冷酷な笑みとともに、にじり寄る幽霊博士の両手がまゆみの首へと伸びる。と、
その時である。
「待ちな!」
不意に聞こえてきた女の声に振り返る幽霊博士。部屋の入り口に立っていたのは
誰あろう、信田美帆だった。美帆はあっという間に二人との距離を縮めると強引に
幽霊博士を自らの方へ向き直らせ、彼の両手を掴むや力任せにひねりあげて動きを
封じる。
「う・・腕がっ、腕がっ!!はっ、放せっ!!」
幽霊博士は必死に抵抗して脚をばたつかせ、美帆の身体に蹴りを入れるがまったく
通じる気配はない。さらに美帆は腕をひねり上げたまま、幽霊博士をゆっくりと
持ち上げる。腕だけで宙づりになり、苦痛に顔をゆがめる幽霊博士。その腕は美帆の
怪力によって有らぬ方向に曲がっている。やがて美帆はそんな彼に一瞥くれると、
その手をゆっくりと離して言う。
「その先生は私が預かる。幽霊博士、文句はないな」
「ハァハァ・・・きっ、貴様ぁ、何のつもりだ?!」
幽霊博士は腰から崩れ落ちて荒い息をつき、めちゃくちゃにされた両腕を
見つめている。そんな彼を見下ろすように、美帆が彼の眼前に立つ。
「儂の腕を、腕をどうしてくれる!」
「唾でもつけてろ、そんなもの・・・ライダーの首と比べれば安いもんだ」
全く反対方向に曲がってしまった両腕を力無くぶら下げたまま、恨めしそうに
美帆の顔を見る幽霊博士。その視線が美帆の視線と交錯する。
「儂の施した『再調整』は完璧のはずだっ・・・よもや貴様裏切る気か?!」
「心配しなくても私は今度の戦いで小娘どもとZXを殺す。しかし、それは
私の流儀でだ。他の奴らには手出し無用と伝えておけ。先生、あんたは私と
来てもらおうか」
そういうと美帆はまゆみとともに踵を返して部屋を去っていった。後を追った
ところで破壊された腕では何をすることも出来ない。幽霊博士はただ、まゆみと
美帆の二人を口汚くののしるだけで精一杯だった。