「そしたらその子は私の顔を触り始めた」
「ゆっくり優しくでもしっかり指先で何かを確かめてる感じだった」
「気持ちよかった・・・」
「私おかしいかな?女の子に触られて気持ちいいって・・・」
「突然触るのを止めたかと思うとニコって笑って」
「貴方はとっても瞳が綺麗な人ね、だからひとみって名前はどう?名前がないなんて可哀想よ・・だから今日から貴方はひとみねってキラキラした笑顔で言ったんだ」
「何だか凄く嬉しかった」
「始めてだったんだ・・・他人にあんなに優しい気持ちになれたのは」
「凄く不思議だった・・・」
「恥ずかしいからありがとって下向いて言った」
「そして、君の名前は?って聞いた」
「もちろん下向きながらね」
「りかって今まで出さなかったはっきりした声で答えてくれた」
「いい名前だねって今度はりかの顔見ながら言うと」
「うん!気に入ってるの、だってお父様がつけてくれたんだもんって嬉しそうに言った」
「私何だか悲しくて、それとりかの親父にムカツイた」
「こんなにあんたが大好きなのに、なんで捨てるんだよって思ったから」
「全く勝手な親だ」
「私は嬉しそうなりかを見ながらスウって立つと」
「りか、こっちに追いでと言って車に案内しようとした」
「立ち上がったりかは何か細い棒ってない?って聞いてきたから」
「その辺にあった軽くて細い木の棒を渡した」
「それをゴミだらけの足元にトントンと当てて器用に歩いているりかをみて」
「ビックリした」
「目の見えない奴って普通の奴より凄いんだなって思ったよ」
「りかの棒を持ってない手を握りながら車まで連れてった」
「りかは車だよって教えてやると目が見えてるんじゃないかって位」
「すんなりドアを開けて中へ入った」
「すぐにお腹が空いたって言ったから」
「すずめの肉を乾かしたやつを食べさせようとしたらこれ何って聞くから」
「すずめって言うと食べたくないと言って食べないんだ」
「仕方なく私が食べて、りかは水だけ飲んで寝た」
「りかは不思議な奴だったよ」