思考が止まった。
どれだけの時間が経ったのかも分からなかったが、
目だけで追って小川くんが二人の警備員に
羽交い締めにされたままエレベーターに乗っていったのは覚えている。
只でさえだだっ広い格納庫が、いっそう広く感じられた。
心配そうな顔で俺を見つめていた歩部さんが
「彼の処分は明日決まるヨ・・・」
と言って、自分もエレベーターに乗ろうとしたので、
俺は必死に頭を振り、取りあえずの質問をした。
「小川くんは…結局…何を、したの…?」
さっきまでは答えなかったのに、
今度はあっさり答えて来た。
「彼もウチの人間・・・自首しようとしたんだヨ…
そうしちゃうようなウチの情報が、警察に回るって事は、
あまりよくない事デス…」
「…梨華ちゃんは…」
「あなたはパイロットデス。
余計な心配はしないで、平和を守って下さい…」
「そんn…[プシィィ]
反論する間もくれないで、ドアは閉まってしまった。
「電話…梨華ちゃんに…そうだ、電話…」
急いで[自分の]携帯を取り出して、リダイアルから
梨華ちゃんの名前を探す。
「出て!梨華ちゃん…出てっ…」
[トゥ、トゥルルルル・・・トゥルルルルル……ガチャッ]
「あ、もしもし梨華ty[おかけになった電話番号は
現在電源を切っておられるか、電波の届かない所、
又はスカラ(ry
繋がらない…
電話を切ると同時に、俺は走り出していた。
「家に・・・梨華ちゃん…家に…いるよね?」
出口を出ると、交通量のわりに
ずいぶんと幅のある道路に出た。
[巨動通り]
まさにあんな物が歩く事を見透かしたようなネーミングだと思った。
梨華ちゃんの家は、ここからさほど遠くなかったはずだ。
走っていけば、10分くらい。
でも俺にとってその十分は、最悪の事体を想定させるには
十分すぎる時間だった。