亀井絵里はどうよ

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862作者エリ
呼ぶ声がしたんだ…。
もう戻れないって、助からないって思ってた私の元に…。
呼ぶ声がしたんだ…。

「亀井――――――!!」

リーダーの声でした。
暗闇に落ちかけた。一生残る傷を負う所だった。笑顔を失くしかけた。
その声は、そんなエリに一筋の光を照らしたんだ。
口を一杯に広げて、エリも呼んだよ。

「飯田さぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!」

声は届く。
救いの手は差し伸べられた。
三人の女性が茂みの向こうからやってきた。
863作者エリ:03/05/01 20:59 ID:AZqmS5al
飯田圭織は顔をくしゃくしゃに歪め、孤独に戦う二人の娘を見た。
髪は乱れ、頬は泥にまみれ、下着だけ身に着けたエリ。エリは泣き崩れていた。
その奥にもう一人。腕にも顔にも痣がある。うつろな瞳で男達を睨み続ける紺野。
小さな二人を囲む残忍な男どもが4人。
男達の顔色が変わる。
飯田圭織の横に鬼の表情を浮かべた女が立ち尽くしていた。
中澤裕子。
リーダー格の男が震え始める。中澤を指差し震えながら言った。

「あ、姐さん…。まさか…あの伝説の…大阪美人…」

中澤は無言で男達を見下ろしていた。
金髪の男が堪らずリーダー格の男に言う。すでに声が震えている。

「大阪美人って!数年前解散した関西最強レディースの頭!嘘だろっ!」
「あの鬼の顔、間違いない…」
「い、いくら伝説の人でもたかが女一人、問題ねえ。やっちまおうぜ!」
「バカ待て!あっちの人は!」
「石黒さん?なんでこんな所に?」
864作者エリ:03/05/01 21:00 ID:AZqmS5al
北海道出身の男達にとって、石黒彩の名は絶対的ものとして知れ渡っていた。

「やべえぞ、しかも石黒さんのバックにはあの人達がいる」

―――――――――――――最強最悪軍団「流那死夷(ルナシイ)」

男達の全身が恐怖により固まり出す。恐怖が目的を忘れさせた。
男達は逃げ出した。我先にと一目散に逃げ出した。

「ええんか逃がして?」
「いいっしょ。顔は覚えた。後の締めはうちのだんなにでも頼んどくさ」
「怖い女やでほんま」
「人のこと言うか」

石黒とそんな会話を交わしながら、中澤は自分が纏っていた薄手のコートをエリに被せた。
エリはまだ泣いていた。飯田が優しくエリを抱きしめる。
「よくがんばったね」飯田はまるで母の様にそう言った。
それで必死に繋ぎとめていた何かが千切れた。エリは感情そのままに泣き崩れた。

「フエエエエエン!怖かったよおぉぉぉぉ!」
865作者エリ:03/05/01 21:01 ID:AZqmS5al
「後輩の為に身を張って頑張ったんか。かっこよすぎるで紺野」
「いえ、そんな…」

中澤が紺野の頭をきつく撫でる。紺野は照れながら微笑を浮かべた。

「ところで大丈夫なの?ひどい怪我じゃん。立ってるのもやっとのはずだぜ」
「えっ?あっ?そういえば痛いです!」

石黒に言われ、紺野はようやく自分の傷に気がついたみたいだ。
とても5人の男に立ち向かったとは思えないトロさだ。

「表に私の車があるから、二人とも近くの病院まで乗せてくよ」
「ほら、紺野、亀井も、歩けるか?行くで」

さっきからずっと泣き続けるエリを飯田と中澤がなんとか立たせる。
5人は公園を抜け車の前まで歩いた。飯田を除く4人が車に乗り込む。
車は病院へと走り出した。
飯田は再びライブ会場へと戻る。
まだ終わっていない。