亀井絵里はどうよ

「助けて下さい！飯田さん！大変なんです！エリが…エリが…！」

誰？私を呼ぶのは誰？私を呼んだって何もできない。なのに私を呼ぶのは誰？
アア…この子達は新メンバーの、ええと、そう、わかってるわよ。圭織はリーダーだよ。名前を忘れたりしないわよ。田中、道重。何泣いているのよ、そんなに慌てて。
道重ったら鼻水出てる。もうどうしたの？あなた達がそんな顔するの始めて見たぞ。
なかなか心を開いてくれようとしないから、圭織困ってたんだ。
でも良かった。やっと圭織を頼ってくれるんだね。どうしたの？
エリ？ああ、亀井のことか。あの子は本当にいい子だね。
最初は問題児だって誤解してたんだ。でも違った…あの子も圭織と一緒だってわかった。
唄うこととモーニング娘が大好きだって…わかった。
あ、もちろん田中と道重もいい子だよ。あともう少し言葉使いを直せばね。
そういえば亀井いないわね。え、襲われている？亀井が？野蛮な男達に？
ちょっと？何言ってるの？亀井が？嘘でしょ？公園？公園で襲われている？
何でそんなことになってるの？どうすればいいのよ？私なんか何もできないのに…！
なっち…福ちゃん…矢口…ごっつぁん…石川…
ううん、迷ってる暇なんてない！圭織はリーダーだ！
モーニング娘の誰一人だって見過ごしたりなんかしない！しないんだ！
田中！道重！圭織が行くから、あんた達はモーニング娘を守っていて！
圭織が絶対、亀井を連れて戻るから！それまで絶対、守って！お願い…モーニング。

亀ちゃんが可哀想だよー
もう見てらんない

田中と道重が大きく頷くのを確認した。その大きな瞳はモーニング娘の瞳であった。
確認してすぐ飯田は走り出した。亀井絵里を助ける為に…
自分が駆けつけて何ができるとか、そういうことは考えてなかった。
ただ行かなきゃいけないと思った。モーニング娘のリーダーだから行かなければいけない。

キキィ！
急ブレーキの音。高そうな車が目の前で止まる。
飯田は自分が道路の上にいる事に気付いた。ドームと公園を挟む道路。

「ボケェ！死ぬ気か！何考えとんねん！」
「あっぶねえなぁ…もう少しでひくとこだったー」

車から女性が二人顔を出す。飯田は目を見開いた。二人の女性も飯田を見て表情を変えた。

「ってなんや、圭織やん。何しとん自分？今ライブ中やろ？」
「おう圭織かーチーッス。ひっさしぶり。応援に来たぜぃ…遅刻だけど」
「裕ちゃん…彩っぺ…」

それは奇跡であった。中澤裕子、石黒彩。飯田圭織。三人が出遭う。
安倍なつみと福田明日香が愛の種を蒔くまさにその頃、この三人が出遭ったのだ！