それから二人とも無言のまま、ビュッフェに向かう途中、
私はパンクしそうな頭を、必死に整理していた。
圭織は死んでたんだ…死んでたんだ…
【生きていた】と考えると、全ての責任が
私一人に被さる気がした。
【死んだ】と考えると、何故か気が少し楽になる気が…
だって死体は誰でも怖いのだ。
小さい頃、親戚のおじちゃん、おばちゃん
または、おじいちゃん、おばぁちゃんが逝ってしまったとき、
それまで大好きだったはずの、その人達が、
急に怖くなってしまった事は、誰にだってあるはずだ。
なぜ怖いかなんて考えられない。
本能的にそう出来ているんだ。
死んだ女を愛撫できないだろう?
人間だけにある素敵な考えだ。
死体は怖い。
死んだ知人なんて、見たくも無いから人間は、
亡骸を焼いたり埋めたりするんだ。
もう見ないように、ましてや出てこないように、
しっかり重い墓石で覆い隠すんだ。
圭織はもう圭織じゃない…
こんなこと、普通の考えじゃないのだろう…
でもなんとかこうして自分を騙してないと、
責任感や人間性やらで、いっぺんに自分が吹っ飛んでしまうような気がした。