの数え上げれば切りが無い。
私の脳みそに詰まっている想い出の中には、まだ私の胸を苦しめるものが幾つもある。
・・・・・・でも
そんな辛い想い出も、もちろん楽しい想い出も、全部あるから今の私があるんだ。
屋上を撫でる初夏の風は、今日も澄んで。
私たちは肩を並べて、遥か遠くのビルの群を見ていた。
595 :
書いた人:03/08/20 23:26 ID:fTJcKahW
あの日私がマニキュアを倒したから。
あの日紺野ちゃんが怪我をしたから。
あの日あいぼんが泣きながらお化粧が嫌だといったから。
そしてあの日、まこっちゃんがぎっくり腰になったから。
だから今、私たちはここにいる。
もう私たちは分かっていた。
辛い過去も、全ては今のため。
じゃあ、今に納得がいかなかったら・・・?
そう、これからがんばっていけばいいんだ。
・・・・・もちろん、まこっちゃんも分かっているはず。
596 :
書いた人:03/08/20 23:27 ID:fTJcKahW
ギィィ・・・・・・・・・
背後で空耳みたいにぼんやりと、鈍い音がする。
扉が・・・・・・開いた?
私たちはぼんやりとその音の方に振り返った。
「まこっちゃん・・・」
紺野ちゃんが夢でも見ているように呟く。
そこにはまこっちゃんが気恥ずかしそうに立っていた。
薄い生地のスカートの下から、しっかりとした二本の足が見える。
車椅子なんて使わない、私たちが見慣れたまこっちゃん。
「・・・・・・みんな、その・・・・・・」
そこまで口にしたものの、言いよどむ。
私たちが帰った後、それでも帰ってくるまでにしばらく掛かったんだろう。
まこっちゃんの腰はもう、車椅子なんかいないくらいにまで回復していた。
597 :
書いた人:03/08/20 23:27 ID:fTJcKahW
入り口の所で立ち止まったまま、まこっちゃんは両手で顔を覆う。
離れていても聞こえてくる、嗚咽。
もう・・・・・・分かってくれたんだね?
言葉で伝えられないなら、態度で示せばいいんだ。
まこっちゃんがすればいいのは、ただ自分の思うがままに、私たちに接することだけ。
今は思い切り泣いておきたい・・・・・・それが気持ちなんだね。
と、紺野ちゃんがつかつかと歩み寄る。
私とあいぼんもそれにつられて、まこっちゃんの下に駆け寄った。
598 :
書いた人:03/08/20 23:29 ID:aTjmLAcu
紺野ちゃんが優しく声をかけてあげるのか、
それとも嗚咽に震えるその肩を抱きしめるのか、
それとも茶色い髪を優しく撫でてあげるのか。
私には分からない。
でも・・・私は紺野ちゃんの選択を、心から受け入れられるだろう。
599 :
書いた人:03/08/20 23:29 ID:aTjmLAcu
もし変えられない出来事が存在しているとしても。
私は精一杯、今現在をがんばっていけばいい。
もちろん未来に、諦めを持っているわけじゃない。
ただ過去にこだわることを止めただけ。
今頑張れればきっと未来でも、納得がいくはずだから。
それに、こんなに素敵な仲間たちがいるんだから・・・
紺野ちゃんがまこっちゃんの肩に手をかけた。
「あさ美ちゃん・・・・・・」
涙に濡れた瞳をまこっちゃんが向ける。
ふっ・・・と、紺野ちゃんが微笑んだように見えた。
600 :
書いた人:03/08/20 23:30 ID:aTjmLAcu
―― エピローグ
601 :
書いた人:03/08/20 23:32 ID:B/QLJyIY
翌日
「おはよぅ〜、のの。遅かったね」
「えへへへ・・・・・・おはよ、よっすぃ〜・・・・・・あ、今日も買ってあるんだ。見せてぇ」
よっすぃ〜がマネージャーにナイショで買ってきたスポーツ紙を拝借。
「小川麻琴(15) やはり完全復帰には遠い?
腰部捻挫が再発!!更なる休養、と事務所発表」
ゲンコツくらいの大きさの赤い文字が躍っていた。
あいぼんが私の横から紙面を覗き込み、隣で朝からお菓子を頬張る紺野ちゃんに非難めいた眼差しを送る。
「やっぱ、治ったばっかの人間に正拳突きは酷かったんちゃう?
しかも思いっきりみぞおちに入れるって・・・
まこっちゃん、衝撃で腰再発してもうたで」
「いいの!!私がやらなくても、どっち道ぎっくり腰で全治あと1週間だったんだから!」
お菓子で膨らんだ頬をますます膨らませて、紺野ちゃんはその想いをお菓子にぶつける。
あの時正拳突きをした紺野ちゃんは、そのすぐ後にまこっちゃんを抱き寄せた。
紺野ちゃんなりの・・・蹴りのつけ方だったんだろう、多分。
602 :
書いた人:03/08/20 23:33 ID:B/QLJyIY
結局まこっちゃんも、未来は変えられなかったんだなぁ・・・
あんな方法じゃなくって、地道に頑張んないとダメなんだよね。
二人のやりとりを横目で見ながら、私は朝のコンビニで仕入れたポッキーさん2号の封を開けるのだった。
・・・・・・痩せる努力?
まあ、そのうち・・・・・・ね?
603 :
書いた人:03/08/20 23:33 ID:B/QLJyIY
横目でなっちゃんを見る。
なんだか楽しそうに、やぐっさんや飯田さんとおしゃべりしてる。
お薬飲ませる相手探してる間に、とっても大切な相手見つかったんだね・・・・・・・・・
私の視線に気付いたのかな?
「もぉ、のの。そんなに見られると照れるべ」
そう言ってなっちゃんは笑っていた。
なんだかその表情が、つい昨日見た3年前のなっちゃんと全然違ってて、それがとっても可笑しくて。
私は舌を出して笑った。
604 :
書いた人:03/08/20 23:35 ID:V+SfW0b9
【過去に戻れるとしたら、いつに戻るか?】
605 :
書いた人:03/08/20 23:35 ID:V+SfW0b9
今ならなっちゃんは戻りたくない、って言うと思う。
私だってそうだ。
まこっちゃんは・・・・・・どうだろう?
つんくさんとした約束。
もうまこっちゃんが戻りたいなんて思わないように、友達の私たちが今できること。
ううん、今一番しなくちゃいけないことは・・・と・・・・・・
立ち上がった私は、まだ言い争いを続けている二人に向き直る。
これから言う台詞は、何が起こったって絶対に変えられない、変わらない言葉。
もう心に決めたんだから。
「あいぼん!紺野ちゃん!まこっちゃんのお見舞い・・・・・・行こうよ!!」
606 :
書いた人:03/08/20 23:36 ID:V+SfW0b9
「昨日見た日々」
おわり
607 :
書いた人:03/08/20 23:38 ID:tLQ/VIxK
―――― あとがき
「昨日見た日々」は終了です。ここまでお読みいただいて、ありがとうございました。
SFな要素の匙加減が非常に困る所でしたが、あくまでも娘。小説ですので、
タイムトラベルetc.はあくまでも脇において読んでいただけると何よりです。
確かに読み返してみますと、その辺の説明が甘い所もあります・・・その辺りはご容赦を。
今回は辻を狂言廻しに使いました。
私の中の辻希美像は「色んなことたくさん考えてるけど、口に出していけない」、というものです。
実物より賢すぎ、とかはまあ・・・・・しょうがないかな、と。
・・・・・・長くなるので次レスに続きます。
608 :
書いた人:03/08/20 23:39 ID:tLQ/VIxK
ところで、またしばらく潜伏させていただきます。
来年度からドラスティックな環境変化が生まれますので、再見はかなり先かと思われます。
スレを立てるまでもない質問@愛の種17
http://ex2.2ch.net/test/read.cgi/ainotane/1056376554/ の517様、917様。
テレビジョン2000年第26号、日経エンタテイメント!2000年6月号
心理テストを勝手に引用させてもらった『それ行けココロジー』の・・・多分、2巻。
レスを下さった全ての皆様。
ROMって読んでいただいた、皆様。
本当に感謝しております。
それでは、感想お願いします。では。
更新&脱稿お疲れさまです
期待通りのオチ、期待以上のオチがあって最後も楽しめました
ありきたりだけど、充電して準備が整ったら次回作期待してます
読み終わりました。
痛い書き込みしてしまいそうなくらい、おもしろかったです。
一番印象に残ったのは、
薬を渡す相手すらいないなっち、でしたが。
これ読んで高1組4人とも好きになりました。
ののは、でも今はあの頃並みに痩せてると思うよ……
ってのはヲタの欲目ですか。
次回作楽しみにしてます。
お疲れ様でした。
いやぁ、よかったです。
緩急あって飽きさせない連載でした。
次回作楽しみにしてます。
|ハ@ いままで乙!素直にええ話やったで
|д‘) アホみたいにホーへーハーとか言いながら読んでましたわ
⊂ 確かにののは賢過ぎやったけどそんなののもステキやん
| 次回作のんびり期待してますわ
613 :
あ:03/08/21 02:41 ID:6da/CDlc
(/^O^)/{こ〜んば〜んわ〜ん
(◆) (●) (■) (★) (▲)
な〜のねんのねんのねんのねん(- -メ)
s
(0^〜^)<作者さん、作品完結乙です。
つ日 うーん。楽しませてもらいました。
キャラクターに感情移入出来ましたよ。
意外なストーリーの連続もとても面白かったです。
1ヶ月以上に亘って連日のように更新されたことには
本当に驚きます。次回も楽しませてください。
作者さん乙です!
たまーにこんな素晴らしい作品に出会えるので羊はやめられない!
心理テスト、なかなかいいスパイスでした
某所の紹介で拝読しました。
テーマが実は今の悩みにぴったりだったので
感情移入をして読むことができました。
乙津かれさまでした、何時になるかはわからないですが
次回の作品を楽しみにさせていただきます。
脱稿おめです。
とても味わい深い作品でした。ホントに更新が楽しみでした。
次回作も楽しみにしていましたが、そういう事情なら気長に待ち
たいと思います。
また会える日を楽しみに。
更新乙でした〜
時間を飛んで、仲間というものを再認識する…。
読んでて心に響くものがありました。
自分も小説書きたくなってきました。
次回作も楽しみにしています。
なんかみんないろいろいってるから自分はこれだけ
最高!(その証はレス数にある)そしてお疲れさま。
脱稿乙です。
色々と自分でも考えさせられる名作だと感じました。
のののキャラも良かったけど、加護ヲタの自分には
あいぼんのしっかりした部分(反面、脆い部分もよく見えた)が
印象に残りました。
御苦労様でした。
作者さん乙彼様です。
今一気に読ませていただきました。
よかったです。もう、ただ、この一言。
これから、作者さんの他の作品を読んでみようかと思います。
次回作も楽しみに待たせていただきます。
久々に良い物に触れさせていただいて、ありがとうございました。
作者さん乙〜!
完結、おめでとうございます。
またいつかお会いできることを
楽しみにお待ちしておりますです。有り難う御座いました。
623 :
ななし:03/08/23 23:46 ID:uvscLQiE
@ノハ@
⊂´⌒つ‘д‘)つ マターリ
そろそろn日ルール適用になるのかな?
保全
@ノハ@
⊂´⌒つ‘д‘)つ 120日やから、9月25日くらいやな
627 :
書いた人:03/08/26 01:06 ID:gnGutJ/G
皆様ご感想ありがとうございます。
私がネタ書きだったら、スパーンとお礼のネタとかできるかもしれませんが、
生憎そういう冴えたシナプスを持っておりませぬので・・・
たまには個別に長くレスでもしてみますかぁ。
一ヶ月もこんなことしてて疲れたので、作者の息抜きだと思ってお許しください。
馴れ合いウゼーとかも仰らないで下さいね。
ということで、なんだかレス数が進んでるな、と思ってこちらを開かれたお方。
ただの感謝レス集ですので、小説の更新ではございません。
あしからず。
628 :
書いた人:03/08/26 01:11 ID:gnGutJ/G
>>609 オチは何気に考えていたと申しますか・・・
実は小説の5回目を書いた辺りで、既に最終回だけ書いておりました。
いつもラストシーンから書く性格ですので・・・
とりあえず、ちゃんと型にはなったかなぁ・・・と安堵しております。
629 :
書いた人:03/08/26 01:13 ID:gnGutJ/G
>>610 いや、ののさんは充分スリムだと思ってますよ。
むかしは子ども体型だったって言うのがあると思いますので・・・
痩せ薬を分けた三人とも、今くらいが丁度いいかなぁ、と。
ホントにそう思ってるのか、私の目が慣れただけなのか、どっちでしょうね。
ありがとうございました。
630 :
書いた人:03/08/26 01:16 ID:gnGutJ/G
>>611 先日は無機質なレスで失礼致しました。
どうしてもですねぇ・・・ギャグっぽく行こうと思っても、
最後はそれなりになってしまうんですよねぇ。
ギャグだと終わらせ方が分からないって言うのもあるんですけど。
・・・ということで、ありがとうございました。
こちらもそちらの御更新、楽しみに生きております。
631 :
書いた人:03/08/26 01:19 ID:gnGutJ/G
>>612 ホントにですね、ののさん賢すぎでしたし、あいぼんさん論理的過ぎでしたし。
独白調で書くには、紺野さんが一番楽だと気付きました。
あいぼんさんも最初の方から、ありがとうございました。
しかし28回も更新していたとは・・・我ながらヒマだったんだなぁ。
632 :
書いた人:03/08/26 01:22 ID:gnGutJ/G
>>614 よし子さんも、毎回のレスに励まされました。
展開は結構途中で決めながら、って感じだったんですけどね。
しかしこの更新に使ったエナジーを、もっと他のことに使えなかったんだろうか、私。
ワードちゃんによると、6万字くらいだそうです。
・・・・・・論文一本書けたなぁ。
633 :
書いた人:03/08/26 01:24 ID:gnGutJ/G
>>615 心理テストヲタ、ってくらいにそーいうのが昔から好きでして。
思いつきで入れてみたんですが、なかなかいいキーワードになりましたね。
無駄に本、読んでおくもんですねぇ。
ご感想ありがとうございました。
634 :
書いた人:03/08/26 01:27 ID:gnGutJ/G
>>616 お読みいただいて、ありがとうございます。
あなたの味方はあなただけじゃなくって、沢山いると思います。
どんな悩み事であったって、絶対そうだと思います。
だから一人で抱え込まずに、吐き出してみることも一助かと。
私がかなり悲観論者なんで、あんまりお助けにならずスマソ。
635 :
書いた人:03/08/26 01:29 ID:gnGutJ/G
>>617 何だかんだ言って、頭がおかしいんじゃないかって、ペースでしたね。
小出しにする感じになってしまったのと、
少レス更新のくせに、ちっとも校正がなっとらんかったのが反省点ですね。
私も、またお逢いできる日を楽しみにしてます。
ありがとうございました。
636 :
書いた人:03/08/26 01:33 ID:9jocBaCZ
>>618 是非!書いてみてください。
ストーリーだけ思いついても、なかなか筆が進まないかもしれません。
そーいう時は、会話文だけ先に書いてみるのも(・∀・)イイ!!かもです。
実はまこっちゃん帰ってこないバージョンを、一瞬真剣に考えたこともあったりします。
ありがとうございました。
637 :
書いた人:03/08/26 01:36 ID:9jocBaCZ
>>619 前スレに引き続き、お世話になりました。
実は最後についたレスの数を見て、
「こんなに読んでる人いたんだぁ」と思ってしまったはナイショです。
ありがとうございました。
638 :
書いた人:03/08/26 01:40 ID:9jocBaCZ
>>620 設定としては・・・
あいぼん→行動派ただしすこし感情的
紺野さん→クレバーやや受動的
ののさん→毒を吐きつつ仲間を肯定
でした。
一場面の登場人物が多くなってしまう所があり、上の設定を活かして書けたかが、
かなり疑問なんですが・・・そう言っていただけると、ホントにありがたいです。
639 :
書いた人:03/08/26 01:42 ID:9jocBaCZ
>>621 何だかんだ言って、いつもSFな感じなのは好きだからでしょうね。
一気読みされても、ちゃんと繋がりは保てていたのでしょうか?
次回はすっごい先です、と一応言っておかないと。
是非他のも読んでみてくださいね、ありがとうございました
640 :
書いた人:03/08/26 01:43 ID:9jocBaCZ
>>622 ありがとうございます。
ちゃんとプロット決めないとなぁ、という重要性を学びました、今回。
いつかまた、お会いしましょう。
それまでに羊があればですが。
641 :
書いた人:03/08/26 01:47 ID:nQd+LglE
∋8ノハつヽつ ))
__川ノ・-・)ノ < ということで、皆様ありがとうございました。
.(__ /
>>624-626に敬意を表して、こんな形で。
\_) ))
@ノハ@
⊂´⌒つ‘д‘)つ 馴れ合いウゼー。・・・ごめん、うそやで
@ノハ@
( ‘д‘) < さて、n日まであと1ヶ月やな〜
⊂´⌒∪-∪ さすがに再々利用しようって人もおらへんやろう
(( @ノハ@
/⌒( ‘д‘) < また、保全がてら遊ぶか
⊂,,)^∪-∪
@ノハ@
( ‘д‘) < マターリと
(∪ )
(_)__)
こんなイメージ
6:30
┌────―┐
|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.||
|| やったぁ――――――――――!!!!
/ノハヾヽ ノハヽ .||
.从从∩ (´D`∩||
.ノ ノ 丶 ..||
( ノ二二二二⊃
∪∪ 〉____ノ
ノノハヽ
+ 从 ´D`) +
(~)ヽVソi) +
+ | |;;*;;*;;|
∪ノハヽゝ +
+ / ,イ |
(__ノ(___) +
(〜゜◇゜) ぽかーん
( ゜▽゜) !
(0^〜^) カッケー
_.
|.0|
|0.|
|.0|
|0.|
|||||
(マネージャ) < お菓子食べ過ぎ
|||||
(つ||つ
|||||
|||||
|||||
|||||
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|||||
|||||
( ;´D`;)つ ションナ |||||
|||||
。。。∪∪
"''- ,,. . '-,,_ | .|'-,, |\ i:;li:li:;| _______
|. : . " |//.| | \| ;li;li:| ._________ | /::::::::::::
.゙ / / | |"''- , . "-,| | |'-; .|\ :;| .___|____|____| |TTTTTTTTT./::::::::::::::
-,,,_ | | // | . . . |_~'' .| \ ゙._______ | ̄ ̄ ̄ ̄~ /:::::::::::::
,,,_ "'-'. ゙ | // | |'-,,. |`-,,\| | || | .___|____|____| | [三三三 /:::::::::::/
 ̄"''- ,,_ '-- ,,_| | | |;;;;; ;;;i | | || | ._________ | /::::::::/ _
:::| "''-- ,,,__ "-'. |; ;;;;;;;i | | || | .___|____|____| | [三三 /::::/ _-'''
:::| |"'''-- ,,, ゙̄''- ,,,__|;;; ;;;;;i | | || | ._________ | <::/ ,-" || ixX
:::| | i'| |「 |- ,,_~''- _ ,, . || | .___|____|____| | [三三 |-'ii: : ::::|| ixX
:::| | ゙// .i:| || 」 i|.|~"''';; iニ==;i ______ .┌┐ :| | |i : :|| ixX
:::| | i:| |:::: i|.| || | ii | ||| └┘ :| [三三 | |i || ixX
:::| |. ,-―-,---、゙:: i|. ,、,、::| ii |┌┴┴┴┐_________| ,---、!゙::|i:::=ニ|| ixX
 ̄|| ̄\,-―'ー―;ー'---、 (;・・) ; ; ; _|:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ノノハヽ.|i || ixX
ii ̄ ̄~ ̄`) ,- 、_;,_,-,、)( y )~ "~__---:::::::::::::::::::::::::::::/ ̄i ∩´D` ) うぷぷ
ii_,,,,-ー(( ):::`ー'::::::::::::_`'-- :UU '"::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/. i ヽ ) \ .i| ixX
. ̄:::::::::::::::::::: ''' ̄:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/ i (__(_) \ ::xX
/ |
/ │
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|| 0 | /
|| .|/
|| ./ きっと飲んでね!!絶対だよ!約束だよ!
||/ 〆〃ハハ
./ ∬∬ `▽). ノノハヽ
┓ つ[]⊂(´D`;) . o 0 (マコ必至だな )
r'⌒ヽ┓つ ヽ ∪)
ゞ、_,ノ=() (__(_)
┌―――┐
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| 0 .|
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ハハヾヽ ――――――――――┴―――┴――――――――――――――――
(▽´∬∬ ≡=― ノノハヽ
( ∪ ┏ ≡=― (´D`;) . o 0 ( 速ッ!あんなにスピード出るんだ )
⊂┏r'⌒ヽ≡=― ( )
()=ゞ、_,ノ (__(_)
/ |
/ │
|| .| ノハヽo∈
|| .| /(・〜・o川 < あれ?こんな所で何してるの?
|| 0 | / ⊃◎⊂)
|| .|/ (__(_)
|| . ノノハヽ
||/ (´D` ) ボ――ッ
/ ⊃[]⊂)
(__(_)
川o・-・) < 変ですねぇ・・・・・・・・・
( ´D`) < 変だよねぇ・・・・・・・・・
@ノハ@
( ‘┏┓‘) < そうですわたしが変な加護ちゃんです!
変な加護ちゃんだから変な加護ちゃん!!
川;o・-・) < ・・・加護さん
(;´D`) < ・・・あいぼん
@ノハ@
( ‘┏┓‘) < だっふんだ
とりあえず保全してみる。
【間違った想像をしてみよう】
「あさ美ちゃん・・・・・・」
涙に濡れた瞳をまこっちゃんが向ける。
ふっ・・・と、紺野ちゃんが微笑んだように見えた。
フッ
川o・ー・) Σ(;´◇`;∬∬
654 :
名無し募集中。。。:03/09/05 20:14 ID:PykDPW42
655 :
h:03/09/06 04:54 ID:ceHZi2Ak
656 :
書いた人ふぁん:03/09/06 07:57 ID:veiKEM4J
最高!一気に読んじゃった。
ほぜむ
658 :
名無し募集中。。。:03/09/09 23:39 ID:gHKS1Leu
次を期待age
659 :
書いた人:03/09/09 23:53 ID:jY6/4KYQ
いや・・・
>>658氏に言われたからじゃないんですが・・・
最近暑くて眠れないのと、ちょいと思いついたので話を書こう、って思ったわけで。
潜伏します、って言ったあとに散々現れるのがカッコ悪すぎなのですが。
お間抜けな作者でごめんなさいです。
今回は一週間くらいで完結・・・の予定で。
それではあと少しだけ・・・お付き合いください。
660 :
書いた人:03/09/09 23:55 ID:jY6/4KYQ
「はい、のんつぁん・・・ポッキー」
「うおぉぉぉ・・・・・・・ありがとぉ!紺野ちゃん!」
私の差し出したポッキーに、そのまま喰らい付くのんつぁん。
いやぁ・・・かわいいなぁ。
もう1本あげちゃんだから。
最近の私、紺野あさ美の密かな楽しみはこれ。
楽屋でのんつぁんと一緒にお菓子を食べること、やっぱこれしかない。
のんつぁんと一緒に食べるお菓子は、数十倍(当社比)美味しい気がする。
やっぱり美味しそうにものを食べる人と一緒だと、自分まで美味しくなっちゃうのだ。
一本、また一本とポッキーを蹂躙していくのんつぁんに目を細めていると、
「アウトオォォォ―――――!!」
背後で突然起こった絶叫に、腰が抜けそうになった。
661 :
書いた人:03/09/09 23:55 ID:jY6/4KYQ
【ジャッジメント・ジャッジメント】
662 :
書いた人:03/09/09 23:56 ID:jY6/4KYQ
のんつぁんはまるでお説教をされたみたいに、おっきな目を潤ませて、震えている。
思わず抱き寄せると、のんつぁんもぎゅっと私の背中に手を廻してきた。
そのままの体勢で振り返ると、どこか誇らしげに、
親指を立てた右手を高く掲げたまこっちゃんの姿。
私の口から出てくるのは溜息とも付かない、一音節だけ。
「は?」
「・・・・・・アウト」
「いや、なにが・・・?まこっちゃん?」
「だから、さっきからのあさ美ちゃんとのんつぁん、アウト」
663 :
書いた人:03/09/09 23:57 ID:jY6/4KYQ
○月×日
今日、遂にまこっちゃんの脳が悪い小人さんたちに占拠されてしまいました。
とりあえず今日の日記の書き出しを決めてみた。
日頃無駄に口を開けて、他人より多く酸素を脳に送っている甲斐も無いのか、
まこっちゃんは火星大接近に伴って、どうやらタコ型宇宙人からの指令をまともに傍受したらしい。
いや、宇宙人の方がまだまともに話せる気がする。
噛み合わない会話に呆気に取られて、思わず私はのんつぁんを抱きしめる腕を緩めた。
そして私は、そのまままこっちゃんに身体を向ける。
664 :
書いた人:03/09/09 23:58 ID:jY6/4KYQ
私と同じく勿論事態が把握できないのんつぁんは、
まだ自慢げに右手を高々と掲げているまこっちゃんを気の毒そうに見ていた。
私のキャミソールの裾を、のんつぁんはぎゅっと握ったまま。
やれやれ・・・ここは同期の私がどうにかしなくちゃいけないんだよねぇ。
2・3歩まこっちゃんに向けて歩み寄る。
私の動きに首を傾げてみせるまこっちゃん。
私はあなたの行動に首を傾げてあげたい、とは流石に言わない。
「えーと・・・・・・まこっちゃん?何がアウトなの?」
「だからぁ・・・・・・さっきから、のんつぁんとあさ美ちゃん、ずーっとお菓子食べてたでしょ?
あれが、アウトなんだぁ!」
「いや・・・・・・さ、だから・・・・・・それが何で?って聞いてるんだけど」
665 :
書いた人:03/09/09 23:59 ID:jY6/4KYQ
昨日までの友人だと思っていた人はどうやら異次元出身だったらしく、私の問いかけにニヤッと笑った。
「あれ?あさ美ちゃあん、もしかして・・・・・・私の資格を疑ってるんだなぁ!?
ふふふ・・・・・・これ、見てみなさいってば!」
ジャーンって効果音を付けるかのように、颯爽とまこっちゃんは手帳みたいなものを取り出した。
思わず私とのんつぁんは、首を伸ばしてそれを覗き見る。
【証 小川麻琴 右の者 審判2級と認める】
カンタンな作りだけど、それでも結構立派そうな手帳の中には、それだけ書かれていた。
ダメだ。
ますます訳が分からない。
666 :
書いた人:03/09/10 00:01 ID:eofDQTK1
私たちの戸惑いを放っておいて、まこっちゃんは「エッヘン」とばかりに胸を張って、そんなに有りもしないバストを突き出す。
「・・・だからぁ、私はあさ美ちゃんとのんつぁんのそーいう行為は、
アイドルとしてダメダメだと思うからぁ、アウト判定を下したんだぁ!」
そう言って、眩しいほどの笑顔でもう一度アウトのポーズ。
・・・・・・よし、私の知ってる小川麻琴は死んだ。
心の中では往年のキンキンが『ハイ消えた〜』と、台を叩いていた。
自分を無理やり納得させようとしていた所、ツンツン、とのんつぁんが私の脇腹を突付く。
振り向いた私に、楽屋の隅っこをちょんちょんと指差した。
667 :
書いた人:03/09/10 00:02 ID:eofDQTK1
「・・・・・大丈夫なの?あれ」
楽屋隅で、既にのんつぁんの中ではまこっちゃんは「あれ」扱いだった。
壁におでこをつけて、二人でひそひそと会話。
「なんだろう?あれかな?夏だから遂に来ちゃったのかな?」
「いや・・・それにしたって、あれはおかしいでしょ」
「だよねぇ」
「何なの?あの審判・・・・・・って」
「さぁ?別にどの競技の審判かって書いてなかったよ」
「あのさぁ、あさ美ちゃん・・・すっごく嫌な予感がするんだけど・・・」
「あぁあ・・・多分、私もおんなじだ」
こっそりとまこっちゃんに振り返ってみた。
668 :
書いた人:03/09/10 00:04 ID:eofDQTK1
「アウットォォォォォオーーーーーー!!
って言うか、石川さん。その服装、もうワンアウトとかじゃなくて、スリーアウトですッ」
「えぇぇ!?何言ってんのよぉ・・・」
「いや、もういいから・・・チェンジです、チェンジ」
楽屋に入ってきた、お前はリメイク版ゴレンジャーのモモレンジャーを狙ってんのか、
って感じの衣装の石川さんが次なる標的。
「いや、小川。あんたねぇ・・・チェンジとか、訳分かんないんだけど」
抗議を重ねる石川さんに、
「あぁ、あんまり抗議すると、退場させちゃいますよぉ!」
と、よく分からないことを言うまこっちゃん。
「・・・・・・取り敢えず、今の判定には賛成」
「うん」
「ちょっと、あんたたち!!」
私とのんつぁんの声に、石川さんがジト目を向けてきた。
669 :
書いた人:03/09/10 00:04 ID:eofDQTK1
今日はここまで・・・って久々に言いますね。
続きはまた明日。
更新キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!
新作期待してますので、頑張ってください!
(おかげさまでおいらも別スレで小説始めさせてもらってます。)
>8
ヤフーBBのお試しセットくばってるやつら最近見ないよね。
排除命令でも下ったのか。
結局ヤフーBBはどうなんだ、クソなのか。
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!
しょっちゅう覗いてた甲斐がありました!
まこっちゃん……今度は逆の方向に吹っ切れてる?
(0^〜^)<作者さん、新作おめです。
つ日 うーん。まこっちゃんがリアル。
てゆーか、ピーマコそのものですね。
楽しい作品の続きが楽しみですYO。
@ノハ@ さて、また寝っ転びながら小説でも読もうかな
⊂´⌒つ‘д‘)つ ところで小説総合スレで紹介したんやけど、良かったかな?
>>674 あいぼんさん、お行儀悪いですよ。
とたしなめつつ書いた人タソキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!
レスは少ないですが、キカイノココロからずっと楽しみに読んでいます。
これでも食べてまたがんがってください つ◎ c□
676 :
書いた人:03/09/10 23:42 ID:lbSbAaDa
――――――――――
「・・・・・・どうしよっかぁ?梨華ちゃん、いい考えないの?」
「そんなこと言われたってさぁ・・・・・・これは無理でしょ」
「石川さんはまだスリーアウトだからいいじゃないですか。
私なんて、『アイドルなのに【豆】なんてニックネーム有り得ない』って、
楽屋入った直後に試合終了させられたんですよ!!」
「そこはさぁ・・・やっぱり人徳?の差じゃないかなぁ」
「・・・・・・石川さん、酷いです」
「あ〜、やっぱりシゲさんは流石だなぁ。
今度新垣塾で、すっごいたくさん話振るからね!」
とりあえず楽屋が同じ面々で、まこっちゃん対策会議を開催。
当然のことながら碌な意見が出るはずも無かった。
のんつぁん、石川さん、お豆、シゲさん、そして私。
で、まこっちゃんはと言うと・・・・・・
「あ〜、今のはアウトだぁ・・・・・・ここで視聴者が欲しいのは、あんたの自慢話じゃないってば!
もう退場だ、退場!」
テレビを見ながら、元インドネシア大統領夫人の化け物にダメ出しをしていた。
677 :
書いた人:03/09/10 23:43 ID:lbSbAaDa
その様子を一瞥して、再び石川さんは眉をひそめる。
「ほらぁ、テレビに向かって独り言なんて、ボケちゃったみたいじゃない」
「まこっちゃんあんなんで今日の収録大丈夫なんですかねぇ・・・」
「まあでも、あんだけ人数いるんだから、一人くらいちょっとおかしくっても大丈夫じゃない?」
「・・・・・・また毒舌です」
「でもさぁ・・・」
「どしたの?のの」
「・・・・・・今日って最初さぁ・・・ハロプロワイド撮るんじゃなかったっけ?」
のんつぁんの言葉にハッとなる。
そうだぁ・・・こんな日に限って忙しい中澤さんのせいで、今日はあれを最初に撮るんだったぁ。
絶対禄でも無いことが起きるんだから・・・
678 :
書いた人:03/09/10 23:44 ID:lbSbAaDa
「ちょっと、だったらさっさと着替えなさいよ。
ほらぁ、小川も・・・テレビ見てないで、衣装着ちゃいなさい!」
「はぁ〜い」
今度は素直に従ったまこっちゃんは、てくてくと衣装を掛けたラックに向かう。
ふぅん・・・普通に接する分には、特に問題ないんだねぇ。
まるでモーゼの十戒みたいにまこっちゃんの行く手をみんなが除けていく。
小学校の時『○○菌』扱いされて男子たちに苛められていた級友が何故か思い起こされ、少し目頭が熱くなる。
が、私の安心も束の間、まこっちゃんは自分用のスーツを手にとると、顔を顰めた。
「え・・・?どうしたの?まこっちゃん」
「アウトだぁ、これ」
「え?これって・・・・・・その衣装?」
その言葉に頷くと、まこっちゃんはズビビッと親指を立てた。
・・・・・・どーでもいいけど、偶にはセーフ判定は無いのかなぁ。
679 :
書いた人:03/09/10 23:45 ID:lbSbAaDa
『それは貴様の気に入らない衣装だからアウトなんじゃないのか』
という言葉が喉まででかかったのをやっとのことで止めて、
私はまるでハウスマヌカンのようにまこっちゃんの衣装を褒めちぎった。
「え?ほら、でも・・・このスーツも結構可愛いと思うよ?」
「ダメ!アウト」
「ほらぁ、ワイシャツの色とか、ピンクで可愛いよ?ね?」
「判定は変えられないよぉ、あさ美ちゃん。
だってスーツなんて、アイドルが着る衣装じゃないもぉん」
680 :
書いた人:03/09/10 23:46 ID:lbSbAaDa
むぅ。
何で私がこんなことをしなくちゃいけないんだろう・・・
このままじゃ私の衣装がえが間に合わないよぉ・・・と思いつつ、
いつものフリフリのドレスに手を伸ばす。
はぁ・・・こんなんで今日の収録大丈夫かなぁ・・・
と、目の前でまこっちゃんの瞳が光る。
・・・・・・マサルさん以来だよ、実際に目が光る人って。
「ッセーーーーーーーフッ!!」
「え!?なにが!?」
「あさ美ちゃあん・・・いいなぁ・・・その衣装。完璧にセーフ。
もうねぇ、あれ、2塁まで走っていいよ!」
ウットリとした目で、ロッカー(彼女の中の二塁)を指し示す。
セーフが出てもちっとも嬉しくない上に、この状況に少し慣れ始めた自分にびっくり。
とりあえず適応能力は、人並み以上に持ってるんだなぁ、私。
681 :
書いた人:03/09/10 23:48 ID:lbSbAaDa
結局ディレクターさんに我侭を言って、
まこっちゃんは衣装を80年代のアイドルみたいなのに変えてもらっていた。
いまどきそんなフリフリのアイドル、いないってば・・・
「「お願いしまーす」」
そう大声でお辞儀をしたスタジオには、全く収録に関係が無いのに娘全員がカメラ脇に勢ぞろい。
石川さんとのんつぁんが知らせて回ったんだろう。
飯田さんはどこか心配そう・・・・・・
中澤さんのお歳にアウト判定が出ないことを私と一緒に祈ってください。
矢口さん・・・なんでそんなに笑顔なんですか?
立ち位置に向かいながら、私はギャラリーに目で訴える。
『お願い・・・・・・助けて』
が、返って来たのはひたすら繰り返されるガッツポーズ。
横一列に並んで13人が思い思いのガッツポーズをしているのは、シュールな光景だった。
いや、ガッツだけじゃどうしようもないですって、これ・・・
682 :
書いた人:03/09/10 23:51 ID:lbSbAaDa
(0^〜^)<作者さん、更新乙です。
つ日 うーん。どんなことが起きるんでしょう。
期待そして不安・・・・・・でもワクワク。
684 :
670:03/09/12 01:10 ID:aX1H54DX
川o・-・)ノ<更新乙です
またま色んなスレを読みあさってたら偶然更新してるのをハケーンしますた
期待してますよ
685 :
書いた人:03/09/13 00:56 ID:CCkj+Spj
ちょっとですねぇ・・・体調を崩しまして。
申し訳無いのですが、更新はしばらくお待ちください。
ホントごめんなさいです。
無理しないでゆっくり休んでくださいな
川o・-・)ノ<健康第一
マターリいきましょう
(
>>684 ×またま→○たまたま)
8ノノ人ヽ8∈
ノノ*^ー^) <作者さんが健康になりますように♪
/ノ ∞ Yア うーん。なるなるなったぁー♪
. (J/_ノ_ノハ
(( (_/ ヽ_フ
689 :
書いた人:03/09/14 02:35 ID:RF0xVCTx
――――――――――
あれですよ、みなさん。
ガッツとファイトだけじゃどうしようもないことって世の中にあるんですよ。
と、収録を終えた私は真っ白に燃え尽きていた。
気分は対戦相手(ホセ)を試合中に白髪にさせていく、元不良のボクサー。
疲れた・・・こんなに疲れた収録、初めてだ。
――――――――――
690 :
書いた人:03/09/14 02:37 ID:RF0xVCTx
私たちに遅れてスタジオ入りした中澤さんは、
居並ぶギャラリーとどこか雰囲気の違うスタジオに、入ってくるなり後ずさりしていた。
「え・・・・・・なに?ずらーーっと並んで・・・・・・
あんたら、揃って何やっとんの?」
「え・・・と、たまには・・・・・・こっちの収録も見たいなって思って・・・ね?矢口?」
「え!?おいら?
・・・・・・・そ、そうだよ!たまには裕ちゃんの活躍してるとこ、見たいんだよね」
「そうだべ・・・・・ほら、最近なっち、裕ちゃんとめっきり接点減っちゃったっしょ?」
「なっちは前から接点薄いと思う・・・・・・ま、いいんけど」
691 :
書いた人:03/09/14 02:39 ID:q7JIebzY
疑い120%のほっそい目付きで、中澤さんは舐めまわすように私たちを見回した。
立ち位置に入ると、殆ど読まなくても進行が可能な台本に一応目を通し始める。
こういう所、この人は細かい。
私はといえば・・・飯田さんをじっと見つめてコンタクトを図る。
もう立ち位置からずれられないから、目で訴えるしかないもの。
届け!恋のテレパシー!・・・・・・いや、別に飯田さんに恋してないけど。
と、私の目から発せられた怪光線に気づいたのか首を傾げる飯田さん。
中澤さんに怪しまれないように・・・口をパクパクさせて何とか伝えようとする。
692 :
書いた人:03/09/14 02:40 ID:q7JIebzY
「(・・・・・・ちょっと飯田さん!何でまこっちゃんがああなってること、隠しちゃうんですか?)」
「(・・・・・・?)」
「(な・ん・で・い・わ・な・い・ん・で・す・か?)」
しばらく考えたあと、ぽんと胸の前で手を合わせて飯田さんは目を輝かせる。
ふぅ・・・やっと分かってくれましたか。
つかつかとADさんのところに歩み寄ると、飯田さんはカンペを奪い取ってマジックで何やら書き始めた。
『よし』と小声で言うと、飯田さんはカンペを中澤さんには見えない絶妙の角度で掲げる。
【金魚のマネ上手になったね!・・・・・・でも、収録ではやめようね】
しかもサイケデリックな金魚のイラスト付き。
・・・・・・・・・死んじゃえ。
693 :
書いた人:03/09/14 02:41 ID:q7JIebzY
「ちょっと圭織、そうじゃないべさ」
私と飯田さんのやりとりに気付いたのか、お隣にいた安倍さんがマジックを操る。
どうでもいいですけど・・・・・・中澤さんに聞こえますよ。
まだ気付かないのか、中澤さんは頬杖をついて台本をペラペラ捲る。
再び安倍さんと飯田さんに目を移すと、『おーっ、なるほど』と、えらく納得した様子の飯田さん。
自慢げに胸を張って、安倍さんはカンペを掲げる。
【カンペ見てもいいですか?っていったっしょ?
ダメだべ紺野、もう先輩なんだから、カンペなんかに頼ってばっかりじゃダメ!】
・・・・・・なんで文章まで北海道弁なんですか?
ダメだぁ・・・もっと日頃から、先輩たちとコミュニケーションとっておけばよかった。
諦めてうなだれる私に、
「そこ!紺野ぉ〜、感じ悪いぞぉ」
「んだべ・・・先輩の思いやり思いっきり無視して・・・」
余計な火種を一つ増やしただけだった。
つーか普通に喋っても、全然大丈夫だったんじゃ・・・・・・
694 :
書いた人:03/09/14 02:43 ID:I271t1kZ
――――――――――
「ハロープロジェクト唯一の公認プログラム、ハロプロワイドの時間がやって参りました。
キャスターの、中澤裕子ですッ!!」
いつも通りに、殆ど息継ぎをせずに一気に中澤さんが言い切る。
収録始まっちゃったなぁ・・・
ぬるいコーナーだけど、それなりの緊張感がスタジオを包んでいて、私は少し息を飲んだ。
「はい、そしてこの方」
中澤さんのまこっちゃんへの振りに、背筋をおかしな感覚が走る。
お願いまこっちゃん・・・頼むから、平穏に収録を終わらせてね。
台本通りに、いつもみたいにつっかえつっかえでイイからさ。
気のせいだろうか。中澤さんの振りを受けて、まこっちゃんの瞳が光ったように見えた。
695 :
書いた人:03/09/14 02:44 ID:I271t1kZ
「は〜い、私が小川麻琴です!
よろしくお願いしま〜す。中澤さん・・・・・・今日もお綺麗ですね」
フリフリのお洋服にうずもれて、まこっちゃんは可愛らしく頭を左に45度傾げる。
しかも口調・・・いつもの「だでぃどぅでど」って感じのバカっぽい話し方じゃない。
まるで完璧なアイドルを見ているみたい・・・・・・
ただ、思いっきりまこっちゃんには似合っていないけど。
「・・・・・・へ?」
呆気にとられた中澤さんは肩の力が抜けたみたい。
それでもそれなりの趣向だと思ったんだろう、いつものまこっちゃんいじりをアドリブで開始。
696 :
書いた人:03/09/14 02:45 ID:I271t1kZ
「いつもの『ピーピーピー』ってヤツやらないんですね。
それに衣装の方も・・・・・・どうされたんですか?」
「えぇ、あれはやめました!」
「またまたぁ・・・・・・あなたピーマコさんでしょ?」
「いいえ、あのキャラクターはアイドルがやるには痛いので封印したんですって」
「ご冗談を・・・まさか、恋しちゃってるから?」
「いえいえ・・・アイドルは恋なんかしませんって。
やっぱりアイドルたる者、こういう風じゃないといけないって思って変えたんですよ」
まるで神がかったみたいな目付きで、まこっちゃんはウットリとしながら自分の変節振りを語る。
いや・・・まこっちゃんのポリシーはいいんだけどさ・・・思いっきり台本から外れてるよね?
「カァーーーートッ!!
ちょ、ちょっと・・・・・・小川さん!!ちゃんとやってくんないとダメだよ!!」
私が思うのと同時に、状況にフリーズしていたディレクターの怒声が響いた。
予想していたとはいえ、あまりの大声に思わず肩がすくむ。
697 :
書いた人:03/09/14 02:47 ID:I271t1kZ
「あ・・・・・・あの、小川ちょっと暑さにやられてるみたいなんで・・・見逃してもらえません?」
「そ、そうなんですよ!それと知恵熱が出てきて、最近ちょっとおかしくって・・・」
ディレクターが二の句を継ぐ前に、飯田さんと矢口さんが速攻でフォローに入る。
流石はタンポポコンビネーション、私も見習わなくっちゃ。
同時に憤懣やるかたない、って感じの中澤さんには、
あらかじめ決められてたんだろう、石川さんが生贄として供出されていた。
ドナドナを口ずさみながら、石川さんはひたすら中澤さんの激しい言葉を受け止める。
698 :
書いた人:03/09/14 02:48 ID:I271t1kZ
その様子を脇目に、私はまこっちゃんの元へ走る。
まこっちゃんは既にのんつぁんとお豆の公開説教を受けていた。
「まこっちゃ〜ん、台本無視はマズイってば」
「いいんだぁ!だって、あんな台本アウトだもん!」
「つーかさぁ・・・・・・なんで話し方まで元に戻ってんのよ」
「あれは収録用の話し方にしたんだもん」
・・・・・・ダメだ、人語が通じる状態じゃないや。
お父さん、お母さん・・・・・あさ美は芸能界で疲れてしまいました。
混迷を極めるスタジオの中央で、私は悲劇のヒロインよろしく立ち尽くしていた。
699 :
書いた人:03/09/14 02:51 ID:I271t1kZ
今日はここまで。
暫定的に復活。ご迷惑をおかけいたしました。
>>683 あんまり深刻にはしないつもりです。
>>684 一週間では到底終わらなくなってしまいそうです。
>>686 ありがとうございます。
>>687 昼間寝込んでいたら、こんな時間に起床。
>>688 おかげさまで大分よくなりましたので、アップしてみた次第です。
☆ノハヽ 作者さん、更新乙です♪
ノノ*^ー^) <うーん。えりりんのオマジナイが効いてくれたのかな、嬉しいです♪
/∪:::::) 作品、不思議なお話ですね♪
~(__)_) どうなるのかな、続きが気になります♪
701 :
ぶっきー:03/09/14 04:59 ID:bONBTpU5
bubukaの写真どこにあるの??
みたいのよ
702 :
:03/09/14 05:26 ID:ZaykaDzp
川o・-・)ノ<更新乙です
体調が戻ったようでなによりです
にしても、相変わらず情景描写うまいなぁ〜
更新乙ー!
家でゆっくり読みます〜
てーか、こんなに早く次回作が読めるとは(w
うれしいです。
705 :
書いた人:03/09/15 20:37 ID:q11DAXCA
――――― 1週間後
「おはよぅございま〜す」
「うわっ!!ちょっと・・・・・・よっすぃ〜どーしたの?
目の下・・・・・・凄いクマになってるよ・・・」
「そーいう矢口さんこそ、痩せました?
何か・・・・・・頬、こけてますよねぇ?」
白い肌にくっきりと真っ黒いクマを浮かび上がらせた吉澤さん。
それを心配しつつも、返って心配されてる矢口さん。
朝の楽屋なのに、みんなまるで徹夜明けみたいにぐったりしている。
まだ吉澤さんに反応して見せた矢口さんはいい方だ。
他のみんなは、ある人は机に突っ伏して、ある人は窓の外をぼんやり眺めて、殆ど気力が無い。
706 :
書いた人:03/09/15 20:38 ID:q11DAXCA
「おはよぉ・・・・・・」
「あ、圭織・・・・・・・・・って、そのまぶた・・・
何か二重とかどころじゃなくなってるよ・・・・・・」
「何かねぇ・・・・・顔むくんじゃってさぁ・・・今朝数えたら、四重だよ四重。新記録」
最後に入ってきた飯田さんがこれなら、
「ののぉ・・・・・・・・・お菓子買うて来てるんけど、食べる?
ちょっとでもお腹に入れとかな、って思うたんけど、どうしても食べられんかった」
「いや・・・・・・いいや。
何か最近さぁ・・・・・・胃が痛むんだよねぇ・・・・・・こう、キリキリと」
「うそぉ!?うちもやで・・・・・・・・・食欲湧かんよなぁ」
のんつぁんと加護ちゃんは、二人で気力の無い話をし、
「私・・・・・・モーニング娘。続ける気力なくなってきた」
「エリ何言っとんの・・・・・・でも・・・気持ちは分かる」
「朝玄関出るときにさぁ、最近眩暈がするんだよねぇ」
六期の子たちは既に壊れかけていた。
707 :
書いた人:03/09/15 20:39 ID:q11DAXCA
原因は・・・誰も口にしないけど、誰もが分かってる。
全てのことに二進法の判定をし始めた、ヤツの仕業だ。
あるときはメンバーの生活態度に、
あるときはコンサートの振り付けに、
またあるときは歌のパート割にまで。
私たちは審判二級の彼女に、四六時中監視され続けて憔悴しきっていた。
なんつーか、もう「彼女」としか呼べない。
今この楽屋で彼女の名前を出しただけで、
みんなは鬼軍曹の面前のように、背筋を限りなく伸ばすと思う。
彼女の親友だった(過去形)の私としては、心苦しい限り。
そういう私も、最近は大好きなお餅も喉を通らない日々が続いている。
そのおかげでちょっぴり胃下垂も治まりつつあるんだけど・・・それでも気分はちっとも晴れないのだ。
自然と難しい顔になっていたんだろう、
「紺野・・・・・・あんたも、大丈夫?」
飯田さんが私の肩に軽く手を置いた。
708 :
書いた人:03/09/15 20:40 ID:q11DAXCA
飯田さんはそのまま、私の肩を後ろから抱きしめる振りをして、私に耳打ちを始める。
微かに吐息が耳たぶに当たって、ちょっぴりくすぐったい。
「(・・・・・・紺野・・・・・・今日、ヤツは・・・・・遅れて来るんだよね?)」
「(・・・・・・ハイ。確か、腰の定期検診がありますから、1時間くらい遅れてくるって・・・)」
私も前を向いたまま、誰にも聞こえないように呟いて返す。
ちょっとでもまこっちゃんの話をしているのが分かったら、この楽屋がまるで革命前夜のような大騒ぎになっちゃうんだから。
709 :
書いた人:03/09/15 20:41 ID:4skzOArq
飯田さんの動きが止まった。
じっと何かを考えているみたいに、ただ少しだけ、巻きつく腕の力が強まったみたい。
「(・・・・・・よし)」
「(・・・・・・・・・)」
「(・・・・・・やるか)」
「(・・・・・・?)」
「(・・・対策会議!)」
慌てて飯田さんの腕を振り解いて、振り返る。
見上げた飯田さんの顔には、どこか生気が戻っていた。
よっぽどビックリした顔を私はしていたんだろう、私の顔を見て、飯田さんが微かに笑っていた。
710 :
書いた人:03/09/15 20:42 ID:4skzOArq
――――――
「つまり・・・・・・小川を・・・黙らせるような方法を、みんなで考えて欲しいわけ」
『小川を』の所だけ、まるで禁忌のように声を潜めて、飯田さんはテーブルの周りに座った面々を見渡した。
「んなの無理よ・・・」と、石川さんが鼻で笑いながら、トメ子よりも疲れきった表情で呟く。
その様子を見とって、飯田さんの眉が危険な角度に上がった。
「んなの分かってるわよ!それでも何か、いい案を考えて、ってことなの!」
「圭織、そんなに怒っちゃ梨華ちゃん可哀想だべ・・・」
「あぅぅ・・・」
それを見て少し泣きそうになるのんつぁん。
ダメだ・・・みんなこの一週間で疲れきっちゃってるんだもん。
711 :
書いた人:03/09/15 20:43 ID:4skzOArq
「大体今のあいつにどんな反論してもさぁ、すぐにアウト、とか言われて一蹴されちゃうもんなぁ」
吉澤さんの言葉で、またみんなが静まり返る。
目を机の上の一転に集中させて、みんな一言も喋らない。
多分今のまこっちゃんには何を言っても通じないんだろう。
どんな基準かはさっぱり分かんないけど、まこっちゃんは某半島の豚主席並みの独裁振りを発揮してる。
その『基準』が分かんないから、どうしようもない。
「藤本・・・・・・あんたは、何か案無いの?」
みんなが沈み込んでいる中、藤本さんだけは頬杖を付いたまま、さっきからそっぽを向いていた。
飯田さんの声が聞こえているのかいないのか、ずっとその体勢を維持したまま。
712 :
書いた人:03/09/15 20:43 ID:4skzOArq
「藤本ッ!!」
飯田さんの怒声に、俯いていた六期の子たちがビクッと肩を震わせた。
零下30℃くらいの目付きを保ちながら、藤本さんは飯田さんは斜めに睨みつける。
「別に・・・・・・いい案なんてありませんから」
「ッ・・・!!」
飯田さんの左腕に、とっさに安倍さんがしがみついて押し止める。
その様子を見て、少しせせら笑ったように藤本さんは言葉を次々と紡ぎ出す。
「ホントにあいつがやってることが間違ってると思うんだったら、堂々と文句言えば良いんですよ」
「それもできずにこんな所でコソコソ会議するのが、時間の無駄です」
「もう行ってもいいですか?私、本番前に台本読んでおこうと思ってたんで」
そう言って立ち上がる藤本さんを、誰も止めることができなかった。
713 :
書いた人:03/09/15 20:45 ID:4skzOArq
出口の所で立ち止まると、少し馬鹿にしたように藤本さんは振り向いた。
「まぁ・・・・・・今度あいつが変なジャッジしてきたら、反対にアウトって言ってやったらどうです?
言うこと聞いてくれるかなんて、分かんないですけど」
そう言ってドアを開けた肩を、背後から飯田さんがグッとつかんだ。
刹那、一気に緊迫した空気が強まる。
矢口さんと安部さんはすぐに中腰になって、いつでも飛び出せるようにして。
私たち年下組は、ただその状況に震えていた。
でも・・・・・・
多分もう一言嫌味でも言おうと思っていたんだろう、振り向いた藤本さんは、目を見開いて止まっていた。
何があったんだろう?
でも私たちには構わずに、飯田さんは脳内電波で話を続ける。
「あんた・・・・・・今、すっごくいいこと言った!
・・・・・・そうだよ、そうすれば良いんだよね・・・なんで気付かなかったんだろう?」
お願いです・・・一人で会話しないで下さい。
714 :
書いた人:03/09/15 20:47 ID:4skzOArq
川o・-・)ノ<更新乙です
どの辺を誉めてるかって?
全てです!(w
次回更新も楽しみにしています
更新乙っす。
昼間、映画の宣伝番組を見て、
梨華ちゃんの演技はアウトやなあ、と思ってしまったよ。
(0^〜^)<作者さん、更新乙です。
つ日 うーん。緊迫感があって面白いですねぇ。
他人事じゃなく、2ちゃんねらにとっては
とても勉強になるお話ですね。
( ‘д‘)ノ <更新乙!ところで27日くらいでn日なんで気ーつけや
719 :
書いた人:03/09/17 01:46 ID:BKBm+TtJ
「ちょっと・・・どういうこと?ちゃんと話して欲しいべ」
安部さんに促されて飯田さんは再び席につく。
まだ興奮覚めやらぬように、飯田さんは大きい目をますます見広げて唇の端を上げていた。
その光景の異様さに藤本さんもいつの間にか、自分の席に戻っていた。
「つまりね・・・・・・」
「「「「「つまり!?」」」」」
「誰かがさ・・・・・・とればいいのよ。審判の資格!」
人さし指を立てて、天下を取ったように飯田さん。
まるでもう、まこっちゃんの脅威がなくなったみたい。
「できればねぇ・・・・・・小川よりも上の資格の方がいいかな?
あいつ2級でしょ?なら、準1級とか1級を取ればいいのよ」
その言葉でみんなの目がキラキラと輝き始めた。
石川さん・・・・・・さっきまであんなに沈み込んでたのに、
手まで組んで飯田さんを見つめないで下さい。キショいから。
でもただ一人だけ、矢口さんは神妙な顔のまま。
720 :
書いた人:03/09/17 01:47 ID:BKBm+TtJ
「でもさぁ・・・・・・」
「何よ?矢口。まさか圭織のこのスペシャルな案に、文句でもあるって言うの?」
妙なハイテンションのまま、今にも踊りだしそうに身体をくねらせる飯田さん。
矢口さんは眉間に皺を寄せて、口を尖らせた。
「その資格さぁ、誰が取んだよ?」
「え?そりゃ・・・誰か」
「圭織さぁ・・・英検とか漢字検定の準1級って、めちゃくちゃ難しいんだぜ?
そんな頭の持ち主が、モーニング娘。にいると思ってんの?」
「あぅ」
再び固まる私たち。
そうなのだ。
アイドルをやりながらで、学校の勉強でさえ追いついていない私たちがそんな資格取れるわけ無い。
学校を出ちゃった年上組に至っては、もっての外。
しかも相手にするのは訳が分からない「審判」の資格。
それなりの脳味噌が・・・多分必要だ。
721 :
書いた人:03/09/17 01:48 ID:BKBm+TtJ
そんな中、一人腕を組んで自信満々の様子で安倍さんは目を細めた。
「そんなら、圭ちゃんにやってもらうべ。どうせ今、ヒマっしょ?」
「・・・・・・安倍さん、酷すぎですよ?保田さん、もうモーニング娘。じゃないんですからぁ」
「なんで?圭ちゃんだって、元モーニング娘。っしょ?」
「いや・・・石川の言うとおりでしょ。
それにそんなに『ヒマ』にアクセント置くなよ、圭ちゃん聞いたら泣くぜ?」
「そうかなぁ・・・・・・圭織はどう思うのよ?」
「私はさぁ・・・やっぱり、モーニング娘。の中で解決したいなぁ、って思うの」
飯田さんの目は、この一週間で見たことが無い、とても優しい目をしていた。
「だって卒業した後にまで、いろいろ迷惑かけるのなんて、何か心配させちゃいそうだし・・・
もし頼んだとしたら、圭ちゃんや裕ちゃん、喜んでやってくれると思うよ。
でも、それに甘えてばっかりってのもさ」
「・・・・・・そっか・・・そだよね」
安倍さんの言葉に、何人かが一斉に頷く。
722 :
書いた人:03/09/17 01:49 ID:BKBm+TtJ
「あぁ!!・・・・・・・・・ふふふ」
「どうしたん?のの。
急に気味の悪い含み笑いしないでや」
「なぁに?のんちゃん・・・何か良い案でも出たの?」
「あのさぁ・・・・・・ピッタリの人がいること、いーださんもみんなも、忘れてるんだよ。
ちゃんとその資格が取れるくらいの頭の持ち主!!」
「誰!?」「そんなんいたか?」「やっぱなっちだべさ」
色んな反応が返ってきて、のんつぁんは少し照れたように顔を赤らめた。
それでもその反応に満足げに、大きく微笑み返す。
723 :
書いた人:03/09/17 01:50 ID:BKBm+TtJ
でも私はといえば、嫌な予感が全神経から発せられていた。
もし私に妖怪アンテナがあったら、頭に乗ってるオヤジの眼球を突き刺さん勢いで、
この嫌な雰囲気を察知しているはず。
やっばいよ・・・・・・さっきからずっと、のんつぁんは私を見てニコニコしていたもん。
多分、恐らく、いや絶対・・・・・・
「みんな忘れたの?一番頭がいい人がいるでしょ?」
「頭がいいヤツ?」
お願い、のんつぁん・・・・・・もうこれ以上、私を痛めつけないで。
「岡女で一位の・・・・・・紺野ちゃん!!」
「無理!絶対無理!!」
のんつぁんが私の名前を口にしたと同時に、私は立ち上がって絶叫。
私のあまりの剣幕に、のんつぁんは勿論、他のみんなもビクっと肩を震わせる。
724 :
書いた人:03/09/17 01:51 ID:BKBm+TtJ
・・・・・・行ける!!
このままなら、逆切れで押し通せる!!
脳内シナプスは某航空宇宙局のスパコンよりも早く、そんな答えをはじき出す。
みんなが呆気に取られてる、今がチャンス!
「岡女の問題とあの資格の試験とじゃ、多分問題の傾向が違いますって!!
あの問題は中学生だった私やまこっちゃんが上位で当たり前なんです!
つまり今まで慣れ親しんできた問題だからこそ、あんなにいい成績が取れたわけで。
覚えてますよね?私の英語。
やっぱり中学入ってから本格的に習った英語は全然出来てなかったんですよ、私。
ってことはあんなにいい成績を取るには、ちっとも時間が足りないわけで、
その辺考えても、やっぱり私を資格を受ける代表に据えるというのは、
判断の謝りで、全く状況の読み方が甘い、そんなんだと思うんですッ!!」
・・・・・・言い切ったぁ!!
なんだろう、この胸を満たす満足感。
心の中の審判団は、全員が10点満点を記録。
モーニング娘。に入って丸二年、初めて「完璧」だった気がする。
725 :
書いた人:03/09/17 01:52 ID:BKBm+TtJ
私は腰に手を当てて、みんなを自慢げに見渡した。
さぁ私のこの完璧な論証に、反論してみてください!
みんなどんな畏敬の眼差しで私を見てくれているのか、と思いきや。
「紺野ちゃん・・・うぅ、酷いよ」
「うちらが、何したって言うん!?」
目尻に涙をいっぱい溜めて、真っ赤な目で私を見上げるのんつぁんと加護ちゃん。
え?なんで泣いてるの?
「紺野ぉ!!あんた、言っていいことと悪いことがあるでしょ!!
同じ中学3年生なのに最下位争いしてた、のんつぁんとあいぼんが可哀想でしょ!」
あぅ
思わぬ事態に口がパクパクする。
多分すっごく上手く金魚のマネが出来ているに違いない。
完璧に言い負かせたと思ってた13人は、今は私を睨みあげている。
うわぁ・・・藤本さんが睨むと、めちゃくちゃ怖いんだけど。
ちょっぴり某半島で北に位置する国の気持ちが分かったりして。
周りが敵だけって、こんな感じなんだなぁ・・・
726 :
書いた人:03/09/17 01:53 ID:BKBm+TtJ
「決めた!!紺野には、絶対にあの試験の準一級、受けてもらうから」
飯田さんが言い終わらないうちに、満場一致の拍手が湧き上がる。
ちなみにこの場合、私の票というものは用意されていないみたい。
「あのぉ〜」
「何か文句あんの?」
取り敢えずしてみた反論も、「ねぇ、笑って」の時の数百倍怖い飯田さんの目付きで封じ込まれる。
魚類までなら、あの目付きで石にできるんじゃないだろうか。
「文句はぁ・・・・・・ハァ、無いです」
結局私の返事はこれしかないのだ。
策士策に溺れる、だったっけかなぁ?
会議を終えて思い思いのことを始めるメンバーを見ながら、私はまた一つ賢くなっていた。
727 :
書いた人:03/09/17 01:56 ID:BKBm+TtJ
今日はここまで。爆発で亡くなった巡査が気の毒。
>>715 一瞬「嘗めてる」に見えた、ひねくれものの私。
>>716 適材適所をかの事務所に誰か教えてやってください。
>>717 目指していた小説と、また乖離し始めてきたこのごろ。
>>718 それまでには何とか終わらせます。びくびくしながらは嫌なので。
川o・-・)ノ<更新乙です
「嘗めてる」を一瞬読めなくて鬱…。
亡くなった巡査のご冥福をお祈りします。
こんこんがんがれ!
(0^〜^)<作者さん、更新乙です。
つ日 うーん。横道にそれたり、路線変更したりって
大好きですよ私は。
>>作者さん
偶々このスレを見つけて、「記憶の中の『あの人』」と「昨日見た日々」、
それに新作も一気に読ませていただきました。
>>558や
>>605なんてうるるる泣いちゃいました。
文章も、めちゃ好みな文章だし、コメディタッチの喩えが、
またたまらんです。もう虜です。
>>724の勢い、最高ですね。読んでいてついニヤニヤしてしまいます。
今後の更新楽しみに待たせていただきます。
731 :
書いた人:03/09/18 12:23 ID:OPfnYGe1
――――――
まこっちゃんが来た時には何事もなかったかのように、既にリハが始まっていた。
みんなまるで七日振りにお通じが来たみたいな晴れやかな顔。
そんな中私の心だけはブルー。
月曜日でも雨の日でも、勿論あの日でもないけど、ブルー。
この一週間でまこっちゃんがアウト判定をすることは少なくなっていた。
みんながまこっちゃんの考えに合うような行動を、無意識でもとりはじめていたのが原因。
衣装や台本も、それとなくマネージャーに含んでおいたおかげで、
取り敢えずはまこっちゃんの許容範囲のものが多くなっていた。
それでもやっぱり、誰かにいつも監視されているというのはキツイ。
それに段々物足りなくなってきたんだろう、隣の楽屋の人にまで審判をしに行き掛けたので、
のんつぁんと私で、次藤君(九州男児)並みのタックルを決めたりもして。
・・・・・・やっぱり早く、やめさせたい。
732 :
書いた人:03/09/18 12:24 ID:OPfnYGe1
「ハイ、それじゃ今日のお仕事はここまでね。
明日も朝早いから、みんなしっかり休んでおくように・・・・・・で、紺野は残ってね。じゃ、解散!」
「お疲れ様でした〜」と大声で挨拶をした後で、何人かが私の顔をちらりと見る。
私を救世主のように拝むシゲさん・・・・・・うん、先輩としてがんばるからね。
もうことが終わったみたいな澄ました顔をしてる愛ちゃん・・・・・・いつかシメてやるんだから。
そして私を心配そうに見つめてくれる、のんつぁん。
と、私の前に飛び込んできたは、心底残念そうなまこっちゃんの渋面。
「なんだぁ〜、あさ美ちゃん居残りなのかぁ」
「う、うん・・・ゴメンね。ちょっとダンスレッスンの補習があるみたいだから」
まこっちゃんのせいだよ、って言うわけにいかないもんなぁ。
733 :
書いた人:03/09/18 12:25 ID:OPfnYGe1
「折角さぁ、いい甘物屋さん見つけたんだけどなぁ・・・・・・
じゃあ今度、のんつぁんやお豆も一緒に、みんなで行こうよぉ」
「うん・・・・・そう、だね」
頷くのに少し躊躇ったのは、今のまこっちゃんとは多分、誰も行きたがらないから。
この間ケーキの上の苺を外して食べていたら、「そんなんアイドルじゃない」って言われて、
アウトを喰らった覚えがある。
これで一緒に何か食べに行ったら、何が起こるか分かったもんじゃない。
でも・・・・・・
残念そうに楽屋を出て行ったまこっちゃんの後姿を見ていると、なんだか断ったのが申し訳ない。
別に私のせいじゃないってことは分かってるけど、
早く今までみたいに、一緒にお買い物したり、お食事したりしたい。
734 :
書いた人:03/09/18 12:26 ID:OPfnYGe1
うん、やっぱりがんばらなくっちゃ。
そう心の中で呟くと、思わず拳を握り締めてしまう。
最後まで楽屋に残っていた飯田さんが、少し笑ったように見えた。
「よ〜し紺野、そんじゃ私たちも行こっか?」
「え?どこへ・・・・・・ですか?」
てっきり審判試験について、ちょっと注意を受けるだけだと思ってたのに。
ふふっと笑って長い髪を掻き揚げると、飯田さんは出口の方を向く。
私はただ、その背中を追いかけるだけ。
「参考書・・・・・買わないといけないでしょ?
それに試験の日程だって・・・調べないと」
「あぁ・・・そうですねぇ。でもそれくらいだったら、私一人でやってきます・・・」
735 :
書いた人:03/09/18 12:27 ID:Ad6SIOKd
その刹那、私の方を向かないまま、飯田さんは手を大きくパーに開いて言葉を遮った。
何があったか一瞬分からなくて、きょとんと止まってしまう。
そんな私に構わずに、飯田さんはドアノブを見ながら呟く。
今まで聞いたことない、優しくて、それでいて寂しげな声。
「それくらいはさぁ・・・圭織にリーダーらしいことさせてよ、ね?」
ありがとうございます。
何故かそう言いたかったけど言葉には出ずに、私はただ小さく首を縦に振っただけで。
それを見たのか分からないけれど、満足したような飯田さんに続いて私たちは部屋を出た。
736 :
書いた人:03/09/18 12:28 ID:Ad6SIOKd
――――――
「あぁ・・・・・・審判なら、あそこの棚全部そうですよ。
それにしても・・・・・・お客様が受けられるんですか?」
「いえ、受けるのはこの子の方です」
「えぇ!?」
絶句した店員さんを残して、私と飯田さんはさっさと本棚に移動。
でもあの反応・・・私みたいな歳の人が受けて通る資格じゃないんじゃ?
本棚一つ、全て審判関係の本で埋まった棚を見て、思わず溜息が出る。
「いつの間に、こんな資格できたのかなぁ?しかも結構メジャーそうだし」
「ですよねぇ」
間抜けな相槌しか打てないほど、私たちは世間知らず。
やっぱりアイドルだからって、外の情報に目を向けないでいるのは問題だなぁ。
飯田さんは目の前の一冊を適当に手に取って、パラパラとページを捲る。
737 :
書いた人:03/09/18 12:29 ID:Ad6SIOKd
「えーと・・・ねえ紺野、審判は野球型、サッカー型、ラグビー型の三種類があります・・・だって。
型の併願は不可能で、各型によって問題は異なります・・・型によって審判の格が違う、ということはありません。
・・・・・・どうする?選ばなくちゃなんないみたいだけど」
「空手型はないんですかぁ・・・あればすぐ飲み込めそうなんですけど」
はっきり言って、野球やサッカーのルールなんてよく知らない。ラグビーなんてもっての他だ。
「あぁ・・・でも、まこっちゃんにあわせた方が良くないですかね?」
「そう?小川は多分・・・アウトとかセーフとか言ってたから、野球型だと思うよ?」
「じゃあ、それが良いですね」
どれも良く知らないルールだから、結局どれを選んでも同じなのだ。
石川さん並みにポジティブにそう考えれば、結構やる気も出てくる。
738 :
書いた人:03/09/18 12:30 ID:Ad6SIOKd
野球型は・・・背表紙の上の部分が青色かぁ。
並んだ本の背表紙を指でなぞり、青色の、そして準一級の表示がある本を抜き出す。
まあ、問題集ならこんなもんかな?って感じの厚さ。
薄過ぎず、厚過ぎず。
邪魔な注文票を取って一つのページに挟むと、ペラペラ・・・と適当にページを捲って、とりあえず一問やってみる。
えーと・・・数学か。
これなら何とかなりそうかな?
739 :
書いた人:03/09/18 12:31 ID:2LdhSOlg
【問七 今日は彼女の誕生日。
A君はケーキが大好きな彼女のために、ケーキをホールで買って帰りました。
A君と彼女はケーキを半分ずつにして、仲良く食べました】
740 :
書いた人:03/09/18 12:32 ID:2LdhSOlg
・・・・・・で?
ゴシック文字で書かれた問題文はそこで終わり。
あとは○と×を書く欄と、理由欄だけ。
・・・・・・まったくもって意味が分からない。
えぇ?こんなのが問題なの?
ケーキを買ってきて、二人で分けたんでしょ?
とりあえず・・・「仲良く」分けたんなら、半分ずつで○じゃないの?
741 :
書いた人:03/09/18 12:33 ID:2LdhSOlg
「問七○と・・・」心の中で呟きながら、ページを指で抑えて巻末の解答欄を捲る。
えーと・・・・・・数学の問七の答えは・・・・・・×?
なんで?
【問七 ×
理由:本当に彼女のことを好きな彼氏なら、『お前が好きなだけ、食べていいよ』と言う筈です。
と言うことで、この場合ハンブンコするような彼氏の行動は、人として×です】
・・・・・・意味が分からないんだけど。
一問目から自信がなくなってきた。
でも・・・・・・私ならホールで食べてみたいもんなぁ・・・これはこれでいいかも。
「どうした?紺野、ヨダレ垂らして」
気が付くと、眉間に深い皺を刻んだ飯田さんが私を心配そうに見ていた。
742 :
書いた人:03/09/18 12:37 ID:2LdhSOlg
今日はここまで。
ちょいと質問を。「・・・」と「…」どちらが見やすいですかね?
私はかちゅなので、殆ど差が無いのですが。
>>728 よくあることですよ、お気になさらず。
>>729 あまり横道にそれまくると、n日に引っかかるという罠。
>>730 ありがとうございます。昔書いたのも、是非読んでやってください。
(0^〜^)<作者さん、更新乙です。
つ日 うーん。どう考えても大長編になりそうな・・・
と、ぞぬの環境だと下方に張り付いてしまう
三点リーダーの…よりも・・・が見やすいです。
慣れてしまうと何てことないんですけどね。
川o・-・)ノ<更新乙です
個人的には「…」を愛用してますが…作者さんの気分次第でいいと思います
ぶっちゃけ、どっちも一緒に見える…(汗)
更新お疲れ様です。
次藤君にニンマリ。
・・・と…は、私もどちらでも良いように思います。
読み易さということでいえば、
>741の
>「どうした?紺野、ヨダレ垂らして」
の様に「?」や「!」の後に続く文章がある場合、
>「どうした? 紺野、ヨダレ垂らして」
と、空白を一字入れると、個人的には見やすいかも……。
(一般の小説等ではその様になっていたと記憶しております)
746 :
書いた人:03/09/19 23:18 ID:8vgMIxpA
「あ、あの・・・・・・飯田さん!」
とてもこんなの解けません。
その言葉をグッと飲み込んで、必死で他の問題を探す。
私のその様子に、少し首を傾けて飯田さんは私を見下ろしている。
いや、まだ絶望を伝えるには早すぎる。
他の・・・他の問題は?
何かにすがるようにページを捲る私の目にと、「類題」という文字が止まる。
さっきとおんなじような問題だったら・・・もしかしたら、応用して解けるかもしれない。
747 :
書いた人:03/09/19 23:19 ID:8vgMIxpA
【類題一 小学6年生のB君たちは、男友達6人でクリスマスパーティーを開きました。寂しいですね。
さて用意されていたのは、ホールのデコレーションケーキです。
そこでB君たちは、ケーキを六等分して食べました】
どうでもいいけど、「寂しいですね」なんて合いの手要らないでしょ。
男の子同士だからなぁ・・・・・・これはこれで○だと思うけど。
男の子だったら、別に相手に譲ったりしなくてもいいもんね。
よし、○!
自信を持った答えも、意地悪な巻末の赤い文字によって全否定される。
【類題一 ×
・・・・・・・・・男同士だったら闘え!!】
748 :
書いた人:03/09/19 23:20 ID:8vgMIxpA
・・・・・・・・・・・・
よし! 数学は捨てよう。
次行こう、次!
とは言ったものの、その後も私の回答は尽く外れていった。
【ブラジルの主要輸出品目は、サンバとカーニバルである】
・・・・・・○なの?
【日本の国技はほぼモンゴル相撲】
・・・・・・いや、モンゴル出身が多いだけであってさ、別にちがうでしょ。
確かにあの暴れん坊横綱のイメージ強すぎですけどねぇ。
749 :
書いた人:03/09/19 23:21 ID:8vgMIxpA
だめだこりゃ、と頭の中で爆発ヘアーのチョーさんが唇を突き出した。
ホワワワワワ〜ンというSEまで付いてくる、私の頭脳のサービス精神に乾杯。
「あのぉ〜、飯田さん」
ダメですよぉ、これじゃ。
と正直に言おうとした所、他の参考書をパラパラとみていた飯田さんが雄叫びをあげた。
「おっ! また正解・・・圭織ってば、やっぱりこういうの向いてるのかなぁ?
これだったら、紺野なら余裕だね?」
「・・・・・・・・・えぇ」
あぁ、私ったらダメなヤツ。
飯田さんの脳味噌と私の脳味噌の造りが根本的に違うのは、百も承知だけど。
こんな舞い上がってる飯田さんに言えないよ・・・・・・無理です、なんて。
750 :
書いた人:03/09/19 23:21 ID:8vgMIxpA
「それじゃ紺野、この本でいいのね?」
「はぁ」
自分のダメっぷりと、暗室よりもお先真っ暗な未来に返事も虚ろ。
正直言って、これじゃあどの参考書を使っても同じ気がする。
私を残して、飯田さんはさっさと会計に向かってしまった。
自分のお財布を軽くしないで済むのは嬉しいけど・・・
やってきた不幸の余りの濃密さに、これくらいの喜びなんか霞んでしまう。
どうなんだろう・・・ホントに準一級なんか受かるのかなぁ?
寺に篭って、一週間精進料理を食べるのよりはまだ楽だけどさ。
今度の試験がいつか、っていうのにもよるよね。
なるべく先の方がいいな・・・・・・
とぼとぼと飯田さんの後を追う私の身長は、多分オーラで5cmくらい縮んで見えたと思う。
751 :
書いた人:03/09/19 23:22 ID:8vgMIxpA
飯田さんは会計の横で、腕を組んで待っていた。
私を見つけるなり、嬉しそうにポスターを指差す。
「ほら、紺野。今度の準一級の試験、一ヶ月後だってよ」
「ええぇ!? 無理ですってば・・・一月(ひとつき)じゃ足りません
これならスワヒリ語をマスターするほうがマシですって」
「英語も碌にできないくせに、生意気言ってんじゃないの。
印鑑持ってきてるんでしょ? ほら、今すぐここで申し込みしちゃいな」
保険セールスのおばさんのような強引さ・・・って、私はセールス受けたことないですけど。
ともかくそんな勢いとあつかましさで、飯田さんは申し込み用紙とボールペンを私に叩きつける。
あとはまるで霊感商法に罹ったみたい。
あら不思議、私の右手が勝手に動いております
・・・・・と、ふざけてナレーションでも入れなくちゃやってらんない。
752 :
書いた人:03/09/19 23:24 ID:1EEeEivg
――――――
「結果が出るのが試験の二週間後か・・・・・・早くていいね。
それじゃそれまでは、とにかくガマンガマンだ」
「はぁ」
飯田さんは我慢するだけでいいんですけど、私は頭をフル回転させてあのふざけた思考回路に合わせないといけないんですよぅ。
私の心の中を絵で表すなら、ムンクの「叫び」がぴったりだ。
とりあえず一月・・・猛勉強だなぁ・・・
冷房が効いた本屋さんから出るのが少し名残惜しくて、私たちはゆっくりと出口へ向かう。
飯田さんが渡してくれた本屋さんの袋が、鉄アレイでも入ってるみたいに重い。
と、飯田さんの腕にも同じ袋が抱きかかえられているのに気付いた。
753 :
書いた人:03/09/19 23:25 ID:1EEeEivg
「飯田さん・・・・・・何か買われたんですか?」
「え? あ、うん・・・・・・ちょっとね」
そう言ってそっぽを向く。
あれ?
どうしたんだろう?
「何買ったんですか?」
「いや・・・別に、つまんないもんよ」
「ちょっと見せて下さいよ」
手を伸ばそうとした瞬間、飯田さんはその袋を頭の上に高く掲げる。
754 :
書いた人:03/09/19 23:26 ID:1EEeEivg
「見せるほどのもんじゃないよ」
「うぅ・・・」
多分のんつぁんが「見せて〜」って言ったら、飯田さんは本を一ページ一ページ、読み聞かせすらするだろう。
それに比べて私ときたら審判の資格取得を押し付けられ、
揚げ句の果てにリーダーの買った本まで見せてもらえないなんて・・・
『自分はもしかして、モーニング娘。の中で大切に思われていないんじゃないか?』
そんなことまで頭に浮かんできて、一気に悲しくなってくる。
あ、ヤバイ。
目に溜まった涙は、『止めなくちゃ』って私の感情とは関係なく、流れ落ちる。
755 :
書いた人:03/09/19 23:27 ID:+3sUMlox
「ちょ、ちょっと・・・紺野、泣いてんの?」
「いえ・・・・・・泣いてなんかッ、いませんよ」
涙を流しながら言うこの言葉は、殆ど説得力ゼロ。
飯田さんは漫画みたいにあたふたとすると、観念したように「しょうがないなぁ」と呟いた。
「紙袋破くの嫌だったから、見せなかっただけだって。
ほら、紺野・・・・・・教えてあげるから。私が買った本、ほら・・・えーと・・・これ、そうこれ」
「よっ」と背伸びをして、飯田さんはすぐそこの本棚から本を抜き出す。
心配そうに私と目を合わせたまま、ぞんざいに本を私に見せてくれた。
「ね? これだって、これ」
「・・・・・・ホントに・・・これなんですかぁ?」
「そうだって。ね? だからもう泣かない」
「ホントに・・・保田さんの写真集なんですかぁ?」
756 :
書いた人:03/09/19 23:28 ID:+3sUMlox
涙を手で拭いながらの私の言葉に、飯田さんは初めて視線を本に落とす。
「あ、う、うん・・・そうだよ、これ。
ほら、圭ちゃんの写真集まだ持ってなかったから、買ってあげないといけないって思ってさ」
「そうなんですか」
「そうだよ、ほら、だから圭織、『つまんないものだ』って言ったでしょ?」
「それって・・・酷いです」
私の言葉にぺろっと舌を出した飯田さんが凄く可愛くて、涙はすぅっとひいてしまった。
笑いながら本棚に写真集を返す飯田さんを見ながら、
今まで一度もあんな飯田さんの顔を見たことが無いのに気付いた。
泣いていたのと飯田さんの新たな一面を見た満足感で、この時私の感覚は鈍っていた。
だって保田さんの写真集を見て、飯田さんがあんなに慌てていたのを見逃していたから。
757 :
書いた人:03/09/19 23:32 ID:+3sUMlox
今日はここまで。
一応「・・・」に固定します。あと
>>745氏のご意見もご参考に。
不慣れで時々表記揺れが出るかと思いますが、お気になさらず。
>>743 容赦なく終わらせるつもり・・・長編は脳が疲れるのです。
>>744 つまんないこと聞いてゴメンね、こんこんさん。
>>745 一応他の書籍で確かめた、野暮な私。
川o・-・)ノ<更新乙です
こちらこそ、つまらない返答でゴメンね
ところで飯田さん、酷いです!
保田さんの写真集は、つまらないというよりむしろおもしろ(ry
勉強がんがれ、こんこん!
(0^〜^)<作者さん、更新乙です。
つ日 うーん。ホントに読みやすくて面白い文章を書かれますね。
いつの日か、天才的って褒めちゃうかもしれませんYO。
更新お疲れ様です。
いやはや、些細なことに口を出してしまいましてスマソ > 一字空白
飯田が試験受けた方が良さそうですねw
ハイペース更新乙です!
今日もお土産いただきます〜
あー楽しみだー
762 :
書いた人:03/09/20 22:39 ID:Q3iW4utN
――――――
次の日から、私の猛勉強が始まった。
人生でこんなに一生懸命勉強したことが無いってくらい、朝から晩まで勉強ばっかり。
なるべくなら、この労力を他のことに使ってみたい。
もう、これで私の歌とかダンスに支障が出たら、皆さんのせいですからね。
・・・・・・既に支障だらけっていう意見は、即却下です。
審判準一級の試験科目は、私が立ち読みで玉砕した【一般推論】と、もひとつ【審判概論】の2つ。
正直一般推論だけだったら、絶対合格できない。
でも審判概論の方は・・・・・・なんだか、少しは私の頭で理解できる内容だった。
取り敢えずしっかり内容を覚えさえすれば何とかなる科目だから。
助かったぁ。
763 :
書いた人:03/09/20 22:40 ID:Q3iW4utN
――――― 2週間後
「紺野ちゃん、またおべんきょ?」
「うん・・・・・・試験まであと2週間しかないから」
空き時間、楽屋で単語帳を繰る私に、のんつぁんが少し心配そうに声を掛けてきた。
今まではまこっちゃんにばれないように、お仕事の時は極力勉強はしないようにしてたけど。
でも試験が近付くに連れて、焦ってどうしようもなくって。
「これは何の科目なの?」
「うんとね・・・審判概論っていう、審判のこと色々って感じのヤツかな?」
「ふ〜ん」
そう答えたのんつぁんの顔は、殆ど分かっていないみたい。
私だって2週間前までは、審判試験なんて未知の領域だったから、のんつぁんの反応も当然といえば当然。
764 :
書いた人:03/09/20 22:40 ID:Q3iW4utN
というか、まだのんつぁんは良いほうなのだ。
他の面々といったら、私に審判試験を押し付けたことなんか忘れてるんじゃないかってくらい、ホントに無関心。
のんつぁんの背後に広がる風景は、本当にいつもの楽屋風景。
私を置いてきぼりにして、みんなが日常を送っているのがちょっぴり悲しい。
メンバーを見つめる視線が、最近恨めしげになっているのが自分で分かる。
「ね? 紺野ちゃん。私がちょっと問題出してあげるよ」
少しボーっと向こうをみていた私は、のんつぁんの声で我に返る。
さっさと私の手から単語帳を奪い取ると、「第一問! ジャジャン!」と調子良く続ける。
「えっとね・・・審判にとって大切なことを、審判三原則といいます。
それら全てをあげて、意味も答えなさい!」
765 :
書いた人:03/09/20 22:41 ID:Q3iW4utN
のんつぁんの行動にちょっと驚いたけど、受験モードまっしぐらな私はすぐに頭が切り替わる。
「えーーーっとねぇ、中立性でしょ?
審判は当事者どちらにも与することなく、常に公平な視線からジャッジを行うべし。
二つめはねぇ・・・正確性、だよね?
審判は常に正確であることを心がけ、けして勘に頼ることなく・・・・・・えっと、基本をおろそかにしてはならない。
えーっとぉ・・・で、三つめはねぇ・・・」
テキストの左隅に載ってたんだけどなぁ・・・なんだったっけかなぁ・・・
のんつぁんは「ふふッ」少し私に笑いかけると、
「うーんとねぇ・・・」と、上を見上げてヒントを捻り出す。
「紺野ちゃんさぁ・・・正確だったら、それだけでいいのぉ? 日が暮れちゃうよ?」
「あぁ! 迅速性・・・でしょ?
審判は常に判定に迅速であることを心がけ、
けして試合の流れを堰き止めることがあってはならない! かな?」
「あったり! だいじょぶそうじゃん」
親指を立ててウィンクをするのんつぁん・・・でもその手つきは、はっきり言ってトラウマだ。
766 :
書いた人:03/09/20 22:42 ID:Q3iW4utN
――――――
楽屋での勉強が功を奏してきたのか、試験の日が近付くにつれて正解率が上がってくる。
でも・・・それとは反比例して、私の心は段々ブルーになってきた。
審判試験は一年に一回。
2級は一年に二回あるのに、何でか知らないけど、1級と準1級は同じ日に一度だけ。
つまり・・・もしもこの試験にとちったら、まこっちゃん更生の機会はあと1年巡って来ないのだ。
まこっちゃんは今も時々、アウトだのセーフだの、色んな相手に出している。
それに合わせるようにモーニング娘。も少しずつ変わってきて、それで納得しているメンバーもいるみたい。
でも!! まこっちゃんにアウトを出されるのが少なくなってきてても、
それでも私には、まこっちゃんにジャッジを止めさせる必要があるんだ。
まこっちゃんがこうなってから、私はメッカへの礼拝のように欠かさなかった二人でのお食事を、もうずっとしていない。
一緒にお食事に行くのが、私は怖いんだ。
別にまこっちゃんにダメ出しをされるのが怖いんじゃない。
私が大好きだったまこっちゃんがこんな風に変わっちゃった、ってことを再確認するのが怖いんだ。
767 :
書いた人:03/09/20 22:43 ID:ug/HWDJ4
そのことに気付いてから・・・つまり、この試験が私自身にとって持つ重要性に気付いてから、
私の中の焦りは頂点に達したみたいだった。
もしもダメだったら。
もしもまこっちゃんを直せなかったら。
試験に通ったとしても、まこっちゃんにジャッジし返されて負けたら。
頭の中の樹形図は、悪い方向ばっかりに発展して。
自分がこんなにもネガティブな人間なんだって気付いて、また心は沈み込んでいく。
それが表面に出てきたらしく、私は歌もダンスも、番組の収録でも、しょっちゅう間違えていた。
私がどんなに怒られているのを見ても、メンバーは知らんぷリ。
勿論まこっちゃんを前に、大袈裟に心配して見せるわけにはいかない、ってことは分かってる。
それでも・・・
この苦しい気持ち、誰かに分かってほしかった。
768 :
書いた人:03/09/20 22:44 ID:ug/HWDJ4
結局、最悪の形で私は試験前日を終えようとしていた。
本当なら「若島津君を見習って、試験を前に百人組み手でもやりますか」
とでも言っておきたい所だが、生憎そんな冗談を言う気力も残っていない。
「ふぅ・・・」
お風呂に浸かっても、唇から漏れるのは溜息ばかり。
なんかなぁ・・・どうなっちゃうんだろ。
口をお湯につけてぷくぷくやってみても、ちっとも楽しくない。
もぉ・・・・・・いいや、どうでも。さっさと寝よう。
ぞんざいに身体を拭いて部屋に戻って、何気に携帯の窓に目を遣る。
メール・・・・・・来てるんだ。
って・・・・・・なんでメールの着信が13通もあるの!?
慌ててメールを一つ一つ開いた私は、呆気に取られた。
みんなからだ・・・
769 :
書いた人:03/09/20 22:45 ID:ug/HWDJ4
【詰まったら、娘。で一番可愛いこのアシスタントの顔を思い出してくださいね】
【紺野さん!! ファイトです】
【始まる前に深呼吸!】
【まぁ・・・・・・私には関係ないことだけど・・・
もしも受かったら、楽屋で一緒にハニーパイ踊ってあげるよ】
【間違ってもジュマペールとか書いちゃダメだよ】
【麻琴を取り戻せんの、あさ美だけなんよ・・・祈ってる】
【試験終わったら、おいし〜いお店、みんなで行こうね】
【ののみたいにお弁当に夢中で、試験に遅れたりせんといてな】
【分からない問題があっても、ポジティブポジティブ!】
【乳首コリコリいってま〜す・・・・・・ほら、緊張してるの解けた?】
【モーニング娘。の未来は紺野にかかってる・・・!! って、ウソだよ。
気楽にやってこいッ!】
【自分のペースでやってくればいいべ】
【紺野だけに押し付けちゃったことは、みんな悪いて思ってるよ。
頑張ってるあんたに「がんばれ」なんて圭織は言えないから、精一杯やってきて。ね?】
770 :
書いた人:03/09/20 22:46 ID:ug/HWDJ4
13通のメールを読んで顔がほころぶのが分かる。
そして目からだらだらと流れる水分を必死で右手で拭う。
涙で霞む目で一つ一つじっくり読みながら、保護設定にしていく。
でも・・・・・・1通足りないんだ。
一番大切な人からの1通。
あれだけ嫌がっていた試験なのに。
あれだけ気に病んでた試験なのに。
私は思わず入った気合いを胸に、グッと携帯を握り締めた。
やってやるんだから!!
771 :
書いた人:03/09/20 22:49 ID:ug/HWDJ4
今日はここまで。おかしい・・・どんどんシリアスになってる。
>>758 こんこんさんソロ写真集はいつ出るのやら・・・
>>759 その修飾語はよし子さんのためにあるのであり。
>>760 あんまり「!」とか出てくる文章を日頃読まないので、勉強になりました。
>>761 ハイペースって言うか、早くしないとn日に引っ掛かりそうでして。
流石スレが落ちたということは・・・
このスレもあと1週間以内に運命の日が来そうですなぁ。
。・゚・(ノ∀`)・゚・。
みんないい子だ…
よし子メールはワラタ
川o・-・)ノ<更新乙です
OH-SO-ROでレントゲン写真集出すって言って数ヶ月…
あまりに魅力的で日本中がメロメロになってしまうのが怖いんでしょうね(w
どんな結末になるのか楽しみです
藤本……もう、素直じゃないんだから〜
(0^〜^)<作者さん、更新乙です。
つ日 うーん。とにかく今は、こんこんガンバ!
それにしても、まこっちゃんと
どんな対決をするというのでしょう・・・
776 :
書いた人:03/09/22 00:35 ID:hyCwVzul
更新はちょっと今日はお休みで。
一応保全がてら、お知らせというわけで。
更新お疲れ様です。
おおっ、まともな(?)問題もあるんだ……よかったねこんこん
778 :
書いた人:03/09/22 22:49 ID:Ch2+vTFK
――― 翌日
会場の入り口を前に、思わず私は溜息をついた。
こんなに大規模だったなんて・・・
一つのイベントビルを借り切った会場は、開場30分前なのにもう人でごった返している。
手近なベンチを見つけてさっさと居場所を確保すると、熱心に参考書を読んでいるライバルたちを見回す。
おじさん、おじさん、おじさん、おじさん、おじさん・・・・・・
はっきり言って、私みたいな年代の女の子なんて一人もいない。
ハハァ・・・書店の店員さんが驚いたのは、このことだったんだなぁ。
審判歴が長いんだろう、真っ黒に日焼けして太い二の腕をした人たちの中で、明らかに私だけが浮いている。
でも私みたいに止むを得ないから受けるんじゃなくて、自分からこの試験を受けたまこっちゃん・・・
ちょっとだけ、まこっちゃんの度胸を見直した。
779 :
書いた人:03/09/22 22:50 ID:Ch2+vTFK
【準一級・野球型】の試験場に入ってからも、私みたいな人は一人もいない。
って言うか、女の人が殆どいない。
まるで動物園に入れられた珍獣のように、周りの視線がチクチクと痛い。
自分の席に座ると、周りからの視線に耐え切れずに私はずっと前を向いていた。
「おい・・・・・・あの子、受験生か?」
「まさか、試験官の助手かなんかだろ?」
「いや、受験票持ってるぜ?・・・受かると思ってんのかなぁ?」
ささやき声も、丸聞こえ。
ちったぁ聞こえないように喋れよ、と思うけど、おじさんだからしょうがないのかなぁ。
それ以前にモーニング娘。だって気付かれないことも、少し悲しい。
周りが殆どおじさんだから、気付かれないのも当然と言えばそうなんだけどさ。
一旦耳をそばだててしまうと、その人たちの声は斜め後ろから、聞くまいとしても容赦なく聞こえてくる。
780 :
書いた人:03/09/22 22:51 ID:Ch2+vTFK
「あぁ・・・でもさぁ、何か最近、若い女も受けてるらしいよ」
「へぇ・・・俺、初めて試験場で見たけどなぁ、女」
「さっきさ、1級のラグビー型受けてる奴から電話あって、向こうじゃ二十歳過ぎくらいの女居たらしいよ」
「ウソだろ?ラグビーって、一番難しいって有名じゃねえか・・・・・」
そのあとの言葉は、試験前のごちゃごちゃした空気に誤魔化されて聞こえなくなった。
でも女の人も私以外に受けてるって聞いて、凄く嬉しい。
多分大学の部活かなんかで、マネージャーとかしてて詳しい人なんだろう。
さっきまでは彼らの話し声に身を切り裂かれるような気持ちだったけど、でも今は彼らに感謝する。
と、試験官が壇上に入り、冒頭の注意を流し始めた。
私は試験官に言われる前に、携帯の電源を落とす・・・の前に、
もう一度みんなからのメールを見返した。
よし、がんばってきますね。
781 :
書いた人:03/09/22 22:52 ID:Ch2+vTFK
―――――
試験官の声が室内で響く。
「・・・・・・携帯電話、PHS、ポケットベルの電源は予め切っておくように・・・」
机の上に並べた鉛筆を見つめながら、じっとその声を聞く。
左胸がまるで飛び出しちゃうんじゃないかってくらい、心臓のドキドキが大きくなる。
もう一人の試験官が机の間を靴音を響かせて見回っていて。
「・・・・・・時計は計算機能のない物のみ、その使用を認めます。尚、アラームは解除して・・・」
あれ?私、ちゃんと携帯の電源切ったかな?
一瞬気になったその考えは、もう不安から確信に変わってしまう。
慌てて携帯を取り出そうとした私の肘に鉛筆が当たって、ゆっくりと落ちる。
「・・・・・・不正があった場合には、直ちに退出を命じます。その時は今後の受験資格にも・・・」
カラン
説明が私の出した音で一瞬止まる。
鉛筆の軽やかな音とは正反対に、私はもう泣き出したいくらい。
えっと・・・どうしよう・・・
782 :
書いた人:03/09/22 22:52 ID:Ch2+vTFK
と、私の隣まで来ていたもう一人の試験官が身を屈めて、鉛筆を拾い集める。
その様子を遠目に見て、何事も無かったかのように説明が再開。
拾ってくれたのは頭がつるっつるの、もうおじいちゃんって言って良いくらいの人。
あたふたする私を尻目に、彼は手際よく鉛筆を取りまとめて、私に笑顔で渡してくれる。
「はい・・・」
「え、ア、えっと・・・・・・ありがとうございます」
お礼すらまともに言えない私に、おじいちゃんはにこっと微笑むと、声を潜めた。
「もしも緊張してどうしようもなかったら、胸に手を置いて、鼓動がゆっくりになるのを確認してご覧」
「え・・・?」
私が反応するよりも前に、おじいちゃんは後ろ手に組んで颯爽と行ってしまう。
そうだよね・・・周りから見てどんなに浮いていても、私自身がどれくらいできるかが大切。
緊張しないわけないけど、緊張したらしたで、その時に落ち着いてみれば良いんだ。
783 :
書いた人:03/09/22 22:52 ID:Ch2+vTFK
注意事項は全てを説明し終わった。
あとは時計の長い針が12に辿り着くのをじっと待つだけ。
じっと見たって裏返した問題文が透けてくれるわけじゃないけど、それでも見つめてしまう。
試験官はじっと時計を睨みつけたまま。
私には、彼の持っている時計の秒針の音さえも聞こえるみたいで。
この一ヶ月の苦労はこれからの三時間次第で報われる。
モーニング娘。で私が得た集中力、見せてやる。
・・・と、試験官が時計から目を離した。
784 :
書いた人:03/09/22 22:54 ID:rhymbRfL
「始めてください!」
一斉に問題用紙を裏返す音。
でも私は一人問題用紙を裏返さずに、右手を左胸に当てた。
1回、2回、3回・・・・・・・・・
まるでプレストみたいなテンポだった心拍数は、次第に落ちていく。
今まで勉強したことを出せば、絶対大丈夫だから。
まこっちゃんは、絶対に元に戻るんだから。
12回・・・13回・・・14回・・・・・・
みんなが応援してくれた。
私には、頼もしい13人が付いてくれてる。
18回・・・・・・19回・・・・・・20回・・・
よし!心臓のバクバクは治まった!
遅れて問題用紙をひっくり返す。
隣のおじさんが私の行動に驚いた顔をしていたけど、もう気にもしなかった。
785 :
書いた人:03/09/22 23:00 ID:rhymbRfL
今日はここまでです。短くてスマソ。
ちなみにプレストとは1分間に180回打つくらいのテンポです。
プレステじゃないよ。
あぷろだに昔書いた小説が上がっててびびりました。
>>772 よし子なら実際にやってくれそうな気も。
>>773 個人的には「お尻じゃなくてお腹だよ」写真集でも(・∀・)
>>774 藤本さんの目からはビームが出るかも
>>775 どんなでしょうね。あんま考えてないかもしれません。
>>777 試験は多分、向き不向きが全てだと思います。
おっ、ついに試験開始。こんこんがんがれ!
試験官のおじいちゃん(・∀・)イイ!!
なんか自分が受験生だった頃を思い出すなあ。
(0^〜^)<作者さん、更新乙です。
つ日 うーん。試験中は静かにしてる事にしますYO。
川o・-・)ノ<更新乙です
そろそろゴールが見えてきそうですね
紺さんが合格することを祈ってます
789 :
書いた人:03/09/23 20:28 ID:aJo/Mz0d
――――― 3時間後
燃え尽きた・・・
解答用紙が回収されるのを見送りながら、殆ど放心状態。
こんなに精神を集中した3時間が、私の人生にあったんだろうか。
審判概論の小論文は、ちゃんと書けたと思う。
【審判三準則における相互関係について論じた上で、
それを踏まえて理想とされるべき審判を、実例を交えた上で論ぜよ】・・・だったかな?
のんつぁんが問題を出してくれた所だから、まあ・・・どうにかなった範囲。
問題はなぁ・・・一般推論。
飯田さんみたいに自分の感性でストレートに正解には辿り着けないから、
なるべく私の感性と違う答えを書くようにしたけど、それがどう出るやら。
とにもかくにも、もう勉強しないでいいってことにはホッとする。
790 :
書いた人:03/09/23 20:29 ID:aJo/Mz0d
試験場の出口で振り返って、あのお爺さんに会釈をしておいた。
空手でも何でも同じ、取り敢えず礼儀は大切にしなくっちゃ。
さぁて・・・・・・家帰ったら、何食べようかなぁ?
色んなことを考えて、とにかく試験のことを頭から忘れ去ろうと努力。
お餅かなぁ? でもお寿司でもいいよねぇ・・・のんつぁん誘って、どっかに食べにいこっかなぁ?
頭を使いすぎたから、とにかくお腹が空いてる。
あれ?
ボーっとしながら歩いている私の目に、私と同じくらい周囲から浮き立った人が止まった。
遠目で後ろ姿だけど、すらっと背が高くて長い髪の・・・まあ、女の人だろう。
あれで実は男でした、って言われたら詐欺だ。
ラグビー型で一級受けてたって人かなぁ?
早足で颯爽と会場から出て行くその人の顔、ちょっと見たいなぁ、と歩き出そうとした瞬間。
「・・・こぉ〜ん〜のぉ〜ちゃん!!」
791 :
書いた人:03/09/23 20:29 ID:aJo/Mz0d
ッ!!
後ろからの突然の大声と、背中をバンッと叩かれる感触。
痛いって言うよりは、もう驚いて何がなんだか。
う〜んっと・・・なんで? なにが? どうしたの?
恐る恐る振り返ると、後ろには少し私よりもちっちゃな色の黒い女の子。
街中で出るから気を遣ったんだろう、いつもとは違って後ろ髪を二つに分けて垂らしている。
「紺野ちゃん、お疲れ様!」
目をキラキラと輝かせて、のんつぁんがニッコニコと微笑んでいた。
「え・・・? あれ? 何やってんの?」
「へへへ・・・あのねぇ、紺野ちゃんがもう終わるかなって思って、待ってたの」
「そうなんだぁ・・・ありがと。あのさ、どっか食べに行かない? お腹減っちゃって」
「そのつもり」
もう一度会場の出口に目をやると、とっくにあの人はいなくなっていた。
でもあの人のおかげで変な緊張しなくて良かった・・・もう姿の見えないあの人に、心の中でお礼を言った。
792 :
書いた人:03/09/23 20:30 ID:aJo/Mz0d
「でね・・・その問題がちょっと自信ないんだぁ・・・それとも一つ、数学の所もなんか微妙かなぁ」
のんつぁんが安倍さんに教えてもらったと言うお店に向かって、二人で夕暮れの街を歩く。
試験が終わった開放感で、さっきから私ばっかり喋りっぱなし。
のんつぁんは私の言葉を、ずっと笑って聞いてくれる。
「85%正解すれば全員合格なんだけど、多分私が気付いてない間違いとかもあると思うし、
だから合格できたか、ちょっと自信無いんだよねぇ」
「そっかぁ・・・でも紺野ちゃん、お疲れ様でした」
そう言うと立ち止まって、のんつぁんはぺこりと頭を下げた。
その仕草が少し滑稽。
一瞬、なんでのんつぁんがそんなことをしたのか分からずに、首を傾げてしまう。
「みんなさぁ、紺野ちゃんには感謝してると思うよ」
その言葉に頷くと、昨日のみんなからのメールのことを話した。
「そっかぁ・・・ってかよっすぃ〜、あの人何を・・・」
「まぁ、でも緊張感解けたから良かったよ」
私の言葉で、のんつぁんの苦笑が少し軽やかなものになったように見えた。
793 :
書いた人:03/09/23 20:32 ID:TCZ42v/R
お店に着いた私たちはウエイトレスからメニューを奪い取ると、穴があくように見つめる。
ふふふ・・・・・・脳味噌にカロリー使いまくったから、今日は親の仇のように食ってやるんだから。
店員さんに「すいません・・・もう材料の方が」って言わせるのが、実は密かな夢だ。
未だにドラゴンボールでしかそんなシーン見たこと無いけど。
「うーんと、カボチャのサラダ美味しそう・・・でもこっちのサラダも食べたいなぁ」
「両方頼んじゃえば?」
「そうしよっか?」
店員さんは私たちのオーダーを必死にメモしながら目を丸くしていた。
「食べれるの?」って思ってるんでしょ?・・・・・・食べるよ。
店員さんが行った後、のんつぁんがトイレに立った。
その隙にバッグの中からもう一度問題用紙を取り出して、眺める。
食事の時くらいは思い出したくないけど、でも気になるもんなぁ・・・
794 :
書いた人:03/09/23 20:33 ID:TCZ42v/R
『あの問題は間違った』って思い出せるようなテストは点数がいい。
・・・って言ってたのは、誰だったかな?
なんでも自分がどこが出来て、どこが出来なかったかをしっかり覚えていられる位、余裕があったし集中もしていたから、ってことらしい。
確かにそうかも知れないけどなぁ・・・今回の試験は内容が内容だけに、この法則がそのまま使えるのか疑わしい。
のんつぁんはここまでの道すがら『絶対受かってるよ』って言ってくれたけど、それもどうだか。
私に気を遣ってくれたのかも、って言うのが抜けきれない。
あぁぁあぁ・・・もういいや、忘れよう。
こんなこと、さっさと食べて忘れてしまおう。
のんつぁん、早く帰ってこないかなぁ・・・トイレのほうに、思わず首を伸ばす。
丁度のんつぁんがトイレから出てきたところだった。
私に片手を上げると、ニコニコとこっちに向かってくる・・・・・・と、途中で止まった。
「あれぇ?いーださん、何やってんですか?」
795 :
書いた人:03/09/23 20:33 ID:TCZ42v/R
え? いーだ? いーださん? って・・・飯田さん?
慌ててのんつぁんの所へパタパタと駆け出すと、飯田さんがパスタを前に口をぽかんと空けていた。
「のんちゃんと紺野・・・・・・どしたの?」
「紺野ちゃんの試験終わったら、一緒にお食事しようと思って、私が誘ったんですよぉ」
胸を張ってのんつぁんが答える。もう先輩だもん、って言い張ってるみたいに。
飯田さんはその様子に目を細める。
「そうかぁ・・・偉いね」
「で、いーださんは何やってたんですか?」
「え? 圭織?
近くまでお買い物に来たんだけど、なっちがこのお店良いよって教えてくれてたの思い出してね。
ちょっと寄ってみようかな、って思ったの」
凄い偶然。
おんなじお店に同じ時間に入ってるなんてなぁ。
796 :
書いた人:03/09/23 20:34 ID:TCZ42v/R
「折角だから圭織と一緒に食べよっか?」
飯田さんはにこっと笑うと、私たちの反応にお構いなしに席を立つ。
いつだったかカラオケを断っちゃった時は凄く飯田さんがブルーになっちゃったから、今回は断れないなぁ。
のんつぁんもそれは分かっているみたい。
「私たちまだお料理来てませんから、こっちに移りますよ」
そう言ってのんつぁんは私に頷く。
797 :
書いた人:03/09/23 20:35 ID:H5Ngm0+h
荷物を取りに席に戻った時に、のんつぁんが私に囁いた。
「多分ねぇ・・・いーださん、紺野ちゃんが心配だから近くまで来たんだよ。
だってさ、買い物してた、って言ってたのに、全然荷物無かったじゃん」
「そういやそうだねぇ・・・でも携帯に電話くらい入れてくれれば、いいのになぁ」
「照れてたんじゃないの?」
確かにさっき、飯田さんは微妙なはにかんだ顔をしてた。
そっかもねぇ。
結局その後、飯田さんとのんつぁんとお食事をして。
いつも見れない二人が見れて、また少し得した気分。
お店を出たときには、もうすっかり試験のことは忘れていた。
・・・・・・まあ、やることはやったんだからね。待ってみますか。
798 :
書いた人:03/09/23 20:37 ID:H5Ngm0+h
今日はここまで。粛々とオソロを待ちますか。
>>786 半実話だったりして。
>>787 次回からまた馬鹿っぽくなりますゆえ。
>>788 あと1週間くらいで終われば上出来かな、と。
川o・-・)ノ<更新乙です
紺ちゃんも乙です
同じく粛々とオソロを待ちます
(0^〜^)<作者さん、更新乙です。
つ日 うーん。飯田さんものんつぁんもいいですねぇ。
とにかく読んででホントに楽しいです。
n日経過後も私が完璧に保全しますから
安心して長編にしてください。
( ´ Д `)<保゙っ
更新お疲れ様です。
試験終わって良かったね、こんこん。
読んでるこちらまで、なんだか緊張が解けた感じです。
803 :
書いた人:03/09/25 03:00 ID:5OBsQP/x
―――― 発表日
カチカチカチカチ・・・・・・
更新ボタンをクリックしまくる。
私はインターネットカフェで画面に張り付いていた。
合格者は朝10時から、審判協会のサイト上でも発表・・・って言ってたから、さっきからアクセスしてるのに。
ちっとも更新されてないんだから、もう。
今日は10時からお仕事だけど、みんなにはもう遅刻することは言ってある。
もしも受かってたら、このまま協会まで行って合格証を奪い取って、それからみんなのところへ行く。
まこっちゃんを止める一番の早道がこれだからって、私が主張したんだ。
804 :
書いた人:03/09/25 03:01 ID:5OBsQP/x
あれから結局まこっちゃんは酷くなる一方だし・・・・・・もし落ちてたらどうしよう?
この2週間、考えまいとしてたけど、それでもどうしても浮かんで来た不安。
落ちてたら・・・・・・このままお仕事サボりたいなぁ。
そんなことを考えながらクリックを続けていると、画面がさっきのから切り替わった。
更新・・・・・・されたんだ。
息を呑んだまま、【準1級合格者発表】のリンクをクリックする。
東京会場・・・・・・私の番号・・・
まこっちゃんを取り戻せるのは私だけ。
口に溜まった唾を飲む。
!!
あった・・・
これ・・・だよね。私の番号と同じ。これ・・・・・・だね!
よし、よくやった! 私!
私はポーチを引っ掴むとブラウザを閉じるのも忘れて、カフェから飛び出した。
805 :
書いた人:03/09/25 03:02 ID:5OBsQP/x
―――
息が上がる。
電車を降りて、そして局の通用門から入って、さっきからずっと走りっぱなしだから当たり前。
それでも私は走るのをやめない。
エレベーターが来るのを待ちきれずに、階段を一段飛ばしで駆け上がる。
早く・・・早く、まこっちゃんを元に戻すんだ。
【モーニング娘。様】
と書かれた楽屋のドアを、走ってきた勢いそのままに押し開けた。
バァン!!
楽屋に辿り着いた途端安心感が出たのか、両手を膝について乱れた息を整える。
額から流れ落ちる汗は、頬を伝って鼻の頭から床にポタポタと落ちる。
床の浅い緑色が汗で深緑に変わるのをずっと見ながら、最後の息を大きくつくと首だけを上げた。
806 :
書いた人:03/09/25 03:02 ID:5OBsQP/x
私のほうを一斉に見ている14人。
鏡に向かっていた人、窓辺で話をしていた人、おやつを食べていた人、
みんなが私のほうを見たまま固まっていた。
いや、ただ一人まこっちゃんだけは私が首を上げたのを認めると、つかつかと歩み寄ってくる。
何が楽しいのかニコニコと笑いながら、まこっちゃんは私に向かって右手を差し出した。
息をついている私に、彼女が手を差し伸べたんじゃないことくらいは分かってる。
開いていた右の掌を一瞬グーにすると、まこっちゃんは親指だけを天に突き出した。
「あさ美ちゃぁ〜ん、アウトだよぉ。ダメだって、30分も遅刻しちゃ」
「ン・・・・・・と・・・・・・あのね・・・まこっちゃん・・・」
「言い訳なんか通用しないよぉ。
全く・・・飯田さんもついさっき来たばっかだし、みんなホントダメだなぁ。
言い訳じゃ、判定は絶対覆んないよぉ」
まこっちゃん越しにみんなに目をやる。
『紺野、試験どうだったの?』
みんなが私にそう聞いているのが、まるで声に出して貰っているみたいによく分かる。
ハイ、私は・・・やりますよ。
みんなに頷くと、疲れきった背筋をもう一度使って体を真っ直ぐに起こした。
807 :
書いた人:03/09/25 03:04 ID:DSoB1oSK
私の頷きが自分の判定への降伏だと思ったんだろう、まこっちゃんは首を左に傾けてニコッともう一度微笑んだ。
この一瞬のために・・・・・・私は努力してきたんだ。
息が完璧に整ったのをもう一度確認して、私は静かに息を吸った。
「まこっちゃん・・・・・・もうそんな風に、審判やるのやめて」
声には出さなかったけど、まこっちゃんは目を大きく見開いて口を半開きにして。
まこっちゃんの後ろでは、みんながまるで今すぐにパーティーでも開きそうな輝いた顔をしていた。
「あさ美ちゃぁ〜ん? どうしたの? ダメだよぉ、ちゃぁんとジャッジには従わないと、ね?」
驚きを一瞬で笑顔に変えると、まこっちゃんはもう一度私にアウトサインをした。
私はゆっくりと右腕を伸ばして、まこっちゃんの突き出した右手をつかまえる。
まこっちゃんの笑顔が凍りついた。
808 :
書いた人:03/09/25 03:05 ID:DSoB1oSK
「あさ美ちゃん? 何やってもジャッジは変わんないよ? これ以上やると、退場だよ?」
「あのね・・・もう一度言わせて? まこっちゃんもうこんなこと、止めて」
まこっちゃんはさっきよりも声のトーンは上ずり、心なしか早口になっている。
捕まえたまこっちゃんの右手が、プルプルと震えている。
私は左腕も伸ばすと、両手でまこっちゃんの手を包み込んだ。
矢口さんが唾を飲み込んだ音が、耳元で聞こえたような気がした。
「まこっちゃん・・・お願いだから、ね?」
「あさ美ちゃん、審判は絶大なんだよ」
意外な出来事に焦りを浮かべつつも、圧倒的優位を保っている余裕だろうか、まこっちゃんはまだ笑っている。
右手を離して、私はポーチを探る。
今日すぐに貰ってきた証明書・・・そして諸悪の権化。
左手でまこっちゃんの手をつかんだまま、真っ直ぐに薄茶色のカバーで包まれたそれをかざす。
一瞬不審な顔をしたまこっちゃんの目が、それを読んでキッと鋭いものになった。
809 :
書いた人:03/09/25 03:05 ID:DSoB1oSK
なるべく毅然とした態度で、まこっちゃんを見つめて言い放つ。
「じゃあ、私も準1級野球型審判として言うから。
まこっちゃん、そんな風に人を判定して回るのは間違ってるよ・・・」
「・・・・・・」
「お願いだから・・・もうそんな風に、自分や人を判定していくのは止めて」
のんつぁんと藤本さんがガッツポーズを決めた。
豆と愛ちゃんが抱き合って、飯田さんが優しく微笑んでいた。
でも・・・違うんです、皆さん。
みなさんからはまこっちゃんの顔が見えないから、もう決着がついたと思うんでしょ?
まこっちゃんの顔色は、一瞬真っ赤になると徐々に青くなっていった。
まこっちゃんはさっきみたいに笑ってもいなかったら、泣いてもいない。
ただじっと目を伏せて、口を真一文字に結んだままで。
突然信じていたものを奪われた恐ろしさに見舞われて、まこっちゃんはガクガクと震えていた。
それが握った右手からも伝わってきて、私の腕まで揺れ始める。
810 :
書いた人:03/09/25 03:06 ID:DSoB1oSK
流石に様子がおかしいことに気付いたんだろうか、安倍さんが私たちのほうに近寄ってこようとした。
その刹那、
「級が上だからって、正しいジャッジだって限らないよ!!
あさ美ちゃん・・・私がしているジャッジは、絶対にあさ美ちゃんのジャッジより正しい!」
そう叫ぶと、まこっちゃんは私の左手を振り放した。
大声に驚いて、安倍さんが肩を竦めて棒立ちになる。
「まこっちゃん・・・・・・まだ分かってくれないの?
そんな風に全てのことに審判してまわるのは、絶対間違ってるって!」
「違う!」
「私からしたら、そんな風にやってるまこっちゃんにアウト出しちゃうよ・・・」
「違う! 違うもん!」
まこっちゃんは下を向いたまま、ただ首をひたすら横に振りつづける。
811 :
書いた人:03/09/25 03:08 ID:upN1TzBj
楽屋の中の時が止まったみたいに、誰も動こうとしない・・・・・・いや、動けなかった。
まこっちゃんはずっと下を向いてるし、私はそれを睨みつけたまま。
他のみんなはただおろおろとしているだけで。
「そうか・・・・・・じゃ、しょうがないね」
さっきまで椅子にかけたまま見守っていた飯田さんが、おもむろに立ち上がる。
私とまこっちゃんの間に来ると、
飯田さんは今までどんなお説教の時にも見たことが無い、キツイ眼差しでまこっちゃんを見据えた。
「小川、顔上げなさい」
「・・・・・・・・・」
「小川ッ!!」
怒鳴られて、まこっちゃんがゆっくりと顔を上げた。
青ざめたままの顔の中で、血走った眼だけが異様に際立つ。
薄紫色に染まった唇が痛々しい。
飯田さんは顔を上げたまこっちゃんに、『よし』と頷いた。
812 :
書いた人:03/09/25 03:09 ID:upN1TzBj
「・・・小川は、級が上だからって、紺野の方が実力があるとは思わないんだね?」
「・・・・・・ハイ」
「それじゃ・・・・・・二人で勝負すればいいでしょ?」
「えぇ? 何をですか・・・」
飯田さんが言ってることが一瞬分からずに間の抜けた受け答えをしてしまう。
「何をって・・・勿論、審判の勝負。審判同士でその腕を勝負して、勝った方が上ってことでいいでしょ?」
「・・・・・・?」
まこっちゃんも意味が分からないんだろう、不審な顔で飯田さんを見上げる。
ただ一人突っ走る飯田さんに、なんとか私は食い下がってみる。
「いやだからですね、審判の勝負って・・・・・・どうやるんですか?」
「どうって・・・お互いに色んなことに判定しあって、どんだけ正しかったか競えばいいでしょ?」
813 :
書いた人:03/09/25 03:11 ID:upN1TzBj
何を当たり前のことを・・・って感じで、飯田さんは落ち着き払って応える。
「いや・・・誰が判定するんですか? どっちも自分の方が正しいって言い張りますよ?」
「そんなら心配いらない」
私の反論なんか折りこみ済みなんだろう、飯田さんは唇の端をニッと上げると私に掌をかざした。
手の中にはどこかで見た茶色い皮のケース。
【証 飯田圭織 右の者 審判1級であると認める】
「圭織が審判やるから・・・・・・文句ないっしょ?
紺野よりも早く来るのに、ハロモニ運動会の時よりも必死に走ったんだからね」
少し照れたように俯く飯田さん。
わたしもまこっちゃんも、いや、楽屋にいる飯田さん以外の全ての人間が、
信じられないように目を剥いて、立ち尽くしていた。
814 :
書いた人:03/09/25 03:14 ID:upN1TzBj
今日はここまで。
当初に思い描いた作風とか、気にしなくなってきたこの頃。
>>799 泣くのが怖くて、まだ聞けない私。
>>800 そう言って頂けるのは最大級の賛辞であり。
>>801 なんて読むんだ、ゴチーン。誕生日おめ。
>>802 しばらく緊張しっぱなしのシーンかも。
(0;^〜^)<作者さん、更新乙です。
つ日 うーん。衝撃の展開ですね。
イヤこれは凄いことになってきました。
川o・-・)ノ<更新乙です
飯田さんも受けてたんですね…
これじゃ紺野が受けた意味がな(ry
こんまこの最後の闘い、楽しみにしています
817 :
Y:03/09/25 11:44 ID:+yc2z9aI
リーダーかっこいい・・・
実物も見習(ry
|
|ハ@
|д‘) <また実物よりもカッコイイいわれてるな
|ハ∪
|D`) <更新乙
⊂ノ
|
更新お疲れ様です。
おおっ! 会場で見かけたのはやはりリーダーでしたか。
821 :
書いた人:03/09/26 02:23 ID:HyhdOQ+U
――――
『勝負は収録後、すぐに。ただしお仕事なんだから、収録はキチンとこなしなさい』
飯田さんの毅然とした言葉の後も、しばらくはみんな固まっていた。
次第にその空気に耐えられなくなったのか、一人、また一人と楽屋を出ていく。
脇をすり抜けるみんなを首を振って顧みながら、私はおろおろとするだけ。
そうだ・・・まこっちゃん・・・
そう思って、まこっちゃんに手を伸ばす。
「あの・・・」
でも、まこっちゃんは私の腕をくぐりぬけるように、黙って楽屋を出て行く。
まこっちゃん・・・・・・
その背中を見つめていると、肩にぽんと手を置かれる感触。
振り向くと、最後に楽屋に残った飯田さんが少しはにかんだ顔をしていた。
「紺野・・・・・・私たちは遅刻しちゃったから、すぐにメイクと衣装」
「え? あ・・・・・・ハァ」
「色々聞きたいんでしょ? まぁ・・・ジャッジが不公平にならない範囲でなら、答えてあげるからさ」
822 :
書いた人:03/09/26 02:24 ID:HyhdOQ+U
そのままテレビに出ても大丈夫な衣装からサッと着がえると、飯田さんはメイク台の鏡と向き合う。
慌てて私も日常では絶対着ないような服を着ると、飯田さんの隣に腰掛ける。
別におかしなとこなんか無いのに、どこを直してるんだろう?
って思うほど完璧なメイクをしてるのに、それでもなお、飯田さんはパフで頬を撫でていた。
「紺野さぁ・・・どこから話せばいいかな?」
飯田さんは鏡を見つめたまま。
私もさっさとメイクを済ませちゃえ、ってことなんだろう。
この世界に入ってから散々教えてもらって、
最近になってようやく出来るようになった小細工を自分に施す。
823 :
書いた人:03/09/26 02:25 ID:HyhdOQ+U
「あのぉ・・・1級って・・・何型ですか?」
「うん、ラグビー型だよ」
事も無げに返す飯田さん。
ちょ、ちょっと待ってよ・・・・・・ってことは・・・
あの『二十歳過ぎの女』とか、私が見た後ろ姿は・・・飯田さん?
・・・気付け、私。
「それじゃ、もしかして、のんつぁんとお店で会った時、あれって・・・」
「うん、試験帰り。紺野と考えが一緒だったんだよ。
なっちに教えてもらったお店ってのはホント。
まさか会うとは思わなかったけど、我ながらよくあんな言い訳できたよ」
「って、そう! 何で隠してたんですか!?」
自分の言葉が失礼になってるのに薄々気付いてるけど、それでも私はその口調を変えられない。
大体飯田さんが1級を取っちゃうんだったら、私が受ける必要だって無かったんだ。
その時、初めて飯田さんがこちらを向いた。
その顔は収録仕様の完璧な飯田さん。
824 :
書いた人:03/09/26 02:27 ID:GaANVLYa
私の質問が意外だったみたいで、飯田さんは唇を尖らせる。
「え? だって、小川には知らせないで、紺野にだけ私が審判だって先に知らせんのは不公平じゃん。
習ったっしょ? 審判三原則。公平性って無かったっけ?」
「いえ、ありましたけどぉ・・・」
「小川がもし、『上級のジャッジが必ずしも合ってるとは限らない』って言い返したらって、考えなかった?」
「そりゃあ・・・考えました」
「だったら、準1級と2級の試合を裁決できるのは、その上の1級審判だけでしょ?」
飯田さんの言ってることは一々理に叶ってるけど、それでも喰らった不意打ちのインパクトが大きすぎる。
「まあ・・・・・・紺野が万が一落ちたら、ってことは考えたけどね。
それでも、圭織が1級を取ったのは、あくまでも、あんたと小川の試合をジャッジするためだよ」
「あのぉ・・・もしかして・・・」
「うん?」
825 :
書いた人:03/09/26 02:28 ID:GaANVLYa
首を傾げた飯田さんがおっきな目で私を見つめる。
飯田さんがいつからこんなことを考えていたのか。
そんなことはどうでもいいけど、それでも最後に解いておきたいこと。
「本、買いに行ったじゃないですか、一緒に。あの時・・・飯田さん・・」
その時、飯田さんは目を三日月にして白い歯をこぼした。
「あのねぇ・・・うん、そうだよ。あの時買ったの、1級の参考書。
紺野が見せろって言うから、こっちもテンパっちゃってねぇ」
「それじゃ、保田さんの写真集って言うのも・・・」
「うん、ウソ。いくら何でもメンバーの写真集くらい持ってるよ。
適当にそこら辺の棚から取ったら圭ちゃんの写真集でビックリしたけどさ」
そうか・・・
飯田さんの慌て具合が妙に印象に残ってる。
手に持った本を見たときの、あのキョドり具合。
凄いなぁ・・・ここまで騙されっぱなしって、私の人生隙だらけだ。
826 :
書いた人:03/09/26 02:29 ID:GaANVLYa
少し考えにふけってしまった私の顔を、心配そうに覗き込む飯田さん。
「あのさ・・・嘘ついちゃったことは、ごめんね。
もしこれで紺野にだけ私が審判やるかも、って言ったら、絶対小川からクレームつくと思ってさ」
そう言って、おでこの前で両手を合わせる。
飯田さん、リーダーなんですもんね。
『なるべくOBに迷惑掛けずに解決したい』・・・でしたっけ?
私には迷惑かかりまくりでしたけどね。
でも・・・
飯田さんもこの一月半、一生懸命やってたんですね。
自分の唇から、溜息ともつかない笑いが漏れたのが分かった。
827 :
書いた人:03/09/26 02:30 ID:DvexJAnC
「飯田さん、許してほしいですか?」
私の態度が予想外なのか、目を見広げる。
「もし許してほしいんだったら・・・・・・」
「・・・・・・」
「最高のジャッジをしてください」
雲の切れ目から日が覗いたみたいに、パァーーッと飯田さんの顔に安堵と笑いが広がった。
「最初で最後の、それで最高のジャッジをしてください。
私も・・・最高のジャッジをしますから」
「・・・分かった」
満面の笑みで頷く飯田さん。
その顔を見てると私もまこっちゃんに勝てるような気がして、自然と顔がほころぶ。
828 :
書いた人:03/09/26 02:31 ID:DvexJAnC
あれ?
飯田さんの肩越しに、扉の陰から半分顔を覗かせたシゲさんの姿。
「シゲさ〜ん、どしたの?」
そう言って手を振ると、飯田さんも首を伸ばす。
シゲさんは私たちの視線が集中したのが恥ずかしいのか、一瞬扉に顔を隠した後、目だけを覗かせる。
ちょっと怖い。
「あのぉ・・・矢口さんが、二人呼んできなさい、って」
「あ、ヤバッ・・・紺野、マズイよ」
時計を仰ぎ見ると、もう20分は経っていた。
慌てて立ち上がって、シゲさんと三人でスタジオに急ぐ。
829 :
書いた人:03/09/26 02:32 ID:DvexJAnC
「シゲさんさぁ・・・矢口、怒ってた?」
パタパタと廊下を早足で歩きながら、心配そうな飯田さん。
シゲさんは人さし指を唇において上を向くと、『うーん』と考え込む。
危ないなぁ・・・そんな風に歩くと、転んじゃうよ?
「うーんとですねぇ・・・・・・激怒です」
「「マジで!?」」
ハモッたのがおかしくて、飯田さんと顔を見合わせて笑う。
ひと月前までは、到底考えられなかった私たちの光景。
不思議そうに見つめてくるシゲさんの背中を、飯田さんがポンと押す。
「6期もさぁ、誰かが変な行動に走んないように、気をつけなよ?」
「ハァ」
私はシゲさんの気の無い返事を聞きながら、
『藤本さんが突然女王様宣言とかだったら面白いな』、と不謹慎極まりないことを考えていた。
830 :
書いた人:03/09/26 02:37 ID:DvexJAnC
今日はここまで。申し訳無いのですが、次は月曜です。
扱い悪い割にラテ欄にしっかり載せるうたばんにドロップキック。
>>815 一応この辺は当初の予定通りだったりして。
>>816 一応紺野さんの受けた意味は、今回書いたとおりでして。
>>817 「パイパン」と「タイタン(プロゴルファー猿のゴルフロボット)」は似てる。
>>818 実物もしっかり頑張っていると思われ。
>>819 ホントにねぇ、どうしよう。あいぼんさんの胸で泣かせて下さい。
>>820 伏線張るの下手でごめん。
川o・-・)ノ<更新乙です
ミキティなら女王様宣言しかねない気がする(w
次回更新も期待
(0^〜^)<作者さん、更新乙です。
つ日 うーん。かおりんもこんこんもシゲさんもいいですねぇ。
対決近し! n日越え完璧保全開始。
更新お疲れ様です。
なるほど、審判三原則に沿って
コソーリ受けてたのかあ
完璧保全
835 :
?:03/09/27 21:10 ID:SfG8Gkvz
保全
更新乙!
そして保全!
次に来るときまで、このスレが逝きませんように・・・
>837
このスレは読者がたくさんいそうだし大丈夫だと思いたい。
こんないいとこで落としてたまるか!
保全
>68-128 「記憶の中の『あの人』」 (>129 あとがき)[2003.06.20]
「昨日見た日々」
>168-180 *Prologue* [2003.07.07]
>186-194 ACT 1[2003.07.08]
>203-211 ACT 2[2003.07.10]
>218-227 ACT 3[2003.07.11]
>232-240 ACT 4[2003.07.13]
>247-255 ACT 5[2003.07.14]
>260-269 ACT 6[2003.07.15]
>274-282 ACT 7[2003.07.17]
>289-297 ACT 8[2003.07.18]
>300-307 ACT 9[2003.07.19]
>329-334 ACT10[2003.07.21]
>340-345 ACT11[2003.07.24]
>350-358 ACT12[2003.07.25]
>365-375 ACT13[2003.07.27]
>382-387 ACT14[2003.07.28]
>393-399 ACT15[2003.07.29]
>406-414 ACT16[2003.07.31]
>422-431 ACT17[2003.08.01]
>442-449 ACT18[2003.08.04]
>457-464 ACT19[2003.08.07]
>472-479 ACT20[2003.08.08]
>486-494 ACT21[2003.08.10]
>501-511 ACT22[2003.08.12]
>518-525 ACT23[2003.08.14]
>531-537 ACT24[2003.08.15]
>542-551 ACT25[2003.08.18]
>555-565 ACT26[2003.08.18]
>570-599 ACT27[2003.08.20]
>600-606 *Epilogue* [2003.08.20]
「ジャッジメント・ジャッジメント」
>660-668 ACT 1[2003.09.09]
>676-681 ACT 2[2003.09.10]
>689-698 ACT 3[2003.09.14]
>705-713 ACT 4[2003.09.15]
>719-726 ACT 5[2003.09.17]
>731-741 ACT 6[2003.09.18]
>745-756 ACT 7[2003.09.19]
>762-770 ACT 8[2003.09.20]
>778-784 ACT 9[2003.09.22]
>789-797 ACT10[2003.09.23]
>803-813 ACT11[2003.09.25]
>821-829 ACT12[2003.09.26]
843 :
書いた人:03/09/29 21:28 ID:JeqUQoFa
―――――
朝一番にこんなことがあって、まともに収録をこなせる人なんていない。
みんながみんな、収録の後に待ち構えている一大事を想っているのか、どこか虚ろ。
少しずつ収録が押していくのは、まるでその瞬間が来るのを怖がっているみたい。
ちょっと遅めのお弁当タイムになっても、いつもみたいな喧騒は楽屋には無かった。
チラチラと私とまこっちゃんを見比べるみんな。
いつもだったらそんなことをしてたら即座にアウト判定を下すまこっちゃんも、今日は静かにおかずの鮭を摘む。
いや・・・一人だけ・・・
「よしッ、小川、ちょっと来なさい」
一人元気に昼食を終えた飯田さんは、まこっちゃんを楽屋の外に連れ出す。
まるで市場に売られていく仔牛のように、それについて行く。
思わず私は、その背中を目で追った。
多分・・・さっき私と話したようなことを、まこっちゃんにも伝えておくんだろう。
844 :
書いた人:03/09/29 21:29 ID:JeqUQoFa
二人が外に出た途端、椅子を引きずって矢口さんが凄い勢いで迫ってくる。
「ちょっと、紺野! 勝てる・・・・・・よね?」
「え? さぁ・・・?」
「圭織もさぁ・・・なんでいきなり試合にしちゃうんだろ?
紺野の方が上なんだろ? だったら、紺野が小川に『アウトォーーーッ!!』ってやれば終わるんじゃないの?」
少し声を抑えながら、それでも興奮気味に一気に話すと、矢口さんは親指を立てる。
私たちの方に目を遣らずに、みんなが聞き耳を立てているのが雰囲気で分かる。
やっぱ・・・そう考えちゃいますかぁ。
「あの・・・まこっちゃんの言ってたことが、審判界では普通なんです。
別に級が上だからって、いつも正しいジャッジをするとは限らない・・・って。
私のほうが級が上だから、判定が正しい可能性は高いですけど、
でも『まこっちゃんがアウト』って判定そのものが正しいって訳じゃありませんし」
頭を抱える矢口さん。
ふと向こうを見ると、加護ちゃんやのんつぁんも、一緒に首を捻っていた。
845 :
書いた人:03/09/29 21:30 ID:JeqUQoFa
「だから一番いいのは、まこっちゃんよりも私の方が『正しい判定が出来る』
っていうのを直に見せ付けて、そこで初めてアウトにしないと・・・・・・
『級』って言うのはあくまでも目安ですから。お互いの実力の上下じゃなくって・・・」
「ダメだ・・・・・・おいらの頭じゃ分かんない」
「えっと・・・・・・つまり級の上下じゃなくて、
『紺野が小川よりも判定が上手い』ってことが大切なんでしょ?」
いつの間にか矢口さんの横に陣取った吉澤さんが、眉間に皺を寄せたまま人さし指を立てた。
朝から悪いものでも食べたのか、まともすぎる発言に少しビックリ。
『乳首コリコリ』とか言ってないで、こっちの吉澤さんの割合多くしてくださいね、ホントに。
その言葉で要領を得たのか、唇を少し曲げて矢口さんは私を覗き込んだ。
「紺野さ、ホントに私らは頑張れしか言えないけど・・・私らのことは気に病まなくていいからさ」
ちょっと意外なその言葉に、私は思わず目を見開いて口を開けっ放しにしてしまう。
待っていたかのように、今まで聞き耳を立てているだけだった他の面子も、私を中心に集まってきて。
846 :
書いた人:03/09/29 21:31 ID:JeqUQoFa
「そぉだよ、紺野。別に上手くいかなくっても・・・・・・って、上手く行かないって思ってないけど。
リラックスしてやればいいんだよ」
「うん、石川の言う通りだべ。小川には審判止めて欲しいけど、最近結構合わせるのにも慣れてきたし」
「結構楽ですよねぇ、意外と」
「うん、だからあんま緊張すんなって!! な?」
こういう時に声援をひたすら送られることの辛さはみんな経験済みなんだろう、私を気遣う言葉に私も笑みが漏れる。
確かに・・・・・・まこっちゃんのジャッジは『アイドルとしてダメだ』とかが多いから、意識的に合わせれば何とかなる。
それでもホントは、合わせないで自然体でいられるのが一番。
私を緊張させないための言葉だから、そこは呑み込んだんだろう。
847 :
書いた人:03/09/29 21:31 ID:JeqUQoFa
まるでお通夜みたいな暗さから一変した楽屋の空気に、私はますます頑張らなくっちゃって思う。
それは気負いとは違う、気合い。
でも、気になることが一つ。
「あ、でも・・・・・・」
一斉に振り向く12人。
「もし・・・私が勝って、まこっちゃんの審判止めさせることができたとしても・・・
それからもずっと、まこっちゃんと普通に接していってあげてくださいね?」
「分かってる・・・・・・けど・・・」
藤本さんの『けど』に被せられる、眉の辺りの憂い。
848 :
書いた人:03/09/29 21:31 ID:JeqUQoFa
この人たちなら、きっと何にも無かったみたいに翌日から普通にやっていける。
だって、脳味噌が鳥みたいな人たちの集まりだから・・・ってのは冗談で、
みんなそれ位のデリカシーはあるもの。
藤本さんが言っているのは、『出来ない』って意味じゃない。
まこっちゃんが、そう出来るかってこと。
今まで自分のやっていた行為を全否定された時、
それでもまこっちゃんは、ホントに今までのまこっちゃんのままでいてくれるんだろうか。
そこにいるのは、勝者と敗者だけ。
私たちの間には目に見えない、分厚い越えられない壁が出来ちゃうんだ・・・
「大丈夫だよ、きっと・・・」
「ンだべ・・・」
矢口さんと安倍さんの言葉に根拠も自信も無いことはすぐに分かった。
それでも、今はみんなを不安にさせておく必要は無いから・・・
849 :
書いた人:03/09/29 21:33 ID:M1fHRMxT
「はい」
頷いた私に、みんなが頷き返す。
終わった後、そこにいるのが勝者と敗者だけだとしても・・・それでも私はまこっちゃんと全力で戦おう。
だって、まこっちゃんを元に戻す唯一の手段なんだから。
この第一歩を踏み出さない限り、まこっちゃんは戻ってくれないんだから。
要らない心配は、勝った後にすればいいから。
「出来れば、まこっちゃんのことも応援してあげてくださいね?」
「え? なんでぇ?」
加護ちゃんが声に出すのも無理は無い。
そうだけど・・・15人もいるのに、13人対1人の試合なんて悲しすぎるじゃない。
「ううん、まこっちゃんがもし、とってもいいジャッジをしたら、その時はちゃんと歓声を上げてね、ってこと」
「あさ美ちゃん、どれがいいジャッジなのか、見ててもさっぱり分かんないよ」
お豆のあっさりした言葉がなんだかおかしくて。
私は笑いながら、自分も「こっち」の世界に来てしまったんだぁ、とちょっぴり頭を抱えた。
850 :
書いた人:03/09/29 21:34 ID:M1fHRMxT
――――― 収録後、路上
「ねえ、なっち! ホントにこの道で合ってんの?」
「ちょっと・・・あんま大声出すと、周りの人にばれますよ、矢口さん・・・」
「うーんとねぇ・・・もうちょっとかなぁ?」
「他のやつら・・・ちゃんと来れるのかなぁ?」
「だから声がでかいですって・・・・・・裏道だけど、ここ一応渋谷なんですよ?」
収録後、まるで何かいけないことをしているみたいに、こそこそと裏道を急ぐ私たちの姿があった。
一応変装はしてるけど、5人集まると一気に怪しい。
安倍さんと矢口さん、石川さんに、シゲさんと私。
15人一緒に移動は怪しいからって、5人ずつにしたけど・・・
「ッたくもぅ・・・圭織のヤツ、なんで場所変えんだよ?」
「しょうがないですよ・・・スタジオじゃ試合が出来ないらしいですから」
「だからってさぁ・・・渋谷のど真ん中を指定するのってどうなのよ?」
「15人一緒に移動するわけにいかないもんねぇ・・・
ところでさぁ、圭織の描いた地図、なんだかすっごく読みにくいんだけど」
「・・・・・・安倍さん・・・地図、上下逆です」
851 :
書いた人:03/09/29 21:34 ID:M1fHRMxT
シゲさんの言葉に、慌てて地図をひっくり返す安倍さん。
道理ですぐに辿り着けなかったわけだ・・・
駅から5分って言われてたのに、もう15分は歩いてるもんなぁ・・・
「なっちが天然記念物ものの方向音痴ってこと忘れてたわ・・・」
「ちょっと矢口、それじゃあまるで、なっちに地図読ませたのがいけなかった、って言ってるみたいだべ」
「『みたい』じゃなくて、そう言ってる」
「地図を読めないのが女の人は普通なんだよ!
なっちは矢口みたく、男っぽくないからいいの!」
「はぁ〜い、なつみちゃんもまりちゃんも、もうケンカは止めまちょうねぇ〜」
「・・・・・・石川、それなんかムカツクから止めて」
馬鹿丸出しのやりとりを前に、顔がにやける。
にやける・・・けど、やっぱり試合のことを考えると、少し気が重い。
このまま着かなければいいのになぁ・・・
そんなことを考えながら、私とシゲさんは暴走3人組の背中を追った。
852 :
書いた人:03/09/29 21:35 ID:M1fHRMxT
―――――
「あんたら5人、遅すぎッ!!」
合流場所・・・何の変哲もない喫茶店では、
飯田さんが東大寺南大門に並べられてもおかしくない勢いで待ち構えていた。
多分おもいっきり無理を言ったんだろう、店内には誰もいない。
「しょうがないべ・・・矢口がなっちにいちゃもんつけるから・・・」
「何それ? なっちが樹海に入った勢いで迷うからいけねーんだよ!!」
「はぁ〜い、飯田さん。迷ったのは私たち5人の責任です、ゴメンなさい!」
『お前、そのにやけ方はちっとも悪いと思ってねーだろ』って感じで頭を下げる石川さんに、飯田さんは諦めの吐息を漏らした。
ハイ、そこ、シゲさん。『私は悪くないのに・・・』とか言わない方がいいよぅ?
853 :
書いた人:03/09/29 21:35 ID:M1fHRMxT
「小川と紺野・・・・・・前に」
飯田さんに言われて、私たちは窓際に一歩踏み出す。
まこっちゃんと向き合っても、目を見れない。
まこっちゃんも私の方を見ようともせず、飯田さんをじっと睨んでいた。
「ここさぁ・・・窓、全部マジックミラーになってんのよ」
飯田さんに言われて振り返る。
道路側の壁は、全面一枚ガラスになっていて、外を行き交う人の流れが手に取るように分かる。
午後3時をまわった辺り、外には学生が出始めて、いよいよ活気を増してきた感じ。
向こうからはこちらは見えないから、みんな私たちの視線なんか気にせず通り過ぎる。
「小川・・・審判三原則、公平性と正確性と・・・あと、何?」
「迅速性です」
軍隊みたいに、毅然と答えるまこっちゃん。
854 :
書いた人:03/09/29 21:37 ID:KTZ05Buq
その答えに満足したみたいに、飯田さんは大きく頷いた。
「そだね・・・・・・でね、あなたたちは世界の全てのことをジャッジできる審判でしょ?
だから、この窓に映る全てのことを、ジャッジしなさい」
「「ハァ?」」
思わず声を揃える私とまこっちゃん。
いつもならそんなことがあればすぐに目を見て笑い合うのに、今はできないのが悲しい。
飯田さんは私たちの疑問を聞いてなかったみたいに、訥々(とつとつ)と説明を続ける。
「圭織はラグビー型の審判だから、一応その方式でやるから。
時間はラグビーの通りだと長いから、15分ハーフの前・後半制ね。
あなたたちは野球型の通りに、道行く人をジャッジしなさい。
圭織はあなたたちの判定を見て、いいジャッジだったらトライと認定するから」
「・・・で、時間終了の時に点数が高かった方の、勝ち・・・ですか?」
「そ」
855 :
書いた人:03/09/29 21:38 ID:KTZ05Buq
闘志満々の目をしたまこっちゃんに、飯田さんは笑って応える。
出来るかなぁ・・・頭が痛くなりそうなルールに、思わず後ろを振り返る。
そこにはみんなの顔。
安倍さん、矢口さん、シゲさん、亀ちゃん、レイナちゃん、吉澤さん、
石川さん、お豆、愛ちゃん、加護ちゃん、のんつぁん、藤本さん
みんながみんな、祈るような、泣き出しそうな、そしてどこか物静かな目をして。
悩んでる場合じゃなかったね・・・私は窓に向き直る。
「ごめんなさい、少しの間みなさんをジャッジさせてもらいます」
私たちのことなんか想像もできないだろう、行き交う人たちに心の中で謝罪。
まだ資格をとって一度もジャッジをしたこと無いけど、それでも今なら出来る気がする。
まこっちゃんがしているのに倣って、私も真正面に窓に対峙する。
どこから出したのか、笛を咥えて腕時計を睨んでいる飯田さん。
じっと窓の先に目を凝らすまこっちゃん。
見えないけれど、後ろで息を凝らして見つめている、12人。
思わず左胸に手を当てて、私は自分の鼓動を数えていた。
856 :
書いた人:03/09/29 21:43 ID:KTZ05Buq
更新乙です。ゴロッキーズ始まるしイ`
こんこんがんがれ!
まこっちゃんも。
明日が待ち遠しくて待ち遠しくてもう。
川o・-・)ノ<更新乙です
ハンバーグしかわからなかったけど、審判ならわかるはず!
こんまこ最終決戦に期待、両方がんがれ!
(0^〜^)<作者さん、更新乙です。
つ日 うーん。これは面白い試合方式ですねぇ。
さすがかおりん、ってここを感心してもしょうがありませんか。
ついに、とうとう、いよいよ、対決・・・
ほしゅ
更新お疲れ様です。
>847-848が切なくていいですねえ。
ミキティってとこがまた。
863 :
書いた人:03/10/01 01:35 ID:sa66dho2
心臓はいつものペースに戻っていて。
よし・・・全然緊張してないね。
ゆっくりと飯田さんの右腕が上がる。
垂直にその指先が天井を指し示すと、唇の端から僅かにブレスをしたのが見えた。
「それじゃあ・・・・・・前半15分。キックオフ!!」
ピッ!!
耳を劈く(つんざく)高音に、私は目を広げて窓全体を見回す。
手前の歩道には僅かな人通り、その奥の車道も車が行き交う。
ごく普通の風景、アウトも、セーフも・・・今の所は無い、ね。
そうおもった刹那、隣で上がった大声に私は思わず振り向いた。
「今の天気、暑すぎず寒すぎない、秋の午後を過ごすには最適です!
セーフです! ツーベースヒット!!」
864 :
書いた人:03/10/01 01:36 ID:sa66dho2
嘘でしょぉ?
天気なんて判定の対象なの?
ついつい、試合中だっていうのにまこっちゃんの方を見詰めてしまう。
両手を水平に真っ直ぐ広げたまこっちゃんは、凛とした目で飯田さんの判定を待つ。
ピィィィィッーーーーー!!
手を真っ直ぐ上に上げたまま吹いた笛の音が、私たちの鼓膜を震わせる。
「小川、トライ! 5対0!」
「トライなんですかぁ!?」
「よっし」
私の反応なんかお構いなしに、まこっちゃんは小さくガッツポーズを作ると再び目を凝らす。
あぅ・・・・・・そうだよねぇ。
飯田さんは『この窓から見える全て』を判定しろって言ったもん、天気だって当然入るのかぁ。
865 :
書いた人:03/10/01 01:36 ID:sa66dho2
よし、それなら私にだって考えがあるんだから。
ここで残念がってなんかいられない。
さっき見てたら、いいのがあったんだもんね。
窓から見える、道路を挟んで反対側のカフェ。
木目調の店構えが凄く素敵なんだけど・・・
考えをまとめていると、さっきのトライで調子付いたまこっちゃんが再び両手をピッと広げる。
「あそこに見える喫茶店! 雰囲気がすっごく素敵です。
セーフ! 三塁打!」
今度は私は呆気に取られない。
まこっちゃんが言い終わった瞬間に、即座に言葉を被せる。
「違います!! 素敵な店構えですけど、周りのビルと余りに不釣合い過ぎます!
ファールです!!」
866 :
書いた人:03/10/01 01:38 ID:JBPMN7Cn
今度はまこっちゃんが私に振り向く番だった。
両手を頭の上で大きく振りながら、私は飯田さんの判定を待つ。
確かに店構えは素敵だけど、両隣の煤けたビルの間じゃ魅力も半減してる。
「よし、紺野にトライ!! 同点、5対5!」
「ッ・・・!!」
「いいぞッ!!」
まこっちゃんの舌打ちをかき消すように、矢口さんが歓声を上げる。
それに頷き返したけど・・・今のはちょっと危なかったぁ。
まこっちゃんのジャッジに判定が出たあとだったら、
私のジャッジはただの後付けになっちゃうところだ。
867 :
書いた人:03/10/01 01:39 ID:JBPMN7Cn
気を抜いてられないなぁ・・・・・・鼻に滲んでいた汗を、指先ですくう。
ふと横目でまこっちゃんを見ると、こっちを向いて笑っていた。
この一月半、見ることが出来なかった、まこっちゃんの笑顔。
そう、あのジャッジをする時の不気味な半笑いじゃなくって、
いつものあの、あどけなくって少し照れたような笑顔。
「あさ美ちゃん・・・・・・やるねぇ」
「まこっちゃんも・・・ね」
試合中だっていうのに笑いあう私たち。
すぐに飯田さんが再開の笛を吹いたから、交わった目線はすぐに離れたけれど。
それでも私はこの試合に、何かの可能性を感じ始めていた。
868 :
書いた人:03/10/01 01:39 ID:JBPMN7Cn
―――――
「あさ美ちゃんさぁ・・・モーニング娘。ってなんなんだろ?」
「ハァ? どしたの? まこっちゃん」
「いや、ふと考えちゃってさ。モーニング娘。って何?」
「さあ・・・・・・アイドルでしょ?」
「アイドルなのにさぁ、あんなコントやったりしなくちゃいけないのかなぁ?」
「うーん・・・・・・それじゃ、エンターテイナー?」
「エンターテイナー・・・って、何?」
「それは・・・なんだろ?」
869 :
書いた人:03/10/01 01:41 ID:V04vaGVN
―――――
そうだ、私たちは、いつも考えてたんだ。
―――――
870 :
書いた人:03/10/01 01:41 ID:V04vaGVN
「あの男の人! 歩きタバコは危ないですからダメです。
即刻退場!」
「よろしい! 小川トライ、15対10」
「歩道にあるあのオブジェ、気持ち悪いだけで作った人の自己満足にしか見えません!
存在意義がありませんから、掠(かす)ってすらいません。三振ッ!」
「紺野もトライ、あと三振にした点を評価! ゴールキックの得点も!
15対17!」
871 :
書いた人:03/10/01 01:41 ID:V04vaGVN
―――――
「あ〜あ、またパート割り少ないなぁ・・・
いいねぇ、まこっちゃんは。たくさん歌える所あって」
「うーん、あさ美ちゃん、さくらの方でも、あんまパートなかったのぉ?」
「うん、愛ちゃんや加護ちゃんと比べたら、私下手すぎるから、しょうがないんだけどねぇ・・・」
「そっかぁ・・・・・・」
「・・・・・・うん、しょうがないの」
「でもさ!」
「?」
「あさ美ちゃんは、もっとがんばれば、もっと伸びる可能性がある、ってことだよ!」
「でもさぁ・・・でも『お前らは個性を大事にしろ』ってつんくさん言うよねぇ?
どーすればいいんだろ?」
「確かにねぇ・・・どこをとっておいて、どこを直していけばいいのか、分かんないよね」
872 :
書いた人:03/10/01 01:43 ID:ryo2uD5q
―――――
私たちはどうしているのが正しいのかって、ずっと考えてたんだ。
―――――
873 :
書いた人:03/10/01 01:44 ID:ryo2uD5q
「えーっとぉ・・・歩道の点字ブロックが・・・そう、あのブロックの上、放置自転車が止まってるから、
ホントに役立つか分かんないです。だから、ブロックはファール!」
「違うよ、あさ美ちゃん! 放置自転車とあれを置いた人、退場!」
「小川のほうが適切だから、小川にトライ! 27対17!」
「くぅ・・・」
「さっきのお返しだよ、あさ美ちゃん」
得意げにウィンクなんかするの反則だよ、まこっちゃん。
874 :
書いた人:03/10/01 01:45 ID:ryo2uD5q
―――――
「まこっちゃん・・・・・・また口空いてるよ?」
「あぁぁ、ごめん」
「鼻詰まってるわけじゃないのにねぇ、どして?」
「うーん・・・なんでだろ?」
「最近よく突っ込まれるよね、それ」
「うたばんとか?」
「うん、だから結構目立ってるよ」
「そうなんだけどさぁ、でもそれって、アイドルとして正しいか、微妙じゃない?」
「微妙っつーか、高校1年生としてどうよ? って感じ」
875 :
書いた人:03/10/01 01:46 ID:IcCEBdRZ
―――――
もしかして・・・『正しいもの』を見つけるために、まこっちゃんは審判になった?
―――――
876 :
書いた人:03/10/01 01:47 ID:IcCEBdRZ
「スーツの女性、清楚でいて美しいです! ストライク!」
「簡潔でよろしい! 紺野にトライとゴールキックのポイント、27対24」
「あのマンホール・・・」
「前半、終了! 小川、タイムオーバーだ」
笛の音とともに、私とまこっちゃんは床に座り込む。
慌てて後ろのみんな差し出してきた椅子に、なんとか這い上がっても、しばらくは顔を上げられなかった。
疲れた・・・
ずっと目を皿のようにして集中っていうのは、こんなにも体力使うんだ。
まこっちゃんも同じなんだろう、椅子の上でくたっとしたまま。
877 :
書いた人:03/10/01 01:48 ID:IcCEBdRZ
「どう、紺野ちゃん? 大丈夫そう?」
冷たいグラスに入ったジュースを渡しながら、心配そうにのんつぁんが見下ろす。
やっぱり見ているほうも気疲れがあるんだろう、どこかその顔には疲労感が浮かんでいる。
まこっちゃんのほうには私がお願いしておいたように、
公平になるように加護ちゃんがジュースを持っていってくれていた。
でも、一番疲れていたのは多分飯田さん。
奥の方で椅子に倒れこんだまま、ピクリともしない。
矢口さんがノートでパタパタ仰いでいるけど、首筋にじっとりと浮かんだ汗は一向にひく気配が無い。
「うーん、何とかなるかなぁ・・・? 分かんないや」
私の返事に、のんつぁんは要領を得ないような顔をした。
試合のほうは何とかなる。多分。
逆転できない点差じゃないだろう。
・・・・・でも・・・・・・
試合中に頭に浮かんだまこっちゃんの『理由』が、もしその通りだとしたら・・・
ちょっと納得できる。それだけに、私の胸の内は複雑だった。
878 :
書いた人:03/10/01 01:54 ID:IcCEBdRZ
今日はここまで。
当初1週間で終わるとおもってた自分の浅墓さにビクーリ。
>>857 _| ̄|○<うちの地方見れないんです・・・
>>858 すみませぬ、日付変わっちゃった。
>>859 実はそのハロモニすら、あぷろだの写真でしか把握してなく。
>>860 あと2回くらい続くと思われ。
>>861 乙です。
>>862 一応少ない脳味噌で、それなりに考えた箇所だったりもします。
川o・-・)ノ<更新乙です
おいらもまこっちゃんにちょっと納得
話がどんどん膨らむのは想像力が豊富な証だと思います
続き、期待してます!
(0;^〜^)<作者さん、更新乙です。
つ日 うーん。緊迫した試合ですね。
息継ぎしないで見守ってますYO。
881 :
名無し募集中。。。:03/10/01 14:24 ID:OTbcis3X
( ´D`)<乙れす!
以前からコソーリ拝読しています。
あまり小説読まない人なので、こうやって少しずつの更新+
娘。が主人公ということで、楽しく読ませていただいてます。
まこっちゃんがどうして審判資格を取ったのか、
自分なりにずっと考えてたので、答えが見えてきました。
更新楽しみにしています。
はわわ・・すみません。ageてしまったyo_| ̄|○
まこっちゃんのアウト判定にやられて逝ってきます〜
883 :
:03/10/01 15:35 ID:0La1gLeR
884 :
名無し:03/10/01 18:56 ID:9hgfmrtp
ラグフェアのやつとの記事をBUBKAに載せられたってきいたんだけど
誰かうpしてください
更新お疲れ様です。
この回想(?)がまた切ないですねえ…
会話文だけってのがまたグッときます。
しかし、こりゃあリーダー疲れるわw
886 :
書いた人:03/10/02 01:41 ID:uM1OMJrM
歩道では私たちのことなんか思いもよらないんだろう、学校帰りの女子高生がキャピキャピと騒いでいた。
もしモーニング娘。に入っていなかったら、私も札幌であんな風な午後を送っていたんだろうか?
!!
そんなことを考えていると、突然こめかみの辺りにイタ気持ちいい感覚。
頭を抑えられてるから振り向けないけど・・・
多分のんつぁんだろう、私をマッサージしてくれてるみたい。
しばらくその圧に身を委ねて、目の疲れを癒す。
・・・・・・のんつぁん、ちょびっと痛いかも。
「あのさぁ・・・・・・のんつぁん」
「うん?」
887 :
書いた人:03/10/02 01:42 ID:uM1OMJrM
やっとまともな反応を返したのが意外だったのか、マッサージを続けたまま上ずった声で返事。
「あのさぁ・・・のんつぁんって、この世界で何が一番正しいっておもう?」
「え? さぁ・・・・・・どしたの? いきなり」
急に禅問答みたいなことをしちゃったのは気の毒だったかな?
分かるわけないもの。
それは相手がのんつぁんだから、ってことじゃない。
多分、矢口さんに安倍さんに藤本さん、飯田さんだって分からないだろう。
私だって分からない・・・・・・。
「じゃあさぁ、のんつぁんは色々お仕事してる時に、何を基準にしてる?」
今度はのんつぁんは返事をしてくれなかった。
代わりに手を離すと、椅子の前にしゃがみこんで私を見上げる。
888 :
書いた人:03/10/02 01:42 ID:uM1OMJrM
「ねえ、紺野ちゃん、だいじょーぶ? もしかしてすっごく疲れちゃたの?」
「え? いや・・・別に。そんなことないけど」
「そう・・・なら、いいけどさぁ。いきなり変なこと聞いてくるんだもん」
「変かなぁ?」
「変だよ」
「あ、ゴメンね、のんつぁん。さっきの気持ちイイから、もっとやって欲しいんだけど・・・」
「うん、いいよ」
私の思考がおかしな問答から離れたと思って安心したのか、
のんつぁんはてへてへと笑うと、再び後ろに廻り込む。
『まこっちゃん、そんな審判の基準なんかに従わなくていいんだよ!!』
って言うのはカンタンだ。
勝ったらそう言うと思う。
でも・・・・・・じゃあ、どうすればいいって言おうか?
私だって、そんな答え見つかってないじゃない。
889 :
書いた人:03/10/02 01:44 ID:o8AL4u5Q
「お客さ〜ん、凝ってますねぇ〜?」
いつの間にか肩揉みに切り替えたのんつぁんが冗談っぽく言う声も、左耳から右耳へ素通り。
まこっちゃんに審判を止めさせたら・・・まこっちゃんは何に頼るんだろう?
折角見つけた拠り所を、私たちに取り上げる権利なんてあるんだろうか?
窓から見える景色は、15分前と何にも変わらなくて。
それがなんだかとっても、恨めしい。
ダメだダメだダメだ。
頭をブンブン振って、自分の外に答えを探そうとした思考を追い出す。
景色が答えなんかくれるはずが無い、考えなくっちゃ。
890 :
書いた人:03/10/02 01:44 ID:o8AL4u5Q
「ハイ、終わりッ!!」
小気味よい声で言うと、トンッと肩をチョップで叩くのんつぁん。
私の顔を後ろから覗き込んで、ちょっときつめの声を出す。
「紺野ちゃんさぁ・・・あと15分もあるんだから。
あんまし色んなこと考えてると・・・・・・負けちゃうよ?」
『負ける』という言葉を怖がるように、そこだけ声が低くなる。
そうだよね・・・今は試合中だもん。
飯田さんが立ち上がって、手首をコキコキ鳴らしている。
そろそろハーフタイムも終了かな?
胸に引っ掛かるものは置いといて、もうちょっと頑張るしかないかぁ・・・
「そだね・・・・・・ゴメンね、のんつぁん。変なことばっか言って」
「いいよ、別に。あ、でもね・・・」
891 :
書いた人:03/10/02 01:45 ID:o8AL4u5Q
中腰になっていた私は、その体勢のままのんつぁんに振り向く。
のんつぁんは少し照れたように、指先で頬を掻きながら俯いた。
「あの・・・ね、基準? だっけ? さっきのヤツ。
あれさ・・・私は何にも基準になんかしてないよ・・・けど」
「けど?」
「私は・・・『あの人みたいになりたい!』って思うんじゃなくって、
『あんな風になれるように、努力したい!』って思うようにしてる」
・・・・・・・・・
そうだよ・・・・・
何で気付かなかったんだろう。
返事もしないで唇の端から笑い声を漏らす私を、のんつぁんが一歩退いて見ていた。
私はまこっちゃんじゃなくて、まこっちゃんは私じゃない。
勿論、私はのんつぁんでも、お豆でも、飯田さんでも、矢口さんでもない。
お互いが全く違うのに、みんな素敵なアイドルやってるじゃない。
892 :
書いた人:03/10/02 01:46 ID:MaKubHZP
のんつぁんは、どんなに頑張ってものんつぁんだ。
でもそれは、けして悪いことじゃない。むしろとっても素敵なこと。
―― 『正しい』アイドルなんていないよ。
じゃあ? どうしていけばいいのか?
―― 頑張ってる自分自身が、それだけで、素敵なアイドルなんじゃない?
頭の中の折角の考えを崩さないように、静かに立ち上がる。
「ありがとね」
のんつぁんに振り返ると、さっきまで私の反応を訝しげに見ていたのに、
「いいってことよ」
彼女は冗談っぽくそう言って、右手で軽く敬礼した。
893 :
書いた人:03/10/02 01:47 ID:MaKubHZP
まだ・・・まこっちゃんに伝えるには、考えがまとまっていない。
でも試合中には、何とかまとまるだろう。
今はとにかくこの結論を伝えられるように、『勝つこと』に集中しなくちゃ。
・・・・・・絶対負けないよ、まこっちゃん。
まこっちゃんは私の顔を見ると、不敵な笑みを浮かべて立ち上がった。
その様子を見て、飯田さんが前に歩み寄る。
「二人とも・・・・・・大丈夫ね?」
「「はいッ!!」」
満足そうに飯田さんは頷いた。
「スコアは27対24で、小川のリード。残り15分。
終了5分前から、シゲさんに分刻みでカウントダウンしてもらうから・・・・・・イイね?」
「はい」
「分かりました」
シゲさんはまるで柱時計にでもなっちゃったみたいに、飯田さんから受け取った腕時計を睨みながら棒立ち。
まだあと10分は、リラックスしてて良いんだよぉ。
894 :
書いた人:03/10/02 01:47 ID:MaKubHZP
「そんじゃお互いに、悔いの無いように試合しなさいね・・・・・」
飯田さんが静かに右手を上げた。
シゲさんが差し出した腕時計の文字盤を睨みつける。
まるでその秒針の音が、私の耳にまで聞こえてくるみたい。
みなさん、絶対勝ちますからね・・・・・・
後ろをチラッと見た瞬間、
「始めッ!」
「あのマンホール! 歩道のタイルととってもよく調和してます!
ツーベースヒットッ!」
「よし、小川トライ! 32対24」
しまったぁ〜
油断した・・・
「コラッ! 紺野ぉ〜! 余所見してんじゃないの!」
矢口さんの怒声が耳に痛かった。
895 :
書いた人:03/10/02 01:52 ID:MaKubHZP
今日はここまで。多分あと少しです。
>>879 「妄想力」の方が適切かもしれません。
>>880 息はしとけ、よし子。
>>881 故意でなければagesageは気に致しませぬので。
あと数回ですが、お楽しみください。
>>884 私は無理ですので、他をお当たりください。
>>885 「回想」で正解です。いつもおんなじ形式じゃん、って言うのは無しで。
初のリアルタイム。
・・・実は一時半くらいから待ってました。
更新乙です。
のんつぁんの考え方が素晴らしいなあ…
あとちょっと頑張ってください。
(0^〜^)<作者さん、更新乙です。
つ日 うーん。後半、始まりましたか。
二人とも応援してますYO。
川o・-・)ノ<更新乙です
実は話が延びるのをちょびっと期待してたりします
あと少し頑張ってください
どさくさに紛れて900getよっ!>( `▽´)==○∬)T▽T∬/・:∴∵
更新お疲れ様です。
のんつぁんはもちろん、
シゲさんが実にいい感じですなあ
902 :
書いた人:03/10/03 01:28 ID:U0aqqGPX
―――――
後半が始まっても、一進一退。
いや、どんなに頑張ってもまこっちゃんとの差が詰まらないから、私の劣勢なんだろう。
「あさ美ちゃ〜ん、頑張ってよ!!」
「ほら、まだまだ出来るべ!!」
お豆や安倍さんの声援が耳に入るけど、もう限界っぽかった。
スピード型のまこっちゃんの方がジャッジにかかる時間が遥かに短いから、
どうしてもジャッジの数で差を詰めることはできない。
ゴールキックのポイントは私の方が多いけど、それ以上にまこっちゃんはトライ数を稼ぐ。
正確性で勝負しようにも、まこっちゃんのミス待ちだからなぁ・・・
チラッと横目で見たまこっちゃんは、唇の端にどこか余裕を浮かべていた。
多分もう、後半の半分は終わっただろう。
次第に私もまこっちゃんも、ジャッジのペースが落ちてきた。
まずい・・・・・・負ける。
903 :
書いた人:03/10/03 01:28 ID:U0aqqGPX
「あさ美ちゃん・・・」
「何?」
試合中だっていうのに私に話し掛けるのは余裕の表れなんだろうか、
手を腰に当てて少し胸を張って、まこっちゃんが生意気そうな笑いを浮かべていた。
「今なら・・・」
「?」
「今ならまだ、試合放棄できるよ?」
まこっちゃんが喋っている間もずっとジャッジポイントを探していた私の目の動きが、その一言で止まる。
今何て言った?
私に棄権しろ?
904 :
書いた人:03/10/03 01:29 ID:U0aqqGPX
「今だったらまだ、私もあさ美ちゃんもどっちが勝つか分からない時間帯でしょ?
だから今だったら、試合放棄できるよ?」
まこっちゃんは誇らしげに、そしてどこか悲しげに私を見つめていた。
無視して今のうちにジャッジをしようと思うけど、
まこっちゃんの言葉に心が動揺して、まともな思考ができない。
まこっちゃんは今・・・・・・私に勝利を宣言した。
「紺野が試合放棄なんかするはずないだろ!? 紺野!
今のうちにさっさとトライ決めちゃえって!!」
矢口さんの言葉の棘は、多分まこっちゃんの余裕に向けられたもの。
でも違う・・・まこっちゃんの笑いの中に見える影は、多分私への哀れみ。
この試合が終わった時に、まこっちゃんが勝者で私が敗者になる、その事実への哀れみ。
まこっちゃんの審判に徹しきれない部分・・・そんな部分があればだけど、
その部分が私に試合放棄をさせようとしている。
905 :
書いた人:03/10/03 01:31 ID:2YzZXQt9
歯を食いしばって、何とかまこっちゃんの隙を突こうと目を見開く。
まとまらない頭の中で、それでも分かりそうなもの・・・何か・・・・・・あ、
「あ、今降りだした雨! 折角の学校帰りに、しかも傘を持っていない人たちには酷い・・・
ダブルプレー成立!」
「ナイスジャッジッ! 紺野トライとゴールキック、49対46で小川リード!」
誰が見ても分かる変化・・・にわか雨だ・・・
窓の外では突然振り出した強めの雨に、みんな散り散りにどこかへ急ぐ。
・・・・・・そして、人通りはぱたりと途絶えた。
ただ雨が降りしきる景色には、判定する要素なんか殆ど無い。
人通りは止んだし、外の景色は一通り判定し尽くしたから。
どうしよう・・・・・・このままじゃ・・・負けちゃう。
「残り! 5分です!」
シゲさんが一生懸命張り上げた声が、無慈悲に店内に響く。
906 :
書いた人:03/10/03 01:31 ID:2YzZXQt9
シゲさんの宣告に、頭が真っ白になる。
このまま雨が続けば・・・このまま人通りが途絶えたら・・・私は勝てない。
膝の力が抜けて、私はその場にへたり込んだ。
穿いていたプリーツスカートが、私の動きに合わせてふわりと広がる。
雨の音だけが、ひたすら私の鼓膜を打つ。
ふと横のまこっちゃんを見上げると、彼女はまるで哀れむような目付きで私を見ていた。
「紺野ぉ〜、まだ試合中だぞぉ」
「紺野さん! 立って下さい」
「紺野ちゃんってば〜!!」
みんなの声がまるで遥か遠くで聞こえてるみたい。
私の視界の脇で、飯田さんは腕を組んだままじっと私たちを見ていた。
907 :
書いた人:03/10/03 01:32 ID:2YzZXQt9
まこっちゃんの唇が少し開くと、何かを呟く。
「・・・・・・」
「何?」
「・・・・・・だから試合放棄して、って言ったじゃない」
まこっちゃんは責めるような口調で、それだけ言い直した。
負けるの?
私はやっぱり負けちゃうの?
まこっちゃんはこのままずっと審判をしつづけて、自分らしさを見失っていくの?
「残り・・・・・・4分です」
シゲさんの声には、少なからず絶望感が入っている。
908 :
書いた人:03/10/03 01:34 ID:p5cbCS4E
まこっちゃんは諦めたように溜息を洩らすと、再び窓の外をじっと見遣った。
不規則なリズムを打つ雨しか見えない窓の外に、判定する相手なんて今は無いのに。
そしてそれっきり、もう二度と、まこっちゃんはこちらを向かなかった。
多分それは、私を説得することへの諦め。
いや・・・・・・ちょっと待って。
何でまこっちゃんは、もう一度私にあんなことを言ったんだろう?
まこっちゃんの中に残っていた、『徹しきれない部分』?
それもあると思う、けど・・・・・・
でも雨が降り出してもう勝負が決まったこんな時に、言う必要なんか無いはずだ。
「残り3分・・・・・・です」
909 :
書いた人:03/10/03 01:35 ID:p5cbCS4E
考えろ、考えろ、私。
漫画だったら多分斜線だけで表現できそうな雨を見ながら、頭を抱える。
まこっちゃんは正しいものに寄りかかるために審判になった。
そしてそれを止めることを賭けて、私と試合をしてる。
このまま行ってもしまこっちゃんが勝ったら、そのときはそのままずっと審判をやっていくんだろう。
じゃあ何かが起きたら?
?
何かが・・・・・・仮に私が勝ったら?
私がもし万一勝ったら、まこっちゃんは拠り所を失うはず。
もしかして・・・・・・まこっちゃんは怖いんじゃないだろうか。
勝ちが殆ど決まった試合でも、まこっちゃんは失うのが怖いんだ。
910 :
書いた人:03/10/03 01:36 ID:p5cbCS4E
そうか、そうだよね・・・・・・きっとそうだ。
頭の中で次々と繋がるパズルのピースに気持ち良ささえ感じる。
シゲさんが残り2分を宣言しても、私はちっとも気にならない。
私だってこの試合に入ったとき、まだ迷いが抜けきれなかった。
まこっちゃんから寄りかかるものを奪った時に、まこっちゃんがどうなるんだろう、って考えた。
でも例え私がここで負けても、まこっちゃんはこれからもずっと、
自分の正しさの証明に怯えなくっちゃいけないんだ。
「ふふふ・・・・・・」
自分の口から笑いがいつの間にか漏れているのに、私はやっと気付いた。
外の雨は少し弱まっていた。私の心のように。
まこっちゃんが少し意外そうに、私を横目でチラチラと見ている。
911 :
書いた人:03/10/03 01:38 ID:mhbSXRZ0
よしッ!
気合いを入れて立ち上がる。
下ろしている前髪が、その拍子に頬を撫でた。
安心して、まこっちゃん。
私が今すぐ、まこっちゃんをそんな不安から解き放ってあげるから。
「あと1分です!!」
シゲさんが精一杯張り上げた声に、私は再びじっと外を睨みつける。
「紺野! 落ち着いてやればきっと出来るべ!」
安倍さん、分かってますよ。
私の変わり様に驚いて、慌ててまこっちゃんも外を見つめる。
みんなの声が、また私の耳元で聞こえ始めた。
912 :
書いた人:03/10/03 01:39 ID:mhbSXRZ0
何か・・・誰でもいい、ジャッジできる相手を。
913 :
書いた人:03/10/03 01:39 ID:mhbSXRZ0
「「あ」」
まこっちゃんと私の声が揃う。
小降りになった雨の中、一人の女子高生が前を横切る。
なんつーんだろう? ドム? パーフェクトジオング?
ミニスカートとソックスの間に挟まれた脚は、まるでボンレスハムみたいに丸々として。
顔もオーブントースターで焼かれたんだろうか? 汚い茶色が見てて嫌悪感を催す。
あの人しかない。
殆ど脊髄反射のようにアウト判定を・・・・・・
あれ?
私の目が彼女の右手にぶら下げられたビニール袋に留まった。
そして右手にはめられた白い手袋・・・軍手?
ゴメンね、私の脊髄・・・・・・その判定、修正させてもらうよ。
「アウトォーーーー!! あの女子高生、アウトですッ!!」
「女子高生、スリーストライクッ!! 三振!!」
「タイムアップ!!」
まこっちゃん、私、シゲさん、3人の声が順に響いた。
914 :
書いた人:03/10/03 01:43 ID:mhbSXRZ0
今日はここまで。次回最終回。
1日かそこら、間が空くかも知れませんのでご了承を。
>>896 ということで、一時半周辺に更新してみました。
>>897 何だかんだ言って、説教臭い小説になって参りました。
>>898 後半の書き方、かなりおざなりでごめん。
>>899 ということで、次回最終回です。長く出来ないでゴメンなさいね。
>>900 7時間置いて「どさくさ」って言われても困るんですが。
>>901 実態から乖離しすぎていないことを天に祈ります。
川o・ー・)ノ<更新乙です
次回で最終回…寂しくなりますね
最後の更新、楽しみに待っていますよ
(0^〜^)<作者さん、更新乙です。
つ日 うーん。残り5分、スリリングでした。
最終回楽しみ。
更新乙です
正座して待ってます
918 :
書いた人:03/10/04 01:24 ID:5bn5oHSp
・・・・・・まこっちゃんと判定が違う・・・
思わず飯田さんを振り返る。
私と同じ気持ちなんだろう、まこっちゃんもすがるように飯田さんを見上げていた。
シゲさんよりも早くジャッジしたから、取り合えずインタイムだと思うんだけど・・・
「圭織・・・・・・判定は?」
声に出さないと緊張感に呑まれてしまいそうだったのは、矢口さんだけじゃない。
それはこの店の中にいる誰もが同じだった。
飯田さんは、まるで交信中みたいに一点を見据えて、じっと考えているようだった。
おっきな目を瞬きもせずに、じっとあの女子高生を見つめている。
スッ・・・・・・
飯田さんの右手が垂直に上がる。
「トライ!! 紺野! 51対49・・・・・・で、タイムアップ!」
919 :
書いた人:03/10/04 01:25 ID:5bn5oHSp
勝った・・・?
勝ったんだよね?
その51点は、私のスコアだよね?
「やったよぉ〜!! 紺野ちゃん!!」
頭の中で整理がまだついていないのに、私の胸にのんつぁんが飛び込んできた。
その拍子に一気に床に押し倒される。
頭を思いっきり床にぶつけたけれど、その痛みはちっとも気にならない。
馬乗りになっているのんつぁんに苦笑しながら、みんなが歩み寄ってきた。
その顔は、私の勝利を心から祝ってくれている笑顔・・・いや、ただ一人。
「何で!? 何でですか? 飯田さん!
どーして、今のがあさ美ちゃんのポイントなんですかぁ!!!」
まこっちゃんだけは、私から一歩離れて飯田さんを睨みつけていた。
920 :
書いた人:03/10/04 01:25 ID:5bn5oHSp
まこっちゃんの顔は、涙でくじゃくじゃになって。
「おかしいですって! どーして・・・私のほうが早かったし・・・
三振って言ったって・・・私の判定と大差ないじゃないですか!!」
負けることが・・・・・・怖いんだね、まこっちゃん。
その涙のわけを理解できるだけに、のんつぁんに押しつぶされている胸が余計に痛む。
飯田さんはじっとまこっちゃんを見つめると、少し悲しそうな目をした。
「そう・・・・・・ね、時間帯からいって、あの場面でもしもあの女子高生が『アウト』だったら、
あんたも紺野も『アウト』の点は同じだから、ノーカウントにした方が適切かもね」
「だったら・・・・ッなん・・・でッ!?」
飯田さんも・・・審判だからまこっちゃの気持ちに気付いているんだろう。
大きな瞳に涙が浮かんでいた。
「それは・・・・・・圭織が言うより、紺野に聞いたほうがいいんじゃない?」
921 :
書いた人:03/10/04 01:26 ID:5bn5oHSp
「・・・・はぁ」
飯田さんに促されて、私は気の抜けた返事。
のんつぁんが慌てて私の上から腰を浮かせた。
多分・・・説明の仕様によっては、さっきのトライが取り消されるかもしれない。
でも大丈夫、飯田さんもおんなじことに気付いていたはずだ。
だからこそ私にポイントが入ったんだから。
大丈夫。
立ち上がるとスカートの裾を手で何度か払う。
私のその緩慢な動作気に食わないのか、
唇を真一文字に結んだまこっちゃんが、歯軋りをするのが聞こえた。
ジャッジメントに伝わるように、いいや、まこっちゃんに分かってもらえるように。
922 :
書いた人:03/10/04 01:26 ID:5bn5oHSp
「あの人・・・見てみなよ、まこっちゃん」
腕を上げて、ゆっくりとまだ窓の外にいる彼女を指差す。
私を睨みつけていたまこっちゃんが一瞬だけその目線の先を窓に移すと、その瞳孔が広がったように見えた。
「・・・・・・ッ!!」
彼女の唇から、息を呑む音が聞こえる。
私たちの視線の先で、あの女子高生はゴミを拾っていた。
白い軍手は拾うため、ビニール袋はゴミを入れるため。
「確かにさ・・・あの人、アウトだと思ったよ?
・・・・・・美意識からすれば、そもそも掠りすらしてないし。
確かに判定する瞬間までは、あの人はあんなことしなかった。
だからまこっちゃんの方が、あの瞬間のジャッジでは正確かもしれない・・・けど」
窓から再びまこっちゃんに目を移すと、まこっちゃんは目を真っ赤にして俯いていた。
923 :
書いた人:03/10/04 01:27 ID:5bn5oHSp
「けど、もしかしたら、あのビニール袋と軍手で・・・って考えが捨てきれなかった。
だから、どうにか後戻りができるかもしれないジャッジが無いかなって考えたの・・・」
「・・・・・・」
「あの女子高生、スリーストライクで三振・・・ですけど、振り逃げで一塁進塁、だと思います」
今度は飯田さんの方を向く。
私とおんなじ意見だったんだろう、飯田さんは満足そうに私の説明に頷いた。
「そう・・・だね。だから、私は小川じゃなくて紺野に得点させた」
「・・・・・・」
室内には、ただまこっちゃんの泣きじゃくる声だけが響きつづける。
924 :
書いた人:03/10/04 01:29 ID:1DaX9mv9
これで・・・・・・やっとまこっちゃんの審判を止めさせられる。
飯田さんが私の勝利を宣言して、そして試合終了をコールすれば、私の勝ちが確定して。
そして、まこっちゃんは頼るものを失う。
でもいいんだ。
まこっちゃんはまこっちゃんらしくやっていけば、まこっちゃんなりの努力をしていけばいいから。
これで全てが解決して、まこっちゃんも助けられると思っていた・・・
なのに
・・・・・・なんだろう、この喪失感は。
まこっちゃんは床に座り込んで涙を拭いていた。
石川さんが差し出すハンカチすらイヤイヤをして受け取らずに、まこっちゃんは泣き濡れている。
925 :
書いた人:03/10/04 01:29 ID:1DaX9mv9
これは・・・・・・試合だったんだ。
試合が終われば、そこにいるのは勝者と敗者。
私がどんなに勝者面をしなくても、これから永久に誰もこの試合のことを口にしなくても、
まこっちゃんの中では私に一度負けている、っていう事実は残りつづける。
私が考えていたほど、甘いものじゃなかったんだ。
棒立ちになってまこっちゃんを見下ろしながら、今その事実に直面して初めて気付く。
私が勝者で、まこっちゃんが敗者。
試合終了と共に、それは永久に変えられない事実となる。
このまま、試合が終わらないで欲しい・・・・・・でも、
「小川、試合終了の挨拶・・・・・・まだしてないでしょ? 立ちなさい」
飯田さんの残酷な声が耳を突き刺す。
926 :
書いた人:03/10/04 01:30 ID:1DaX9mv9
石川さんと吉澤さんに両脇から支えられて、やっとまこっちゃんはふらふらと立ち上がる。
ダメだよ・・・・・・立ち上がったら、試合が終わっちゃう。
「あ、あの・・・・飯田さん!」
考えるよりも早く、口が動いていた。
少し意外そうに飯田さんが私に振り向く。
ダメです・・・試合を終えたら、私たちはもう二度と元の私たちに戻れない。
「試合・・・終了しないでくれません?」
「ちょっと! 何言ってんだよ、紺野!」
「んだべ・・・試合終了させなくっちゃ、紺野は小川に勝ったことになんないっしょ?」
矢口さんも安倍さんも、分かってないんだ。
二人の声に顔も向けず、じっと飯田さんの吸い込まれそうな瞳を見つめる。
927 :
書いた人:03/10/04 01:31 ID:gCfseo3r
「何で?」
・・・・・・何で・・・って・・・・・・飯田さんも審判なら分かるはずですよ?
私たちがこのあと、永久に勝者と敗者に分かれるんですよ?
まこっちゃんは審判を止めるから、永久にリベンジもできないし・・・
頭の中ではぐるぐると言葉が回るのに、一言も声にはなってくれない。
それが苛立たしくて、悔しくて・・・・・・
私の頬を、冷たいものが伝っていく。
突然泣き出した私を、みんなは遠巻きに見つめている。
何とか声に出さないと・・・試合が終わっちゃう・・・
「だってッ・・・・・・もし、このまま試合ッ・・・終わっちゃったらッ・・・
まこっちゃんがッ・・・・・・まこっちゃッ・・・ん・・・」
やっと出した声も、しゃくりあげてちっとも言葉にならない。
928 :
書いた人:03/10/04 01:32 ID:gCfseo3r
段々霞む視界の中で、処刑台の前でうなだれる死刑囚みたいに、まこっちゃんが俯いているのが見える。
もう諦めちゃったの?
私は最早ただのしゃっくりになってしまった言葉を、ひたすら繰り返すだけ。
でもその時、飯田さんは笑っていた。
あんまり飯田さんの表情では見たことが無い、
嘲笑じゃなくって、泣き出した子供を慈しむような笑い。
ただしゃくりあげるだけの私に、まるで諭すように飯田さんは話し出す。
「紺野さぁ・・・試合は終わんなくっちゃ、ダメでしょ?」
「でもッ・・・でも・・・・・・」
―― このままじゃ、私とまこっちゃんは元に戻れません
声に出なかったのに。
その言葉は私の胸の中でしか響いていなかったのに。
まるでその声が聞こえたかのように飯田さんはにこりと笑った。
929 :
書いた人:03/10/04 01:33 ID:gCfseo3r
「紺野さぁ・・・何のために、圭織がラグビー型で審判の資格取ったと思ってんの?」
「?」
笑いながら、飯田さんは続ける。
「ラグビー型って、一番難しいって言われてるのに、なんで選んだと思ってんの?」
まこっちゃんも顔を上げて、泣き腫らした目を飯田さんに向けていた。
私はまだ横隔膜の泣き癖を治められずに、いつの間にか手に握らされていた誰かのハンカチで涙を拭く。
「ラグビーの試合にはね・・・・・・魔法の言葉があるからね」
930 :
書いた人:03/10/04 01:34 ID:TRsrhMCz
いたずらっ子みたいに無邪気に笑うと、私とまこっちゃんを対面に立たせる。
私とまこっちゃんはその言葉の意味が分からずに、ただ吸い操られるように並んでしまう。
「安心しなさい・・・この試合が終わっても、紺野と小川は永久に友達だから」
飯田さんの右手が垂直に上がる。
みんなも飯田さんの横にピシッと並び立つと、少し嬉しそうな、そして少し心配そうな目で成り行きを見守る。
ダメですよ・・・・・・このままじゃ・・・ホントに試合が・・・
「それじゃ・・・・・・紺野対小川!
52対49で、紺野の勝ち!」
!
私の勝利を宣言した直後、飯田さんは少し俯いて唇の端を上げた。
931 :
書いた人:03/10/04 01:35 ID:TRsrhMCz
「ノーサイド!!!」
932 :
書いた人:03/10/04 01:35 ID:TRsrhMCz
―――― エピローグ
933 :
書いた人:03/10/04 01:36 ID:FE6k9QaV
「ほらぁ! 藤本さん! 脚の開きが足りませんよ!
もっと勢いよくパカパカやんないと、ダメですって!」
「ちょ・・・ハァ、やっぱこんな約束しなけりゃよかったなぁ」
「な〜に言ってんですか? ほら、一緒に? ハニ〜パ〜イ!!」
1週間後・・・・・・
お約束どおり馬鹿丸出しのダンスを楽屋で踊る私と藤本さん。
「ほら〜! ちゃんと踊んないとダメだべ!」
「キャ〜!! 美貴ッ! 素敵!!」
「つーか、なんで13人勢ぞろいしてこんなダンス見てるんですか!!」
「いや、面白いから」
飯田さんの言葉に、全員が爆笑した。
大きく口を開けて、にこやかに笑うメンバー。
その中に・・・まこっちゃんの顔も勿論ある。
934 :
書いた人:03/10/04 01:37 ID:FE6k9QaV
飯田さんがあの時言った・・・「ノーサイド」
野球で言えば「ゲームセット」。
ただその意味が全く違う。
もう試合が終われば、勝者も敗者も、どっちのサイドも無い。
またお互いに、仲良くしなさいよ、って言う言葉。
勿論それだけでわだかまりが抜けるわけじゃないけど・・・・・・
飯田さんなりに、必死に考えあぐねた解決策だったんだろう。
飯田さんが切々とその意味を説いたおかげで、どうにか最悪の事態は免れた。
まだどちらのサイドも無く、まこっちゃんとあの試合を笑って話せはしないけど、
今の所は、まこっちゃんは屈託なく私たちと接している。
みんなも私との約束を忘れていなかった、何事もなかったように、いつものモーニング娘。に戻っていた。
935 :
書いた人:03/10/04 01:37 ID:FE6k9QaV
♪
「ハァ・・・・・・これでいいでしょ?
もう約束は果たしたと思うけど・・・」
曲が終わって、藤本さんは溜息をついた。
だってこれでもう8周目だから。
藤本さんの目が『紺野、これ以上やらせたらシメる』って言ってるんだけど・・・
でもなぁ・・・・・・藤本さん、脚パカパカのペースがゆっくりなんだもん・・・
ダメです・・・私が一徹さんだったら、ちゃぶ台ひっくり返して怒っちゃうもん。
「みなさん! これで終わりにしていいんですかねぇ?」
責任回避。
答えの予想はつくけれど、私たちの周りに車座になって座る13人に問い掛ける。
矢口さんにはその意図が伝わったんだろう、おっきな目が三日月みたいに細くなった。
「ダメだろ〜、藤本ちっとも真面目にやってないし」
「ンだべ、もっとしっかりやんないと、紺野の苦労が報われないべさ」
936 :
書いた人:03/10/04 01:39 ID:4uE3MiSn
ブチッ
って音がしたように聞こえた。
うわぁ・・・藤本さん能面みたいな顔になってるんですけど・・・・・・
緊急警報、至急藤本美貴をなだめなさい・・・
って誰かが号令を掛けたみたいに、一斉にみんなが立ち上がる。
「あ〜、それじゃこうしようよ? あたしたちも一緒に踊ってあげるから?
これで藤本も満足でしょ?」
しょうがないなぁ、って感じで飯田さんが歩み寄る。
「ハァ? ちっとも解決になってませんって!!
何で全員で踊るんですかぁ?」
藤本さんの顔は、もう呆れ顔。
937 :
書いた人:03/10/04 01:39 ID:4uE3MiSn
「はい、それじゃ民主的に多数決をとります!
藤本と紺野と、みんな一緒にハニーパイを踊った方がいいと思う人!」
真っ先に手を垂直に挙げる私と飯田さん。
「しょうがねぇな〜、面白そうだからいいか?」
矢口さんと安倍さんがニヤニヤしながら手を挙げる。
「やるやるやる!! 面白そー!!」
吉澤さんとのんつぁんとまこっちゃん、加護ちゃんが張り切って挙手。
「先輩たちが・・・やるんでしたら・・・」
少し俯きながら、6期のみんな。
「カントリーは私のものだよ!」
いや、正確にはカントリー娘。のものだろ、と言いたくなる、意味不明の発言で石川さん。
「あさ美ちゃん、ご苦労さまってことで」
ありがとう、同期のみんな。お豆と愛ちゃんが最後に手を上げた。
938 :
書いた人:03/10/04 01:40 ID:4uE3MiSn
一斉に挙げられた手を、首をブンブン振って見回す藤本さん。
誰かが否定してくれると思ったんだろうなぁ。
藤本さんは血相を変えてまこっちゃんの両肩を揺さぶる。
・・・そんなにこのダンスしたくないのかな?
私、好きなのに。
「オイ、麻琴? おかしいって思わないの?
モーニング娘。は楽屋で15人勢ぞろいして脚パカパカやる異教徒の踊りみたいなのやるんだよ?
いいの? それでいいの?」
939 :
書いた人:03/10/04 01:42 ID:C5m0Xuyu
肩を揺さぶられて首をブンブン振りながら、まこっちゃんはニヤニヤ笑う。
「え〜・・・? 面白いから、いいんじゃないですかぁ?」
「いや、だからぁ!! アイドルとして、そりゃアウトじゃないのかってこと!!」
言った瞬間、藤本さんはハッと息を呑んだ。
この一週間、モーニング娘。の誰もが避けつづけてきた単語。
あの喫茶店での試合を、例え「ノーサイド」でも、けして思い出さないように、みんな避けてきたのに。
藤本さんの顔がさあっと白くなった。
胸が妙に騒ぐ。
でも・・・
藤本さんに、まこっちゃんはもう一度にやっと笑う。
いつもの、救いようが無く馬鹿っぽい笑顔。
「だってぇ・・・・・・アイドルとしてアウトでも、私たちが面白ければ、それでいいじゃないですかぁ」
940 :
書いた人:03/10/04 01:42 ID:C5m0Xuyu
・・・・・・そうだよ、まこっちゃん。
それでいいんだよ。
その言葉を待っていたみたいに、みんながまこっちゃんを暖かい目で見ているのに気付いた。
やっと分かってくれたんだね。
ううん・・・・・・ただ一人。
まあ、この人も分かってくれているとは思うけど・・・ね。
「お願いだから、麻琴もう一度審判になってよぉ〜!!!」
藤本さんの叫び声が、楽屋に木霊した。
・・・・・・でもハニーパイは踊りますからね!!
941 :
書いた人:03/10/04 01:43 ID:C5m0Xuyu
「ジャッジメント・ジャッジメント」
おわり
942 :
書いた人:03/10/04 01:44 ID:BZMVcTlO
――― あとがき
一月にわたりお付き合いいただいた「ジャッジメント・ジャッジメント」は終了です。
「小川が審判になり、ダメ出しをしまくる」
という意味不明のプロットを考えてから、よくもまぁ、こんなに話がふくらんだものです。
最初は限りなく下らない話にするつもりが、結局はいつものようになってしまいました。
あとがきで小説の中身を解説するほど格好悪いものはないのですが、タイトルにだけ少し。
一応日本語に訳すと「審判対審判」にでもなりましょうか、米国の裁判廷での表記を真似ました。
ダスティ・ホフマン演じるクレイマー氏が、子供の養育権を巡って妻のクレイマー夫人と争う、
映画「クレイマークレイマー」をご想像いただければ、意味の方はお分かりいただけると思います。
もっと気の利いたタイトルでも付けられればよかったのですが、
今回は始まる時点で殆ど内容を決めていなかったため、このようになりました。
例によって次レスへ続きます。
943 :
書いた人:03/10/04 01:46 ID:BZMVcTlO
もう諦めておりますが、
飯田さんしっかりしすぎ、まこっちゃん凛としすぎ、藤本さん仲良すぎ、というご批判は自覚しております。
開き直ってモーニング娘。を設定から取り払った娘。小説でも書けばいいのですが、
それだと「モーニング娘。」を登場人物に使う意味が、今の私にはまだ見出せませんので。
私の妄想上の飯田さんであり、まこっちゃんであり、藤本さんとでも御解釈ください。
今度こそ、潜伏です。
我ながら950レス近くまで書く事になるとは思いもしませんでしたが、まあ成り行きですね。
そう言ったわけで、また別の機会にでもお会いしましょう。
最後になりましたが、感想レスを下さった、そしてこれから下さる皆様。
ROMで読んでいただいた皆様。
本当にありがとうございました。
残り少ないスレ寿命ですが、ご感想を頂ければ幸いです。
それでは。
◇◆◇ジャッジメント・ジャッジメント 目次◆◇◆
‖ >660-668 ACT 1[2003.09.09] ‖
‖ >676-681 ACT 2[2003.09.10] ‖
‖ >689-698 ACT 3[2003.09.14] ‖
‖ >705-713 ACT 4[2003.09.15] ‖
‖ >719-726 ACT 5[2003.09.17] ‖
‖ >731-741 ACT 6[2003.09.18] ‖
‖ >745-756 ACT 7[2003.09.19] ‖
‖ >762-770 ACT 8[2003.09.20] ‖
‖ >778-784 ACT 9[2003.09.22] ‖
‖ >789-797 ACT10[2003.09.23] ‖
‖ >803-813 ACT11[2003.09.25] ‖
‖ >821-829 ACT12[2003.09.26] ‖
‖ >843-855 ACT13[2003.09.29] ‖
‖ >863-877 ACT14[2003.10.01] ‖
‖ >886-894 ACT15[2003.10.02] ‖
‖ >902-913 ACT16[2003.10.03] ‖
‖ >918-931 ACT17[2003.10.04] ‖
‖ >932-941 *Epilogue* [2003.10.04] ‖
‖ >942-943 PostScript.[2003.10.04] ‖
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
>>840 「私の願い」スレログ
>>841 「昨日見た日々」目次
脱稿乙です
最終回リアルで追えてちょっと満腹
結局最後に泣きをみたのが藤本ってのもおもしろかったですw
>>943 娘。小説に限らずネタなんかも個人の印象・妄想だからそれはそれで(・∀・)イイ!!と思うよ
川o・-・)ノ<更新乙でした!
飯田さんがラグビーで受けたのはそんな理由があったんですね…
前作でもそうだったんですが、話の奥の深さに感服です
くだらない話をここまで膨らませられるあなたは天才です!
またお目にかかれる日を楽しみにしています!
|
|ハ@ おバカさんなことをやってるんやけど、ひしひしと
|д‘) つたわってくる、この緊張感はなんやろうな〜。
|ハ∪ かなり読んでてドキドキやねん。相変わらず、こ
|D`) れを出せるのはホントすごいと思うで、正直。
⊂ノ .さすがやで。何やら潜伏するようやけど期待して
| まってるから、そのうち帰ってきてなー。
リアルで見てたのに感想に変なものしこんでるからこんな時間なのれす
(0^〜^)<作者さん、作品完結乙です。
つ日 うーん。本当に勉強になるお話でした。
善悪とか勝ち負けとかよりも、
面白いかどうかという基準の方が上である
と私も思っています。
このスレ本当に楽しみでした。
またどこかで必ず復活してください。
その時は同じAAで駆けつけます。
傑作でした。面白かったです。ありがとうございました。
作者さん、脱稿お疲れ様でした。
下らないことを全力でやるのって大好き。
じゃあハニーパイは何なんだって感じではありますがw
またどこかで会えることを楽しみにしてます。
更新、そして完結お疲れ様でした。
ミキティが溶け込んでいて好い感じですなあ
ハッピーであったかい締め括りに愛を感じます。
当初の予定外にシリアス路線が絡んできてしまったと云うことで、
娘。たちの描写をコメディ的な側面のみにとどめることなく
ついつい多面性を描かずには居られないところに、
作者さんの娘。たちへの愛がよく伝わってきましたし、
また、これらコメディとシリアスの同居、またそのギャップにこそ
作者さんらしさがあると思います。
いつの日かまた何処かで復活されることを楽しみにしております。
素敵な作品たちをありがとうございました。
( ´D`)<とってもとーっても良いお話だったれす!
更新乙!
完結したみたいですねぇ・・・
今日も持ち帰りますので、
次来たときには感想を書きたいと思います。
ではとりあえず、ありがとーでしたっ!
|
|ハ@
|дT) <クソ女保全
⊂ノ
|
川o゚∀゚)<こんなスレ保全してやる、アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ…。
書いた人さんの小説は娘。に対する愛にあふれてて
読むほど娘。が好きになっていくような・・・。
どの作品も、紺野がたくさんなのも個人的に嬉しいです。
いつかどこかで次回作が読める日を楽しみにしてます。
お疲れ様でした。
川o゚∀゚)<こんなスレ保全してやる、アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ…。
959 :
小泉:03/10/07 00:01 ID:smfBXcTj
よくがんばった!
感動した!
960 :
まめをたそ:03/10/07 01:06 ID:Oyvuti/o
埋め立て
ゴミ拾いをしていた女子高生は辻姉ですか?