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新スケバン刑事〜少女武闘伝〜第四話「対決2人のサキ!!」:
五代陽子はBMWを運転しながら、”ナンバー5”について語り始めた。
「あなたに格闘術を教えた風間教官が3代目の「麻宮サキ」を引退した後、
闇の機関はすぐに4代目の「特殊潜入捜査官」……当時は「学生刑事」って言ってたんだけど……を選考した。
選ばれたのは某国軍のコマンド訓練を受けた少女だった。
しかし彼女は潜入捜査先で見つかり殉職したの
それまで闇の機関が「学生刑事」なんていう捜査方法をやっていた事は、警視庁上層部でも問題になっていた。
わたしたちが「スケバン刑事」として捜査活動ができたのも、あなたのお母さんが「海槌三姉妹」という、公安部も手を焼いていた連中を倒したから
そして、私や風間教官も、それまでなかなか警察の手の届かなかった大物フィクサーを倒した実績があったから
しかし、4代目の殉職はその功績を妬む他の警視庁幹部からの格好の攻撃材料になった。
結果、暗闇警視を中心とした闇の機関は解散。
それ以後「スケバン刑事」は任命されることはなかったの。
その後、私は警視庁に入り、所轄署の刑事として働いていた。
丁度3年前よ、ある行方不明事件の捜査を担当する事になったの
それは優秀な脳外科医が数人、ほぼ同時に行方不明になった事件。
捜査を続けるうちにね、ある人物の関与がある事がわかった……
「山崎」
元、海槌家の顧問弁護士で、その後「青狼会」の幹部となった男。
「青狼会」解散後政界に入り、いつの間にか政界の影の大物と呼ばれるようになった。
私がかつて「スケバン刑事」だった頃上司だった西脇さんという人が、今公安部で働いていてね、
「山ア」については同じく公安部でも以前から要注意人物として目をつけていたの。
彼の話では、「青狼会」の残党が「神狼会」と名を変えて暗躍を開始しているらしいということだった
そして、その捜査について公安部が「特殊潜入捜査」のための人員を探していることもね
その「特殊潜入捜査員」は婦人警官の中から選ばれた
それはかつてわたしの部下だった女性。
”安倍なつみ”
元、ソフトボールの選手でオリンピックの強化選手だったほどの腕前
彼女は潜入捜査員になるのを了承する為に、ある条件を出したの
武器として桜の代紋の入った重合金製のヨーヨーを作ってもらう事
潜入捜査先で「麻宮サキ」と名乗る事
彼女は私に言ったわ「5代目を名乗らせてください」と……
でも彼女は捜査開始数ヵ月後に行方不明になった……
彼女が行方不明になった事で、公安部は本腰を入れて「神狼会」の捜査に着手したの
特殊捜査課を設立して、捜査員を派遣する事になった。
すぐに次の「スケバン刑事」……6代目ね……が派遣されたけど、彼女もすぐに行方不明になった。
私は所轄署から呼び出され、新しいスケバン刑事のエージェントになるよう命じられた。
実は私はその時、ある人物の行方を追っていた
北海道総合医科大学で脳外科手術の腕を振るっていた紺野医師。
「神狼会」が関連すると思われる行方不明者の一人だった。
捜査を進めているうちに、色々と面白いことがわかった。
紺野医師には妻がいて、それがかつての「スケバン刑事」初代麻宮サキである事
彼女の娘は北海道で無敵の強さを誇る空手選手だった事
それがあなただったのよ……」
「じゃあ、あのナンバー5というのは「5代目スケバン刑事」のこと……」
「そういうことね
私を見て何の反応もしなかったところを見ると、彼女は洗脳されているのか何かだと思う
彼女が私達の敵になるなんて……強敵よ」
「わかってます、あのヨーヨーがをまともに当たっていたらやられてました」
サキはナンバー5のヨーヨーが当たった個所に手を当てた。
まだ鈍い痛みが残っている。
彼女はヨーヨーをぎゅっと握った。
「骨折とかはしてないみたいやけど、なんか、えらい打身になってるで
とりあえず湿布貼っとくけど」
保険医の中澤先生はそう言って、サキの胸に湿布を貼った。
サキの右胸辺りには赤紫色の打身痕ができている。
「しばらくは痕が残るかもよ。
女の子やねんから、注意しいや
いったいどないしたん?」
「ソフトボールが当たったんです……」
サキは咄嗟にウソをついた。
「ぼーっと歩いてたんちゃうか?気ぃつけや」
「はい、すいません……」
「ところで話は変わるけど麻宮さん、あんたなんかスポーツやってへんの?」
サキの腕を触りながら中澤先生は言った。
「いえ、なんにも」
「そうか?なんか男の子みたいな腕の筋肉やで
もったいないなあ、何かスポーツやったらどうや?」
「あ、あの、太りやすいんでダイエットで筋トレをずっとやってたんです……」
サキはそう言ってごまかした。
「私な、女子空手部の顧問やってるんやけど、どうやうちのクラブ入らへんか?
中学で全国大会ベスト8になった生徒もいるんやで」
「か、考えておきます……」
サキはそう答えたが、顔は引きつった笑顔になっていた。
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「大丈夫なのか?」
保健室から出ると、麻琴と里沙が待っていた。
ちょっと心配そうに麻琴が訊いた。
「うん、打撲ぐらいで済んでる。骨とかには異常無いみたい」
サキは笑顔で答えた。
「そりゃあ良かった。
今度そいつが来たら私も戦うよ」
「私も闘います!」
麻琴と里沙は言った。
「ありがとう……
でもあのひとはかなりの強敵です、元スケバン刑事が相手なんですから」
「1人じゃ無理かもしれないけど、3人なら何とかなるって」
根拠の無い麻琴の言葉だったが、サキはなんだか嬉しくなった。