645 :
作者エリ:
目の前で、亀井絵里が乱暴な男どもに犯されている。
二泊三日の合宿で泣いて笑って、共にオーディションを突破したあいつが…。
ひとりだけセンターに選ばれて仲違いし、口も聞かなくなったあいつが…
楽し気に唄う姿に見とれ、ライバルと認めたあいつが…。
(絵里…)
田中れいなと道重さゆみは茂みに隠れ震えていた。
新曲発表ライブの直前でエリがこっそり何処かへ行こうとしたのを見つけた。
あの唄を聞いて以来、二人はエリの行動を気にする様になったのだ。
だからバレない様にこっそり後を着けた。
そして見てしまった。
男達が四方からエリを囲み、逃げるエリを捕まえ、口に何かを詰めた。
サングラスの男がエリの長い髪を掴み地面に引っ張り倒した。
足をバタバタ振り回し抵抗するエリ、金髪の男がエリの腹に拳を落とす。
タオルの詰まったエリの口から声にならない声が出た。
衝撃で身を悶える。足の動きが止まる。その隙に背の大きな男が足を抑えた。
小柄な男がエリのスカートを嬉しそうに引き裂いた。
若々しいふとももが、男達の目の前で露になる。
男達の眼に宿る狂気がさらに深みを増した。
646 :
作者エリ:03/04/24 03:29 ID:+rqhv1LQ
吐き気。強烈な吐き気。さゆみは自分の見ている世界が信じられなかった。
まだ中学生の女の子一人を、大の男五人が嬉しそうに襲っている。
これはテレビでも本でもない、目の前に起きている現実。
もう半年以上ずっと一緒にいた子が、その信じ難い犠牲者となっているのだ。
いじめていたとか、シカトしていたとか、そんなレベルの話じゃなかった。
止めたかった。今すぐ出て行ったエリを助けたいと思った。
しかし足が全く動かなかった。恐怖による震えが全身を包み込んでいた。
出て行けるはずが無かった。見つかれば、間違いなく自分も同じ目に合う。
自分もあの恐ろしい顔をした男たちに襲われることになるのだ。
恐怖。恐怖であった。これまで経験したどんな恐怖より怖かった。
さゆみは震えながら、隣のれいなを見た。
いつも勝気で大人っぽくて自分を引っ張ってくれるれいな。
彼女ならば、この場を打開できる策を見出すのでは―――そんな期待を込めて見た。
唇が青白い。額に大粒の脂汗。眼が大きく見開いている。腕も足も震えている。
そんなれいなを見たことはなかった。
彼女も自分と同じだ。全身が恐怖に包まれて動かないのだ。
私の視線に気付いたのか、れいなもこちらに眼をやった。眼と眼が合った。
多分同じことを考えていたと思う。
さゆみとれいなはほぼ同時にその場から逃げ出した。
647 :
作者エリ:03/04/24 03:30 ID:+rqhv1LQ
冷静に考えれば、大声で叫んで助けを呼べば良かったのだ。
しかし今の彼女達はそんなことも思いつかない程、恐怖にとらわれていた。
何にも目をくれず走った。ただ走った。走って逃げた。
助けを呼ぶことすら怖かったのだ。誰も信用できないと思った。
助けに呼んだ男達も、自分達を見たらあんな風に襲ってくると思った。
だから助けなんて呼べなかった。何もできなかった。
逃げるしかできなかったのだ。これ以上、あの場にいたら頭がおかしくなりそうだった。
「さゆみちゃん?れいなちゃん?どうしたの?」
恐れのあまり二人は、そんな自分を呼ぶ声にすら気付かなかった。
そのまま走って行ってしまった。声を掛けた人物は首を傾げた。
(何かある?)
声を掛けた人物は、二人が逃げてきた方向を見た。公園の奥だ。
そちらへ向かって歩き出した。草木を掻き分けて、茂みの奥へとさらに進んだ。
奥に複数の男女がいた。凶暴な目つきの男と、その下にいる少女がひとり。
少女はすでにブラジャーとパンツしか身に着けていない。破れた服の残骸がある。
少女は亀井絵里であった。
田中と道重に声を掛けここまで来た人物―――紺野あさ美は吼えた。