亀井絵里はどうよ

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763作者エリ
「結局、よしこは来ないか…」
「五人だけだね。6年前も始まりは五人だけだった」

福田明日香がそう言うと、なっちは目を閉じて押し黙る。
目を開いたなっちはそこにいる四人の顔を見渡した。そして頭を下げた。

「みんなごめんね。それとありがとう。なっちのわがままに付き合ってくれて…」
安倍が言う。
「なぁ〜に言ってんのさ、これはおいらのわがままでもあるんだぜぃ」
矢口が言う。
「もう一度安倍なつみと唄いたいって思った。だから来た。それだけだよ」
福田が言う。
「私も同じ…だよ、なっつぁん」
後藤が言う。
「顔上げて下さい。誰も安倍さんを攻めたりしないですよ。みんな自分の意思です」
石川が言う。

「ありがとう」
なっちが笑った。この笑顔がモーニング娘の歴史だ。四人は思った。
この笑顔が続く限り、モーニング娘は終わらない、終わらせない!
764作者エリ:03/04/27 02:15 ID:5zfshsV1
伝説はたった五人から始まった。
今また新たな伝説が五人から始まるのも、何かの縁かもしれない。
手と手が重なり合う。
本物のモーニング娘ができなかったアレを…今新生モーニングがやりのけた。

「がんばっていきま〜〜〜〜〜〜っしょい!」

安倍なつみを先頭に、矢口石川と続く。最後に後藤と福田が並んだ。
ステージの直前で福田が後藤に声をかけた。

「貴方が言ってた小さな希望…姿が見えない様だけど?」
「わかりません。でも…」
「でも?」
「あの子は来るよ!」

そう言ったのは前にいた石川だった。いつの間にか二人の会話に割り込んでいる。
だが後藤も石川と同じことを言うつもりだった。二人は見ている。亀井絵里の奇跡を。
福田は小さく微笑み、おぼろげな記憶からその顔を思い浮かべ様とした。

「亀井絵里か…」
765作者エリ:03/04/27 02:15 ID:5zfshsV1
会場全体に藤本美貴の華麗な歌声が響き渡っている。
飯田圭織は走っていた。必死に仲間達を探し回っていた。
呼吸が乱れ、関係者出入口付近にて足を止める。目の前に巨大モニターがあった。
藤本辻加護高橋の姿を見た。息を整えまたすぐに走り出すつもりだった。
――――が、動けなかった。
四人の姿が消えた。歌声が消えた。歓声が消えた。すべてが消えた。
(なに…これ…?)
代わりに聞こえてきたもの…悲鳴だった。


(ほらごらんなさい。これだけの大観衆が私だけを見ている)
(そうよ。やっぱりエースは私よ。モーニング娘のエースに相応しいのは私しかいない!)
3秒後、歌えなくなる事を知らない。藤本美貴は自らの歌声に酔っていた。
2秒後、歓声が消える事を知らない。藤本美貴は自分の名を叫ぶ大歓声に酔っていた。
1秒後、モーニング娘が終わる事を知らない。藤本美貴は勝利を確信した。
0秒…
その瞬間、世界が変わる。すべてが消える。
モーニング娘。が終わる。