「じゃが・・・儂は見とどけたくなった。妹たちの身を案じて目覚めた、
お前の『心』が本物であるか否かをな」
「私の・・・『心』?」
「左様。加護とつんく、二人は確かに天才じゃった。儂も仏道に入る前は
科学者の端くれでな。加護の残したお前の設計図を元に儂もまた人造人間を
作った」
そう言うと和尚は近くにあった走馬燈に手をかけると、それを力一杯横に
ずらした。すると、二人を取り囲むように配置されていた仁王像が次々と
真二つに割れ始めたではないか。
「人の心を狂わせる科学という怪物と決別するために仏道に入った儂
じゃったが、彼らの才能には正直嫉妬した。そして儂が生み出したのが
これじゃ!」
割れて砕け散っていく仁王像。そしてその下から現れたのは、まいの
もう一つの姿、キカイダー01にそっくりな人造人間の姿だった。次々と
姿を現す人造人間達。だがその目にはまだ光は宿っていない。
「真の人造人間が目覚めた今、模造品が存在する意味はない!残念じゃが
科学者として、儂はお前の父を超える事は叶わなかった」
「よいか、まい。良く聞くのじゃ。お前が甦ったのと時を同じくして、
動き出す者達がおる。その者達の名は『シャドウ』、人の世に巣くいて
人心を惑わし、悪へ向かわす地獄の使者じゃ」
「シャドウ・・・」
「そしてその者達を統べるは『ゼティマ』!妹たちの敵、この二つの名を
忘れるな!そして、ダブルマシンを駆って『加護生化学研究所』を目指せ!」
まるで何かに急かされたかのように叫ぶ風天和尚。まいは最初それが何故
なのか理解できなかった。だが、次の瞬間。
『ウィィィィィン・・・』
『・・・ィィィィィィン・・・』
小さな駆動音が聞こえてきたかと思うと、人造人間達の目に次々と光が
宿る。その様子を目にしたとき、和尚の脳裏によぎったのは悪の影だった。
「チィッ、思いの他早く勘づきおったわい・・・シャドウめ!!」
老僧の声に呼応し、彼の視線を追うまい。二人の視線の先に、何者かの「影」
があった。
「風天和尚、残念だがその人造人間を行かせるわけにはいかん」
その「影」の正体は二人のいる本堂の中からは暗くて判らなかったが、
ただ一つ大きな目だけが二人を射るように爛々と輝いている。謎の敵を目の前に
して、風天和尚は人造人間達に命令を下した。
「シャドウめ、まいに手を出すでない!戦え、ゼロワン!」
彼の声に呼応し、次々と謎の敵に向かって歩を進める人造人間−ゼロワン。
ゆっくりと歩み寄る人造人間達は一言も発することはない。彼らはまいの身に
危機が迫った時、寺ごとまいの痕跡を消し去るために準備しておいたものだった。
だがそれは単なるコピーに留まらず、風天和尚にかつての科学者としての情熱を
かき立てる存在であった。叶うならば良心回路を解明し、まいやひとみ、梨華を
超える人造人間を作りたかった。プログラムを超える「心」を与えたかった。
しかし、結局のところ彼は二人の天才を超える事は出来なかった。機械に心は
要らない、そう語る彼の言葉は裏を返せば機械に心を与えられなかった彼自身の
心の叫びだったのかも知れない。
あくまでも定められた標的に対し黙々としてその歩みを止めないゼロワン。
不意に額の部分に光が集約されたかと思うと、透明な頭部カバーがまるで
レンズのようにハレーションを起こす。そして次の瞬間、それは強烈な熱光線と
なって発射された。謎の敵は体をかわしてこの熱光線「サンライズビーム」を
回避したが、標的を外した熱光線は本堂の屋根を吹き飛ばし辺り一面をなぎ払う。
古寺はこの光線で一瞬にして炎をあげて燃え始め、そして二人は炎の中で敵の
正体を知ることとなった。