61 :
偽り:
「中澤さん…あの…」
言ってしまおうか、と石川は考えた。
きっとこの人なら、すぐに解決してしまうに違いない。
そしたら娘。内でのいじめもなくなるし、何より…石川自身の負担も軽くなる。
(そうよ…どうして私ばかり悩まなきゃいけないの。後輩の面倒だって、私が一番見てるのに…)
「石川?何、どーしたのー?黙っちゃって。」
言ってしまおう。言って、楽になるんだ。
でも…
「…いえ。何でも…ないんです。ちょっと疲れてるだけで」
「そうなの?無理しちゃ駄目だよ、あんたは頑張りすぎるんだから」
強気の笑みを残して、中澤は去って行った。
中澤の後姿を見送って、石川は一人溜息をつく。
(強いなぁ…中澤さん。でも、頼っちゃ駄目なんだ…これは、モーニング娘。内の問題なんだから。私が…しっかりしなきゃ!娘。を守らなきゃ…)
( ^▽^)<ポジティブポジティブ!
>>62 ( ^▽^)<そうね♪ポ・ジ・ティ・ブ♪
64 :
偽り:03/03/30 10:39 ID:iYSjg/Sh
翌日、いつものように私が練習室に入ると、
中には藤本さんと高橋さんの姿がありました。
あ…と思ったけど、もう遅かったみたいで。
「亀井じゃん。丁度よかったー」
「あのさぁ。お前に聞きたいこと、あるんだけど」
いきなり肩を強く押され、私は後方へ突き飛ばされました。
尻餅をついた私の右足を、藤本さんが容赦なく踏みつけます。
「最近、安倍さん達の様子がおかしいんだけど…お前、何か知ってんじゃねえの」
「わた…私は…っ、し、知らな…」
「しらばっくれんじゃねえよ!!」
藤本さんのビンタが、手加減なしに私の頬を打ちます。
涙で滲んだ視界の向こうで、高橋さんが腕を組んで笑っていました。
(どうして…どうして私だけ、こんな目に…)
その時でした。
練習室の扉がいきなり開いて、誰かが入ってきたのです。
偽りタンやっとやる気になってくれたんですね。
こっちのキーパーソソは誰なんでしょうか?
楽しみです。
66 :
偽り:03/03/30 16:50 ID:iYSjg/Sh
「あさ美ちゃん…」
紺野さんでした。
紺野さんはちら、とこっちを一瞥すると、特に興味も示さない様子で
部屋の隅にある椅子に腰を下ろしたのです。
一瞬私のほうに向けられた視線から、同情と…めいいっぱいの侮蔑を感じます。
私は…恥ずかしくて、顔を反らしてしまいました。
(“あんたの勝手だけど引き際は肝心だよ”…)
あの日紺野さんに言われた事が頭の中をよぎります。
(紺野さんの…言う通りだ…もう、こんなの…嫌…)
「―――藤本!!」
急に…私への攻撃が止まりました。
「何だよ、高橋」
「それ位にしときな」
「あぁ!?なんだ…お前まさか、あいつにビビってんのかよ!」
あいつ…とは、きっと紺野さんのこと。
紺野さんは反応もなく、ひたすらに手もとの本に目を落としています。
「いいから!!」
少し大きな声で高橋さんに諌められ、しぶしぶ…といった様子で、私は解放されました。
67 :
偽り:03/03/30 16:50 ID:iYSjg/Sh
「ふざけんなよ!てめえ、どういうつもりだ」
「あんたは…あの子を知らないんだよ。藤本」
珍しく、いつもの強気な高橋の目ではない。
その目は明らかに…とまどいの色を宿していた。
あの…紺野あさ美に。
「私は同期だから…あの子の本性、一番よく知ってる」
「本性…だって?」
「あの子の前では、出過ぎた真似はしない方がいい」
「…ちっ…」
68 :
偽り:03/03/30 16:52 ID:iYSjg/Sh
藤本さんと高橋さんが出て行き…練習室には、紺野さんと二人きり。
「あのさ…」
「は…い…」
相変わらず紺野さんの目は本に落とされたままです。
「辛くないの?あんなにいじめ、受けて」
そこで私は初めて、紺野さんの大きな目にとらえられました。
「楽に、なりたくない?」
その声は妙に優しげで、私は…泣いてしまったのです。
「・・うっ…ったし……私は…っ…なりたい…楽に、なりたい…っ…」
涙が止まりませんでした。
私の憧れだったモーニング娘。は、もうどこにもないのです。
(もう嫌だ…何もかも終わって…楽になりたいよぉ…)
吉澤さんにさえ言えなかった、それが私の本音でした。
紺野さんは泣きじゃくる私を何も言わずに見下ろしたまま、
「じゃぁ・・・」
そう、呟くように言ったのです。
「じゃぁ…殺しちゃえば…?」