本日はお日柄も良く・・・

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132梨華ちゃん(AC)
「わぁぁぁぁぁ!!!!!!」

「なぁ〜っち!っをい!!なぁ〜っち!っをい!!」

「ののたぁぁぁぁぁぁん!!」

ヲタどもの、届きもしない声援を背に
私たちは下手へとはけていく

「みんな!この勢いで、アンコールも頑張ろう!」

メンバーに激励を送る。

「ねぇなっち…」

圭織が肩を叩いてきた。

「ん?どうしたの?」

「私…歌えないよ…」

「ど、どうして!?さっきまで元気だったじゃん?」

133梨華ちゃん(AC):03/06/01 02:03 ID:bftDepZI
「声が…」

「どうせほとんど口パクなんだから、声なんて出なくても…
さ、金づる達が待ってるよ?行こう!」

「う、うん…でも…ヤッパリこんなの刺さったままじゃ恥かしいから…」

「え?」

急にあたりが暗くなったので、圭織の方を向きかえった。

「なっち…抜いて…」

鼻の脇からダラりと、窓枠をぶら下げて、
湧き水のように血を流し続けていて…
一生忘れられないだろう、あの場面だった…。
134梨華ちゃん(AC):03/06/01 02:05 ID:bftDepZI
『ガキィィィ』

ドアの開く音で、目が覚めた。

一瞬自分がどこにいるのか分からなくなったが
すぐにあの絶望感は来てくれた。

うぅ…事故だ…

「紺野…足は…?」

矢口の声だ。

「はい。だいぶよくなって…」

「あれ…?そこに寝てるの…なっち?
なっちじゃん!!」

体を+激しく+ゆすって、矢口は私を起こして来た。
もう起きていたわけだから、私はすんなりと目を開ける。

「なっち…無事でよかった…。」

手を私の首に絡めて、抱き付いてくる。
人のぬくもり…安心感。
135梨華ちゃん(AC):03/06/01 02:07 ID:bftDepZI

「矢口も…よかったぁ」

しばらくそうして、抱きしめあっていると
急に矢口が真剣な顔になり、紺野の方に
顔を向けた。

「紺野…やっぱりあっちも、ふさがれてた。…」

「・・・」

落胆混じりのため息をつく二人を見て、
大体予想はついていたものの、確認の意味もこめて
尋ねてみた。

「ねぇ…ふ、塞がれてるって…
 出口…が?」

紺野がうなだれて、矢口が頷いた。

最悪だ・・・!
本当に最悪だ・・・
出口が・・・無い?ただ長いトンネルだと…
だから光が届いてないんだと思ってたのに…

「い、生き埋めじゃない・・・」

「なっち・・・」

頭を抱える私を矢口が
心配そうに覗き込んできた。
136梨華ちゃん(AC):03/06/01 02:12 ID:bftDepZI
可愛らしい、アイドルの顔だ・・・。

そうだ!!!私たちはアイドルなのだ!
しかもそこいらのB級とかとは訳が違う、
トップアイドルなのだ!

「救助…救助が来てくれるはずよ…
 この新幹線だって…ダイヤで動いてるんだから…
 すぐにでも助けが助けに来てくれるはず・・・」

「うん…うん。そうだよ!すぐにでも・・・」

「事故が起きて、もうすぐ多分10時間…
 どうして誰も…」

紺野が、私の考えと、矢口の慰めを打ち消すような
言葉を放ち、うつむいたまま続けた。

「…誰も来ない…死んじゃうんだ…
 私たち…全員…。」

「紺野・・・」

疲れてるんだ…
こんな暗いばっかりのとこで、足を怪我して…
疲れてるんだ…
 
「紺野、ちょっと眠りな…。
 大丈夫。助けは必ず来るよ。大丈夫。」

半ば自分にも言い聞かせるように、
紺野の前髪を撫で下ろした。
137梨華ちゃん(AC):03/06/01 02:14 ID:bftDepZI
例の鈍い音がを鳴らして扉が開き、
小川が帰ってきた。

「おかえり。何か変わったことはあった・・・?」

矢口がたずねる。

「いえ・・・あ、でも…
 着れそうな服を…持ってきました。。。」

そういえば、汗やらで服がべとべとだ。

「うっわサンキュー!着替えたかったんだよね〜!」

無理やり作った笑顔で矢口が、小川の持ってきたスポーツバックから
女性ものの服を一式つかみ出し、私のほうに投げてきた。
女性スタッフの物だろう…
取りあえず私は、それが遺品であることを覚悟した・・・。