仮面ライダーのの555(ファイズ)

このエントリーをはてなブックマークに追加
54名無し天狗
>53さん
スイマセン。そしてありがとうございます。ようやく折り返しと言った感じです。

>>50から
一方、こちらは五木邸の城主謁見の間。
議論の嵐が渦巻く中、門番からの知らせを受けた家臣が弘繁に注進に及んだ。

「怖れながら殿、火急のご用にござりまする!実は・・・」

来訪者の件の一部始終を弘繁に告げる家臣。
瞬間、弘繁の顔色が変わった。

「・・・直ちに書院にお通し申せ!!“此度の一件”についてもお話しせねばならぬ!!
 孝雄!厳実!そちたちは引き続き評定を進めよ!!」
「はっ!!」

弘繁は孝雄始め家臣らにそう言い渡すと、いそいそと書院に向かうや、
来訪者=老兵法者を迎える仕度を整え、彼を待った。

弘繁の神経に緊張が走る。

程なくして・・・老兵法者が姿を現わした。
弘繁は既に上座を離れていた。

平伏して、老兵法者を迎える弘繁。

「谷の鬼十様。わざわざ遠路はるばる当家に足をお運び頂き、
 不肖五木治部大輔弘繁、誠に恐懼に耐えませぬ!!」
55名無し天狗:03/03/22 20:38 ID:qAgIF6Ug
老兵法者に身をやつしていた谷の鬼十は、自らの弟子であるユキが日頃世話になっていると言うことで
その挨拶のための表敬訪問に来たのだが、邸内の只事ならぬ雰囲気をいささか疑問に感じていた。
まさか、と思い彼は単刀直入に事の核心に迫った。

「・・・何やら邸内が慌しいご様子であるが・・・五木殿、これは何事?」

いきなり本題を切り出され、弘繁はぐうの音も出ない。
隠しても詮方なしと、弘繁は思い切ってその理由を打ち明けた。

「・・・申し訳ござりませぬ!ご貴殿方谷一族と我が祖先が編み出しましたる
 “化身忍者秘伝の法”を血車党なる悪しき忍びの一団に奪われたのみならず、
 当家にて預かりしご貴殿の愛弟子、ユキに大怪我を負わせてしまいましてござりまする・・・!!」
「な・・・何と!?」

涙ながらに己の不徳を鬼十に詫びる弘繁。鬼十もまた甚く驚いた。
が、鬼十はすぐに気を取り直した。

「お嘆き遊ばされるな五木殿。秘伝を奪われたのは確かに残念ではあるが、
 ユキは秘伝を守るために負傷したのでござろう。
 酷な言い方じゃが、それもまた忍びの運命(さだめ)なれば・・・。
 そのユキは今、どうしておるのじゃ?」
「はっ、辛うじて一命を取り止め、今は静かに養生致しておりまする。
 ささ、こちらへ。案内(あない)仕りまする。」

弘繁の案内でユキの眠る部屋に向かう鬼十。
やがて、部屋に着いた彼の目に映ったのは・・・・・・!!
56名無し天狗:03/03/22 22:34 ID:X5UsAekV
「ユキ!!」

そこにあったのは、全身を赤く染まった包帯に覆われた、ユキの痛々しい姿であった。
思わず駆け寄る鬼十。一方の弘繁は、縁側に立ち尽くしたままその凄惨な光景を見るに忍びなく、
痛ましさから目を背けていた。

「ユキ!ユキ!!」

鬼十はユキの傍らに座し、懸命に彼女の名を静かに、だが強く呼び続けた。
やがて目を覚ましたユキは、師の突然の来訪に驚きと戸惑いを感じた。

「・・・お・・・お師匠様・・・これは、一体・・・・・・?」
「おお、気が付いたか。そなたのことで一言挨拶を申そうとこの屋敷に罷り越したが、
 斯様な重大事に立ち至ろうとは思いにもよらなんだ・・・。」
「も、申し訳、ござりませぬ・・・とんだ失態を・・・・・・この次は必ず・・・!」

ユキは名誉挽回を誓うが、鬼十は黙したまま首を横に振った。

「なぜです・・・ぐ!!」

血気に逸るユキをなだめながら、鬼十は諭すようにこう告げた。

「見たところ今のそなたは完膚無きまでに負傷甚だしく、人並みに動けるようになるまで
 おそらく半年以上は掛かろう。その上骨も大分傷んでおるようじゃ。そのような状態では、
 仮に治癒したとしても、再び忍びとして勤められるかどうかわからぬ。下手をすれば・・・
 忍びの道を捨てざるを得ぬことも覚悟せねばならぬ!!」
57名無し天狗:03/03/23 00:47 ID:gsG3j7XU
だが、己の使命感と責任感からユキは反駁した。
今まで師の言葉を真摯に受け留め、従って来た彼女がその師に異を唱えたのは、これが初めてだった。

「お言葉を返すようですがお師匠様・・・自らの勤めを全うせずに、このまま生き恥を晒すのは・・・
 嫌でございます!とても、耐えられません・・・・・・。」

見す見す引き下がるわけにはいかない。そう強く師に訴え掛ける彼女の目には涙が光っていた・・・。

縁側の弘繁もまた、己の不甲斐なさにガックリとその場に崩れ落ち、身辺警護のためとは言え
ユキを危険の矢面に立たせて来た己自身を悔いていた。

「私に・・・もう少し・・・ほんの、僅かでも・・・ちか、ら、が・・・あ、れ・・・ば・・・・・・。」

暫くして、ユキは呻くようにこう呟いたきり、気を失ってしまった。
まだ息が残っているとは言え、明らかにユキは死期を早めてしまっている。
このままではユキの命が・・・・・・!
その時、ユキの心からの訴えと彼女が最後に呟いた言葉を受けた鬼十は、彼女の命を救うため一つの決断を下した。

「五木殿。申し訳ござらぬが、ユキを暫くわしの下に引き取らせてくれぬかの?」

鬼十のその一言に、弘繁は息を呑んだ。

「・・・・・・!いや、しかしながら・・・・・・。」
「存じておる。わしじゃとて出来ることなら他の手段でユキを助けたい。
 じゃが、事ここに至ってはこの手段を以ってユキを救うより他に道は無い・・・。
 そこもとにも手伝うてもらいたかったのじゃが、城勤めに穴を空ける訳にもいくまいて。
 案ずることは無い。ユキはわしにとっても可愛い弟子じゃ。決して悪いようにはせぬ。」

「・・・・・・承知仕りました。では、ユキのこと、よろしくお願い申しまする・・・。」

かくしてユキは、鬼十と、屋敷の外で陰ながら待機していた谷一族の者たちによって彼らの里へと運ばれて行った。
祈るような心持ちでユキ、そして谷一族を見送ったあと、弘繁は再び評定の場へと戻っていった・・・。
58名無し天狗:03/03/23 01:43 ID:gsG3j7XU
一方その頃、血車党の本拠地では・・・

「おかしら様。これなる一巻が、“化身忍者誕生の法”の秘伝書にござりまする。
 何卒、お改めの程を…。」

秘伝書の奪取に成功した骸丸が、“おかしら様”と崇める血車党首領・血車魔神斎に
策成りしことを報告していた。
その骸丸より秘伝書を受け取った魔神斎は、食い入るように秘伝書の内容を熟読していった。

「うむ、確かに紛れも無き秘伝の書。骸丸よ、よくぞ手に入れた!天晴れであるぞ。
 これで我が血車党の野望は達成されたも同然じゃ!!」
「ははーっ。お褒めに預かり、光栄にござりまする。」
「じゃが、唯一見落としておる点があるとすれば・・・・・・美浜の者と、彼の者らと共に
 秘術を編み出したと言う谷一族なる忍びの一族がその秘術を口伝によって記憶しておるかもしれぬと
 言うことじゃ。たとえ秘伝書を奪ったとしても、子々孫々に至るまで言い伝えられては、いずれ我らと
 互角に亘り合う力を付けてしまうかもしれぬ。その前に骸丸よ、秘伝を知るものを残らず全て始末するのだ!!」
「はっ!!!!」

念には念をと、更なる指令を下す魔神斎。骸丸に、新たな緊張が走る。
三たび出陣した骸丸は、失敗の折には死を覚悟して出陣した。
59名無し天狗:03/03/23 02:56 ID:gsG3j7XU
所変わって、こちらは谷一族の隠れ里。

一族とユキ、そして美浜藩の一部の者以外は誰も知らないと言うこの地に於いて、
ユキは今、まさに蘇ろうとしていた。鬼十が一度は使うのを躊躇った「禁断の法」・・・
そう、“化身忍者誕生の法”によって!!

化身忍者誕生の法は、奇しくも二十一世紀の現代に於いて加護博士が開発し、ゼティマが悪用している
改造人間製造技術と驚く程類似していた。ただ、電子技術がまだ存在せず、生体技術のみであることを除けば。
その方法とは、改造人間手術と同様、人間の身体に動植物の細胞を移植し、遺伝子を融合操作することにある。
化身、すなわち変身の原理も脳細胞を刺激し、体内の細胞の配列を組みかえることによって常人を遥かに凌ぐ
力と機能を引き出すと言うものであったが、この手術法を編み出すにあたって彼らが最も頭を痛めたのはこの点であった。
脳は心臓と共に人体の生命の一切全てを司る器官である。それ故に脳に化身の細工をする際には細心の注意が払われる。
当然、紆余曲折や試行錯誤を繰り返しており、その度に試験体となるも大小に関わらず脳手術の失敗から命を落とす者が後を絶たなかった。
こうした数多の犠牲と様々な改善により、困難は克服され、秘術は完成したのである。

だが、運ばれたユキは全身が隈なくズタズタにされている。健全な時でも一歩間違えば確実に死を招くこの手術を今の彼女に施すには
余りにも危険すぎる。下手をすれば、ユキの死は免れない。
それでも鬼十は、愛弟子を救うために執刀を決意したのだ。今となっては、美浜五木家と共に乱世の頃から築き上げてきた血と汗と涙の結晶を
決して無駄にせず、必ずこの手術を成功させると。

秘伝書こそ失ったものの、まだ「彼ら」には口伝による記憶があった。特に谷一族は秘術の大半を考案したので、それらに基づいて手術が
いよいよ施行される。
ゴメン、>>58の最後の一行
「三たび出陣〜出陣した。」は
思いっきり失敗なんでなかったコトにして・・・・・・。