「もういい。お前がそんな最低の奴だとは思わなかった。私の見る目がなかったのね」
「…美貴」
背を向けて去ってゆく美貴。
こんな別れ方したくない、そう思ったのに呼び止めることができなかった。
(自分の気持ちを隠してたこと、美貴に言われてやっと分かった)
(僕はトメコが好きだ。だからこそもう…)
悲しみと苦悩に才悩ませながら、僕は家路に着く。
夜のニュースに「まりあ」の武道館コンサートが報じられていた。
いよいよ明後日から三日間で10万人を動員する一大イベントが始まるのだ
これが成功すれば、まりあはトップスターとして不動の地位に着くと言われている。
そのとき、僕の頭の中にあまりに愚かな考えがひらめいた。
(何を考えているんだ僕は。どうかしている。こんなこと…)
(だけどこれなら…完全にトメコを諦めることができる)
苦悩の末、新しい決意が固まる。
翌日、僕は一通の手紙を手に、東京のトメコのマンションへと向かった。
500 :
名無し:03/07/20 20:13 ID:zuGnG6fm
500get!
う〜む。。。
最後がどうなるのか、滅茶苦茶楽しみです。
辻っ子のお豆さん ◆Y4nonoCBLU さん。。。
最後まで頑張ってください。
あぁ〜、いいなぁ。青春時代。
辻豆さんはいったいいくつなんだろう。
こんな風に情緒的にでも情熱的にこの時代を語れるなんてうらやましい。
私もお話を書いているのですが、辻豆さんのお話を読んだ後は
話が進みます。川o・-・)<何でだろう?
何だか読んでいて気持ちが良いですね。最後も頑張ってくらさい。
細かいところですが・・・
>>494 卒業生が読むのは送辞ではなく答辞ではないでしょうか
結末が気になるぅ〜
いきなり選択肢が現れてバッドエンドになったりして・・・
主人公と止め子よ。幸せになってくれ!
ワンピースっていうのも書かれてたと記憶してるんですが、<氏の過去作品
リンク先が出てきません…。分かる方、是非お願いします〜
上のは忘れてください。別の方のようです…。すいません!
>>500 500オメ!最後まで頑張るよ〜!
>>501 過去作品を読破すれば大体いくつくらいか分かると思います。
>>502 僕はおもしろい話を読んだ後、自分もこんな風に書きたいと意欲が湧く人なので
これは最上級の褒め言葉と受け取っておきます。
>>503 そういえば答辞ですね。すいません普通に間違えました。
>>504>>505 ワンピースって海賊?そんなのいつの間に書いたかなと一瞬考えたよ!
ゴムのの、三刀流藤本、航海士加護、ウソ小川、コック石川、トナカイヤグ、手紺野。
おかげで妄想が膨らんでしまいますた。
インターホンを押すが応答はない。
ある程度予想はできた。仕事で留守にしているのだろう。
僕は持ってきた手紙をそっと彼女の郵便受けに入れ、マンションを出た。
駅の公衆電話に小銭を入れ、例のメモに記された電話番号に掛ける。
(出なければそれでもいい…だけどもし出たら…)
「はいっ!もしもし!」
予想に反してトメコの声が受話器の向こうから聞こえた。
僕は動揺していた。まさか仕事で出れないと思っていたから。
「君だよね。どうしたの?」
「…どうして僕って?」
「だってこの番号、君にしか教えてないもん。エヘヘ…」
胸がギュッと熱くなる。
(よせ、そんなこと言うなトメコ、僕はこれから…)
「今ね休憩中。明日からのコンサートのリハーサルだよ」
「そう…」
「チケット送ったの届いた?最終日の最前列だよ。絶対見に来てね」
「…ううん、行かない」
「え?」
電話越しだけど、空気の変化が分かった。
機関銃の様に鳴り響いていたトメコの声がピタリと音を止めた。
それを良いことに僕は一気に伝えるべきことを告げた。
「行かないし、もう会うこともない。さよなら…」
「え?何?ちょっと待っ…」
「さよなら」
僕は無造作に受話器を下ろした。
ツーツーツー。
無通音だけが春の空に空しく鳴り響く。もう戻れない。
自宅にも戻らず、僕はそのまま電車を西へと揺られ続けた。
目的地に着く頃にはすっかり日も落ちていた。
「懐かしい…」
去年の春、修学旅行で訪れた町、京都。
ここに僕とトメコが初めて互いの気持ちを結び合った想い出の場所がある。
家族には友達と旅行に行くと伝えてある。
たとえトメコが家に電話しても行き先は分からない。
彼女のマンションに残したあの手紙だけが唯一の手がかりである。
僕とトメコが流されたあの激流も、今はゆるやかな流れを続けている。
ふもとの町から歩いて約30分。
四方を山々に囲まれた小石と砂利の小さな川岸。
こんな何でもない場所だけど、僕にとっては一生忘れることのない場所。
僕は手近な石に腰を下ろした。
(これから三日間、僕はこの場所で彼女を待つ)
それは何とも愚かな発想だった。
トメコは明日から三日間、大事なドームツアーが控えている。
もしもトメコがあの手紙を読んだなら…
もしもトメコがこの場所を覚えていてくれるなら…
もしもトメコが今でもまだ僕のことを愛しているなら…
ここに来てくれる。
全てを捨ててでも僕の為に来てくれる。
自分勝手で、わががまで、本当にどうしようもない発想、だけど…。
僕は他に術を思いつかなかった。
(トメコ…)
初日の朝、僕はふもとの町で購入した安い毛布をかぶり待ち続けた。
「寒い…」
3月中旬の京都、山にはまだ雪の名残がアチコチに見れる。
厚着の服は持ってきていたが、それでもどうやら足りなかったみたいだ。
寒さで痺れた手に息を吹きかけ、また毛布を深く被る。
(こんな場所に、本当にトメコが来ると思うか?)
後悔はしないつもりだったけれど、後悔している自分がいることに気付かされる。
日が昇ると気温も少し上がり、毛布なしでも平気になる。
時間を持て余すように僕は辺りを散策したり、河原に小石を投げたりしていた。
それでも何か物音が聞こえる度にハッとなって振り返る。
「トメコ!」
でも大概それは風で木々が擦れる音だったり、小動物の足音だったりした。
結局トメコは来ないまま、日はまた山の間に落ちる。
(まりあのコンサート始まってる時間だ…)
また毛布を被り、買い置きしていた菓子パンをほおばり思った。
(僕、何やってんだろ…)
夜が来た。暗闇と孤独の世界。
自分以外生者は何者も存在しないのではないかと思わせる世界。
身も心も凍りつきそうな世界。
そんな絶望の中でたった一つ、僕の心を灯すのは彼女の笑顔。
トメコと出会い、トメコと笑い、トメコと泣き、ずっと一緒に居た想い出。
「トメコ…トメコォ…ウッ…ウウ…トメ…オゥウ…」
何度も何度もトメコの名を呼んだ。
次第にそれはすすり声へ変わっていった。
泣きたくなんかないのに、次から次へと涙が溢れ出て止まらない。
眠ることもできず、僕は一晩中苦しみ続けた。
やがてまた日は昇る。二日目の朝。
全身の感覚が麻痺してきている様に思った。
少し温かくなっても昨日みたいに動き回る気がしなかった。
ある事実が僕の心をどうしようもなく縛り付けて離さないんだ。
(一日半待ってもトメコは来なかった。…トメコは来なかった)
(このままあと一日半待ち続けても同じ。来ないんじゃ…)
それでも待つしかできない。ただひたすらに願いながら待ち続ける。
しかしトメコは現れない。さらに孤独な夜の中二日目も終わる。
そして最後の一日、運命の三日目の陽が昇る。
乙!
ハァ、、、
乙です
感情移入しすぎでマジで涙が出そうだ・・・
514 :
502:03/07/22 23:35 ID:z3WhgUiL
>>513 同意!マジ感情移入してしまう。上手いなぁー。
はい、賛辞と受け止めてください。マジで面白いっす。
某板で紹介?されていたので今日ここまで一気読みしました
完結してるモノかと思ってたのに、ううぅぅ、いいところで終わってる…
非常に(・∀・)イイ!!!です。更新楽しみにしてます!
>>515 クライマックス直前でとてもいいタイミングの一気読みです。
ところで某板って何処ですか?気になる。
寒い。手足の感覚がもうほとんどない。
眠い。もう丸二日寝ていない。
怖い。このまま何事もなく終わってしまいそうで怖い。
時間は刻一刻と過ぎてゆく。しかしトメコは来ない。
持ってきた腕時計に目をやる。時計は午後5時を回っていた。
(まりあのコンサート最終日…そろそろ始まる)
トメコは今何をしているのだろう?
トメコは今何を思っているのだろう?
この場所に向かっている所だろうか、それとも…。
山々の間に陽は落ち、またあの闇が訪れる。
僕は待ち続けた。毛布にくるまり石の上に座りじっと待ち続けた。
ふと天を見上げると黒い雲が一面に覆い被さっていた。
ポツリ…ポツリ…
小さい雨粒が肩に落ちた。また落ちた。その感覚が除々に短くなってゆく。
雨だ。雨が強く降り出した。
ゆるやかに流れていた目の前の川が、あの時の様な激流に変わる。
僕は慌てて近くにある大木の下に避難した。
雨はさらに勢いを増してゆく。
僕は毛布とバックを抱えたまま、大木の下から動くことができなくなった。
こんな豪雨の中、山道を進むのは危険極まりない。
「最低だ…」
「こんな所にトメコが来るもんか…」
そう口に出しながらも、ほんの僅かな可能性を期待する自分がいる。
こんな雨の中、危険を承知で僕を迎えにくるトメコ。
僕は飛び出してこの腕でトメコを抱きしめる。
そんな都合のいい、感動のシーンを思い浮かべる自分がいる。
もう一度時計を見た。午後8時前。まだトメコは来ない。
僕は大木の幹に寄りかかり腰を下ろした。
体が想像以上にダルい。疲労も眠気も限界を超えている。
でもそれ以上に僕を苦しめるのは、不安からくる精神的辛さだ。
(会いたい)
(会いたい)
(トメコに会いたい)
(今すぐここに来てほしい…トメコ)
目を閉じるとトメコと過ごした数々の想い出が蘇る。
始まりも雨の日だった。
校門の前で傘も持たず佇むトメコに、僕は持っていた傘を差し伸べた。
トメコと友達になれたのは、のんとあいぼんの万引きを捕まえたから。
それから僕等の仲は急速に近づいていった。
そして世界一のクリスマス。
聖夜の奇跡で、僕とトメコは互いの気持ちを知る。
修学旅行は色々あったけど、僕とトメコはこの場所で…
互いの想いを確かめ合い、初めてのキスを交わしたんだ。
すれ違いの続いた僕達がようやく心から一つになれた瞬間。
だけどその後、とんでもない不幸がトメコに舞い降りた。
一徹が倒れ、トメコは働かなくてはならなくなり、全てが狂った。
守りたい、トメコを守る為には何だってするって誓った。
最後の夏休み。今思えば、あれは本当に最後の夏休みだったんだ。
のんとあいぼんは別の家の子になり、トメコはアイドルになった。
年収何千万のスーパーアイドルトメコ。
もう僕の助けがいるどころか、別世界の住人となってしまった。
普通にそばにいておしゃべりすることさえできない。遠い遠い存在。
戻りたい、あの頃に…
一緒にいるだけで幸せだったあの頃に…。
………………………………
……………………
…………
…
ハッと気がつくと雨は止んでいた。僕は大木の幹に横たわっている。
思考が戻り、自分が寝てしまっていたことを悟った。
恐る恐る腕の時計を覗く。
(…午前3時!)
「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!!!」
僕は慌てて飛び起きた。そして辺りを見渡した。
落ち着きを取り戻しつつある河川、雨に濡れた小石、物音一つ立てぬ山々。
おぼろげな月の明かりだけを頼りに僕は探した。
ここにいるはずの彼女を!ここに来ていなければならないはずの彼女を!
「トメコ!!トメコォ!!トメコォーーー!!!」
何度も何度もその名を叫んだ。涙が止め処なく出てきた。けれど返事はない。
声が枯れ、涙が枯れるまで叫び続け、やがてその場にへたり込んだ。
約束の三日間は終わっていた。
トメコは来なかった。
521 :
515:03/07/23 19:01 ID:gKvtdHYt
更新乙!
>>516 桃板です。
珍しくいしよし以外の紹介だったので来てみました。好評ですよw
更新乙です。
『AS FOR ONE DAY』かぁ。
AH〜 雨がやんだ… 歌詞通り(ですね。これからどうなるのか。
乙!
クピィ、、、
乙です。
いよいよクライマックスだー!
ほじぇん
最近涙もろいのに。。。。・゜・(ノД`)・゜・
529 :
名無し募集中。。。:03/07/26 00:38 ID:6vmIL0Le
〃∩oノハヽo∈
⊂⌒( ´D`) ほじぇん♪ほじぇん♪
`ヽ_つ⊂ノ
530 :
529:03/07/26 00:40 ID:6vmIL0Le
∋oノハヽo∈
( ´D`)<さげるのわすれたれす!
まるで抜け殻の様だ。
何も考えられない…何も考えたくない。
山を下りた僕は始発列車で帰路に着いた。改札口を抜けるとまたいつもの光景が広がる。
見慣れた大通りに見慣れた店並、いつもの交差点が青に変わる。
世界は何も変わらず当たり前の日常を続けている。僕一人だけが取り残されたみたいに。
トメコは僕を必要としていなかった。アイドル「まりあ」として生きる道を選んだ。
もう会うこともできないだろう。トメコのいない世界。
そんな世界に一体どれだけの価値が…
「驚いたってのー。まりあがいきなり解散すんやもん」
瞬間。すれ違う子供達の会話に僕はおぼつく足取りを止めた。
今耳に流れ込んだ言葉の意味を考え様とするのだが、なかなか定まらない。
「私もぉ私もぉ!ニュースで見たよ!二人はソロで一人は引退しちゃうんでしょ」
「もったいないよね〜。あんなに売れてるのにさぁ〜。ねぇあさ美」
「ゴマッコンの出番ですか?」
(何だよ、その会話)
(まるで…トメコが…)
(まるでトメコが僕を選んだみたいじゃ…)
「ちょっと待って!その話、詳しくて聞かせて!」
「キャッ!何この人?」
気がつくと僕はすれ違う子供達の間に、形振り構わず割り込んでいた。
悲鳴を上げて逃げられてもおかしくなかっただろう。その中の一人の子が言わなければ…
「あ、この人、オーディションで石川さんと一緒にいた人やよ」
「え?」
高橋愛。最終審査まで残りトメコと競い合ったあの娘だった。
近所でいつもすれ違う子供達の一人だったとは、今の今まで気付かなかった。
だが今はそれに驚いている場合ではない。
「ねぇ、その引退した一人ってもしかして?」
「うん、石川さんやよ。知らないんですか?」
ドクン…
全身に熱き血潮が舞い戻る。僕はお礼も言わずにすぐに向き直り走り出した。
(トメコが…トメコがまりあを捨てていた!トメコが僕を…)
何処へ向かっているのか自分でも分からない、だけど止まることができない。
(僕を待っている!)
わかった!わかった!やっとわかった!
「トメコだから諦めたんだ。トメコは私なんかよりずっとお前を…」
「そんなこともわかんないの?トメコの気持ちも全然分かってないのね!」
あのとき美貴が僕に言ったこと。今になってやっとわかった。
「アイドルがどうかなんて関係ない!好きかどうかだろ!」
そうだ!アイドルになってもいつでもトメコは僕に伝えていた。
「うん、だって逢いたかったんだもん。ずっと連絡もできなかったし」
「何言ってるの?私が君を忘れる訳ないじゃない!」
僕が気付いてあげられなかっただけだ。トメコの送っていた気持ち。
知っていたはずだ。何度も何度も聞いたはずだ。
「他の誰に同情されてもいい!可哀想って思われてもいい!でも、でも君だけは…」
「君だけはそんな眼で私を見ないで!お願い…」
「もう君といる時間だけが、私が普通の女の子として生きれる証なの」
どんなに…どんなに…どんなにトメコが僕のことを想ってくれているか。
どんなに…どんなに…どんなにトメコが僕のことを頼ってくてれいるか。
何度も…何度も…聞いたはずだ。
どんなに…トメコが僕を愛しているか。
(トメコ…!)
何かに誘われる様に僕はその場所へ辿り着いた。
昨晩の雨に桜の葉も濡れている、ヒト気のない春休みの学校。
息を切らして駆け込んだ僕の前、一輪の花の様に一本の傘が咲いていた。
少し折れ曲がった安物の花。
僕はその花を知っている。
いつか僕がここで彼女に差し出した花だ。
雨は止んだというのに、彼女はその花を大事そうに抱えている。
他の人にとってはガラクタに過ぎない骨の折れた花だけど。
僕とトメコにとってそれは…
世界に一つだけの花。
「トメコ」
その名を呼ぶ。
クルッと回った傘の下から愛しいトメコが顔を覗かせた。
驚いて、微笑んで、はにかんで、ちょっと怒って、またはにかんで、もう一回怒って…
最初に出したセリフが…。
「わかんないよぉ」
「ん?」
「想い出の場所で待つって…」
「あぁ」
「だって!私にとってキミと過ごした全部の時間が!大事な大事な思い出なんだから!」
「うん」
「それで必死で必死で考えたの!ドーム抜け出して一人で必死で!」
「へぇ」
「それで…これだった。この折れた傘だったんだ」
「おぉ」
「知らないでしょ!あのとき、キミがこの傘を私に差し出してくれたとき!
一人ぼっちだった私が!どれだけ嬉しかったか!知らないでしょ!」
「…ん」
「なによ!人が真剣に話してるのに!空返事ばっかり!なんとか言ってよ!」
空返事のつもりじゃなかった。
トメコがいて、そこにいて、嬉しくて嬉しくて、胸がいっぱいで、
言葉にならなかっただけで、だけどこれだけ伝えたいってのはあって。
「好きだ」
僕は言った。
トメコは僕の言葉を聴いた。
怒ってた顔が、照れて、はにかんで、微笑んで、隠そうとしても、結局頬が緩んで…。
お前って奴は本当にめちゃくちゃ分かりやすい奴だな。
もう一回言ってやろうか。
「好きだ」
トメコ、さっきまで怒ってたんじゃないのか?
勝手にいなくなった僕を許せないんじゃないのか?
何もうそんなとびきりの笑顔になってんだよ。かわいいんだよ。
嗚呼、何度だって言ってやるさ。
それでこんなかわいい笑顔が見れるんなら、死ぬまでずっと隣で言い続けてやる!
覚悟しろよ!
「僕はトメコが好きだ」
まったくこんな言葉だけで、どれだけ嬉しそうな顔するんだよ。
いいか、近づくぞ。抱きしめるぞ。そうしたら一体どうなっちゃうんだ?
そんなに僕のことが好きなのかよ。
僕だってめちゃくちゃトメコが好きなんだよ。
ほら、触れた。暖かい、トメコの体温。嬉しい。ヤバイ、泣きそうだ。
…ってトメコ、もう泣いてるのかよ。あ、僕も涙出てるなぁ。
いいや、それでいい。相思相愛でいい。
「私もキミが好き」
まいった。人のこと言えない。嬉しい。
耳元でそんなこと言われたら嬉しいに決まってるじゃないか。
その声とか反則だって。可愛すぎるんだよ。
「もっとギュッとして!抱きしめてよ」
ちょっとトメコそんなこと言うなよ。ズルイよ。ズルい女だお前は。
僕だって今そうしたいなって思ってたんだ。ほらギュッとするぞ。
痛っ。傘、邪魔だ。お前はもういい。よくやった。後は任せろ。
もう僕だけだ。トメコを包むのは僕だけだ。
トメコ、大好きだ。
「ねぇ、キミは何処で待ってたの?」
「京都の河原」
「馬鹿じゃないの!そんな所まで行ってたの?」
「バカって何だよ。三日間ずーっと待ってたんだから!」
「キミはやることがいちいち大げさすぎるんだよ。養子の件もオーディションもそう」
「悪かったな。あ、そういえばまりあは?どうしたの?」
「もう終わり。ゴッチンとあややは分かってくれたから大丈夫」
「いいの?せっかく…」
「元々キミに言われて始めたことだし、ある程度お金も貯まったし」
「ごめんね」
「ううん、本当はちょっと辞めたいって思ってたんだ」
「どうして?」
「…キミに会えないから」
俯き加減に、頬を染めながら囁くトメコ。ズルい女。
嬉しくて堪らなくて、僕はもう一度ギュッとした。
「もう何処にも行かないでね」
「うん、ずっと一緒だ」
ずっと一緒だよ、トメコ。
トメコはかわいい。
気が付くと僕はいつもトメコを見ている。
そんなときトメコはたいがい僕を見ている。
最終話「AS FOR ONE DAY」終わり
あとがき@
ご愛読ありがとうございました。
「僕とトメコ」これにてひとまず終了です。
色々大変だったけれど、ここまで書ききれて大変満足しています。
これも応援や保全してくれた読者の方々のおかげです。
さて、上記で終了とは述べましたが、まだ完全に完結した訳ではありません。
「僕」視点では描くことのできなかった場面。
脇を固めた豪華サブキャラ達のサイドストーリー。
そして「僕とトメコのその後」等々、もう少しだけ書こうかと思います。
という訳で、もうちょっとだけお付き合い下さい。
ええ話や。・゚・(ノД`)・゚・。
ひとまずおつかれさまでした。ほんと久しぶりにグッときました。
サイドストーリーも楽しみにしております
こんな後味のイイ小説は久しぶりに読んだよ
お疲れ様
乙です。結構長い間楽しませて頂きました。
次回作も期待しています。
感動の中にネタ炸裂だな。
辻豆さん、お疲れ様でした。
素直に楽しめましたし感動しました。
サイドストーリーですか。
一徹家族がどうなったのか気になりますね。
ただ1つ残念なとこ。
トメコの主人公に対する呼び方が
「君」と「キミ」の2種類あって統一されていません。
自分の名前に変換して楽しむのに2度手間じゃねーか( ゚Д゚)ゴルァ!!
_| ̄|○ <スミマセン モウソウシスギマシタ
乙!
ハァ、えがったえがった。
最後までこんこんはああいうキャラなのね(*´Д`*)
結局最後まで登場しなかったあの人は、、、
ひとまずおつかれさま
序盤は某漫画のパクリかと思いましたが
中盤以降のストーリーは大変よかったと思います
ただ、惜しむならば最終話のみ安っぽい印象を受けました
お疲れ様です。
しかしなぜなんだ……なぜ辻豆さんの話はいつも終盤になると急速につまらなくなるのだ。
スタートダッシュや中盤までのランニングは素晴らしいのにいつも最後で……。
うーむ……やはり締めは誰でも難しい物だね。