仮面ライダーのの555(ファイズ)

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338名無しスター
パンチを出した瞬間、ソニンの視界からカニカブラーが消えた。

「く、くそっ!」
慌てて周りを見回すがどこにもいない。

「どこに・・・」
ストロンガーとライダーののが耳を押さえて倒れているのが目に入った。
よく見ると工場のガラスが全部割れていた。

「一体?・・・」

もう一度正面を見ると、足元にカニカブラーの「足」があった。
・・・正確には「膝から下の部分」が転がっていた。

「これは・・?」
339名無しスター:03/05/30 00:52 ID:wbcBWUwK
ひとみはその瞬間を高性能な機械の目で見ていた。

人間の目にはソニンがいきなり爆発したように見えただろう。
ソニンがパンチを出した次の瞬間、拳の先は亜音速に達し、空気の渦が拳を押し戻そうとしていた。
そして拳が加速を続け音速を突破した瞬間、一気にスピードが上がる。

衝撃波(ソニックブーム)が発生し、ソニンの拳が届く前にカニカブラーを粉微塵に吹き飛ばした。
至近距離で戦車砲の直撃を受けるに等しい。いくら強固な甲羅でもひとたまりも無い。
衝撃波の直撃を免れた足だけが吹き飛ばされずに転がっていた。

数メートルの距離で衝撃波を受けたライダーののとストロンガーはたまらず倒れこんだ。


ソニンは電撃で記憶を取り戻した。
変身は出来なくなった。
そしてパワーは更に強力になっていた
340名無しスター:03/05/30 00:55 ID:wbcBWUwK
「私がやったの?・・・」
カニカブラーの足を見つめながらソニンが言った。

「・・・そうだ!ユウキ!」
ソニンは再び周りを見回した。やはりカゲスターの姿はない。

「そうだ・・テント・・公園!・・」
ソニンは振り返って走り出そうとした。

次の瞬間、右足が膝まで地面に埋もれていた。
足を抜き、もう一度走りだそうとする、すると今度は反対の足が地面に突き刺さる・・・
まるで田植え前の田んぼを歩くように、コンクリートの地面を穴だらけにしながら前に進む。

「パワーを制御できないんだ・・・」
梨華がその様子を見てつぶやいた。

「くっ・・・・」
ソニンは少し落ち着いて、そろそろと走り出した。

氷の上をツルツル滑るような動きを一瞬見せたあと、猛スピードで動き出し、
瞬く間に梨華とひとみの横をすりぬけて行った。
341名無しスター :03/05/30 01:04 ID:wbcBWUwK
「ま、待て!・・」
ひとみが追いかけようとしたのを梨華が制止した。

「2人を助けないと・・」
梨華はストロンガーに駆け寄る。

「でも・・」
ひとみは迷っていた。

「大丈夫よ、摩擦で溶けたアスファルトとか、止まりきれずに壊れた建物を
 辿っていけば追いかけられるから」

梨華がそう言った後、外からソニンが出したであろう衝突音が連続して聞こえた。
「そうだね・・・」

ひとみがライダーののに駆け寄ろうとした時、後ろでひときわ大きな音が響いた。

「また音速を超えたみたい・・・」
342名無しスター:03/05/30 01:08 ID:wbcBWUwK
ソニンは、加速する・止まりきれず壁や塀を突き破る・また走り出す・・
そんなことを何度か繰り返しながら、ちょっと遠回りをして公園にたどり着いた。
気のせいか、さっきより少しパワーが落ちて来ているようだった。

「ユウキ!」
公園に着いたソニンは大声でユウキの名前を呼んだ。しかし返事が無い。
急いでテントの前に向かう。

「・・・ユウキ・・・」
テントの前でカメラを持って倒れているユウキの姿が目に入った。

「ユウキ!しっかりして!」
ソニンはユウキを抱き起こそうとしてギョッとした。
肋骨がバラバラに折れていた。脈が無い、呼吸も無い・・・
顔を下に向けると口と鼻から大量の血が流れ出た。

「・・・ユウキ!」
急いで、、しかしパワーを調整しながら慎重に人工呼吸を施した。
ところが息を吹き込んでも肺が膨らまない。どうやら折れた骨が肺に刺さっている。
それでもソニンは心臓マッサージと人工呼吸を続けた。
343名無しスター:03/05/30 01:16 ID:wbcBWUwK
「う・・・」
「ユウキ!」

しばらくして、奇跡的にユウキの意識が戻った。

「ユウキ、大丈夫?」
「・・・ソニンさん・・姉さんに会えたよ・・・」

「そう!良かったね!私も・・記憶が戻ったの。あと家族の消息も・・・」
「・・・じゃあこの旅も終わりだね・・・俺、ソニンさんと一緒に旅が出来て本当に楽しかった・・・」

「何言ってるの!あんたはあいつらから姉さんを取り戻すんでしょ!
 最後まで付き合うわよ!だからしっかりして!」

「俺・・ソニンさんのこと・・・」

「・・・・・・・」


「本当の・・・姉さんみたいに・・・」


「ユウキ!」
344名無しスター:03/05/30 01:17 ID:wbcBWUwK


「・・・ソニンさん・・・どこ?・・」

「ここよ!」



「・・・ソニ・・・・・」



「姉・・・・・・・母さん・・・」

「ユウキ!・・・」

ソニンは人工呼吸を続けた・・・
345名無しスター:03/05/30 01:20 ID:wbcBWUwK
「・・・こっちよ!」

「足跡が消えたのれす・・」

しばらくして公園に辻達4人が到着した。

「あ、あそこ!」
梨華がソニン達を見つけ、駆け寄った。


「・・・亜衣ちゃんを呼んで!早く!」
二人の様子を見た安倍が叫んだ。
数分後、無線で呼ばれた加護が駆けつけた。

加護は機材を取り出し、テキパキとユウキの体を調べ始めた。
その間もソニンは無言でマッサージ・人工呼吸を続ける。
しばらくして加護は手を止め、ソニンの顔を覗き込んだ。
346名無しスター:03/05/30 01:26 ID:wbcBWUwK
「医学の心得は?・・」
加護はソニンに聞いた。

「ある組織で改造人間の研究に関わってました。・・・あなたは?」
「加護博士の孫なんやけど・・・」

「え!あの『加護博士』ですか?」
ソニンは驚いて一瞬手を止めた。

「そうや、それで・・・その・・」
加護はソニンの顔をじっと見た。
ソニンは加護が何を言おうとしているのか分かっていた。

「もうええよ・・・お疲れさん・・・」
ソニンはその言葉を聞くとマッサージを止め、ガックリと力が抜けたようにうずくまった。

「何をしてるのれすか、早くライフステージに運ぶのれす!」
辻が2人に後ろから声を掛けた。

「のの・・・うちらは科学者や。神様でも悪魔でも魔術師でもないんや」


「・・・死んだ者は生き返らん」
347名無しスター:03/05/30 01:36 ID:wbcBWUwK

「・・・ユウキ・・」

しばらくしてソニンはユウキの体を起こし、抱き寄せた。

「『姉さん』か・・・」


「バカ・・・」


そっと額にキスをし、ユウキの体を抱きしめ続けた。

348名無しスター:03/05/30 01:41 ID:wbcBWUwK

まあ死んじゃったわけだが・・・
これで良かったのかな。