亀井絵里はどうよ

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939作者エリ
中澤裕子は思う。
(アホか、うちは…何期待しとるんや?)
(もう誰にも止められないって思とるのに…あの子の目見てたら…なんとかなる、て)
(ええよ。うちはもう出る幕やないな。これからはあんたらの時代や!)
「行ってこい!」

亀井絵里、中澤裕子、石黒彩、紺野あさ美を乗せた車は、大きな弧を描いてUターンした。
飛ばす。物凄いスピードで石黒彩はハンドルを回す。
(何やってんだ私は…また裕ちゃんにつられて…)
(…ったく裕ちゃんはいつまでたってもモーニング娘馬鹿なんだから…)
(あーあ何キロオーバーだろ、警察に見つかったら即免停じゃん)
(私もか、モーニング娘馬鹿は)
石黒彩は笑みを浮かべた。
「オラーつかまれ!飛ばすぞぉ!」

会場の周りは物凄い人だかりで渋滞していた。
元々いた者のみでなく、テレビラジオを聴きつけたファンも駆けつけていたのだ。
4人を乗せた車はあと数百メートルという所で無残にも動きを停めた。

「ダメだ…これ以上は走っていくしかない…」
「私、行きます!走ってでも!」
940作者エリ:03/05/13 18:30 ID:bMNnNJMT
止める間もなくエリは車を降りた。そして会場へと走り出す。
中澤と石黒は動くに動けない。あとのことを最高に頼れる後輩に託した。

「すまん!頼むで紺野!」
「はいっ!」

レイプされかけた恐怖がまだエリの全身を蝕んでいる。
何千何万という群集を掻き分けて進むことに、どれだけの恐怖を感じたことか。
中澤から借りたコートを被って顔を隠し、それでもエリは走る。
するとエリを追い越して、見慣れた背中が現れた。

「紺野さん…」
「私の後ろ、絶対離れちゃダメよ!」

紺野は自らを盾にして、エリの為に道を造る気でいた。
(私じゃ無理なんだよ…歌も踊りも下手糞で…ずっと落ちこぼれの私には)
(私じゃモーニング娘を救えないんだ。でもエリちゃんは違う!)
(あのときの唄…本当に楽しかった。エリちゃんの唄なら…きっと)
(だから私は道を造る!絶対にエリちゃんをあそこへ辿り着かせるんだ!)
941作者エリ:03/05/13 18:31 ID:bMNnNJMT
ザワメキが起きた。
「おい、あれモーニング娘じゃないか?」
「ハハッ、バーカ!どうしてこんな所にモームスが…」
「見ろって!紺野だよ!それと新メンの亀井だ!」
ザワメキは波紋の様に、群集へと広がる。
目の前にアイドルがいる事実は、群集の目に狂気を宿らせる。
バレた。あまりに早すぎた。まだ会場へは百メートル以上ある所で。
エリは紺野の背中だけを見つめて走り続けた。しかし…
人だかりが道を塞ぐ。紺野とエリの道が閉ざされた。狂乱が二人を囲む。
あのときを遥かに上回る恐怖が二人を包んだ。

「お願いです!どいて下さい!私達行かなきゃいけないんです!」

震えながらエリは叫んだ。しかしその声は届くことはなかった。
エリは信じた。紺野の背中に捕まりながら、死に物狂いで何かを信じ続けた。
(行くんだ!決めたんだ!もういじめれっこは卒業したんだ!エリは…!)
そのとき、群集の向こう側から巨大な笑い声が響き渡った。
かと思うと物凄い勢いで群集をなぎ倒し、エリの方へ突撃して来る。
何が起きたのか?すでにエリと紺野の理解を超えている。
巨大な壁の軍団は二人の囲んで止まった。