亀井絵里はどうよ

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874作者エリ
「お初にお目にかかります、つんくさん」
「…お前。そうか、これは全部自分が仕組んだことか!」
「いいえ、私はちょっと花を添えただけ。間違いなく彼女達の意思ですよ」

この業界にいる者なら、知らぬ者がいない敏腕プロデューサーであった。
彼の手によりヒットしたタレントは数知れない。
だが決して表には出ようとせず、徹底して影に努める男である。
その男がつんくの元を訪れたのだ。
つんくがモーニングの危機を電話で知り、飛び出そうとしているそのときであった。

「何が目的や!」
「賭けをしませんか?」
「賭けやて?」
「ええ。あなたの作り出したモーニングと私が手を貸したモーニング。どちらが上か」
「何アホなことぬかしとんねん!そんなもんする訳…」
「残念ですが、もう現地では始まっています。後戻りはできません」
「…あの5人が。俺を裏切ったのか!?」
「フフフ、勝者がモーニング娘を手に入れるということで、よろしいですね」
「上等ややってやろうやないか!あいつらを嘗めるんやないで!」
「賭けは成立ですね」
875作者エリ:03/05/03 10:49 ID:loG1G/sv
大きなモニターが運ばれてきた。
つんくと新モニプロデューサーは、その前に並んで座った。
画面には、馴染みの深い娘達の姿が二分されて映し出される。
それを見たつんくが思わず歯軋りをあげる。

「勝負の方法は簡単です。観客達の前で互いにライブを披露する。
 そしてそこでより多くの声援を得た方の勝ち、ただそれだけです。」
「おおっ」
「テレビ局、スポーツ紙等、各メディアにはすでに連絡済です。
 今頃、大慌てで会場へと集っていることでしょう」
「全部、お前の思惑通りって訳か」
「さて?」

男は笑みを絶やすことなく、画面を見続けた。
つんくは祈る。自分が選んだ娘達を信じる。信じるしかできなかった。
876作者エリ:03/05/03 10:50 ID:loG1G/sv
会場の熱気は今や完全に沸騰しかけている。
男がつんくにした話を、安倍なつみと矢口真里が語る。

モーニングの座を賭けて―――
ライブ勝負―――
新しい娘―――

その一言一言が安倍矢口の口から出るたび、異常な興奮と歓声が飛び交う。
アイドル史において、いや芸能史において前代未聞の出来事であった。
その歴史的舞台に立ち会えた感動に震える。
さらにマスコミがこの事件を速報で、メディア各局に流す。
これを聞きつけた人々が、いてもたってもいられなくなり会場へと走り出す。
ついにはテレビ局による生放送が始まる。
モーニング娘のファンでない人たちの目にまで届く。
街に出歩く若者達が…
疲れた中年サラリーマンが…
仕事帰りのOLが…
夕食時の小学生が…
誰もが目を止めた。その肌が何かを感じた。何かが起こるんだという感覚。
877作者エリ:03/05/03 10:51 ID:loG1G/sv
「モーニングを賭けて?バカバカしい!勝手にやってろって感じね」
「ちょっとミキティ!どこ行くんやって?」
「止めんなよ高橋。俺はモーニングなんてどうなろうがどうでもいいんだよ」

藤本美貴は止めに入った高橋愛を一蹴してステージを去っていった。
立ち代り小川と新垣、そして田中と道重が入ってくる。
皆一様に不安をいっぱい顔に浮かべている。
加護、辻、高橋、小川、新垣、田中、道重。
以上7人が残されたメンバーであった。この7人であの5人と勝負せねばならなくなった。

「あいぼん、ろうしよう〜」
「泣くなのの。勝てばいいんや!うちらがあの人たちを超えればいいんや!」

安倍なつみ、矢口真里、後藤真希。
いずれも辻加護が尊敬し目標としてきた名前であった。
さらに、歌唱力最強と今なお語り継がれる伝説的存在、福田明日香。
歌はともかくそのビジュアルは娘最強、石川梨華。
(あの人たちを超える…。)
辻は加護の言葉をそっと胸のうちで反芻した。
歴史的勝負が幕を開ける。