==トンネル・新幹線十両目前==
「あいぼん!」
ののが何かを思いついたように声を出した。
「ん?」
「携帯って…使えないかな?」
そら無理やろ…
そう思いながらも、ポケットに入れておいた携帯を引きずり出す。
「・・・圏外。」
当たり前だ。
窓から見ていたが、ここは緑の多い山岳地帯だったし、
何よりトンネルの中だ。
携帯電話なんて、緊急時にこそ使えないものだ。
「のぉのは・・・?
・・・っあ、かばんの中だ…」
「どうせ圏外だよ。」
「わ、わかんないじゃん…のぉのドコモだよっ!
海外会社に食われちゃったJポンとは、わけが違うんだから!!」
言ってることがよく分からなかったが、
だいぶのどが渇いていたし、ののを着替えさしてもやりたかった。
のののかばんには、これらのすべてが入っていた思うし・・・
「しょうがない、持ってきてあげるよ・・・のの、
一人で待ってられる?」
携帯のバックライトで照らしながら、ののの顔を見ると
すごく疲れて、不安そうな顔をしてる、
自分も大体こんな顔なんだろう。。。
「一人・・・」
一瞬ためらっていたが、あたしの気持ちを
察したのか、うんと頷いてくれた。
「あたしの携帯…ののが持ってる?」
「ううん、いい…あいぼんの方が必要だろうし…」
「そっか・・・。
じゃあ、行ってくるね。」
携帯の画面をグイッと前に突き出して、
入り口のドアに手をかけ、再び車内へと入った。
「それに…のののほうが、年上なんだし…。」
すでに闇の中に消えてしまったののがそうつぶやいたのが聞こえた、
あたしもつぶやき返す。
「アホ・・・」