本日はお日柄も良く・・・

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65梨華ちゃん(AC)

「あ、ここ…」

自分が戻してしまった汚物を見つけて、
私は小川を呼び止めた。

小川はゆっくりと、私が指差す方に光を当てて
佳織の姿を確認した。

ゴクッ

小川の唾を飲む音が、やけに大きく聞こえる。

「飯田さん…?」

小川が静かに声を掛けた。

「…………」

返事はない。

佳織・・・生きてるんでしょ?
だってさっきまで、息してたもんねぇ?
喋ってたもんねぇ…?

「駄目…みたいですね…残念ですけど…こんなのが刺さってちゃ…」

ひしゃげた窓枠を指差して、小川が諦めの言葉を吐いた。
66梨華ちゃん(AC):03/04/17 00:00 ID:gy2jpsHe

「そんな…ちゃんと、ほらっ!触ってみたりしないと…」

「あ、安部さんがやって下さい!」

……

また2秒ほど、静寂が訪れた。
その2秒の間に私は、自分なんかよりずっと年下の
小川に、少し頼り過ぎたと思い、反省したし、
こんな状況なんだから私がしっかりしなきゃ!
と、決心もした。

「うん…」

私は小川より、一歩前に出て、
佳織の首筋の動脈あたりに手を伸ばした。

冷たい…いや、ちょっと生暖かい?
脈を打ってる…いや、自分の手が震えているだけ?

解からなかった。
解からないまま、私は手を放してしまった。

「…どう…ですか?」

上目遣いに小川がおずおずと聞いてくる、

「え?あ、あぁ…」

私は首を横に振った。
67梨華ちゃん(AC):03/04/17 00:03 ID:gy2jpsHe

この行動は、[解からない]という意味と
[駄目だった…]という、二つの解釈の仕方があったが
小川には前者の項目が浮かばなかったようだったし、
正直私は、その時、恐怖の虜になっていたのだ。

「い、行きましょう…矢口さん達が、待ってます…。」

私の服の袖を掴んで小川が、
震えた声で私を急かした。

「うぅ、うん…」

その倍くらい私も震えていて、
頭では分かっていても、足が勝手に
出口の方へ向かってしまっていた。

友を見捨てたのだ。