第三話「世界一のクリスマス」
「あんた、最近噂になってるわよ」
放課後の廊下、そう声を掛けてきたのは委員長の飯田圭織であった。
彼女と僕とは家も近所で幼稚園の頃からの幼馴染だ。
なのに背も高くリーダーシップもある圭織はいつもお姉さん風に声を掛けてくる。
まるで世話の焼ける弟を相手にするみたいに。
「噂って何だよ」
「トメコと仲良くしてることよ。急にどうしたの?」
「別に、僕が誰と仲良くしたっていいだろ」
「まぁそうだけど…ほら矢口さんとか安倍さんがさ…」
圭織の口から出たのは、クラスの男子人気を二分する女生徒の名前だった。
その二人がトメコをあまり好意的に見ていないという話はよく耳にする。
僕は「ほっといてよ」と圭織の忠告を無下に返した。
他の誰がどう見ても、僕だけはトメコの良さを知っている。
それでいいと思っていた。
また、別の日、男友達にも言われた。
そいつはニヤニヤと可笑しそうな笑みを浮かべて言う。
「お前、そういう趣味があったんだ」
「なんだよ」
「トメコのこと、好きなんだろ?」
僕は飲んでいたジュースを吹き出しそうになった。
一体どこからそういう話が出てきたのか検討もつかない。
「バ、バ、バカ言え!いつ?誰が?何処で?そんなこと言った!」
「なんか噂になってるぜ。さっき女子がコソコソしゃべってた」
まったく噂というのは恐ろしいものだ。
僕はトメコと仲良くなって、休み時間にしゃべったり、たまに家に遊びに
行っているだけなのに、気が付くと付き合っていると広まっている。
こっちは一言だってそんなこと言ってはいないのに。
「なあんだ、やっぱりただの噂か。まぁだと思ったぜ」
「当たり前だ」
「女ってのは、そういう噂が好きだからな。勝手に創造で」
「そうそう」
「…お前、トメコに寒さうつされてねえか?」
僕とトメコが付き合っている。
そんな突拍子も無い噂がクラスに流れているらしい。
僕はトメコのことをどう思っているのだろう?
確かにトメコのことは好きだ。でもその好きというのが恋愛のことなのかは理解らない。
偶然家に誘われたあの日以来、気になる存在となっているのは間違いない。
12月の木枯らしが容赦なく僕の頬を突き刺す、クリスマスが近づいていた。
街中では今ブレイク中のアイドル松浦亜弥の新曲があちこちで流れている。
そんな歌を口ずさみながら帰り道、ショーウインドウに映る自分の横顔にふと目をやった。
(こんな僕があの可愛いトメコと付き合う?わかってるよ、馬鹿馬鹿しいお伽話だって)
(第一トメコが僕を好きな訳がない。どう考えたってただのお友達だ)
(僕が悩むような問題じゃないってことだ。忘れよう)
ショーウインドウから目を離す。僕はそれきりその下らない妄想を頭から捨て去った。
僕とトメコはただの友達だ。それでいいんだ。
「にぃちゃんが来たのれす。にぃちゃん」
部活が休みの日、僕はトメコの家にちょくちょく遊びに行く様になった。
雑木林を抜けると、早速のんがバレーボールを抱え駆け寄ってきた。
「バレー教えてくらはい!」
以前僕がバレー部だということを話したとき、のんは自分も同じだと騒いだ。
それ以来彼女は僕が訪れるたびに、バレーを教えてとせがんで来る。
「バレーで世界一になって、お金持ちになるのれす!」
目をキラキラさせて夢を語るのん。
それがどれだけ荒唐無稽な話か知らず、叶うと信じて疑わない瞳。
僕も合わせて「のんならできるよ」なんて調子のいいことを言う。
八重歯を隠すように口元を手で覆い、照れ笑いするのん。
胸が痛くなるくらいまっすぐな子だ。
トメコと同じまっすぐさだ。
のんとバレーの相手をしている間、あいぼんは近くの木陰に座り何かを読んでいた。
僕はなんだろうと隣に腰掛け、声を掛けてみる。
するとあいぼんは持っている本を自慢気に広げてみせた。
「夏目漱石やで」
「ほんとだ、どうしたんだよ?まさかまた…」
「ボケェ!もう万引きなんてしてへんわ!朝起きたら枕元にあったねん」
「嘘?誰が置いたんだ?」
「さあ?おとんに聞いても知らんゆうとるし…」
一徹だ。あの人の性格なら間違いなく自分だと言うはずない。
嘆く娘の為に、苦しい家計からそっと割り引いて買ってきたに違いない。
僕は一徹の優しい面を知り、少し可笑しくなった。
「きっと神様が可哀想なうちの為に送ってくれたんや!」
そんなことにまるで気付かず、あいぼんは無邪気にうかれる。
こういうマイペースな所もトメコに似ているなと思った。
気が付くといつも僕はトメコのことを考えている。
「どうしたの?」
僕はわっと声をあげて後ろにひっくり返った。
目の前にいきなりトメコの顔が現れたからだ。
僕の気持ちも露知らず、トメコはケラケラと笑っている。
その笑顔も息が止まりそうなくらいかわいい。
「ご飯できたよ。食べてくよね」
僕はもちろん首を縦に振った。
年末で忙しいのか、このところ一徹は帰りが遅い。
だから僕がいると三人は凄く喜んでくれる。
「もうすぐクリスマスだねぇ」
トメコが言った。のんとあいぼんもつられて騒ぎ出す。
「今年こそケーキ食いたいで」
「のんは七面鳥が食いたいのれす」
クリスマス。トメコと一緒にいれたら…僕はまたそんなことを考え始めていた。
おもしろい
文才がある方が羨まスィー
(*゚д゚)
保全しとこう
思わず情景が浮かんでくるようだ。
ハロモニのあの一回を見ただけで、ここまで創造できるのはすごい!
帰り道はいつもの様に、トメコがあの橋の袂まで僕を見送ってくれる。
あいぼんとのんが騒ぐ家とは異なり、これが唯一二人きりで話せる時間だ。
「ねぇ、キミはクリスマスどう過ごすの?」
「う〜ん、特に予定もないし。多分家にいると思うよ。トメコは?」
「私も。クリスマスだけは毎年お父さんプレゼントくれるんだ」
「あの一徹がプレゼント?想像できないなー!見てぇ!」
「ウフフ…見にくる?」
「いいの?行くよ!それじゃあ僕もプレゼント持ってく」
「うん、来て来て。私もキミにプレゼント用意しておくね」
「マジ!楽しみ!」
「私もー」
トメコとクリスマスを過ごせる。
トメコとプレゼントを交換し合う。
僕は心から嬉しかった。トメコも嬉しそうにしていた。
こんなにクリスマスが待ち遠しい年は初めてだった。
翌日の放課後、あんなことになるまでは…。
「イブの日、うちでパーティーするから皆来てね〜!」
教室全体によく通る声で、矢口さんは招待状を配り回っていた。
矢口さんは男子からも女子からも好かれるクラスのムードメーカー的存在だ。
家はお金持ちで性格も明るく、とっても可愛い彼女に誘われて断れる奴はいない。
男友達と話している僕の所にも、彼女は招待状を持ってきた。
周りの奴はみんな喜んで応じている。当たり前だ。
申し出を断れるムードはどこにもない。
だけど僕の頭の中にはトメコとの約束が浮かんでいた。
「来てくれるよね」
さも当然の様に、矢口さんが言う。
断っている奴は一人もいない。男友達連中も僕が断る訳ないと思っている。
僕はなんて弱い…。いやこの様な状況で誰が断れるだろうか。
「…もちろん」
トメコの顔が見れなくなった。
矢口さんはクラスの全員に声を掛けている。
トメコにも招待状を渡していた。
「トメコっちも、おしゃれして来てね〜」
矢口さんに悪気があった訳ではないのだろうが、それが少し嫌味に聞こえた。
裕福な矢口さんと異なり、トメコは私服をあまり持っていない。
おしゃれな服なんてそれこそ皆無といっていいはずだ。
そういえば休みの日はいつも、お母さんのお下がりというピンクのワンピースを着ている。
トメコと小学校が同じ奴にトメコの印象を聞くと、私服のセンスが悪いと返ってくる程。
だから矢口さんに誘われたトメコは明らかに動揺していた。
「あの…私…その日…」
「無理なら別にいいよ。来れたら来てねぇ〜」
矢口さんは笑顔でそう言って、また別のクラスメイトに声を掛けて行った。
トメコは招待状を握り締めたまま、席に座り俯いていた。
僕は堪りかねてトメコの元へ向かった。
「ごめん。僕やっぱり矢口さんに断るよ。トメコとの約束が先だし…」
「ううんいいよ。行きなよ。私の家なんて来たってなにもないよ」
「トメコはどうするの?」
「キミが行くなら…私も行こうかな」
そう言ってトメコは笑った。
その笑顔がどこか引きつっていた。
嘘だ。僕は直感的に思った。トメコは嘘をついている。
多分僕を矢口さんのパーティーに行かせる為に嘘を付いているんだ。
トメコが父親と妹達をほうっておいて出かけるはずがない。
トメコの優しさは痛々しすぎた。
「おいらの誘い断るなんて、あいつやっぱムカつく!」
そのとき矢口さんの声が聞こえた。
僕は最初トメコのことを言っているのかと思ってドキッとした。
でも違った。トメコではなくもっときっぱり断ったクラスメイトがいたらしい。
「藤本の奴、ちょっと美人だからって調子に乗りやがって!」
「真里やめとくべさ。あの子悪い連中と付き合っているって噂だから」
「もう二度と誘ってやるもんか!」
憤る矢口さんを友人の安倍さんがなだめていた。
藤本美貴。彼女もトメコとは違った意味で、クラスでは浮いた存在だ。
美人で気が強そうで高嶺の花と称され、男子も女子さえも近寄りがたくなっている。
半年以上同じクラスにいるのに、僕はまだしゃべったこともない。
だからそのとき僕は、彼女が僕とトメコに深く関わることになろうとは想像もして
いなかった。
それに僕の頭の中は「トメコの家に行くか、矢口さんのパーティーに行くか?」の
ことで一杯だったから、余計にそれ所じゃなかったんだ。
そして12月23日、イブを明日に控えた祝日のこの日。
まだ迷いを抱きながら僕は、トメコへのプレゼントを買う為少ない小遣いを手に街へ出た。
クラクション、人のざわめき。ジングルベルジングルベルと流れる音楽。
これまで女っぽいものを買ったことのない僕は、当てもなく流れるまま歩き続けた。
するとそこで僕は偶然に、意外な人物を見つけた。
更新乙
やべぇー。おもしれー
久々の秀作になりそうなヨカーン
名作ハケーソ
藤本さんだ。藤本さんが行きつけの本屋の親父に捕まっている。
それを見た僕はすぐに駆け寄り、本屋の親父に事情を聞いた。
「おおっ、あんたはこないだの!」
「おじさん、彼女がどうかしたの?」
「また万引きだ。こいつがうちの本をカバンに入れたんだ」
「違う!手が滑って落ちただけだ!放せ!」
藤本さんは手を振り解こうと叫んでいた。
しかし疑い深くなっている本屋の親父は放さない。また警察を呼ぶ気だ。
そこで僕は言った。
「おじさん、彼女は本当に手を滑らせただけだよ。僕見てたから」
「そ、そうかい?あんたが言うなら…」
以前、双子の万引き犯を捕まえたおかげで僕は信用されているらしい。
本屋の親父は藤本さんの腕を放した。藤本さんは怒って本を親父に押し付けた。
逃げるように出て行く藤本さんを僕は追った。
「危なかったね」
「うるさい!余計なお世話だ!」
声を掛けると、藤本さんはかなりきつい口調で言い返してきた。
ちょっとムッとした僕はそこで言い返す。
「なんだよ、僕が来なかったら警察に連れてかれてたんだぞ!」
「誰が助けてなんて頼んだ?勝手に恩作んないでくれる」
なるほど。これは気難しい。矢口さんと衝突するのも分かる気がする。
だけどきつく文句を言う割りに、僕から逃げる気がない様にも見える。
外面を強く装っているだけで、実はいい子なんじゃないかと僕は思った。
「じゃあさ、代わりに一つお願いしていい?それでチャラにしよう」
「ハァ?何よそれ」
「クリスマスプレゼントなんだけど…女の子って何貰うと嬉しいか教えてよ?」
「ハァー?知らねえよ!そんなもん自分で考えろ!」
と文句を言いながらも藤本さんはしっかり付いてきてくれた。
藤本さんは道端のアクセサリ屋で足を止めた。
「これなんかいいんじゃん?」
「へー藤本さんでも、こういうの好きなんだぁ」
「お前喧嘩売ってんのか?」
「違う違う。ありがと、うん、確かに可愛いな。似合いそう」
「誰に送るの?まさか自分で付けるんじゃないよな」
「へへ〜内緒」
「ケッ、勝手にしろ!これで借りはなしだ。私はもう行くよ」
すると、プイッと顔を背けて藤本さんは行ってしまった。
その後姿はまるでモデルみたいに颯爽と格好良かった。
僕は藤本さんが選んだイヤリングを手に取った。
「お兄さん、これいくら?」
たった2000円の安物だけど、中学生の僕には結構な買い物だ。
僕はそれを耳に付けたトメコの姿を思い浮かべた。想像するだけで頬が和らぐ。
この時点でもう、僕の中には結論が出ていた。
明日は…トメコの所へ行く。
そして12月24日、クリスマスイブの日。
終業式で学校は昼に終わり、パーティーは夕方から始まる。
一旦帰宅するその路上で、近所で幼馴染の圭織が僕を誘ってきた。
「矢口さんのパーティー行くんでしょ。一緒に行こう」
「そのことなんだけど…圭織、ごめん。お願いがあるんだ」
僕は両手を合わせ、頭を下げた。
こんな頼みができるのは幼馴染の圭織しかいない。
「急な腹痛で残念だけどパーティー欠席するって、矢口さんに言っておいて!」
「ええっ?どうして?」
「本当にごめん!訳は聞かないで欲しいんだ」
「う〜ん」
「お願いっ!!このお礼は必ずするから!」
「銀霊堂のモンブランとクリームチーズ」
「おごる!おごるから!」
「しょうがないわねぇ〜ほんとに世話の焼ける。はいはい分かりましたよ」
「ほんと!ありがと!助かるよ!」
「カオリンにお任せ。その代わり約束は絶対よ」
夕方、プレゼントの包みを抱えた僕は浮かれ心を堪えながら走った。
トメコの家へ。もう小慣れたその道を。
僕の姿を見たらきっとトメコはびっくりするはずだ。
そしてプレゼントを見せたらきっと喜んで笑ってくれる。
僕はそんな妄想を膨らませながらトメコの家へと足を急がせた。
雑木林を抜けた先、木造の小さなアパートの前で僕は立ち止まる。
しばらく息を落ち着かせた後僕は、意を決してトメコの部屋をノックした。
返事がない。僕はもう一度ノックした。
すると扉が内側から開いた。出てきたのは覇気のない表情のあいぼん。
「あれ、何しとん?」
「え?」
予想外の言葉に僕は戸惑いを覚えた。
部屋の中は薄暗かった。ちゃぶ台の上はご馳走どころか何も置かれていない。
あいぼんの後ろでのんが仰向けに転がり崩れている。
トメコの姿はなかった。一徹の姿もない。双子の二人しかいない。
「おとん、急な仕事で今夜は帰れへんやて」
「のん達は世界一不幸なクリスマスを送る子供なのれす」
「ト、トメコは?」
「姉ちゃん?姉ちゃんならとっくに出かけたで」
「いつものワンピースにピンクのリボンまで付けて出かけたのれす」
そのときの僕の衝撃、言葉にできるであろうか。
嗚呼、何と言うことだ。トメコは矢口さんのパーティーに行ったのだ。
(キミが行くなら…私も行こうかな)
あの言葉は嘘でも何でもなかった。
家族想いのトメコが、妹達にこんな想いをさせてまで出かけた。
それは何の為に?…僕だ。
トメコは僕の為に、苦手なおしゃれをしてまでパーティーに出かけたのだ。
友達もいなく、僕の他に話し相手もいないトメコが…。
今はっきりとわかった。
僕がトメコを好きな様に、トメコも僕をどれだけ大切に想ってくれているかを。
震える手がプレゼントの包みを握りつぶす。
どうしようもない気持ちが胸を張り裂く程に吹き荒れる。
僕は走り出した。あいぼんとのんが呼ぶ声を無視して。
走って走って走った。
そしていつもトメコと分かれるあの橋の袂に着いたとき――――。
橋の向こうから誰かが歩いてくる。
僕は足を止めた。すると向こうも歩みを止めた。僕らはお互いの存在に気がつく。
パーティーを一人抜け出してきたトメコ。トメコの家を飛び出した僕。
ちょど真ん中に位置するこの場所で、同じ刻、僕らは巡り会う。
なんて偶然だ。この聖夜の奇跡に僕の胸の高鳴りはいよいよその強さを増す。
しばらくの沈黙の後、やがて涙交じりの声が向こう側から聞こえる。
「本当は行くつもりなかったのに…キミが行くから…無理して」
胸が熱くなる。その瞬間僕はまた走り出した。
「なのに、どうして…どうして…いないんだよぅ」
ワンピースの裾を握り締め、絞り出す様に言葉を吐き出すトメコ。
僕は彼女の前で止まり右手を差し出した。
その手の平の上には、ぐしゃぐしゃになった包み袋。
「プレゼント。これ渡したかったから…」
「え?」
僕はそれをトメコの手の上に乗せた。
ボロボロのゴミみたいになった包み袋を、トメコはそっと開く。
中を見た瞬間、トメコの顔がクシャっと歪んだ。
テニス部を辞めたときに校舎裏で一人流した涙。
あのときと同じ涙を今トメコは僕の目の前で流している。
「これ…?私に?」
「メリークリスマス」
僕はイヤリングを袋から取り出すと、そのままトメコの耳に付けた。
頬を紅く染め、恥ずかしそうにうつむくトメコ。
もう泣いていない。だけどその瞳はまだ宝石みたいにキラキラしている。
「似合う?」
「うん」
「私の為に…パーティーに来なかったの?」
僕は小さく頷いた。代わりに尋ねる。
「僕の為に…パーティーに行ったの?」
トメコは小さく頷いた。そのはずみでイヤリングが揺れる。
あの宝石のような瞳で真っ直ぐ僕の目を見つめ、トメコは微笑んだ。
「トメコは…トメコは世界一の幸せ者です」
「じゃあこれから一緒に、世界一不幸な妹達の相手をしにいく?」
トメコはゆっくりとおでこを僕の胸に当てる。
僕はそんなトメコの黒髪を優しく撫でた。
「うん…でも、もう少しだけこのまま」
満天の夜空は、聖夜と呼ぶに相応しき輝きに満ちている。
さらさらと流れる川のせせらぎと、トメコの吐息だけが耳に入る。
いつまでもいつまでも僕達はそうしていた。
第三話「世界一のクリスマス」終わり