「愛する人は●●だけ。誰も邪魔させない。」
いつもは騒がしい【部屋】が、そのときだけはなぜか一瞬静まり返っていて、
ドスのきいたれいなの声が聞こえた。
「・・・愛に包まれてるのはわたしだけがし。わたしだけの●●・・・」
愛ちゃんは普段は喧騒状態にある【部屋】を信じきっていたんだろう。
れいなにだけこっそり言ったつもりだったのが、その言葉はみんなに知れることとなった。
「●●、どこにいったんだよ〜」
予想外の声が聞こえた。さゆみだ。
ここに来た当初の第1印象は、とかく消極的で、
でもどこか謎の自信がみなぎっている雰囲気だったさゆみ。
だけど半年後にあたる今はとなっては目がうつろで、どこを見ているかわからない。焦点が定まらない。
唯一心を許すのは、同じ時期に入ってきたエリとれいな。
そのどちらでもないわたしはここしばらく彼女の声を聞いていなかった。
そんな時に聞こえてきた、今までにないさゆみの甲高い叫び声。
「あぁーうるせえっ!!」
美貴ちゃんが叫んだ。それは珍しいことではない。
普段から騒がしい【部屋】の中で、一括を入れるのはいつも彼女だ。
「お前の声もうるせぇんだよっ!!」
これも珍しいことではない。
美貴ちゃんとは犬猿の仲にある真里さんがこのタイミングで叫ぶのは―。
だけどこれが、わたしたちの働く部屋、そう「シャボン玉」の平穏を、壊す引き金になったのだ。
「ねぇねぇしってる?あさ美ちゃん、愛ちゃん、●●と付き合いだしたんだって!!」
リサちゃんが顔を蒸気させてわたしに報告してきたのは、この数時間前のことだった。
「え?だって●●って、梨華さんとつきあってるんでしょ?」
「ん。。。そうなんだけど、なんだけど、愛ちゃんも声掛けられたって!
ずっと秘密にしてたけど、一緒に入ったからってリサには教えてくれたの!」
たぶん同期だからではない。ただただうれしくて、愛ちゃんはうれしくて、
その場にいたリサちゃんに言ってしまったんだろう。
口止めするまもなく走り去るリサちゃんに、そういう忠告の暇はなかった。
きっともう1人の同期、マコトにも言いに行くんだろう。
追いかけてたしなめることが友達だったのかもしれないが、
そのときのわたしには、ほかに夢中になっていることがあり、
とにかくそういうことが、めんどくさくてしょうがなく思えた。
「なっちもねぇ〜そういう時代あったんだぁ」
「はぁ・・・」
「なっちが好きになった人がほかに誰かと付き合っててね、
でも秘密でつきあったり・・・あ、このいい感じのホシイモもらっていいべか?」
「あ。どうぞ。まだ焼いてるんで・・・」
なかなか暑くならない今年の夏。
わたしはストーブを出してきて大好きなホシイモを焼いていた。
そんなときに、リサちゃんが部屋から出て行ったのと入れ替わりに入ってきたなつみさん。
リサちゃんや愛ちゃんの名前は出さずに、地元の友だちに相談された話として、
さっきの話をしてしまった。
わたしの中でその話題が切羽詰っていたわけではない。
ただ、なつみさんがわたしのホシイモが焼けるまで出て行ってくれる気配がなく、
それまでの世間話のつなぎとしてしてしまっただけなのだ。
「もごもご・・・したっけなぁ」
かつてではあるが●●とつきあっていたらしいなつみさんは、
その後結婚することになった婚約者の話をひときしりのろけて、
かつわたしの食べようとしていたホシイモまでゲッツして、満足げに部屋から出て行った。
154 :
名無し募集中。。。:03/08/31 11:25 ID:shyUk/ch
まさか●●って押●か・・・・
えらい奴ぶっこんできたな
ま、がんばれ〜
>>154 俺でもおまいでも誰でも当てはめられる”男”ってことでないの?
●●に自分の名前入れて読んでくれ、と
まあ作者に聞かないとわかんないけど
レス伸びてると思ったら小説かよ
あ、先越されちゃった…はぁ、違うトコさがすか…
暫く来なかったら凄いなぁスレも落ちててさ、何かさぁ、トホホだよ
関係ないね、ごめんね、ちょっと愚痴ってみたかったの、じゃ
やめろというレスがついてなくて一安心。
続き書きますね。
「・・・やっぱりわたし、聞いてくる!●●の本心を!」
いつにも増したアニメ声が響いた。
数分後、なつみさんに取られつつも、新たにやっと焼けたホシイモを食べていると、
仕事を終えた梨華さん、ひとみさん、美貴ちゃんが連れ立って部屋に戻ってきた。
梨華さんはかなり興奮している様子だ。
仕事が終わった直後にふたりと会って、ここまで来る間に●●の話をしていたに違いない。
●●と梨華さんは公認の中だ。
なつみさんと●●が付き合っていたというのはとうに昔の話で、
わたしたちが入ってきた時はすでに梨華さんは幸せの絶頂にいた。
それがおかしくなってきたのは最近の話。
梨華さんの一番の友だちであるひとみさんは、「気のせいだよ」ってなだめてる。
わたしは見抜いている、ひとみさんは梨華さんを好きなんだ。
一瞬顔がほころんだ梨華さんに、美貴ちゃんが「じゃあ聞いてきなよ!」って、
苛立ちまぎれにそう言ったんだ。
止めようとしたひとみさんの手を振り払うようにして、梨華さんは部屋から出て行った。
部屋は大所帯だ。
仕事に出る人がいる反面、仕事を待ち続ける人もいる。
かおりさんは今では待ち続ける側の1人だった。
相性が悪いせいか、部屋にふたりっきりでいるときもわたしには話かけようとすらしてくれない。
だけども、インスピレーションとでもいうのだろうか、
彼女には波長がぴたりと合う人間がわかるようで、
そういう人には仕事のノウハウはおろか私生活のアドバイスまでするようだ。
新しく―れいなやさゆみといっしょ―に入ってきた子の髪をときながら、
なんだか頭が混乱するような比喩を用いてしきりに話している。
そんな話を聞きながらでもエリはかわいらしい笑顔で受け答えしている。
あの笑顔・・・あの無邪気な八重歯・・・かおりさんに気に入られる少女・・・
かつてそういうポジションにあった彼女が、相方を連れて元気に部屋に入ってきた。
「わたしのぉ〜ぃっ」
「らんきんぐぅ〜っ」
「「な・ん・い・だろうか〜?っお〜ぉ・あぃっ!」」
あいかわらず即興のわけのわからない歌でかけこんでくるあいぼんさんとののちゃん。
ふたりをみると思わず微笑んでしまう。
なつみさんにも自分からは渡さなかった、いい感じに焼けた2枚のホシイモを
ふたりの口にいれてあげるのは、わたしの毎日のひそかな楽しみだ。
「もごもご・・・ぃひはちゃんが・・・んぐっ。血相変えてでてったでぇ。」
「んごんご・・・んこれすかねぇ?」
エリの髪をとかし終えたかおりさんが、
梨華さんの代わりに「しないよ」とぽんとふたりのあたまをなでた。
かおりさんはさっきの話を聞いていたんだろうか。その表情からは窺い知ることはできない。
ひとみさんは青ざめている。
男っぽく見えるけど繊細な彼女は、きっと梨華さんが知ることになる事実を予想しているんだろう。
美貴ちゃんはポーカーフェイス。
美少女に見えるけど鬼の彼女は、梨華さんのことも知ったことかというように、タバコに火をつけた。
あの風貌からは想像ができないが、繊細なのかなあ吉澤って
それにしても藤本は相変わらずだな
実はここで馬鹿兄弟を待っていた…
さすらいの旅にでちまったか…
>>157 もしかしてひとむとのぞむの馬鹿兄弟?
お願い!どっかでやって!!
小説書きこんでる者です。初めてのチャレンジで、
あんまり深く考えずにここに決めてしまったけど、
ちょっとスレ汚し気味だったかな・・・スマン。
今日で完結します。
「ねぇ?悪いことがあったら言って?なんでもするよ?」
「チョット何?話してる時くらい電源切ってよ!」
「ぎゅっとして!抱きしめてよぉー!!!」
小1時間後、梨華さんが戻ってきた。
ひどく興奮状態にある彼女は、必死でひとみさんにいきさつを話している。
だけどもそんなことは日常茶飯事、あいぼんさんとののさんが騒いでいる声でかき消されて
聞こえているのは当事者のひとみさんと、聞き耳立てているわたしだけ。
実際はみんなも聞いているのかもしれない。だけど誰も何も言わない。
てんでばらばらなことをお互いに話している。
「「いっけんらくちゃくじぞじぞぽーん!!」」
自分たちのやっている仕事を忘れるくらいにのんきな二人の声。
なんとなく、本当になんとなくだったんだ、
その二人の声を聞いて、みんなの話が一瞬やんだ。
そんなときだったんだ。
「愛する人は●●だけ。誰も邪魔させない。」
「・・・愛に包まれてるのはわたしだけがし。わたしだけの●●・・・」
●●。その言葉を聴いて、梨華さんの顔色が変わった。
「なに、何の話?なんなのよ!!」
それとほぼ同時に。
「●●、どこにいったんだよ〜!!」
いつのまにか仕事を終えて戻ってきたさゆみの声。
「あぁーうるせえっ!!」
「お前の声もうるせぇんだよっ!!」
タバコを吸い終えた美貴ちゃんと、
最近、人一倍に理不尽な仕事が増え、ストレスを感じていた真里さんに火がついた。
「っあいっ!!」
普段はヘタレで評判のマコトが愛ちゃんに対して詰め寄るのを見て、
美貴ちゃんも真里さんも、ほかのみんなも一瞬息を飲んだ。
「あいっ!・・・ふへぇぇ・・・なぁにいってんのさ。」
ぽんぽん。いつもの調子で肩を叩く。
あぁだめだ。マコトはいつものまこっちゃんだった。
引き返しのつかなくなった愛ちゃんは、涙目で梨華さんとれいなを見つめている。
梨華さんはしきりに何か叫んでいる、けど、いかんせん、音波が外れすぎていて意図が聞き取れない。
そんな彼女をひとみさんが必死に抱きかかえている。
れいなに視線を移すと―
彼女は恐ろしいくらいに冷静で、
泣きもわめきもせずに、冷え切った視線でいた。
それに対照的だったのが、さゆみだ。
「しゃぼんだまー!!」
そう叫んで、部屋から飛び出して行ってしまったんだ。
さゆみがいつものあらわな衣装で繁華街に飛び出してしまったせいで、
「シャボン玉」は警察の目につくところになってしまった。
さゆみがとびだした瞬間に、持ち前の冷静な判断をした美貴ちゃんのおかげで、
部屋から逃げ出したわたしたちは難を逃れた。
れいなと愛ちゃんはさっきまであんなに盛り上がっていたくせに、
現金なものだ。自分たちに危険がおよんだら、一目散に逃げ出した。
梨華さんだけはひとりで残ろうとしていたが、ひとみさんが力づくでいっしょに逃げたと、あとで聞いた。
繁華街で保護されてしまったさゆみも、
既に精神が病んでいたということで罪に問われることはなく――――
数年後、偶然町でマコトちゃんに会った。
「ふぇー、あさ美ちゃん。大学行ったんだぁ。」
「ん。あの頃イモ焼きながら教科書読んでたんでね、なんとかなったんだぁ。」
「・・・ホントはね、あの頃リサちゃんと言ってたの。。
『あさ美ちゃん、仕事こなくて落ちこぼれだよね』って。
でもそんなことないんだね、今はあさ美ちゃんが一番・・・!」
ほんっと不器用なマコトちゃん、言わなくていいことまでしゃべっちゃって。
くすっと笑いながら、ハニーパイを一口食べる。
「くー、あさ美ちゃん、相変わらずぶきっちょな笑顔だねぇ。でもそれがか・わ・い・い♪」
言いながら、相変わらず間抜けな笑顔でパンプキンパイをほおばるマコトちゃん。
わたしを含めあのお店で働いてたひとたちは、みんな幸せな人生を歩んでいるらしい。
ただ「シャボン玉」の経営者である●●だけは、その時の逮捕をきっかけに、
人生が、シャボン玉のようにあっけなくはじけとんでしまったらしいんだ。
〜おわり〜
作者さん乙っした、何かダークな感じの話でしたが最後はハッピィエンドでヨカタす
川VvV从と(〜^◇^)の絡みはがイイね、アノ二人そういうイメージ合うもんね
もし次作を載せる予定がないのでしたらこのスレ使ってもよろしいでしょうか?
他の氏にスレでやれっというのはごもっともですが、よしののモノなので出来れば
辻吉澤に関係したスレタイのところでやりたいかなーなんて…
それに、前にかいていたスレが落ちてしまってかわりの氏にスレ探しているとき
狼の某スレで教えてもらったのがここだったんです。どうでしょう?
途中で関係ないカキコしたことお詫びします、すいません…すいますいません
作者さん乙です。
シャボン玉という歌に対する愛情が感じられますね。
歌のセリフとかいろいろちりばめられていて面白かったです。
次回作期待します。
おはようございます
>>172 おぉ、ご親切に有り難う御座います。n日ルールってよく知らなくてテヘテヘ
ホゥホゥ4ヶ月も安全なんすか、そりゃぁエエですね。そこでやりましょうか
なにぶんズボラなヤツでして…ありがとごじゃいました
感想書いてくれた人、どうもありがとうございます。
もちろん、読んでくれてた人にも感謝です。
今になって読み直したら、あまりにベタな性格設定だったり、
言葉が足りなすぎて?な部分がけっこうあったりして恥ずかしいです。
だけど思い切って小説を載せて、その感想を書いてもらうという、
いつもと違う、チョット楽しい日常を送ることができました。
また何か思いついたら書いてみようと思います。
では、そのときまで。
te
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